説明

クレーン制御装置

【課題】 メタンガス化施設から発生する選別残渣や脱水残渣等を焼却物として焼却する焼却炉に適用されるクレーン制御装置に於て、クレーンに依り焼却物を焼却炉へ投入するに際してその性状を均一にする。
【解決手段】 ピット2、クレーン3、選別機用検出手段4、脱水機用検出手段5、制御手段6とで構成し、とりわけ選別機51の運転状態を検出する選別機用検出手段4と、脱水機52の運転状態を検出する脱水機用検出手段5と、両検出手段4,5からの各運転状態に依り選別残渣Bと脱水残渣Cの混合比率Rを演算すると共にこれに基づいてクレーン3を制御する事に依りピット2の選別残渣Bと脱水残渣Cを攪拌・混合させる制御手段6とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメタンガス化施設から発生する選別残渣や脱水残渣等を焼却物として焼却する焼却炉に適用され、クレーンに依り焼却物を焼却炉へ投入するに際してその性状を均一にする為のクレーン制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ごみ焼却炉に代表される焼却炉への焼却物の投入は、ピットアンドクレーン方式の場合、クレーンにて行われるが、焼却炉の運転を安定させる為に焼却物の性状を均一にする事が重要であった。
ごみの様な焼却物の場合は、性状が様々であり、それを均一にする為にピットでの攪拌・混合を行う事で対応していた。攪拌・混合は、クレーンの操作に依り行われるが、その制御は、焼却物のピット貯留高さを始めとするピットにある焼却物の状態を目安に行われていた(特許文献1〜2参照)。
【0003】
一方、メタンガス化施設から発生する残渣を焼却する施設(焼却炉)にあっては、その残渣の種類が、メタンガス化施設に適する供給物に選別した残りの選別残渣やメタンガス化施設から排出された残渣を脱水して得られた脱水残渣等の複数であると共に、その発熱量等の性状が大きく異なっている。
この為、焼却物がごみの場合の様に、ピット貯留高さ等を指標にしたクレーンの攪拌・混合だけでは、焼却物の性状を均一にする事ができなかった。
そこで、これを補う為に、従来にあっては、例えばクレーンを使用して選別残渣と脱水残渣の各重量を測定し、これをクレーン操作員が把握した上で、攪拌・混合する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−178141公報
【特許文献2】特開2002−295821公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この様に、従来のものは、クレーンの人為的な操作を行わなければ、焼却炉に供給する焼却物の性状を均一にできなかった。
【0006】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、クレーンの人為的な操作を極力なくし、それでいて焼却炉に供給する焼却物の性状を均一にできる様にしたクレーン制御装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクレーン制御装置は、選別機からの選別残渣と脱水機からの脱水残渣を貯留するピットと、ピットの選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合して焼却物にすると共にこの焼却物を焼却炉へ投入するクレーンと、選別機の運転状態を検出する選別機用検出手段と、脱水機の運転状態を検出する脱水機用検出手段と、両検出手段からの各運転状態に依り選別残渣と脱水残渣の混合比率を演算すると共にこれに基づいてクレーンを制御する事に依りピットの選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合させる制御手段と、から構成した事に特徴が存する。
【0008】
選別機からの選別残渣と脱水機からの脱水残渣は、ピットに供給されて貯留される。選別機用検出手段に依り選別機の運転状態が検出されると共に、脱水機用検出手段に依り脱水機の運転状態が検出される。制御手段では、両検出手段からの各運転状態に依り選別残渣と脱水残渣の混合比率が演算される。そして、この混合比率に基づいてクレーンが制御される事に依りピットの選別残渣と脱水残渣が攪拌・混合されると共に、攪拌・混合された焼却物が焼却炉へ投入される。
【0009】
制御手段は、選別残渣と脱水残渣の性状データに依り選別残渣と脱水残渣の混合比率を補正する補正手段を備えているのが好ましい。この様にすれば、選別残渣と脱水残渣の混合精度が大幅に向上し、焼却物の性状をより均一にする事ができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) ピット、クレーン、選別機用検出手段、脱水機用検出手段、制御手段とで構成し、とりわけ選別機の運転状態を検出する選別機用検出手段と、脱水機の運転状態を検出する脱水機用検出手段と、両検出手段からの各運転状態に依り選別残渣と脱水残渣の混合比率を演算すると共にこれに基づいてクレーンを制御する事に依りピットの選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合させる制御手段とを設けたので、メタンガス化施設からの選別残渣と脱水残渣等という性状が異なる焼却物に対して、クレーンの人為的な操作を極力なくしてピットの焼却物の性状を均一にする事ができる。
(2) ピットの焼却物の性状が均一になる事で、焼却炉での運転を安定させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るクレーン制御装置を示す概要図。
【図2】選別機の運転時間と運転負荷の関係例を示すグラフ。
【図3】脱水機の運転時間と運転負荷の関係例を示すグラフ。
【図4】選別残渣と脱水残渣の混合と貯留の要領を示すピットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るクレーン制御装置を示す概要図。図2は、選別機の運転時間と運転負荷の関係例を示すグラフ。図3は、脱水機の運転時間と運転負荷の関係例を示すグラフ。図4は、選別残渣と脱水残渣の混合と貯留の要領を示すピットの平面図である。
【0013】
クレーン制御装置1は、ピット2、クレーン3、選別機用検出手段4、脱水機用検出手段5、制御手段6とからその主要部が構成されて居り、焼却施設を備えたメタンガス化施設50に適用される。
【0014】
メタンガス化施設50は、供給物Aをメタン発酵させるものであり、供給物Aを選別して適したものだけをメタンガス化施設50に供給する選別機51と、メタンガス化施設50から排出された残渣を脱水する脱水機52と、選別機51からの選別残渣Bと脱水機52からの脱水残渣Cを貯留するピット2と、ピット2の選別残渣Bと脱水残渣Cを攪拌・混合して焼却物Dとすると共にこの焼却物Dを焼却炉53へ投入するクレーン3と、クレーン3からの焼却物Dを焼却する焼却炉53とを備えている。
【0015】
クレーン3は、選別残渣Bや脱水残渣Cや焼却物Dを掴持し得るバケット7と、これをピット2内の任意の位置に移動させる為の駆動手段8とを備えている。
【0016】
選別機用検出手段4は、選別機51の運転状態(運転・停止、運転時間、運転負荷等)を検出するものである。
【0017】
脱水機用検出手段5は、選別機51と同様に、脱水機52の運転状態(運転・停止、運転時間、運転負荷等)を検出するものである。
【0018】
制御手段6は、選別機用検出手段4と脱水機用検出手段5からの各運転状態に依り選別残渣Bと脱水残渣Cの混合比率Rを演算すると共にこれに基づいてクレーン3を制御する事に依りピット2の選別残渣Bと脱水残渣Cを攪拌・混合させるものである。
【0019】
制御手段6は、選別残渣Bと脱水残渣Cの性状データ(発熱量、見掛比重等)に依り選別残渣Bと脱水残渣Cの混合比率Rを補正する補正手段9を備えている。
【0020】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
メタンガス化施設50に供給する供給物Aは、選別機51に依り選別されてメタンガス化に適するものだけがメタンガス化施設50に供給される。選別機51に依り選別された残りの選別残渣Bは、ピット2に送られて貯留される。メタンガス化施設50から排出された残渣は、脱水機52に依り脱水されて得られた脱水残渣Cは、ピット2に送られて貯留される。
選別機用検出手段4に依り選別機51の運転状態が検出されると共に、脱水機用検出手段5に依り脱水機52の運転状態が検出される。
制御手段6では、両検出手段4,5からの各運転状態(運転・停止、運転時間、運転負荷等)に依り選別残渣Bと脱水残渣Cの混合比率Rが演算されると共に、補正手段9からの選別残渣Bと脱水残渣Cの性状データ(発熱量、見掛比重等)に依り混合比率Rが補正される。
この様にして得られた混合比率Rに基づいて、制御手段6に依りクレーン3が制御されてピット2の選別残渣Bと脱水残渣Cが攪拌・混合されると共に、攪拌・混合された焼却物Dが焼却炉53へ投入される。
【0021】
つまり、選別機51と脱水機52の各運転状態が選別機用検出手段4と脱水機用検出手段5に依り状態信号として取り出され、それが制御手段6に、クレーン2の攪拌・混合及び投入等の運転制御の為の変数として入力される。
選別機51と脱水機52の各運転状態を認識する事に依ってピット2に供給される選別残渣Bと脱水残渣Cの各量の変化からピット2の状態を常に把握する事が可能となり、更に選別残渣Bと脱水残渣Cの性状データ(発熱量、見掛比重等)を制御手段6に入力して演算する事に依り選別残渣Bと脱水残渣Cの最適な混合比率Rが得られ、焼却物Dの均一性を得る為に必要なピット2の攪拌・混合と、攪拌・混合状態から焼却物Dの性状を把握した上でのクレーン3の投入制御を行う事が可能となる。
その結果、人為的な操作を行わず、或いは最低限にして、クレーン3の運転を行う事が可能となる。又、それに依って焼却炉53の運転状態を継続して安定したものにする事ができる。
【0022】
以下、その具体例に就いて説明する。
ごみ焼却施設(焼却炉)のごみやメタンガス化施設の残渣(選別残渣、脱水残渣)の代表的な物性値としては、表1のものが挙げられる。
【0023】
【表1】

【0024】
表1に示す様に、焼却炉53に依り焼却する通常のごみに比べて、メタンガス化施設50の選別残渣Bや脱水残渣Cの性状は、大きく異なっている。
この為、選別残渣Bや脱水残渣Cを単独で焼却する事は、焼却炉53に於て異常燃焼や燃焼不足を引き起すので、適さなかった。何故ならば、異常燃焼や燃焼不良に依り焼却炉53の焼損やクリンカの発生やダイオキシン類の異常発生を引き起こす恐れがあったからである。
そこで、焼却炉53の運転を安定させる為には、選別残渣Bと脱水残渣Cを如何に適切に混合して一般的なごみに似た焼却に適した性状を保つかが非常に重要であった。
【0025】
図2及び図3は、選別機51及び脱水機52の運転状態の一例として、運転時間と運転負荷の関係例を示している。
選別機51は、供給物Aの供給量に依り運転状態が決定されると共に、脱水機52は、メタンガス化施設50の運転状態に依り運転状態が決定されるので、図2及び図3に示す様に、選別機51と脱水機52の運転状態には、相互関係がない。
従って、ピット2に供給される選別残渣Bと脱水残渣Cの各々の量も時間経過に伴い、個別に両者関係なく、変動する。
【0026】
ここで、クレーン3の制御手段6にて取り扱う単位時間t1 での選別機51と脱水機52の各運転負荷を集計し、その量を各々QS1 、QD1 とする。焼却炉53で焼却する焼却物Dに最適な低位発熱量をHB とすると、脱水残渣QD1 を選別残渣QS1 に攪拌・混合する最適な混合比率Rは、下記の式(1)にて求められる。
【0027】
B =(HS ×QS1 +R×α×HD ×QD1)/(QS1 +QD1)………式(1)

S =選別残渣の低位発熱量の代表値
D =脱水残渣の低位発熱量の代表値
α =脱水残渣の補正係数

前記αに脱水残渣の水分量等の状態変化を反映させる補正値(補正係数)を入力する事で、最適な混合比率Rが求められる。
【0028】
又、脱水機52の運転状態に依っては、図3のt2 時間の様に、運転負荷0、又は極端に低いケースも発生する。その場合には、焼却炉53での燃焼に適した攪拌・混合状態が得られない為、ピット2に一時的に残余となる選別機51の選別残渣を貯留し、脱水機52の運転負荷が増加した段階で(t3 時間の経過後)、貯溜されている選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合する混合比率Rを上記式(1)から求め、攪拌・混合を行う事で焼却炉53での焼却に適した状態を得る。
【0029】
求められた混合比率Rを使用して、実際のピット2の貯留及び攪拌・混合方法は、次の様にして行われる。
先ず、図4に示す如く、選別機51からの選別残渣Bと脱水機52からの脱水残渣Cがピット2へ供給される。
【0030】
供給された脱水残渣Cは、求められた混合比率Rから得られる攪拌・混合の為の必要量R・QD が、クレーン3に依り選別残渣B上に移動され、選別残渣Bと攪拌・混合された上で、焼却炉53へ投入するのに適した焼却物Dとして、ピット2の貯留エリアに一時貯留される。ここで、QD は、脱水機52からピット2への脱水残渣Cの供給量である。
焼却炉53は、適切に攪拌・混合されて一時貯留された焼却物Dだけが供給されるので、安定した運転状態を継続する事が可能である。
この方法に依り脱水残渣Cの必要量R・QD をクレーン3にて移動させる事で、選別残渣Bとの攪拌・混合が行える。
従来、例えばクレーン3を使用して選別残渣Bと脱水残渣Cの各重量を測定し、クレーン操作員が把握した上で、攪拌・混合する作業を行っていたが、その作業工程は不要となり、クレーン3の設備費の低減と、運転工程の削減に依る消費電力の低減を図る事ができる。
【0031】
尚、クレーン制御装置1は、先の例では、メタンガス化施設50に適用したが、これに限らず、例えばこれ以外の施設に適用しても良い。
制御手段6は、先の例では、補正手段9を備えていたが、これに限らず、例えばこれを割愛しても良い。
制御手段6は、先の例では、選別残渣Bと脱水残渣Cとを攪拌・混合させた焼却物Dをピット2の一部に一時貯留する様にしたが、これに限らず、例えば攪拌・混合したものをそのまま焼却炉53に投入する様にしても良い。
【符号の説明】
【0032】
1…クレーン制御装置、2…ピット、3…クレーン、4…選別機用検出手段、5…脱水機用検出手段、6…制御手段、7…バケット、8…駆動手段、9…補正手段、50…メタンガス化施設、51…選別機、52…脱水機、53…焼却炉、A…供給物、B…選別機残渣、C…脱水残渣、D…焼却物、R…混合比率。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別機からの選別残渣と脱水機からの脱水残渣を貯留するピットと、ピットの選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合して焼却物にすると共にこの焼却物を焼却炉へ投入するクレーンと、選別機の運転状態を検出する選別機用検出手段と、脱水機の運転状態を検出する脱水機用検出手段と、両検出手段からの各運転状態に依り選別残渣と脱水残渣の混合比率を演算すると共にこれに基づいてクレーンを制御する事に依りピットの選別残渣と脱水残渣を攪拌・混合させる制御手段と、から構成した事を特徴とするクレーン制御装置。
【請求項2】
制御手段は、選別残渣と脱水残渣の性状データに依り選別残渣と脱水残渣の混合比率を補正する補正手段を備えている請求項1に記載のクレーン制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−230185(P2010−230185A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75353(P2009−75353)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】