説明

クレーン接近警報システム

【課題】クレーンの先端部の位置を正確に求めることのでき、ジブ同士が接近したときには確実に報知することのできるクレーン接近警報システムを提供する。
【解決手段】クレーン1,10のジブ2,12同士が互いに接近したとき報知するクレーン接近警報システムであって、各ジブの先端部に装着したGPSアンテナ3,13と、各GPSアンテナの受信データに基づいて各ジブの先端部の位置を求める演算手段4,6、14,16と、GPS補正情報を配信する配信サーバ22と、 演算手段との間や演算手段と配信サーバとの間でネットワーク23を介して情報の送受信を行う無線カード6,16と、各演算手段は、GPSアンテナの受信データと配信サーバから配信されるGPS補正情報とに基づいて各ジブの先端部の位置を求め、この求めた位置情報を互いにネットワークを介して送受信して、ジブ同士が接近したか否かを判断して、接近したとき報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クレーンのジブ同士が互いに接近したとき報知するクレーン接近警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレーンのジブ同士が互いに接触することを防止するクレーン接近警報システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかるクレーン接近警報システムでは、クレーンのジブの先端部にGPSアンテナを装着し、GPSアンテナが受信する受信信号に基づいてそのジブの先端位置を求め、この求めた位置からジブ同士が互いに接近したか否かを判断し、接近した場合に報知してジブの衝突を未然に防止するものである。
【特許文献1】特開2003−118981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなが、このようなクレーン接近警報システムにあっては、GPSアンテナが受信した受信信号だけからクレーンのジブの先端部の位置を演算して求めるものであるから、その精度が低く、このためその誤差が10メートルと大きく、このため、実際に接近していないのに拘わらず報知されたり、接近しているのに報知されなかったりする等の問題があった。
【0005】
この発明の目的は、クレーンのジブの先端部の位置を正確に求めることのでき、ジブ同士が接近したときには確実に報知することのできるクレーン接近警報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、複数のクレーンのジブ同士が互いに接近したとき報知するクレーン接近警報システムであって、
それぞれの前記ジブの先端部に装着したGPSアンテナと、
各GPSアンテナに対応して設けられるとともに、各GPSアンテナの受信信号に基づいてそれぞれのジブの先端部の位置を求める演算手段と、
GPS補正情報を配信する配信サーバと、
前記複数のクレーンに設けられた演算手段との間や前記配信サーバとの間でネットワークを介して情報の送受信を行う公衆通信手段と、
前記各演算手段は、対応したGPSアンテナの受信データと前記配信サーバから配信されるGPS補正情報とに基づいて対応したジブの先端部の位置を求め、この求めた位置情報を互いに前記配信サーバと前記ネットワークを介して送受信して、ジブ同士が接近したか否かを判断して、接近したとき報知することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記公衆通信手段は、携帯電話であることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、前記GPS補正情報は、RTK固定局の受信データであり、該受信データとともに演算情報として前記RTK固定局の位置データを加えたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、前記クレーン先端位置を検出する移動局GPS装置と、該移動局GPS装置に補正情報を提供する固定局GPS装置と、該固定局GPS装置の補正情報をネットワークを介して前記移動局GPS装置側に配信する配信サーバと、クレーン側にあって前記ネットワークに接続し、前記配信サーバからの前記補正情報を受けるとともにクレーン先端の位置情報を前記配信サーバに送信する制御装置とを備え、前記配信サーバは稼働範囲に重複する複数のクレーンに相手クレーンの先端位置情報を配信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、GPSアンテナの受信信号と配信サーバから配信されるGPS補正情報とに基づいてジブの先端部の位置を求めるものであるから、ジブの先端部の位置を正確に求めることができ、更に、配信サーバを介して可動範囲が重複する各クレーンにジブの位置が配信されるため、ジブ同士が接近したとき確実に報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明のクレーン接近警報システムの実施形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
図1はビルB1の建築現場に設けた2台のクレーン1,10を示したものであり、このクレーン1,10のジブ2,12の先端部にはGPSアンテナ3,13が装着されている。A,Bはジブ2,12の旋回範囲(可動範囲)を示す。
【0013】
図2はクレーン接近警報システム20の構成を示したものであり、このクレーン接近警報システム20は、複数個の人工衛星(図示せず)からの電波を随時受信するGPSアンテナ3,13と、このGPSアンテナ3,13が受信した電波の信号を受信して位置(経度,緯度,高さ)を演算するレシーバ4,14と、RTK固定局(固定局GPS装置)21から送信されるGPS補正情報であって、RTKGPSの場合にはRTK(リアルタイムキネマティック)補正情報を配信する配信サーバ22と、配信サーバ22からのGPS補正情報をレシーバ4,14に送るとともに、演算された位置データに基づいて自己を含む複数のクレーン1,10のジブ2,12の位置を表示するパソコン(パーソナルコンピュータ)などの制御装置5,15と、各制御装置5,15と配信サーバ22との間でネットワーク23を介して情報の送受信を行う無線カード(公衆通信手段)6,16とを備えている。この無線カード6,16の替わりに携帯電話7,17を使用してもよい。そして、レシーバ4と制御装置5とでジブ2の先端部の位置を求める演算手段が構成され、レシーバ14と制御装置15とでジブ12の先端部の位置を求める演算手段が構成される。
【0014】
RTK固定局21は、RTK補正情報と固定局21の位置を示す位置情報とを配信サーバ22へ送信する。
【0015】
また、GPSアンテナ3とレシーバ4とで移動局GPS装置が構成され、GPSアンテナ13とレシーバ14とで移動局GPS装置が構成される。
【0016】
レシーバ4,14や制御装置5,15はクレーン1,10の運転室1A,10A内に設けられている。
【0017】
配信サーバ22は、固定局21からの情報を各クレーン1,10に配信するとともに、各クレーン1,10のジブ2,12の位置情報を可動範囲の重複する相手クレーンに配信する。
【0018】
なお、GPS補正情報および固定局21の位置情報はパソコン5,15を介してレシーバ4,14に送られ、算出されたジブ2,12の位置が再びパソコン5,15に送られてこのパソコン5,15に表示するようにしているが、パソコン5,15側にGPS解析ソフトがある場合には、自己クレーン1,10のGPS受信データとGPS補正情報および固定局21の位置情報を一括して処理するようにすることもできる。
[動 作]
次に、上記のように構成されるクレーン接近警報システム20の動作について説明する。
【0019】
先ず、各クレーン1,10の基準位置(旋回中心位置)S1,S2を制御装置5,15に予め入力して記憶させておく。各クレーン1,10の基準位置S1,S2は、GPSや三角測量を用いて求める。
【0020】
次に、各クレーン1,10の基準位置S1,S2を無線カード6,16によりネットワーク23を介して相手クレーン側へ送信し、各制御装置4,14に他のクレーン10,1の基準位置S2,S1を記憶させる。
【0021】
そして、各GPSアンテナ3,13が複数個の人工衛星(図示せず)から電波を受けると、レシーバ4,14によりクレーン1,10のジブ2,12の先端部の位置データが得られる。この位置データに基づいて経度,緯度,高さのデータが得られる。
【0022】
一方、制御装置5,15は、配信サーバ22が配信するRTK補正情報を無線カード6,16によりネットワーク23を介して受信し、この受信したRTK補正情報と固定局21の位置データに基づいて、レシーバ4,14は、クレーン1,10のジブ2,12の先端部の位置を正確に求める。この実施例では、数ミリの誤差の範囲で求めることができる。
【0023】
また制御装置5は、その正確に求めたクレーン1のジブ2の先端部の位置である補正位置を無線カード6により制御装置15へネットワーク23および配信サーバ22を介して可動範囲の重複する相手側クレーン10に送信する。
【0024】
同様に制御装置15は、その正確に求めたクレーン10のジブ12の先端部の位置である補正位置を無線カード16により制御装置5へネットワーク23および配信サーバ22を介してクレーン1に送信する。
【0025】
そして、制御装置5は、正確に求めたジブ2の位置と、他のクレーン10のジブ12の先端部の位置とに基づいて、図3に示すように制御装置5のディスプレイ8に自己のクレーン1の位置を示す画像G1と他のクレーン10の位置を示す画像G2とを表示する。
【0026】
画像G1は、例えば三角形状に表示され、その底辺の中心部G1aがクレーン1の基準位置S1を示し、頂点G1bがジブ2の先端部位置を示すものであり、常に画像G1の頂点G1bが真上となるように表示する。
【0027】
画像G2は、例えば三角形状に表示され、その底辺の中心部G2aがクレーン10の基準位置S2を示し、頂点G2bがジブ12の先端部位置を示す。
【0028】
各制御装置5,15は、各ジブ2,12の先端部の位置を逐一求めていき、ディスプレイ8,18にその位置を示す画像G1,G2を逐一表示していく。
【0029】
また、ディスプレイ8の下部には、クレーン1のジブ2の先端部の位置とクレーン10のジブ12の先端部の位置との距離を数値で示す表示部8aと、互いの先端部が安全領域にあるか否かを示す表示部8b等とが設けられている。
【0030】
表示部8bは、互いにジブ2,12の先端部が10m以上離れているとき、安全領域にあるとして青色を表示し、その先端部が互いに2m〜10mの範囲内にあるとき注意領域であるとして黄色を表示し、その先端部が互いに2m以内にあるとき危険領域であるとして赤色を表示する。
【0031】
同様に、制御装置15は、正確に求めた補正位置と、他のクレーン1のジブ2の先端部の補正位置とに基づいて、図4に示すように制御装置15のディスプレイ18に自己のクレーン10の位置を示す画像G2と他のクレーン1の位置を示す画像G1とを表示する。
【0032】
そして、制御装置5,15の表示部8b,18bに注意領域が表示されると、音で注意領域に入ったことを報知し、危険領域に入った場合には警告音を発生して、危険であることを報知する。
【0033】
上述のように、RTK補正情報に基づいてレシーバ4,14が得た位置データを補正して、クレーン1,10のジブ2,12の先端部の位置を正確に求めるものであるから、ジブ2,12同士が接近したとき確実に報知することができる。
【0034】
なお、上記実施例は、GPS測定の一つであるRTK測量で構成したが、RTK固定局の位置は、予め各クレーンの制御装置に記憶させておくか、配信サーバにて配信するものとする。
【0035】
RTK測量とは、固定局21とジブ2,12の先端位置関係を測定し、既知である固定局21の位置からジブ2,12の先端位置を求めるものである。このため、固定局21は既知である地上点に設置するのが好ましい。また、各クレーン1,10に置かれる制御装置5,15は個別の識別番号(ID)を有し、配信サーバ上で区別できるようになっている。
【0036】
図5は第2実施例を示したものであり、各ビルB1,B2,B3の建築現場にそれぞれ複数のクレーン(1,10)、(100,110)、(200,210)が設けられており、各クレーン(100,110)、(200,210)のジブ(102,112)、(202,212)の先端部にはGPSアンテナ(103,113)、(203,213)が装着されている。
【0037】
また、各クレーン(100,110)、(200,210)の運転室(100A,110A)、(200A,210A)には、第1実施例と同様に図示しないレシーバと制御装置とが設けられている。そして、各運転室(100A,110A)、(200A,210A)の制御装置によって、第1実施例と同様にしてそれぞれのジブ(102,112)、(202,212)の先端部の位置をRTK補正情報に基づいて正確に求め、この求めた位置をネットワーク23を介して互いに送受信して、相手側のクレーンのディスプレイに第1実施例と同様にクレーンの画像や距離や領域を表示部(図3参照)を表示する。
【0038】
この第2実施例では、各ビルB1,B2,B3は互いに隣接していないので、各ビルB1〜B3のクレーン(1,10)、(100,110)、(200,210)は他のビルのクレーンと干渉しない。このため、クレーン1,10の制御装置5,15と他のビルB2,B3のクレーン(100,110)、(200,210)の制御装置とで互いにジブ(2,12)、(102,112)、(202,212)の先端部の位置のデータを送受信する必要はないが、ビルB1〜B3が互いに隣接して、各ビルB1〜B3のクレーン(1,10)、(100,110)、(200,210)が他のビルのクレーンと干渉してしまう場合には、クレーン(1,10)、(100,110)、(200,210)の各制御装置同士でネットワークを介してジブ(2,12)、(102,112)、(202,212)の先端部の位置データを送受信して、各制御装置のディスプレイにそれぞれのクレーンの画像を表示するとともに、他のクレーンのジブが接近した場合には第1実施例と同様にしてディスプレイに表示するとともに、音で注意や警告を行う。
【0039】
この場合にも、RTK補正情報に基づいて各レシーバが得た位置データを補正して、各クレーン(1,10)、(100,110)、(200,210)のジブ(2,12)、(102,112)、(202,212)の先端部の位置を正確に求めるものであるから、ジブ同士が接近したとき確実に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明に係るクレーン接近警報システムを適用するクレーンを示した説明図である。
【図2】図1に示すクレーン接近警報システムの構成を示した説明図である。
【図3】一方のディスプレイに表示される画像の1例を示した説明図である。
【図4】他方のディスプレイに表示される画像の1例を示した説明図である。
【図5】第2実施例のクレーン接近警報システムを示した説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 クレーン
2 ジブ
3 GPSアンテナ
4 レシーバ
5 制御装置
6 無線カード
11 クレーン
12 ジブ
13 GPSアンテナ
14 レシーバ
15 制御装置
16 無線カード
22 配信サーバ
23 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクレーンのジブ同士が互いに接近したとき報知するクレーン接近警報システムであって、
それぞれの前記ジブの先端部に装着したGPSアンテナと、
各GPSアンテナに対応して設けられるとともに、各GPSアンテナの受信信号に基づいてそれぞれのジブの先端部の位置を求める演算手段と、
GPS補正情報を配信する配信サーバと、
前記複数のクレーンに設けられた演算手段との間や前記配信サーバとの間でネットワークを介して情報の送受信を行う公衆通信手段と、
前記各演算手段は、対応したGPSアンテナの受信データと前記配信サーバから配信されるGPS補正情報とに基づいて対応したジブの先端部の位置を求め、この求めた位置情報を互いに前記配信サーバと前記ネットワークを介して送受信して、ジブ同士が接近したか否かを判断して、接近したとき報知することを特徴とするクレーン接近警報システム。
【請求項2】
前記公衆通信手段は、携帯電話であることを特徴とする請求項1に記載のクレーン接近警報システム。
【請求項3】
前記GPS補正情報は、RTK固定局の受信データであり、該受信データとともに演算情報として前記RTK固定局の位置データを加えたものであることを特徴とする請求項1に記載のクレーン接近警報システム。
【請求項4】
前記クレーン先端位置を検出する移動局GPS装置と、該移動局GPS装置に補正情報を提供する固定局GPS装置と、該固定局GPS装置の補正情報をネットワークを介して前記移動局GPS装置側に配信する配信サーバと、クレーン側にあって前記ネットワークに接続し、前記配信サーバからの前記補正情報を受けるとともにクレーン先端の位置情報を前記配信サーバに送信する制御装置とを備え、前記配信サーバは稼働範囲に重複する複数のクレーンに相手クレーンの先端位置情報を配信することを特徴とするクレーン接近警報システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−84336(P2007−84336A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370323(P2005−370323)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】