クレーン用ジブ
【課題】クレーン用ジブの斜材の座屈強度を向上させる。
【解決手段】主ジブ1(クレーン用ジブ)は、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面で、隣り合う2本の斜材44(44a〜44e)の間を連結する補強材45(45bcおよび45de)を備えている。または、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面で、隣り合う1本の斜材44(44a)および1本の枠材43(43a)の間を連結する補強材45(45a)を備えている。
【解決手段】主ジブ1(クレーン用ジブ)は、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面で、隣り合う2本の斜材44(44a〜44e)の間を連結する補強材45(45bcおよび45de)を備えている。または、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面で、隣り合う1本の斜材44(44a)および1本の枠材43(43a)の間を連結する補強材45(45a)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のジブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1〜3に示すように、移動式クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のジブ(ブームとも呼ばれる)が知られている。ラチス構造のジブにはその長手方向に直交する断面が四角形のものがあり、断面の四隅に配置された主材と、隣り合う主材の間を連結する斜材とを備える。
【0003】
ジブは、吊荷重、ケーブル張力、旋回時の慣性力および風荷重に対して、降伏強度および座屈強度を満足した構造になるよう設計する必要がある。具体的には、ジブの主材および斜材の降伏強度および座屈強度を確保できるように、斜材を設置する間隔、ジブ断面の枠寸、主材、枠材および斜材のパイプ径、パイプ厚、および鋼材を決定する。
【0004】
特に、ジブ(主ジブ)の先端に補ジブが取り付けられた場合(ラッフィング仕様の場合)は、主ジブ中心軸周りのねじりモーメントが主ジブに大きくかかる。このねじりモーメントにより大きな圧縮応力および引張応力が特に斜材に発生する。よって、設計時には斜材の座屈強度を考えることが重要である。
【0005】
特許文献1には下部ジブ基端側面に補強板を設けたジブが記載されている。特許文献2にはジブの上面と側面とで隣り合う斜材同士を補強材で結合したジブが記載されている。特許文献3にはジブ上面の2本の主材を補強部材で連結したジブが記載されている。また、斜材の座屈強度を向上させる方法として、(1)ジブ断面の枠寸の拡大、(2)ジブを構成するパイプ外径の増加、(3)同パイプ厚の増加、(4)同パイプ鋼材の高強度化、および(5)ジブの長手方向における斜材の設置間隔を狭める技術が従来より知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−186888号公報(第1図)
【特許文献2】実公平5−11278号公報(第3図)
【特許文献3】実開昭63−183188号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術には次の問題がある。
特許文献1及び3に記載の技術では、主材は補強され得るが、斜材は補強されない。
特許文献2に記載の技術では、ジブ断面の内側に補強材が設けられる。よって、ジブ断面の内側に機械(例えばロープ巻上げウインチ)等を設置する際に、補強材が設置の妨げとなる場合がある。
【0008】
(1)ジブ断面枠寸を拡大する技術は具体的には、ジブの長手方向に沿って配置される4本の主材間の間隔を広くするものである。これによりジブ中心軸周りのねじりモーメントによって斜材に生じる圧縮荷重を低減し得る。しかし、輸送規制(ジブをトレーラ等に積んで輸送する際の寸法制限)によってジブの幅と高さの寸法は制限されているため、この方法には限界がある。
【0009】
(2)斜材のパイプ外径を増加させると、斜材の細長比が小さくなるため、座屈許容応力を向上させ得る。しかしジブの自重が大幅に増加する。その結果、ガイケーブル張力が同じであるならば、吊荷として吊り上げられる荷重が小さくなり、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0010】
(3)斜材のパイプ厚を増加させると、パイプの断面積が大きくなるため、パイプに発生する応力を減少させ得る。しかし(2)と同様にジブの自重も大幅に増加し、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0011】
(4)斜材の鋼材を高強度化すると、降伏応力が大きくなるため、座屈許容応力も向上させ得る。しかし現存する高強度鋼パイプの上限までしか降伏応力を上げることができず、また高強度鋼を使用すればコストが大きくなる。
【0012】
(5)ジブの長手方向における斜材の設置間隔を狭め、斜材の長さを短くすることで、斜材の有効座屈長が短くなる。その結果、斜材の座屈強度を向上させ得る。しかしこの場合、斜材の本数が増加するので、ジブの自重が大幅に増加し、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0013】
本発明の目的は、斜材の座屈強度を向上させたクレーン用ジブを提供することである。さらに詳しくは、ジブ断面の内側に補強材を設けることなく、ジブの断面を大きくすることなく、ジブの自重を大幅に増加させることなく、斜材の座屈強度を向上させたクレーン用ジブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、起伏可能に移動式クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブであって、ジブ長手方向に直交する断面は四角形であり、前記断面の四隅に配置された主材と、前記断面の四辺に配置された枠材と、隣り合う前記主材の間を当該主材と同一面内において連結する複数の斜材と、倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面で隣り合う2本の前記斜材の間、または、当該面内で隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間、を連結する補強材と、を備えている。
【0015】
このクレーン用ジブは、隣り合う2本の斜材の間を連結する補強材を備えている。または、隣り合う1本の斜材と1本の枠材との間を連結する補強材を備えている。よって、補強材を備えない場合に比べ、斜材の有効座屈長が短くなり、斜材の座屈強度が向上する。すなわち、斜材のパイプ厚やパイプ径を大きくすることで座屈強度を向上させる場合に比べてジブの質量を大幅に増加させることなく、ジブの断面を大きくすることなく、斜材の座屈強度を向上できる。
【0016】
また、このクレーン用ジブは、ジブが倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面に補強材を備えている。すなわちジブの断面の内側に補強材を配置する必要がない。よって、ジブ断面内側への機械の設置を妨げることなく斜材の座屈強度を向上できる。
【0017】
第2の発明は、隣り合う2本の前記斜材のそれぞれの長手方向の中央間、または、隣り合う1本の前記斜材および1本の前記枠材のそれぞれの長手方向の中央間、が前記補強材で連結されている。
【0018】
このクレーン用ジブでは、斜材の長手方向における中央よりも両端側に補強材が設けられている場合に比べ、斜材の座屈強度を向上できる。
【0019】
第3の発明は、1本の前記斜材に前記補強材が1本のみ接続されている(すなわち、ジブの長手方向に隣り合う斜材の間が「1つ飛ばし」で連結されている)。
【0020】
このクレーン用ジブでは、1本の斜材に2本以上の補強材が接続されている場合に比べ、ジブが軽量である。すなわちジブを起伏するのに要する力が小さい。よってクレーンの吊り能力を向上できる。
【0021】
第4の発明は、前記移動式クレーンの本体に直接取り付けられる下部ジブと、前記下部ジブの先端に取り付けられる中間ジブと、前記中間ジブの先端に取り付けられる上部ジブと、を備え、前記補強部材は、前記下部ジブを構成する前記斜材に取り付けられている。さらに、第4の発明は、第1の発明に係るクレーン用ジブである。
【0022】
ジブの中心軸周りのねじりモーメントがジブにかかった場合、上部ジブや中間ジブに比べ、下部ジブの上面および下面に特に大きな負荷がかかる。そのため、下部ジブの上面および下面を構成する斜材の座屈強度がジブの吊り荷重を律則する場合がある(斜材の座屈強度がボトルネックとなる場合がある)。このクレーン用ジブでは、この下部ジブの上面および下面のうち少なくとも何れか一方の面の斜材に補強材を備えている。よって、下部ジブの側面、上部ジブ、または中間ジブに補強材を取り付けた場合に比べ、より少ない補強材によりジブの吊り荷重を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば以下の効果が得られる。
隣り合う2本の前記斜材の間を連結する補強材を備えている、または、隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間を連結する補強材を備えているので、補強材を備えない場合に比べ、斜材の有効座屈長が短くなり、斜材の座屈強度が向上する。すなわち、ジブの質量を大幅に増加させることなく、ジブの断面を大きくすることなく、斜材の座屈強度を向上できる。
また、ジブが倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面に補強材を備えているので、ジブ断面内側への機械の設置を妨げることなく斜材の座屈強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】クレーンの全体図である。
【図2】クレーンの本体とジブとの結合部分周辺の側面図である。
【図3】クレーンの本体とジブとの結合部分周辺の平面図である。
【図4】主ジブの斜視図である。
【図5】ねじり荷重を受ける角柱の斜視図である。
【図6】両端固定梁モデルを示す図である。
【図7】変形例1に係る中間ジブを示す斜視図である。
【図8】変形例2に係る図7相当図である。
【図9】変形例3に係る図7相当図である。
【図10】変形例4に係る図7相当図である。
【図11】変形例5に係る補強材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るクレーン用ジブの実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は主ジブ1(クレーン用ジブ)を備えたクレーン10の全体図である。図2はクレーン10の本体11と主ジブ1との結合部周辺の側面図である。図3はクレーン10の本体11と主ジブ1との結合部分周辺の平面図であり、F3(図2参照)矢視図である。図4は主ジブ1を示す斜視図であり、下面1B側から見た図である。以下、図1〜図4を参照してクレーン10の構成について詳細に説明する。
【0027】
クレーン10は、図1及び図2に示すように、本体11と、本体11に取り付けられるジブ20とを備える、移動式クレーンである。本体11は、下部走行体12と、下部走行体12の上に旋回ベアリング13を介して設置される上部旋回体14とを備える。また、ジブ20の主ジブ1の下部ジブ33の上面1Uまたは下面1Bの斜材44には、図4に示すように、補強材45が取り付けられる。
【0028】
下部走行体12は、図1及び図2に示すように、クローラ12aを備え、クレーン10を走行させる。なお下部走行体12をホイール走行式(図示なし)としても良い。
【0029】
上部旋回体14は、図1に示す運転室14a(図2では図示なし)、図示しないポンプ装置やエンジン等が設けられ、下部走行体12に対して旋回可能である。この上部旋回体14の前端部にはジブ20の基端(主ジブ1の基端)が取り付けられる。更に詳しくは、図3に示すように、上部旋回体14の前端部の4枚のブラケット14bで、主ジブ1の基端部の2枚のブラケット1bを挟み、ピン14cで固定される。図2に示すように、このピン14cを中心に主ジブ1(ジブ20)は起伏可能である。
【0030】
ジブ20は、図1に示すように、クレーン10の本体11に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブである。このジブ20は本体11に直接取り付けられる主ジブ1と、主ジブ1の先端に取り付けられる補ジブ22とを備える。また、補ジブ22の先端にはワイヤロープを介してフック22fが吊り下げられ、このフック22fに吊荷21を取り付けることができる。
【0031】
補ジブ22は、本体11の手前にある障害物(図示なし)を越えて吊荷21を運ぶ作業を行うため、また本体11から吊荷21までの距離(作業半径)を大きくするために、主ジブ1の先端に取り付けられる。この補ジブ22は、主ジブ1の先端を中心として起伏可能である。なお、補ジブ22の構造は後述する主ジブ1の構造と同様であるので説明を省略する。
【0032】
主ジブ1(クレーン用ジブ)は、クレーン10の本体11に起伏可能に取り付けられる。この主ジブ1は長手方向に分割可能である。具体的には主ジブ1は、本体11に直接取り付けられる下部ジブ33と、下部ジブ33の先端に取り付けられる中間ジブ32と、中間ジブ32の先端に取り付けられる上部ジブ31と、を備える。下部ジブ33と中間ジブ32とは連結部33cで連結され、中間ジブ32と上部ジブ31とは連結部31cで連結される。
【0033】
上部ジブ31は、先端部にアタッチメント取付部31aを備え、このアタッチメント取付部31aに補ジブ22の基端が取り付けられる。この上部ジブ31の先端にワイヤロープを介してフック31fが吊り下げられ、このフック31fに吊荷21を取り付けることができる。
【0034】
中間ジブ32は、長手方向に分割可能である。具体的には、それぞれ直方体状の中間ジブ32a及び32bの2つを長手方向に連結したものが中間ジブ32である。中間ジブ32aと32bとは連結部32cで連結される。また、中間ジブ32bを取り除いて主ジブ1を短くすることや、中間ジブ32aと32bとの間に図示しない直方体状の中間ジブを追加して主ジブ1を長くすることが可能である。
【0035】
下部ジブ33は、図2に示すように、主ジブ1のうち、本体11の上部旋回体14に直接取り付けられる部分である。図2及び図4に示すように、下部ジブ33は、ジブ長手方向に直交する断面の高さH’(図4参照)が、先端側から基端側(根元)に向かって次第に細くなっている。そして下部ジブ33の基端では同断面の高さは最小となる。また、下部ジブ33の同断面の幅B(図4参照)は一定である。下部ジブ33の上面1Uには例えばロープ巻上げウインチ等の機械が設置され(図1参照)、これらの機械は下部ジブ33の断面の内側にも配置される。
【0036】
また、主ジブ1は、図4に示すように、ジブ長手方向に直交する断面が四角形であり、この断面の四隅に配置された主材42またはこの断面の四辺に配置された枠材43と、隣りあう主材42の間を連結する複数の斜材44とを備える(図4に図示していない上部ジブ31についても同様である)。なお、図1に示す主ジブ1を倒伏した状態(倒した状態。主ジブ1の長手方向が水平方向と一致する状態)において、上の面を上面1U、下の面を下面1B、左右方向に対向する2面を側面1Sと言う。
【0037】
主材42は、図4に示すように、ジブ長手方向に直交する断面の四隅に配置されるパイプである。すなわち、下部ジブ33は長手方向に延在する三角柱状であるが、この三角柱の各辺のうち、ほぼ長手方向に沿う4辺の位置に配置されるのが主材42である。また中間ジブ32は直方体状であるが、この直方体の各辺のうち長手方向に沿う4辺の位置に配置されるのが主材42である。
【0038】
枠材43は、ジブ長手方向に直交する断面の四辺に配置されるパイプである。すなわち、上部ジブ31(図1参照)、中間ジブ32、及び下部ジブ33、の長手方向における両端部に配置されるのが枠材43である。
【0039】
斜材44は、隣り合う主材42の間を連結する複数本のパイプである。この斜材44は主ジブ1の上面1U、下面1B、及び側面1S上に配置される。斜材44の長手方向は、主ジブ1の長手方向に対して斜め方向に配置される(図4に示す角度φは例えば45度である)。
下部ジブ33の下面1Bには例えば5本の斜材44(下部ジブ33の先端側から順に、斜材44a〜44e)が設けられる。また下部ジブ33の側面1Sには斜材44sが設けられる。
【0040】
補強材45は、斜材44の座屈強度を向上させるために設けられる。具体的には、補強材45は、下面1Bで隣り合う2本の斜材44の間を連結する。なお下面1Bに代えて、または下面1Bに加えて、上面1Uに補強材45を設けることもできる(図示なし)。この補強材45は、隣り合う2本の斜材44のそれぞれの長手方向の中央間を連結する。さらに具体的には、下部ジブ33の下面1Bの先端側の枠材43aの長手方向の中央と、斜材44aの長手方向の中央と、を補強材45aで連結する。斜材44bの長手方向の中央と、斜材44cの長手方向の中央と、を補強材45bcで連結する。また同様に斜材44dと44eとを補強材45deで連結する。
【0041】
また、この補強材45は、1本の斜材44に対して1本のみ接続されている。言い換えれば主ジブ1の長手方向において「1つ飛ばし」で斜材44間を補強材45で連結する。具体的には例えば、斜材44aと44bとの間は補強材45を連結せず、斜材44bと44cとの間は補強材45bcで連結され、斜材44cと44dとの間は補強材45を連結していない。
【0042】
また、この補強材45のバネ定数は21π2EI/L3以上である。これにより、補強材45の座屈を抑制できる。
【0043】
次に、上述した位置に補強材45を設けたことについて、さらに説明する。
【0044】
まず、主ジブ1の先端に補ジブ22を取り付けたジブ20(例えばラッフィング仕様)では、主ジブ1の中心軸周りのねじりが特に問題となることについて説明する。
【0045】
図1に示すように、主ジブ1に補ジブ22を取り付けない仕様のクレーンの場合の、主ジブ1の中心軸と吊荷位置(主ジブ1の先端)との距離をL1とする。主ジブ1の中心軸から補ジブ22の重心22gの位置までのオフセット距離をL2とする。主ジブ1の中心軸から吊荷位置(補ジブ22の先端)までのオフセット距離をL3とする。このとき、L2及びL3は、L1に比べて非常に大きい。
【0046】
また、補ジブ22が受ける旋回慣性力をFj、吊荷21が受ける旋回慣性力をFl、補ジブ22が受ける風荷重をFwj、吊荷21が受ける風荷重をFwlとする。
すると、主ジブ1に加わるねじり荷重は次のようになる。補ジブ22を備えないクレーンでは旋回慣性力によりFL×L1、風荷重によりFwL×L1、となる。一方で補ジブ22を備えるクレーンでは旋回慣性力によりFj×L2+FL×L3、風荷重によりFwj×L2+FwL×L3となる。
【0047】
よって、主ジブ1が受ける、主ジブ1の中心軸周りのねじりモーメントは次のようになる。補ジブ22を備えない場合、ねじりモーメントT1は、T1=(Fwl+Fl)×L1となる。一方で補ジブ22を備える場合、ねじりモーメントT2は、T2=(Fwj+Fj)×L2+(Fwl+Fl)×L3となる。L1<<L2,L3であるため、上記のねじり荷重は補ジブ22を備えるクレーン(ラッフィング仕様)の方が大幅に大きくなる。
【0048】
次に、主ジブ1がねじり荷重を受けた場合、斜材44にかかる応力が問題となることについて説明する。
一般に、図5に示す角柱120に、角柱120の中心軸周りのねじり荷重を加えると、角柱120の側面(中心軸を囲む4つの面)に、中心軸に対して45度の角度で圧縮応力と引張応力とが生じる。これと同様に、図4に示すラチス構造の主ジブ1に、中心軸周りのねじり荷重を加えると、中心軸に対して角度φ(例えば約45度)で配置された斜材44に圧縮応力と引張応力とが生じる。したがって、主ジブ1のねじりに対する強度を考える場合は、特に斜材44の座屈強度を考える必要がある。
【0049】
次に、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bに発生する応力が特に問題となることについて説明する。
【0050】
図4に示すように、中間ジブ32の断面の高さHは一定である。一方で下部ジブ33の断面の高さH’は先端から基端(根元)に向かって次第に小さく(細く)なっている。下部ジブ33が受けるねじりモーメントは中心軸方向のどの位置でも一定であるので、ねじりモーメントによって下部ジブ33に発生する応力は断面の高さが最小となる下部ジブ33の基端(根元)の上面1U及び下面1Bで最大となる。
【0051】
さらに詳しくは次のように考えられる。主ジブ1が受けるトルクは上面1U、下面1B、および2つの側面1Sの計4面で受けるが、発生応力が最大となる状況を考えるために、(1)上面1U及び下面1Bだけでトルクを受ける場合、(2)側面1Sだけでトルクを受ける場合、を仮定して応力を計算する。なお図4には補強材45を示しているが、ここでは補強材45はないものとして計算する。ここで、ねじりモーメントをT、斜材44の角度(上面1U及び下面1Bにおける左右方向に対する斜材44の角度、および、側面1Sにおける上下方向に対する斜材44の角度)をφ、斜材44の断面積(1本のパイプの断面積)をA、ジブ20の幅をBとする。また、中間ジブ32の側面1Sの斜材44に発生する応力をσ1、中間ジブ32の上面1U及び下面1Bに発生する応力をσ2、下部ジブ33の側面1Sの斜材44に発生する応力をσ3、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bの斜材44に発生する応力をσ4とする。このときのσ1〜σ4を次の数式1〜4に示す。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
【0056】
ねじりモーメントT、角度φ、および断面積Aが一定として、応力σ1〜σ4を比較すると、断面の高さH’が小さい場合(H’<Bの場合)のσ4が最も大きくなる。これにより、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bの斜材44を補強することが効果的であることがわかる。
【0057】
次に、斜材44の長手方向の中央部に補強材45を取り付ければ効果的であることについて説明する。
【0058】
一般に、梁の座屈強度Pcrは次の数式5で表せる。なお、kは座屈係数、πは円周率、Eは梁(斜材)のヤング率、Iは梁(斜材)の断面二次モーメント、Lは梁(斜材)の長さである。
【0059】
【数5】
【0060】
ここで、両端固定梁の長手方向のいずれかの位置を支持する場合、図6(b)に示すように、梁の長手方向の中央を支持したときに梁の座屈係数kが最大となる。このときの座屈係数kは、k=4×2.0457である。一方で図6(a)に示すように、両端固定梁の長手方向のいずれの位置でも梁を支持をしない場合(同長手方向の中央から最も離れた位置で梁を支持した場合、と言い換えることができる)、梁の座屈係数kはk=4である。よって、E、I、Lを一定としたとき、梁の長手方向の中央部を支持した両端固定梁の座屈強度Pcrは、梁を支持しない場合に対して約2倍になる。また、同中央部を支持した場合、同中央部よりも端部側で支持した場合よりも座屈強度Pcrは大きくなる。
【0061】
(本実施形態のクレーン用ジブの特徴)
本実施形態の主ジブ1(クレーン用ジブ)には以下の特徴がある。
【0062】
この主ジブ1は、図4に示すように、隣り合う2本の斜材44(44a〜44e)の間を連結する補強材45(45bcおよび45de)を備えている。または、隣り合う1本の斜材44(44a)と1本の枠材43(43a)との間を連結する補強材45(45a)を備えている。よって、補強材45を備えない場合に比べ、斜材44の有効座屈長が短くなり、斜材44の座屈強度が向上する。すなわち、斜材44のパイプ厚やパイプ径を大きくすることで座屈強度を向上させる場合に比べて主ジブ1の質量を大幅に増加させることなく、さらに主ジブ1の断面を大きくすることなく(輸送制限幅内の寸法のままで)、斜材44の座屈強度を向上できる。
【0063】
また、この主ジブ1は、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面に補強材45を備えている。すなわち主ジブ1の断面の内側に補強材45を配置する必要がない。よって、主ジブ1断面内側への機械(例えばロープ巻上げウインチ)の設置を妨げることなく斜材44の座屈強度を向上できる。
【0064】
また、この主ジブ1では、同一面内で隣り合う2本の斜材44のそれぞれの長手方向の中央間、または、同一面内で隣り合う1本の斜材44(44a)および1本の枠材43(43a)のそれぞれの長手方向の中央間、が補強材45で連結されている。よって、斜材44の長手方向における中央よりも両端側に補強材45が設けられている場合に比べ、斜材44の座屈強度を向上できる。
【0065】
また、この主ジブ1では、1本の斜材44に補強材45が1本のみ接続されている(すなわち、主ジブ1の長手方向に隣り合う斜材44の間が「1つ飛ばし」で連結されている)。よって、1本の斜材44に2本以上の補強材45が接続されている場合に比べ、主ジブ1が軽量である。すなわち主ジブ1を起伏するのに要する力が小さい。よってクレーン10の吊り能力を向上できる。
【0066】
また、主ジブ1の中心軸周りのねじりモーメントが主ジブ1にかかった場合、上部ジブ31や中間ジブ32に比べ、下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bに特に大きな負荷がかかる(斜材44に応力σ4がかかる)。また、左右方向の力が主ジブ1にかかったとき(面外曲げを受けたとき)にも下部ジブ33に大きな負荷がかかる。そのため、下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bを構成する斜材44の座屈強度が主ジブ1の吊り荷重を律則する場合がある。そこで、この主ジブ1では、この下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bのうち少なくとも何れか一方の面の斜材44に補強材45を備えている。よって、下部ジブ33の側面1S、上部ジブ31、または中間ジブ32に補強材45を取り付けた場合に比べ、より少ない補強材45により主ジブ1の吊り荷重を向上できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0068】
(変形例1)
図7に変形例1に係る主ジブ1の中間ジブ32を示す。図4に示す上記実施形態では下部ジブ33の斜材44に補強材45を取り付けたが、図7に示すように中間ジブ32の斜材44に補強材45を取り付けても本発明を適用できる。なお、上記実施形態と同様に、主ジブ1の軸方向に「1つ飛ばし」で補強材45が取り付けられる。また、図7では下面1Bに補強材45を取り付けた形態を示しているが、上面1Uに補強材45を取り付けても良い。
【0069】
(変形例2)
図8に変形例2に係る主ジブ1の中間ジブ32を示す。図7に示す変形例1における「1つ飛ばし」を、図8に示すように主ジブ1の長手方向に1つ分ずらした構成としても本発明を適用できる。さらに詳しくは、変形例1において補強材45を取り付けた位置に補強材45を取り付けず、変形例1において補強材45を飛ばした(取り付けなかった)位置に補強材を取り付けても良い。
【0070】
(変形例3)
図9に変形例3に係る主ジブ1を示す。図4に示す上記実施形態では主ジブ1の左右方向の中央に補強材45を配置したが、図9に示すように主ジブ1の左右方向の中央からずらした位置に補強材45を配置しても本発明を適用できる。すなわち、斜材44(または枠材43)の長手方向の中央間を補強材45で連結せずに、斜材44(または枠材43)の長手方向の中央よりも端部側の位置を補強材45で連結しても良い。また、主ジブ1の先端側から基端側に向かって、主ジブ1の左右方向の中央に対して左右に交互に補強材45を配置しても良い。
【0071】
(変形例4)
図10に変形例4に係る主ジブ1を示す。図4に示す上記実施形態では「1つ飛ばし」で補強材45を取り付けたが、「1つ飛ばし」にしなくても本発明を適用できる。すなわち図10に示すように1本の斜材に2本の補強材45を取り付けても良い。さらに主ジブ1の先端側から基端側へ向かって、主ジブ1の左右方向の中央に対して左右に交互に補強材45を配置しても良い。
【0072】
(変形例5)
上記実施形態で示した補強材45は様々な形状にすることができる。例えば図11(a)〜(e)に示すように、平板45A、丸パイプ45B、角パイプ45C、アングル材45D、または、Cチャンネル材45Eなどとすることができる。
【0073】
また例えば、上記の変形例2〜4(図7〜11)に示した補強材45の配置を下部ジブ33(図4参照)に適用しても本発明を適用できる。
【0074】
また例えば上記実施形態に示さないクレーンにも本発明を適用できる。
例えば、図1に示す上記実施形態では主ジブ1と補ジブ22とを備えるクレーン10を示したが、補ジブ22を備えないクレーンにも本発明を適用できる。
また例えば、上記実施形態では主ジブ1は起伏可能であったが、主ジブ1が鉛直方向に配置され起伏しないクレーン(タワークレーン)にも本発明を適用できる。
また例えば、上記実施形態では補ジブ22は主ジブ1に対して起伏可能であったが、主ジブ1のみ起伏して補ジブ22は起伏しないクレーンにも本発明を適用できる。
【0075】
また例えば上記実施形態および変形例では下部ジブ33または中間ジブ32に補強材45を設置したが、上部ジブ31(図1参照)に補強材45を設置しても本発明を適用できる。
【0076】
また例えば、上記実施形態では上面1Uおよび下面1Bの少なくともいずれかに補強材45を設けたが、さらに側面1Sに補強材45を設けても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 主ジブ(クレーン用ジブ)
1U 上面
1B 下面
10 クレーン
11 本体
31 上部ジブ
32 中間ジブ
33 下部ジブ
42 主材
43 枠材
44 斜材
45 補強材
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のジブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1〜3に示すように、移動式クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のジブ(ブームとも呼ばれる)が知られている。ラチス構造のジブにはその長手方向に直交する断面が四角形のものがあり、断面の四隅に配置された主材と、隣り合う主材の間を連結する斜材とを備える。
【0003】
ジブは、吊荷重、ケーブル張力、旋回時の慣性力および風荷重に対して、降伏強度および座屈強度を満足した構造になるよう設計する必要がある。具体的には、ジブの主材および斜材の降伏強度および座屈強度を確保できるように、斜材を設置する間隔、ジブ断面の枠寸、主材、枠材および斜材のパイプ径、パイプ厚、および鋼材を決定する。
【0004】
特に、ジブ(主ジブ)の先端に補ジブが取り付けられた場合(ラッフィング仕様の場合)は、主ジブ中心軸周りのねじりモーメントが主ジブに大きくかかる。このねじりモーメントにより大きな圧縮応力および引張応力が特に斜材に発生する。よって、設計時には斜材の座屈強度を考えることが重要である。
【0005】
特許文献1には下部ジブ基端側面に補強板を設けたジブが記載されている。特許文献2にはジブの上面と側面とで隣り合う斜材同士を補強材で結合したジブが記載されている。特許文献3にはジブ上面の2本の主材を補強部材で連結したジブが記載されている。また、斜材の座屈強度を向上させる方法として、(1)ジブ断面の枠寸の拡大、(2)ジブを構成するパイプ外径の増加、(3)同パイプ厚の増加、(4)同パイプ鋼材の高強度化、および(5)ジブの長手方向における斜材の設置間隔を狭める技術が従来より知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−186888号公報(第1図)
【特許文献2】実公平5−11278号公報(第3図)
【特許文献3】実開昭63−183188号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術には次の問題がある。
特許文献1及び3に記載の技術では、主材は補強され得るが、斜材は補強されない。
特許文献2に記載の技術では、ジブ断面の内側に補強材が設けられる。よって、ジブ断面の内側に機械(例えばロープ巻上げウインチ)等を設置する際に、補強材が設置の妨げとなる場合がある。
【0008】
(1)ジブ断面枠寸を拡大する技術は具体的には、ジブの長手方向に沿って配置される4本の主材間の間隔を広くするものである。これによりジブ中心軸周りのねじりモーメントによって斜材に生じる圧縮荷重を低減し得る。しかし、輸送規制(ジブをトレーラ等に積んで輸送する際の寸法制限)によってジブの幅と高さの寸法は制限されているため、この方法には限界がある。
【0009】
(2)斜材のパイプ外径を増加させると、斜材の細長比が小さくなるため、座屈許容応力を向上させ得る。しかしジブの自重が大幅に増加する。その結果、ガイケーブル張力が同じであるならば、吊荷として吊り上げられる荷重が小さくなり、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0010】
(3)斜材のパイプ厚を増加させると、パイプの断面積が大きくなるため、パイプに発生する応力を減少させ得る。しかし(2)と同様にジブの自重も大幅に増加し、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0011】
(4)斜材の鋼材を高強度化すると、降伏応力が大きくなるため、座屈許容応力も向上させ得る。しかし現存する高強度鋼パイプの上限までしか降伏応力を上げることができず、また高強度鋼を使用すればコストが大きくなる。
【0012】
(5)ジブの長手方向における斜材の設置間隔を狭め、斜材の長さを短くすることで、斜材の有効座屈長が短くなる。その結果、斜材の座屈強度を向上させ得る。しかしこの場合、斜材の本数が増加するので、ジブの自重が大幅に増加し、クレーンとしての吊能力が低くなる。
【0013】
本発明の目的は、斜材の座屈強度を向上させたクレーン用ジブを提供することである。さらに詳しくは、ジブ断面の内側に補強材を設けることなく、ジブの断面を大きくすることなく、ジブの自重を大幅に増加させることなく、斜材の座屈強度を向上させたクレーン用ジブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、起伏可能に移動式クレーンの本体に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブであって、ジブ長手方向に直交する断面は四角形であり、前記断面の四隅に配置された主材と、前記断面の四辺に配置された枠材と、隣り合う前記主材の間を当該主材と同一面内において連結する複数の斜材と、倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面で隣り合う2本の前記斜材の間、または、当該面内で隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間、を連結する補強材と、を備えている。
【0015】
このクレーン用ジブは、隣り合う2本の斜材の間を連結する補強材を備えている。または、隣り合う1本の斜材と1本の枠材との間を連結する補強材を備えている。よって、補強材を備えない場合に比べ、斜材の有効座屈長が短くなり、斜材の座屈強度が向上する。すなわち、斜材のパイプ厚やパイプ径を大きくすることで座屈強度を向上させる場合に比べてジブの質量を大幅に増加させることなく、ジブの断面を大きくすることなく、斜材の座屈強度を向上できる。
【0016】
また、このクレーン用ジブは、ジブが倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面に補強材を備えている。すなわちジブの断面の内側に補強材を配置する必要がない。よって、ジブ断面内側への機械の設置を妨げることなく斜材の座屈強度を向上できる。
【0017】
第2の発明は、隣り合う2本の前記斜材のそれぞれの長手方向の中央間、または、隣り合う1本の前記斜材および1本の前記枠材のそれぞれの長手方向の中央間、が前記補強材で連結されている。
【0018】
このクレーン用ジブでは、斜材の長手方向における中央よりも両端側に補強材が設けられている場合に比べ、斜材の座屈強度を向上できる。
【0019】
第3の発明は、1本の前記斜材に前記補強材が1本のみ接続されている(すなわち、ジブの長手方向に隣り合う斜材の間が「1つ飛ばし」で連結されている)。
【0020】
このクレーン用ジブでは、1本の斜材に2本以上の補強材が接続されている場合に比べ、ジブが軽量である。すなわちジブを起伏するのに要する力が小さい。よってクレーンの吊り能力を向上できる。
【0021】
第4の発明は、前記移動式クレーンの本体に直接取り付けられる下部ジブと、前記下部ジブの先端に取り付けられる中間ジブと、前記中間ジブの先端に取り付けられる上部ジブと、を備え、前記補強部材は、前記下部ジブを構成する前記斜材に取り付けられている。さらに、第4の発明は、第1の発明に係るクレーン用ジブである。
【0022】
ジブの中心軸周りのねじりモーメントがジブにかかった場合、上部ジブや中間ジブに比べ、下部ジブの上面および下面に特に大きな負荷がかかる。そのため、下部ジブの上面および下面を構成する斜材の座屈強度がジブの吊り荷重を律則する場合がある(斜材の座屈強度がボトルネックとなる場合がある)。このクレーン用ジブでは、この下部ジブの上面および下面のうち少なくとも何れか一方の面の斜材に補強材を備えている。よって、下部ジブの側面、上部ジブ、または中間ジブに補強材を取り付けた場合に比べ、より少ない補強材によりジブの吊り荷重を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば以下の効果が得られる。
隣り合う2本の前記斜材の間を連結する補強材を備えている、または、隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間を連結する補強材を備えているので、補強材を備えない場合に比べ、斜材の有効座屈長が短くなり、斜材の座屈強度が向上する。すなわち、ジブの質量を大幅に増加させることなく、ジブの断面を大きくすることなく、斜材の座屈強度を向上できる。
また、ジブが倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面に補強材を備えているので、ジブ断面内側への機械の設置を妨げることなく斜材の座屈強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】クレーンの全体図である。
【図2】クレーンの本体とジブとの結合部分周辺の側面図である。
【図3】クレーンの本体とジブとの結合部分周辺の平面図である。
【図4】主ジブの斜視図である。
【図5】ねじり荷重を受ける角柱の斜視図である。
【図6】両端固定梁モデルを示す図である。
【図7】変形例1に係る中間ジブを示す斜視図である。
【図8】変形例2に係る図7相当図である。
【図9】変形例3に係る図7相当図である。
【図10】変形例4に係る図7相当図である。
【図11】変形例5に係る補強材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るクレーン用ジブの実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は主ジブ1(クレーン用ジブ)を備えたクレーン10の全体図である。図2はクレーン10の本体11と主ジブ1との結合部周辺の側面図である。図3はクレーン10の本体11と主ジブ1との結合部分周辺の平面図であり、F3(図2参照)矢視図である。図4は主ジブ1を示す斜視図であり、下面1B側から見た図である。以下、図1〜図4を参照してクレーン10の構成について詳細に説明する。
【0027】
クレーン10は、図1及び図2に示すように、本体11と、本体11に取り付けられるジブ20とを備える、移動式クレーンである。本体11は、下部走行体12と、下部走行体12の上に旋回ベアリング13を介して設置される上部旋回体14とを備える。また、ジブ20の主ジブ1の下部ジブ33の上面1Uまたは下面1Bの斜材44には、図4に示すように、補強材45が取り付けられる。
【0028】
下部走行体12は、図1及び図2に示すように、クローラ12aを備え、クレーン10を走行させる。なお下部走行体12をホイール走行式(図示なし)としても良い。
【0029】
上部旋回体14は、図1に示す運転室14a(図2では図示なし)、図示しないポンプ装置やエンジン等が設けられ、下部走行体12に対して旋回可能である。この上部旋回体14の前端部にはジブ20の基端(主ジブ1の基端)が取り付けられる。更に詳しくは、図3に示すように、上部旋回体14の前端部の4枚のブラケット14bで、主ジブ1の基端部の2枚のブラケット1bを挟み、ピン14cで固定される。図2に示すように、このピン14cを中心に主ジブ1(ジブ20)は起伏可能である。
【0030】
ジブ20は、図1に示すように、クレーン10の本体11に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブである。このジブ20は本体11に直接取り付けられる主ジブ1と、主ジブ1の先端に取り付けられる補ジブ22とを備える。また、補ジブ22の先端にはワイヤロープを介してフック22fが吊り下げられ、このフック22fに吊荷21を取り付けることができる。
【0031】
補ジブ22は、本体11の手前にある障害物(図示なし)を越えて吊荷21を運ぶ作業を行うため、また本体11から吊荷21までの距離(作業半径)を大きくするために、主ジブ1の先端に取り付けられる。この補ジブ22は、主ジブ1の先端を中心として起伏可能である。なお、補ジブ22の構造は後述する主ジブ1の構造と同様であるので説明を省略する。
【0032】
主ジブ1(クレーン用ジブ)は、クレーン10の本体11に起伏可能に取り付けられる。この主ジブ1は長手方向に分割可能である。具体的には主ジブ1は、本体11に直接取り付けられる下部ジブ33と、下部ジブ33の先端に取り付けられる中間ジブ32と、中間ジブ32の先端に取り付けられる上部ジブ31と、を備える。下部ジブ33と中間ジブ32とは連結部33cで連結され、中間ジブ32と上部ジブ31とは連結部31cで連結される。
【0033】
上部ジブ31は、先端部にアタッチメント取付部31aを備え、このアタッチメント取付部31aに補ジブ22の基端が取り付けられる。この上部ジブ31の先端にワイヤロープを介してフック31fが吊り下げられ、このフック31fに吊荷21を取り付けることができる。
【0034】
中間ジブ32は、長手方向に分割可能である。具体的には、それぞれ直方体状の中間ジブ32a及び32bの2つを長手方向に連結したものが中間ジブ32である。中間ジブ32aと32bとは連結部32cで連結される。また、中間ジブ32bを取り除いて主ジブ1を短くすることや、中間ジブ32aと32bとの間に図示しない直方体状の中間ジブを追加して主ジブ1を長くすることが可能である。
【0035】
下部ジブ33は、図2に示すように、主ジブ1のうち、本体11の上部旋回体14に直接取り付けられる部分である。図2及び図4に示すように、下部ジブ33は、ジブ長手方向に直交する断面の高さH’(図4参照)が、先端側から基端側(根元)に向かって次第に細くなっている。そして下部ジブ33の基端では同断面の高さは最小となる。また、下部ジブ33の同断面の幅B(図4参照)は一定である。下部ジブ33の上面1Uには例えばロープ巻上げウインチ等の機械が設置され(図1参照)、これらの機械は下部ジブ33の断面の内側にも配置される。
【0036】
また、主ジブ1は、図4に示すように、ジブ長手方向に直交する断面が四角形であり、この断面の四隅に配置された主材42またはこの断面の四辺に配置された枠材43と、隣りあう主材42の間を連結する複数の斜材44とを備える(図4に図示していない上部ジブ31についても同様である)。なお、図1に示す主ジブ1を倒伏した状態(倒した状態。主ジブ1の長手方向が水平方向と一致する状態)において、上の面を上面1U、下の面を下面1B、左右方向に対向する2面を側面1Sと言う。
【0037】
主材42は、図4に示すように、ジブ長手方向に直交する断面の四隅に配置されるパイプである。すなわち、下部ジブ33は長手方向に延在する三角柱状であるが、この三角柱の各辺のうち、ほぼ長手方向に沿う4辺の位置に配置されるのが主材42である。また中間ジブ32は直方体状であるが、この直方体の各辺のうち長手方向に沿う4辺の位置に配置されるのが主材42である。
【0038】
枠材43は、ジブ長手方向に直交する断面の四辺に配置されるパイプである。すなわち、上部ジブ31(図1参照)、中間ジブ32、及び下部ジブ33、の長手方向における両端部に配置されるのが枠材43である。
【0039】
斜材44は、隣り合う主材42の間を連結する複数本のパイプである。この斜材44は主ジブ1の上面1U、下面1B、及び側面1S上に配置される。斜材44の長手方向は、主ジブ1の長手方向に対して斜め方向に配置される(図4に示す角度φは例えば45度である)。
下部ジブ33の下面1Bには例えば5本の斜材44(下部ジブ33の先端側から順に、斜材44a〜44e)が設けられる。また下部ジブ33の側面1Sには斜材44sが設けられる。
【0040】
補強材45は、斜材44の座屈強度を向上させるために設けられる。具体的には、補強材45は、下面1Bで隣り合う2本の斜材44の間を連結する。なお下面1Bに代えて、または下面1Bに加えて、上面1Uに補強材45を設けることもできる(図示なし)。この補強材45は、隣り合う2本の斜材44のそれぞれの長手方向の中央間を連結する。さらに具体的には、下部ジブ33の下面1Bの先端側の枠材43aの長手方向の中央と、斜材44aの長手方向の中央と、を補強材45aで連結する。斜材44bの長手方向の中央と、斜材44cの長手方向の中央と、を補強材45bcで連結する。また同様に斜材44dと44eとを補強材45deで連結する。
【0041】
また、この補強材45は、1本の斜材44に対して1本のみ接続されている。言い換えれば主ジブ1の長手方向において「1つ飛ばし」で斜材44間を補強材45で連結する。具体的には例えば、斜材44aと44bとの間は補強材45を連結せず、斜材44bと44cとの間は補強材45bcで連結され、斜材44cと44dとの間は補強材45を連結していない。
【0042】
また、この補強材45のバネ定数は21π2EI/L3以上である。これにより、補強材45の座屈を抑制できる。
【0043】
次に、上述した位置に補強材45を設けたことについて、さらに説明する。
【0044】
まず、主ジブ1の先端に補ジブ22を取り付けたジブ20(例えばラッフィング仕様)では、主ジブ1の中心軸周りのねじりが特に問題となることについて説明する。
【0045】
図1に示すように、主ジブ1に補ジブ22を取り付けない仕様のクレーンの場合の、主ジブ1の中心軸と吊荷位置(主ジブ1の先端)との距離をL1とする。主ジブ1の中心軸から補ジブ22の重心22gの位置までのオフセット距離をL2とする。主ジブ1の中心軸から吊荷位置(補ジブ22の先端)までのオフセット距離をL3とする。このとき、L2及びL3は、L1に比べて非常に大きい。
【0046】
また、補ジブ22が受ける旋回慣性力をFj、吊荷21が受ける旋回慣性力をFl、補ジブ22が受ける風荷重をFwj、吊荷21が受ける風荷重をFwlとする。
すると、主ジブ1に加わるねじり荷重は次のようになる。補ジブ22を備えないクレーンでは旋回慣性力によりFL×L1、風荷重によりFwL×L1、となる。一方で補ジブ22を備えるクレーンでは旋回慣性力によりFj×L2+FL×L3、風荷重によりFwj×L2+FwL×L3となる。
【0047】
よって、主ジブ1が受ける、主ジブ1の中心軸周りのねじりモーメントは次のようになる。補ジブ22を備えない場合、ねじりモーメントT1は、T1=(Fwl+Fl)×L1となる。一方で補ジブ22を備える場合、ねじりモーメントT2は、T2=(Fwj+Fj)×L2+(Fwl+Fl)×L3となる。L1<<L2,L3であるため、上記のねじり荷重は補ジブ22を備えるクレーン(ラッフィング仕様)の方が大幅に大きくなる。
【0048】
次に、主ジブ1がねじり荷重を受けた場合、斜材44にかかる応力が問題となることについて説明する。
一般に、図5に示す角柱120に、角柱120の中心軸周りのねじり荷重を加えると、角柱120の側面(中心軸を囲む4つの面)に、中心軸に対して45度の角度で圧縮応力と引張応力とが生じる。これと同様に、図4に示すラチス構造の主ジブ1に、中心軸周りのねじり荷重を加えると、中心軸に対して角度φ(例えば約45度)で配置された斜材44に圧縮応力と引張応力とが生じる。したがって、主ジブ1のねじりに対する強度を考える場合は、特に斜材44の座屈強度を考える必要がある。
【0049】
次に、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bに発生する応力が特に問題となることについて説明する。
【0050】
図4に示すように、中間ジブ32の断面の高さHは一定である。一方で下部ジブ33の断面の高さH’は先端から基端(根元)に向かって次第に小さく(細く)なっている。下部ジブ33が受けるねじりモーメントは中心軸方向のどの位置でも一定であるので、ねじりモーメントによって下部ジブ33に発生する応力は断面の高さが最小となる下部ジブ33の基端(根元)の上面1U及び下面1Bで最大となる。
【0051】
さらに詳しくは次のように考えられる。主ジブ1が受けるトルクは上面1U、下面1B、および2つの側面1Sの計4面で受けるが、発生応力が最大となる状況を考えるために、(1)上面1U及び下面1Bだけでトルクを受ける場合、(2)側面1Sだけでトルクを受ける場合、を仮定して応力を計算する。なお図4には補強材45を示しているが、ここでは補強材45はないものとして計算する。ここで、ねじりモーメントをT、斜材44の角度(上面1U及び下面1Bにおける左右方向に対する斜材44の角度、および、側面1Sにおける上下方向に対する斜材44の角度)をφ、斜材44の断面積(1本のパイプの断面積)をA、ジブ20の幅をBとする。また、中間ジブ32の側面1Sの斜材44に発生する応力をσ1、中間ジブ32の上面1U及び下面1Bに発生する応力をσ2、下部ジブ33の側面1Sの斜材44に発生する応力をσ3、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bの斜材44に発生する応力をσ4とする。このときのσ1〜σ4を次の数式1〜4に示す。
【0052】
【数1】
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】
【数4】
【0056】
ねじりモーメントT、角度φ、および断面積Aが一定として、応力σ1〜σ4を比較すると、断面の高さH’が小さい場合(H’<Bの場合)のσ4が最も大きくなる。これにより、下部ジブ33の上面1U及び下面1Bの斜材44を補強することが効果的であることがわかる。
【0057】
次に、斜材44の長手方向の中央部に補強材45を取り付ければ効果的であることについて説明する。
【0058】
一般に、梁の座屈強度Pcrは次の数式5で表せる。なお、kは座屈係数、πは円周率、Eは梁(斜材)のヤング率、Iは梁(斜材)の断面二次モーメント、Lは梁(斜材)の長さである。
【0059】
【数5】
【0060】
ここで、両端固定梁の長手方向のいずれかの位置を支持する場合、図6(b)に示すように、梁の長手方向の中央を支持したときに梁の座屈係数kが最大となる。このときの座屈係数kは、k=4×2.0457である。一方で図6(a)に示すように、両端固定梁の長手方向のいずれの位置でも梁を支持をしない場合(同長手方向の中央から最も離れた位置で梁を支持した場合、と言い換えることができる)、梁の座屈係数kはk=4である。よって、E、I、Lを一定としたとき、梁の長手方向の中央部を支持した両端固定梁の座屈強度Pcrは、梁を支持しない場合に対して約2倍になる。また、同中央部を支持した場合、同中央部よりも端部側で支持した場合よりも座屈強度Pcrは大きくなる。
【0061】
(本実施形態のクレーン用ジブの特徴)
本実施形態の主ジブ1(クレーン用ジブ)には以下の特徴がある。
【0062】
この主ジブ1は、図4に示すように、隣り合う2本の斜材44(44a〜44e)の間を連結する補強材45(45bcおよび45de)を備えている。または、隣り合う1本の斜材44(44a)と1本の枠材43(43a)との間を連結する補強材45(45a)を備えている。よって、補強材45を備えない場合に比べ、斜材44の有効座屈長が短くなり、斜材44の座屈強度が向上する。すなわち、斜材44のパイプ厚やパイプ径を大きくすることで座屈強度を向上させる場合に比べて主ジブ1の質量を大幅に増加させることなく、さらに主ジブ1の断面を大きくすることなく(輸送制限幅内の寸法のままで)、斜材44の座屈強度を向上できる。
【0063】
また、この主ジブ1は、上面1Uおよび下面1Bのうち少なくともいずれか一方の面に補強材45を備えている。すなわち主ジブ1の断面の内側に補強材45を配置する必要がない。よって、主ジブ1断面内側への機械(例えばロープ巻上げウインチ)の設置を妨げることなく斜材44の座屈強度を向上できる。
【0064】
また、この主ジブ1では、同一面内で隣り合う2本の斜材44のそれぞれの長手方向の中央間、または、同一面内で隣り合う1本の斜材44(44a)および1本の枠材43(43a)のそれぞれの長手方向の中央間、が補強材45で連結されている。よって、斜材44の長手方向における中央よりも両端側に補強材45が設けられている場合に比べ、斜材44の座屈強度を向上できる。
【0065】
また、この主ジブ1では、1本の斜材44に補強材45が1本のみ接続されている(すなわち、主ジブ1の長手方向に隣り合う斜材44の間が「1つ飛ばし」で連結されている)。よって、1本の斜材44に2本以上の補強材45が接続されている場合に比べ、主ジブ1が軽量である。すなわち主ジブ1を起伏するのに要する力が小さい。よってクレーン10の吊り能力を向上できる。
【0066】
また、主ジブ1の中心軸周りのねじりモーメントが主ジブ1にかかった場合、上部ジブ31や中間ジブ32に比べ、下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bに特に大きな負荷がかかる(斜材44に応力σ4がかかる)。また、左右方向の力が主ジブ1にかかったとき(面外曲げを受けたとき)にも下部ジブ33に大きな負荷がかかる。そのため、下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bを構成する斜材44の座屈強度が主ジブ1の吊り荷重を律則する場合がある。そこで、この主ジブ1では、この下部ジブ33の上面1Uおよび下面1Bのうち少なくとも何れか一方の面の斜材44に補強材45を備えている。よって、下部ジブ33の側面1S、上部ジブ31、または中間ジブ32に補強材45を取り付けた場合に比べ、より少ない補強材45により主ジブ1の吊り荷重を向上できる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0068】
(変形例1)
図7に変形例1に係る主ジブ1の中間ジブ32を示す。図4に示す上記実施形態では下部ジブ33の斜材44に補強材45を取り付けたが、図7に示すように中間ジブ32の斜材44に補強材45を取り付けても本発明を適用できる。なお、上記実施形態と同様に、主ジブ1の軸方向に「1つ飛ばし」で補強材45が取り付けられる。また、図7では下面1Bに補強材45を取り付けた形態を示しているが、上面1Uに補強材45を取り付けても良い。
【0069】
(変形例2)
図8に変形例2に係る主ジブ1の中間ジブ32を示す。図7に示す変形例1における「1つ飛ばし」を、図8に示すように主ジブ1の長手方向に1つ分ずらした構成としても本発明を適用できる。さらに詳しくは、変形例1において補強材45を取り付けた位置に補強材45を取り付けず、変形例1において補強材45を飛ばした(取り付けなかった)位置に補強材を取り付けても良い。
【0070】
(変形例3)
図9に変形例3に係る主ジブ1を示す。図4に示す上記実施形態では主ジブ1の左右方向の中央に補強材45を配置したが、図9に示すように主ジブ1の左右方向の中央からずらした位置に補強材45を配置しても本発明を適用できる。すなわち、斜材44(または枠材43)の長手方向の中央間を補強材45で連結せずに、斜材44(または枠材43)の長手方向の中央よりも端部側の位置を補強材45で連結しても良い。また、主ジブ1の先端側から基端側に向かって、主ジブ1の左右方向の中央に対して左右に交互に補強材45を配置しても良い。
【0071】
(変形例4)
図10に変形例4に係る主ジブ1を示す。図4に示す上記実施形態では「1つ飛ばし」で補強材45を取り付けたが、「1つ飛ばし」にしなくても本発明を適用できる。すなわち図10に示すように1本の斜材に2本の補強材45を取り付けても良い。さらに主ジブ1の先端側から基端側へ向かって、主ジブ1の左右方向の中央に対して左右に交互に補強材45を配置しても良い。
【0072】
(変形例5)
上記実施形態で示した補強材45は様々な形状にすることができる。例えば図11(a)〜(e)に示すように、平板45A、丸パイプ45B、角パイプ45C、アングル材45D、または、Cチャンネル材45Eなどとすることができる。
【0073】
また例えば、上記の変形例2〜4(図7〜11)に示した補強材45の配置を下部ジブ33(図4参照)に適用しても本発明を適用できる。
【0074】
また例えば上記実施形態に示さないクレーンにも本発明を適用できる。
例えば、図1に示す上記実施形態では主ジブ1と補ジブ22とを備えるクレーン10を示したが、補ジブ22を備えないクレーンにも本発明を適用できる。
また例えば、上記実施形態では主ジブ1は起伏可能であったが、主ジブ1が鉛直方向に配置され起伏しないクレーン(タワークレーン)にも本発明を適用できる。
また例えば、上記実施形態では補ジブ22は主ジブ1に対して起伏可能であったが、主ジブ1のみ起伏して補ジブ22は起伏しないクレーンにも本発明を適用できる。
【0075】
また例えば上記実施形態および変形例では下部ジブ33または中間ジブ32に補強材45を設置したが、上部ジブ31(図1参照)に補強材45を設置しても本発明を適用できる。
【0076】
また例えば、上記実施形態では上面1Uおよび下面1Bの少なくともいずれかに補強材45を設けたが、さらに側面1Sに補強材45を設けても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 主ジブ(クレーン用ジブ)
1U 上面
1B 下面
10 クレーン
11 本体
31 上部ジブ
32 中間ジブ
33 下部ジブ
42 主材
43 枠材
44 斜材
45 補強材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏可能にクレーンの本体に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブであって、
ジブ長手方向に直交する断面は四角形であり、
前記断面の四隅に配置された主材と、
前記断面の四辺に配置された枠材と、
隣り合う前記主材の間を当該主材と同一面内において連結する複数の斜材と、
倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面で隣り合う2本の前記斜材の間、または、当該面内で隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間、を連結する補強材と、を備えたクレーン用ジブ。
【請求項2】
隣り合う2本の前記斜材のそれぞれの長手方向の中央間、または、隣り合う1本の前記斜材および1本の前記枠材のそれぞれの長手方向の中央間、が前記補強材で連結されている、請求項1に記載のクレーン用ジブ。
【請求項3】
1本の前記斜材に前記補強材が1本のみ接続されている、請求項1または2に記載のクレーン用ジブ。
【請求項4】
前記クレーンの本体に直接取り付けられる下部ジブと、
前記下部ジブの先端に取り付けられる中間ジブと、
前記中間ジブの先端に取り付けられる上部ジブと、
を備え、
前記補強部材は、前記下部ジブを構成する前記斜材に取り付けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン用ジブ。
【請求項1】
起伏可能にクレーンの本体に取り付けられるラチス構造のクレーン用ジブであって、
ジブ長手方向に直交する断面は四角形であり、
前記断面の四隅に配置された主材と、
前記断面の四辺に配置された枠材と、
隣り合う前記主材の間を当該主材と同一面内において連結する複数の斜材と、
倒伏した状態における上面および下面のうち少なくともいずれか一方の面で隣り合う2本の前記斜材の間、または、当該面内で隣り合う1本の前記斜材と1本の前記枠材との間、を連結する補強材と、を備えたクレーン用ジブ。
【請求項2】
隣り合う2本の前記斜材のそれぞれの長手方向の中央間、または、隣り合う1本の前記斜材および1本の前記枠材のそれぞれの長手方向の中央間、が前記補強材で連結されている、請求項1に記載のクレーン用ジブ。
【請求項3】
1本の前記斜材に前記補強材が1本のみ接続されている、請求項1または2に記載のクレーン用ジブ。
【請求項4】
前記クレーンの本体に直接取り付けられる下部ジブと、
前記下部ジブの先端に取り付けられる中間ジブと、
前記中間ジブの先端に取り付けられる上部ジブと、
を備え、
前記補強部材は、前記下部ジブを構成する前記斜材に取り付けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン用ジブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−157178(P2011−157178A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19941(P2010−19941)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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