説明

クレーン用固定アタッチメント及び設置ベース

【課題】安定性・安全性に優れており、高所等における各種の計測,検査,撮影,点検などの作業を行なう際に好適なクレーン用固定アタッチメント及び設置ベースを提供する。
【解決手段】固定アタッチメント30の上側が、固定板34及び1対の腕36,38を介してクレーンブーム先端の上部ジブ10に固定されており、固定アタッチメント30の下側が、1対の固定腕50,52によって上部ジブ10に固定されているので、設置ベース80が強固にクレーンブームに対して支持される。このため、設置ベース80が1軸の駆動アーム98のみしか備えていない場合でも、設置テーブル82を良好に水平に維持することが可能となる。また、クレーン先端部が通常有する構造を利用して固定アタッチメント30が設けられているために汎用性が高く、各種のクレーン装置に対して適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンを利用して各種の計測や撮影などを行う際に使用するクレーン用固定アタッチメント及び設置ベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンを利用して各種の計測や撮影などを行うものとしては、例えば下記特許文献に開示されたものがある。いずれも、クレーン車のクレーンブーム先端に監視用カメラを吊り下げ、これによって、下方を撮影しつつクレーン作業を行うようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−275725号公報
【特許文献2】実用新案登録第3077631号公報
【特許文献3】実公平7−31645号公報
【特許文献4】実開昭61−149475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、高所からの風景や地形の撮影としては、例えばヘリコプターやバルーンなどを利用した空撮が一般的であるが、振動や風の影響を受けやすいという問題点があり、また、非常にコストもかかる。このため、クレーンを利用して高所からの撮影を行う方法が考えられる。最近は建築物が高層化する傾向にあるが、高層階からどのような眺望が得られるかを建築前に知ることができれば、それを加味した設計を行なうなど、建築物の付加価値を高めることができる。このような眺望の撮影には、クレーンを利用する手法が非常に効果的である。
【0004】
一方、最近は環境に対する関心が高まっており、地表面のみならず、高所における窒素酸化物濃度,花粉飛散量,騒音量,温度,湿度,紫外線量などのデータも要望されている。例えば、建築物の高層階における大気汚染の程度をデータ収集するような場合が考えられる。更に、建築物の外壁の状態を検査するなど、高所における各種の計測・検査などの要望は、今後益々高まるものと思われる。
【0005】
本発明は、これらの点に着目したもので、安定性・安全性に優れており、高所等における各種の計測,検査,撮影,点検などの作業を行なう際に好適なクレーン用固定アタッチメント及び設置ベースを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、クレーンブーム先端の上部ジブに作業機器を取り付ける際に使用するクレーン用固定アタッチメントであって、前記上部ジブの前方に下向きとなるように設けられたアーム本体,該アーム本体の上部を、前記上部ジブに固定するための第1の固定手段,前記アーム本体の下部を、前記上部ジブに固定するための第2の固定手段,を備えており、前記第1及び第2の固定手段のうちの少なくとも一方が、前記上部ジブを横断するピンによって前記上部ジブに固定されたことを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つによれば、前記第1の固定手段は、前記アーム本体の上部に設けられており、前記上部ジブを挟み込んで、前記上部ジブを横断するピンにより前記上部ジブに固定される1組の腕であり、前記第2の固定手段は、前記アーム本体の下部に設けられており、前記上部ジブを挟み込んで、前記上部ジブの側面に設けられた既存の取付具で前記上部ジブに固定される1組の腕である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の固定アタッチメントは、クレーンブーム先端の補助ジブに作業機器を取り付ける際に使用するものであって、前記補助ジブの前方に下向きとなるように設けられた接合部,前記補助ジブの正面側に位置しており、前記補助ジブの先端正面に設けられた1組の懸架腕に懸架される正面フレーム,前記補助ジブの下側後方に設けられた底面フレーム,該底面フレームの後ろ側に設けられており、前記補助ジブを挟み込むとともに、前記補助ジブを横断するピンにより前記補助ジブに固定される1組の腕,を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の設置ベースは、前記いずれかの固定アタッチメントを利用してクレーンブームに取り付けられ、必要な作業機器を設置する設置ベースであって、水平方向を回動軸方向として、前記固定アタッチメントに対し回動可能に設けられたベース本体,該ベース本体と前記固定アタッチメントとの間に設けられており、前記ベース本体を回動するためのアクチュエータ,を備えており、前記ベース本体に、前記アクチュエータを駆動するための駆動装置,を設けたことを特徴とする。
【0010】
主要な形態の一つは、前記駆動装置が傾斜搭載不可の駆動用バッテリを備えている場合に、揺動機構によって前記駆動用バッテリが傾斜しないように姿勢を保持することを特徴とする。他の形態の一つは、前記ベース本体は、前記アクチュエータ及び駆動装置によって姿勢が維持されており、該ベース本体には、水平を維持する設置テーブルが設けられたことを特徴とする。もしくは、前記ベース本体は、前記アクチュエータ及び駆動装置によって姿勢が維持されており、このベース本体に対して、所望の方向に変位可能に作業機器の設置テーブルが設けられたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1及び第2の固定手段により固定アタッチメントがクレーンブーム先端に取り付けられるので、作業機器を良好にブーム先端に固定支持することができ、従来にない安定性・安全性を確保することができる。これにより、高所等における各種の計測,検査,撮影,点検などの作業を良好に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に、図1〜図4を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1(A)は本実施例の主要部の斜視図,図1(B)は固定用のピンの拡大図,図2(A)は固定アタッチメントのみを示す斜視図,図2(B)は側面図である。これらの図において、クレーンブーム先端の上部ジブ10の上部には、2枚のシーブ12,13(12のみ図示)が設けられており、このシーブ12に2本のワイヤ14,15(14のみ図示)が懸架されている。ワイヤ14には、メインフック16が吊り下げられている。前記シーブ12は、その軸方向,すなわち上部ジブ10を横断する方向に設けられた空洞の中空ピン24によって固定されている。一方、上部ジブ10の下方側面には、補助ジブをブーム先端に取り付ける際に使用するための左右1対のピン穴20,21(20のみ図示)が設けられている。以上の各部の構成は、一般的なクレーン装置として公知である。
【0014】
次に、本実施例では、上述した上部ジブ10の前方に、固定アタッチメント30が取り付けられている。詳述すると、固定アタッチメント30のアーム本体32の上側には、側方に延設された固定板34が設けられている。また、この固定板34の上面にはクレーン吊り上げ用のリング35が設けられており、側面には、側方から見たときに略コ字状ないし鉤状に形成されている腕36,38が左右対称に固定されている。図示の例では、ボルト・ナット手段によって腕36,38を固定板34に固定しているが、溶接など、適宜の公知の手段を用いてよい。これら腕36,38の先端には、上述した上部ジブ10の中空ピン24の位置に対応するピン穴36A,38Aがそれぞれ設けられている。
【0015】
一方、固定アタッチメント30のアーム本体32の下側には、アーム本体32を側方から挟むように、固定腕50,52が左右対称に設けられている。これら固定腕50,52の先端(図1の右側)は、前記アーム本体32よりも突出しており、この突出部先端は固定ピン54によって固定されている。一方、アーム本体32の正面中央付近には止め具56が設けられており、この止め具56と、前記固定ピン54との間に、テンションロッド58が張設されている。
【0016】
固定腕50,52の反対側(図1の左側)は、上部ジブ10の方向に延長形成されており、その先端には、前記上部ジブ10を挟み込むとともに、その側面のピン穴20,21を貫通する貫通ピン60,62がそれぞれ設けられている。
【0017】
図1に示すクレーンブームが略水平の状態では、固定アタッチメント30のアーム本体32は、前記上部ジブ10から下方に延設されている。これは、後述する図3に示すように、クレーンブームを略垂直にした場合でも、固定アタッチメント30が後述するテーブルを良好に水平に維持できるようにするためである。
【0018】
以上のような固定アタッチメント30は、例えば次のような手順で上部ジブ10に取り付け固定される。まず、別途用意したクレーン(図示せず)でリング35に玉掛けし、固定アタッチメント30を吊り上げる。そして、固定アタッチメント30の下側の固定腕50,52先端の貫通ピン60,62が、上部ジブ10側面のピン穴20,21に入り込むように、固定アタッチメント30を移動する。貫通ピン60,62には、ピン穴20,21から抜けないように、割りピン60A,62A(60Aのみ図示)が差し込まれる。次に、固定アタッチメント30の上側の腕36,38が上部ジブ10を挟み込むとともに、そのピン穴36A,38Aと、上部ジブ10の中空ピン24の位置を合わせ、固定ピン22を、ピン穴36A,38A,中空ピン24の空洞に挿入する。具体的には、脚立等を利用し、横から手で固定ピン22をピン穴38A,中空ピン24の空洞,ピン穴36Aの順に差し込むようにする。なお、固定ピン22は、図1(B)に示すように、一端には、ピン穴に当接する拡径部22Bが形成されており、他端に割りピン22Aを差し込むことで、抜けないようになっている。
【0019】
次に、上述した固定アタッチメントの先端に取り付けられ、前記カメラなどの作業機器を設置する設置ベース80について説明する。設置ベース80は、本実施例では、設置テーブル82を水平に維持する機能及び回動する機能を備えている。各種の測定装置や撮像装置などは、設置テーブル82に設けられた複数の穴84を利用して設置テーブル82に固定される。この設置テーブル82の後方には姿勢制御装置を内蔵するベース本体90が設けられており、その背面には駆動アーム98が設けられている。
【0020】
これらのうち、ベース本体90には、頂面にクレーン吊り下げ用のリング89が設けられており、更に、無線装置92及びアンテナ93,姿勢制御装置94,駆動用バッテリ95が含まれており、駆動アーム98には油圧機構などのアクチュエータが含まれている。無線装置92及びアンテナ93は、地上などからの遠隔操作信号を受信するためのものである。姿勢制御装置94は、前記無線装置92による受信信号に基づいて、設置テーブル82を常時水平に保つための制御を行ったり、あるいは、駆動アーム98を伸縮して設置テーブル82を回動するための制御を行う機能を備えている。なお、設置テーブル82を水平に保つ場合は、公知のジャイロ機構などを利用して姿勢制御を行う。すなわち、設置テーブル82の水平からのずれを検知し、検知結果に基づいて駆動アーム98を伸縮することで、設置テーブル82を水平に維持するという具合である。
【0021】
更に、駆動用バッテリ95は、ベース本体90内に水平に設けられた揺動軸95Aに対して揺動自在に設けられた揺動台95B上に設置されており、ベース本体90が回動しても、駆動用バッテリ95が傾斜しないようになっている。もちろん、駆動用バッテリ95として傾斜可能なものを使用するときは、揺動軸95A,揺動台95Bによる揺動機構は不要である。
【0022】
一方、ベース本体90の背面側には、上述した固定アタッチメント30の先端にボルト・ナット手段などによって結合する接合部100が設けられており、この接合部100の先に腕102,104が設けられている。そして、これら腕102,104の先端に、回動軸106により、前記ベース本体90の背面上側が回動可能に支持されている。また、上述した駆動アーム98は、ベース本体90の背面下側と前記接合部100との間に設けられている。この駆動アーム98が伸縮することによって、ベース本体90,更には設置テーブル82が、水平方向の回動軸106を中心に回動できる構成となっており、クレーンブームの伸縮に伴って固定アタッチメント30が回動しても、設置テーブル82を水平に保つことができるようになっている。
【0023】
以上のような設置ベース80は、別途用意したクレーン(図示せず)でリング89に玉掛けし、設置ベース80を吊り上げる。そして、接合部100の先端と、予めクレーンブーム先端の上部ジブ10にセットされている固定アタッチメント30のアーム本体32の先端とをボルト・ナット手段でジョイントする。すなわち、最初に、クレーンブーム先端に固定アタッチメント30をセットし、次に、この固定アタッチメント30に設置ベース80をジョイントする。
【0024】
次に、図3も参照しながら、本実施例の動作を説明する。クレーン車200は、所望の位置に移動して停止・固定する。そして、上述した手順で固定アタッチメント30,設置ベース80を順次取り付ける。次に、クレーンブーム202を伸延するとともに、その角度を調整する。図3に示すように、クレーンブーム202の角度が変化すると、固定アタッチメント30の角度も変化する。この場合に、設置テーブル82を水平に保つように無線信号を送ったとすると、それがベース本体90の無線装置92で受信され、姿勢制御装置94によって設置テーブル82を水平に保つ制御が行われる。このため、駆動アーム98がクレーンブーム202の角度に応じて伸縮するようになり、設置テーブル82が水平に保持されるようになる。
【0025】
図4(A)は、建築物300の外壁面302の状態を検査するために、作業機器として撮像装置310を設置テーブル82上に固定した例である。撮像装置310による外壁面302の撮像信号は、無線によって受信側(図示せず)に送信されて受信側でモニターに表示され、あるいは、記録媒体に記録・保存される。図4(B)は、設置テーブル82の裏面側にターンテーブル330を設け、このターンテーブル330にテレビカメラやガスセンサなどの作業機器332を取り付けた例である。遠隔操作によってターンテーブル330を回転させることで、作業機器332の方向を簡単に変更することができる。例えば、作業機器332がテレビカメラの場合は、撮影方向を360度変更することができる。また、ベース本体90を遠隔操作して駆動アーム98を伸縮させることで、設置テーブル82を図4(B)の矢印方向に回動させることができ、これとターンテーブル330の動きを加えることで、更に多様な角度からの撮影が可能となる。
【0026】
この場合において、本実施例によれば、固定アタッチメント30の上側が、固定板34及び1対の腕36,38を介してクレーンブーム先端の上部ジブ10に固定されており、固定アタッチメント30の下側が、1対の固定腕50,52によって上部ジブ10に固定されているので、設置ベース80が強固にクレーンブーム202に対して支持されている。このため、設置ベース80が1軸の駆動アーム98のみしか備えていない場合でも、設置テーブル82を良好に姿勢を維持することが可能となる。また、水平から所望の角度の回動を行なうことも可能となる。すなわち、クレーン先端部が通常有する構造を利用して固定アタッチメント30が設けられているために汎用性が高く、各種のクレーン装置に対して適用可能である。
【実施例2】
【0027】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施例2について説明する。同図中、(A)は本実施例の固定アタッチメントをクレーンブーム先端の補助ジブに取り付けた状態を示す斜視図であり、(B)は固定アタッチメントのみを示す斜視図である。上述した実施例1は、クレーンブーム先端の上部ジブに固定アタッチメントを取り付けた例であるが、実施例2は、クレーンブーム先端の上部ジブに補助ジブを設け、この補助ジブに固定アタッチメントを取り付ける例である。
【0028】
図5において、固定アタッチメント500は、正面フレーム502の下側後方に底面フレーム504を設けた構成となっている。正面フレーム502の頂部には、クレーンで固定アタッチメント500を吊り上げるためのリング506が設けられている。また、底面フレーム504の後方には、腕510,512が立設されており、先端付近にピン挿通用の穴510A,512Aがそれぞれ設けられている。この底面フレーム504内には、取り付けたときに補助ジブに当接して緩まないようにするための当接フレーム514が取り付けられており、正面側には、上述した設置ベース80を取り付けるための接合部516が設けられている。
【0029】
一方、本実施例のクレーンブーム先端の補助ジブ530は、先端正面に1組の懸架腕532,534が突出して設けられており、やや後方の中央付近に、ピン穴536が設けられた構成となっている。なお、本例では、クレーンのサブフックは取り外されている。
【0030】
本実施例の固定アタッチメント500は、まず、他のクレーン(図示せず)のフックを正面フレーム502のリング506に玉掛けして固定アタッチメント500を吊り上げ、補助ジブ530の懸架腕532,534に正面フレーム502を懸架する。次に、底面フレーム504を持ち上げ、その両腕510,512の穴510A,512Aと、補助ジブ530のピン穴536を位置合わせする。そして、それらにピン538を挿通することで、固定アタッチメント500がクレーンブーム先端の補助ジブ530に固定される。ピン538には、抜けないように割りピン538Aが差し込まれる。その後、固定アタッチメント500の接合部516に設置ベース80を取り付ける。
【0031】
この実施例2によれば、正面フレーム502を補助ジブ530の懸架腕532,534に懸架するとともに、底面フレーム504の後ろ側の腕510,512を補助ジブ530にピン538で固定することとしたので、設置ベース80が強固にクレーンブームに対して支持される。このため、設置ベース80が1軸の駆動アーム98のみしか備えていない場合でも、前記実施例と同様に設置テーブル82を良好に水平に維持したり、水平から所望の角度の回動を行なうことも可能となる。
【実施例3】
【0032】
次に、図6を参照しながら、本発明の実施例3について説明する。まず、図6(A)に示す実施例は、上述した設置ベース80のベース本体90の正面にモーターなどによる回転機構600を設け、その回転軸にテーブル602を設けた例である。テーブル602は、同図の矢印F6aの方向に回転可能となっている。テーブル602の主面上には、矢印F6b方向に伸縮可能な伸縮機構604が設けられており、その先端にカメラなどの作業機器606が設けられている。なお、回転機構600や伸縮機構604は、無線装置92を利用して遠隔操作され、姿勢制御装置94によって駆動制御が行われる。以下の例についても同様である。
【0033】
図6(B)には、本実施例の好適な使用例が示されている。建築物300の近傍に障害物610があり、図4に示したようにクレーン車200を建築物300の正面側に設置できない場合、図6(B)に示すように建築物300の側方にクレーン車200を設置する。そして、クレーンブーム202を伸延してその角度を調整するとともに、テーブル602を回転させるとともに、伸縮機構604を伸ばすことで、作業機器606が建築物300の外壁面302の方向を向くようにする。これにより、外壁面302の様子を撮影することができる。
【実施例4】
【0034】
次に、図7を参照しながら、実施例4について説明する。同図(A)に示すように、設置ベース80のベース本体90の下面にモーターなどによる回転機構620が設けられており、その回転軸に、矢印F7a方向に回転するテーブル700が設けられている。テーブル700の先端には、回転機構702が設けられており、その回転軸にテーブル704が設けられている。テーブル704は、矢印F7b方向に回転する。図7(B)には、回転した状態の一例が示されており、駆動アーム98によって水平に姿勢が保持されているベース本体90に対して、テーブル700が水平面内で回転した位置にあり、テーブル704は、回転して略垂直となっている。テーブル704を180度回転すれば、表裏が逆となる。この例のように、回転機構,伸縮機構などの各種のアクチュエータを必要に応じて適宜設けてよい。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、固定アタッチメントの先端に設置ベースを設けたが、設置ベースの代わりに、計測機器や撮影機器を直接取り付けることを妨げるものではない。また、設置ベースに計測機器等を取り付ける場合でも、その取付位置は所望の位置としてよい。この場合に、バランスをとるために反対側の位置にウエイトを設けるようにしてもよい。
(2)前記実施例は、いわゆる自走式のクレーン車に対して本発明を適用したものであるが、非自走式のクレーンにも適用可能である。
(3)夜間などの撮影を行うために、固定アタッチメントや設置ベースに投光器などを設置するようにしてもよい。
(4)実施例1ではクレーンのメインフック16を取り付けたままとしたが、もちろん、実施例2のように取り外すようにしてもよい。
(5)設置ベースのテーブル先端などの適宜箇所に近接センサを設け、建築物などにテーブルなどが当たらないようにしてもよい。
(6)作業機器としては、各種の計測,検査,撮影,点検など、適宜のものが適用可能である。また、作業機器を取り付ける際に、必要に応じて、回転機構,スライド機構,遠隔操作手段,姿勢制御手段などを設けてよい。
(7)前記実施例に示した各部の機構の代わりに、同様の作用を奏する公知の機構を適用することを妨げるものではない。例えば、クレーンブーム先端に対する固定アタッチメントの取付部分形状を、クレーンブーム先端の構造に応じて適宜変更するという具合である。
(8)前記実施例では、駆動用バッテリ95が揺動装置によって水平を保つようにしたが、駆動用バッテリ95が収納されているベース本体90を、姿勢制御装置94による駆動アーム98の伸縮によって常に所望の姿勢に保つようにすることで、揺動機構を省いても駆動用バッテリ95が傾斜しないようにすることができ、ベース本体90に駆動用バッテリ95を直接設置することができる。
(9)クレーンブーム先端に複数の計測機器や撮影装置を取り付けることを妨げるものでもない。例えば、姿勢制御されているベース本体90に撮像装置を設け、駆動機構によって変位可能なテーブルに各種センサを設けるようにする。ベース本体90の姿勢が一定に維持されているため、撮像装置は所定の視野を確保することができる。この視野内でテーブルを変位させて各種センサを所望の位置にセットするといった具合である。
(10)前記実施例に示したように、特に高所における各種の計測等に好適であるが、クレーンブームを略水平方向に伸ばすようにして低所における計測等を行なうことを妨げるものではない。例えば、断崖から下方を見た風景の撮影などがその例である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のクレーン用固定アタッチメントによれば、各種の測定器具や撮像装置などの作業機器を強固に固定することができ、安定性・安全性を確保しつつ、高所等における各種の計測,検査,撮影などの分野に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(A)は本発明の実施例1の主要部を示す斜視図,(B)は固定用のピンを示す拡大図である。
【図2】(A)は実施例1の固定アタッチメントのみを示す斜視図,(B)は図1(A)の側面図である。
【図3】前記実施例1の動作を示す説明図である。
【図4】前記実施例1の使用形態を示す説明図である。
【図5】(A)は本発明の実施例2の主要部を示す斜視図,(B)は実施例2の固定アタッチメントを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例3を示す図である。(A)は実施例3の一例の主要部を示す斜視図,(B)は(A)の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例4を示す図である。(A)は実施例4の一例の主要部を示す斜視図,(B)は(A)の使用状態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10:上部ジブ
12:シーブ
14:ワイヤ
16:メインフック
20:ピン穴
22:固定ピン
22A:割りピン
22B:拡径部
24:中空ピン
30:固定アタッチメント
32:アーム本体
34:固定板
35:リング
36,38:腕
36A,38A:ピン穴
50,52:固定腕
54:固定ピン
56:止め具
58:テンションロッド
60,62:貫通ピン
60A,62A:割りピン
80:設置ベース
82:設置テーブル
84:穴
89:リング
90:ベース本体
92:無線装置
93:アンテナ
94:姿勢制御装置
95:駆動用バッテリ
95A:揺動軸
95B:揺動台
98:駆動アーム
100:接合部
102,104:腕
106:回動軸
200:クレーン車
202:クレーンブーム
300:建築物
302:外壁面
310:撮像装置
330:ターンテーブル
332:作業機器
500:固定アタッチメント
502:正面フレーム
504:底面フレーム
506:リング
510,512:腕
510A,512A:穴
514:当接フレーム
516:接合部
530:補助ジブ
532,534:懸架腕
536:ピン穴
538:ピン
538A:割りピン
600:回転機構
602:テーブル
604:伸縮機構
606:作業機器
610:障害物
620:回転機構
700:テーブル
702:回転機構
704:テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンブーム先端の上部ジブに作業機器を取り付ける際に使用するクレーン用固定アタッチメントであって、
前記上部ジブの前方に下向きとなるように設けられたアーム本体,
該アーム本体の上部を、前記上部ジブに固定するための第1の固定手段,
前記アーム本体の下部を、前記上部ジブに固定するための第2の固定手段,
を備えており、
前記第1及び第2の固定手段のうちの少なくとも一方が、前記上部ジブを横断するピンによって前記上部ジブに固定されたことを特徴とするクレーン用固定アタッチメント。
【請求項2】
前記第1の固定手段は、前記アーム本体の上部に設けられており、前記上部ジブを挟み込んで、前記上部ジブを横断するピンにより前記上部ジブに固定される1組の腕であり、
前記第2の固定手段は、前記アーム本体の下部に設けられており、前記上部ジブを挟み込んで、前記上部ジブの側面に設けられた既存の取付具で前記上部ジブに固定される1組の腕である、
ことを特徴とする請求項1記載のクレーン用固定アタッチメント。
【請求項3】
クレーンブーム先端の補助ジブに作業機器を取り付ける際に使用するクレーン用固定アタッチメントであって、
前記補助ジブの前方に下向きとなるように設けられた接合部,
前記補助ジブの正面側に位置しており、前記補助ジブの先端正面に設けられた1組の懸架腕に懸架される正面フレーム,
前記補助ジブの下側後方に設けられた底面フレーム,
該底面フレームの後ろ側に設けられており、前記補助ジブを挟み込むとともに、前記補助ジブを横断するピンにより前記補助ジブに固定される1組の腕,
を備えたことを特徴とするクレーン用固定アタッチメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの固定アタッチメントを利用してクレーンブームに取り付けられ、必要な作業機器を設置する設置ベースであって、
水平方向を回動軸方向として、前記固定アタッチメントに対し回動可能に設けられたベース本体,
該ベース本体と前記固定アタッチメントとの間に設けられており、前記ベース本体を回動するためのアクチュエータ,
を備えており、
前記ベース本体に、前記アクチュエータを駆動するための駆動装置を設けたことを特徴とする設置ベース。
【請求項5】
前記駆動装置が傾斜搭載不可の駆動用バッテリを備えている場合に、揺動機構によって前記駆動用バッテリが傾斜しないように姿勢を保持することを特徴とする請求項4記載の設置ベース。
【請求項6】
前記ベース本体は、前記アクチュエータ及び駆動装置によって姿勢が維持されており、
該ベース本体には、水平を維持する設置テーブルが設けられたことを特徴とする請求項4記載の設置ベース。
【請求項7】
前記ベース本体は、前記アクチュエータ及び駆動装置によって姿勢が維持されており、
このベース本体に対して、所望の方向に変位可能に作業機器の設置テーブルが設けられたことを特徴とする請求項4記載の設置ベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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