説明

クレーン装置

【課題】クレーン装置の作動により生じるエネルギーを有効に利用できるクレーン装置を提供する。
【解決手段】ウインチドラム3a、3b、3cがワイヤ4a、4b、4cを繰出すことにより回転する場合のみ、ワンウエイクラッチ11によりウインチドラム3a、3b、3cの回転を発電機12に伝えて回転駆動させて発電し、発電した電力は、制御部13およびバッテリー14を用いて電気機器16の作動に利用し、ワイヤ4a、4b、4cを巻取ることによりウインチドラム3a、3b、3cが回転する場合には、この回転は発電機12に伝わらないので、発電機12を設けていながらも、ウインチドラム3a、3b、3cを回転させる際に余分な負荷が生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置に関し、さらに詳しくは、クレーン装置の作動により生じるエネルギーを有効に利用できるクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業船に搭載されるクレーン装置には、ウインチドラムが付設されている(例えば、特許文献1参照)。ウインチドラムは、クレーンの作動に用いるワイヤの繰出しおよび巻取りを行なう。例えば、ワイヤの繰出しおよび巻取りによって、クレーンの吊荷の上下移動が行なわれる。
【0003】
ところで、クレーンはワイヤに取付けたクレーンフック、各種アタッチメント、吊荷などの自重を利用して自由落下や下方移動させることがあるが、この場合には、繰出されるワイヤによってウインチドラムが回転する。即ち、ウインチドラムが重力の作用によって回転するので、この回転を利用して発電機を回転させれば発電することができる。しかしながら、現状では、機械式ウインチドラムのこのような回転を何ら利用していない。作業船に搭載されるクレーン装置に限らず、陸上に設置されるクレーン装置においても、機械式ウインチドラムのこのような回転は利用されていないので、この回転を利用できれば省エネルギーに寄与することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−12280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、クレーン装置の作動により生じるエネルギーを有効に利用できるクレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のクレーン装置は、クレーンと、このクレーンの作動に用いるワイヤを繰出しおよび巻取りするウインチドラムとを備えたクレーン装置において、前記ウインチドラムの回転により回転駆動される発電機と、この発電機とウインチドラムとの間に介設されるワンウエイクラッチと、前記発電機により発電された電力を制御する制御部と、この電力を蓄電するバッテリーとを有し、前記ウインチドラムがワイヤを繰出すことにより回転する場合のみ、前記ワンウエイクラッチによりウインチドラムの回転が前記発電機に伝わり回転駆動される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クレーンの作動に用いるワイヤを繰出しおよび巻取りするウインチドラムの回転により回転駆動される発電機と、この発電機とウインチドラムとの間に介設されるワンウエイクラッチと、前記発電機により発電された電力を制御する制御部と、この電力を蓄電するバッテリーとを有し、前記ウインチドラムがワイヤを繰出すことにより回転する場合のみ、前記ワンウエイクラッチによりウインチドラムの回転が前記発電機に伝わり回転駆動される構成にしたので、ワイヤが重力の作用によって繰出される際に生じるエネルギーを利用して、発電機を用いて発電することができる。発電した電力は、制御部およびバッテリーを用いて、電気機器の作動に利用することができる。
【0008】
一方、ウインチドラムが回転してワイヤを巻き取る場合には、ウインチドラムの回転は発電機に伝わらない。それ故、発電機を設けていながらも、ワイヤを巻取るためにウインチドラムを回転駆動させる際に、余分な負荷が生じることがないので、エネルギーの無駄な消費を防止できる。
【0009】
さらに、ワンウエイクラッチを用いているので、ウインチドラムの回転を発電機に伝える際に、ウインチドラムがワイヤの繰出しにより回転しているのか、ワイヤの巻取りにより回転しているのかを判断する特別な装備が不要になるため、装置を簡素にするには有利になる。
【0010】
このクレーン装置は、例えば、船に搭載される。一般的に、船に搭載されるクレーン装置は、陸上に設置されるクレーン装置よりもワイヤの繰出し量および巻取り量が長くなるので、より多量の電力を得ることが可能になる。
【0011】
前記ウインチドラムが複数設けられている仕様にすることもできる。この仕様によれば、一段と安定して電力を得易くなる。
【0012】
前記ワイヤの最大繰出し長さが50m以上である仕様にすることもできる。この仕様によれば、一段と多量の電力を得易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクレーン装置の全体概要を例示する説明図である。
【図2】ワンウエイクラッチを例示する説明である。
【図3】吊荷を下方移動させている本発明のクレーン装置を側面視で例示する説明図である。
【図4】吊荷を上方移動させている本発明のクレーン装置を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のクレーン装置を実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図4に例示する本発明のクレーン装置1は、船15に搭載されていて、クレーン2と、クレーン2の作動に用いるワイヤ4a、4b、4cをそれぞれ繰出しおよび巻取りする機械式のウインチドラム3a、3b、3cとを備えている。さらに、ウインチドラム3a、3b、3cの回転により回転駆動される発電機12と、発電機12とウインチドラム3a、3b、3cとの間の伝動系統に介設されるワンウエイクラッチ11と、発電機12により発電された電力を制御する制御部13と、この電力を蓄電するバッテリー14とを有している。発電機12に接続された制御部13には電気機器16が接続されている。
【0016】
さらに機械式のウインチドラム3a、3b、3cとは別に、油圧式のウインチドラム3dが設けられている。このウインチドラム3dは、クレーン2の起伏移動に用いるワイヤ4dを繰出しおよび巻取りする。尚、図1では、油圧式のウインチドラム3dを省略して図示してない。
【0017】
クレーン装置1の構造を詳述すると、ウインチドラム3a、3b、3cを回転駆動するエンジン6の出力軸6aがトルクコンバータ7を介して駆動軸8に連結されている。駆動軸8に取付けられたプーリ8aにはワンウエイクラッチ11が設けられている。このプーリ8aと発電機12のプーリ12aとは、伝動ベルト等の伝動部材を介して接続されている。また、駆動軸8は減速機9を介して各ウインチドラム3a、3b、3cに連結された伝動部10に接続されている。
【0018】
エンジン6の出力軸6aの回転(駆動力)は、トルクコンバータ7により、所望の回転数および回転方向となって駆動軸8に出力されて、減速機9および伝動部10を通じてそれぞれのウインチドラム3a、3b、3cに伝わって、これらウインチドラム3a、3b、3cを回転駆動させる。それぞれのウインチドラム3a、3b、3cはクラッチ操作により独立して回転駆動されるようになっている。
【0019】
1つのウインチドラム3aはクレーン作業時に主巻きであり、ワイヤ4aを繰出すことにより、例えば、クレーン2で吊った吊荷5を下方移動させ、ワイヤ4aを巻き取ることにより吊荷5を上方移動させる。或いは、ワイヤ4aを繰出すことにより、クレーン2で吊ったバケットなどのアタッチメントを下方移動させ、ワイヤ4aを巻き取ることによりアタッチメントを上方移動させる。
【0020】
別の1つのウインチドラム3bはクレーン作業時に副巻きであり、軽量物の吊上げ吊下げや補助作業等に使用される。このウインチドラム3bはワイヤ4bを繰出すことにより、例えば、軽量の吊荷5を下方移動させ、ワイヤ4bを巻き取ることにより軽量の吊荷5を上方移動させる。さらに別の1つのウインチドラム3cは雑巻きであり、ワイヤ4cの繰出しおよび巻取りによってクレーン作業時の補助作業に使用される。
【0021】
図2に例示するようにワンウエイクラッチ11は、プーリ8aに対して回転可能に取付けられた歯車11aと、歯車11aの歯部に係脱可能に可動する歯止め11bとを有している。駆動軸8が一方向(図2では右回転方向)に回転駆動されると、歯止め11bは一端部の支軸を中心にして上下移動して歯部の外周面を円滑に移動する。これにより、駆動軸8とともに歯車11aのみが回転してプーリ8aは回転しない。駆動軸8が他方向(図2では左回転方向)に回転駆動されると、歯止め11bは歯部に係止される。これにより、駆動軸8とともに歯車11aおよびプーリ8aが回転する。即ち、ワンウエイクラッチ11は、駆動軸8が一方向に回転する場合は駆動軸8の回転(駆動力)をプーリ8aに伝達せず、駆動軸8が他方向に回転する場合だけ、駆動軸8の回転(駆動力)をプーリ8aに伝達する。
【0022】
このワンウエイクラッチ11の特性を利用して、本発明では、ウインチドラム3a、3b、3cがそれぞれのワイヤ4a、4b、4cを繰出すことにより回転する場合のみ、ワンウエイクラッチ11によってウインチドラム3a、3b、3cの回転が発電機12に伝わり回転駆動される構成になっている。
【0023】
このクレーン装置1の動作を以下に説明する。
【0024】
図3に例示するように主巻きを用いて吊荷5を下方移動させる場合、ブレーキを解除してウインチドラム3aを回転させてワイヤ4aを繰出す。この時のウインチドラム3aの回転は、クレーンフックや吊荷5の自重によって生じるものであり、エンジン6の駆動力を使用していない。このウインチドラム3aの回転は、伝動部10および減速機9を通じて駆動軸8に伝達される。この際、駆動軸8は図2に例示した方向とは反対方向に回転する。そのため、駆動軸8とともに歯車11aおよびプーリ8aが回転する。これにより、ウインチドラム3aの回転が、プーリ8a、12a間の伝動部材を介して発電機12に伝わって発電機12を回転駆動させる。
【0025】
発電機12が回転駆動されることにより発電された電力は、制御部13を通じてバッテリー14に蓄電され、必要に応じて電気機器16の電力として使用される。或いは、発電された電力は、バッテリー14に蓄電されずに、そのまま制御部13を通じて電気機器16に供給されて使用される。
【0026】
副巻きを用いて軽量の吊荷5を下方移動させる場合は、ブレーキを解除してクラッチを接続してウインチドラム3bを回転させてワイヤ4bを繰出す。この時のウインチドラム3bの回転は、クレーンフックや吊荷5の自重によって生じるものであり、エンジン6の駆動力を使用していない。
【0027】
このウインチドラム3bの回転は、伝動部10および減速機9を通じて駆動軸8に伝達される。そして、上述した主巻きの場合と同様に、駆動軸8とともに歯車11aおよびプーリ8aが回転して発電機12を回転駆動させる。
【0028】
雑巻きを用いてクレーン作業をする場合も、主巻きおよび副巻きの場合と同様に、ブレーキを解除してクラッチを接続してウインチドラム3cを回転させてワイヤ4cを繰出す時に、駆動軸8とともに歯車11aおよびプーリ8aが回転して発電機12を回転駆動させる。
【0029】
図4に例示するように主巻きを用いて吊荷5を上方移動させる際には、ウインチドラム3aを回転駆動してワイヤ4aを巻き取る。この時のウインチドラム3aの回転は、エンジン6の駆動力によるものである。即ち、エンジン6の駆動力は、出力軸6aからトルクコンバータ7を経て、駆動軸8、減速機9および伝動部10を通じてウインチドラム3aに伝わり、ウインチドラム3aを回転駆動させる。
【0030】
この際、駆動軸8は図2に例示した方向に回転する。そのため、駆動軸8とともに歯車11aのみが回転してプーリ8aは回転しない。それ故、ウインチドラム3aの回転が発電機12に伝わらず、発電機12を回転駆動させることはない。換言すると、エンジン6の駆動力が発電機12を回転駆動するために使用されない。それ故、発電機12を設けていながらも、ワイヤ4aを巻取るためにウインチドラム3aを回転駆動させる際に、余分な負荷が生じることがないので、エネルギーの無駄な消費を防止できる。
【0031】
副巻きや雑巻きを用いる場合も同様に、ウインチドラム3b、3cを回転駆動してワイヤ4b、4cを巻き取る際には、エンジン6の駆動力を用いるが、ウインチドラム3b、3cの回転が発電機12に伝わらず、発電機12を回転駆動させることはない。
【0032】
上記のとおり本発明では、ワイヤ4a、4b、4cが重力の作用によって繰出される際に生じるエネルギーを利用して、発電機12を用いて発電する。発電された電力は、制御部13およびバッテリー14を用いて、電気機器16の作動に使用されるので、クレーン装置1の作動により生じるエネルギーを有効活用できる。
【0033】
また、ワンウエイクラッチ11は、プーリ8aに取付けているだけで、ウインチドラム3a、3b、3cがワイヤ4a、4b、4cを繰出すことにより回転する場合のみ、ウインチドラム3a、3b、3cの回転を発電機12に伝える。そのため、ウインチドラム3a、3b、3cがワイヤ4a、4b、4cの繰出しにより回転しているのか、ワイヤ4a、4b、4cの巻取りにより回転しているのかを判断する特別な装備が不要になるので、クレーン装置1を簡素にするには有利になる。
【0034】
本発明のクレーン装置1は、船15に搭載されるだけでなく、陸上に設置される場合もある。この実施形態のように船15に搭載されるクレーン装置1は一般に、陸上に設置されるクレーン装置1よりもワイヤ4a、4b、4cの繰出し量および巻取り量が長くなるので、より多量の電力を発電するには有利になる。例えば、機械式のウインチを備えたグラブ式浚渫船や全旋回式杭打ち船などに本発明のクレーン装置1を搭載することができる。
【0035】
ウインチドラム3a、3b、3cの数は任意であるが、複数設けることにより発電機12を回転駆動する頻度が多くなるので、一段と安定して電力を得易くなる。複数のウインチドラム3a、3b、3cを設けた場合は、すべてのワイヤ4a、4b、4cの繰出しの際のウインチドラム3a、3b、3cの回転を発電に利用することもできるが、すべてのウインチドラム3a、3b、3cのうち、特定の少なくとも1つを発電の利用対象にすることもできる。
【0036】
ワイヤ4a、4b、4cの繰出し長さが大きい程、発電機12を回転駆動する時間(回転数)が増大するので、一段と多量の電力を得易くなる。したがって、例えば、少なくとも1つのウインチドラム3a、3b、3cのワイヤ4a、4b、4cの最大繰出し長さが50m以上であることが好ましい。すべてのウインチドラム3a、3b、3cのうち、少なくともワイヤの最大繰出し長さが最も長い1つ(主巻きとなるウインチドラム3a)を発電の利用対象にすることが望ましい。
【0037】
電気機器16の種類は特に限定されるものではないが、例えば、保安灯、各種照明、パーソナルコンピュータ等を例示できる。
【符号の説明】
【0038】
1 クレーン装置
2 クレーン
3a、3b、3c ウインチドラム
4a、4b、4c ワイヤ
5 吊荷
6 エンジン
6a 出力軸
7 トルクコンバータ
8 駆動軸
8a プーリ
9 減速機
10 伝動部
11 ワンウエイクラッチ
11a 歯車
11b 歯止め
12 発電機
12a プーリ
13 制御部
14 バッテリー
15 船
16 電気機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンと、このクレーンの作動に用いるワイヤを繰出しおよび巻取りするウインチドラムとを備えたクレーン装置において、前記ウインチドラムの回転により回転駆動される発電機と、この発電機とウインチドラムとの間に介設されるワンウエイクラッチと、前記発電機により発電された電力を制御する制御部と、この電力を蓄電するバッテリーとを有し、前記ウインチドラムがワイヤを繰出すことにより回転する場合のみ、前記ワンウエイクラッチによりウインチドラムの回転が前記発電機に伝わり回転駆動される構成にしたことを特徴とするクレーン装置。
【請求項2】
船に搭載される請求項1に記載のクレーン装置。
【請求項3】
前記ウインチドラムが複数設けられている請求項1または2に記載のクレーン装置。
【請求項4】
前記ワイヤの最大繰出し長さが50m以上である請求項1〜3のいずれかに記載のクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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