説明

クロスカップリング化合物の製造方法

【課題】 有機合成上、非常に重要な反応技術であるクロスカップリング反応において、従来ニッケル系触媒では解決できなかった、芳香族ホウ素化合物のボロン酸エステルを効率的に反応させ、クロスカップリング化合物を得るための製造方法を提供する。
【解決手段】 塩基の存在下、塩化ニッケルとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの錯体及びトリフェニルホスフィンからなる触媒組成物を用い、エーテル系溶媒中で、特定の芳香族ホウ素化合物と特定のハロゲン化合物等とを、芳香族ホウ素化合物に対し0.5〜3倍モル量の水を添加して反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、医農薬中間体、各種機能性化合物等として極めて有用なクロスカップリング化合物の製造方法に関するものである。本発明の方法を用いることにより、種々の機能性化合物を効率的に製造することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
カップリング反応技術は、電子材料、医農薬中間体、各種機能性化合物等を合成する技術として非常に重要である。中でも、塩基及び触媒存在下に、ホウ素化合物と有機ハライド化合物とをクロスカップリング反応させる技術(以下、鈴木カップリング反応技術と略記する)が、有用で汎用性の高い技術として大きく注目されてきており、この技術を利用して様々な有用な化合物を合成可能である。特に近年では、ビアリール化合物(医農薬中間体や液晶材料等)や置換オレフィン化合物(機能性材料の原料等)合成において極めて重要となっている。
【0003】
従来、鈴木カップリング反応技術を利用してビアリールまたは置換オレフィン化合物を合成する際の触媒としては、パラジウム化合物とホスフィン化合物から成る触媒(以下、パラジウム−ホスフィン触媒と略記する)が多用されてきた。しかしながら、パラジウムは非常に高価であり、また、カップリング原料として安価な塩化物の利用が困難であった。
【0004】
これに対し、パラジウムを経済的に有利となる安価なニッケルで代替したニッケル化合物とホスフィン化合物からなる触媒(以下、ニッケル−ホスフィン触媒と略記する)、またはニッケル化合物とアミン化合物からなる触媒(以下、ニッケル−アミン触媒と略記する)が提案されてきており(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1〜4参照)、これらの触媒系は塩化物に対しても有効であることが知られている。しかしながら、これまでニッケル触媒を使用したクロスカップリング反応において、芳香族ボロン酸を用いた例は多く知られていたが、近年その安定性や取り扱いの容易さから注目されている芳香族ボロン酸エステルを用いた場合には、反応が進行した例はほとんどない。これまでには、活性化されたアリールメシレート化合物とのクロスカップリング反応(例えば、非特許文献5参照)とアリールハライド類とのクロスカップリング反応(例えば、特許文献6参照)が報告されているが、前者の方法では高価で取り扱いが困難なBuLiの使用が必要となること、また、後者の方法では収率にバラツキがみられるという課題があり、芳香族ボロン酸エステルを利用して効率的にクロスカップリング化合物を得る製造方法の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−302697公報(実施例)
【特許文献2】特開2000−302720公報(実施例)
【特許文献3】特開2003−119175公報(実施例)
【特許文献4】特開2004−91467公報(実施例)
【特許文献5】特開2004−91465公報(実施例)
【特許文献6】特開2006−305558公報(実施例)
【非特許文献1】「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)」,(英国),1996年,第37巻,p2993−2996(スキーム1、表1〜2)
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」,(米国),1997年,第62巻,p8024−8030(スキーム1、表1〜6)
【非特許文献3】「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)」,(英国),1997年,第38巻,p3513−3516(スキーム1、表1〜2)
【非特許文献4】「テトラヘドロン(Tetrahedron)」,(英国),1999年,第55巻,p11889−11894(図1〜3、表1〜3)
【非特許文献5】「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)」,(英国),1996年,第37巻,p8531−8534(式1、表1〜2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機合成上、非常に重要な反応技術であるクロスカップリング反応において、従来ニッケル触媒系では解決できなかった、芳香族ホウ素化合物のボロン酸エステルを効率的に反応させ、目的のクロスカップリング化合物を得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、塩基の存在下、塩化ニッケルとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの錯体及びトリフェニルホスフィンからなる触媒組成物を用い、エーテル系溶媒中で、芳香族ホウ素化合物に対し0.5〜3倍モル量の水を添加して反応させることにより、従来ニッケル触媒法では利用が困難であった、芳香族ボロン酸エステルを効率的に反応させることが可能となり、目的のクロスカップリング化合物を高収率で製造する方法を見出した。特に、芳香族ボロン酸エステルのオルト位にシアノ基を有する場合には非常に効果的であった。
【0008】
すなわち本発明は、塩基の存在下、塩化ニッケルとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの錯体及びトリフェニルホスフィンからなる触媒組成物を用い、エーテル系溶媒中で、下記式(1)で示される芳香族ホウ素化合物と下記式(2)で示される化合物とを反応させる方法において、式(1)で示される芳香族ホウ素化合物に対し0.5〜3倍モル量の水を添加することを特徴とする下記式(3)で示されるクロスカップリング化合物の製造方法に関するものである。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

(式中、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。aは1〜5の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。Rは置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基を表す。Yはハロゲン原子、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、トシレート基を表す。)
以下、本発明の方法におけるクロスカップリング反応について詳細に説明する。
【0012】
本発明で使用される芳香族ホウ素化合物は、上記式(1)で示される芳香族ボロン酸エステルである。
【0013】
本発明の方法において使用される上記式(1)で示される化合物のRは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。
【0014】
におけるハロゲン原子としては特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0015】
における置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基としては特に限定されないが、例えば、直線状、分岐状または環状のC〜C20のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロエイコシル基等が挙げられ、さらにノルボルナル基、アダマンチル基等の多環式化合物もこの範疇に含まれる。また、それぞれ任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基で置換されていてもよい。
【0016】
における置換もしくは無置換のアリール基としては特に限定されないが、例えば、C〜C18の1〜4環の置換もしくは無置換のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレン基、ピレン基、フェナントレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。また、それぞれ任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基で置換されていてもよい。
【0017】
における置換もしくは無置換のヘテロアリール基としては特に限定されないが、例えば、C〜C18の1〜4環の置換もしくは無置換のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、インドール基、ベンゾチオフェン基、キノリン基、イソキノリン基、カルバゾール基、アクリジン基、フェナントロリン基、フェノチアジン基等が挙げられる。また、それぞれ任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基で置換されていてもよい。
【0018】
における置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基としては特に限定されないが、例えば、C〜C20の1〜4環のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、シクロウンデセニル基、シクロドデセニル基、シクロトリデセニル基、シクロテトラデセニル基、シクロペンタデセニル基、シクロヘキサデセニル基、シクロヘプタデセニル基、シクロオクタデセニル基、シクロノナデセニル基、シクロエイコセニル基等が挙げられ、さらにノルボルニル基等の多環式化合物もこの範疇に含まれる。また、それぞれ任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基で置換されていてもよい。
【0019】
におけるアルコキシ基としては特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基等が挙げられる。
【0020】
におけるアミノ基としては特に限定されないが、アミノ基、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−ノルマルプロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ノルマルブチルアミノ基、N−セカンダリーブチルアミノ基、N−ターシャリーブチルアミノ基、N−ヒドロキシアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジノルマルプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジノルマルブチルアミノ基、N,N−ジセカンダリーブチルアミノ基、N,N−ジターシャリーブチルアミノ基、N,N−ジシクロヘキシルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、ピペリジノ基、1−ピロリジニル基等、モルホリノ基が挙げられる。
【0021】
におけるカルボニル基としては特に限定されないが、ホルミル基、アセチル基、
プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、パラメチルベンゾイル基等が挙げられる。
【0022】
におけるエステル基としては特に限定されないが、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
式(1)で示される芳香族ボロン酸エステルの具体例としては特に限定されないが、2−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、5,5−ジメチル−2−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−フェニル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、3−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、5,5−ジメチル−3−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、3−フェニル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、4−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、5,5−ジメチル−4−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン、4−フェニル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−メチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−メチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−メチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン、2−メトキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−メトキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−メトキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニソール、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニソール、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニソール、2−シアノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−シアノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−シアノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)シアノベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)シアノベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)シアノベンゼン、2−アミノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−アミノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−アミノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アニリン、2−ホルミルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−ホルミルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−ホルミルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンズアルデヒド、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンズアルデヒド、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンズアルデヒド、2−ニトロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−ニトロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−ニトロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ニトロベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ニトロベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ニトロベンゼン、2−フルオロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−フルオロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−フルオロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フルオロベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フルオロベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フルオロベンゼン、2−クロロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−クロロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−クロロフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)クロロベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)クロロベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)クロロベンゼン、2−トリフルオロメチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−トリフルオロメチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トリフルオロメチルベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トリフルオロメチルベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トリフルオロメチルベンゼン、2−エトキシカルボニルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−エトキシカルボニルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−エトキシカルボニルフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸エチル、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸エチル、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸エチル、2−ベンジルオキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−ベンジルオキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−ベンジルオキシフェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジルオキシベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジルオキシベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジルオキシベンゼン、2−(N,N−ジメチルアミノ)フェニルボロン酸プロパンジオールエステル、3−(N,N−ジメチルアミノ)フェニルボロン酸プロパンジオールエステル、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニルボロン酸プロパンジオールエステル、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N,N−ジメチルアミノベンゼン、3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N,N−ジメチルアミノベンゼン、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N,N−ジメチルアミノベンゼン、9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ビス−(トリメチレンボレート)、1,4−ベンゼンジボロン酸ピナコールエステル等が挙げられる
芳香族ホウ素化合物のより好ましい例は、下記式(4)で示されるオルト位に置換基を有するボロン酸エステルである。
【0024】
【化4】

(式中、R〜Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。但し、R,Rの少なくとも一方は水素原子ではない。bは1〜3の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。)
上記式(4)で示される芳香族ボロン酸エステルの具体例としては特に限定されないが、式(1)で例示した化合物のうちの対応するものが同様に挙げられる。反応性及びクロスカップリング化合物の収率の観点から、特に、下記式(5)で示されるオルト位にシアノ基を有する芳香族ホウ素化合物が好ましい。
【0025】
【化5】

(式中、Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。)
本発明の方法において使用される上記式(2)で示される化合物のRは置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基を表す。Yはハロゲン原子、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、トシレート基を表す。
【0026】
における置換もしくは無置換の直線状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基としては特に限定されないが、例えば、前述のRと同じものが例示される。
【0027】
また、Yのハロゲン原子の具体例は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0028】
一般式(2)で示される化合物のさらに好ましい例は、下記式(6)で示される芳香族化合物、もしくは下記式(7)で示されるアルケニル化合物である。
【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

(式中、R〜Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。cは1〜5の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。アルケニル基上の隣接するRとR、同一炭素上にあるRとRはそれぞれ同じ環状の一部であってもよい。Yはハロゲン原子、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、トシレート基を表す。)
上記式(6)で示される芳香族化合物の具体例としては特に限定されないが、例えば、フッ化ベンゼン、塩化ベンゼン、臭化ベンゼン、ヨウ化ベンゼン、フェニルメタンスルホナート、フェニルトリフルオロメタンスルホナート、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、o−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、p−ブロモトルエン、o−ヨードトルエン、m−ヨードトルエン、p−ヨードトルエン、2−エチルクロロベンゼン、3−エチルクロロベンゼン、4−エチルクロロベンゼン、2−エチルブロモベンゼン、3−エチルブロモベンゼン、4−エチルブロモベンゼン、2−エチルヨードベンゼン、3−エチルヨードベンゼン、4−エチルヨードベンゼン、2−プロピルクロロベンゼン、3−プロピルクロロベンゼン、4−プロピルクロロベンゼン、2−プロピルブロモベンゼン、3−プロピルブロモベンゼン、4−プロピルブロモベンゼン、2−プロピルヨードベンゼン、3−プロピルヨードベンゼン、4−プロピルヨードベンゼン、2−ブチルクロロベンゼン、3−ブチルクロロベンゼン、4−ブチルクロロベンゼン、2−ブチルブロモベンゼン、3−ブチルブロモベンゼン、4−ブチルブロモベンゼン、2−ブチルヨードベンゼン、3−ブチルヨードベンゼン、4−ブチルヨードベンゼン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、p−ジブロモベンゼン、o−ブロモクロロベンゼン、m−ブロモクロロベンゼン、p−ブロモクロロベンゼン、o−クロロフルオロベンゼン、m−クロロフルオロベンゼン、p−クロロフルオロベンゼン、o−ブロモフルオロベンゼン、m−ブロモフルオロベンゼン、p−ブロモフルオロベンゼン、o−クロロアニゾール、m−クロロアニソール、p−クロロアニソール、o−ブロモアニゾール、m−ブロモアニソール、p−ブロモアニソール、o−ヨードアニゾール、m−ヨードアニソール、p−ヨードアニソール、o−クロロフェネトール、m−クロロフェネトール、p−クロロフェネトール、o−ブロモフェネトール、m−ブロモフェネトール、p−ブロモフェネトール、o−ヨードフェネトール、m−ヨードフェネトール、p−ヨードフェネトール、o−n−ブトキシクロロベンゼン、m−n−ブトキシクロロベンゼン、p−n−ブトキシクロロベンゼン、o−n−ブトキシブロモベンゼン、m−n−ブトキシブロモベンゼン、p−n−ブトキシブロモベンゼン、o−n−ブトキシヨードベンゼン、m−n−ブトキシヨードベンゼン、p−n−ブトキシヨードベンゼン、o−t−ブトキシクロロベンゼン、m−t−ブトキシクロロベンゼン、p−t−ブトキシクロロベンゼン、o−t−ブトキシフェニルブロマイド、m−t−ブトキシフェニルブロマイド、p−t−ブトキシフェニルブロマイド、o−t−ブトキシヨードベンゼン、m−t−ブトキシヨードベンゼン、p−t−ブトキシヨードベンゼン、2−クロロベンゾニトリル、3−クロロベンゾニトリル、4−クロロベンゾニトリル、2−ブロモベンゾニトリル、3−ブロモベンゾニトリル、4−ブロモベンゾニトリル、2−ヨードベンゾニトリル、3−ヨードベンゾニトリル、4−ヨードベンゾニトリル、o−(1−エトキシエトキシ)クロロベンゼン、m−(1−エトキシエトキシ)クロロベンゼン、p−(1−エトキシエトキシ)クロロベンゼン、o−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼン、m−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼン、p−(1−エトキシエトキシ)ブロモベンゼン、o−(1−エトキシエトキシ)ヨードベンゼン、m−(1−エトキシエトキシ)ヨードベンゼン、p−(1−エトキシエトキシ)ヨードベンゼン、o−アセチルクロロベンゼン、m−アセチルクロロベンゼン、p−アセチルクロロベンゼン、o−アセチルブロモベンゼン、m−アセチルブロモベンゼン、p−アセチルブロモベンゼン、o−アセチルヨードベンゼン、m−アセチルヨードベンゼン、p−アセチルヨードベンゼン、o−アセトキシクロロベンゼン、m−アセトキシクロロベンゼン、p−アセトキシクロロベンゼン、o−アセトキシブロモベンゼン、m−アセトキシブロモベンゼン、p−アセトキシブロモベンゼン、o−アセトキシヨードベンゼン、m−アセトキシヨードベンゼン、p−アセトキシヨードベンゼン、2−トリフルオロメチルクロロベンゼン、3−トリフルオロメチルクロロベンゼン、4−トリフルオロメチルクロロベンゼン、2−トリフルオロメチルブロモベンゼン、3−トリフルオロメチルブロモベンゼン、4−トリフルオロメチルブロモベンゼン、2−トリフルオロメチルヨードベンゼン、3−トリフルオロメチルヨードベンゼン、4−トリフルオロメチルヨードベンゼン、2−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、2−ブロモ安息香酸、3−ブロモ安息香酸、4−ブロモ安息香酸、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、4−ヨード安息香酸、2−クロロ安息香酸メチル、3−クロロ安息香酸メチル、4−クロロ安息香酸メチル、2−ブロモ安息香酸メチル、3−ブロモ安息香酸メチル、4−ブロモ安息香酸メチル、2−ヨード安息香酸メチル、3−ヨード安息香酸メチル、4−ヨード安息香酸メチル、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、3−ブロモアニリン、4−ブロモアニリン、2−ヨードアニリン、3−ヨードアニリン、4−ヨードアニリン、2−クロロホルミルベンゼン、3−クロロホルミルベンゼン、4−クロロホルミルベンゼン、2−ブロモホルミルベンゼン、3−ブロモホルミルベンゼン、4−ブロモホルミルベンゼン等が挙げられる。
【0031】
上記式(7)で示されるアルケニル化合物の具体例としては特に限定されないが、塩化ビニル、臭化ビニル、β−ブロモスチレン、β−クロロスチレン、β−ヨードスチレン、α−ブロモスチレン、α−クロロスチレン、α−ヨードスチレン、1−ブロモ−1−ブテン、1−クロロ−1−ブテン、1−ヨード−1−ブテン、1−ブロモ−1−ペンテン、1−クロロ−1−ペンテン、1−ヨード−1−ペンテン、1−ブロモ−1−ヘキセン、1−クロロ−1−ヘキセン、1−ヨード−1−ヘキセン、1−ブロモ−1−ヘプテン、1−クロロ−1−ヘプテン、1−ヨード−1−ヘプテン、1−ブロモ−1−オクテン、1−クロロ−1−オクテン、1−ブロモ−1−デセン、1−クロロ−1−デセン、1−ヨード−1−オクテン等が挙げられる。
【0032】
本発明の方法では、塩基の存在下、塩化ニッケルとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの錯体及びトリフェニルホスフィンからなる触媒組成物を用い、エーテル系溶媒中で、式(1)で示される芳香族ホウ素化合物と式(2)で示される化合物とを反応させるに際し、式(1)で示される芳香族ホウ素化合物に対し0.5〜3倍モル量の水を添加することにより、クロスカップリング反応を実施する。
【0033】
本発明の方法で使用される水は特に限定されないが、純水が好ましく、脱気されたものも用いることができる。
【0034】
本発明の方法で使用される水の添加量は、使用する芳香族ホウ素化合物に対して0.5〜3倍モルである。特に等倍モルが好ましい。0.5倍モル未満または3倍モルを超える場合には、収率の低下もしくは触媒の失活がみられる。
【0035】
本発明の方法で使用される水の添加は、ニッケル触媒が失活しない方法であれば特に限定はされないが、芳香族ホウ素化合物を溶解させた後での反応液中への添加が好ましい。
【0036】
本発明で使用される触媒組成物は、上記した塩化ニッケル、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン及びトリフェニルホスフィンを混合、またはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンジクロロニッケル錯体にトリフェニルホスフィンを添加することによって得られ、反応系中での調製も可能である。各々の化合物の組成比は、塩化ニッケル1.0モルに対し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1.0〜10.0倍モル、トリフェニルホスフィン1.0〜10.0倍モルの範囲により適宜選択することができる。より好ましくは、塩化ニッケル1.0モルに対し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1.0〜5.0倍モル、トリフェニルホスフィン2.0〜5.0倍モルである。
【0037】
触媒組成物は溶媒存在下に調製することができる。使用される溶媒は、塩化ニッケル、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン及びトリフェニルホスフィンに対して不活性であれば特に限定されないが、例えば、エーテル系溶媒、含酸素系溶媒、含窒素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。通常、これらの溶媒を単独或いは混合して使用することができる。
【0038】
なお、用いる触媒組成物の使用量については、式(1)で示される化合物に対し、ニッケル原子当り0.001〜0.15当量であり、好ましくは0.005〜0.10当量である。使用量が0.001当量未満の場合には、反応が円滑に進行せず、0.15当量を超える場合には、使用量の割には収率が向上せず、かえって経済的に不利となる。
【0039】
本発明の方法で使用される塩基については、塩基性を有する化合物であれば特に限定されないが、通常は無機塩基化合物が挙げられる。無機塩基化合物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化化合物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸セシウム等の炭酸塩化合物、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩化合物、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩化合物、リチウムメトキシド、リチウム−t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等のアルコキシド化合物等が挙げられる。
【0040】
なお、用いる塩基の使用量は、上述した芳香族ホウ素化合物に対して通常0.1〜20当量の範囲で用いられる。使用量が0.1当量未満の場合には、反応が円滑に進行せず、20当量を超える場合には、使用量の割には収率が向上せず、かえって経済的に不利となる。
【0041】
本発明の反応で使用されるエーテル系溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられる。通常、これらの溶媒を単独或いは混合して使用することができる。
【0042】
本発明の方法における反応温度は、通常0〜150℃の範囲である。
【0043】
反応終了後は、酸洗浄、水洗浄、アルカリ洗浄を適当に組み合わせることにより、副生した無機物や未反応原料等を除去し、さらにクロマトグラフィーや蒸留、再結晶等の通常の精製技術により、目的とするクロスカップリング化合物を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
以上の説明から明らかなように、本発明の方法によれば、従来ニッケル系触媒では利用することが困難であった、芳香族ホウ素化合物のボロン酸エステルを効率的に鈴木カップリング反応させることが可能となり、種々の有用なクロスカップリング化合物を高収率で得ることができる。特に、芳香環のオルト位にシアノ基を有する芳香族ボロン酸エステルに対して非常に効果的である。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の方法を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
実施例1
窒素ガスで置換された30ml反応管に、p−クロロトルエン 0.38g(3.0mmol)、2−シアノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル 0.67g(3.6mmol)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンジクロロニッケル錯体(NiCl(tmeda)) 37mg(0.15mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh) 120mg(0.45mmol)、1,4−ジオキサン 5.0g、無水リン酸三カリウム(KPO) 1.91g(9.0mmol)、水65mg(3.6mmol)を加えて、溶媒還流温度にて12時間攪拌した。反応終了後、5%HCl水溶液を加えて後処理し、分液操作にて得られた有機層をさらに飽和NaCl水溶液で洗浄した。得られた有機層をn−ドデカンを内部標準物質とするガスクロマトグラフィー定量分析にて分析した結果、目的物である4’−メチル−2−シアノビフェニルが、収率100%(p−トリフルオロメチルクロロベンゼン基準)の割合で生成していた。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2〜3
実施例1において、添加する水の量を変化させた以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
実施例1において、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンジクロロニッケル錯体(NiCl(tmeda)) 37mg(0.15mmol)及びトリフェニルホスフィン(PPh) 120mg(0.45mmol)の使用量をそれぞれ1/3に減らした以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0049】
実施例5
実施例1において、2−シアノフェニルボロン酸プロパンジオールエステル 0.67g(3.6mmol)の代わりに4−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン 0.58g(3.6mmol)を使用した以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0050】
比較例1〜2
実施例1において、添加する水の量を変化させた以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
実施例1において、水を添加しなかった以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0052】
比較例4
実施例1において、無水リン酸三カリウムに代えてリン酸三カリウム・n水和物(純度:約80%)を使用した以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0053】
比較例5
比較例4において、溶媒を1,4−ジオキサンからトルエンに代えた以外は、比較例3の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例6
実施例1において、溶媒を1,4−ジオキサンからトルエンに代えた以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0055】
比較例7〜10
実施例1において、水の代わりにエタノールを添加した以外は、実施例1の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例11
実施例5において、水を添加しなかった以外は、実施例5の方法に準拠して反応を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の存在下、塩化ニッケルとN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとの錯体及びトリフェニルホスフィンからなる触媒組成物を用い、エーテル系溶媒中で、下記式(1)で示される芳香族ホウ素化合物と下記式(2)で示される化合物とを反応させる方法において、式(1)で示される芳香族ホウ素化合物に対し0.5〜3倍モル量の水を添加することを特徴とする下記式(3)で示されるクロスカップリング化合物の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

(式中、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。aは1〜5の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。Rは置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基を表す。Yはハロゲン原子、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、トシレート基を表す。)
【請求項2】
芳香族ホウ素化合物が、下記式(4)で示されるオルト位に置換基を有する芳香族ホウ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のクロスカップリング化合物の製造方法。
【化4】

(式中、R〜Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。但し、R,Rの少なくとも一方は水素原子ではない。bは1〜3の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。)
【請求項3】
芳香族ホウ素化合物が、下記式(5)で示されるオルト位にシアノ基を有する芳香族ホウ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のクロスカップリング化合物の製造方法。
【化5】

(式中、Xは同一または異なっていてもよく、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルコキシ基を表し、それらは互いに架橋されていてもよい。)
【請求項4】
式(2)で示される化合物が、下記式(6)で示される芳香族化合物、もしくは下記式(7)で示されるアルケニル化合物であることを特徴とする請求項1〜3に記載のクロスカップリング化合物の製造方法。
【化6】

【化7】

(式中、R〜Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の直線状、分岐状または環状のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基を表す。cは1〜5の整数を表す。ベンゼン環の隣り合う炭素原子に結合しているRは、任意に結合してベンゼン環と縮合環を形成してもよい。アルケニル基上の隣接するRとR、同一炭素上にあるRとRはそれぞれ同じ環状の一部であってもよい。Yはハロゲン原子、メタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、トシレート基を表す。)

【公開番号】特開2009−40701(P2009−40701A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205232(P2007−205232)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【Fターム(参考)】