説明

クロスローラーベアリング用リテーナおよびクロスローラーベアリング

【課題】隣接するコロの間を一定に保持可能なグリース溜まりを備えた簡単な形状のクロスローラーベアリング用のリテーナを提案すること。
【解決手段】クロスローラーベアリングのリテーナ6は、軌道4aの矩形断面に対応する矩形輪郭のリテーナ本体板11を備えている。リテーナ本体板の両側の矩形側面12、13は、その対角線上の一方の角14から他方に角15に向かって相互に接近する方向に傾斜した傾斜平面であり、また、軌道4aに装着した状態においてベアリング中心に向かって延びている。矩形側面12、13の中心部分には、所定深さのグリース溜まり用の凹部16、17が形成されており、これらは貫通孔18を介して連通している。矩形側面12、13は隣接するコロの円形外周面に対して線接触し、これらを一定の間隔に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状の矩形断面の軌道内に、円筒状のコロが交互に交差する状態に装着されているクロスローラーベアリングに関し、特に、隣接するコロが接触しないように一定の間隔に保持しているクロスローラーベアリング用リテーナの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスローラーベアリングにおいて、矩形断面の軌道内に装着されているコロの間にスペーサリテーナを配置し、これらによってコロを相互に接触しないように一定の間隔に保持している。スペーサリテーナは、特許文献1の図2、図5、特許文献2の図4、特許文献3に開示されているように、隣接するコロの円形外周面に面接触可能な凹曲面を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−141363号公報
【特許文献2】特開平5−276768号公報
【特許文献3】特許第3424875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の各特許文献において提案されているスペーサリテーナは、コロの円形外周面に面接触可能な凹曲面に沿った形状の面を備えており、形状が複雑であり、製造が簡単でなく、また、製造コストも割高になるという解決すべき課題がある。また、軌道内の各部分にグリースを十分に供給できるようにするために、特許文献3に開示されているように、形状を工夫する必要がある。
【0005】
本発明の課題は、この点に鑑みて、隣接するコロの間を一定に保持可能な簡単な形状のクロスローラーベアリング用リテーナを提案することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、グリース溜めを備えた簡単な形状のクロスローラーベアリング用リテーナを提案することにある。
【0007】
さらに、本発明の課題は、かかる新しいクロスローラーベアリング用リテーナを備えたクロスローラーベアリングを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
クロスローラーベアリングの矩形断面の円環状の軌道内において、隣接する円筒状のコロの間隔を一定に保持するためのクロスローラーベアリング用リテーナであって、
前記軌道の前記矩形断面に対応する矩形輪郭のリテーナ本体板を備えており、
このリテーナ本体板におけるコロに接触する両側の矩形側面は、その一つの対角線の方向に沿って、当該対角線上の一方の角から他方に角に向かって相互に接近する方向に傾斜し、前記軌道に装着した状態においてベアリング中心に向かう傾斜平面であることを特徴としている。
【0009】
次に、本発明のクロスローラーベアリング用リテーナは、上記構成に加えて、前記矩形側面のそれぞれは、その中心部分に所定深さのグリース溜まり用の凹部が形成されており、双方の前記矩形側面に形成されている前記凹部の底面の一部が相互に連通していることを特徴としている。
【0010】
一方、本発明のクロスローラーベアリングは、上記構成のクロスロスローラーベアリング用リテーナによって隣接する円筒状のコロが一定の間隔で軌道内に保持されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクロスローラーベアリング用リテーナは、その矩形輪郭のリテーナ本体板の両側の側面が傾斜平面となっており、これらの傾斜平面はベアリング中心に向かう方向に延びている。したがって、隣接するコロの円形外周面に対して線接触し、これらの間の間隔が一定に保持される。換言すると、矩形輪郭の板を、その一方の対角線における一方の角から他方の角に向かって厚さを漸減させることにより形成した単純な形状のリテーナを用いて隣接配置されているコロを一定の間隔に保持できる。
【0012】
また、グリース溜まりとして、矩形輪郭のリテーナ本体板の両側の傾斜平面に凹部を形成し、これらを相互に連通させておけば、グリース溜まりを介して線接触状態にあるコロにグリースをスムーズに供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明を適用したクロスローラーベアリングを一部切り欠いた状態で示す側面図であり、(b)はその半断面図である。
【図2】(a)は図1のクロスローラーベアリング用リテーナを示す平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施の形態に係るクロスローラーベアリングを説明する。
【0015】
図1に示すように、クロスローラーベアリング1は、一体型の外輪2と、一体型の内輪3と、これらの間の形成されている矩形断面の円環状の軌道4に挿入された円筒状のコロ5と、隣接するコロ5の間を一定の間隔に保持しているリテーナ6とを備えている。例えば、内輪3には、その一方の円環状側面から軌道4に至るコロ挿入溝3aが形成されている。このコロ挿入溝3aは、ボルト7によって内輪3に締結固定した栓8によって封鎖されている。コロ5およびリテーナ6はコロ挿入溝3aから軌道4に挿入される。この代わりに、外輪2あるいは内輪3を左右に分割可能な分割輪とすることにより、コロ5およびリテーナ6を軌道4に挿入するようにしてもよい。
【0016】
図2を参照して、隣接するコロ5の間に挿入されているリテーナ6について説明する。リテーナ6は、プラスチック素材、金属素材、焼結体などから形成したリテーナ本体板11を備えている。リテーナ本体板11は、図2(a)において想像線で示すように、軌道4の矩形断面形状4aに対応する矩形輪郭の板である。
【0017】
リテーナ本体板11におけるコロ5に接触する両側の矩形側面12、13は、その一つの対角線の方向に沿って、当該対角線上の一方の角14から他方に角15に向かって、相互に接近する方向に同一角度で傾斜している傾斜平面である。すなわち、軌道4に装着した状態において、角14が外輪側に位置し、角15が内輪側に位置し、両側の矩形側面12、13はベアリング中心1a(図1(a)参照)に向かう傾斜平面である。したがって、軌道4内において、リテーナ6の両側に配置されるコロ5は図2(c)において想像線で示すように、それらの円形外周面が矩形側面12、13に対して線接触する。
【0018】
次に、矩形側面12、13のそれぞれには、それらの中心部分に、所定深さのグリース溜まり用の凹部16、17が対称状態に形成されている。本例の凹部16、17は逆円錐状の内周面を備えており、それらの底が貫通孔18によって相互に連通している。
【0019】
このように、本例のリテーナ6は、軌道4内に装着されている左右のコロ配置に合わせた傾斜平面となっている左右の矩形側面12、13が備わっている。したがって、左右のコロ5に対して線接触し、これらの間を一定の間隔に保持できる。また、左右の矩形側面12、13とコロ5の円形外周面が線接触しているので、矩形側面12、13に形成したグリース溜まり用の凹部16、17から隣接するコロ5の側にグリースの供給がスムーズに行われる。また、凹部16、17は相互に連通しているので、軌道4内においてリテーナ6を介してグリースを各部分に供給できる。
【符号の説明】
【0020】
1 クロスローラーベアリング
1a ベアリング中心
2 外輪
3 内輪
3a コロ挿入溝
4 軌道
5 コロ
6 リテーナ
11 リテーナ本体板
12、13 矩形側面
14、15 角
16、17 凹部
18 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスローラーベアリング(1)の矩形断面の円環状の軌道(4)内において、隣接する円筒状のコロ(5)の間隔を一定に保持するためのクロスローラーベアリング用リテーナ(6)であって、
前記軌道(4)の前記矩形断面に対応する矩形輪郭のリテーナ本体板(11)からなり、
このリテーナ本体板(11)におけるコロに接触する両側の矩形側面(12、13)は、その一つの対角線の方向に沿って、当該対角線上の一方の角(14)から他方に角(15)に向かって相互に接近する方向に傾斜し、前記軌道(4)に装着した状態においてベアリング中心(1a)に向かう傾斜平面であることを特徴とするクロスローラーベアリング用リテーナ(6)。
【請求項2】
請求項1において、
前記矩形側面(12、13)のそれぞれは、その中心部分に所定深さのグリース溜まり用の凹部(16、17)が形成されており、
双方の前記矩形側面(12、13)に形成されている前記凹部(16、17)の底面の一部が相互に連通していることを特徴とするクロスローラーベアリング用リテーナ(6)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクロスロスローラーベアリング用リテーナ(6)によって軌道(4)内において隣接する円筒状のコロ(5)が一定の間隔で軌道内に保持されていることを特徴とするクロスローラーベアリング(1)。

【図1】
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【図2】
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