説明

クロムめっき膜の処理方法

【課題】 黒クロムめっき膜からの六価クロムの溶出濃度を0.05ppm以下とし、かつ、有毒ガスの発生を防止し、黒クロムめっき膜の耐食性を維持することができるクロムめっき膜の処理方法を提供する。
【解決手段】 六価クロムが残留するクロムめっき膜に対する処理工程を、還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲である第1処理浴にクロムめっき膜を浸漬する1段目の還元処理工程と、還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上である第2処理浴に、1段目の還元処理工程が完了したクロムめっき膜を浸漬する2段目の還元処理工程とからなる2段の還元処理工程とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロムめっき膜の処理方法に係り、特に黒クロムめっき膜からの六価クロムの溶出を低減するための処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属表面に優れた耐食性、硬度、色調を付与する目的で装飾クロムめっき膜、硬質クロムめっき膜、黒クロムめっき膜を形成することが行われている。しかし、クロムめっき膜中に六価クロムが含有される場合、その毒性から自然環境に対する汚染が引き起こされたり、人体に重大な影響が及ぼされるため、クロムめっき膜中から六価クロムを除去することが行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−320805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の六価クロムの除去方法では、ピロ亜硫酸ナトリウム等の還元剤を用いて六価クロムの抽出と、抽出した六価クロムの三価クロムへの還元を行っているが、この方法で六価クロムを除去した後の六価クロムの溶出濃度は2ppm以上であり、六価クロムの溶出濃度の法規制値である0.5ppm以下を達成できないものであった。また、六価クロムの抽出をより効率的に行うために還元剤濃度を高くしたり、処理液の温度を高くすると、激しい酸化還元反応で一時に多量の有毒な亜硫酸ガスが発生して作業環境的に好ましくないという問題もあった。
【0004】
また、装飾クロムめっき膜、硬質クロムめっき膜の場合、六価クロムはクロムめっき膜の表面、または凹部に存在するので、上記の陰極電解法を併用する六価クロムの除去方法でも、六価クロムの溶出濃度を0.5ppm以下とすることが可能であった。しかし、黒クロムめっき膜は、少量の金属クロムと酸化クロムや水酸化クロムのコロイドのゾル・ゲル反応で形成された堆積層皮膜であるため微視的には多孔質皮膜であり、厚みも数ミクロン〜10ミクロン程度の厚膜である。このため、従来の六価クロムの除去方法では、六価クロムの溶出濃度を法規制値である0.5ppm以下にすることは困難であり、六価クロムの溶出濃度に対して、更に厳しい基準、例えば、0.05ppm以下という基準を設定した場合、このような基準をクリアすることはできないものであった。
さらに、従来の六価クロムの除去方法では、クロムめっき膜の耐食性が損なわれ、下地である金属表面に腐食を生じることがあるという問題もあった。
【0005】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、黒クロムめっき膜からの六価クロムの溶出濃度を0.05ppm以下とし、かつ、有毒ガスの発生を防止し、黒クロムめっき膜の耐食性を維持することができるクロムめっき膜の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、六価クロムが残留するクロムめっき膜から六価クロムを除去する処理方法において、還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲である第1処理浴に、クロムめっき膜を浸漬する1段目の還元処理工程と、還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上である第2処理浴に、1段目の還元処理工程が完了したクロムめっき膜を浸漬する2段目の還元処理工程と、を有するような構成とした。
【0007】
本発明の好ましい態様として、第1処理浴に含有される還元剤は亜硫酸水素ナトリウムであり、第2処理浴に含有される還元剤はチオ硫酸ナトリウムであるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、第1処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は20分間以上であり、第2処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は10分間以上であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、第1処理浴のpHは3〜6の範囲、第2処理浴のpHは5〜8の範囲であるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、1段目の還元処理工程と2段目の還元処理工程との間に水洗工程を有するような構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1段目の還元処理工程で使用する第1処理浴が、還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲であるため、激しい酸化還元反応による有毒な亜硫酸ガスの発生が防止され、この1段目の還元処理で、クロムめっき膜の表面や凹部に付着する六価クロムが三価クロムへ還元されるとともに、第1処理浴中への六価クロムの蓄積が抑制され、処理回数を重ねても六価クロムが被処理物であるクロムめっき膜に付着して第2処理浴へ持ち込まれることが防止される。そして、このような1段目の還元処理で六価クロムの含有量が低減されたクロムめっき膜に対して、2段目の還元処理で、還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上である高温・低濃度の第2処理浴が使用されるので、激しい酸化還元反応にはならず、有毒なガスの発生が防止されるとともに、クロムめっき膜の多孔質構造中に残存する六価クロムも三価クロムへ確実に還元され、六価クロムの溶出濃度を0.05ppm以下とすることが可能であり、また、クロムめっき膜の耐食性を損なうことがないという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の最適な実施形態について説明する。
本発明のクロムめっき膜の処理方法は、高濃度の六価クロム存在下における激しい酸化還元反応による有毒なガスの発生を避けるために、室温程度の温度で高濃度還元剤水溶液である第1処理液を使用して1段目の還元処理を行い、この1段目の還元処理で六価クロムの含有量が低減されたクロムめっき膜に対して、高温の低濃度還元剤水溶液である第2処理液を使用して、残存する六価クロムを三価クロムへ還元する2段目の還元処理を行うものである。
【0010】
1段目の還元処理工程では、還元剤を1〜100g/L、好ましくは10〜50g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃、好ましくは25〜35℃の範囲である第1処理浴にクロムめっき膜を浸漬する。第1処理浴における還元剤の含有量が1g/L未満であると、クロムめっき膜と共に第1処理浴に持ち込まれた多量の六価クロムの還元で短時間に還元剤が消耗してしまい、還元処理が不十分なものとなる。また、還元剤の含有量が100g/Lを超えると、第1処理浴の粘性が高くなって還元処理作業に適さず、経済的にも好ましくない。また、第1処理浴の温度が20℃未満であると、還元処理の効率が低下して好ましくなく、40℃を超えると、激しい酸化還元反応で有毒なガスが発生するおそれがあり好ましくない。使用する還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸を挙げることができる。
【0011】
また、2段目の還元処理工程では、還元剤を1〜20g/L、好ましくは10〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上、好ましくは80〜98℃の範囲である第2処理浴に、1段目の還元処理工程が完了したクロムめっき膜を浸漬する。第2処理浴における還元剤の含有量が1g/L未満であると、多孔質皮膜である黒クロムめっき膜の細長い細孔内の六価クロムの還元が不十分となり、また、20g/Lを超えると、激しい酸化還元反応で有毒なガスが発生するおそれがあり好ましくない。また、第2処理浴の温度が80℃未満であると、還元処理の効率が低下して多孔質皮膜である黒クロムめっき膜の細長い細孔内の六価クロムの還元が不十分となり好ましくない。尚、第2処理浴の温度が98℃を超えると、還元反応の効率的には好ましいが、水蒸気の発生が多くなって作業環境上好ましくない。使用する還元剤としては、チオ硫酸ナトリウムを挙げることができる。
【0012】
第1処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は20分間以上、好ましくは20〜30分間とすることができる。浸漬時間が20分間未満であると、クロムめっき膜と共に第1処理浴に持ち込まれた多量の六価クロムの還元が不十分となり、処理回数を重ねるにしたがって第1処理浴中に六価クロムが蓄積され、被処理物であるクロムめっき膜に付着して六価クロムが第2処理浴へ持ち込まれるので好ましくない。
【0013】
また、第2処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は10分間以上、好ましくは10〜20分間とすることができる。浸漬時間が10分間未満であると、多孔質皮膜である黒クロムめっき膜の細長い細孔内の六価クロムの還元が不十分となり好ましくない。
【0014】
本発明では、第1処理浴のpHは3〜6、好ましくは3.5〜5.5の範囲で設定することができる。また、第2処理浴のpHは5〜8、好ましくは5.5〜7.5の範囲で設定することができる。pHが上記の範囲を下回る場合、クロムめっき膜の耐食性、硬度が損なわれることがあり好ましくなく、pHが上記の範囲を超える場合、廃液処理上好ましくない。第2処理浴は、上述のように、第1処理浴よりも高温の浴であり、pHが低いとクロムめっき膜の損傷が大きくなるので、第1処理浴よりもpHを高く設定することが好ましい。
【0015】
このような本発明のクロムめっき膜の処理方法は、1段目の還元処理工程で使用する第1処理浴が、還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲であるため、激しい酸化還元反応による有毒なガスの発生が防止され、この1段目の還元処理で、クロムめっき膜の表面や凹部に付着する六価クロムが三価クロムへ還元される。また、第1処理浴中への六価クロムの蓄積が抑制され、処理回数を重ねても六価クロムが被処理物であるクロムめっき膜に付着して第2処理浴へ持ち込まれることが防止される。そして、このような1段目の還元処理で六価クロムの含有量が低減されたクロムめっき膜に対して、2段目の還元処理で、還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上である高温・低濃度の第2処理浴が使用されるので、激しい酸化還元反応にはならず、有毒なガスの発生が防止される。そして、クロムめっき膜の多孔質構造中に残存する六価クロムも三価クロムへ確実に還元され、六価クロムの溶出濃度を0.05ppm以下とすることが可能である。さらに、本発明では、クロムめっき膜の耐食性を損なうことがない。
【0016】
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1段目の還元処理工程と2段目の還元処理工程との間に水洗工程を有するものであってもよい。このように、水洗工程を1段目の還元処理工程と2段目の還元処理工程との間に介することにより、第1処理浴中に存在する六価クロムが被処理物であるクロムめっき膜に付着して第2処理浴へ持ち込まれることがより確実に防止される。
【実施例】
【0017】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[試料1]
まず、厚さ2mmの鉄材(20mm×50mm)に、メルテックス(株)製 エコノクロムBKを用いて厚さ5μmの黒クロムめっき膜を成膜して被処理物を作製し、水洗を行った。尚、浴濃度は370g/L、浴温度は11℃とした。
【0018】
次に、亜硫酸水素ナトリウム10g/L水溶液(液温20℃)を第1処理浴として使用し、これに被処理物を20分間浸漬して1段目の還元処理を行った。
次いで、チオ硫酸ナトリウム10g/L水溶液(液温80℃)を第2処理浴として使用し、これに1段目の還元処理が完了した被処理物を20分間浸漬し、2段目の還元処理を行った。
【0019】
尚、上記の還元処理時に、亜硫酸ガス検知管((株)ガステック製 気体検知管)を使用して、亜硫酸ガスの発生の有無を確認した。
このように2段の還元処理が施された被処理物(試料1)について、下記の条件で六価クロムの溶出試験を行い、結果を下記の表1に示した。
【0020】
また、2段の還元処理が施された被処理物(試料1)について、下記の条件で耐食性試験を行い、結果を下記の表1に示した。尚、耐食性の評価は、還元処理を施していない被処理物(下記の試料29)に同様の耐食性試験を行い、下地金属である鉄材に腐食(赤錆)が発生した時間(168時間)以上の耐食性を示した場合を○、168時間未満の耐食性である場合を×と判定して記載した。
【0021】
(六価クロムの溶出試験)
2段の還元処理が施してから1日放置した後、被処理物をイオン交換水中で80℃、10分間浸漬(負荷量:2dm2/L)し、その後、(株)共立理化学研究所製のパックテスト六価クロム用を用いて、イオン交換水中の六価クロム量を測定(測定限界:0.05ppm)する。尚、試料点数は3個とした。
【0022】
(耐食性試験)
被処理物に塩水(塩化ナトリウム濃度50g/L)を噴霧し、その後、35℃で放置して、下地金属である鉄材に腐食(赤錆)が発生するまでの時間を測定する。尚、試料点数は2個とした。
【0023】
[試料2〜試料22]
第1処理浴の亜硫酸水素ナトリウムの含有量、液温、浸漬時間を下記の表1〜3に示すように変更し、また、第2処理浴のチオ硫酸ナトリウムの含有量、液温、浸漬時間を下記の表1〜3に示すように変更した他は、試料1と同様に2段の還元処理を被処理物に施して試料2〜22を得た。これらの試料2〜22について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表1〜3に示した。
【0024】
[試料23〜試料25]
下記の表3に示すように、1段目の還元処理、あるいは、2段目の還元処理を行わない他は、試料1と同様に、還元処理を被処理物に施して試料23〜試料25を得た。これらの試料23〜試料25について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表3に示した。
【0025】
[試料26]
1段目の還元処理と2段目の還元処理との間に、水洗処理(水温20℃、10分間)を介した他は、試料1と同様に2段の還元処理を被処理物に施して試料26を得た。この試料26について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表3に示した。
【0026】
[試料27]
第1処理浴として、L−アスコルビン酸100g/L水溶液(液温20℃)を使用した他は、試料1と同様に2段の還元処理を被処理物に施して試料27を得た。この試料27について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表3に示した。
【0027】
[試料28]
1段目の還元処理と2段目の還元処理を入れ換えた他は、試料1と同様に2段の還元処理を被処理物に施して試料28を得た。この試料28について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表3に示した。
【0028】
[試料29]
還元処理を施していない被処理物を試料29とし、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験(標準試料とする)を行い、結果を下記の表3に示した。
【0029】
[試料30]
ピロ亜硫酸ナトリウム10重量%水溶液(液温20℃)に3分間浸漬し、その後、1000mLの純水中に浸漬して加熱し、純水を沸騰させて約100mLに濃縮させて還元処理を施して試料30を得た。この試料30について、試料1と同様にして、六価クロムの溶出試験、耐食性試験を行い、結果を下記の表3に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
1段目の還元処理工程で使用した第1処理浴が、還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲で、浸漬時間が20分以上であり、2段目の還元処理工程で使用した第2処理液が、還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上で、浸漬時間が10分以上である試料1〜8、試料14〜18、試料26、27は、六価クロムの溶出濃度が0.05ppm以下であり、かつ、優れた耐食性を維持したものであった。
【0034】
これに対して、1段目の還元処理工程で使用した第1処理浴の還元剤の含有量が1g/L未満である試料9は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。また、1段目の還元処理工程で使用した第1処理浴の還元剤の含有量が100g/Lを超える試料10は、六価クロムの溶出濃度が0.05ppm以下であり、かつ、優れた耐食性を維持したものであったが、第1処理浴の粘度が高く還元処理の作業性が悪いものであった。
【0035】
1段目の還元処理工程で使用した第1処理浴の液温が20℃未満である試料11は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。また、1段目の還元処理工程で使用した第1処理浴の液温が40℃を超える試料12は、六価クロムの溶出濃度が0.05ppm以下であったが、第1処理浴での亜硫酸ガスの発生がみられた。
1段目の還元処理工程で第1処理浴への浸漬時間が20分間未満である試料13は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。
【0036】
2段目の還元処理工程で使用した第2処理浴の還元剤の含有量が1g/L未満である試料19は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。また、2段目の還元処理工程で使用した第2処理浴の還元剤の含有量が20g/Lを超える試料20は、六価クロムの溶出濃度が0.05ppm以下であったが、第2処理浴での亜硫酸ガスの発生がみられた。
【0037】
2段目の還元処理工程で使用した第2処理浴の液温が80℃未満である試料21は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。
2段目の還元処理工程で第2処理浴への浸漬時間が10分間未満である試料22は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。
【0038】
1段目の還元処理工程で、還元剤含有量10g/L、液温20℃の第1処理浴に20分間浸漬したが、2段目の還元処理が行われなかった試料23は、耐食性に優れるものの、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。また、第1処理浴の還元剤含有量を100g/L、液温60℃に高めて1段目の還元処理を行った試料24は、試料23に比べて六価クロムの溶出濃度が0.05〜0.1ppmまで減少したが、亜硫酸ガスの発生がみられ、また、耐食性が劣化した。
【0039】
また、1段目の還元処理を行わず、試料1と同様の2段目の還元処理のみを行った試料25は、六価クロムの溶出濃度が0.1〜0.2ppmであった。
また、1段目の還元処理と2段目の還元処理を、試料1の場合と逆の順序で行った試料28では、1段目の還元処理で亜硫酸ガスの発生がみられた。
【0040】
還元処理を施していない試料29は、六価クロムの溶出濃度が2ppmであった。
また、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いて還元処理を行った後、純水中で加熱した試料30は、六価クロムの溶出濃度が2ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
六価クロムを含有するクロムめっき膜からの六価クロムの溶出を低減することが要求される種々の製造分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六価クロムが残留するクロムめっき膜から六価クロムを除去する処理方法において、
還元剤を1〜100g/Lの範囲で含有し、液温が20〜40℃の範囲である第1処理浴に、クロムめっき膜を浸漬する1段目の還元処理工程と、
還元剤を1〜20g/Lの範囲で含有し、液温が80℃以上である第2処理浴に、1段目の還元処理工程が完了したクロムめっき膜を浸漬する2段目の還元処理工程と、を有することを特徴とするクロムめっき膜の処理方法。
【請求項2】
第1処理浴に含有される還元剤は亜硫酸水素ナトリウムであり、第2処理浴に含有される還元剤はチオ硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載のクロムめっき膜の処理方法。
【請求項3】
第1処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は20分間以上であり、第2処理浴へのクロムめっき膜の浸漬時間は10分間以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロムめっき膜の処理方法。
【請求項4】
第1処理浴のpHは3〜6の範囲、第2処理浴のpHは5〜8の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のクロムめっき膜の処理方法。
【請求項5】
1段目の還元処理工程と2段目の還元処理工程との間に水洗工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のクロムめっき膜の処理方法。

【公開番号】特開2010−150601(P2010−150601A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329873(P2008−329873)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(593174641)メルテックス株式会社 (28)
【出願人】(509001331)株式会社テクノオオツカ (1)
【出願人】(509001320)株式会社テーオーピー (1)
【Fターム(参考)】