説明

クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物、その製造法および該顔料混合物の使用

(a1)少なくとも1つの燐酸水素カルシウム顔料30〜60質量%、(a2)少なくとも1つの無定形のカルシウム変性された二酸化珪素15〜45質量%、(a3)少なくとも1つの硼珪酸カルシウム顔料5〜25質量%および(a4)有機ニトロ化合物の少なくとも1つの亜鉛塩1〜15質量%からなる、但し、この場合クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)の亜鉛含量は、10質量%を超えないものとし、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A);該顔料混合物(A)の製造方法およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、新規のクロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物に関する。更に、本発明は、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物を製造するための新規方法に関する。更に、本発明は、クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性顔料混合物の使用およびクロム不含で亜鉛貧有の新規の硬化可能な材料、殊に下塗り材料、特にプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラを製造するための、新規方法により製造されたクロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物の使用に関する。とりわけ、本発明は、クロム不含で亜鉛貧有の新規の硬化された耐蝕性材料、殊に下塗り剤および中間被覆を製造するための、クロム不含で亜鉛貧有の新規の硬化可能な材料の使用に関する。
【0002】
背景技術
プライマー塗装または略してプライマーは、直接に金属支持体上に施こされる薄手の層のための総称であり、被覆系において、殊に付着補助のため、および耐蝕のために下塗り剤としての一定の機能を担うことができる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Theime Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Primer<<参照)。
【0003】
下塗り目止め剤または目止め用プライマーは、下塗り剤と目止め剤の性質を合わせて持つ基本被覆剤である(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Theime Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Grundierfueller<<参照)。
【0004】
中間被覆のための材料を含めて下塗り材料は、直接に支持体上または古い塗装上に修復の目的のために塗布される被覆剤である。そのために、殊に下塗り目止め剤、プライマー、下塗り剤およびスパチュラが属する(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Theime Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Grundiermaterialien<<参照)。
【0005】
目止め剤は、自動車量産塗装、自動車修復塗装および工業用塗装における中間被覆のための被覆剤である。この目止め剤は、支持体の凹凸を直し、付着力および耐蝕性を補助し(殊に、下塗り目止め剤として)、ならびに全被覆系または多層塗装の良好な耐砕石衝撃性の達成に努力するという課題を有する(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Theime Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Fueller<<; またはGoldschmidt/Streitberger, BASF Handbuch Lackiertechnik, Vincentz Verlag, Hannover, 2002, >>7.1.4 Fueller<<, 第725〜728頁および>>Automobilreparaturlackierung<<, 第737〜744頁参照)。
【0006】
スパチュラまたはスパチュラ材料は、DIN 55945:1996−09の記載によれば、下塗り剤または目止め剤による補正のためには大きすぎる下地の凹凸の修正に使用される、顔料添加された、高度に目止めされる被覆剤である(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Spachtel<<; またはGoldschmidt/Streitberger, BASF Handbuch Lackiertechnik, Vincentz Verlag, Hannover, 2002, >>7.2 Automobilreparaturlackierung<<, 第737〜744頁参照)。
【0007】
前記被覆の耐蝕性の作用は、殊に耐蝕性顔料の含量に基づく(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Theime Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Korrosionsschutz-Beschichtungsstoff<< und >>Korrosionsschtz-Pigmente<<参照)。この場合、クロム酸塩含有耐蝕性顔料および/または亜鉛含有耐蝕性顔料は、特に高い耐蝕作用を発揮する(上掲書, >>Chromat-Pigmente<<, >>Zinkchromate<<, >>Zinkoxid<<, >>Zinkphosphat<< und >>Zink-Pigmente<<、ならびにドイツ連邦共和国特許出願公開第10048268号明細書A1参照)。しかし、この顔料は、毒物学的に極めて懸念され、そのために当業界では、この顔料を毒物学的に殆んど懸念されないかまたは全く懸念されない別の耐蝕性顔料によって置き換えるという努力がなされている。
【0008】
クロム不含および亜鉛不含の耐蝕性顔料は、自体公知である。
【0009】
即ち、Heubach GmbH社から結晶水不含の燐酸水素カルシウムがHeucophos(登録商標)CHPの商品名で水希釈可能なハイブリッド系のための耐蝕性顔料として販売されている。
【0010】
Lawrence Industries社は、硼硅酸カルシウム、殊にHalox(登録商標)CW-2230をアルキド樹脂、エポキシ樹脂、油、フェノール樹脂、アルキド/クロロゴムおよびVT−アルキド樹脂を基礎とする、被覆剤のための耐蝕性顔料として販売している。
【0011】
Grace社は、無定形のカルシウム変性された二酸化珪素をMarke Shieldex(登録商標)AC-3の商品名でコイル−コーティング下塗り剤および1成分系または2成分系のエッチング・プライマーのための非毒性の耐蝕性顔料として販売している。
【0012】
更に、Heubach社は、有機ニトロ化合物の亜鉛塩(亜鉛含量44質量%)をHeucorin(登録商標)RZの商品名で被覆のための腐蝕防止剤として販売している。
【0013】
しかし、前記の耐蝕性顔料および腐蝕防止剤は、いずれも単独では自動車修復塗装のための下塗り材料に課せられた厳しい要件を満たすのに十分な耐蝕性の作用を有していないことが判明した。更に、当該の下塗り材料または該材料から製造された下塗り剤および中間被覆は、支持体に対する被覆力および中間層付着力ならびに耐砕石衝撃性の保護作用の点でまだ不十分である。
【0014】
課せられた課題
本発明は、簡単な方法で自体公知の簡単に得ることができる耐蝕性顔料を製造することができかつ耐蝕作用の点でクロムおよび/または亜鉛を基礎とする耐蝕性顔料のために必要要件を全て満たした使用を提供する、クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性顔料混合物を準備するという課題に基づいていた。
【0015】
クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性顔料混合物は、簡単な方法で硬化可能な材料中、特に下塗り材料、殊にプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラ中に混入することができる。
【0016】
新規の硬化可能な材料、特に新規の下塗り材料、殊に新規のプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラは、これらの材料がむしろ予想を上廻らない場合に、従来のクロム含有および/または亜鉛含有の硬化された材料の耐蝕作用と少なくとも比較可能である耐蝕作用を有する、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性の新規の硬化された材料、殊に下塗り剤および中間被覆を提供する。この場合、クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性下塗り剤および中間被覆は、古い塗装を含めて多種多様の支持体に対する高い付着力、および高い中間層付着力、優れた機械的性質および特に高い耐砕石衝撃作用を有し、支持体の粗い凹凸を有利に補正するはずである。
【0017】
発明による解決
それに応じて、
(a1)少なくとも1つの燐酸水素カルシウム顔料30〜60質量%、
(a2)少なくとも1つの無定形のカルシウム変性された二酸化珪素15〜45質量%、
(a3)少なくとも1つの硼硅酸カルシウム顔料5〜25質量%および
(a4)有機ニトロ化合物の少なくとも1つの亜鉛塩1〜15質量%からなる、但し、この場合クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性顔料混合物(A)の亜鉛含量は、10質量%を上廻らないものとし、クロム不含で亜鉛貧有の新規の耐蝕性顔料混合物(A)が見い出された。この新規の耐蝕性顔料混合物(A)は、以下、「本発明による顔料混合物(A)」と呼称する。
【0018】
更に、本発明による顔料混合物(A)の成分を互いに混合し、それによって別々の本発明による顔料混合物(A)を生じるか、または当該成分(a1)、(a2)、(a3)および(a4)を別の物質と混合し、それによって原位置で本発明による顔料混合物(A)を生じることにより、本発明による顔料混合物(A)を製造するための新規方法が見出された。
【0019】
以下、本発明による顔料混合物(A)を製造するための新規方法は、「本発明による方法」と呼称する。
【0020】
更に、本発明による顔料混合物(A)の新規使用および本発明による方法により製造された、硬化可能な材料を製造するための本発明による顔料混合物(A)が見出された。このことは、以下、「本発明による使用」と呼称される。
【0021】
他の本発明の対象は、発明の詳細な説明から明らかである。
【0022】
発明の利点
公知技術水準に関連して、本発明の基礎となる課題が本発明による顔料混合物(A)、本発明による方法および本発明による使用を用いて解決されることができたことは、意外であり、かつ当業者には予測できなかった。
【0023】
殊に、本発明による顔料混合物(A)は、簡単な方法で殊に本発明による方法により自体公知の簡単に得ることができる耐蝕性顔料から製造することができ、かつ耐蝕作用の点でクロムおよび/または亜鉛を基礎とする耐蝕性顔料のために必要要件を全て満たした使用が提供されることは、意外なことであった。
【0024】
本発明による顔料混合物(A)は、簡単な方法で硬化可能な材料中、特に下塗り材料、殊にプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラ中に混入することができた。
【0025】
生じる本発明による硬化可能な材料、特に本発明による下塗り材料、殊に本発明によるプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラは、簡単に取り扱うことができ、かつ塗布することができた。
【0026】
本発明による硬化可能な材料は、多種多様な機構により硬化されることができ、したがって極めて広範囲に使用可能である。殊に、本発明による硬化可能な材料は、修復塗装、殊に自動車修復塗装に使用する際に特に利点を有する。
【0027】
本発明による硬化可能な材料は、この材料がむしろ予想を上廻らない場合に、従来のクロム含有および/または亜鉛含有の硬化された材料の耐蝕作用と少なくとも比較可能である耐蝕作用を有する、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性の新規の硬化された材料、殊に新規の下塗り剤および中間被覆を提供する。この場合、本発明による下塗り剤および中間被覆は、古い塗装を含めて多種多様の支持体に対する高い付着力、および高い中間層付着力、優れた機械的性質および特に高い耐砕石衝撃作用を有し、支持体の粗い凹凸を有利に補正することができた。
【0028】
しかし、特に本発明による顔料混合物(A)が本発明による硬化された材料において好ましい作用を既に比較可能な僅かな量で発揮することは、意外なことであった。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明による顔料混合物(A)は、クロム不含である。即ち、この本発明による顔料混合物(A)は、クロムを最大痕跡で含有し、この痕跡は、例えばクロム痕跡の成分の場合によっては存在する天然の含量に基づいて持ち込まれる。有利には、クロム含量は、クロムを定性的および定量的に測定するための通常の公知の化学的方法および物理的方法の検出限界未満である。
【0030】
本発明による顔料混合物(A)は、亜鉛貧有である。即ち、この本発明による顔料混合物(A)の亜鉛含量は、10質量%、特に7質量%、殊に5質量%を上廻らない。
【0031】
本発明による顔料混合物(A)は、
(a1)少なくとも1つの、殊に1つの燐酸水素カルシウム顔料30〜60質量%、特に35〜55質量%、殊に40〜50質量%、
(a2)少なくとも1つの、殊に1つの無定形のカルシウム変性された二酸化珪素15〜45質量%、特に20〜40質量%、殊に25〜35質量%、
(a3)少なくとも1つの、殊に1つの硼硅酸カルシウム顔料5〜25質量%、特に7〜22質量%、殊に10〜20質量%、
(a4)少なくとも1つの、殊に1つの有機ニトロ化合物の亜鉛塩1〜15質量%、特に2〜12質量%、殊に3〜10質量%からなる。
【0032】
特に、燐酸水素カルシウム顔料(a1)は、38〜43質量%、有利に38.5〜42.5質量%の酸化カルシウムとしてのカルシウム含量および43〜48質量%、有利に43.5〜47.5質量%の五酸化二燐としての燐含量を有する。クールター マルチサイザー(Coulter Multisizer) IIで測定された平均粒度は、特に1〜10μm、有利に1.5〜5μm、殊に2.5〜4μmである。DIN 53195による篩残留物(32μmを上廻る)は、特に0.01質量%未満である。
【0033】
燐酸水素カルシウム顔料(a1)は、通常の公知の生成物であり、例えばHeubach社からHeucophos(登録商標)CHPの商品名で販売されている。
【0034】
特に、無定形のカルシウム変性された二酸化珪素(a2)は、4〜8質量%、有利に4.5〜7.5質量%、殊に5〜7質量%のカルシウム含量を有する。クールター カウンター(Coulter Counter)、ノズル開口50μmで測定された平均粒度は、特に1〜10μm、有利に1.5〜5μm、殊に2〜4μmである。湿式篩残留物(25μmを上廻る)は、特に0.01質量%未満である。
【0035】
無定形のカルシウム変性された二酸化珪素(a2)は、通常の公知の製品であり、例えばGrace社によってShieldex(登録商標)AC−3の商品名で販売されている。
【0036】
特に、硼珪酸カルシウム顔料(a3)は、43〜44質量%の酸化カルシウム含量、17〜18質量%の三酸化二硼素含量および38〜39.5質量%の二酸化珪素含量を有する。この硼珪酸カルシウム顔料(a3)は、特に前記の粒度を有する。
【0037】
硼珪酸カルシウム顔料(a3)は、通常の公知の生成物であり、例えばLawrence Indusries社からHalox(登録商標)CW-2230の商品名で販売されている。
【0038】
特に、有機ニトロ化合物(a4)の亜鉛塩は、40〜50質量%、有利に43〜45質量%の亜鉛含量を有する。この有機ニトロ化合物(a4)の亜鉛塩は、特に前記の粒度を有する。好ましくは、篩残留物(45μmを上廻る)は、ISO 787、第18部の記載により0.02質量%未満である。
【0039】
有機ニトロ化合物(a4)の亜鉛塩は、同様に通常の公知の生成物であり、例えばHeubach社からHeucorin(登録商標)RZの商品名で販売されている。
【0040】
本発明による顔料混合物(A)は、任意の方法で製造されることができる。特に、本発明による顔料混合物(A)は、本発明による方法により製造される。
【0041】
本発明による方法の場合、前記の成分(a1)、(a2)、(a3)および(a4)は、特に粉末状の固体として互いに混合され、この場合には、通常の公知の粉末混合機が使用されてよい。本発明による方法の前記実施態様の場合、本発明による顔料混合物(A)は、別々の生成物として生じ、この生成物は、規定通りの使用になるまで特殊な用心措置なしに貯蔵および運搬することができ、このことは、本発明による顔料混合物(A)の他の特殊な利点を表わす。
【0042】
しかし、本発明による方法の場合、前記の成分(a1)、(a2)、(a3)および(a4)は、特に粉末状の固体として、別の物質、特に本発明により硬化可能な物質の成分と混合されてもよく、したがって生じる混合物は、均質化される。これは、常用かつ公知の混合方法および装置、例えば撹拌釜、アジテータミル、押出機、混練機、ウルトラタラックス(Ultraturrax)、インラインディソルバー、スタティックミキサー、マイクロミキサー、歯車分散機(Zahnkranzdispergatorn)、圧力放圧ノズルおよび/またはマイクロフルイダイザーを用いて行なうことができる。本発明による方法の前記実施態様の場合には、原位置で本発明による顔料混合物(A)は、特に本発明による顔料ペーストまたは顔料調製物中(Roempp Lexiko Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Pigmentpraeparationen<<)または本発明による硬化可能な物質中で生じる。
【0043】
本発明による顔料混合物(A)のもう1つの特殊な利点は、即ちこの顔料混合物(A)が本発明による顔料ペーストの形でも特に簡単に極めて良好に再現可能に本発明による硬化可能な物質に加工することができることにある。
【0044】
本発明による顔料混合物(A)は、極めて広範囲に使用されることができ;特にこの顔料混合物(A)は、本発明による使用の範囲内で硬化可能な物質の製造に使用される。
【0045】
本発明による顔料混合物(A)の特殊な利点は、この顔料混合物(A)が好ましい作用を比較的微少量で発揮することにある。即ち、本発明による顔料混合物(A)に対する本発明による硬化可能な物質の含量は、特に1〜50質量%、有利に1〜40質量%、殊に1〜25質量%である。
【0046】
特に、本発明による硬化可能な材料の亜鉛含量は、それぞれ本発明による材料に対して0.002〜3質量%、有利に0.003〜2質量%、殊に0.004〜1.5質量%である。
【0047】
本発明による硬化可能な材料は、物理的に、熱的におよび/または化学線で硬化可能であることができる。
【0048】
本発明の範囲内で「物理的硬化」の概念は、本発明による硬化可能な材料からの溶剤放出による被膜形成によって本発明による硬化可能な材料を硬化させることを意味し、この場合本発明による硬化可能な材料内での結合は、結合剤のポリマー分子のループ形成(この概念に関しては、Roempp Lexiko Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Bindemittel<<, 第73頁および第74頁参照)により行なわれる。または、この被膜形成は、結合剤粒子の凝集により行なわれる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, ≫Haertung≪, 274及び275頁参照)。それによって、熱可塑性の本発明による硬化された材料が生じる。
【0049】
本発明の範囲内で「熱的硬化」の概念は、熱により開始される、本発明による硬化可能な材料の硬化を意味し、この場合には、通常、結合剤および別個に存在する架橋剤が使用される。これは、通常、当業界によって外部架橋と呼ばれている。架橋剤が結合剤中に既に組み込まれている場合には、自己架橋とも云われる(Roempp Lexiko Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Haertung<<, 第274頁および第276頁、殊に第275頁以降参照)。それによって、熱硬化性の本発明による硬化された材料が生じる。
【0050】
本発明の範囲内において化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線またはγ線、殊にUV線、および粒子線、例えば電子線、β線、α線、中性子線または陽子線、特に電子線であると解釈される。従って、相応する本発明による硬化可能な材料は、化学線で活性化可能な成分を含有し、それによってこの材料は、ラジカル的またはイオン的、殊にラジカル的に重合される。それによって、本発明による硬化可能な材料の三次元架橋が行なわれる。それによって、熱硬化性の本発明による硬化された材料が生じる。
【0051】
本発明による硬化可能な材料は、1つの硬化機構により硬化することができるかまたは2つまたは全部で3つの硬化機構により硬化することができる。殊に、この本発明による硬化可能な材料は、熱的に硬化可能である。
【0052】
本発明による硬化可能な材料は、多種多様な物理的状態で三次元の形で存在することができます。
【0053】
即ち、この本発明による硬化可能な材料は、固体または液状であってもよいし、流動性であってもよい。しかし、この本発明による硬化可能な材料は、室温で固体であってもよく、高められた温度で流動性であってもよく、この場合この材料は、特に熱可塑性の挙動を示す。殊に、この本発明による硬化可能な材料は、常用の有機溶剤を含有する物質、水性物質、実質的にまたは完全に溶剤不含および水不含の液状物質(100%系)、実質的にまたは完全に溶剤不含および水不含の固体粉末、または実質的にまたは完全に溶剤不含の粉末懸濁物(粉末スラリー)であることができる。更に、前記の本発明による硬化可能な材料は、結合剤および架橋剤が同時に存在する一成分系、または結合剤および架橋剤が適用の直前まで互いに別個に存在する二成分系または多成分系であってよい。
【0054】
方法論的には、本発明による硬化可能な材料の製造は、特殊性を有さず、前記の成分を常用かつ公知の混合法および装置、例えば撹拌槽、撹拌ミル、押出機、混練機、ウルトラツラックス(Ultraturrax)、インラインディゾルバ、スタティックミキサ、リングギア分散機(Zahnkranzdispergator)、圧力放圧ノズル(Druckentspannungsduese)および/またはマイクロフルイダイザを用いて、場合により化学線の排除下に混合しかつ均質化することによって行なわれる。所定の個々の場合に最適な方法の選択は、特に物理的状態(液状または固体)および本発明による硬化可能な材料が備えている三次元の形(粉末、顆粒またはシート)に左右される。
【0055】
本発明による硬化可能な材料は、多種多様な使用目的に使用することができる。特に、本発明による硬化可能な材料は、製造に使用される。
【0056】
特に、本発明による硬化可能な材料は、下塗り材料、有利にプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラ、特に有利に下塗り目止め剤である。好ましくは、この下塗り目止め剤は、修復塗装、殊に自動車修復塗装に使用される。それに応じて、特に好ましい本発明による硬化可能な材料は、目止め剤塗装または下塗り目止め剤塗装である。
【0057】
特に、本発明による下塗り材料は、液状の有機溶剤含有一成分系または二成分系である。前記の本発明による下塗り材料は、周知のように、反応性の官能基を含有する少なくとも1つの成分Iおよび補足的な反応性の官能基を含有する少なくとも1つの成分IIを含み、この場合双方の種類の補足的な官能基は、当該成分IおよびIIが有利に使用される、即ち本発明による硬化可能な材料が製造されるまで互いに別々に貯蔵されなければならないように互いに急速に反応することができる。このような補足的な反応性の官能基は、常用され公知であり、したがって当業者にとって一般的な専門知識に基づいて極めて簡単に選択されることができる。
【0058】
好ましくは、本発明による硬化可能な材料は、当業界で「ミルベース」とも呼ばれている、特に有利にイソシアネート基不含のイソシアネート反応性官能基含有成分Iおよび当業界で「硬化剤」とも呼ばれている、少なくとも1つのポリイソシアネートを含有する成分IIを含む液状の有機溶剤含有二成分系である。成分IおよびIIは、有利に使用されるまで互いに別々に貯蔵される。
【0059】
適したイソシアネート反応性の官能基の例は、ヒドロキシル基、チオール基、および第一級および第二級のアミノ基、殊にヒドロキシル基である。
【0060】
付加的に、本発明による二成分系は、なお少なくとも1つの他の成分III、例えば通常、以下に記載された不活性有機溶剤からの混合物である所謂希釈剤を含んでいてよい。
【0061】
好ましくは、本発明による顔料混合物(A)は、ミルベースI中に存在し、このミルベースIは、以下、「本発明によるミルベースI」と呼ばれる。
【0062】
本発明によるミルベースIは、少なくとも1つの不活性有機溶剤を含有する。適当な溶剤の例は、教科書Paints, Coatings and Solventz, Dieter Stroye und Werner Freitag (編者), Wiley-VCH, Weinheim, New York, 1998, >>14. Solvents<<, 第277〜373頁の記載から公知である。「不活性」の性質は、当該有機溶剤が熱硬化の際に開始する反応に関与するのではなく、主にまたは完全に形成される本発明による硬化された材料から逃出することを意味する。
【0063】
不活性の有機溶剤は、前記の記載のように希釈剤IIIの製造のために使用されることができる。
【0064】
本発明によるミルベースIは、不活性の有機溶剤以外に少なくとも1つの反応性溶剤または1つの反応希釈剤を含有することができ、これらの反応性溶剤または反応希釈剤は、熱硬化の際に開始される反応に関与し、かつ本発明による硬化された材料の形成される三次元の網状組織中に組み込まれる(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10012580号明細書A1、第9頁、第54頁および第55頁参照)。
【0065】
有機溶剤に対する本発明によるミルベースIの含量は、極めて広範囲に変動することができ、殊に本発明によるミルベースIおよびこれから製造された本発明による下塗り材料が取り扱いおよび使用の際に備えていなければならない粘度により左右される。特に、この含有量は、それぞれ本発明によるミルベースIに対して5〜60質量%、有利に10〜55質量%、殊に10〜50質量%である。
【0066】
本発明によるミルベースIは、少なくとも1つのポリマーの結合剤および/またはオリゴマーの結合剤を含有する。特に、本発明によるミルベースIは、少なくとも2つの、殊に3つのポリマーの結合剤および/またはオリゴマーの結合剤を含有する。
【0067】
本発明の範囲内でオリゴマーは、互いに同一でも異なっていてもよい2〜12個のモノマーの構造単位から構成されている化合物である。ポリマーは、互いに同一でも異なっていてもよい8個を上廻る、殊に12個を上廻るモノマー構造単位から構成されている化合物である。8〜12個のモノマーの構造単位から構成されている化合物が個々の場合には、当業者によってオリゴマーまたはポリマーと見なされているとしても、当該化合物は、殊に分子量により左右される。
【0068】
例えば、Roempp Lexkon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, >>Bindemittel<<の記載から公知であるような全ての常用の公知の結合剤は、結合剤としてこれに該当する。特に、エポキシ樹脂(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10048268号明細書A1、第5頁、段落[0057]および[0058]参照)、(メタ)アクリレート(コ)ポリマー(例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10012580号明細書A1、第5頁、第33頁〜第7頁、第34行参照)および/またはニトロセルロースまたは硝酸セルロース(Roempp Lexkon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998 >>Cellulosenitrat<<参照)が使用される。
【0069】
本発明によるミルベースIの結合剤含量は、極めて広範囲に変動することができ、かつ個々の場合の要件に左右される。特に、この含有量は、それぞれ下塗り材料に対して10〜60質量%、有利に15〜50質量%、殊に20〜40質量%である。
【0070】
特に、本発明によるミルベースIは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10048268号明細書A1、第4頁、段落[0040]および[0041]またはドイツ連邦共和国特許出願公開第10012580号明細書A1、第9頁、第39〜42頁の記載から公知であるような少なくとも1つの充填剤をなお含有する。
【0071】
更に、特に本発明によるミルベースIは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10048268号明細書A1、第4頁、段落[0042]および[0043]の記載から公知であるような本発明による顔料混合物(A)の成分とは異なる少なくとも1つの顔料を含有する。
【0072】
更に、本発明によるミルベースIは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10048268号明細書A1、第4頁、段落[0044]および[0045]またはドイツ連邦共和国特許出願公開第10012580号明細書A1、第9頁、第62行〜第10頁、第20行の記載から公知であるような少なくとも1つの通常の公知の充填剤を有効量で含有することができる。
【0073】
本発明による二成分系の硬化剤IIは、少なくとも1つのポリイソシアネートを含有するかまたは少なくとも1つのポリイソシアネートからなる。硬化剤IIが少なくとも1つのポリイソシアネートからなる場合には、このポリイソシアネートは、特に硬化剤IIの製造および使用に使用される温度、殊に室温で液状である。好ましくは、硬化剤IIは、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび前記の不活性有機溶剤の少なくとも1つからなる。この場合、ポリイソシアネートに対する硬化剤IIの含量は、広範囲に変動しうる。この硬化剤IIの含量は、第1に硬化剤IIが使用の際に備えている粘度により左右される。有利には、この粘度は低く、したがって硬化剤IIは、多大な装置的、時間的およびエネルギー的な費用なしに、殊に少量で手で本発明によるミルベースIと均一に混合されることができる。好ましくは、ポリイソシアネートに対する硬化剤IIの含量は、それぞれ硬化剤IIに対して30〜95質量%、特に有利に40〜90質量%、殊に50〜90質量%である。
【0074】
適当なポリイソシアネートの例は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第10048670号明細書A1、第5頁、段落[0059]〜第6頁、段落[0062]中に詳細に記載されている。特に好ましくは、低粘度のウレトジオン基含有および/またはイミノオキサジアジンジオン基含有のポリイソシアネートが使用される。
【0075】
好ましい本発明による下塗り材料の製造の場合、本発明によるミルベースIと硬化剤IIとの質量比は、極めて広範囲に変動することができる。特に、この質量比は、イソシアネート反応性官能基対イソシアネート基の当量比が1.5:1〜1:1.5、有利に1.3〜1〜1:1.3、殊に1.2:1〜1:1.2であるように調節される。
【0076】
方法論的には、前記の本発明による二成分系からの好ましい本発明による下塗り材料の製造は、特殊性を有さずに、少なくとも1つの本発明によるミルベースIと少なくとも1つの硬化剤IIならびに場合によっては少なくとも1つの他の成分III、殊に希釈剤IIIとの混合および生じる混合物の均質化によって行なわれる。成分IおよびIIならびに場合によってはIIIが一緒に記載される順序は、重要ではなく、個々の場合の要件に適合させることができる。製造のためには、前記の方法および装置を使用することができる。
【0077】
意外なことに、好ましい本発明による下塗り材料は、急速な硬化を導く特に高い反応性の際に特に長い実地に即した可使時間または加工時間を有し、このことは、本発明による下塗り材料の使用を工業的視点からだけでなく、経済的およびオーガナイザー的視点からも特に魅力的なものにする。
【0078】
方法論的に好ましい本発明による下塗り材料の適用は、特殊性を有さずに、通常の全ての適用方法、例えば吹付法、ナイフ塗布法、刷毛塗り法、注型法、浸漬法、液滴法またはロール塗布法によって行なうことができる。特に、吹付塗布法、例えば圧縮空気塗布法、エアレス吹付法(Airless-Spritzen)、高速回転法、静電吹付塗布法(ESTA)、場合によっては加熱吹付法と結合された加熱吹付法、例えば熱風加熱吹付法が使用される。
【0079】
支持体としては、金属、プラスチック、木材、セラミック、石材、織物、複合繊維、皮革、ガラス、ガラス繊維、ガラスウールおよびロックウール、鉱物結合建築材料および樹脂結合建築材料、例えば石膏板およびセメント板または屋根用ブロック、ならびに前記材料の複合体がこれに該当する。修復塗装、殊に自動車修復塗装のための本発明による使用の場合、支持体は、古い塗装を含む(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, >>Altlackierung<<)。
【0080】
好ましい本発明による下塗り材料は、修復塗装、殊に自動車修復塗装以外の使用にも適している。この場合、本発明による下塗り材料は、殊に家具、窓、ドア、室内範囲および室外範囲での建築材料、およびコイル−コーティング、コンテナコーティングを含む工業塗装、ならびに電子技術的構造部材の被覆のために当てはまる。本発明による下塗り材料は、工業塗装の範囲で私的用途または工業的用途のための実際に全ての部材、例えばラジエーター、家庭用機器、金属からなる小型部材、例えばねじおよびナット、ホイールハブキャップ、リム、包装品または電子技術的構造部材、例えばモーターコイルまたは変圧器コイルの塗装に適している。
【0081】
好ましい本発明による下塗り材料を自動車修復塗装に使用する場合には、支持体は、古い塗装または最初の塗装で被覆されている。
【0082】
塗布された好ましい本発明による下塗り材料は、特に好ましい乾燥挙動および硬化挙動を示す。即ち、本発明による下塗り材料は、特に注意深く室温で15分間ないし2日間乾燥させることができる。しかし、この本発明による下塗り材料は、有利に60℃で10分間ないし4時間、殊に30分間ないし4時間乾燥させてもよい。
【0083】
好ましくは、塗布された好ましい本発明による下塗り材料、殊に本発明による目止め剤または下塗り目止め剤は、自動車修復塗装の際に、特に短い排気後に1〜15分間、通常の公知の顔料添加された二成分系上塗り塗料でウェット・オン・ウェット塗布され、その後に本発明による目止め剤層または下塗り目止め剤層および上塗り塗料層は、室温または90℃までの温度で、例えば空気循環路内で一緒に乾燥されるかまたは小さな面積でフェーンまたは赤外線で一緒に乾燥される。しかし、本発明による目止め剤層または下塗り目止め剤層は、場合によってはウェット・オン・ウェット塗布法で通常の公知の基礎塗料および通常の公知のクリヤーラッカーで上塗り塗装されてもよい。引続き、なお硬化されていない層を硬化させることができる。
【0084】
一般に、本発明による下塗り材料は、湿式層厚で塗布され、この下塗り材料の硬化後に本発明による目止め剤塗装または下塗り目止め剤塗装は、当該塗装の機能に必要とされる好ましい層厚で生じる。特に、層厚は、20〜200μm、特に25〜180μm、特に有利に30〜150μm、殊に35〜120μmである。
【0085】
本発明による硬化された材料の前記利点以外に、本発明による目止め剤塗装および下塗り目止め剤塗装は、特に良好な研磨可能性および上塗り塗装可能性を有する。
【0086】
実施例および比較例
実施例1
クロム不含および亜鉛不含の耐蝕性下塗り目止め剤1の製造
下塗り目止め剤を次の成分を混合しかつ生じる混合物を均質化することによって製造した:
キシレン/酢酸ブチル中のエポキシ樹脂の60%の溶液14質量%(Resolurion社またはHexion社のEpikote(登録商標)1001)、
ヒドロキシル基含有のポリアクリレートの溶液12質量%(Cytec社のMacrynal(登録商標)SM515 3.)、
燐酸水素カルシウム顔料(a1)10質量%(Heubach社のHeucophos(登録商標)CHP)、
無定形のカルシウム変性された二酸化珪素(a2)6.4質量%(Grace社のShieldex(登録商標)AC-3)、硼珪酸カルシウム顔料(a3)3.5質量%(Lawrence Industries社のHalox(登録商標)CW2230)、
有機ニトロ化合物(a4)の亜鉛塩1.5質量%(Heubach社のHeucorin(登録商標)RZ)、
無定形の熱分解法二酸化珪素2質量%(Degussa社のAerosil(登録商標)R972)、
二酸化チタン含量11質量%(Du-Pont社のTI-PURE(登録商標)R960)、
市販の色調用顔料1質量%、
硫酸バリウム10質量%(Sachtleben社のBlanc fixe(登録商標)N)、
タルク10質量%(Talc de Luzenac社のLuzenac(登録商標)10M0)、
ニトロセルロース−ウール4質量%(wolff cellulosics社のNC Wolle LSG、酢酸ブチル中で30質量%)、
添加混合物1質量%(流展剤、触媒および付着助剤)および
キシレン/酢酸ブチルを基礎とする溶剤混合物13.6質量%。
【0087】
生じるミルベースIは、クロム不含であり、かつ0.66質量%の亜鉛含量を有していた。このミルベースIは、貯蔵安定性であり、かつ容易に加工することができる。
【0088】
ミルベースI40体積部をキシレンおよび酢酸ブチルを基礎とする希釈剤III10体積部および50%のポリイソシアネート溶液II10体積部(キシレン/酢酸ブチル中のイミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネート、Bayer AG社のDesmodur(登録商標)XP2410)と混合した。引続き、生じる混合物を均質化した。
【0089】
下塗り材料は、数時間の実地に即した可使時間を有し、かつ極めて良好に塗布することができた。この下塗り材料は、クロム不含であり、かつ遙かに0.66質量%未満である亜鉛含量を有していた。
【0090】
比較試験V1
クロム含有の亜鉛含量に富んだ耐蝕性下塗り目止め剤V1の製造
実施例1を繰り返したが、成分(a1)、(a2)、(a3)および(a4)の代わりに55〜57質量%の亜鉛含量および0.15質量%のクロム含量を有する燐酸亜鉛16.5質量%(Heubach社のHeucophos(登録商標)ZPZ)を使用した。生じる下塗り目止め剤の亜鉛含量は、9.2質量%であった。
【0091】
実施例2および比較試験V2
クロム不含で亜鉛貧有の下塗り目止め剤塗装2およびクロム含有および亜鉛含有の下塗り目止め剤塗装V2の形成
実施例2
実施例1の下塗り目止め剤1をアルミニウム、鉄および亜鉛メッキされた鋼上に塗布し、1時間排気し、乾燥し、BASF Coatings AGのReihe 22の市販の二成分系上塗り塗料を上塗りし、その後に2つの層を空気で室温で12時間一緒に乾燥させるかまたは空気循環炉内で60℃で30分間一緒に乾燥させた。
【0092】
層厚80μmの下塗り目止め剤塗装2および層厚60μmの上塗り塗装を生じた。
【0093】
比較試験V2:
実施例2を繰り返したが、実施例1の下塗り目止め剤の代わりに比較試験V1の下塗り目止め剤V1を使用し、湿式層厚を、下塗り目止め剤塗装V2が95μmの層厚を有しおよび上塗り塗装が50μmの層厚を有するように調節した。
【0094】
表には、下塗り目止め剤塗装2を含む実施例2の多層塗装の実質的に使用技術的な性質と下塗り目止め剤塗装V2を含む比較試験V2の多層塗装の実質的に使用技術的な性質との比較が記載されている。この場合、比較試験V2の多層塗装V2は、参考例として使用され、実施例2の多層塗装2が参考例からずれていないかまたは殆んどずれていないという意味を有し(注記0)、参考例からの著しい改善を示すという意味を有し(注記+)、参考例からの特に大きな改善を示すという意味を有する(注記++)かまたは参考例からの著しい劣化を示すという意味を有する(注記−)場合の比較が記載されている。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
表中にまとめられた結果は、多種多様の支持体上での実施例2の下塗り目止め剤塗装の優れた耐蝕作用を表わし、この場合には、他の実質的な使用技術的性質は、十分に保持されたままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)少なくとも1つの燐酸水素カルシウム顔料30〜60質量%、
(a2)少なくとも1つの無定形のカルシウム変性された二酸化珪素15〜45質量%、
(a3)少なくとも1つの硼珪酸カルシウム顔料5〜25質量%および
(a4)有機ニトロ化合物の少なくとも1つの亜鉛塩1〜15質量%からなる、但し、この場合クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)の亜鉛含量は、10質量%を超えないものとし、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)。
【請求項2】
顔料混合物(A)が(a1)35〜55質量%を含有する、請求項1記載の顔料混合物(A)。
【請求項3】
顔料混合物(A)が(a2)20〜40質量%を含有する、請求項1または2記載の顔料混合物(A)。
【請求項4】
顔料混合物(A)が(a3)10〜20質量%を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の顔料混合物(A)。
【請求項5】
顔料混合物(A)が(a4)3〜12質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の顔料混合物(A)。
【請求項6】
顔料混合物(A)の亜鉛含量が7質量%を上廻らない、請求項1から5までのいずれか1項に記載の顔料混合物(A)。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のクロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)を製造する方法において、該顔料混合物(A)の成分を互いに混合し、それによって別々の顔料混合物(A)を生じるかまたは顔料混合物(A)の成分(a1)、(a2)、(a3)および(a4)を別の物質と混合し、それによって原位置で顔料混合物(A)を生じることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のクロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)を製造する方法。
【請求項8】
硬化可能な材料を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項に記載のクロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)および請求項7記載の方法により製造された、クロム不含で亜鉛貧有の耐蝕性顔料混合物(A)の使用。
【請求項9】
硬化可能な材料が物理的に、熱的におよび/または化学線で硬化可能である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
硬化可能な材料が下塗り材料である、請求項8または9記載の使用。
【請求項11】
下塗り材料がプライマー、下塗り目止め剤、目止め剤およびスパチュラである、請求項9記載の使用。
【請求項12】
硬化可能な材料が二成分系または多成分系である、請求項8から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
二成分系または多成分系が
(I)イソシアネート反応性官能基を含有する少なくとも1つの成分および
(II)少なくとも1つのポリイソシアネートを含有する少なくとも1つの成分を含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
硬化可能な材料が硬化された材料の製造に使用される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
硬化された材料が下塗り材料および中間被覆である、請求項8から14までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
硬化可能な材料および硬化された材料が自動車修復塗装において使用される、請求項8から15までのいずれか1項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−503206(P2009−503206A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524402(P2008−524402)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007371
【国際公開番号】WO2007/014683
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】