説明

クローラの構造

【課題】ローラベルトとプーリーとの間に入り込んだ砂などの異物によってクローラベルトに過大なテンションが係るのを防いでプーリー固定部の損傷、破損を防ぐことができ、しかも、それを簡素な構造で実現することができる、クローラの構造を提供する。
【解決手段】外周面部10に谷部6と山部5を有するプーリー2と、内周面部11にプーリー2の谷部6と山部5にそれぞれ係合する山部12と谷部13を有するクローラベルト3からなるクローラの構造1であって、プーリー2の谷部6とクローラベルト3の山部12は隙間なく係合し、プーリー2の山部5とクローラベルト3の谷部13は異物を逃がすための凹所14を設けて係合するクローラの構造1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリーとクローラベルトの間に異物が混入しても動作し続けることができるクローラの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床下点検ロボットやレスキューロボットなどに用いられるクローラ型走行車では、ゴム製のクローラベルトとプーリーとの間に入り込んだ砂などの異物によって、クローラベルトのテンションが過大な状態となり、プーリーの固定部に大きな負荷がかかって変形し、破損に至ることがある。
【0003】
そのため、従来より、カバーを付けて異物が入り込むのを阻止するようにしたり、ハケ、ブラシを付けて入り込もうとする異物を払い除けるようにしたりすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−298204号公報
【特許文献2】特開2009−73464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カバーやハケ、ブラシはクローラを構成する部品点数を多くして構造を複雑にし、また、カバーではクローラの機能が制限されてしまいやすく、ハケやブラシは磨耗するため、交換が必要で、メンテナンスが厄介であるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、クローラベルトとプーリーとの間に入り込んだ砂などの異物によってクローラベルトに過大なテンションが係るのを防いでプーリー固定部の損傷、破損を防ぐことができ、しかも、それを簡素な構造で実現することができる、クローラの構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、外周面部に谷部と山部を有するプーリーと、内周面部に該プーリーの谷部と山部にそれぞれ係合する山部と谷部を有するクローラベルトからなるクローラの構造であって、該プーリーの谷部と該クローラベルトの山部は隙間なく係合し、該プーリーの山部と該クローラベルトの谷部は異物を逃がすための凹所を設けて係合することを特徴とするクローラの構造により解決される。
【0008】
このクローラ構造では、プーリーとクローラベルトとの間に、プーリーとクローラベルトとの間に入り込んだ異物を逃がす凹所が設けられているので、プーリーとクローラベルトとの間に入り込んだ異物は、ベルトにかかるテンションやスリップ作用によって凹所内へ逃がされ、クローラベルトに過大なテンションがかかるのが防がれて、プーリー固定部の損傷、破損を防ぐことができる。
【0009】
特に、プーリーの谷部とクローラベルトの山部は隙間なく係合し、プーリーの山部とクローラベルトの谷部に異物を逃がすための凹所を設けているので、プーリーからクローラベルトへの力の伝達を確実に行うことができ、たとえ、クローラベルトにかかるテンションによってクローラベルトの形状が変形しても、プーリーからクローラベルトへの力の伝達を確実に行うことができる。
【0010】
しかも、プーリーとクローラベルトとの間に凹所を設けた構造であるから、プーリーとクローラベルトとの間に異物が入り込むのを阻止するカバーやハケ、ブラシ等の異物入り込み阻止機構を排除することができて、簡素な構造で実現することができ、また、クローラの機能を制限することもないし、磨耗による部品交換も必要ない。
【0011】
上記のクローラ構造において、前記クローラベルトの山部と谷部が、クローラベルトの内周面部の幅方向中間部に設けられ、前記プーリーの外周面部の幅方向の少なくとも一方の側に、クローラベルトの内周面部の山部及び谷部がない部分と当接するフランジが備えられているとよい。
【0012】
プーリーの外周面部の幅方向の少なくとも一方の側に備えられたフランジが、クローラベルトの内周面部の山部及び谷部がない部分と当接するようになされているので、フランジがクローラベルトの内周面部と隙間なく当接することによって、クローラベルトの内径を保つことができる。さらに、クローラベルトの横ズレを防止することができる。
【0013】
また、前記プーリーの内部は、一方又は両方の側面に開放した空隙を有しており、プーリーの外周面部には異物排出部が設けられ、該異物排出部を通じてプーリーとクローラベルト間の異物がプーリー内部の空隙へ排出されるとよい。
【0014】
プーリーとクローラベルトとの間に設けられた凹所へ逃がされた異物は、異物排出部を通じて、プーリーの回転によって、プーリー内部への空隙へと排出されるため、凹所に逃がされた異物は凹所に留まることなく、空き状態を確保できるので、凹所内に逃がされる異物が多いものであったとしても、凹所は、異物をプーリー内部の空隙に排出しながら、新しい異物を受け入れることができる。
【0015】
さらに、プーリー内部の空隙は、一方又は両方の側面に開放しているので、プーリー内部の空隙に排出された異物は、プーリーの一方又は両方の側面より外部へ排出される。
【0016】
また、前記クローラベルトの外周面部に、クローラベルトの回転軸線方向と平行に延びる複数の突起を備えているとよい。
【0017】
クローラベルトの外周面部に複数の突起を備えているので、接地面からのクローラベルト本体までの高さが嵩上げされるため、異物が混入しにくくなる。また、接地面との接地抵抗を低く抑えることができ、クローラを効率的に動かすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のとおりであるから、クローラベルトとプーリーとの間に入り込んだ砂などの異物によってクローラベルトに過大なテンションが係るのを防いでプーリー固定部の損傷、破損を防ぐことができ、しかも、それを簡素な構造で実現することができる、クローラの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図(イ)は、本発明の実施形態であるクローラの構造を示す一部拡大側面図、図(ロ)は、同側面図、図(ハ)は、図(ロ)のA−A線断面図である。
【図2】図(イ)は、プーリを示す斜視図、図(ロ)は、同平面図、図(ハ)は、同側面図、図(ニ)は、図(ロ)のB−B線断面図である。
【図3】図(イ)は、クローラベルトを示す一部拡大側面図、図(ロ)は、同斜視図、図(ハ)は、図(イ)のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1に示す本発明の実施形態である床下点検ロボットなどクローラ型走行車に用いられるクローラの構造1において、2はプーリー、3はクローラベルトである。
【0022】
図2に示すように、プーリー2は、外周面部10に等間隔に山部5と谷部6を有するプーリー本体部4の一方の側面に、外周が円型のフランジ7を有している。フランジ7の外径は、クローラ構造1において後述するクローラベルトの内周面部に当接する外径となっている。プーリー本体部4の内部は空隙8となっており、プーリー本体部4のフランジ7を有しない側の側面は外部に開放されている。プーリー本体部4の外周面部の谷部6には、谷部6を通じて空隙8側へ異物を排出するための開口である異物排出部9が設けられている。なお、図2において、フランジ7に備えられた15‥は、プーリー2をクローラ型走行車の駆動軸に取り付けるための孔である。
【0023】
図3に示すように、クローラベルトは伸縮性を有するゴム製のものからなっていて、伸縮性を利用してプーリー2,2に掛け渡すことができるようになされている。クローラベルト3の内周面部11の幅方向中間部には、クローラベルト3の回転方向に沿って、等間隔に山部12と谷部13が設けられている。クローラベルト3の山部12と谷部13は、プーリー2の谷部6と山部5にそれぞれ係合する。プーリー2の谷部6とクローラベルト3の山部12は隙間なく係合するのに対し、プーリー2の山部5とクロラーベルト3の谷部13は、プーリー2とクローラベルト3との間に入り込んだ砂などの異物を逃がすための凹所14を設けて係合するようになされている。
【0024】
また、クローラベルト3の内周面部11の幅方向中間部に設けられた山部12と谷部13と、プーリー2の谷部6と山部5がそれぞれ係合し、プーリー2のプーリー本体部4の一方の側面に備えられた外周円型のフランジ7が、クローラベルト3の内周面部11の山部12及び谷部13がない部分と当接するようになされている。
【0025】
また、クローラベルト3の外周面部15には、クローラベルトの回転軸線方向と並行に複数の突起16‥が、外周面部15の幅方向全幅に渡って、等間隔で配置されている。
【0026】
プーリー2の山部5とクローラベルト3の谷部13が、凹所14を設けて係合されること、及びプーリー本体部4の外周面部の谷部6には、谷部6を通じて空隙8側へ異物を排出するための開口である異物排出部9が設けられていることで、プーリー2とクローラベルト3との間に砂などの異物が入り込んだ場合であっても、異物は、プーリー2の山部4とクローラベルト3の谷部13との間の凹所14に逃がされ、また、プーリー2の谷部6の異物排出部9から空隙8へ逃がされる。そのため、異物が、プーリー2とクローラベルト3との間に挟みこまれることがなく、異物によってクローラベルト3に過大なテンションが係るのを防いでプーリー2の損傷、破損を防ぐことができ、しかも、それを簡素な構造で実現することができる。
【0027】
プーリー2のフランジ7が、クローラベルト3の内周面部11の山部12及び谷部13がない部分と当接するようになされているので、フランジ7がクローラベルト3の内周面部11と隙間なく当接することによって、クローラベルト3の内径を保つことができ、クローラベルトに一定のテンションをかけることができる。また、クローラベルト3の山部12の側面がフランジ7の横方向の移動を制限するため、クローラベルト3の横ズレを防止することができる。
【0028】
このクローラの構造は、プーリーとクローラベルト間の異物の入り込みを、簡素な構造で防止することができ、クローラの機能を制限することもなく、磨耗による部品交換の必要もない。
【0029】
プーリー2とクローラベルト3との間に設けられた凹所14へ逃がされた異物は、異物排出部9を通じて、プーリー2の回転によって、プーリー内部への空隙8へと排出されるため、凹所14に逃がされた異物は凹所14に留まることなく、空き状態を確保できるので、凹所14内に逃がされる異物が多いものであったとしても、凹所14は、異物をプーリー内部の空隙8に排出しながら、新しい異物を受け入れることができる。
【0030】
さらに、プーリー内部の空隙8は、一方又は両方の側面に開放しているので、プーリー内部の空隙8に排出された異物は、プーリー2の一方又は両方の側面より外部へ排出される。
【0031】
クローラベルトの外周面部に複数の突起を備えているので、接地面からのクローラベルト本体までの高さが嵩上げされるため、異物が混入しにくくなる。また、接地面との接地抵抗を低く抑えることができ、クローラを効率的に動かすことができる。
【0032】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、プーリーの一方の側面にフランジを設けた場合について示したが、フランジはプーリーの両側面にあってもよいのはいうまでもなく、この場合、いずれか一方若しくは両方のフランジの中心部があけられて、プーリー内部の空隙が外部と連通されていればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、クローラベルトの内周面部幅方向中央部として、幅方向の一方の端部側に山部と谷部がある場合について示したが、山部と谷部の位置は、クローラベルト内周面部幅方向中央であってもよいし、クローラベルト内周面部幅方向端部に、山部及び谷部の側面が位置する状態に配置されてもよい。
【0034】
また、プーリー、クローラベルトの形状についても制限はなく、条件を満たすように任意に設定されればよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1・・・クローラの構造
2・・・プーリー
3・・・クローラベルト
4・・・プーリー本体部
5・・・山部(プーリー)
6・・・谷部(プーリー)
7・・・フランジ
8・・・空隙
9・・・異物排出部
10・・・外周面部(プーリー)
11・・・内周面部(クローラベルト)
12・・・山部(クローラベルト)
13・・・谷部(クローラベルト)
14・・・凹所
15・・・外周面部(クローラベルト)
16・・・突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面部に谷部と山部を有するプーリーと、
内周面部に該プーリーの谷部と山部にそれぞれ係合する山部と谷部を有するクローラベルトからなるクローラの構造であって、
該プーリーの谷部と該クローラベルトの山部は隙間なく係合し、
該プーリーの山部と該クローラベルトの谷部は異物を逃がすための凹所を設けて係合することを特徴とするクローラの構造。
【請求項2】
前記クローラベルトの山部と谷部が、クローラベルトの内周面部の幅方向中間部に設けられ、
前記プーリーの外周面部の幅方向の少なくとも一方の側に、クローラベルトの内周面部の山部及び谷部がない部分と当接するフランジが備えられている請求項1に記載のクローラの構造。
【請求項3】
前記プーリーの内部は、一方又は両方の側面に開放した空隙を有しており、プーリーの外周面部には異物排出部が設けられ、該異物排出部を通じてプーリーとクローラベルト間の異物がプーリー内部の空隙へ排出される請求項1乃至2に記載のクローラの構造。
【請求項4】
前記クローラベルトの外周面部に、クローラベルトの回転軸線方向と平行に延びる複数の突起を備えている請求項1乃至3に記載のクローラの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−187944(P2012−187944A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50668(P2011−50668)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)