説明

クローラ式走行装置

【課題】 内輪体と外輪体の両方で外周係合輪の左右方向位置を多数種類に変更可能にして、簡単な構造でより適切な範囲でトレッド変更ができるようにする。
【解決手段】 駆動輪6は、後車軸33側の取付部42に左右反転取り付け可能に取り付けられる内輪体44と、この内輪体44に左右反転取り付け可能に取り付けられる外輪体45と、この外輪体45に着脱自在に取り付けられかつクローラ7と係合する係合歯59を形成した外周係合輪43とを備える。前記内輪体44は、後車軸33側の取付部42に取り付けられる内周側の取付基部46と、外輪体45を取り付ける外周側の外輪取付部47とを左右方向に変位して有し、前記外輪体45は、外輪取付部47に取り付けられる内周側の取付基部51と、外周係合輪43を取り付ける外周側の外周壁部52とを左右方向に変位して有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部等に装備可能なクローラ式走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クローラ式走行装置としては、トラクタの後輪タイヤ車輪として、又は後輪タイヤ車輪に代えて装備することによりセミクローラトラクタを構成するものがある。
この種のクローラ式走行装置においては、走行機体の後車軸に、駆動輪が取り付けられ、該駆動輪を回転駆動させることにより、駆動輪に巻き掛けたクローラを周方向に循環回走させるようにしたものがあり、このクローラ式走行装置を装備したトラクタを畑地で使用する場合、作物によって畝の幅が異なるので、畝溝(畝と畝との間の溝)間の間隔の広狭に対応したトレッド変更が必要となる。
【0003】
そこで、この種の従来のクローラ式走行装置では、簡単な構造でトレッド変更できるものとして、駆動輪(クローラが巻き付けられる駆動輪の外周部)の左右方向の中心を、後車軸側の駆動輪取付部から左右方向にオフセットさせ、駆動輪を左右反転して後車軸側の取付部に取り付けることにより、駆動輪(駆動輪の外周部乃至駆動輪に巻き付けられるクローラ)を左右方向に位置変更できるように構成したものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−276657号
【特許文献2】特開2003−095154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トラクタの後輪タイヤ車輪に代えてクローラ式走行装置を装備するようにしたものでは、通常の後輪タイヤ車輪よりも、クローラ式走行装置のトレッド幅を小さく設定するのが一般的であるが、従来のクローラ式走行装置のトレッド変更では、駆動輪の外周部(クローラの左右方向の中心)が、後車軸側の取付部を中心とした左右方向の内外に位置するようにトレッド変更するものであり、例えば駆動輪の外周部が、後車軸側の取付部よりも左右方向内方側で、左右方向に位置変更するようになすことができないため、トレッド幅を通常の後輪タイヤの装着位置よりも左右方向内方側でトレッド変更することが困難であり、クローラ式走行装置を適切な範囲でトレッド変更することができなくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡単な構造でより適切な範囲でトレッド変更できるようにしたクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を解決する本発明の技術的手段は、走行機体30の後車軸33に取り付けた駆動輪6を回転駆動させることにより、駆動輪6に巻き掛けたクローラ7を周方向に循環回走させるようにしたクローラ式走行装置において、
前記駆動輪6は、後車軸33側の取付部42に左右反転取り付け可能に取り付けられる内輪体44と、この内輪体44に左右反転取り付け可能に取り付けられる外輪体45と、この外輪体45に着脱自在に取り付けられかつクローラ7と係合する係合歯59を形成した外周係合輪43とを備えており、
前記内輪体44は、後車軸33側の取付部42に取り付けられる内周側の取付基部46と、外輪体45を取り付ける外周側の外輪取付部47とを左右方向に変位して有し、
前記外輪体45は、外輪取付部47に取り付けられる内周側の取付基部51と、外周係合輪43を取り付ける外周側の外周壁部52とを左右方向に変位して有している点にある。
【0008】
また、本発明の他の技術的手段は、前記外輪体45は、取付基部51と外周壁部52とをそれぞれ左右方向に対して直交する円板リング状に形成し、かつ取付基部51の外周端側と外周壁部52の内周端側とを左右方向の筒状連結部53で連結している点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記内輪体44は、取付基部46と外輪取付部47とを左右方向の筒状連結部48で連結しており、
前記内輪体44の筒状連結部48の左右方向の長さは外輪体45の筒状連結部53の左右方向の長さと異なっている点にある。
【0009】
また、本発明の他の技術的手段は、前記後車軸33を支持する後車軸ケース34に対して揺動軸8を介してトラックフレーム2が揺動自在に支持され、このトラックフレーム2の前後端部に前後従動輪3、4が配置されると共に中途部に遊転輪5が設けられ、トラックフレーム2の前後方向中途部上方に前記駆動輪6が配置され、前記駆動輪6、前後従動輪3、4及び遊転輪5にクローラ7が巻き掛けられ、
前記駆動輪6の外周係合輪43の左右方向の位置変更に対応して、前後従動輪3、4及び遊転輪5が左右方向に位置変更可能となるように、トラックフレーム2が後車軸ケース34に対して左右方向に位置変更可能に取り付けられ、
前記外周係合輪43は、外輪体45に対して独立して着脱可能な複数の係合輪構成体43aを周方向に連結して構成されている点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内輪体の取付基部と外輪取付部とは左右方向の変位差があり、外輪体の取付基部と外周壁部とにも左右方向の変位差があり、内輪体を左右に反転して後車軸側の取付部に固定すると外周係合輪を左右方向に位置変更でき、外輪体を左右に反転して内輪体に固定すると外周係合輪を左右方向に位置変更でき、内輪体と外輪体の両方で外周係合輪の左右方向位置を多数種類に変更することが可能になり、クローラ式走行装置を簡単な構造でより適切な範囲でトレッド変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示すトラクタの側面図である。
【図2】同クローラ式走行装置の側面図である。
【図3】同クローラ式走行装置の背面断面図である。
【図4】同テンション調整機構の平面断面図である。
【図5】同揺動支持体及び揺動軸部分の背面断面図である。
【図6】同トラックフレーム及び枢支軸部分の側面断面図である。
【図7】同駆動輪部分の背面断面図である。
【図8】同トレッド変更した状態の駆動輪部分の背面断面図である。
【図9】同トラックフレーム部分の側面図である。
【図10】同トラックフレーム部分の底面図である。
【図11】同トラックフレーム部分の背面図である。
【図12】同トラックフレーム部分の平面図である。
【図13】同図9のB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、101は、4輪駆動トラクタの後輪の替わりにクローラ式走行装置1(セミクローラ7)を左右独立して設けた半履帯トラクタ(車輌)であり、前輪107は操向輪とされている。
このトラクタ101は、車体(走行機体)30の後部にキャビン104が搭載されたキャビン付きトラクタが例示されており、キャビン104内の後部には、運転席105が設けられ、運転席105の前方には、操縦ハンドル106が設けられている。
【0013】
走行機体30は、エンジン108の後部にフライホイールハウジングを介して動力伝達ケース109を取り付けて構成され、動力伝達ケース109は、クラッチハウジング及びミッションケース等から構成されている。
前輪107は、前車軸フレーム110に支持された前車軸ケースの左右両側に設けられ、前車軸ケースは、エンジン108から前方に突出するように、該エンジン108に取付固定された前車軸フレーム110に、前後軸回りに揺動自在に支持されている。
【0014】
クローラ式走行装置1は、図3に示すように、動力伝達ケース(ミッションケース)3
1の後端側に、左右方向突出状に設けられた後車軸ケース34(車軸ケース)の左右方向外端側に取り付けられている。
図2及び図3において、クローラ式走行装置1は、角材、板材、パイプ材等で形成されたトラックフレーム2に、テンション調整用前従動輪(調整輪)3と遊転の後従動輪4とそれらの中間の遊転輪5とを前後方向に配列支持し、前記遊転輪5の上方に駆動輪6を配置し、これら全輪にクローラ7を巻き掛け、前記トラックフレーム2を駆動輪6の軸芯と平行でかつその下方に位置する揺動軸8回りに揺動自在に構成している。
【0015】
前記前従動輪3は、トラックフレーム2の前端上面に設けた下向き傾斜状のテンション調整機構9の自由端に支軸3Aを介して回転自在に支持されている。
テンション調整機構9は、図4にも示すように、トラックフレーム2の上面の前下向き傾斜した傾斜台2aに固定の支持体11と、この支持体11に長手方向摺動自在に支持されていて前従動輪3の支軸3Aを支持する軸支体10と、この軸支体10を前従動輪3側へ弾発するテンションスプリング12と、クローラ7が伸びたときに軸支体10を前従動輪3側へ移動して伸びを吸収する弛み修正手段13とを有している。傾斜台2aの上方にテンション調整機構9を被うカバー17が設けられている。カバー17は取付部材19を介して支持体11に支持されている。
【0016】
トラックフレーム2の後端は二股形状となっていて、左右一対の軸受体18を介して後従動輪4の支軸4Aを回転自在に支持している。
遊転輪5は、前従動輪3及び後従動輪4よりも小径であり、トラックフレーム2に輪軸5Aを介して前後3輪配置されており、遊転可能なマタギ転輪を例示している。
前記遊転輪5の内の前側の1輪の遊転輪5は、輪軸5Aがトラックフレーム2に下面に固定のブラケット24を介して支持されており、前記遊転輪5の内の後側の2輪(中途部及び後部)の遊転輪5は、輪軸5Aをイコライザリンク20に枢支し、このイコライザリンク20の前後中途部をトラックフレーム2に固定の支持ブラケット21に枢支軸22を介してシーソ揺動自在に枢支している。
【0017】
図2、図3、図6に示すように、支持ブラケット21は下端が開口したコの字状に形成され、支持ブラケット21の上端部はトラックフレーム2(後述する下部材82)に溶接等により固着され、枢支軸22に固設した固定板25をボルトで支持ブラケット21に固定することにより、枢支軸22は支持ブラケット21に固定され、枢支軸22に支持筒体26が枢支軸22に対して左右方向の軸心廻りに回動自在に外嵌保持され、この支持筒体26にイコライザリンク20の前後中途部が外嵌固定され、これによりイコライザリンク20の前後中途部をトラックフレーム2に固定の支持ブラケット21に枢支軸22を介してシーソ揺動自在に枢支されている。
【0018】
トラックフレーム2(後述する上部材81)の後部に、山形形状のカバー体27がトラックフレーム2の上面を覆うように設けられ、このカバー体27に後従動輪4に向けてスクレーパ28が突設され、このスクレーパ28で後従動輪4に付着した泥等を走行時に掻き落とすようになっている。イコライザリンク20の前後両端部に遊転輪5に向けたスクレーパ29が設けられ、このスクレーパ29で後2輪の遊転輪5に付着した泥等を走行時に掻き落とすようになっている。支持ブラケット21の前側遊転輪5後方に遊転輪5に向けたスクレーパ30が設けられ、このスクレーパ30で前側遊転輪5に付着した泥等を走行時に掻き落とすようになっている。
【0019】
駆動輪6は、後車軸(駆動軸)33の外端面に装着されたスプロケット(円板の外周に歯を有する駆動伝動体)で構成されている。前記後車軸33は走行機体30を構成するミッションケース31の後部から左右に突出した後車軸ケース34に支持され、かつ後車軸ケース34から外側方に突出しており、ホイール形トラクタの場合は、駆動輪6の代わりにタイヤ車輪が装着される。
【0020】
前記駆動輪6のピッチ円直径は、タイヤ車輪の外周円直径の略半分に設定されており、そのために、前輪への動力伝達系には、駆動輪6の周速と略等しくするための減速装置が組み込まれている。なお、前輪の周速を駆動輪6の周速より増速する変速装置を装備していてもよい。
図2、図3、図7及び図8に示すように、駆動輪6は、後車軸33側の取付部42に着脱自在に取り付けられる内輪体44と、内輪体44に着脱自在に取り付けられる外輪体45と、外輪体45の外周部に取り付けられる外周係合輪43とを備える。
【0021】
内輪体44は、互いに左右方向に変位した内周側の取付基部46と外周側の外輪取付部47とを一体に有し、内輪体44の取付基部46と外輪取付部47とは、それぞれ左右方向に対して直交する円板リング状に形成され、内輪体44の取付基部46の外周端側と内輪体44の外輪取付部47の内周端側とを連結する左右方向の筒状連結部48が、内輪体44に設けられている。
【0022】
外輪体45は、互いに左右方向に変位した内周側の取付基部51と外周側の外周壁部52とを一体に有している。外輪体45の取付基部51と外周壁部52とは、それぞれ左右方向に対して直交する円板リング状に形成され、外輪体45の取付基部51の外周端側と外輪体45の外周壁部52の内周端側とを連結する左右方向の筒状連結部53が、外輪体45に設けられている。
【0023】
内輪体44の取付基部46は、ボルトナット等の固定具55により、外輪取付部47が左右方向に位置変更するように内輪体44を左右に反転して後車軸33側の取付部42に着脱自在に固定可能とされている。また、外輪体45の取付基部51は、ボルトナット等の固定具56により、内輪体44に対して外輪体45を左右に反転して内輪体44の外輪取付部47に着脱自在に固定可能とされている。
【0024】
外輪体45の筒状連結部53が内輪体44の筒状連結部48よりも左右方向に長く形成さており、外輪体45の外周壁部52が、後車軸33側の取付部42よりも左右方向内方側で、左右方向に位置変更するように、外輪体45の取付基部51と外周壁部52との左右方向の変位差が、内輪体44の取付基部46と外輪取付部47との左右方向の変位差よりも大に設定されている。
【0025】
外周係合輪43は、外周に多数の係合歯59が突設された円板リンク状に形成され、その内周がボルトナット等の固定具60により外輪体45の外周壁部52に着脱自在に固定され、外周係合輪43の係合歯59がクローラ7の幅方向(左右方向)中央部の係止部に係脱自在に係合するように構成されている。
外周係合輪43は周方向に3分割されて、3つの係合輪構成体43aをボルトナット等の締結具61により着脱自在に連結してなり、駆動輪6に巻き付けたクローラ7を外すにあたって、先ず、クローラ7が巻き掛けられていない下側の係合輪構成体43aを取り外し、次に残りの2つの係合輪構成体43aのうちの1つがクローラ7から外れるように駆動輪6を回転させて、そのクローラ7から外れた係合輪構成体43aを外し、その後、残りの1つの係合輪構成体43aがクローラ7から外れるように駆動輪6を回転させることにより、クローラ7が容易に取り外し可能となっている。
【0026】
駆動輪6が遊転輪5の上方に配置されていることにより、前従動輪3及び後従動輪4とは三角配置となり、駆動輪6は三角形の上側頂点を形成し、前従動輪3及び後従動輪4はそれぞれ下側一頂点を形成する。それら全輪に巻き掛けられたクローラ(弾性履帯)7は、側面視において略三角形(おむすび形)となり、遊転輪5は略三角形の底辺に位置する。
【0027】
前記クローラ7は鉄クローラでもよいが、ここでは内部に周方向の抗張体を埋設したゴムクローラが使用されており、幅方向中央には駆動輪6の係合歯59が係合する係止孔等の係止部が周方向等間隔に形成され、外周接地面には横一文字又はハの字等パターンのラグが、内周面には脱輪防止突起がそれぞれ突出形成されている。このクローラ7は、幅方向の抗張体である芯金を周方向等間隔に埋設しておいてもよい。
【0028】
図2、図3及び図5に示すように、トラックフレーム2には、走行機体30側へ突出した延設台66が立設され、この延設台66上に揺動支持体64がボルトナット等の締結具67で着脱自在に固定されている。左右の後車軸ケース34に取付け枠体68がボルト固定され、取付け枠体68の下部に支持筒体72が固着されている。前記取付け枠体68の上止め板68aにキャビン支持台70が設けられている。
【0029】
揺動支持体64は、L字状に屈曲した前後一対の支持部材65と一対の支持部材65を
連結する三角形状の一対の支持板71とを備え、一対の各支持部材65は、下板部65aと起立板部65bとを溶接等により固着してなり、左右一対の支持板71間に支持筒体72が配置されている。水平横軸の揺動軸8が、一対の支持板71に挿通されると共に、支持筒体72に左右方向に軸心廻りに揺動自在に挿通されている。揺動軸8の外端部に固定板73が固設されており、固定板73をボルト等の固定具74で支持板71に固定することにより、揺動軸8に固定板73及び支持板71を介して揺動支持体64が固着されており、これにより、取付け枠体68に揺動軸8が支持され、揺動支持体64の上部は揺動軸8に支持され、揺動支持体64は、後車軸ケース34に、取付け枠体68を介して揺動軸8と共に該揺動軸8の軸心廻りに揺動自在に支持されている。
【0030】
図9〜図12にも示すように、前記トラックフレーム2は、下端が開口したコの字状の上部材81と、上部材81の左右両端から左右方向外方に突出した下部材82とを備え、上部材81と下部材82とは溶接等により互いに固着されている。上部材81に延設台66が突設されており、上部材81に延設台66及び揺動支持体64を介して前記揺動軸8が連結されている。
【0031】
延設台66は、前後一対のコの字状の延長部材62と、延長部材62の左右方向内端部を連結する連結部材63とを備え、一対の延長部材62は、それぞれ断面L字状の第1構成材78と板状の第2構成部材79とを溶接等によりコの字状に固着してなり、トラックフレーム2の上部材81に溶接等により固着されて、左右方向内方に突設されている。
図5、図11、図12に示すように、延設台66における一対の第1構成材78の上板部78aに、左右方向に複数の取付孔76が上下貫通状に形成されると共に、上板部78aの下面に、各取付孔76に対応して複数のナット67bが溶接等により固着されている。このナット67bは延設台66と揺動支持体64とを固定する前記締結具67の一部を構成するものである。前記揺動支持体64における一対の支持部材65の下板部65aは、延設台66の上板部78a上にそれぞれ左右摺動自在に重合状に配置されている。一対の下板部65aに、左右方向に複数の取付孔77が、前記上板部78aの取付孔76に対応して上下貫通状に形成されており、前記締結具67のボルト67aが挿通される取付孔76を選択してナット67bに螺合することにより、揺動支持体64に対して延設台66を左右方向にずらした2つの位置に固定できるように構成され、これにより、前記駆動輪6の外周壁部52側の左右方向の位置変更に対応して、前後従動輪3、4及び遊転輪5が左右方向に位置変更可能となるように、トラックフレーム2が後車軸ケース34に対して左右方向に位置変更可能に取り付けられるようになっている。
【0032】
図6、図9、図10、図11に示すように、下部材82の左右方向両端側の外方突出部が左右方向外方に向けて徐々に下降するように傾斜した左右一対の傾斜壁部85とされ、下部材82の左右方向中央部に、下方にコの字状に突出した凸部87が設けられている。下部材82の下面側(凸部87)に前記ブラケット24及び支持ブラケット21が溶接等により固着されており、下部材82の下面側にブラケット24、支持ブラケット21、イコライザリンク20等を介して複数の遊転輪5が支持されている。支持ブラケット21は、L字状に屈曲した第1構成部材88に三角板形状の第2構成部材89を溶接等により固着してなり、支持ブラケット21の第1構成部材88が下部材82の凸部87下面に溶接等により固着されている。
【0033】
トラックフレーム2の下部材82が、遊転輪5の左右方向の略全幅を上から覆うように構成されている。イコライザリンク20の前後中途部が、支持ブラケット21、固定板25、支持筒体26を介してトラックフレーム2の下部材82に左右方向の枢支軸22廻りに揺動自在に枢支されており、イコライザリンク20の前後中途部の枢支軸22による支持部分(支持ブラケット21、固定板25、支持筒体26、枢支軸22)が、下部材82の下方であって下部材82の左右幅内に納められている。
【0034】
トラックフレーム2の前端部に、下部材82の左右一対の傾斜壁部85が切り欠かれた状態で凸部87が前方に突出された突出部91が設けられると共に、上部材81の上面側が斜めに切り欠かれて前下がりの傾斜状とされた傾斜部92が設けられ、この上部材81の傾斜部92上面に前記傾斜台2aが載置されて溶接等により固着されている。
一対の傾斜壁部85に、遊転輪5に対応して円弧状に切り欠かれた切欠凹部93が設けられている。トラックフレーム2の後側中途部は、その上部材81に前記カバー体27が溶接等により固着され、トラックフレーム2の後端部は、上部材81及び下部材82の左右方向中央部が後端から前方に向けてコの字状に切り欠かれて二股状とされると共に、上部材81及び下部材82の後端が後下がりに傾斜され、上部材81及び下部材82の後端に左右一対の軸受取付板95が溶接等により固着されている。
【0035】
上記実施形態によれば、図7の状態からクローラ式走行装置1のトレッド変更をする場合、図8に示すように内輪体44を左右に反転して内輪体44の取付基部46を後車軸33側の取付部42に着脱自在に固定し、その後、外輪体45をその外周側の外周壁部52が内周側の取付基部51よりも左右方向内方に位置するように向けたままで、外輪体45の取付基部51を内輪体44の外輪取付部47に固定すればよく、内輪体44の左右反転により、図8に示すように、内輪体44の外輪取付部47が図7の状態よりも左右方向内方に位置変更し、駆動輪6の外周壁部52乃至クローラ7の左右方向中央部が、後車軸33側の取付部42よりも左右方向内方側で、左右方向内方に位置変更する。
【0036】
また、図8の状態からクローラ式走行装置1のトレッド変更をする場合、図7に示すように内輪体44を左右に反転して内輪体44の取付基部46を後車軸33側の取付部42に固定し、その後、外輪体45をその外周側の外周壁部52が内周側の取付基部51よりも左右方向内方に位置するように向けたままで、外輪体45の取付基部51を内輪体44の外輪取付部47に固定すればよく、内輪体44の左右反転により、図7に示すように、内輪体44の外輪取付部47が図8の状態よりも左右方向外方に位置変更し、駆動輪6の外周壁部52乃至クローラ7の左右方向中央部が、後車軸33側の取付部42よりも左右方向内方側で、左右方向外方に位置変更する。
【0037】
従って、簡単な構造でクローラ式走行装置を通常の後輪タイヤの装着位置よりも左右方向内方側でトレッド変更することが可能になり、クローラ式走行装置を適切な範囲でトレッド変更することができる。
また、図示省略するが、内輪体44を左右に反転して内輪体44の取付基部46を後車軸33側の取付部42に固定すると共に、外輪体45をその外周側の外周壁部52が取付基部51よりも左右方向外方に位置するように向けて、外輪体45の取付基部51を内輪体44の外輪取付部47に固定することにより、駆動輪6の外周壁部52乃至クローラ7の左右方向中央部が、後車軸33側の取付部42よりも左右方向が外方側で、左右方向に位置変更するようになすこともできる。
【0038】
また、上記実施の形態によれば、トラックフレーム2は、下端が開口したコの字状の上部材81と、上部材81の左右両端から左右方向外方に突出した下部材82とを備え、上部材81と下部材82とは互いに固着され、下部材82の下面側に遊転輪5が支持され、上部材81に前記揺動軸8が連結され、下部材82の左右方向両端側の外方突出部が左右方向外方に向けて徐々に下降するように傾斜した左右一対の傾斜壁部85とされているので、トラックフレーム2全体を大型化することなく下部材82の左右幅を大きくすることができ、トラックフレーム2の下部材82で、遊転輪5の左右方向の略全幅を上から覆うように構成することも可能になり、下部材82の傾斜壁部85で遊転輪5及び遊転輪5の支持部分をより広く覆うことにより、クローラ7に持ち上がられて遊転輪5に向けて落下する泥を、下部材82の傾斜壁部85で受けて傾斜壁部85の傾斜に沿って滑らせて遊転輪5の側方に落下させることができ、泥が遊転輪5上に直接落下するのを防ぎ、遊転輪5及び遊転輪5の支持部分に泥が付着するのを防止することができる。
【0039】
また、支持ブラケット21、固定板25、支持筒体26、枢支軸22が、下部材82の下方であって下部材82の左右幅内に配置されて、イコライザリンク20の前後中途部の枢支軸22による支持部分が、下部材82の下方であって下部材82の左右幅内に納められているので、トラックフレーム2の下部材82により、イコライザリンク20の前後中途部の枢支軸22による支持部分に対して、泥等が付着したり外部のものが衝当したりしないように、イコライザリンク20の支持部分をトラックフレーム2で確実に保護することができる。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、遊転輪5は4輪あってもよく、後側2輪のみをイコライザリンク20で支持し、残りの前側2輪をトラックフレーム2に個別に支持してもよいし、前側の2輪と後側の2輪とをそれぞれイコライザリンク20で支持するようにしてもよい。
【0041】
なお、前記実施の形態では、外輪体45の取付基部51と外周壁部52との左右方向の変位差が、内輪体44の取付基部46と外輪取付部47との左右方向の変位差よりも大に設定されているが、これに代え、内輪体44の取付基部46と外輪取付部47との左右方向の変位差を、外輪体45の取付基部51と外周壁部52との左右方向の変位差よりも大に設定するようにしてもよい。この場合、後車軸33側の取付部42に内輪体44を取り付けたままで、内輪体44に対して外輪体45を左右に反転して内輪体44の外輪取付部47に着脱自在に取り付けることにより、外輪体45の外周壁部52を、後車軸33側の取付部42よりも左右方向内方側で左右方向に位置変更することが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 クローラ式走行装置
2 トラックフレーム
3 前従動輪
4 後従動輪
5 遊転輪
6 駆動輪
7 クローラ
8 揺動軸
20 イコライザリンク
22 枢支軸
30 走行機体
31 ミッションケース
33 後車軸
34 後車軸ケース
42 取付部
44 内輪体
45 外輪体
46 取付基部
47 外輪体取付部
48 筒状連結部
51 取付基部
52 外周壁部
53 筒状連結部
81 上部材
82 下部材
85 傾斜壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(30)の後車軸(33)に取り付けた駆動輪(6)を回転駆動させることにより、駆動輪(6)に巻き掛けたクローラ(7)を周方向に循環回走させるようにしたクローラ式走行装置において、
前記駆動輪(6)は、後車軸(33)側の取付部(42)に左右反転取り付け可能に取り付けられる内輪体(44)と、この内輪体(44)に左右反転取り付け可能に取り付けられる外輪体(45)と、この外輪体(45)に着脱自在に取り付けられかつクローラ(7)と係合する係合歯(59)を形成した外周係合輪(43)とを備えており、
前記内輪体(44)は、後車軸(33)側の取付部(42)に取り付けられる内周側の取付基部(46)と、外輪体(45)を取り付ける外周側の外輪取付部(47)とを左右方向に変位して有し、
前記外輪体(45)は、外輪取付部(47)に取り付けられる内周側の取付基部(51)と、外周係合輪(43)を取り付ける外周側の外周壁部(52)とを左右方向に変位して有していることを特徴とするクローラ式走行装置。
【請求項2】
前記外輪体(45)は、取付基部(51)と外周壁部(52)とをそれぞれ左右方向に対して直交する円板リング状に形成し、かつ取付基部(51)の外周端側と外周壁部(52)の内周端側とを左右方向の筒状連結部(53)で連結していることを特徴とする請求項1に記載のクローラ式走行装置。
【請求項3】
前記内輪体(44)は、取付基部(46)と外輪取付部(47)とを左右方向の筒状連結部(48)で連結しており、
前記内輪体(44)の筒状連結部(48)の左右方向の長さは外輪体(45)の筒状連結部(53)の左右方向の長さと異なっていることを特徴とする請求項2に記載のクローラ式走行装置。
【請求項4】
前記後車軸(33)を支持する後車軸ケース(34)に対して揺動軸(8)を介してトラックフレーム(2)が揺動自在に支持され、このトラックフレーム(2)の前後端部に前後従動輪(3、4)が配置されると共に中途部に遊転輪(5)が設けられ、トラックフレーム(2)の前後方向中途部上方に前記駆動輪(6)が配置され、前記駆動輪(6)、前後従動輪(3、4)及び遊転輪(5)にクローラ(7)が巻き掛けられ、
前記駆動輪(6)の外周係合輪(43)の左右方向の位置変更に対応して、前後従動輪(3、4)及び遊転輪(5)が左右方向に位置変更可能となるように、トラックフレーム(2)が後車軸ケース(34)に対して左右方向に位置変更可能に取り付けられ、
前記外周係合輪(43)は、外輪体(45)に対して独立して着脱可能な複数の係合輪構成体(43a)を周方向に連結して構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクローラ式走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−56578(P2012−56578A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283737(P2011−283737)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【分割の表示】特願2007−169211(P2007−169211)の分割
【原出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)