クローラ装置
【課題】 内部空間を遮蔽できるクローラ装置を提供する。
【解決手段】 クローラ装置は、前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えている。クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有している。これら遮蔽鍔の先端縁部が上記側板の周縁部に接しており、これによりクローラベルと側板で囲われた空間が外部に対して遮蔽される。
【解決手段】 クローラ装置は、前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えている。クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有している。これら遮蔽鍔の先端縁部が上記側板の周縁部に接しており、これによりクローラベルと側板で囲われた空間が外部に対して遮蔽される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量なロボット等の足回り部に用いられるクローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型軽量のロボット等に用いられるゴム製のクローラベルトを有するクローラ装置が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記クローラ装置において、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止するために、クローラベルトで囲われた空間を外部から遮断する構造が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えたクローラ装置において、上記クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有し、これら遮蔽鍔が上記側板の周縁部に接していることを特徴とする。
【0005】
上記構成により、側板間の内部空間を遮蔽することができ、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止できる。
【0006】
好ましくは、上記遮蔽鍔が先細の断面形状をなしており、この遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形した状態で側板に接する。
【0007】
好ましくは、上記遮蔽鍔が側板の周縁部の外面に接する。
【0008】
好ましくは、上記側板の周縁部の外面が傾斜しており、この傾斜面に上記遮蔽鍔が接している。
【0009】
好ましくは、上記遮蔽板が側板の周縁部の内面に接する。
【0010】
好ましくは、上記側板の周縁部のうち、ホイール間に位置する上下縁部が、シール部材により形成され、このシール部材が上記遮蔽鍔より弾性係数が小さく、遮蔽鍔に弾性変形して接している。
【0011】
これにより、クローラベルトがホイール間で揺れても確実に遮蔽鍔とシール部材の接触状態を維持できる。
【0012】
好ましくは、上記シール部材には、遮蔽鍔との摩擦を少なくすることができるコーティングが施されている。
【0013】
好ましくは、上記シール部材は起立壁を有し、この起立壁の内側面に上記遮蔽鍔の先端縁部が接する。
【0014】
好ましくは、遮蔽鍔が先細の断面形状をなし、側板の前後の半円形状の端縁部に弾性変形しながら接触する。クローラベルトにおいてホイールに掛け渡された領域では、遮蔽鍔の先端縁部を波状にする力が作用するが、遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形して側板に接しているため、波を打たずに確実に側板に接することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クローラベルトにより囲われた側板間の内部空間を遮蔽することができ、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。図1は軽作業用ロボットの下半身である足回り部Aを示す。この足回り部Aは、基台1の左右部に一対のクローラ装置2を取り付けることにより構成されている。この基台1にロボットの上半身が取り付けられる。この上半身はロボットの役割に応じて構成が異なる。例えば地震等の災害発生時に瓦礫に閉じ込められた人の探索に用いられるロボットの場合、カメラ,探知センサおよび照明器具を備えており、必要に応じて軽量物の把持機構を備えている。
【0017】
図1,図2に示すように、上記クローラ装置2の各々は、前側と後側のホイール10と、これらホイール10間に掛け渡された無端状のクローラベルト20と、前後のホイール10を回転可能に支持する一対の側板30とを備えている。一対のクローラ装置2の内側の側板30の中央部が上記基台1に取り付けられている。
【0018】
左右のクローラ装置2は実質的に同じ構造である。各クローラ装置2において、前後いずれか一方のホイール10が内側の側板30に設けられた電気モータ等のアクチュエータ(図示せず)に接続されて駆動輪として働き、他方が従動輪として働く。
【0019】
図2,図4に示すように、各ホイール10の外周面は円筒面をなしている。ホイール10の外周面の幅方向中央には周方向に等ピッチで半球状の係合突起12aが形成されている。本実施形態では、ホイール10の幅30mmに対して係合突起12aの径は3mm程度である。
【0020】
図2,図4に示すように、一対の側板30は、一対のホイール10の左右に配置されている。各側板30は、前後方向に細長い長円板状をなし、その前後端部が一対のホイール10の両側面を覆うようになっている。側板30の前後の端縁部はホイール10の周縁に沿って半円形状をなしている。
【0021】
図4に示すように、上記側板30の周縁部は全周にわたって先細の断面を有し、その外面は傾斜面30cとなっている。
【0022】
図3に示すように、上記クローラベルト20は、無端状のステンレススチールからなるスチールベルト21(金属薄帯,抗張帯)と、このスチールベルト21の外周の全域に加硫接着等により取り付けられたSBRやウレタンゴム等のゴム(弾性材料)からなる無端状のベルト本体22とを有している。
【0023】
上記スチールベルト21は、板厚0.05〜1.0mm(本実施形態では0.15mm)の細長い薄帯の両端を溶接することにより構成されている。スチールベルト21は、上記ホイール10とほぼ等しい幅を有しており、その幅方向中央には周方向に等ピッチ(ホイール10の係合突起12aと等しいピッチ)で、円形の係合穴21aが形成されている。係合穴21aの径は係合突起12aの径と等しいか僅かに大きい。
【0024】
本実施形態では、上記スチールベルト21は後述するベース部23(厚さ3mm)に比べて極めて薄い。図ではスチールベルト21の厚みが誇張して示されている。
【0025】
図1,図3に示すように、上記ベルト本体22は、上記スチールベルト21より幅広をなす無端状のベース部23と、このベース部23の幅方向両側に形成された遮蔽鍔24と、ベース部23の外周に間隔をおいて形成された接地ラグ26とを一体に有している。上記ベース部23の幅方向中央には、上記スチールベルト21の係合穴21aに対応した位置に係合穴21aと連通する略半球状の逃がし凹部23aが形成されている。
【0026】
上記クローラベルト20は、前後のホイール10に半周にわたって掛け渡されている。図4に示すように、ホイール10の半周分の領域において、スチールベルト21がホイール10の外周面に直接接し、ホイール10の係合突起12aがスチールベルト21の係合穴21aに係合されるとともにベース部23の逃がし凹部23aに入り込んでいる。
【0027】
上記遮蔽鍔24は、ベルト本体22の全周にわたって連続して形成されており、ベース部23の内周面より径方向,内方向に延び、その内周縁の外面が傾斜面となっている。これにより、遮蔽鍔24は断面形状が先細となっており、弾性変形が容易になっている。
【0028】
上記接地ラグ26は、クローラベルト20の幅方向に延び、縦断面形状が台形をなしている。本実施形態では接地ラグ26の断面形状の底辺厚さが5mmで、頂辺厚さが3mm,高さが15mmとなっている。接地ラグ26は、その厚さが高さに比べて遥かに小さいため、曲げ剛性が小さく、それ故、接地ラグ26に幅方向と直交する方向の力を加えると折れ曲がり易い。接地ラグ26の高さは、その厚さ(平均厚さまたは高さ方向の中央部の厚さ)に比べて3倍以上,7倍以下が好ましく、より好ましくは3.5倍以上,5倍以下である。接地ラグ26の高さが厚さの3倍未満であると、接地ラグ26の曲げ剛性を十分に小さくできず、7倍を超えると接地ラグ26の高さ方向の強度が不足する。なお、接地ラグ26の平面形状は図1に示すように中央で折れた形状をなしている。これは、高さ方向の荷重すなわちロボットの自重に対する強度を高める。本実施形態では、図6に示すように、複数の接地ラグ26毎に向きが異なる。
【0029】
上記構成のロボットにおいて、左右のクローラ装置2のアクチュエータが駆動すると、アクチュエータに接続されたホイール10が回転することにより、クローラベルト20が回る。その結果、ロボットが走行する。
【0030】
クローラベルト20はゴム製のベルト本体22を用いているが、スチールベルト21で補強されているので、使用を続けても伸びることがなく、ホイール10から外れるのを防止できる。また、クローラベルト20の著しい軽量化を図ることができる。その第1の理由は、上記クローラベルト20を肉厚を増大させずに薄いスチールベルト21で補強しているからであり、第2の理由は、スチールベルト21によりホイール10との係合を行ない、ベルト本体22にホイール10と係合するための突起(前述した先行技術参照)を形成せずに済むからである。
【0031】
上記スチールベルト21の係合穴21aにホイール10の突起12aが嵌り込むので、クローラベルト20が左右方向に外れるのを確実に防止できる。
【0032】
本実施形態では、折れ曲がり易い接地ラグ26を有しているので、図7のような平坦面を有する比較的低い瓦礫S’を容易に乗り越えられる。その理由は、接地ラグ26が弾性変形して瓦礫S’との接触面積を多くすることができるので、瓦礫S’に対して滑らずに良好にグリップすることができ、クローラベルト20の空転を回避できるからである。この機能は、特に瓦礫S’が濡れていたり砂が付着している場合に有効に働く。なお、隣接する接地ラグ26の間隔を狭くすれば、図7のように隣接する2つの接地ラグ26で瓦礫S’をより一層良好にグリップすることができる。
【0033】
接地ラグ26は、折れ曲がり易いが高さ方向の荷重すなわちロボットの自重に対しては十分な強度を有し、大きく変形せず円滑な走行を確保できる。接地ラグ26は平面形状が折れ曲がった形状をなしているので、高さ方向の強度が高いからである。
【0034】
上記ベルト本体22の遮蔽鍔24は、弾性変形した状態で側板30の周縁部の傾斜面30cに接している。これにより、クローラベルト20と一対の側板30で囲われた内部空間がシールされ、水,砂,塵埃の侵入を回避できる。
【0035】
なお、クローラベルト20がホイール10の半周にわたって掛け渡された領域では、遮蔽鍔24は先端縁部が波打つような力を受ける。しかし、遮蔽鍔24は弾性変形して側板30の周縁部に接しているため、先端縁部が波打つことなく側板30の周縁部に接することができる。
【0036】
次に、上記クローラベルト20の製造装置および製造方法について説明する。図8に示すように、製造装置は、下型70(第1型)と、この下型70に対して昇降する上型80(第2型)とを備えている。
【0037】
下型70は、ベース部71と断面が逆U字形をなす成形部72とを有しており、両者は分離可能となっており、全体形状は両端が開口した中空の直方体形状をなしている。図9に示すように、上記成形部72の上面には、長手方向に等ピッチで収容穴72aが形成されており、この収容穴72aには成形ピン74が挿脱可能に収容されている。この成形ピン74のヘッド部は略半球形状をなし、成形突起74aとして提供されている。
下型70には、上記遮蔽鍔24を成形するための一対の直線状の補助成形溝73が、上記成形突起74aの列を挟んで形成されている。
【0038】
上記上型80は長方形の板形状をなしており、その下面には長手方向に延びる浅くて広い成形溝81が形成され、さらに上下方向に貫通する6つのラグ成形穴86が形成されている。ラグ成形穴86は接地ラグ26に対応した形状をなしている。
【0039】
中空の下型70に上記スチールベルト21が通され、その一部が下型70の上面に載せられる。この際、スチールベルト21の係合穴21aが下型70の成形突起74aに嵌ってスチールベルト21の位置決めがなされる。
【0040】
上記のようなスチールベルト21の位置決め状態で、加硫剤を含む所定長さの生ゴムシート(弾性材料,図示しない)を下型70の成形部72の上面に載せる。
【0041】
次に、上型80を降下させて生ゴムシートを加圧するとともに、型70,80を加熱することにより、図9に示すように、ベルト本体22の一部分22’(無端状となるべきベース本体22の周方向に分かたれた一部分)がスチールベルト21の外周に加硫接着(加硫成形)される。なお、予めスチールベルト21の外周面にプライマ(接着剤)を塗布しておき、ベルト本体22の一部分22’とスチールベルト21の固着強度を高めるのが好ましい。
【0042】
上記成形時に、成形溝81によりベース部23の一部分が成形され、補助成形溝73により遮蔽鍔24の一部分が成形され、成形突起74aがゴム材料に入り込むことにより逃がし凹部23aが成形され、さらにラグ成形穴86にゴム材料が入り込むことにより接地ラグ26が成形される。なお、ラグ成形穴86の上端開口からはみ出たゴム材料は、へら等によりそがれる。
【0043】
上記成形後に上型80を上昇させる。次に、図10に示すように、スチールベルト21を下型70から剥がす。上記ゴムの成形は収縮を伴うため、成形突起74aとゴムの付着が強く、成形ピン74も上記スチールベルト21およびベルト本体22の一部分22’とともに下型70から離れる。
【0044】
次に、図11に示すように、成形ピン74をスチールベルト21およびベルト本体22の一部分22’から取り外す。成形ピン74が下型70から外れた状態では成形ピン74は上記一部分22’の逃げ凹部23aから容易に離脱させることができ、成形突起を一体に有する下型を用いた場合に比べて、生産性を向上させることができる。
【0045】
次にスチールベルト21を周方向に移動させることにより、上記ベース本体22の一部分22’が加硫接着された領域と隣接した領域を、新たに下型70に載せるように位置決めし、それから上記と同様にしてベース本体22の一部分22’を成形する。これを繰り返すことにより、スチールベルト21の全周にわたってベース本体22を装着することができる。なお、隣接するベース本体22の部分22’同士は、後に成形される部分22’が前に成形された部分22’にくっつくことにより、実質的に一体となる。この方法によれば、割型を用いずに簡単な構造の下型70と上型80を用いて、上記遮蔽鍔24および接地ラグ26を有するクローラベルト20を、低コストで製造することができる。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について、図12〜図17を参照しながら説明する。これら実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
図12に示す第2実施形態では、ホイール10の外周面は略円筒面形状であるが、その断面形状は大きな曲率半径の円弧を描き、中央が膨らんだクラウン形状をなしている。すなわち、ホイール10の外径は中央から幅方向両端に向かうにしたがって漸次径が小さくなっている。図では誇張されているが、上記中央と両端との径の差は実際には僅かであり、本実施形態では、ホイール10の幅が30mm、中央の径が100mmであるのに対し、幅方向の両端の径は中央より0.3mm小さい。
【0048】
図13に示す第3実施形態は第2実施形態と同様であるが、次の点だけが異なる。スチールベルト21がベルト本体22のベース部23に埋め込まれており、スチールベルト21の内周側には、薄いゴム層29が形成されている。このゴム層29はホイール10の外周面に合致した内周面を有している。ホイール10が金属の場合には、このゴム層29により、スチールベルト21とホイール10の金属同士の接触による摩耗を防止できる。
【0049】
図14〜図16に示す第4実施形態では、ホイール10は樹脂等からなり円筒面をなす外周面の幅方向中央には、周方向に等ピッチで金属製の係合ピン12が埋め込まれている。この係合ピン12のヘッド部は半球状をなしてホイール10の外周面から突出し、係合突起12aとして提供される。
【0050】
遮蔽鍔24’は、ベルト本体22の全周にわたって連続して形成されており、ベース部23の外周面より斜め方向に突出している。遮蔽鍔24’は断面形状が先細となっており、弾性変形が容易になっている。
【0051】
図16に示すように、側板30は、金属板31と一対のシール部材32とからなる。図15に示すように、この金属板31は、前後のホイール10の周縁にそれぞれ沿う半円形状の前後の端縁部31aを有している。これら前後の端縁部31aは、図15に示すように内側が削られて薄肉になっている。
【0052】
図16に示すように、金属板31の端縁部31aに連なる上下の直線状の縁部には、上記シール部材32が着脱可能に取りつけられている。詳述すると、このシール部材32は、後述するクローラベルト20のベルト本体22よりも弾性係数の小さいゴム材料からなり、断面L字形の直線状をなすブラケット33に加硫接着等の手段で取り付けられており、このブラケット33が側板30の上下の縁部にネジ34により着脱可能に固定されている。上記シール部材32は、薄肉をなす起立壁32aを有している。
【0053】
クローラベルト20において前後のホイール10に掛かっている領域では、遮蔽鍔24’の先端縁部が側板30の前後の端縁部31aに接しており、前後のホイール10間の領域では、遮蔽鍔24’の先端縁部がシール部材32の起立壁32aに接している。これにより、クローラベルト20と一対の側板30で囲われた内部空間がシールされ、水,砂,塵埃の侵入を回避できる。
【0054】
クローラベルト20がホイール10に半周にわたって掛け渡された領域では曲げられるため、遮蔽鍔24’は先端縁部が側板30の端縁部31aから離れる方向に反る。しかし、上記のように遮蔽鍔24’の先端縁部は弾性変形して側板30の端縁部31aに接しているので、上記反りがあるにも拘わらず端縁部31aに確実に接することができる。また、クローラベルト20の遮蔽鍔24’は側板30の上下縁部においてシール部材32に接するが、シール部材32が遮蔽鍔24’より弾性係数が小さくしかも薄肉であるので、遮蔽鍔24’に比べて大きく変形する。そのため、クローラベルト20がホイール10により拘束されない部位で揺れても、シール部材32がこの揺れに追随して変形するため、シール部材32と遮蔽鍔24’の接触を確保することができる。なお、シール部材32にはテフロン(登録商標)のコーティング等が施されているので、遮蔽鍔24’との摩擦を少なくすることができる。
【0055】
上記第4実施形態のクローラベルト20を成形するために、図17の下型70と上型80が用いられる。この実施形態では、上型80の成形溝81の両側に直線状をなす一対の補助成形溝82が形成されている。この補助成形溝82は、上記遮蔽鍔24’に対応した形状を有している。これら型70,80の使用方法は前述の第1実施形態と同様である。
【0056】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、一対のクローラ装置は、両輪駆動であってもよい。
前側,後側ホイールの間に中間のホイールが配置されていてもよい。
従動のホイールは、クローラベルトと噛み合わず、クローラベルトの幅方向移動を規制するだけでもよい。
【0057】
接地ラグ26の平面形状は、複数箇所で折れて波形にしてもよい。
第1,第2実施形態における接地ラグ26は縦断面台形状ではなく、均一厚さに形成してもよい。
また、ホイール10に2列の向きの異なる短い螺旋状の係合突起(ダブルヘリカル)を形成し、抗張帯にもこれに合致した係合穴を形成することにより、クローラベルトの蛇行を確実に防止するようにしてもよい。
【0058】
ベルト本体はインサート射出成形等により全周を一度に成形してもよい。
アクチュエータは、電気モータに限らず油圧モータやエンジンであってもよい。
また、本発明のクローラ装置は、人命救助ロボット以外に軽量の病院清掃用等のロボットや、ロボット以外の軽量建機に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態をなす左右一対のクローラ装置を備えた、ロボットの足回り部の斜視図である。
【図2】同クローラ装置の側面図である。
【図3】同クローラ装置に用いられるクローラベルトを、スチールベルトの厚みを誇張して示す縦断面図である。
【図4】同クローラベルトをホイールに掛け渡した状態で示す縦断面図である。
【図5】同クローラベルトの側面図である。
【図6】同クローラベルトの平面図である。
【図7】同クローラベルトの接地ラグが瓦礫をグリップする状態を示す概略図である。
【図8】同クローラベルトの製造に使用される装置を示す斜視図である。
【図9】同装置の要部の拡大縦断面図であり、クローラベルトのベルト本体が成形された状態を示す。
【図10】同装置の要部の拡大縦断面図であり、成形されたベルト本体の一部分とスチールベルトを下型から離す状態を示す。
【図11】同装置の要部の拡大縦断面図であり、成形されたベルト本体の一部分とスチールベルトから成形ピンを離した状態を示す。
【図12】本発明の第2実施形態を示すクローラ装置の縦断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態を示すクローラ装置の縦断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態を示すクローラベルトの拡大縦断面図である。
【図15】同第4実施形態におけるクローラベルトと側板の端縁部との間のシール構造を示す縦断面図である。
【図16】同第4実施形態におけるクローラベルトと側板の中間部との間のシール構造を示す縦断面図である。
【図17】同第4実施形態のクローラベルトの製造に使用される装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2 クローラ装置
10 ホイール
20 クローラベルト
22 ベルト本体
23 ベース部
24,24’ 遮蔽鍔
30 側板
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量なロボット等の足回り部に用いられるクローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型軽量のロボット等に用いられるゴム製のクローラベルトを有するクローラ装置が開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記クローラ装置において、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止するために、クローラベルトで囲われた空間を外部から遮断する構造が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えたクローラ装置において、上記クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有し、これら遮蔽鍔が上記側板の周縁部に接していることを特徴とする。
【0005】
上記構成により、側板間の内部空間を遮蔽することができ、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止できる。
【0006】
好ましくは、上記遮蔽鍔が先細の断面形状をなしており、この遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形した状態で側板に接する。
【0007】
好ましくは、上記遮蔽鍔が側板の周縁部の外面に接する。
【0008】
好ましくは、上記側板の周縁部の外面が傾斜しており、この傾斜面に上記遮蔽鍔が接している。
【0009】
好ましくは、上記遮蔽板が側板の周縁部の内面に接する。
【0010】
好ましくは、上記側板の周縁部のうち、ホイール間に位置する上下縁部が、シール部材により形成され、このシール部材が上記遮蔽鍔より弾性係数が小さく、遮蔽鍔に弾性変形して接している。
【0011】
これにより、クローラベルトがホイール間で揺れても確実に遮蔽鍔とシール部材の接触状態を維持できる。
【0012】
好ましくは、上記シール部材には、遮蔽鍔との摩擦を少なくすることができるコーティングが施されている。
【0013】
好ましくは、上記シール部材は起立壁を有し、この起立壁の内側面に上記遮蔽鍔の先端縁部が接する。
【0014】
好ましくは、遮蔽鍔が先細の断面形状をなし、側板の前後の半円形状の端縁部に弾性変形しながら接触する。クローラベルトにおいてホイールに掛け渡された領域では、遮蔽鍔の先端縁部を波状にする力が作用するが、遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形して側板に接しているため、波を打たずに確実に側板に接することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クローラベルトにより囲われた側板間の内部空間を遮蔽することができ、クローラベルトとホイールとの間に砂や塵埃が噛み込むのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図11を参照しながら説明する。図1は軽作業用ロボットの下半身である足回り部Aを示す。この足回り部Aは、基台1の左右部に一対のクローラ装置2を取り付けることにより構成されている。この基台1にロボットの上半身が取り付けられる。この上半身はロボットの役割に応じて構成が異なる。例えば地震等の災害発生時に瓦礫に閉じ込められた人の探索に用いられるロボットの場合、カメラ,探知センサおよび照明器具を備えており、必要に応じて軽量物の把持機構を備えている。
【0017】
図1,図2に示すように、上記クローラ装置2の各々は、前側と後側のホイール10と、これらホイール10間に掛け渡された無端状のクローラベルト20と、前後のホイール10を回転可能に支持する一対の側板30とを備えている。一対のクローラ装置2の内側の側板30の中央部が上記基台1に取り付けられている。
【0018】
左右のクローラ装置2は実質的に同じ構造である。各クローラ装置2において、前後いずれか一方のホイール10が内側の側板30に設けられた電気モータ等のアクチュエータ(図示せず)に接続されて駆動輪として働き、他方が従動輪として働く。
【0019】
図2,図4に示すように、各ホイール10の外周面は円筒面をなしている。ホイール10の外周面の幅方向中央には周方向に等ピッチで半球状の係合突起12aが形成されている。本実施形態では、ホイール10の幅30mmに対して係合突起12aの径は3mm程度である。
【0020】
図2,図4に示すように、一対の側板30は、一対のホイール10の左右に配置されている。各側板30は、前後方向に細長い長円板状をなし、その前後端部が一対のホイール10の両側面を覆うようになっている。側板30の前後の端縁部はホイール10の周縁に沿って半円形状をなしている。
【0021】
図4に示すように、上記側板30の周縁部は全周にわたって先細の断面を有し、その外面は傾斜面30cとなっている。
【0022】
図3に示すように、上記クローラベルト20は、無端状のステンレススチールからなるスチールベルト21(金属薄帯,抗張帯)と、このスチールベルト21の外周の全域に加硫接着等により取り付けられたSBRやウレタンゴム等のゴム(弾性材料)からなる無端状のベルト本体22とを有している。
【0023】
上記スチールベルト21は、板厚0.05〜1.0mm(本実施形態では0.15mm)の細長い薄帯の両端を溶接することにより構成されている。スチールベルト21は、上記ホイール10とほぼ等しい幅を有しており、その幅方向中央には周方向に等ピッチ(ホイール10の係合突起12aと等しいピッチ)で、円形の係合穴21aが形成されている。係合穴21aの径は係合突起12aの径と等しいか僅かに大きい。
【0024】
本実施形態では、上記スチールベルト21は後述するベース部23(厚さ3mm)に比べて極めて薄い。図ではスチールベルト21の厚みが誇張して示されている。
【0025】
図1,図3に示すように、上記ベルト本体22は、上記スチールベルト21より幅広をなす無端状のベース部23と、このベース部23の幅方向両側に形成された遮蔽鍔24と、ベース部23の外周に間隔をおいて形成された接地ラグ26とを一体に有している。上記ベース部23の幅方向中央には、上記スチールベルト21の係合穴21aに対応した位置に係合穴21aと連通する略半球状の逃がし凹部23aが形成されている。
【0026】
上記クローラベルト20は、前後のホイール10に半周にわたって掛け渡されている。図4に示すように、ホイール10の半周分の領域において、スチールベルト21がホイール10の外周面に直接接し、ホイール10の係合突起12aがスチールベルト21の係合穴21aに係合されるとともにベース部23の逃がし凹部23aに入り込んでいる。
【0027】
上記遮蔽鍔24は、ベルト本体22の全周にわたって連続して形成されており、ベース部23の内周面より径方向,内方向に延び、その内周縁の外面が傾斜面となっている。これにより、遮蔽鍔24は断面形状が先細となっており、弾性変形が容易になっている。
【0028】
上記接地ラグ26は、クローラベルト20の幅方向に延び、縦断面形状が台形をなしている。本実施形態では接地ラグ26の断面形状の底辺厚さが5mmで、頂辺厚さが3mm,高さが15mmとなっている。接地ラグ26は、その厚さが高さに比べて遥かに小さいため、曲げ剛性が小さく、それ故、接地ラグ26に幅方向と直交する方向の力を加えると折れ曲がり易い。接地ラグ26の高さは、その厚さ(平均厚さまたは高さ方向の中央部の厚さ)に比べて3倍以上,7倍以下が好ましく、より好ましくは3.5倍以上,5倍以下である。接地ラグ26の高さが厚さの3倍未満であると、接地ラグ26の曲げ剛性を十分に小さくできず、7倍を超えると接地ラグ26の高さ方向の強度が不足する。なお、接地ラグ26の平面形状は図1に示すように中央で折れた形状をなしている。これは、高さ方向の荷重すなわちロボットの自重に対する強度を高める。本実施形態では、図6に示すように、複数の接地ラグ26毎に向きが異なる。
【0029】
上記構成のロボットにおいて、左右のクローラ装置2のアクチュエータが駆動すると、アクチュエータに接続されたホイール10が回転することにより、クローラベルト20が回る。その結果、ロボットが走行する。
【0030】
クローラベルト20はゴム製のベルト本体22を用いているが、スチールベルト21で補強されているので、使用を続けても伸びることがなく、ホイール10から外れるのを防止できる。また、クローラベルト20の著しい軽量化を図ることができる。その第1の理由は、上記クローラベルト20を肉厚を増大させずに薄いスチールベルト21で補強しているからであり、第2の理由は、スチールベルト21によりホイール10との係合を行ない、ベルト本体22にホイール10と係合するための突起(前述した先行技術参照)を形成せずに済むからである。
【0031】
上記スチールベルト21の係合穴21aにホイール10の突起12aが嵌り込むので、クローラベルト20が左右方向に外れるのを確実に防止できる。
【0032】
本実施形態では、折れ曲がり易い接地ラグ26を有しているので、図7のような平坦面を有する比較的低い瓦礫S’を容易に乗り越えられる。その理由は、接地ラグ26が弾性変形して瓦礫S’との接触面積を多くすることができるので、瓦礫S’に対して滑らずに良好にグリップすることができ、クローラベルト20の空転を回避できるからである。この機能は、特に瓦礫S’が濡れていたり砂が付着している場合に有効に働く。なお、隣接する接地ラグ26の間隔を狭くすれば、図7のように隣接する2つの接地ラグ26で瓦礫S’をより一層良好にグリップすることができる。
【0033】
接地ラグ26は、折れ曲がり易いが高さ方向の荷重すなわちロボットの自重に対しては十分な強度を有し、大きく変形せず円滑な走行を確保できる。接地ラグ26は平面形状が折れ曲がった形状をなしているので、高さ方向の強度が高いからである。
【0034】
上記ベルト本体22の遮蔽鍔24は、弾性変形した状態で側板30の周縁部の傾斜面30cに接している。これにより、クローラベルト20と一対の側板30で囲われた内部空間がシールされ、水,砂,塵埃の侵入を回避できる。
【0035】
なお、クローラベルト20がホイール10の半周にわたって掛け渡された領域では、遮蔽鍔24は先端縁部が波打つような力を受ける。しかし、遮蔽鍔24は弾性変形して側板30の周縁部に接しているため、先端縁部が波打つことなく側板30の周縁部に接することができる。
【0036】
次に、上記クローラベルト20の製造装置および製造方法について説明する。図8に示すように、製造装置は、下型70(第1型)と、この下型70に対して昇降する上型80(第2型)とを備えている。
【0037】
下型70は、ベース部71と断面が逆U字形をなす成形部72とを有しており、両者は分離可能となっており、全体形状は両端が開口した中空の直方体形状をなしている。図9に示すように、上記成形部72の上面には、長手方向に等ピッチで収容穴72aが形成されており、この収容穴72aには成形ピン74が挿脱可能に収容されている。この成形ピン74のヘッド部は略半球形状をなし、成形突起74aとして提供されている。
下型70には、上記遮蔽鍔24を成形するための一対の直線状の補助成形溝73が、上記成形突起74aの列を挟んで形成されている。
【0038】
上記上型80は長方形の板形状をなしており、その下面には長手方向に延びる浅くて広い成形溝81が形成され、さらに上下方向に貫通する6つのラグ成形穴86が形成されている。ラグ成形穴86は接地ラグ26に対応した形状をなしている。
【0039】
中空の下型70に上記スチールベルト21が通され、その一部が下型70の上面に載せられる。この際、スチールベルト21の係合穴21aが下型70の成形突起74aに嵌ってスチールベルト21の位置決めがなされる。
【0040】
上記のようなスチールベルト21の位置決め状態で、加硫剤を含む所定長さの生ゴムシート(弾性材料,図示しない)を下型70の成形部72の上面に載せる。
【0041】
次に、上型80を降下させて生ゴムシートを加圧するとともに、型70,80を加熱することにより、図9に示すように、ベルト本体22の一部分22’(無端状となるべきベース本体22の周方向に分かたれた一部分)がスチールベルト21の外周に加硫接着(加硫成形)される。なお、予めスチールベルト21の外周面にプライマ(接着剤)を塗布しておき、ベルト本体22の一部分22’とスチールベルト21の固着強度を高めるのが好ましい。
【0042】
上記成形時に、成形溝81によりベース部23の一部分が成形され、補助成形溝73により遮蔽鍔24の一部分が成形され、成形突起74aがゴム材料に入り込むことにより逃がし凹部23aが成形され、さらにラグ成形穴86にゴム材料が入り込むことにより接地ラグ26が成形される。なお、ラグ成形穴86の上端開口からはみ出たゴム材料は、へら等によりそがれる。
【0043】
上記成形後に上型80を上昇させる。次に、図10に示すように、スチールベルト21を下型70から剥がす。上記ゴムの成形は収縮を伴うため、成形突起74aとゴムの付着が強く、成形ピン74も上記スチールベルト21およびベルト本体22の一部分22’とともに下型70から離れる。
【0044】
次に、図11に示すように、成形ピン74をスチールベルト21およびベルト本体22の一部分22’から取り外す。成形ピン74が下型70から外れた状態では成形ピン74は上記一部分22’の逃げ凹部23aから容易に離脱させることができ、成形突起を一体に有する下型を用いた場合に比べて、生産性を向上させることができる。
【0045】
次にスチールベルト21を周方向に移動させることにより、上記ベース本体22の一部分22’が加硫接着された領域と隣接した領域を、新たに下型70に載せるように位置決めし、それから上記と同様にしてベース本体22の一部分22’を成形する。これを繰り返すことにより、スチールベルト21の全周にわたってベース本体22を装着することができる。なお、隣接するベース本体22の部分22’同士は、後に成形される部分22’が前に成形された部分22’にくっつくことにより、実質的に一体となる。この方法によれば、割型を用いずに簡単な構造の下型70と上型80を用いて、上記遮蔽鍔24および接地ラグ26を有するクローラベルト20を、低コストで製造することができる。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について、図12〜図17を参照しながら説明する。これら実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
図12に示す第2実施形態では、ホイール10の外周面は略円筒面形状であるが、その断面形状は大きな曲率半径の円弧を描き、中央が膨らんだクラウン形状をなしている。すなわち、ホイール10の外径は中央から幅方向両端に向かうにしたがって漸次径が小さくなっている。図では誇張されているが、上記中央と両端との径の差は実際には僅かであり、本実施形態では、ホイール10の幅が30mm、中央の径が100mmであるのに対し、幅方向の両端の径は中央より0.3mm小さい。
【0048】
図13に示す第3実施形態は第2実施形態と同様であるが、次の点だけが異なる。スチールベルト21がベルト本体22のベース部23に埋め込まれており、スチールベルト21の内周側には、薄いゴム層29が形成されている。このゴム層29はホイール10の外周面に合致した内周面を有している。ホイール10が金属の場合には、このゴム層29により、スチールベルト21とホイール10の金属同士の接触による摩耗を防止できる。
【0049】
図14〜図16に示す第4実施形態では、ホイール10は樹脂等からなり円筒面をなす外周面の幅方向中央には、周方向に等ピッチで金属製の係合ピン12が埋め込まれている。この係合ピン12のヘッド部は半球状をなしてホイール10の外周面から突出し、係合突起12aとして提供される。
【0050】
遮蔽鍔24’は、ベルト本体22の全周にわたって連続して形成されており、ベース部23の外周面より斜め方向に突出している。遮蔽鍔24’は断面形状が先細となっており、弾性変形が容易になっている。
【0051】
図16に示すように、側板30は、金属板31と一対のシール部材32とからなる。図15に示すように、この金属板31は、前後のホイール10の周縁にそれぞれ沿う半円形状の前後の端縁部31aを有している。これら前後の端縁部31aは、図15に示すように内側が削られて薄肉になっている。
【0052】
図16に示すように、金属板31の端縁部31aに連なる上下の直線状の縁部には、上記シール部材32が着脱可能に取りつけられている。詳述すると、このシール部材32は、後述するクローラベルト20のベルト本体22よりも弾性係数の小さいゴム材料からなり、断面L字形の直線状をなすブラケット33に加硫接着等の手段で取り付けられており、このブラケット33が側板30の上下の縁部にネジ34により着脱可能に固定されている。上記シール部材32は、薄肉をなす起立壁32aを有している。
【0053】
クローラベルト20において前後のホイール10に掛かっている領域では、遮蔽鍔24’の先端縁部が側板30の前後の端縁部31aに接しており、前後のホイール10間の領域では、遮蔽鍔24’の先端縁部がシール部材32の起立壁32aに接している。これにより、クローラベルト20と一対の側板30で囲われた内部空間がシールされ、水,砂,塵埃の侵入を回避できる。
【0054】
クローラベルト20がホイール10に半周にわたって掛け渡された領域では曲げられるため、遮蔽鍔24’は先端縁部が側板30の端縁部31aから離れる方向に反る。しかし、上記のように遮蔽鍔24’の先端縁部は弾性変形して側板30の端縁部31aに接しているので、上記反りがあるにも拘わらず端縁部31aに確実に接することができる。また、クローラベルト20の遮蔽鍔24’は側板30の上下縁部においてシール部材32に接するが、シール部材32が遮蔽鍔24’より弾性係数が小さくしかも薄肉であるので、遮蔽鍔24’に比べて大きく変形する。そのため、クローラベルト20がホイール10により拘束されない部位で揺れても、シール部材32がこの揺れに追随して変形するため、シール部材32と遮蔽鍔24’の接触を確保することができる。なお、シール部材32にはテフロン(登録商標)のコーティング等が施されているので、遮蔽鍔24’との摩擦を少なくすることができる。
【0055】
上記第4実施形態のクローラベルト20を成形するために、図17の下型70と上型80が用いられる。この実施形態では、上型80の成形溝81の両側に直線状をなす一対の補助成形溝82が形成されている。この補助成形溝82は、上記遮蔽鍔24’に対応した形状を有している。これら型70,80の使用方法は前述の第1実施形態と同様である。
【0056】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、一対のクローラ装置は、両輪駆動であってもよい。
前側,後側ホイールの間に中間のホイールが配置されていてもよい。
従動のホイールは、クローラベルトと噛み合わず、クローラベルトの幅方向移動を規制するだけでもよい。
【0057】
接地ラグ26の平面形状は、複数箇所で折れて波形にしてもよい。
第1,第2実施形態における接地ラグ26は縦断面台形状ではなく、均一厚さに形成してもよい。
また、ホイール10に2列の向きの異なる短い螺旋状の係合突起(ダブルヘリカル)を形成し、抗張帯にもこれに合致した係合穴を形成することにより、クローラベルトの蛇行を確実に防止するようにしてもよい。
【0058】
ベルト本体はインサート射出成形等により全周を一度に成形してもよい。
アクチュエータは、電気モータに限らず油圧モータやエンジンであってもよい。
また、本発明のクローラ装置は、人命救助ロボット以外に軽量の病院清掃用等のロボットや、ロボット以外の軽量建機に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態をなす左右一対のクローラ装置を備えた、ロボットの足回り部の斜視図である。
【図2】同クローラ装置の側面図である。
【図3】同クローラ装置に用いられるクローラベルトを、スチールベルトの厚みを誇張して示す縦断面図である。
【図4】同クローラベルトをホイールに掛け渡した状態で示す縦断面図である。
【図5】同クローラベルトの側面図である。
【図6】同クローラベルトの平面図である。
【図7】同クローラベルトの接地ラグが瓦礫をグリップする状態を示す概略図である。
【図8】同クローラベルトの製造に使用される装置を示す斜視図である。
【図9】同装置の要部の拡大縦断面図であり、クローラベルトのベルト本体が成形された状態を示す。
【図10】同装置の要部の拡大縦断面図であり、成形されたベルト本体の一部分とスチールベルトを下型から離す状態を示す。
【図11】同装置の要部の拡大縦断面図であり、成形されたベルト本体の一部分とスチールベルトから成形ピンを離した状態を示す。
【図12】本発明の第2実施形態を示すクローラ装置の縦断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態を示すクローラ装置の縦断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態を示すクローラベルトの拡大縦断面図である。
【図15】同第4実施形態におけるクローラベルトと側板の端縁部との間のシール構造を示す縦断面図である。
【図16】同第4実施形態におけるクローラベルトと側板の中間部との間のシール構造を示す縦断面図である。
【図17】同第4実施形態のクローラベルトの製造に使用される装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2 クローラ装置
10 ホイール
20 クローラベルト
22 ベルト本体
23 ベース部
24,24’ 遮蔽鍔
30 側板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えたクローラ装置において、
上記クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有し、これら遮蔽鍔が上記側板の周縁部に接していることを特徴とするクローラ装置。
【請求項2】
上記遮蔽鍔が先細の断面形状をなしており、この遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形した状態で側板に接することを特徴とする請求項1に記載のクローラ装置。
【請求項3】
上記遮蔽鍔が側板の周縁部の外面に接することを特徴とする請求項1または2に記載のクローラ装置。
【請求項4】
上記側板の周縁部の外面が傾斜しており、この傾斜面に上記遮蔽鍔が接していることを特徴とする請求項3に記載のクローラ装置。
【請求項5】
上記遮蔽板が側板の周縁部の内面に接することを特徴とする請求項1または2に記載のクローラ装置。
【請求項6】
上記側板の周縁部のうち、ホイール間に位置する上下縁部が、シール部材により形成され、このシール部材が上記遮蔽鍔より弾性係数が小さく、遮蔽鍔に弾性変形して接していることを特徴とする請求項1,2,5のいずれかに記載のクローラ装置。
【請求項7】
上記シール部材には、遮蔽鍔との摩擦を少なくすることができるコーティングが施されていることを備えていることを特徴とする請求項6に記載のクローラ装置。
【請求項8】
上記シール部材は起立壁を有し、この起立壁の内側面に上記遮蔽鍔の先端縁部が接することを特徴とする請求項6または7に記載のクローラ装置。
【請求項1】
前後方向に離れて配置された複数のホイール(10)と、これらホイールに掛け渡されたクローラベルト(20)と、前後方向に延びて上記複数のホイール(10)の両側面を覆う一対の側板(30)を備えたクローラ装置において、
上記クローラベルト(20)は、弾性材料からなる無端状のベルト本体(22)を備え、このベルト本体は、無端状のベース部(23)と、このベース部の両側にベース部の全長にわたって連続して形成された遮蔽鍔(24;24’)とを有し、これら遮蔽鍔が上記側板の周縁部に接していることを特徴とするクローラ装置。
【請求項2】
上記遮蔽鍔が先細の断面形状をなしており、この遮蔽鍔の先端縁部が弾性変形した状態で側板に接することを特徴とする請求項1に記載のクローラ装置。
【請求項3】
上記遮蔽鍔が側板の周縁部の外面に接することを特徴とする請求項1または2に記載のクローラ装置。
【請求項4】
上記側板の周縁部の外面が傾斜しており、この傾斜面に上記遮蔽鍔が接していることを特徴とする請求項3に記載のクローラ装置。
【請求項5】
上記遮蔽板が側板の周縁部の内面に接することを特徴とする請求項1または2に記載のクローラ装置。
【請求項6】
上記側板の周縁部のうち、ホイール間に位置する上下縁部が、シール部材により形成され、このシール部材が上記遮蔽鍔より弾性係数が小さく、遮蔽鍔に弾性変形して接していることを特徴とする請求項1,2,5のいずれかに記載のクローラ装置。
【請求項7】
上記シール部材には、遮蔽鍔との摩擦を少なくすることができるコーティングが施されていることを備えていることを特徴とする請求項6に記載のクローラ装置。
【請求項8】
上記シール部材は起立壁を有し、この起立壁の内側面に上記遮蔽鍔の先端縁部が接することを特徴とする請求項6または7に記載のクローラ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−191153(P2007−191153A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104821(P2007−104821)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【分割の表示】特願2005−515640(P2005−515640)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(899000013)財団法人理工学振興会 (81)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【分割の表示】特願2005−515640(P2005−515640)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(899000013)財団法人理工学振興会 (81)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
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