説明

クーラント濾過装置

【課題】コンパクトに構成でき、しかも、十分な濾過処理能力を確保することができ、また、ドラムフィルターの脱着が容易でメンテナンスも容易に行うことができるクーラント濾過装置を提供することを課題とする。
【解決手段】一端部に斜め立上り部3を有し、他端部から斜め立上り部3の上端にまで延びるスクレーパ付きチェーンコンベア4を配設したコンベア槽1を設け、コンベア槽1の側面の一部を開口してコンベア槽1に連通するフィルター槽を連設し、フィルター槽1には前記チェーンコンベアの進行方向と直角方向の回転軸心を有するドラムフィルター5を回転自在に配備して成り、ドラムフィルター5は、スパイラルフィーダーにフィルターを巻き付けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント濾過装置、より詳細には、マシニングセンター等による金属の切削作業において排出される切粉等の異物を含んだクーラントを、再利用に供するために濾過する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クーラント濾過装置としては、図10に示すような、ドラムフィルタータイプのものが一般的である。これは、一端にマシニングセンター等からの切粉等を含んだクーラントの流入口52を形成すると共に、他端に斜め立上り部58を設けてその先端部に下向きのスラッジ排出口53を形成した濾過槽51を設け、濾過槽51内に、クーラント流入口52の下側からスラッジ排出口53にまで延びる、スクレーパ55を適宜間隔置きに取り付けたチェーンコンベア54を配置し、また、斜め立上り部58の基端部に、ドラムフィルター56を回転可能に軸支させて成る。
【0003】
この構成の場合、クーラントの流入口52から切粉等を含んだクーラントが導入されると、比重の大きい切粉等が濾過槽51の底面にスラッジとして沈殿堆積する。堆積したスラッジ57は、循環するコンベア54のスクレーパ55によって掻き取られ、スクレーパ55によって濾過槽51の底面並びに斜め立上り部58の内側面に沿って押送され、スラッジ排出口53から排出される。また、塗料カス等の浮遊異物を含むクーラントは、ドラムフィルター56の表面に被装されたフィルター(濾過布)によって濾過され、ドラムフィルター56内部から排出される。
【0004】
ところで、ドラムフィルター56による濾過処理量を増やすためにはドラムフィルター56の径を大きくする必要があるが、その径を大きくすることによって装置全体の大型化を招くことになり、それは装置のコンパクト化の要請に逆行することになる。そこで、より多くの濾過処理量を確保するために、同径のドラムフィルターを複数並置することが行われている。
【0005】
しかし、その場合においても、濾過処理量を十分に確保するには、ドラムフィルターの径をある程度大きなものとしなければならず、できるだけその径寸を抑えるということであれば、横幅を広げざるを得ない。そして、それに伴い、濾過槽自体の横幅を広げる必要があり、また、スクレーパ並びにその駆動機構もそれに対応して大型化しなければならないことになる。
【0006】
また、循環するスクレーパはドラムフィルターの下を通過するため、その高さは、ドラムフィルターと濾過槽の底面との間の間隔に規制されることになるが、この間隔を広げると濾過効率が落ちるので、その間隔は余り広げることができない。その結果、スクレーパの高さを余り高くすることができないことになる。そして、スクレーパが十分に高くないと、掻き取られて押送されるスラッジが嵩高くなってスクレーパを乗り越えたり、ドラムフィルターに接触してそのフィルターを損傷したりするおそれが生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−326436号公報
【特許文献2】特許第3004556号公報
【特許文献3】特開平11−239704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における諸問題に鑑みてなされたものであって、全体をコンパクトに構成でき、しかも、十分な濾過処理能力を確保することができ、また、ドラムフィルターの脱着が容易でメンテナンスも容易に行うことができるクーラント濾過装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、一端部に斜め立上り部を有し、他端部から前記斜め立上り部の上端にまで延びるスクレーパ付きチェーンコンベアを配設したコンベア槽を設け、前記コンベア槽の側面の一部を開口して前記コンベア槽に連通するフィルター槽を連設し、前記フィルター槽には前記チェーンコンベアの進行方向と直角方向の回転軸心を有するドラムフィルターを回転自在に配備して成り、前記ドラムフィルターは、スパイラルフィーダーにフィルターを巻き付けて構成され、以て、前記ドラムフィルターの回転に伴う前記スパイラルフィーダーの作用で、前記フィルター槽内のスラッジが逐次前記コンベア槽に戻されることを特徴とするクーラント濾過装置である。
【0010】
好ましくは、前記ドラムフィルターは、前記チェーンコンベアに係合する伝動手段を備えることにより、前記チェーンコンベアの走行に伴って回転駆動されるようにする。
【0011】
前記フィルター槽は、前記コンベア槽の一方の側の側面に複数並設されることがあり、また、前記フィルター槽は、前記コンベア槽の両側の側面に設置されることもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のとおりであって、ドラムフィルターがコンベア槽の外側に配置されるため、結果的に全体をコンパクトに構成でき、特に、コンベア槽及びスクレーパの横幅を合理的範囲に抑えることができ、また、ドラムフィルターが嵩高くなったスラッジに触れて損傷することが皆無となり、更に、スクレーパの高さに対する制限がなくなるためにその高さを十分に高く設定できるので、スラッジがスクレーパを乗り越えるおそれがなく、しかも、分離されたコンベア槽とフィルター槽における各作用によって、十分な濾過処理能力が確保される効果がある。
【0013】
また、ドラムフィルターがコンベア槽の外側に配置されるためにその取り出しが容易となるので、ドラムフィルターを頻繁に取り出してメンテナンスを実施することが可能となり、更に、既存の濾過装置を改修して構成することも容易なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るクーラント濾過装置の一実施形態の平面図である。
【図2】本発明に係るクーラント濾過装置の一実施形態の平面図である。
【図3】本発明に係るクーラント濾過装置におけるドラムフィルターの設置方法を示す側面図である。
【図4】本発明に係るクーラント濾過装置におけるドラムフィルターの設置方法を示す正面図である。
【図5】本発明に係るクーラント濾過装置におけるドラムフィルターの設置方法を示す分解斜視図である。
【図6】本発明に係るクーラント濾過装置におけるドラムフィルターの設置方法を示す図である。
【図7】本発明に係るクーラント濾過装置におけるドラムフィルターの構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係るクーラント濾過装置の他の実施形態の平面図である。
【図9】本発明に係るクーラント濾過装置の更に他の実施形態の平面図である。
【図10】従来のクーラント濾過装置の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図面に依拠して説明する。図1は本発明の一実施形態の正面図、図2はその平面図であり、そこに示されるように本発明に係るクーラント濾過装置は、一端部に斜め立上り部3を有し、他端部から斜め立上り部3の上端にまで延びるスクレーパ付きチェーンコンベア4を配設したコンベア槽1を設け、これにフィルター槽2を連設して成る。
【0016】
フィルター槽2は、コンベア槽1の側面10の一部を開口し、その開口11を水密状態にて覆うように設置される。かくして、開口11を介してコンベア槽1とフィルター槽2とが連通状態となり、コンベア槽1内のクーラントの一部が、随時開口11を通ってフィルター槽2内に流れ込むことになる。
【0017】
チェーンコンベア4の一端のスプロケット31には駆動モーター32が直結され、当該スプロケット31、あるいは、他方端のスプロケットに、チェーンコンベア4の張り具合を調整するテンショナー33を配設することができることは、従来の濾過装置の場合と同様である。
【0018】
フィルター槽2には、チェーンコンベア4の進行方向と直角方向の回転軸心を有するドラムフィルター5が、回転自在に配備される。ドラムフィルター5は、スパイラルフィーダー6にフィルター7を巻き付けて構成される。スパイラルフィーダー6は、周面に十分な開口を設けた円筒状フレーム8の内周面に沿って、適宜高さのフィーダー9を螺旋状に配設したものである(図6参照)。このスパイラルフィーダー6はスクリューフィーダーの機能を果たすもので、ドラムフィルター5の回転に伴い、その内側に存するスラッジSをフィーダー9で押送して、開口11方向に導くことができるように配設される。
【0019】
図5は、ドラムフィルター5の設置手段の一例を示す分解斜視図である。該手段は、コンベア槽側面10の開口11に固定され、開口11に連通する開口部13を有する基板12と、基板12の開口部13内において軸支される、リングギア15を備えた駆動ディスク14を含む。基板12の上部には軸受16が配備され、該軸受16において、両端に小ギアを備えたギア軸17が軸支される。
【0020】
ギア軸17の一端は、軸受16より突出してコンベア槽側面10の内側にまで延び、そこに一方の小ギアである入力ギア18が固定される。この入力ギア18は、チェーンコンベア4のチェーンに噛合させる。ギア軸17の他端には、他方の小ギアである出力ギア19が固定され、この出力ギア19は、リングギア15に噛み合わせる。
【0021】
ドラムフィルター5の両側面には端面カバー21、22が取り付けられ、内方側の端面カバー21は環状にされ、そこに、リングギア15に複数形成されたピン孔23に進入するピン24が、ピン孔23の対応位置に突設される。また、外方側の端面カバー22には、その中央部に引掛け軸25が設置される。この引掛け軸25は、平面視コの字形のハンガー26に形成される軸受凹部27に上方から落とし込むことにより、軸受凹部27において軸支される。ハンガー26は、その両側のアーム端板28が基板12とコンベア槽側面10とに固定されることによって設置される。
【0022】
ドラムフィルター5は上記設置手段を介し、コンベア槽側面10の開口11部分に着脱可能に設置される。即ち、先ず、基板12がコンベア槽側面10に固定され、その軸受16に出力ギア19を備えたギア軸17が挿通され、コンベア槽1内にまで延びるその先端に入力ギア18が固定され、入力ギア18がチェーンコンベア4のチェーンに噛み合わされる。なお、図2及び図3における符号30は、逆洗ノズルを示している。
【0023】
次いで、駆動ディスク14の円筒部が基板12の開口部13内に嵌装され、駆動ディスク14のリングギア15と出力ギア19とが噛み合わされる。そして、ハンガー26が、そのアーム端板28が基板12及びコンベア槽側面10に固定されることによって設置される(図6参照)。
【0024】
その状態において、ドラムフィルター5を上方からハンガー26内に配し、そのピン24をピン孔23内に進入させると共に、その引掛け軸25を軸受凹部27内に落とし込むことによって、回転自在にセットする(図3、4参照)。
【0025】
上記構成において、クーラント流入口34からクーラントCが導入されると、クーラントC中の切粉、樹脂等の異物(スラッジS)は、一時コンベア槽1の内底面に沈殿堆積するが、沈殿堆積したスラッジSは、循環するチェーンコンベア4のスクレーパ4aによって逐次掻取され、コンベア槽1の内底面並びに斜め立上り部3の内側面に沿って上方に押送され、スラッジ排出口35に至ってそこから排出される。
【0026】
コンベア槽1内のクーラントCの一部は、開口11から駆動ディスク14の円筒部を通り、チェーンコンベア4の走行に伴って回転するドラムフィルター5内に流入するが、そのクーラントC中に存する浮遊物は、クーラントCがフィルター7を通り抜ける際に捕捉される。そして、濾過処理されたクーラントCはドラムフィルター5外に出て、フィルター槽2流出口からクリアタンクに流出し、再利用に供される。
【0027】
また、クーラントCの流入に伴ってスラッジSの一部がドラムフィルター5内に入り込むが、そのスラッジSは、ドラムフィルター5内部の螺旋状フィーダー9によって逐次押送され、開口11からコンベア槽1に戻されてチェーンコンベア4によって排出されるので、スラッジSがドラムフィルター5内に残存することはない。
【0028】
上記のとおり、本発明に係るクーラント濾過装置においては、ドラムフィルター5がコンベア槽1外に配置されるフィルター槽2内に配備されるため、従来のようにドラムフィルター5をコンベア槽1内に配置することに伴って生ずる様々な制約がなくなり、コンベア槽1の構成をかなりシンプルにできると共に、不必要に大型化する必要がなくなり、特に、コンベア槽1及びスクレーパ4aをかなり幅狭に構成することが可能になるという利点がある。
【0029】
そして、濾過量を増加する必要があるときは、上記同様のフィルター槽2を同一のコンベア槽側面10側に複数並設し(図8参照)、あるいは、コンベア槽1の両側面に設置することができる(図9参照)。
【0030】
本発明に係るクーラント濾過装置は、既存のクーラント濾過装置を改造して構成することもできる。即ち、既存のクーラント濾過装置かちドラムフィルターを取り出し、コンベア槽1の側面に開口11を設け、開口11を覆うようにフィルター槽2を設置すればよい。
【0031】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 コンベア槽
2 フィルター槽
3 斜め立上り部
4 チェーンコンベア
4a スクレーパ
5 ドラムフィルター
6 スパイラルフィーダー
7 フィルター
9 フィーダー
10 コンベア槽側面
11 開口
12 基板
14 駆動ディスク
15 リングギア
16 軸受
17 ギア軸
18 入力ギア
19 出力ギア
23 ピン孔
24 ピン
25 引掛け軸
26 ハンガー
27 軸受け凹部
34 クーラント流入口
35 クーラント流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に斜め立上り部を有し、他端部から前記斜め立上り部の上端にまで延びるスクレーパ付きチェーンコンベアを配設したコンベア槽を設け、前記コンベア槽の側面の一部を開口して前記コンベア槽に連通するフィルター槽を連設し、前記フィルター槽には前記チェーンコンベアの進行方向と直角方向の回転軸心を有するドラムフィルターを回転自在に配備して成り、前記ドラムフィルターは、スパイラルフィーダーにフィルターを巻き付けて構成され、以て、前記ドラムフィルターの回転に伴う前記スパイラルフィーダーの作用で、前記フィルター槽内のスラッジが逐次前記コンベア槽に戻されることを特徴とするクーラント濾過装置。
【請求項2】
前記ドラムフィルターは、前記チェーンコンベアに係合する伝動手段を有していて、前記チェーンコンベアの走行に伴って回転駆動される、請求項1に記載のクーラント濾過装置。
【請求項3】
前記フィルター槽は、前記コンベア槽の一方の側の側面に複数並設される、請求項1又は2に記載のクーラント濾過装置。
【請求項4】
前記フィルター槽は、前記コンベア槽の両側の側面に設置される、請求項1又は2に記載のクーラント濾過装置。
【請求項5】
前記ドラムフィルターは、前記フィルター槽に上方から脱着可能である、請求項1乃至4のいずれかに記載のクーラント濾過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−214578(P2010−214578A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94389(P2009−94389)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(507386874)
【Fターム(参考)】