説明

グアユール樹脂のマルチポリマー

メタクリルモノマー、アクリルモノマー、ビニルモノマー、およびスチレンモノマーとのグアユール樹脂のマルチポリマーを調製する方法、ならびに得られる組成を開示する。多重重合の結果、樹脂の物理化学的特質が改善される。ホモポリマーと樹脂との混合物と比較した、多重重合の主な利点は、均質の材料が得られることである。この材料の特性は、フィード中のモノマー濃度の比率を調節することによって調製可能である。魅力的な1つの特徴として、無溶媒インク、コーティング、および接着剤に用いられるオリゴマーおよびマクロモノマーと直接競合可能な反応基を有する低粘度樹脂の製造が挙げられる。樹脂(すなわち、グアユールから、およびゴムまたはゴム状炭化水素を有する他の植物から得られる低刺激性ゴムの抽出の副産物)が低価格であると、従来技術のオリゴマーと価格的に競合するハイブリッドの低分子量コポリマーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ゴムまたはゴム状炭化水素を有する植物種から抽出される樹脂に関する。より詳細には、本発明は物理化学的特性が改善されたグアユール樹脂の多成分コポリマーの調製および利用に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、米国特許出願第11/873,013号明細書(出願日:2007年10月16日)の優先権の利益を主張するものである。
ゴムまたはゴム状炭化水素を有する多数の植物種は、グアユール樹脂およびグアユール状(またはグアユール系)の樹脂の供給源として使用することができる。これらの植物材料に含まれるものとして、グアユール(guayule)(グアユールゴムノキ(Parthenium argentatum Gray));ホルトソウ(gopher plant)(エウフォルビア・ラシリス(Euphorbia Lathyris));mariolla(Parthenium incanuum);ラビットブッシュ(rubbit brush)(Chrysothamn nauseosus);candlilla(ペンディランス怪竜(Pedilanthus macrocarpus));Madagascar rubbervine(インドクリプトステギア(Cryptostegia grandiflora));トウワタ(milkweeds)(Asclepsias syriaca、speciosa、subulata他);セイタカワダチソウ(goldenrods)(Solidago altissima、グラミニフォリア(graminifolia)、rigida他));Pale Indian Plantain(Cascalia atriplicifolia);ロシアタンポポ(Russian dandelion)(Traxacum kok−saghyz);マウントミント(Mount mint)(ホアリー・マウンテンミント(Pycnanthemum incanum));American germander(Teucreum canadense);およびトール・ベルフラワー(Tall
bellflower)(Campanula americana)がある。このため、グアユール植物または低木について言うとき、本開示においては上記の植物および低木が使用され得ることを理解されたい。
【0003】
天然ゴムは、頭尾構成で酵素的に結合された400〜50,000のイソプレン単位を有するシス−1,4−ポリイソプレンのバイオポリマーである。天然ゴムは、ダイマー、トリマー、テトラマーなどを製造するイソプレノイド経路の分岐によって形成される。これらの低分子量の分子および様々な異性体が樹脂を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】グアユールモノテルペンのGC/MSのクロマトグラム。
【図1A】図1の続き。
【図2】グアユール樹脂/アクリル酸イソオクチルコポリマーの相対平均分子量を示す概略図。
【図3】グアユール樹脂/アクリル酸イソオクチルコポリマーの最初の加熱走査を示すグラフ。
【図4】グアユール樹脂/アクリル酸イソオクチルコポリマーの再加熱走査を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は一般に、ゴムまたはゴム状炭化水素を有する植物種から抽出される樹脂に関す
る。より詳細には、本発明は物理化学的特性が改善されたグアユール樹脂の多成分コポリマーの調製および利用に関する。本発明は、ポリマーの不可欠なセグメントとして数々のモノマーが組み込まれるプロセスによって定義される、多成分共重合を包含する。このプロセスは、ホモポリマーまたはそれらの混合物の特性とは異なる特性をもつ製品の製造に用いられる。一般にマルチポリマーは、種々のホモポリマーの中間的な物理化学的特性を有する。これらの特性の数値の大きさは、通常、マルチポリマーに組み込まれたモノマー単位の濃度に依存する。
【0006】
グアユール樹脂は従来のモノマーの二重結合を強めるため、ホモポリマーの特性とグアユール樹脂の特性とを結合させたマルチポリマーが形成される。このことは有意であるが、その理由は、グアユール樹脂は不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシアクリレートと反応可能であり、無溶媒ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂が製造されるためである。この場合、反応性希釈剤として通常スチレンモノマーが使用される。種々の材料と低分子量のシス−1,4−ポリイソプレン(DP:400未満)との混合物である樹脂は粘性のある緑色の油であり、乾燥すると粘着性物質となる。
【0007】
これらのマルチポリマーを調製するための方法を、本明細書において開示する。また、コモノマーとしてアクリル酸およびメタクリル酸のビニル、スチレン、およびエステルを用いる重合プロセスにおいて、樹脂をモノマーとして処理することを包含する。このプロセスは開始剤の熱分解によって開始され、フリーラジカルを形成し、ラジカル重合を生じさせる。この重合は、酸化還元(レドックス)システム、加熱、または放射によって開始することもできる。
【0008】
多重重合の結果、樹脂の物理化学的特性が改善される。ホモポリマーと樹脂との混合物と比較して、多重重合の主な利点は、均質な材料が得られることである。この材料の特性は、フィード中のモノマー濃度の比率を調節することによって調製可能である。魅力的な1つの特徴として、無溶媒インク、コーティング、および接着剤に用いられるオリゴマーおよびマクロモノマーと直接競合可能な反応基を有する低粘度樹脂の製造が挙げられる。樹脂(すなわち、グアユールから、およびゴムまたはゴム状炭化水素を有する他の植物から得られる低刺激性ゴムの抽出の副産物)が低価格であると、従来技術のオリゴマーと価格的に競合するハイブリッドの低分子量コポリマーが提供される。
【0009】
樹脂の供給源
グアユールおよび他のゴム製造用植物は、天然ゴム、樹脂、テルペノイド、およびオレイン酸トリグリセリドを構成するため、接着剤の工場である。グアユールは高濃度の樹脂と低濃度のタンパク質とを有するより効率的でより優れた接着性植物である。このことは樹脂とゴムの両方の物理化学的特性に基づいて言える。
【0010】
放射線硬化可能な天然ゴム状接着剤における優れた粘着付与剤として、樹脂は、打ちっぱなしのコンクリートからテフロン(登録商標)までの様々な表面に対する強い接着性と、水中での顕著な接着特性とを有する。樹脂は高輝度UVランプ(80W cm−1)にさらすと、光開始剤を要さず瞬時に硬化する。不揮発性アクリル酸エステルの溶液が低粘度である場合、UV硬化可能な印刷用インクでの適用が推奨される。また、多重重合によって適合され得る放射線硬化可能なコーティングには大きな市場がある。
【0011】
樹脂がそのまま木部に浸透すると、シロアリおよび木材腐朽に対する抗力、ならびに他の有機体(たとえば、木材を腐朽させる船食い虫)からの保護力が得られる。樹脂は、虫(たとえば、オオアリとキクイムシ)から森と木を保護し得ると推測される。グアユール樹脂は、シロアリ、軟体性の虫、および菌類の攻撃から木材を持続的に保護する。これは木材防腐剤の重要な特性である。ナカヤマによる開示のように、木材、プラスチック、お
よびグアユール・バガスまたはグアユール樹脂を結合させた化合物によって、抗シロアリ製品および抗菌製品を製造することができる。製品とは、材木、ベニア板、ポール、鉄道枕木など、シロアリの繁殖に対する抗力や菌類による腐朽に対する抗力を示すものを含む。この現象の要因となるグアユール樹脂の成分は、テルペノイドである。グアユール樹脂を既存の木材用コーティングまたは木材用接着剤と組み合わせることによって、虫の規制および接着性改良の両方が可能になる。
【0012】
上記で触れた種々の表面に対する強い接着力にも拘らず、グアユール樹脂は、優れた耐衝撃度および硬度を有する剥離性コーティングを製造するためのアミン硬化エポキシ樹脂の接着改変剤として推奨されている。勿論、剥離度は調製物に用いる樹脂量によってコントロールできる。剥離可能なコーティングは、商用および軍事用の構造物および車両を一時的に保護するうえで重要である。また、エポキシ−アミンポリマーは、耐化学性、耐水性、および耐蝕性の優れた低VOCコーティングとして形成され得る。酸塩基接着剤の相互作用は、接着力の低下および剥離の原因となることが示唆されている。
【0013】
グアユール樹脂を改良した船舶用コーティングは、グアユリンAの存在のため、フジツボと海草による表面汚染を抑える。分離された樹脂画分(溶媒抽出物)は、エビおよび/またはフジツボに対して様々な毒性を示す。これは防汚を行う天然産物が、放出制御塗料または放出制御プラスチックに濃縮可能であることを示唆している。防汚塗料は米軍および米国産業の経済的利益にとって重要であり、従来使用されたトリブチルスズおよび硫酸銅の形成はそれぞれ外圧下および物価圧力下にある。
【0014】
木部および葉部の樹脂の濃度を、表1に示す。葉部(植物の15%〜20%)はラテックスを抽出するために用いられるバイオマスに含まれていないため、基本的に廃棄される。しかし抽出された樹脂は、複数種類のモノテルペンを含むため、様々なバイオベース材料の開発に有用なコモノマーであると最終的に証明され得る。これらのモノテルペンは、α−ピネン(16.7%)、β−ピネン(13.5%)、カンフェン(1.2%)、サビネン(6.5%)、β−ミルセン(2.5%)、リモネン(5.9%)、テルピノレン(9.2%)、およびβ−オシメン(2.1%)などである。更に、葉部の精油中のセスキテルペン化合物の濃度は、39.5%である。
【0015】
【表1】

樹脂(アセトン抽出物)は、不揮発性画分と揮発性画分との2つの画分から成る。通常、グアユール・バガスは10%の水溶性物質、つまりタンパク質と、炭水化物(レブリン、イヌリン、および他の多糖)と、無機物とを含有する。バガスをアセトンで抽出し、固体分が10%となるように溶液を濃縮した場合、図1のガスクロマトグラムに示すように抽出した化合物には多数のピークが見られた。また、得られる質量スペクトルは、抽出した化合物(以下の表2に記載)について表した。
【0016】
【表2】

これらの化合物はアセトンで抽出され、ゴムに含有されているため関連する。このゴムは、低分子量(LMW)ゴム(約20%)を含有する不揮発性画分である。シス−1,4−ポリ(イソプレン)鎖のこの画分は、アセトン抽出物に90%のエチルアルコールを加えることによって沈殿する。濃度は植物の年齢に依存し、若い植物ほど高濃度である。LMWゴムの存在は、樹脂の粘性の主要因である。
【0017】
樹脂の抽出
グアユール植物をハンマーミルによって粉砕し、当該技術分野において既知の方法で最初にゴムを分離する。通常、グアユール状樹脂は有機極性溶媒によって、これらの植物から、あるいはこのような植物から得られる樹脂性のゴムから抽出する。これらの溶媒は、アルコール、エステル、およびケトンを含み、たとえばアセトンを含む。超臨界流体(SCF)抽出方法が使用されてもよい。
【0018】
樹脂中の各化合物の濃度例を表3に示し、有機抽出液をけん化した後の有機酸の組成を表4に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

グアユール樹脂は、約50℃を超える温度において自由流動性液体となる粘着性ゴムである。グアユール樹脂は酸化的に硬化または重合して脆く砕けやすい固体を形成するため、その物理化学的特性を改善する必要がある。この目的を達成する1つのアプローチが、多重重合である。本開示において記載するように、樹脂はトルエン中のアクリルモノマー、スチレンモノマー、およびビニルモノマーと共重合し、マルチポリマーは固有の物理化学的特性を有する。このことは、結合力を増加させるために用いるアクリルおよび他のポリマーと樹脂が適合性をもたないため、重要である。実際、樹脂はポリ(テルペン)およびポリ(イソプレン)とのみ互換性をもつ。
【0021】
樹脂はそのまま数々のモノマーと共重合する。有機酸成分のうち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、および桂皮酸の画分は共重合の反応部位である。二重結合を有する他の化合物は、コモノマーと見なしてもよい。たとえば、パルテニオールの桂皮酸エステルであるパルテニルシンナマート(parthenyl cinnamate)は共重合することができる。つまり、桂皮酸は基本的にβ位置にカルボン酸基を有するスチレンである。
【0022】
攪拌を2時間行いトルエンを還流させると、過酸化ベンゾイル(合成モノマーの7%)またはα,α’−アゾジイソブチロニトリル(10%)の有無に拘らず、多重重合が容易に生じる。この生成物を、溶媒の蒸発後に分離する。スチレンとのコポリマー(1:1)は、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールに溶けない。樹脂2部とス
チレン1部との反応の生成物は、同様にこれらの溶媒には溶けないが、樹脂の良溶媒である。
【0023】
トルエン中で調製されたマルチポリマーの低分子量平均は、溶媒への連鎖移動によるものである。連鎖移動反応は、フリーラジカルの中心が成長中の連鎖から別の分子(たとえば、溶媒またはモノマー)に移動するものである。これによって、以前フリーラジカルを有した連鎖の成長は停止し、ラジカルを得た分子が、同速度で成長する新しい連鎖を開始することができる。この性質をもつ連鎖移動反応の顕著なメカニズムは、連鎖ラジカルによって介在分子(すなわち、表5に示すような伝導剤)から水素原子を除去することを含む。
【0024】
【表5】

合成モノマーとの樹脂の反応性は、数々の理由から放射線硬化可能なコーティングや、インクおよびコーティングの開発に向けての大きな前進であると言える。第一に、特定の基質への化学的接着を可能にする反応基を組み込むことができる。ペンダント水酸基による基質への最初の接着は、2−アクリル酸ヒドロキシルエチルとの共重合およびそれに続くジイソシアナートとの反応によって、イソシアネート基を樹脂に組み込むことで可能になる。実際、樹脂にはジイソシアナートとの反応が可能な様々な化合物の水酸基がある。コロナ放電で処理されるMylar(登録商標)の表面水酸基への最初の結合が可能である。また、酸性基を含むコモノマーは、金属への接着を強化させる。更に、フィードにメタクリル酸グリシジルを含有させることによって、エポキシ基を組み込むことができる。
【0025】
第二に、共重合はバルク樹脂の分子量平均を増加させ、したがってその結合力を増加させる。たとえば、図2に樹脂/アクリル酸イソオクチルの相対平均分子量を示す。引張強度などの機械的特性は、分子量に影響される。第三に、低分子量化合物が製品に化学的に組み込まれ、最終製品の利用後に移動も浸出もしない。第四に、共重合は樹脂の光学的透明度を改善する。最後に、共重合は樹脂の熱安定性と酸化安定性を増加させ、ホットメルト処理の適用を飛躍的に可能にする。
【0026】
本開示によると、樹脂の反応基を合成モノマーの二重結合と結合させるバルクまたは溶液多重重合処理において、新規の材料が調製される。その結果、平均分子量が増加されるとともに、硬度および強度を備え、種々の用途に適合可能なポリマー材料(たとえば、コーティング、印刷用インク、および接着剤)が形成される。本開示の組成はより低コストであり、より望ましい性能を有するため、接着剤、コーティング、およびインクに含まれる多くのオリゴマーに置き換わることができる。
【0027】
本開示を、以下の実施例によって更に説明する。これらの実施例は、本開示の範囲を制限するものではない。特に示唆のない限り、実施例において部、比率、およびパーセントはすべて重量によって示す。表6は、以下の実施例で用いた樹脂の化学組成を示す。窒素
率(パーセント)×6.3は、サンプル中のタンパク質量の予測値である。ヨウ素価は、サンプル中の不飽和度を表す。水酸基価は存在する水酸基の濃度であり、けん価はトリグリセリドおよび他のエステルの濃度である。
【0028】
【表6】

実施例1
機械的攪拌器、窒素注入口、温度計、還流冷却器、および追加の漏斗を備えた1リットルの樹脂ケトル(4口)に、以下の表7に示す成分を加えた。
【0029】
【表7】

混合物をその固体率(パーセント)が一定に維持されるまで還流し、トルエンの蒸発後に生成物を分離した。転換率(パーセント)は、還流後の溶液中の固体率(パーセント)に基づき99%であった。また、この生成物の薄膜は光学的に透明であり、相溶性混合物であることを示した。
【0030】
実施例2
スチレンと樹脂との混合物(重量1:1)を、スチレンモノマーの10%濃度の過酸化ベンゾイルを含有するトルエンの混合物に加えた。溶液を2時間攪拌して還流させ、トルエンの蒸発後に生成物を分離した。転換率(パーセント)は、還流後の溶液中の固体率(パーセント)に基づき99%であった。また、この生成物の薄膜は光学的に透明であり、相溶性混合物であることを示した。
【0031】
実施例3
メタクリル酸メチルと樹脂との混合物(重量1:1)を、メタクリル酸メチルの10%濃度のアゾビスイソブチロニトリルを含有するトルエンの混合物に加えた。溶液を2時間攪拌して還流させ、トルエンの蒸発後に生成物を分離した。転換率(パーセント)は、還流後の溶液の固体率(パーセント)に基づき99%であった。また、この生成物の薄膜は光学的に透明であり、相溶性混合物であることを示した。
【0032】
実施例4
アクリル酸イソオクチルと樹脂との混合物(重量1:1)を、アクリル酸イソオクチルの2%濃度のアゾビスイソブチロニトリルを含有するトルエンの混合物に加えた。溶液を2時間攪拌して還流させ、トルエンの蒸発後に生成物を分離した。転換率(パーセント)は、還流後の溶液中の固体率(パーセント)に基づき90%であった。また、この生成物の薄膜は光学的に透明であり、相溶性混合物であることを示した。
【0033】
示差走査熱量測定(DSC)
小型サンプルのDSC分析は、コポリマーの熱的特性を示す。DSC走査の加熱曲線と再加熱曲線を図3と図4に示す。ガラス転位温度(Tg)は約−30℃であり、融解は36℃〜42℃に見られる。これは有意であるが、その理由は、多重重合によってホットメルト処理の適用が可能になる(純正樹脂は熱的に不安定である)ためである。また、サンプルの光学的透明度は、UV硬化処理および可視硬化処理での適用における改善した安定性と、結合剤のより高い透明度とを示している。
【0034】
実施例5
メタクリル酸エチルと樹脂との混合物(重量1:1)をトルエンに加え、溶液を2時間攪拌して還流させた。2時間後の転換率(パーセント)は72%であり、4時間還流させると90%まで増加した。フリーラジカル開始剤がないため、この実験は重要である。
【0035】
実施例6
スチレンと樹脂との混合物(重量1:1)をトルエンに加え、2時間攪拌して還流させた。2時間後の転換率は68%であり、4時間後は83%であった。この生成物の薄膜は光学的に透明であり、相溶性混合物であることを示した。樹脂とTHF中の3つのマルチポリマーの溶液のGPC結果を、以下の表8に示す。
【0036】
【表8】

ここでMwは重量平均分子量であり;Mnは数平均分子量であり;Mzは沈殿物から得られる分子量平均である。サンプルを調製し、Water社のGPCV2000の3検出用機器に注入した。(ポリスチレン基準に対する)相対キャリブレーション法を用いたWaters社のEmpowerソフトウェア(登録商標)と、ユニバーサルキャリブレーション法とを使用してデータを処理し、分子量、固有粘度、および分岐情報を得た。アクリレートはコーティング、インク、および接着剤に使用されるが、これは、表9に示すように、アクリレートのガラス転位温度(Tg)は特定用途に最も望ましい粘弾性特性を得ることができるよう可変であるためである。主な利点は、可調性(tailorability)、汎用性、反応性、柔軟性、および互換性である。
【0037】
【表9】

ポリマーのTgは、ポリマーが硬質材料(しばしば脆性材料)からゴムのような軟質特性を有する材料に変化する様々な温度の平均値である。適切なモノマーを選択することによってポリマーのTgは変化し、したがって見込まれる適用領域も変化する。MMA、MA、およびEAのホモポリマーのTgは、それぞれ106℃、6℃、および−24℃である。
【0038】
開示の方法および組成の多様な性質は、アクリル系粘着剤に用いられる追加の極性モノマーが利用可能であることを示している。アクリル酸、アクリルアミドの誘導体、およびペンダントイソシアネート基を含むモノマーを使用してもよい。コモノマーフィード中にアクリル酸ヒドロキシルエチルまたはメタクリル酸ヒドロキシルエチルを含有させることは、水酸基を組み込む明白な方法である。また、アクリル酸またはメタクリル酸ヒドロキシルエチルは、ジイソシアネートまたは不飽和イソシアネート(たとえば、α,α−ジメチルメタ−ソプロペニルベンジルイソシアナート)と反応し、マルチポリマーにイソシアネートとビニル官能性を生じさせる。同様に、マルチポリマーの無水マレイン酸単位は、水酸基とアミン基を含む組成の反応部位である。
【0039】
グアユール樹脂を不飽和モノマーと共重合し、低粘度を有する熱可塑性マルチポリマーを形成可能であることは、数々の新製品のチャンスを広げる。本開示の方法の1つの利点として、後にin situの共重合が可能な予め選択された官能性を有するコポリマー(アクリル、メタクリル、マレイン酸半エステル、スチレンビニルエーテル、イソプレン、エポキシ樹脂、ピネン)の固有の族によって、最低限の収縮で数々の製品の製造を可能にすることである。低収縮と低粘度を組み合わせることは、液体モノマーから固体ポリマーへの転換における膨張を一層抑え、競合物よりも優れた性能を実証する最も魅力的な特徴である。耐腐食性のコーティングの開発は、優れた接着力によって可能になり得る。
【0040】
最新技術を用いた全100%固体型システムは、従来の溶媒ベースの調製物と同程度の粘度を生成する反応性希釈剤に基づいている。溶媒の蒸発および反応性希釈剤の重合は、収縮を伴う。グアユールマルチポリマーコーティングおよび接着剤中の反応性希釈剤モノマーの濃度は有利に低く、したがって乾燥時の体積膨張は低い。
【0041】
多重重合の別の利点は、樹脂がポリイソプレンとポリテルペンとのみ互換性または混和性を有するという事実に基づいている。これは、通常、ミクロ相領域の代わりにマクロ溶剤で分離する不透明な生成物となる、グアユール樹脂とアクリルポリマーまたは他のポリマーとの従来混合物とは対照的である。
【0042】
本発明の様々な実施形態について、上記の詳細な説明に記載している。これらの記載は上記の実施形態を直接的に説明するものであるが、本明細書に示し記載する特定の実施形態に対する変形および/または変更が当業者によって想到され得ることを理解されたい。本記載の範囲内に含まれるこのような変形または変更も、同様に包含されるものとする。特に記載のない限り、本発明において明細書および特許請求の範囲に記載の文言は、適用可能な技術分野における当業者に対して通常の慣習的な意味をもつ。
【0043】
上記において、出願時に出願人に既知であった本発明の好ましい実施形態および最良の態様を示したが、これらは例示および説明を意図したものである。また、包括的であることを意図したものではなく、開示する厳密な形式に本発明を制限するものではなく、上記の開示に照らして数々の変形および変更が可能である。本発明の本質およびその実際の適用を最もよく説明するために、ならびに様々な実施形態に記載の本発明および考慮される特定使用に適切な様々な変形例を含む本発明を他の当業者が最もよく利用できるように、実施形態を選択し記載した。したがって本発明は、本発明の実施のために開示した特定の実施形態に制限されないものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂マルチポリマーを製造するための方法であって、
樹脂を不飽和モノマーと反応させる工程を含み、反応によって熱可塑性マルチポリマーを形成する、製造方法。
【請求項2】
上記樹脂の存在量は、約25重量パーセント〜約75重量パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不飽和モノマーは合成モノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応においてゴムを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不飽和モノマーは、アクリル酸イソオクチル、スチレン、パルテニルシンナマート(parthenyl cinnamate)、アクリル、メタクリル、マレイン酸半エステル、ビニルエーテル、イソプレン、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、エポキシ、エポキシアクリレート、およびピネンから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応において有機溶媒を使用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応においてフリーラジカル阻害剤を使用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フリーラジカル阻害剤は、過酸化ベンゾイルおよびアゾビスイソブチロニトリルから成る群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応において以下の一般式の触媒を使用することを更に含み、RはHまたはCHであり、Rは炭素原子を約2〜約14個含む線状炭化水素基である、請求項1に記載の方法。
【化1】

【請求項10】
フリーラジカルを形成するために、前記反応を開始剤の熱分解により開始することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フリーラジカルはラジカル重合を促進する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酸化還元;加熱;および放射から成る群から選択される方法により前記反応を開始することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
樹脂および不飽和モノマーをコモノマーで反応させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記コモノマーは不飽和ポリエステルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
樹脂と1つ以上の反応生成物とを含む多成分コポリマーであって、前記反応生成物は、樹脂を不飽和モノマーで反応させることによって生成される、多成分コポリマー。
【請求項16】
ゴムを更に含む、請求項15に記載の多成分コポリマー。
【請求項17】
前記コポリマーは、コーティング、インク、および接着剤から成る群から選択される製品の要素である、請求項15に記載の多成分コポリマー。
【請求項18】
多成分コポリマーを製造する方法であって、前記方法は、
開始剤の分解に適した温度で、樹脂および開始剤に不飽和モノマーを加える工程を含み、前記不飽和モノマーは前記樹脂と反応して前記コポリマーを形成する、方法。
【請求項19】
前記開始剤は、フリーラジカル開始剤である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
超臨界反応媒質を使用する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ゴムまたはゴム状炭化水素を有する植物種から樹脂を抽出する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記植物種はグアユールゴムノキである、請求項21に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−500918(P2011−500918A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529913(P2010−529913)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/083463
【国際公開番号】WO2009/051605
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(508326699)ユーレックス コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】YULEX CORPORATION
【Fターム(参考)】