説明

グミキャンディ様構造物及びその製造方法

【課題】グミキャンディ様の弾力に富んだ食感に加えて、滑らかな食感を有し、口溶けもよく、常温での長期流通にも適した新規のグミキャンディ様構造物及びその製造方法を提供すること。表面がパリッとしつつも、センターの食感が滑らかな、今までにない食感を有した糖衣菓子を提供すること。
【解決手段】固形分中に平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド50〜80重量%、油脂5〜10重量%、100〜350ブルームのゼラチン3〜9重量%、グリセリン12〜36重量%を含有し、かつ砂糖及び水飴を実質的に含有せず、全体の水分値が15〜20%であることを特徴とするグミキャンディ様構造物。該グミキャンディ様構造物は、コラーゲンペプチド溶液と、油脂と、グリセリンで膨潤溶解させたゼラチンとを混合し、得られた混合物をモールドに充填し冷却、乾燥を行うことで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンペプチドを高配合した新規なグミキャンディ様構造物及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記グミキャンディ様構造物を用いた糖衣菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは通常、砂糖、水飴等の糖類を煮詰めてキャンディベースとし、このキャンディベースに、熱水で膨潤溶解させたゼラチン溶液を加え、また、必要に応じて果汁、酸味料、香料等を添加してグミシロップとし、このグミシロップをモールドに充填して成形・固化した後、室温等で乾燥させて作られる。
【0003】
グミキャンディにおいて、糖類は単なる甘味料としての働き以外に、グミキャンディに弾力性を与える賦型剤としての役割も併せ持っている。しかし、近年、消費者の間で低甘味、低う蝕に対するニーズが非常に高まっており、そういったニーズに合わせて糖類をソルビトールやマルチトール等の糖アルコールやデキストリン等で代替する試みがなされている。例えば、甘味料として砂糖、水飴を使用せずに糖アルコールを使用したグミキャンディに関するもの(特許文献1)や、デキストリンと難消化性デキストリンの両方を配合した低甘味のグミキャンディに関するもの(特許文献2)が挙げられるが、糖アルコールを使用する限りは甘味の不自然さや保形性の問題は完全に排除できず、また、糖アルコールを多量に摂取した際に、緩下(お腹が緩くなる)作用が生じる可能性がある等の問題も有している。
その上、キャンディベースに、砂糖、水飴の代わりとして、糖アルコールやデキストリンを使用したとしても、あくまでそれらの主成分は糖質であり、真に新しい砂糖、水飴の代替と成り得るようなものではなかった。
【0004】
ところで、現在、健康食品やサプリメントの分野において、健康・美容指向が非常に高まっており、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン等が特に注目を集めている。その中でも、天然蛋白質であるコラーゲンは、蛋白質供給源として飲食品の栄養強化に有用であり、かつ、肌、骨、関節といった部位に対する効果が比較的体感しやすいことから、化粧品、健康食品、サプリメント市場において消費者に広く認知され、受け入れられている。また、コラーゲンやゼラチンを加水分解して得られるコラーゲンペプチドについても幅広く研究されており、コラーゲンペプチドについての機能性や利用技術も多数報告されている。
【0005】
グミキャンディは原材料にゼラチンを使用するため、必然的にコラーゲンを含み、現在までにもコラーゲンを謳った商品が多数市場に出ており、また、ゼラチン以外にコラーゲンペプチドを含有したグミキャンディに関する報告もなされている(特許文献3、4)。しかし、これらのグミキャンディは基本的に砂糖、水飴を主体としているため、含有できるコラーゲンペプチド量には限りがあり、特許文献3、4の例で挙げられているものでも、コラーゲンペプチドの含有量はグミキャンディ中に0.1〜3重量%と少量なため、コラーゲンペプチドを摂取する目的として喫食する場合には、その摂取量を考えると十分に満足できるものではなかった。
【0006】
一方で、コラーゲンペプチドを高配合した食品の例として、コラーゲン錠剤に関するもの(特許文献5)や、コラーゲン含有顆粒に関するもの(特許文献6)が挙げられるが、これら錠剤タイプや顆粒タイプの場合、摂取した際にコラーゲンペプチド粉末の口残りやざらつき等を感じ、美味しさの面で満足できるものではなかった。また、これら錠剤や顆粒タイプの食品以外の場合、水を多く含んだ食品は、コラーゲンやコラーゲンペプチドの含有量が多くなると、非常に粘性が高くなり、口に含んだ際、口腔内にコラーゲンやコラーゲンペプチドがまとわりつきやすくなってしまうという問題や、食品の製造自体が不可能になってしまうといった問題があった。
【0007】
他にもコラーゲン及びコラーゲンペプチドを利用した例として、低分子コラーゲンペプチド組成物に関するもの(特許文献7)、コラーゲンたんぱく質を固定化して作製したコラーゲンビーズに関するもの(特許文献8)等も存在しているが、これらはグミキャンディの様に嗜好性に合わせて酸味料やフレーバーを手軽に調整できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3630900号公報
【特許文献2】特開2000−116343号公報
【特許文献3】特開平10−257853号公報
【特許文献4】特開2001−252019号公報
【特許文献5】特開2008−247809号公報
【特許文献6】特許第4360986号公報
【特許文献7】特開2006−151847号公報
【特許文献8】特許第3098337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、グミキャンディ様の弾力に富んだ食感に加えて、滑らかな食感を有し、口溶けもよく、常温での長期流通にも適した新規のグミキャンディ様構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、表面がパリッとしつつも、センターの食感が滑らかな、今までにない食感を有した糖衣菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記のような状況を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、砂糖と水飴を実質的に使用せずに、コラーゲンペプチド溶液とグリセリンで膨潤溶解させたゼラチンと油脂とを混合することで、グミキャンディ様の弾力に富んだ食感に加えて、滑らかな食感を有し、口溶けもよく、常温での長期流通に適したグミキャンディ様構造物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、
(1)固形分中に平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド50〜80重量%、
油脂5〜10重量%、
100〜350ブルームのゼラチン3〜9重量%、
グリセリン12〜36重量%を含有し、かつ
砂糖及び水飴を実質的に含有せず、
全体の水分値が15〜20%であることを特徴とするグミキャンディ様構造物、
(2)前記(1)に記載のグミキャンディ様構造物に糖衣処理を施した糖衣菓子、
(3)コラーゲンペプチドを加水して溶解させてコラーゲンペプチド溶液を得る工程、
ゼラチンを4倍量以上のグリセリンで膨潤溶解させる工程、
前記コラーゲンペプチド溶液と、油脂と、グリセリンで膨潤溶解させたゼラチンとを混合する工程、及び、
得られた混合物をモールドに充填し冷却、乾燥を行う工程
を有する、前記(1)に記載のグミキャンディ様構造物の製造方法、
にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コラーゲンペプチドが高配合された、グミキャンディ様の弾力に富んだ食感に加えて、滑らかな食感を有し、口溶けがよく、さらに常温での長期流通に適した食品用構造物を提供することができる。
【0013】
また、前記グミキャンディ様構造物に糖衣処理を施すことで、表面がパリッとしつつも、センターの食感が滑らかな、今までにない食感を有した糖衣菓子を提供することができる。
【0014】
また、本発明のグミキャンディ様構造物の製造方法において、ゼラチンを常法通り、熱水で膨潤溶解するのではなく、グリセリンで膨潤溶解させることで、グミキャンディ様構造物の水分活性を抑制することができ、一般流通食品としての適正を持たせることを可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に使用する平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチドは、コラーゲンあるいはゼラチン等の変性コラーゲンを酸やアルカリあるいは酵素によって加水分解することで得られるものであればよい。コラーゲンは食用のものであれば良く、例えば、牛、豚、鶏、魚類等の皮、骨等から抽出されたものが挙げられる。コラーゲンペプチドを作製する際に用いられる酵素としては、コラーゲンを部分加水分解できるものであればよく、例えば、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィチン等のシステインプロテアーゼ、ペプシン等のアスパラギン酸プロテアーゼ、及びこれらの酵素を混合した酵素群等が挙げられるが、特に限定されるものではない。このような加水分解は、水又は各種バッファー中で行われることが好ましい。本発明では、コラーゲンペプチドとして、前記の加水分解された水溶液をそのまま使用しても良いし、乾燥処理等で粉末化したものを用いても良い。また、限外濾過等により、所望の分子量分布に調整することも可能である。
上記に示すコラーゲンペプチドは、すでに市販されている食品用のものを使用してもよい。市販品のコラーゲンペプチドの例としては、「コラーゲンペプチドPCH」(商品名、ユニテックフーズ社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明では、前記コラーゲンペプチドの平均分子量を20,000以下に調整することで、得られるキャンディ様構造物の物性を調整することができる。例えば、コラーゲンペプチドの平均分子量が小さいほど、サクい食感を持つキャンディ様構造物としやすく、コラーゲンペプチドの平均分子量が大きいほど弾力がハードなグミキャンディ様構造物としやすい。
【0017】
本発明では、前記コラーゲンペプチドは、分子量が相違したペプチドを混合してもよい。この場合、複数種類のコラーゲンペプチドを組み合わせた後のコラーゲンペプチド混合物の平均分子量が20,000以下となるように調整しておけばよい。
【0018】
なお、平均分子量が3,000以下のコラーゲンペプチドを用いる場合に、その混合比率を大きくすると、ペプチドの苦味が出てしまいグミキャンディ様構造物として好ましくなく、また、平均分子量が20,000を超えるコラーゲンペプチドを用いる場合に、その混合比率を大きくすると、製造時に非常に高い粘度となり、本発明のグミキャンディ様構造物とはなり難くなる。
【0019】
本明細書において、前記コラーゲンペプチドの平均分子量は、重量平均分子量を示す。コラーゲンペプチドの分子量に関する情報は、粘度測定や、HPLC及びゲルろ過法等の定量方法によって得られ、すでに公知の手法を使用することが可能である。
【0020】
前記コラーゲンペプチドの含有量は、グミキャンディ様構造物の固形分中において、50〜80重量%である。このようにコラーゲンペプチドを高配合することで、砂糖や水飴を用いずに、グミキャンディ様の食感を奏しやすくすることができる。また、本発明のグミキャンディ様構造物では、コラーゲンペプチドを高配合しているため、蛋白質供給源として栄養強化に有用であり、かつ、肌、骨、関節といった部位に対する効果が期待できる、機能性食品としても優れた利点を有する。
【0021】
本発明に用いられる油脂としては、特に制限は無く、例えば、バター、魚油、馬油等の動物性油脂、パーム油、やし油、コーン油等の植物性油脂、水素添加を行ったショートニング等を使用することができる。ただし、油脂の融点が高すぎるとグミキャンディ様構造物の口溶けが悪くなるため、油脂としては融点が−20℃〜40℃のものを使用するのが好ましい。
前記油脂の含有量は、グミキャンディ様構造物の固形分中において5〜10重量%である。前記含有量が10重量%を超えるとグミキャンディ様構造物の保形性が悪くなる傾向がある。また、前記含有量が5重量%未満ではグミキャンディ様構造物を噛んだ際に歯への付着が伴い、食感を損なうものとなってしまう。
【0022】
本発明に用いられるゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類等の皮、骨等から抽出したものを使用するのが一般的であるが、本発明はこれに限定するものではない。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくるが、本発明では、これら処理の異なる各種のゼラチンも使用できる。前記ゼラチンの含有量は、グミキャンディ様構造物の固形分中において3〜9重量%である。
【0023】
前記ゼラチンはグミキャンディ様構造物において硬さを調整する大きな要因であるため、100〜350ブルームであることが必要である。また、ブルームは、ハードグミキャンディの食感と味を考慮した場合に、硬さを調製するために250以上であることが好ましい。また、ブルームの上限値は、入手可能な観点から350以下である。
なお、前記ブルームとは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルームとして表したものである。
【0024】
本発明では、前記ゼラチンは、熱水ではなく、グリセリンで膨潤溶解させて使用する。グリセリンで膨潤溶解させたゼラチンを用いることで、グミキャンディ様構造物の食感を維持しつつ、水分活性を抑えることができる。なお、前記膨潤溶解時には加熱条件下で行う。
【0025】
前記グリセリンの含有量は、グミキャンディ様構造物の固形分中において12〜36重量%である。前記含有量が12重量%未満になると、得られるグミキャンディ様構造物の表面だけが過乾燥状態となり、パリパリとしたキャンディ様の食感になるため好ましくなく、一方、固形分中において36重量%を超えるとグミキャンディ様構造物としての保形性が保てなくなってしまうため好ましくない。また、前記ゼラチンを膨潤溶解させる際には、4倍量以上のグリセリンを用いて膨潤溶解させるのが作業性の面において好ましい。
【0026】
また、本発明のグミキャンディ様構造物には、必要に応じて下記の任意成分を添加することができる。
【0027】
例えば、前記油脂と共に食品添加用の乳化剤を用いることで、油脂の添加効果をより顕著にすることができる。乳化剤の種類としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の合成添加物、レシチン、サポニン、カゼインナトリウムなどの天然添加物が挙げられるが、特に限定はない。
また、乳化剤の含有量としては、前記油脂の分散等の乳化を促進できる量であればよく、特に限定はない。
【0028】
また、ゼラチン以外のゲル化剤を使用することが可能である。このようなゲル化剤としては、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸等が挙げられる。
【0029】
その他にも、酸味料、果汁、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等を用いることができる。
【0030】
前記任意成分の全含有量は、本発明のグミキャンディ様構造物の固形分中15重量%以下の範囲内であればよい。
【0031】
また、本発明のグミキャンディ様構造物は、砂糖及び水飴を実質的に含有せずに、グミキャンディ様の食感を奏することができるものである。したがって、グミキャンディ様構造物の固形分中における砂糖及び水飴の含有量としては、0重量%でもよいが、風味付け等の観点から含有される場合でも0.5重量%以下のものである。このように砂糖及び水飴を実質的に含有していないため、本発明のグミキャンディ様構造物は、低甘味、低う蝕のニーズを満たす食品として有用である。
【0032】
本発明のグミキャンディ様構造物全体の水分値は、15〜20重量%である。水分値が前記範囲を外れると、グミキャンディ様の食感を得られにくくなる。水分値は減圧乾燥法によって測定することができる。
【0033】
以上のような構成を有する本発明のグミキャンディ様構造物を製造するには、例えば次のようにして行う。
まず、コラーゲンペプチドを加水して溶解させてコラーゲンペプチド溶液を得る。
具体的には、コラーゲンペプチドを2倍量程度の水中に分散させた後、加熱溶解させて、さらに加熱して所望の水分値まで濃縮することが好ましい。
【0034】
また、ゼラチンを4倍量以上のグリセリンで膨潤溶解させる。
具体的には、ゼラチンと、重量で前記ゼラチンの4倍量以上のグリセリンとを、例えば、約60℃以上の加熱条件下で混合することでゼラチンを膨潤溶解させることができる。
【0035】
次いで、前記コラーゲンペプチド溶液と、油脂と、グリセリンで膨潤溶解させたゼラチンとを混合する。
前記混合は、約60℃以上の加熱条件下で食品用の混合装置内で行えばよい。
また、前記3成分を混合する順序としては、例えば、前記混合装置内に一度に前記3成分を添加して行ってもよいし、3成分を別々のタイミングで添加してもよい。
【0036】
次いで、得られた混合物をモールドに充填し冷却、乾燥を行う。
具体的には、得られた混合物を公知の手段により所望の形になるようにモールドで成型し、任意の温度条件、例えば、40℃以下で15〜20%の水分値になるまで冷却乾燥させる。
前記モールドとしては、グミキャンディを成型する際に使用するものを用いることができる。モールドの材質についても特に限定はない。
【0037】
前記乾燥後、グミキャンディ様構造物を前記モールドから脱型し、所望によりカット等の加工を施すこともできる。
【0038】
以上のようにして本発明のグミキャンディ様構造物が得られる。なお、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階で混合すればよい。
【0039】
また、本発明のグミキャンディ様構造物としては、常温で長期流通しても品質が劣化しにくいものであり、具体的には、水分活性が0.6以下のものが好ましい。なお、一般的に水分活性が0.6以下になれば、全ての微生物の繁殖が不可能になるとされている。
【0040】
得られたグミキャンディ様構造物は、通常のグミキャンディと同様にデパウダー、オイリング、コーティング等の後処理を施したりしてもよい。
【0041】
また、本発明では、前記グミキャンディ様構造物に糖衣処理を施すことで、表面が糖衣によりパリッとしつつも、センターがグミキャンディ様構造物からなるために、グミキャンディ様の弾力に富んだ食感を有しながら、滑らかな食感も有し、口溶けもよいという、今までにない食感を有した糖衣菓子を提供することができる。
【0042】
前記糖衣処理には、通常、糖衣処理に用いる糖質であれば限定なく使用することができるが、本発明の趣旨として、砂糖及び水飴を使用しないことが好ましく、糖衣処理に使用する糖質としては、マルチトール、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール等の糖アルコールを用いるのが好ましい。
【0043】
糖衣処理の具体的方法としては、先ず糖衣パンの回転ドラム内に、グミキャンディ様構造物を入れ、ドラムを回転させながら送風などを行い、糖衣シロップと、必要に応じて粉体をかけてゆき、0.01〜0.2mm、例えば、0.1mmの厚さの層をグミキャンディ様構造物の表面に形成することによって本発明の糖衣菓子が得られる。なお、この糖衣シロップには、前記糖質の他にも、アラビアガム等の増粘剤、色素、香料等の所望の成分を添加することができる。また、粉体としては、前記糖質の粉体を用いればよい。
【実施例】
【0044】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例の記載中、特に断らない限り「%」は重量%を、「部」は重量部を示す。物性の測定はテクスチャーアナライザー(「Texture Analyzer TA.XT.plus」、Stable Micro Systems社製)を用い、貫入距離200%、測定速度1mm/sec、測定温度20℃で直径2mmの円柱プローブを用いて測定を行い、グミキャンディ様構造物の硬さをゲル強度として測定した。また、水分活性の測定には水分活性恒温測定装置(「LabMASTER−aw BASIC」、novasina社製)を用いた。
【0045】
(実施例1、2)
表1に示すコラーゲンペプチド100部に対して水150部を加え、加熱しながらBx.65まで濃縮してコラーゲンペプチド溶液を得た。このコラーゲンペプチド溶液へ、酸処理豚皮ゼラチン8部をグリセリン48部で加温して膨潤溶解させたもの、表1に示す精製ヤシ油及びその他添加物を加えて60℃で攪拌混合した。得られた混合物をコーンスターチ成形型(直径2cmの円柱状の型)に4g充填し、室温にて24時間冷却乾燥した。その後、コーンスターチ成形型から乾燥物を取り出して、水分値18%の円柱型のグミキャンディ様構造物を得た。
【0046】
こうして得られた実施例1のグミキャンディ様構造物は、グミキャンディ様の弾力に富んだ食感を持ちつつも、表面が滑らかであるため、軽く噛んだときに非常に心地良い噛み心地を有していた。また、強く噛んだときには歯が滑らかにグミキャンディ様構造物に入り、砕けたグミキャンディ様構造物の断片は速やかに口中で溶ける点で、グミキャンディとは異なる新規な食感を有していた。
グミキャンディ様構造物のゲル強度は19.4×105kg/m2で、水分活性は0.526であり、一般流通に耐えうるものであった。
【0047】
実施例2のグミキャンディ様構造物も、実施例1と同様に、グミキャンディ様の食感があり、滑らかで非常に心地よい噛み心地を有し、口溶けも良好であったが、実施例1のものと比べ、コラーゲンペプチドの平均分子量が高いため、よりハードな弾力を持つものであった。実施例2のグミキャンディ様構造物のゲル強度は29.3×105kg/m2で、水分活性は0.511であり、一般流通に耐えうるものであった。
【0048】
(比較例1)
表1の比較例1の配合で、精製ヤシ油及びショ糖脂肪酸エステルを使用しない以外は実施例1と同様の方法により、菓子を作製した。こうして得られた菓子は、弾力を有するが硬く、かつ、表面がパリパリとなってしまい、非常に食感を損なうものであった。また、ゲル強度は39.3×105kg/m2で、水分活性は0.553であった。
【0049】
(比較例2)
表1の比較例2の配合で、ゼラチンを使用しない以外は、実施例1と同様の方法により、菓子を作製した。こうして得られた菓子は保形性が無く、グミキャンディと呼べるものではなかった。また、ゲル強度は7.8×105kg/m2で、水分活性は0.500であった。
【0050】
(比較例3)
表1の比較例3の配合で、グリセリンを使用しない以外は実施例1と同様の方法で菓子を作製した。なお、ゼラチンは2倍量の熱水で膨潤溶解させてから用いた。こうして得られた菓子は非常に硬く、グミキャンディ特有の弾力を持たないものであった。また、ゲル強度は47.3×105kg/m2で、水分活性は0.820であった。
【0051】
【表1】

【0052】
(比較例4)
一般的なグミキャンディとして、表2に示す配合のグミキャンディを用いた。具体的には、砂糖50部と水飴45部を煮詰め、Bx.82まで濃縮、そこへ2倍量の熱水で膨潤溶解させた酸処理豚皮ゼラチン10部を加えて、混合後、表2に記載のその他添加物を加えてBx.72に調整し、コーンスターチ成形型(直径2cmの円柱状の型)に4g充填したものを、40℃にて24時間乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、水分値18%の円柱型のグミキャンディを得た。
こうして得られたグミキャンディは適度な弾力を持った、一般的なグミキャンディであった。また、ゲル強度は22.7×105kg/m2で、水分活性は0.620であった。
【0053】
実施例1、2で得られたグミキャンディ様構造物は、比較例4で得られたグミキャンディと比較すると、ゲル強度の点では類似しており、水分活性も同様に低く、長期流通の点で優れたものであることがわかる。また、実施例1、2で得られたグミキャンディ様構造物は、コラーゲンペプチドを高配合しておりその機能性を期待できる点、及び砂糖及び水飴を実質的に含有しておらず、低甘味、低う蝕のニーズを満たす点で、従来のグミキャンディとは全く相違した菓子又は健康食品であることがわかる。
【0054】
【表2】

【0055】
(実施例3)
実施例1において、ゼラチンを300ブルームのものに変えたところ、得られるグミキャンディ様構造物は、実施例1と比べてゲル強度が増大し、実施例2のようにハードな弾力を持つようになった。また、実施例3のグミキャンディ様構造物は、実施例1と同様に、グミキャンディ様の食感があり、滑らかで心地よい噛み心地を有し、口とけも良好であり、水分活性も低かった。
【0056】
(実施例4)
以下の手順に従って、糖衣菓子を製造した。
予め、糖衣層の原料として、以下の(A)、(B)2種類の糖衣シロップを準備した。
(A)下掛けシロップ:粉末マルチトール72部に、ゼラチン1部を水1.5部に溶解したものと、アラビアガム4部を水12部に溶解したものとを添加し、さらに水20部を加えて混合して常温に保持しておいた。
(B)外掛けシロップ:粉末マルチトール72部に、還元水飴1.5部とアラビアガム2部を水6.0部に溶解したものを加え、さらに水23部を加えて溶解し、いちご香料4.0部を添加し、更に赤ビート色素4部を添加して混合し、これを常温に保持しておいた。
【0057】
まず、オニオン型糖衣パンに、センターとして、実施例1で得られたグミキャンディ様構造物100部を投入し、温度20℃、湿度35%のドライエアを絶えず送りながら、(A)下掛けシロップ12.0部と粉末マルチトール14.0部を交互にかけた後、十分乾燥させた。次に、(B)外掛けシロップ8.0部を同様に数回に分けてかけた後、十分乾燥させ、本発明の糖衣菓子を得た。
【0058】
こうして得られた糖衣菓子は、表面が糖衣によりパリッとしつつも、グミキャンディ様構造物によりセンターの食感が弾力に富み、かつ滑らかな食感も有しており、これらの食感があわさって、今までにない食感を感じることができる糖衣菓子であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分中に平均分子量20,000以下のコラーゲンペプチド50〜80重量%、
油脂5〜10重量%、
100〜350ブルームのゼラチン3〜9重量%、
グリセリン12〜36重量%を含有し、かつ
砂糖及び水飴を実質的に含有せず、
全体の水分値が15〜20%であることを特徴とするグミキャンディ様構造物。
【請求項2】
請求項1に記載のグミキャンディ様構造物に糖衣処理を施した糖衣菓子。
【請求項3】
コラーゲンペプチドを加水して溶解させてコラーゲンペプチド溶液を得る工程、
ゼラチンを4倍量以上のグリセリンで膨潤溶解させる工程、
前記コラーゲンペプチド溶液と、油脂と、グリセリンで膨潤溶解させたゼラチンとを混合する工程、及び、
得られた混合物をモールドに充填し冷却、乾燥を行う工程
を有する、請求項1に記載のグミキャンディ様構造物の製造方法。