説明

グミキャンディ

【課題】ゼラチンに特有のコラーゲン臭と不快味がマスキングされた、風味良好なグミキャンディを提供する。
【解決手段】グミキャンディの全重量に対して、ココアパウダーを200ppm〜3000ppm加えることによって、ゼラチンに特有のコラーゲン臭とゼラチン由来の不快な味を低減した、香りと風味に優れたグミキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミキャンディ、詳しくはグミキャンディ中のゼラチンに由来するコラーゲン臭及び不快味をマスキングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、糖質、ゼラチンを主体とした弾力のある食感の菓子である。グミキャンディは通常、砂糖・水飴を煮詰め、ゼラチン溶液を混合して得られたキャンディベースに、必要に応じて、果汁、酸味料、香料等を添加し、成形・固化、乾燥の工程を経て作られる。このグミキャンディを構成しているゼラチンは、動物組織に存在するコラーゲンを原料としているため、コラーゲン臭と呼ばれる独特の動物臭及び不快味を有する。このコラーゲン臭は、グミキャンディを喫食した際の不自然な風味の要因ともなっており、嗜好性を著しく低下させるコラーゲン臭及び不快味の改善は、子どもを中心に広く親しまれているグミキャンディにとって重要な課題となっている。
【0003】
近年、コラーゲン臭のマスキングあるいは不快味の改善方法に関して、いくつかの方法を試みた例がある。コラーゲン含有食品に甘味料であるスクラロースを含有すること(特許文献1)や、コラーゲン、コラーゲンペプチド及びゼラチンから選ばれた1種以上のものにエチルオクタノエートを含有すること(特許文献2)、カゼイン又はコラーゲンに対してクロロゲン酸を含有すること(特許文献3)、コラーゲン及び/又はコラーゲンペプチドと、ジンジャー抽出物とを含有する美容飲料(特許文献4)、コラーゲンに大麦若葉末を含有すること(特許文献5)等も提案されている。
又、グミキャンディの分野でも、酵母エキスを含有し、かつ植物由来カテキン、タンニン及びゆずポリフェノールからなる群より選ばれる1種類以上を含有することを特徴とするコラーゲン臭を抑えたグミキャンディ(特許文献6)も提案されている。
【0004】
前述したコラーゲン臭あるいは不快味のマスキング方法は、コラーゲン飲食物に物質を添加する方法であり、味のバランスを調整する方法として手軽に実施することが可能である。しかしながら、飲食品の味をも左右してしまうことから不十分な点も残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−152757号公報
【特許文献2】特開2006−197856号公報
【特許文献3】特許第3830137号公報
【特許文献4】特開2007−185109号公報
【特許文献5】特開2009−291128号公報
【特許文献6】特開2009−171862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、ゼラチンに特有のコラーゲン臭と不快味がマスキングされた、香りと風味が良好なグミキャンディを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ココアパウダーにゼラチンに特有のコラーゲン臭や不快味をマスキングする作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
グミキャンディの全重量に対して、ココアパウダーを200ppm〜3000ppm含有することを特徴とするコラーゲン臭を抑えたグミキャンディ
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、化学的な添加物を使用することなく、ゼラチンに特有のコラーゲン臭及び不快味を改善することが出来る。
【0010】
また、こうして得られたグミキャンディは、ゼラチンに特有のコラーゲン臭と不快味をココアパウダーにより選択的に抑えたものであるため、香料、甘味料、酸味料等を配合した場合には、これらの香料の香りと甘味料や酸味料の風味を抑えることなく付与することが出来るので、バラエティーに富んだ風味をもつグミキャンディを作製することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のグミキャンディは、グミキャンディの全重量に対して、ココアパウダーを200ppm〜3000ppm含有することを特徴とする。
【0012】
本発明のグミキャンディ中におけるココアパウダーの含有量は、最終製品であるグミキャンディの全重量に対し200ppm〜3000ppmとする。好ましくは1000ppm〜2000ppmである。200ppm未満ではコラーゲン臭のマスキング効果が不十分であり、3000ppmを越えるとグミキャンディ中にココアの風味が強く感じられてしまう。
尚、本発明において、ココアパウダーは、カカオマスから圧搾等によりココアバターの一部を取り除いたあと、細かく砕いて粉末状にしたものをいう。
【0013】
本発明に用いられるグミキャンディは、糖類とゼラチン溶液を混合して得られたキャンディベースに、ココアパウダーを加え、必要に応じて、果汁、酸味料、香料等を添加し、成形・固化、乾燥の工程を経て作られる。
【0014】
前記糖類としては、例えば、ぶどう糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖等の二糖類、ラフィノース、スタキオース等の少糖類、トレハロースのようにブドウ糖が還元末端同士で結合したもの、糖アルコール(マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖等)、タガトース等のうち1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、水飴等の混合糖も使用できる。前記糖類の配合量は、キャンディベース中において、80〜97重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましい。
【0015】
前記ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類等の皮、骨等から抽出したものを使用するのが一般的であるが、本発明はこれに限定するものではない。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくる。本発明では、これら処理の異なる各種のゼラチンも当然使用できる。
前記ゼラチンの配合量は、キャンディベース中において3〜20重量%が好ましく、7〜15重量%がより好ましい。
【0016】
また、前記キャンディベースには、前記のような糖類とゼラチン以外にも、必要に応じて、下記の任意成分を添加することができる。
【0017】
例えば、ゼラチン以外のゲル化剤を使用することが可能である。このようなゲル化剤としては、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸等が挙げられる。
【0018】
また、酸味料、果汁、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ(商標)、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等が用いられる。
【0019】
前記キャンディベースは、公知のグミキャンディの製造方法に準じて製造すればよい。例えば、適当な強度、例えば、ゼラチンを水に溶解し膨潤させて、適当な温度、例えば60℃付近で保温しておく。これとは別に、前記糖類を水に溶解させた糖液を作っておき、先の保温しておいたゼラチン溶液、必要であれば前記任意成分と攪拌混合することでキャンディベースとすることができる。
なお、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階で混合すればよい。
【0020】
また、ココアパウダーは、前記キャンディベースを作製するどの段階で混合してもよい。例えば、キャンディベースの原料成分と共にココアパウダーも添加してキャンディベースを作製してもよいし、キャンディベースの作製後に、該キャンディベースにココアパウダーを添加してもよい。
【0021】
前記のように各成分を混合して得られる混合物は、公知の手段により所望の形になるように、成型して本発明のグミキャンディが得られる。
【0022】
また、得られたグミキャンディは、所望の水分量まで乾燥させたり、糖衣処理を施したり、デパウダー、オイリング等の後処理を施してもよい。なお、水分量としては8〜20%の範囲内であればよい。水分値は、減圧乾燥法によって測定することができる。
【0023】
以上のようにして本発明のグミキャンディを製造することができる。上記の製造方法は一例であり、本発明のグミキャンディの製造方法を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
次に、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0025】
(実施例1)
表1に示す配合割合で、グミキャンディベースを作製した。具体的には、砂糖、水飴及び水を混合・加熱してシロップを調製し、これに別で調製して約60℃付近に保温しておいたゼラチン溶液を加え、その後、クエン酸及び香料を加え、混合してグミキャンディベースを得た。そこに最終的なグミキャンディ全重量に対して表2に示す量となるようにココアパウダーを加え、混合し調製した溶液を、コーンスターチ成形型(直径2cmの半球状の型)に充填し、40℃にて48時間乾燥させた。その後、コーンスターチ成形型から取り出し、水分値17%の丸型のグミキャンディを得た。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例1で得られたグミキャンディのコラーゲン臭と味のマスキング評価を、このグミキャンディを食べたパネラー15名により、下記官能評価基準により評価した。その結果を表2に示す。
【0028】
<官能評価基準>
コラーゲン臭に関する評価基準
評点:内容
A:コラーゲン臭がほとんど感じられない。
B:コラーゲン臭が若干感じられる。
C:コラーゲン臭が感じられる。
D:コラーゲン臭がかなり感じられる。
E:コラーゲン臭及びそれ以外の不快臭がかなり感じられる。
グミキャンディの風味に対する評価基準
評点:内容
A:果汁感があり、良好な風味である。
B:果汁感は弱いが普通に食べられる。
C:果汁感がなく不味い。

なお、コラーゲン臭に関する評価と、グミキャンディの風味に対する評価のいずれも「A」又は「B」であるものを合格品とした。また、表中の結果は、パネラーが最も多く評価した結果を示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2の結果より、グミキャンディにココアパウダーを200〜3000ppmの範囲で添加すれば、コラーゲン臭のマスキング効果が顕著に現れるとともに、グミキャンディの風味も良好となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のようにグミキャンディにココアパウダーを加えることによってゼラチンに特有のコラーゲン臭とゼラチン由来の不快な味を低減することで、香りと風味に優れたグミキャンディを開発することが可能となった。本発明により、コラーゲン臭の嫌いな人々にも美味しく感じられるグミキャンディを提供することができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グミキャンディの全重量に対して、ココアパウダーを200ppm〜3000ppm含有することを特徴とするコラーゲン臭を抑えたグミキャンディ。

【公開番号】特開2011−152097(P2011−152097A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16766(P2010−16766)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】