説明

グラインダ

【課題】
軽量化及び製造コストダウンを図るとともに、ギヤカバーの上部を手の平で押さえ込む作業の快適性を向上させたグラインダを提供する。
【解決手段】
モータ11と、モータ11を収容するモータハウジング2と、回転軸と略直角に延びるスピンドル7と、スピンドル7の一端側に設けられる第1の軸受16と、スピンドル7の他端側に設けられる第2の軸受17と、モータハウジング2に取り付けられ、第1の軸受16を保持するギヤカバー3と、ギヤカバー3に取り付けられ第2の軸受17を保持するパッキングランド4を有するグラインダにおいて、ギヤカバー3とパッキングランド4をプラスチック等の樹脂部材で構成した。さらに、第1及び第2の軸受16,17を、補強部材たる金属製の第1及び第2の軸受保持部材50、60を介してギヤカバー3又はパッキングランド4に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被削材の研削、研磨を行う際に使用されるグラインダに関し、特に、グラインダを保持するギヤカバー部、パッキングランドの形状を工夫して軽量化を図ったグラインダに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型のグラインダの例として、特許文献1に記載のようにディスクグラインダが知られている。ディスクグラインダは、駆動源であるモータが円筒形のモータハウジング内に収容される。モータハウジングの前方にはモータの回転軸による動力伝達方向を約90度変換する一組の傘歯車を含む動力伝達機構が設けられ、動力伝達機構はモータハウジングの前方に取り付けられるギヤカバーに収容される。一組の傘歯車によってモータの回転軸から軸方向が約90度変換されてスピンドルに動力が伝達され、スピンドルの下部に取り付けられるディスク状の砥石を回転させる。
【0003】
スピンドルは、ベアリングによってギヤカバーに回転可能に保持されるが、ギヤカバーの下部にはパッキングランド(Packing Gland)が設けられ、スピンドルを保持するベアリングの一方を保持する。従来、ディスクグラインダにおけるギヤカバー及びパッキングランドは、十分な強度を確保するために、アルミニウム合金などの金属製で製造されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−223006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のディスクグラインダのギヤカバー及びパッキングランドは、強度部材のため、アルミ合金などの金属製であったが、ディスクグラインダの本体部の大きさや、着脱可能な砥石等を大きくしようとすると重量が増加してしまい、作業者の手腕への負荷増加により疲労しやすくなる。また、これらを金属製とすると、熱伝導率が高いために熱が伝わりやすく、作業者が手に不快感を覚える恐れがある。さらに、アルミニウム材の価格高騰により、グラインダ装置の製造原価の低減が難しくなってきた。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、グラインダのギヤカバー及び/又はパッキングランドの材質を樹脂として、軽量化を図ったグラインダを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ギヤカバーの上部を手の平で押さえ込む作業の際にも、手に伝わる熱の影響を少なくし、快適性を向上させて手への負担を少なくしたグラインダを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、ギヤカバー及び/又はパッキングランドを樹脂にして軽量化を図りつつも、スピンドルの取付け剛性を十分に確保したグラインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、回転軸を有するモータと、モータを収容するモータハウジングと、モータによって回転され回転軸と交わる方向に延びるスピンドルと、スピンドルに取り付けられる先端工具と、スピンドルの一端側に設けられる第1の軸受と、スピンドルの他端側に設けられる第2の軸受と、モータハウジングに取り付けられ第1の軸受を保持するギヤカバーと、ギヤカバーに取り付けられ第2の軸受を保持するパッキングランドを有するグラインダにおいて、ギヤカバーを金属ではなくプラスチック等の樹脂部材で構成した。第1の軸受は金属製の第1の軸受保持部材を介してギヤカバーに固定した。また、ギヤカバーの第1の軸受保持部材又は前記第1の軸受が接する領域に第1の穴を設け、第1の穴によって第1の軸受保持部材又は前記第1の軸受の一部が外気と接するように構成した。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、スピンドルの回転を制限するロック部材を設け、ロック部材は第1の軸受保持部材によって保持されるように構成した。さらに、パッキングランドを金属ではなくプラスチック等の樹脂部材で構成した。第2の軸受を第2の軸受保持部材を介してパッキングランドに固定し、第2の軸受保持部材を金属によって構成した。また、パッキングランドの第2の軸受保持部材が接する領域に第2の穴を設け、第2の穴によって第2の軸受保持部材の一部が外気と接するように構成した。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、モータと、モータを収容するモータハウジングと、先端工具が取り付けられモータによって回転されるスピンドルと、スピンドルを軸受によって回転可能に保持するスピンドルハウジングを有するグラインダにおいて、スピンドルハウジングの一部又は全部を樹脂で構成し、軸受を金属製の補強部材を介してスピンドルハウジングに保持し、スピンドルハウジングに穴を設けて、補強部材の一部が穴を介して外気と接するように構成した。スピンドルは、動力伝達機構を設けてモータの回転軸と略90度回転させて配置され、スピンドルハウジングは、モータハウジングの前方側に取り付けられるギヤカバーと、ギヤカバーに取り付けられるパッキングランドにより構成した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、従来金属で構成されたギヤカバーを樹脂で構成したので、グラインダの軽量化を図ることができ、作業者の手腕への負荷が抑えて疲労しづらいグラインダを実現できる。また、ギヤカバーの上部を手の平で押さえ込む作業の際にも、手に触れる部分が熱伝導率の低い樹脂となるため、作業中のギヤカバーの温度変化が小さく、作業者の手への負担が少なく作業性が良いグラインダを実現できる。さらに、ギヤカバーの樹脂化によりアルミ合金製のギヤカバーに比べて製造コストを抑えることが可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、第1の軸受を金属製の第1の軸受保持部材を介してギヤカバーに固定したので、樹脂製のギヤカバーであっても強度が要求される部分を金属製の部材にて補強でき、十分な剛性を有するギヤカバーを実現できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、ギヤカバーの第1の軸受保持部材又は第1の軸受が接する領域に第1の穴を設け、第1の穴によって第1の軸受保持部材又は第1の軸受の一部が外気と接するようにしたので、スピンドルからや第1の軸受からの熱を効果的に発散することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、スピンドルの回転を制限するロック部材を設け、ロック部材は、第1の軸受保持部材によって保持されるので、第1の軸受けとロック部材を同一の軸受保持部材にて保持するので十分な強度を確保でき、樹脂製のギヤカバー採用に伴う剛性低下の影響を心配する必要がない。
【0017】
請求項5の発明によれば、ギヤカバーに取り付けられるパッキングランドも樹脂で構成したので、グラインダの更なる軽量化を実現することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第2の軸受を金属製の第2の軸受保持部材を介してパッキングランドに固定したので、樹脂製のパッキングランドであっても強度が要求される部分を金属製の部材にて補強でき、十分な剛性を有するパッキングランドを実現できる。
【0019】
請求項7の発明によれば、パッキングランドの第2の軸受保持部材が接する領域に第2の穴を設け、第2の穴によって第2の軸受保持部材の一部が外気と接するようにしたので、スピンドルから第2の軸受保持部材に伝わる熱を効果的に放熱することができる。
【0020】
請求項8の発明によれば、グラインダにおいてスピンドルハウジングの一部又は全部を樹脂で構成したので、グラインダの軽量化を図ることができる。また、軸受を金属製の補強部材を介してスピンドルハウジングに保持するので、樹脂製であっても強度が要求される部分を金属製の部材にて補強でき、十分な剛性を有するスピンドルハウジングを実現できる。さらに、スピンドルハウジングに穴を設けて、補強部材の一部が外気と接するように構成したので、スピンドルや軸受から軸受保持部材に伝わる熱を効果的に発散することができる。
【0021】
請求項9の発明によれば、スピンドルはモータの回転軸と略90度回転させて配置され、スピンドルハウジングは、モータハウジングの前方側に取り付けられるギヤカバーと、ギヤカバーに取り付けられるパッキングランドにより構成されるので、モータの出力軸とスピンドル軸が90度となるグラインダを軽量に構成することができる。
【0022】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の上面図ある。
【図3】図2のA−A断面を示すディスクグラインダ1の部分断面図である。
【図4】図1のギヤカバー3の底面図である。
【図5】図1のパッキングランド4の上面図である。
【図6】図1のパッキングランド4の側面図である。
【図7】図5のパッキングランド4のB−B部の断面図である。
【図8】図1のパッキングランド4の底面図である。
【図9】図1の第1金属部材50の上面図である。
【図10】図9の第1金属部材50のC−C部の断面図である。
【図11】図9の第1金属部材50のD−D部の断面図である。
【図12】図1の第2金属部材60の上面図である。
【図13】図1の第2金属部材60の底面図である。
【図14】図1の第2金属部材60の側面図である。
【図15】図12の第2金属部材60のE−E断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下左右の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の側面図である。ディスクグラインダ1のハウジングは、後述するモータを内部に収容する円筒形のモータハウジング2と、モータハウジング2の後方に取り付けられるテールカバー5と、モータハウジング2の前方に取り付けられるギヤカバー3、パッキングランド4の4つの主要部分により構成される。
【0026】
モータハウジング2の内部には、後述するモータが収容される。モータは例えば、ユニバーサルモータ等の交流モータであり、モータハウジング2の一部にはブラシキャップ26が設けられる。ギヤカバー3は、モータの回転軸による動力伝達方向を約90度変換する2組の傘歯車を含んで構成される動力伝達機構を収容するものであり、軸方向前方から後方側に挿入される4本のネジ29によりモータハウジング2の前方側の開口部2aにギヤカバー3の開口部3aが対応するように取り付けられる。ギヤカバー3の側方には、図示しないサイドハンドルを装着するためのハンドル取付穴39が形成される。また、ギヤカバーの上方には、冷却風を排出するための風窓30が設けられる。
【0027】
ギヤカバー3から下方には、スピンドル7が延在し、スピンドル7の先端部(下端)には先端工具たる砥石8が取り付けられる。砥石8は、固定具9a、9bによってスピンドル7に対して着脱可能である。砥石8は、例えば直径100mmのレジノイドフレキシブルトイシ、フレキシブルトイシ、レジノイドトイシ、サンディングディスク等であり、装着する砥粒を選択することにより金属、合成樹脂、大理石、コンクリートなどの表面研磨、曲面研磨が可能である。砥石8の回転速度は、例えば2000〜4000rpm程度であるが、回転速度は作業対象に合わせて適宜設定すればよい。ホイルガード20は、研削された部材や破損した砥粒等の飛散から作業者を保護するためのものであり、ベルト部21によってパッキングランド4に固定される。ホイルガード20及びベルト部21は、規格によって金属製で構成することが要求されている。
【0028】
パッキングランド4は、スピンドル7を保持する後述するベアリングを保持するものであり、ギヤカバー3の下側の開口部3bにパッキングランド4の開口部40が対応するように取り付けられる。
【0029】
モータの回転を起動するスイッチ操作用のトリッガ6は、把持部5aの下側であって把持部5aに沿って後方に延びるように配置される。本実施例では作業者が把持部5aを握るとトリッガ6を上側に移動させることになりモータのスイッチがオンになる。作業者が、把持部5aの把持を解除すると、トリッガ6が下側に移動し、モータが停止する。テールカバー5の側方には、後述する冷却ファンにより外気を取り込むための風窓5c(吸気口)が設けられる。
【0030】
図2は、本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の上面図である。モータハウジング2は、ポリカーボネイド等のプラスチック(有機高分子樹脂)の一体構造により構成される。尚、プラスチックは、エンジニアプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックでも良い。テールカバー5は、右側テールカバーと左側テールカバーにより分割構成され、複数の図示しないネジによって右側及び左側のテールカバーが結合される。図示していないが、テールカバー5の後端には、モータに電力を供給するための電源コードが接続される。
【0031】
モータが回転することによって後述する冷却ファンが回転し、テールカバー5の風窓5cから矢印27a、27bの方向に外気を吸引し、吸引された空気がモータハウジング2の内部のモータを冷却した後、風窓30から矢印28a、28bの方向に吸引された空気を排出する。風窓30の前方側には、スピンドルロック18が設けられる。スピンドルロック18は、砥石8等の先端工具の着脱時にスピンドル7が回転しないようにロックする機構であり、スピンドルロック18の上部を押下することにより図示しないロックピンが、後述する第2傘歯車の凹部(図示せず)に突出して嵌合することによりスピンドル7が回転不能となる。
【0032】
図3は、図2のA−A断面を示すディスクグラインダ1の部分断面図である。モータ11は、本実施例では交流で動作するユニバーサルモータを用いているが、これに限られずに直流モータや、ブラシレスDCモータ等の他の方式のモータを用いても良い。モータ11はモータハウジング2内に収まるように配置され、モータ11の回転軸11aが円筒形のモータハウジング2の軸方向(前後方向)と一致するように配置される。モータハウジング2の形状は、円筒形又は長筒状とすると強度的に強くできるので好ましい。
【0033】
モータ11の回転軸11aは、ギヤカバー3に固定されるベアリング13と、モータハウジング2の後方側に固定されるベアリング(図示せず)により回転可能に保持される。回転軸11aのモータ11の前方側には、整流効果を得るためのファンガイド23と冷却ファン12が設けられる。冷却ファン12は例えばプラスチック製の遠心ファンであり、テールカバー5の一部に設けられた風窓5c(図2参照)から外気を吸引して、モータ11を通過させる空気流を発生させ、ギヤカバー3に設けられた風窓30から前方に空気を排出する。尚、図3に示す断面位置では風窓30の前端部が塞がれているように見えるが、図2から理解できるようにA−A断面の左右の部分において風窓30は前方側に開口する。
【0034】
モータ11の回転軸11aはボール式のベアリング13によって回転可能に保持され、回転軸11aの先端には第1傘歯車14が取り付けられる。第1傘歯車14はスピンドル7に取り付けられる第2傘歯車15と噛合する。本実施例では、第1傘歯車14の歯数は第2傘歯車15の歯数より十分少なく構成され、これらの第1傘歯車14、第2傘歯車15は減速機構として働くことになる。
【0035】
スピンドル7は上側が第1の軸受であるメタル16によって回転可能に保持され、下側が第2の軸受であるベアリング17によって回転可能に保持される。ここで、メタル16はギヤカバー3側に固定され、ベアリング17はパッキングランド4側に固定される。本実施例のギヤカバー3及びパッキングランド4は樹脂製であるため、メタル16は第1金属部材50を介してギヤカバー3に保持され、ベアリング17は第2金属部材60を介してパッキングランド4に保持される。これら第1金属部材50、第2金属部材60はいわば軸受手段(メタル16、ベアリング17)の保持部材であると共に補強部材となるものである。
【0036】
スピンドル7及びメタル16の上端には第1の穴31が形成され、この第1の穴31が風窓33と連通するため、スピンドル7及びメタル16の上端が外気に曝される。この結果、スピンドル7及びメタル16で発生する熱を効果的に外気中に発散できる。尚、第1の穴31を設ける目的は、スピンドル7及びメタル16が持つ熱を冷やすためであるので、スピンドル7及びメタル16の一部を外気に曝すのではなく、第1金属部材50の一部が風窓33を介して外気に曝されるように第1の穴31の配置を決定しても良い。さらに、第1金属部材50の形状を工夫して、何らかの構成によって第1金属部材50の一部がギヤカバー3の外部に露出するように構成しても良い。
【0037】
パッキングランド4に取り付けられる第2金属部材60の一部は、第2の穴47を介して外気に曝される。第2の穴47は円周方向に6分割して設けられた円周方向にほぼ連続する穴であるが、これらの形状については後述する。
【0038】
図4はギヤカバー3の底面図であって、ギヤカバー3に第1金属部材50とメタル16、及び、スピンドルロック18を保持するメタル19を取り付けた状態を示している。第1金属部材50の外径は、大径のリングと小径のリングを接続したような形状であって、その外郭はギヤカバー3の上方から下方に延びる取付リブ34が形成される。取付リブ34の外側には、取付リブ34の剛性を十分確保するための補強リブ34a〜34fが設けられる。
【0039】
ギヤカバー3の下側の開口には、パッキングランド4を取り付けるための複数の保持リブ35a〜35hが形成され、これらのうち保持リブ35b、35d、35f、35hには、パッキングランド4をネジで固定するためのネジ穴36a〜36dが形成される。保持リブ35a〜35hの内周側の形状は、パッキングランド4の外周面と良好に当接するために円弧状の形状とされる。ギヤカバー3の後方の開口部3aの前方付近には、ギヤカバー3をモータハウジング2にネジ止めするためのネジボス38が形成される。
【0040】
次に図5〜8を用いてパッキングランド4の詳細形状を説明する。本実施例では、従来アルミ合金等の金属製で製造されていたパッキングランド4を、一体成型の樹脂製としたものである。図5は、パッキングランド4の上面図である。パッキングランド4の中央下方には、スピンドル7を貫通させるための開口部42が形成される。この開口部42の周囲にはベアリング17(図3参照)が配置されるため、ベアリング17の外周側を保持する円筒形の収容部41が形成される。収容部41の上側には、さらに大きい内径を有する開口部40が形成される。
【0041】
開口部40と開口部42の間の領域であって、円周方向の2箇所には、ベアリング押さえ25(図3参照)を図示しないネジで止めるためのネジ穴44が形成される。開口部40を形成する円筒部43の外周側には、パッキングランド4をギヤカバー3に固定するためのフランジ45が形成される。フランジ45は4箇所のネジ穴45aを形成するために、上からみると略四角形になるように円筒部43から外周側に突出する形状である。フランジ45の一部には、軽量化のために複数のくり貫き部45bが形成される。
【0042】
図6はパッキングランド4の側面図である。収容部41を形成する円筒部46は、外径部46aの間に凹部46bが形成される。この円筒部46には、ホイルガード20のベルト部21が固定されるもので、凹部46bはベルト部21の内周側の形状(断面が凸状)に併せて断面に形成され、締付けボルト22(図2参照)をやや緩めたときに、ベルト部21の周方向の移動(回転)は許容するが、軸方向(上下方向)の移動は許容しないように構成される。フランジ45の下側であって、ネジ穴45aが形成される周囲は、軸方向の肉厚を薄くした平面部45cが形成される。
【0043】
図7は、図5のパッキングランド4のB−B部の側面図である。開口部42はスピンドル7を貫通させるのに十分な大きさとし、収容部41の壁部との間に、第2の穴47が形成される。第2の穴47は、第2金属部材60が外気に触れるように軸方向に貫通するように形成された穴であって、円周方向に6分割されて形成される。尚、開口部42の上端側には、第2金属部材の外気への接触面積を増やすために、肉厚を薄くした肉薄部42aが形成される。
【0044】
図8は、パッキングランド4の底面図である。本図において第2の穴47が円周方向の大部分に形成されていることが理解できるであろう。また、フランジ45のネジ穴45aの周囲には、ネジを固定するために平面に形成された平面部45cが形成される。
【0045】
以上説明したように、ギヤカバー3及びパッキングランド4は樹脂製で構成されるが、エンジニアプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックでも良い。エンジニアプラスチックとしては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート等を用いることができる。また、スーパーエンジニアリングプラスチックとしてはポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン等を用いることができる。
【0046】
次に図9〜図11を用いて、第1金属部材50の形状を説明する。図9は、第1金属部材50の上面図である。第1金属部材50には、大径のリングと小径のリングを接続したような形状であって、スピンドル7を貫通させる大径の貫通穴51と、スピンドルロック18を貫通させる小径の貫通穴52が形成される。第1金属部材50は、例えば鉄系の金属であれば強度的に十分であり、コスト的も低コストで製造できるので好ましい。しかしながら、軽量化、放熱性の観点からアルミ合金としても良い。
【0047】
図10は図9のC−C部の断面図である。第1金属部材50は金属の一体成型で構成でき、その厚さ(スピンドル7の軸方向の厚さ)は均一になるように形成される。図11は、図9のD−D部の断面図である。
【0048】
次に図12〜図15を用いて第2金属部材60の形状を説明する。図12は第2金属部材60の上面図である。第2金属部材60は、ボール式のベアリング17(図3参照)の外輪を保持するための補強部材であって、上側にはベアリング17の外径とほぼ等しい径の円筒部61が形成される。また、下側にはベアリング17の内輪よりもやや大きい径の貫通穴62が形成される。図13は第2金属部材60の上面図である。第2金属部材60は、例えば鉄系の金属であるのが好ましく、ベアリング17と熱膨張係数がほぼ同じとなるように構成すると好ましい。図14は第2金属部材60の側面図である。尚、第2金属部材60は、パッキングランド4に接着して強固に固定も良いし、圧入または単に置くだけにしても、ベアリング17の外輪がパッキングランド4に対して空転しなければ良い。
【0049】
図15は第2金属部材60の断面図である。第2金属部材60は、ほぼ均一の肉厚を有し、内周側下部に段差部63を形成し、ベアリング17が下方に移動しないように構成した。尚、第2金属部材60のリング状の下面64は、その一部が第2の穴47を介して外気に触れるように構成され、発熱したベアリング17の熱を第2金属部材60を介して効果的に放熱することができる。
【0050】
以上、本実施例によれば、ギヤカバー及びパッキングランドを非金属製の軽量部材で形成したために、グラインダの軽量化を図ることができ、作業者の手腕への負荷が抑えられるので、作業者が疲労しづらくなるという効果がある。また、作業者がギヤカバーの上部を手の平で押さえ込むようにして作業を行っても、ギヤカバーが熱伝導率の低い樹脂製のため温度変化が小さく、手への負担が少なく快適性が大幅に向上する。さらに、ギヤカバーとパッキングランドの樹脂化により、アルミ合金等の金属製に比べて製造コストを大幅に抑えることができる。
【0051】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施例ではグラインダの例として、ディスクグラインダを用いて説明したが、その他の形状、形式のグラインダにも同様に適用できる。また、上述の実施例ではギヤカバー3とパッキングランド4の双方を樹脂製としたが、これらのいずれかだけを樹脂製としても良い。さらに、上述の実施例ではスピンドル7を保持する部材を、ギヤカバー3とパッキングランド4で構成したが、一つの部材にてスピンドル7を保持するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 ディスクグラインダ 2 モータハウジング 2a 開口部
3 ギヤカバー 3a、3b (ギヤカバーの)開口部
4 パッキングランド 5 テールカバー 5a 把持部
5c 風窓 6 トリッガ 7 スピンドル
8 砥石 9a、9b 固定具 11 モータ
11a (モータの)回転軸 12 冷却ファン 13 ベアリング
14 第1傘歯車 15 第2傘歯車 16 メタル(第1の軸受)
17 ベアリング(第2の軸受) 18 スピンドルロック
19 メタル 20 ホイルガード 21 ベルト部
22 締付けボルト 23 ファンガイド 25 ベアリング押さえ
26 ブラシキャップ 29 ネジ 30 風窓
31 第1の穴 33 (第1の)風窓 34 取付リブ
34a 補強リブ 35a〜35h 保持リブ
36a〜36d ネジ穴 37a〜37h 案内リブ
38 ネジボス 39 ハンドル取付穴 40 開口部
41 収容部 42 開口部 42a 肉薄部 43 円筒部
44 ネジ穴 45 フランジ 45a ネジ穴
45b くり貫き部 45c 平面部 46 円筒部
46a 外径部 46b 凹部 47 第2の穴
50 第1金属部材 51、52 貫通穴 60 第2金属部材
61 円筒部 62 貫通穴 63 段差部
64 (第2金属部材の)下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記モータによって回転され、前記回転軸と交わる方向に延びるスピンドルと、
前記スピンドルに取り付けられる先端工具と、
前記スピンドルの一端側に設けられる第1の軸受と、
前記スピンドルの他端側に設けられる第2の軸受と、
前記モータハウジングに取り付けられ前記第1の軸受を保持するギヤカバーと、
前記ギヤカバーに取り付けられ前記第2の軸受を保持するパッキングランドと、を有するグラインダであって、
前記ギヤカバーを樹脂で構成したことを特徴とするグラインダ。
【請求項2】
前記第1の軸受を第1の軸受保持部材を介して前記ギヤカバーに固定し、
前記第1の軸受保持部材を金属によって構成したことを特徴とする請求項1に記載のグラインダ。
【請求項3】
前記ギヤカバーの前記第1の軸受保持部材又は前記第1の軸受が接する領域に第1の穴を設け、
前記第1の穴によって前記第1の軸受保持部材の一部が外気と接するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラインダ。
【請求項4】
前記スピンドルの回転を制限するロック部材を設け、
前記ロック部材は、前記第1の軸受保持部材によって保持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のグラインダ。
【請求項5】
前記パッキングランドを樹脂で構成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のグラインダ。
【請求項6】
前記第2の軸受を第2の軸受保持部材を介して前記パッキングランドに固定し、
前記第2の軸受保持部材を金属によって構成したことを特徴とする請求項5に記載のグラインダ。
【請求項7】
前記パッキングランドの前記第2の軸受保持部材が接する領域に第2の穴を設け、
前記第2の穴によって前記第2の軸受保持部材の一部が外気と接するようにしたことを特徴とする請求項5又は6に記載のグラインダ。
【請求項8】
モータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
先端工具が取り付けられ前記モータによって回転されるスピンドルと、
前記スピンドルを軸受によって回転可能に保持するスピンドルハウジングを有するグラインダにおいて、
前記スピンドルハウジングの一部又は全部が樹脂で構成され、
前記軸受を金属製の補強部材を介して前記スピンドルハウジングに保持され、
前記スピンドルハウジングに穴を設けて、前記補強部材の一部が前記穴を介して外気と接することを特徴とするグラインダ。
【請求項9】
前記スピンドルは、前記モータの回転軸と略90度回転させて配置され、
前記スピンドルハウジングは、前記モータハウジングの前方側に取り付けられるギヤカバーと、ギヤカバーに取り付けられるパッキングランドにより構成されることを特徴とする請求項8に記載のグラインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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