説明

グラウト注入制御装置

【課題】 配合成分が対象地盤の性状に応じた最適なグラウトを生成し、注入する装置を提供すること。
【解決手段】 グラウト原液系統と希釈液系統との両系統の液を混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、グラウト原液系統の出口側流路に、グラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、導電率の温度補正のための温度センサーとを具備し、かつ、希釈液系統の出口側流路に、希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したグラウト注入制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木、建設工事において、建設構造体を支持するなどのための対象となる地盤にグラウトを注入することにより地盤改良を施し、十分にして信頼性のある地盤を形成するためのグラウト注入制御装置に関するものである。
さらに詳しくは、グラウトを注入する地盤の性質に応じてグラウトの注入圧力、注入流量を自動的に管理するだけでなく、本発明は、特に、グラウト液種、配合成分の変動を監視し、又は注入工程の進捗に応じて刻々と変化する地盤の性質に対応、適合するようにグラウト液種を変更するに際して、注入されるグラウトの液種を判別し、常に対象地盤に適合する最善のグラウト注入が行われることを保証しうるグラウト注入制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良剤又は安定剤を地盤に注入して地盤改良を行ういわゆるグラウト注入工事と総称される従来の土木工法として、各種の方式が提案され、実施されていおり、近年、その手法および使用材料の改善、進歩は著しい。
例えば、注入孔に近い領域のみを改良するためには、主材と反応して短時間で硬化させるショートゲルと称される薬液を二重管で対象地盤内の噴出孔まで圧送して2液を混合して硬化させる手法があり、また、より広域を改良するためには、硬化時間の長いロングゲルと称される薬液を採用する手法があり、その他、目的に応じて適宜、自在にグラウト剤を選定し、地盤に適合する改良工事が行われている。
【0003】
また、従来のグラウト注入工事では、推定される地盤の性状に応じて設定される濃度、配合のグラウトを一定量ずつ生成して注入するバッチ方式が採用されてきた(特許文献1、特許文献2)。このバッチ方式の難点は、1バッチ終了ごとに注入工程を中断しなければならないこと、グラウト濃度やグラウトの成分比を変更するにはバッチを中断しなければならないこと、などの問題点を有する。
【0004】
さらに、それぞれ1種以上のグラウト原液と希釈液を、注入孔に至る圧送管路の途中において混合し、混合された注入グラウトの濃度を計測・制御し、注入工程の進捗に応じて変化する適正設定濃度のグラウトを自動的に連続生成して自動注入する手法も具体化されている。
【0005】
さらにまた、従来は、電磁流量計による流量測定と制御、また、コリオリ式質量流量計による密度・濃度の測定と制御は、行われているものの(特許文献3)、グラウト原液と希釈液の濃度や成分は、あらかじめ設定され、配合された通りであって変化しないという前提条件を必要としていた。
【0006】
しかし、従来より提案され、実施されているグラウト注入システムにあっては、グラウト原液、希釈液及び混合生成された注入グラウトの配合成分が適正であるか、変化していないかなどについては、配合成分比を確認する手段が得られていないため、注入されるグラウトの品質保証は十分ではない状況にあった。
【0007】
また、生成されたグラウトの流量・密度を測定し、制御するのみでは、グラウトの品質を保証することはできず、また、生成グラウトの密度を監視し、同一流量、同一圧力でグラウト注入施工したとしても、注入グラウトの含有成分、又は成分比が異なれば、注入グラウトの対象地盤に対する作用が異なるので、グラウト注入施工の結果を保証できないことになる。
注入グラウトは、水とセメント、又は水と水ガラスのみで構成されることは少なく、改良すべき地盤の性状によってセメント主材のグラウト原液に水ガラスを添加したり、水ガラス主材原液に無機、又は有機薬剤を添加したりする。
また、透水試験の結果によっては、さらに微量の増粘剤や凝固促進剤を添加することも多い。改良、安定化しようとする対象地盤への作用に、大きな影響を与えるこれら成分の変化、及びその適否は、従来の測定手段である流量・密度測定によっては把握できなかった。
【特許文献1】特開昭59−21815
【特許文献2】特開2002−61165
【特許文献3】特開平8−209675
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地上、地中、水中に構造体を建設するなどの土木工事において、一般的に地盤改良と称されて採用されるグラウト注入工法は、構築物の種類や規模、及び対象地盤の性状に応じて、グラウトに期待される地盤への作用は相違する。
例えば、建設構造体を支持する地盤、またはその周辺の地盤を強化して構造体の負荷に耐えるよう地盤改良を施す、さらにはその目的のために地盤のクラックや破断層を強固に結合させ剛体化するなどの作用をグラウト注入に求める場合がある。
【0009】
また、対象地盤に透水性の高い砂礫層などが存在し、又は伏流水があるなどの場合に適用し、これを遮断、遮水するためのグラウト注入、又は土木建築工事によって将来的に予測される土圧、水圧の上昇時にも耐えるように地盤改良する目的によるグラウト注入などがあり、それぞれの目的に応じて適合するグラウトの性状は相違する。
【0010】
さらには、グラウト注入開始後、対象地盤の一定領域にグラウトが浸透した結果、対象地盤においてそれ以降に注入されるグラウトに期待される作用は、同一注入孔であっても注入開始当初と一定量の注入がなされた後では相違してくることが通常である。
このような地盤の変化にも対応し、適合するように、注入グラウトを適切な性質に調整すること、すなわち流動性や硬化時間が地盤に対して最適であるように成分比を調節することが理想的である。
【0011】
地盤改良を目的に注入されるグラウトの作用として求められる事項は、必要とされる対象地盤の領域において、どの程度の注入圧力によってどの範囲まで浸透するか、及びどの程度の速度でゲル化、硬化するか、というグラウトの対象地盤内におけるふるまい、作用である。
ところが、従来のグラウト注入においては、管理手段が得られなかったため、注入するグラウトの濃度、密度を管理するのみであり、地盤に対する作用に最も影響を与える配合成分、特に増粘剤、凝固促進剤などの微量成分については、初期に投入する量を計量するのみで、注入施工中の管理はなされていなかった。
【0012】
地盤改良を目的とする従来の注入グラウトの生成、品質管理方法は、上述のごとく対象地盤の性状、及びその変化に応じた適正な成分配合の管理がなされていないという根本的な不具合点があるにもかかわらず、その対策が得られなかったために放置されてきた状況にある。
【0013】
本発明の第1の目的は、地盤改良を図るためのグラウト注入工法において、生成するグラウトの濃度、密度を管理するのみでなく、水ガラス、増粘剤、凝固促進剤、その他の配合成分が、対象地盤の性状に応じて調整された最適な状態に維持されていることを監視し、かつ、管理し、さらには連続的にグラウトの成分比を対象地盤の変化に応じて自動調整し、常に地盤の性状に応じた最適なグラウトを生成、注入する装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、対象地盤の改良に最適なるグラウトを生成し、地盤の改良、安定化に必要とする量だけのグラウトを注入することにより、過剰な原材料消費を防止し、作業時間の低減、原材料コスト、及び人件費の低減をも可能とする地盤改良工事におけるグラウト注入制御装置を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる他の目的は、余剰グラウトを発生させないことにより、余剰グラウトの廃棄処理に関わるコストを不要とし、さらには過剰注入による岩盤の破壊、環境汚染などの恐れを払拭し、信頼性のある地盤改良工事の施工、管理を確立することを可能とするグラウト注入制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、改良すべき対象である地盤に圧送、注入するグラウトを生成するために、高濃度の原液グラウトを生成、循環する機能と、該原液グラウトに添加して混合、希釈して任意の濃度の注入グラウトを得るための希釈液を生成、循環する1以上の機能とを具備し、原液グラウト、及び希釈液を生成する機能の両者に、またはいずれかに、添加剤を加える機能を保持させ、さらに該原液と希釈液を混合し、圧送、注入する手段を具備せしめる。
さらに原液、及び希釈液生成手段のうち、添加剤を加える機能を保持させた循環管路中には、生成液の導電率を測定する手段を具備せしめる。
【0017】
複数の成分からなる混合液の導電率は、その成分比が変化したり、異なる物質が不純物として混入されれば導電率に変化を生ずる。
そして、成分比が一定である液の導電率の変化は、公開されている物性データ、又は予備実験によってあらかじめ把握することができるので、その数値に基づいて基準とする導電率値に上下限の管理値を設け、当該液の導電率の測定値が管理値内にあるか否かを連続監視すれば、混合液の成分比がどの程度変化したか、不純物が混入したか否かを把握することができる。
【0018】
グラウト原液、若しくは希釈液として生成された液の成分比による導電率のデータがあらかじめ得られていない場合、又は生成液の成分として使用する水が得られているデータを適用できない河川水であったりする場合は、運転立ち上げ時の注入開始前、各成分物質を計量して投入し、十分に攪拌し、循環した後に、得られる導電率値を基準値とし、その値に対する上下限値を設定して管理値とすれば、その後の成分変化や不純物の混入は、測定値が管理限界から外れることによって把握することができる。
【0019】
一方、液体の導電率は、温度に依存して変化するので、生成液の温度が大きく変化する場合には、生成液の温度を測定し、温度補正をする必要がある。
温度補正に適用できるデータが得られていない場合には、導電率の変化と生成液の温度変化を合わせて記録し、さらにサンプリングなどにより当該液の成分比を確認することにより、導電率の変化が成分変化に、又は温度変化に依存する割合が明らかとなり、以降の温度補正データとして採用することが可能となる。
【0020】
本発明は、グラウト注入施工において、対象地盤の予備調査に基づいて決定される硬化時間、流動性など、注入グラウトの性質に影響を与える成分、及び成分比が適切に保たれることを監視しつつ、管理し、さらには注入過程において対象地盤への作用を変更するための成分比変更にも対応した管理を可能とするグラウト注入制御装置を提案するものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウトの流路に、このグラウトの液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーを具備したので、注入グラウトが設定されたとおり適正な成分比を維持していることを、注入施工中に連続して監視することができ、さらには他の測定項目に加えて使用グラウトの導電率を連続的に記録、保存することによって、地盤改良の品質を証明し保証することができる。
【0022】
また、グラウト注入工程の進捗によって、対象地盤に適するグラウト濃度、配合成分比が変化し、これを適正に変更する場合においても、生成するグラウト原液、及び希釈液の濃度、成分比などが適正に変更されているかどうかの判定が可能であり、誤操作、計量ミスなどの人為的問題の解消に有用である。
【0023】
さらに、グラウトの配合成分比が適正であるか否かを迅速に判別できるので、配合調整、サンプリング、及び過剰注入などによる余分のグラウトを生成する必要がなく、余剰グラウトを廃棄するための負担、さらには過剰注入による地盤破壊、漏出による環境汚染などの恐れを払拭することができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、グラウトの流路に、このグラウトの液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したので、液体の導電率が温度に依存して変化するのを正しく温度補正をすることができ、地盤改良のよりすぐれた品質を証明し保証することができる。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、グラウト原液系統の出口側流路に、このグラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備し、かつ、希釈液系統の出口側流路に、この希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したので、グラウト原液と希釈液との間に、導電率の特性の違い、及び温度に対する変化の程度の違いがあっても、グラウト原液と希釈液とをそれぞれ別個に検出し、補正することでより正確な品質を証明し保証することができる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、グラウト原液槽の出口側流路に、このグラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、かつ、前記希釈液槽の出口側流路に、この希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、これらのセンサーの出力に基づき得られたグラウト原液の液種と配合成分を表わす導電率と、希釈液の液種と配合成分を表わす導電率とにそれぞれ上下管理設定値を付与する制御管理装置を具備したので、制御管理装置からの出力データにより注入施工中における導電率が設定値を越えた場合に警報を発する機能、本発明装置の運転時におけるプロセス状態を記録する機能、計測状態に応じて操作端に与える信号を演算する機能、データや信号状態を表示する機能、マニュアル選択、操作を可能とする機能などを保持させることができる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、グラウト原液と希釈液との混合後の出口側流路に、混合されたグラウト注入液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したので、注入直前のグラウトのよりすぐれた品質を証明し保証することができる。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、ミキサーの出口側流路に、混合されたグラウト液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、これらのセンサーの出力に基づき得られたグラウト液の液種と配合成分を表わす導電率に上下管理設定値を付与する制御管理装置を具備したので、制御管理装置からの出力データにより注入施工中における導電率が設定値を越えた場合に警報を発する機能、本発明装置の運転時におけるプロセス状態を記録する機能、計測状態に応じて操作端に与える信号を演算する機能、データや信号状態を表示する機能、マニュアル選択、操作を可能とする機能などを保持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、グラウト原液を生成するグラウト原液槽の出口側にグラウト原液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記グラウト原液槽に循環し、他方の出口をミキサーに結合したグラウト原液系統と、このグラウト原液を希釈する希釈液を生成する希釈液槽の出口側に希釈液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記希釈液槽に循環し、他方の出口を前記ミキサーに結合した希釈液系統とを有し、これらの両系統の液を前記ミキサーで混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウト原液槽の出口側流路に、このグラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、かつ、前記希釈液槽の出口側流路に、この希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、これらのセンサーの出力に基づき得られたグラウト原液の液種と配合成分を表わす導電率と、希釈液の液種と配合成分を表わす導電率とにそれぞれ上下管理設定値を付与する制御管理装置を具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置である。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明によるグラウト注入制御装置の一実施例について、図面に基づいて説明する。
図1は、グラウト原液槽の系統と希釈液槽の系統を設けた本発明の動作原理を説明する図である。グラウト原液槽の系統と希釈液槽の系統は、それぞれの液がポンプによって元の槽へ戻る循環系統を形成している。そして、注入開始指令によって、両循環系統の切り替え弁を同時に圧送側へ切り替え、両液を混合し、圧送する配管系統を示し、さらに制御、システム管理に必要なセンサー類を図示している。説明を簡単にするため、希釈液の系統は、1系統の場合について図示しているが、2系統又はそれ以上であってもよく、また、動作説明に不要である逆止弁や手動止め弁などは図示を省略している。
【0031】
図1において、原液槽系統のグラウト原液計量槽(11)には、ロードセルなどで構成する計量のための計量センサー(13)と、投入された原料を攪拌する攪拌機(12)が設けられている。そして、グラウト原液の構成成分である原料(14)、(15)は、それぞれ個別に投入量が前記計量センサー(13)によって検出されて、設定量が前記グラウト原液計量槽(11)に投入され、前記攪拌機(12)の運転によって混合攪拌される。
同様に、希釈液槽系統の希釈液計量槽(41)にも、計量センサー(43)、及び攪拌機(42)が設けられている。そして、希釈液の原料(44)、(45)は、投入量が前記計量センサー(43)によって検出されて、設定量が前記希釈液計量槽(41)に投入され、前記攪拌機(42)の運転によって混合攪拌される。
【0032】
前記グラウト原液計量槽(11)において十分に攪拌されたグラウト原液(20)は、グラウト原液槽(21)に移送され、攪拌機(22)によって攪拌されると同時に、グラウト原液ポンプ(27)によって切り替えバルブ(28)、原液循環管路(25)を介して、グラウト原液計量槽(11)の間において循環している。
同様に、前記希釈液計量槽(41)において十分に攪拌された希釈液(50)は、希釈液槽(51)に移送され、攪拌機(52)によって攪拌されると同時に、希釈液ポンプ(57)によって切り替えバルブ(58)、希釈液循環管路(55)を介して、希釈液計量槽(41)の間において循環している。
【0033】
前記グラウト原液槽(21)の出口からグラウト原液ポンプ(27)に至るグラウト原液管路(26)には、グラウト原液の導電率を検出する導電率センサー(31)、及びグラウト原液の液温を検出する温度センサー(32)が設けられている。
同様に、前記希釈液槽(51)の出口から希釈液ポンプ(57)に至る希釈液管路(56)には、希釈液の導電率を検出する導電率センサー(61)、及び希釈液の液温を検出する温度センサー(62)が設けられている。
前記導電率センサー(31)は、例えば、グラウト原液管路(26)の内部に取り付けた2個の電極に所定の電圧をかけ、この電圧と流れる電流から抵抗値を求め、その逆数を導電率信号として出力する。
同様に、前記導電率センサー(61)は、例えば、希釈液管路(56)の内部に取り付けた2個の電極に所定の電圧をかけ、この電圧と流れる電流から抵抗値を求め、その逆数を導電率データとして出力する。
前記温度センサー(32)は、グラウト原液管路(26)を流れるグラウト原液の液温を検出して温度信号として出力する。
前記温度センサー(62)は、希釈液管路(56)を流れる希釈液の液温を検出して温度信号として出力する。
【0034】
ここにおいて、切り替えバルブ(28)、及び(58)は、説明を簡単にするためグラウト原液(20)または希釈液(50)をそれぞれのグラウト原液槽(21)、又は希釈液槽(51)に戻して循環させるか、注入孔側へ切り替えるかの2位置動作をする弁として説明している。しかし、それぞれの切り替えバルブを分流型の調節弁として、循環量と注入圧送量の比率を任意に、または注入グラウトの濃度を調節するための機能を保持させてもよい。
さらに、グラウト原液ポンプ(27)、及び希釈液ポンプ(57)を、それぞれの調節信号によって可変速制御して吐出流量を調整し、混合・生成される注入グラウトの濃度・成分比を制御することも可能である。
【0035】
グラウトの前記各原料(14)、(15)が計量、投入され、その成分比が明らかとなっているグラウト原液(20)が循環している間に、その液温における導電率が得られるので、温度をパラメーターとした成分比に対する導電率のバックデータがあれば、そのデータと適合するか否かを付き合わせ、設定される導電率の上下限管理値を確認する。
バックデータがない場合には、循環時に得られる導電率を規準として上下限管理値を仮設定し、次に計量槽から成分比が明らかとなっているグラウト原液が投入されるときに対比する。
希釈液(50)についても同様である。
【0036】
注入開始指令によって、グラウト原液の切り替えバルブ(28)、及び希釈液の切り替えバルブ(58)を同時に注入側へ切り替え、それぞれの液をグラウト原液流量計(33)、及び希釈液流量計(63)を経由してミキサー(71)へ送り、混合して、その出口からさらに、図示されない注入孔まで圧送する。このとき、圧力計(72)で注入圧力を測定する。
グラウト原液槽(21)及び希釈液槽(51)において、攪拌が正常に行われており、各計量槽(11)、及び(41)からの計量液の供給や、計量槽を介さない槽へ投入がない限り、各液の成分比に変動はないから、この間に導電率の変化があれば、温度依存に基づく変動と理解されるので、その記録値により、後述するように、以降に温度補正、管理限界値の決定などに活用しうるバックデータを得ることができる。
【0037】
制御管理装置(75)は、前記各センサー(31)(32)(61)(62)からの測定信号を受け、演算処理してポンプ、バルブなどの操作端に指令を発するもので、簡単のためにブラックボックスで図示しているが、本発明の注入システムの運転時におけるプロセス状態を記録する機能、計測状態に応じて操作端に与える信号を演算する機能、データや信号状態を表示する機能、マニュアル選択、操作を可能とする機能などを保持させる。
【0038】
前記グラウト原液流量計(33)、及び希釈液流量計(63)は、それぞれの流量を測定するために、前述のとおり通常は電磁流量計を採用するが、コリオリ式質量流量計を採用すれば、流量に併せて各液の比重を測定して管理することも可能である。
また、図1においては、グラウト原液(20)、及び希釈液(50)をミキサー(71)によって混合した注入グラウトを注入孔へ圧送するシステムを図示しているが、両液の混合、反応によって硬化時間を短くする成分配合のグラウトの場合には、注入孔入り口、または注入の噴射孔において混合させるよう、両液をその混合位置まで別個に圧送することもある。
【0039】
図3は、グラウトの成分材として多用される水ガラス(ケイ酸ナトリウム)水溶液の導電率と温度の関係を示すグラフであり、10%質量濃度と20%質量濃度のそれぞれの特性例をそれぞれ実線A、Bで示している。
これらの実線A、Bの上下に沿う点線は、上下限管理設定値(例えば、±2mS/cm)を想定して示したものであり、それぞれの温度において、測定導電率がこの管理値の範囲を越えれば、成分比に変化があったことになる。
【0040】
図4は、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)水溶液の20度Cにおける%質量濃度と導電率の関係を示すグラフであり、図3に示した導電率と温度の関係を示すグラフと合わせて、この水溶液の導電率の温度補正係数が得られる。
さらに、図示した特性を持つ液に、他の液が混合された場合、混合比率が明確である初期の計量時に測定によって得られる導電率から、管理値範囲を推定して仮設定することができる。
【実施例2】
【0041】
図2は、実施例2を示すものであり、グラウト原液(20)の配合成分に変化がなく一定であり、希釈液(50)の配合成分のみを注入過程により設定変更するか、若しくは誤操作による配合成分に変動の可能性があるなどの場合、又はその逆に、希釈液(50)の配合成分に変化がなく一定であり、グラウト原液(20)の配合成分のみを注入過程により設定変更するか、若しくは誤操作による配合成分に変動の可能性があるなどの場合などにおいて、両液を混合した後に導電率センサー(81)によって導電率を測定管理する注入システムの例を示したものである。
この場合、温度センサー(82)は、ミキサー(71)の出口における生成グラウトの温度を測定し、導電率センサー(81)で得られる値を温度補正するために設けられる。
【0042】
前記ミキサー(71)に送られるグラウト原液(20)、及び希釈液(50)は、対象地盤の状態に応じて、生成注入グラウトの濃度、流動性、硬化時間などを最適状態に設定するために、ポンプの運転速度、又は弁(28)、(58)の開度調整によって流量調整されるので、生成注入グラウトのグラウト原液(20)と希釈液(50)の配合比率は変化し、導電率センサー(81)によって得られる導電率値も変化する。
グラウト原液(20)と希釈液(50)の配合比が、自動的、又は手動設定により変更された場合には、あらかじめ得られている両液の配合比に応じた導電率データに基づいて導電率の上下限管理値を自動変更する。
【0043】
図3及び図4に関する説明は、実施例2についてもそのまま適用できる。そして、実施例2のグラウト注入制御装置によるグラウト注入施工中において、上記に説明した導電率の上下限管理値を越えた場合に警報を発する機能を具備させることができ、さらに測定データ、警報発生状況の記録、保存によって施工の信頼性が得られる。
【実施例3】
【0044】
図1、及び図2に示したグラウト原液と希釈液を混合して注入グラウトを生成する装置の系統は、本発明による注入グラウトの配合成分変化を検出、管理するシステムを説明するための代表図例であり、本発明を適用できる装置構成は該図例に限らない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によるグラウト注入制御装置の実施例1を示す動作原理説明図で、グラウト原液と希釈液のそれぞれの循環系統を形成し、切り替え弁を介して両液を混合、圧送する配管系統を示し、さらに制御、システム管理に必要なセンサー類を図示したものである。
【図2】本発明によるグラウト注入制御装置の実施例2を示す動作原理説明図で、グラウト原液と希釈液を混合して注入グラウトを生成する系統において、両液を混合した後に導電率センサーによって導電率を測定管理する例を示したものである。
【図3】グラウトの成分材として多用される水ガラス(ケイ酸ナトリウム)水溶液の導電率と温度の関係を示す特性図であり、10%質量濃度と20%質量濃度の例を示している。
【図4】水ガラス(ケイ酸ナトリウム)水溶液の20度Cにおける%質量濃度と導電率の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0046】
11…グラウト原液計量槽、12…攪拌機、13…計量センサー、14、15…グラウト原液原料、20…グラウト原液、21…グラウト原液槽、22…攪拌機、25…原液循環管路、26…グラウト原液管路、27…グラウト原液ポンプ、28…切り替えバルブ、31…導電率センサー、32…温度センサー、
33…グラウト原液流量計、41…希釈液計量槽、42…攪拌機、43…計量センサー、44、45…希釈液原料、50…希釈液、51…希釈液槽、52…攪拌機、55…希釈液循環管路、56…希釈液管路、57…希釈液ポンプ、58…切り替えバルブ、61…導電率センサー、62…温度センサー、63…希釈液流量計、71…ミキサー、72…圧力計、80…導電率センサー、81…温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウトの流路に、このグラウトの液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーを具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項2】
注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウトの流路に、このグラウトの液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項3】
グラウト原液を生成するグラウト原液系統と、このグラウト原液を希釈する希釈液を生成する希釈液系統とを有し、これらの両系統の液を混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウト原液系統の出口側流路に、このグラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備し、かつ、前記希釈液系統の出口側流路に、この希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項4】
グラウト原液を生成するグラウト原液槽の出口側にグラウト原液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記グラウト原液槽に循環し、他方の出口をミキサーに結合したグラウト原液系統と、このグラウト原液を希釈する希釈液を生成する希釈液槽の出口側に希釈液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記希釈液槽に循環し、他方の出口を前記ミキサーに結合した希釈液系統とを有し、これらの両系統の液を前記ミキサーで混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウト原液槽の出口側流路に、このグラウト原液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、かつ、前記希釈液槽の出口側流路に、この希釈液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、これらのセンサーの出力に基づき得られたグラウト原液の液種と配合成分を表わす導電率と、希釈液の液種と配合成分を表わす導電率とにそれぞれ上下管理設定値を付与する制御管理装置を具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項5】
グラウト原液を生成するグラウト原液系統と、このグラウト原液を希釈する希釈液を生成する希釈液系統とを有し、これらの両系統の液を混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記グラウト原液と希釈液との混合後の出口側流路に、混合されたグラウト注入液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。
【請求項6】
グラウト原液を生成するグラウト原液槽の出口側にグラウト原液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記グラウト原液槽に循環し、他方の出口をミキサーに結合したグラウト原液系統と、このグラウト原液を希釈する希釈液を生成する希釈液槽の出口側に希釈液ポンプを介して切り替えバルブを結合し、この切り替えバルブの一方の出口を前記希釈液槽に循環し、他方の出口を前記ミキサーに結合した希釈液系統とを有し、これらの両系統の液を前記ミキサーで混合して注入すべき対象地盤に適合するグラウトの液種と配合成分の変更を可能にしたグラウト注入制御装置において、前記ミキサーの出口側流路に、混合されたグラウト液の液種と配合成分を導電率として検出する導電率センサーと、この導電率センサーにより検出した導電率の温度補正のためのグラウト温度を測定する温度センサーとを設け、これらのセンサーの出力に基づき得られたグラウト液の液種と配合成分を表わす導電率に上下管理設定値を付与する制御管理装置を具備したことを特徴とするグラウト注入制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−2457(P2006−2457A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180541(P2004−180541)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(391006038)東都電機工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】