説明

グラスファイバー強化ポリカーボネート成形組成物

本発明は、グラスファイバー強化ポリカーボネート組成物並びにA)ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、10〜85重量部、好ましくは30〜80重量部、特に40〜70重量部、B)ゴムフリービニルコポリマー、10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部、特に20〜35重量部、C)エポキシポリマー含有サイズ剤付グラスファイバー、5〜50重量部、好ましくは7〜35重量部、特に8〜25重量部、D)ゴム変性グラフトポリマー、0〜2重量部、好ましくは0〜1重量部、より好ましくは0重量部、およびE)常套のポリマー添加剤、0〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、特に0.1〜3重量部、を含む成形材料であって、成分Dと異なるゴム変性ポリマーを含まず、かつ、成分A+B+C+D+Eの合計が100重量部に標準化されており、先行技術と比較して高い剛性、高い流動性、高い加工安定性、良好な耐薬品性および光と熱との影響に関して良好な老化安定性を特徴とする成形材料、並びに成形物品の製造への本発明の組成物の使用、並びに本発明の組成物を含有する成形物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行技術と比較して高い剛性、高い流動性、高い加工安定性、良好な耐薬品性並びに光および熱の影響に関して良好な耐老化性に優れるグラスファイバー強化ポリカーボネート組成物および成形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートおよびゴム変性スチレンポリマー、例えばABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー)、を含む組成物は、その優れた機械的特性と良好な溶融流動性とのバランスで知られている。それらは多くの様々な適用エリアで、例えば車体構造において、建設分野において、および事務機器および屋内電気器具用のハウジングにおいて、使用される。
【0003】
表面積の広い成形部品を製造するために、低い熱膨張率および良好な寸法安定性、並びに形状安定性および高い剛性が一般的に必要とされる。これらの特性は、充填剤または強化剤の添加によって達成される。高い弾性率は、特に、繊維状強化剤を添加することによって得られる。しかしながら、充填剤または強化剤の添加は、一般的に、靱性および、特にポリマー溶融物の流動性、すなわち、加工特性、に悪影響を及ぼす。結果として、加工温度の増加が通常要求され、このことは材料の靱性の更なる低減を伴う。実際的な強化剤の充填度、および従って、達成されうる材料の剛性は、事実上、これらのパラメータによって制限され、表面積が大きく、かつ、壁体が非常に薄い成形部品は、しばしば以下に記述する先行技術に一致するポリカーボネート組成物では製造できない。これらの適用エリアに関して、そのようなポリカーボネート組成物を改良された流動性および高い弾性率で製造すること並びに幅広い加工ウィンドウ(processing window)に渡って良好な靱性を備え、かつ、熱老化に関して安定して製造することへの要求がある。このタイプの組成物から製造される成形部品は、しばしばペイントされ、かつ、これに関連して必要とされる後処理との関連で、一般的に、薬品、例えばペイント溶媒、と接触することになるので、十分な耐薬品性への更なる要求がある。このため、低分子量ポリカーボネートは、通常、耐応力亀裂性への悪影響をもたらすので、ポリマー溶融物の流動性を改良するための低分子量ポリカーボネートの使用は問題外である。
【0004】
グラスファイバー強化ポリカーボネート組成物を含むゴム変性ビニルコポリマーが先行技術で知られている。
【0005】
WO−A 00/39210は、ポリカーボネート、スチレン樹脂、リン酸エステルおよび強化剤(例えばグラスファイバー)、並びに要すればシリコーン−アクリレートコンポジットゴムとビニルモノマーベースのグラフトシェルとをベースとするグラフトポリマーを含むポリカーボネート組成物であって、改良された加水分解抵抗、良好な耐燃性および改良された機械的特性が認められるポリカーボネート組成物を開示している。用いられるスチレン樹脂は、ゴムベースのグラフトポリマーを含む。グラスファイバーサイズ剤は開示されていない。
【0006】
EP−A 1 240 250は、ポリカーボネート10〜93wt.%、ゴム弾性ベースのグラフトポリマー3〜50wt.%、熱可塑性コポリマー3〜50wt.%および粒状鉱物と繊維状充填剤との混合物1〜20wt.%を含むポリカーボネート組成物であって、熱膨張の低減、良好な靱性、良好な寸法安定性およびゲート領域における改良された表面品質を伴う高い流動性が認められるポリカーボネート組成物を開示している。
【0007】
EP−A 0 624 621は、ポリカーボネート10〜80wt.%、ゴム変性グラフトポリマー10〜80wt.%およびポリオレフィンワックスを含むコーティングを有するグラスファイバー5〜50wt.%を含むポリカーボネート組成物であって、改良された靱性および延性が認められるポリカーボネート組成物を開示している。
【0008】
EP−A 0 345 652は、ポリカーボネート10〜75wt.%、ゴムベースのグラフトコポリマー10〜50wt.%、スチレンコポリマー50wt.%以下、tert−ブチル(メタ)アクリレートを含むターポリマー0.5〜50wt.%および強化剤(例えばグラスファイバー)5〜50wt.%を含むポリカーボネート組成物であって、高い強度、良好な靱性および低い黄変が認められるポリカーボネート組成物を開示している。この出願において使用されているグラスファイバーは、概して、所定のサイズ剤および定着剤を備えるが、サイズ剤の組成はここには開示されていない。
【0009】
しかしながら、上記先行技術文献は、ポリカーボネート、ゴムフリービニルコポリマー(例えば、スチレン−アクリロニトリルコポリマー)およびゴムを含まないグラフトポリマーもしくは非常に少量のゴム含有グラフトポリマー(すなわち、2wt.%以下)を含む組成物を全く開示していない。
【0010】
先行技術において記述されている組成物であって、ゴム変性グラフトポリマーを2wt.%よりも多く含む組成物の欠点は、低すぎる溶融流動性および不充分な耐老化性である。
【0011】
ポリカーボネート、グラスファイバーおよびゴムフリービニルコポリマーを含む組成物であって、ゴム変性ビニルコポリマーを含まないかまたは非常に少量のゴム変性ビニルコポリマーを含む組成物も先行技術で知られている。
【0012】
WO−A 84/04317は、ポリカーボネート、スチレン樹脂、サイズ剤なしのグラスファイバーおよびハイドロジェンポリシロキサンを含むポリカーボネート組成物であって、高い耐衝撃性および高いモジュラスが認められるポリカーボネート組成物を開示している。
【0013】
EP−A 0 647 679は、ビスフェノールモノマーユニットとレソルシノールモノマーユニットとを備える特定のコポリカーボネート、ビニル芳香族モノマー成分とシアネート化ビニルモノマー成分とのゴム含有コポリマーおよび/またはコポリマー並びに無機充填剤(例えば、グラスファイバー)を含むポリカーボネート組成物であって、良好な流動性、高い耐衝撃性および良好な表面品質が認められるポリカーボネート組成物を開示している。グラスファイバーサイズ剤は開示されていない。
【0014】
EP−A 1 038 920は、実質的に溶融重合によって製造される特定の芳香族ポリカーボネート、スチレンベースの樹脂(例えば、スチレン含量少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%のスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、強化繊維状充填剤および要すればエラストマーポリマーからなるポリカーボネート組成物であって、改良された湿式加熱抵抗(moist heat resistance)および改良された靱性が認められるポリカーボネート組成物を開示している。使用されるグラスファイバーがポリマー(例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸樹脂、ナイロン樹脂など)で作られたサイズ剤でコーティングされていてもよいことが開示されている。実施例において、ポリウレタンサイズ剤付グラスファイバーを含む組成物のみが開示されている。
【0015】
WO−A 2006/040087は、ポリカーボネート、スチレン、アクリロニトリルおよび無水マレイン酸のターポリマー、並びに長いグラスファイバーを含むポリカーボネート組成物であって、改良された引張強さ、弾性率および耐衝撃性の組み合わせが認められるポリカーボネート組成物を開示している。加えて、これらの組成物は、好ましくは、ゴム含有グラフトポリマーおよびゴムフリーコポリマーの群から選択される少なくとも1種類のポリマーを含む。長いグラスファイバーがサイズ剤で表面変性されていてもよいことが開示されており、サイズ剤の化学的性質に関する情報は開示されていない。
【0016】
先行技術に開示されているゴムフリースチレン樹脂ベースのグラスファイバー強化ポリカーボネート組成物は一般的に良好な溶融流動性および耐老化性を示すが、それらは、ある適用エリアに関して、特に高い加工温度において、不充分な靱性が認められ、不充分な耐薬品性および剛性が認められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明は、熱および光の影響に関して老化に耐性があり、改良された加工安定性(すなわち、高い加工温度であっても安定な靱性)、改良された剛性および改良された耐薬品性を有する、さらさらのポリカーボネート組成物を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0018】
意外なことに、この目的は、
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、10〜85重量部、好ましくは30〜80重量部、特に40〜70重量部、
B) ゴムフリービニルコポリマー、10〜50重量部、好ましくは15〜40重量部、特に20〜35重量部、
C) エポキシポリマーを含むサイズ剤付グラスファイバー、5〜50重量部、好ましくは7〜35重量部、特に8〜25重量部、
D) ゴム変性グラフトポリマー、0〜2重量部、好ましくは0〜1重量部、特に好ましくは0重量部、および
E) 市販のポリマー添加剤、0〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、特に0.1〜3重量部
を含む組成物であって、成分D)と異なるゴム変性ポリマーを含まず、かつ、成分A+B+C+D+Eの合計が100重量部に標準化されている組成物によって達成されることがわかった。
【0019】
成分A
本発明による好適な成分Aによる芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造されうる(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964、およびDE−AS 1 495 626、DE−A 2 232 877、DE−A 2 703 376、DE−A 2 714 544、DE−A 3 000 610、DE−A 3 832 396参照、芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばDE−A 3 077 934参照。)。
【0020】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールと炭酸ハロゲン化物、例えばホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物、とのエステル交換によって、界面重縮合法によって、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノール、を使用して、かつ、要すれば三官能性以上の分枝剤、例えばトリフェノールもしくはテトラフェノール、を使用して、行われる。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法による製造もまた可能である。
【0021】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関するジフェノールは、好ましくは、式(I)
【化1】

(式中、
A は、単結合、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12アリーレンであって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよいもの、または式(II)もしくは(III)
【化2】

の基であり、
B は、いずれの場合も、C〜C12アルキル、好ましくはメチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
x は、いずれの場合も、互いに独立して0、1または2であり、
p は、1または0であり、かつ、
およびR は、それぞれのXに関して個々に選択され、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、かつ、
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
但し、少なくとも1つの原子Xにおいて、RとRは同時にアルキルである。)
のジフェノールである。
【0022】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびそれらの環臭素化および/または環塩素化誘導体である。
【0023】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンおよびそれらの二−および三臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0024】
ジフェノールは、単独で用いられても任意の所望の混合物として用いられてもよい。ジフェノールは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られる。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、および更に長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]フェノール、DE−A 2 842 005に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールまたはアルキル置換基中に炭素原子を全部で8〜20個有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−iso−オクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールである。用いられる連鎖停止剤の量は、一般的に、用いられる特定のジフェノールのモルの合計に対して0.5mol%〜10mol%である。
【0026】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートを既知の方法で、好ましくは用いられるジフェノールの合計に対して0.05〜2.0mol%の三官能性以上の化合物、例えば三以上のフェノール基を有する化合物、の混入によって、分枝してもよい。
【0027】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が好適である。用いられるジフェノール総量に対して1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%の、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを本発明による成分Aのコポリカーボネートの製造に用いることも可能である。これらは既知であり(US 3 419 634)、文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、DE−A 3 334 782に記述されている。
【0028】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、ビスフェノールAと、ジフェノールのモルの合計に対して15mol%以下の好ましいかまたは特に好ましいと言及した別のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、と、のコポリカーボネートである。
【0029】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。イソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との、1:20〜20:1の比の混合物が特に好ましい。
【0030】
炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを更にポリエステルカーボネートの製造における二官能性酸誘導体として使用する。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する可能な連鎖停止剤は、既に言及したモノフェノールに加えて、更にそれらのクロロカーボネート並びに芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であって、任意にC〜C22アルキル基またはハロゲン原子によって置換されていてもよいもの、並びに脂肪族C〜C22モノカルボン酸塩化物である。
【0032】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合、ジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合、ジカルボン酸二塩化物のモルに対して、それぞれ、0.1〜10mol%である。
【0033】
芳香族ポリエステルカーボネートは、更に、混入芳香族ヒドロキシカルボン酸を含んでいてもよい。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法で分枝されていてもよい(この関連で、DE−A 2 940 024およびDE−A 3 007 934参照。)。
【0035】
使用されうる分枝剤は、例えば、三官能性以上の塩化アシル、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物もしくはピロメリット酸四塩化物、0.01〜1.0mol%(用いられるジカルボン酸二塩化物に対する。)、または三官能性以上フェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシ−フェニルイソプロピル]フェノキシ)メタンおよび1,4−ビス[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]−ベンゼン、用いられるジフェノールに対して0.01〜1.0mol%である。フェノール系分枝剤は、最初に、ジフェノールと共に反応容器に導入され、酸塩化物分枝剤は、酸二塩化物と共に導入される。
【0036】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の割合は、所望の通り変更されうる。好ましくは、カーボネート基の含量は、エステル基とカーボネート基との合計に対して、100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル分とカーボネート分の両方が重縮合物中にブロックの形態で存在してもランダム分散体の形態で存在してもよい。
【0037】
好ましい態様において、成分Aの重量平均分子量M(GPC、光散乱または沈降によって決定される。)は、23000g/mol〜40000g/mol、好ましくは24000g/mol〜35000g/mol、特に25000〜32000g/molである。
【0038】
成分B
好ましい態様において、成分Bは、
B.1 ビニル芳香族(例えば、スチレンおよびα−メチルスチレン)または環置換ビニル芳香族(例えば、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン)の群から選択される少なくとも1種類のモノマー、70〜80wt.%、好ましくは72〜78wt.%、特に75〜78wt.%(いずれの場合も成分Bに対する。)と
B.2 ビニルシアニド(例えば、不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびtert.−ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)の群から選択される少なくとも1種類のモノマー、20〜30wt.%、好ましくは22〜28wt.%、特に22〜25wt.%(いずれの場合も成分Bに対する。)と
のゴムフリービニルコポリマーである。
【0039】
コポリマーBは、樹脂状、熱可塑性かつゴムフリーである。特に好ましくは、成分Bは、スチレン(B.1)とアクリロニトリル(B.2)とのゴムフリーコポリマーである。
【0040】
このタイプのコポリマーは既知であり、フリーラジカル重合によって、特にエマルジョン、サスペンジョン、溶液またはバルク重合によって、製造されうる。
【0041】
(コ)ポリマーは、好ましくは、平均分子量(M)(重量平均、GPC、光散乱または沈降によって決定される。)が15000〜250000g/mol、特に50000〜200000g/mol、特別に80000〜160000g/molである。
【0042】
成分C
好ましい態様において、成分Cは、
C.1 連続ストランド(ロービング)、長いグラスファイバーおよびチョップトガラスストランドからなる群からの少なくとも1種類の成分から選択されるグラスファイバーと、
C.2 エポキシポリマーを含むサイズ剤と、
C.3 要すれば定着剤と、
を有する、サイズ剤付グラスファイバーである。
【0043】
サイズ剤C.2と定着剤C.3は、好ましくは、成分Cにおいて、成分C中で測定される炭素含量が0.1〜1wt.%、好ましくは0.2〜0.8wt.%、特に好ましくは0.3〜0.7wt.%である量で用いられる。
【0044】
成分C.1によるグラスファイバーは、好ましくは、E−、A−またはC−ガラスで作られている。グラスファイバーの直径は、好ましくは5〜25μm、特に好ましくは6〜20μm、最も好ましくは7〜15μmである。長いグラスファイバーは、好ましくは長さ5〜50mm、特に好ましくは5〜30mm、最も好ましくは7〜25mmである。長いグラスファイバーは、例えばWO−A 2006/040087に記述されている。好ましくは、チョップトガラスストランド中の少なくとも70wt.%のグラスファイバーが60μmよりも長い。
【0045】
サイズ剤C.2は、好ましくは、
C.2.1 エポキシポリマー、50〜100wt.%、好ましくは70〜100wt.%、特に好ましくは80〜100wt.%(いずれの場合もC.2に対する。)と、
C.2.2 1種類以上の別のポリマー、0〜50wt.%、好ましくは0〜30wt.%、特に好ましくは0〜20wt.%(いずれの場合もC.2に対する。)と
からなる。
【0046】
最も好ましくは、サイズ剤C.2は、もっぱらエポキシポリマーC.2.1のみからなる(すなわち、サイズ剤C.2は成分C.2.2による別のポリマーを含まない。)。
【0047】
C.2.1によるエポキシポリマーは、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エステルまたはエポキシ樹脂ポリウレタンである。
【0048】
好ましい態様において、成分C.2.1によるエポキシポリマーは、
C.2.1.1 エピクロロヒドリンと、
C.2.1.2 好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族アルコールと
から作られるエポキシ樹脂である。
【0049】
成分C.2.1.2は、好ましくはフェノール系樹脂、例えばノボラック、または式(I)の化合物である。成分C.2.1.2は、特に好ましくはビスフェノールAである。
【0050】
成分C.2.2は、好ましくは、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリレート含有ポリマー、スチレン含有ポリマーおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種類のポリマーである。
【0051】
成分C.3は、好ましくは、シランである。好ましい態様において、シランは、サイズ剤のポリマーに結合するための、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、ビニル基およびメルカプト基の群から選択される官能基、並びにグラスファイバーに結合するための、1〜3つ、好ましくは3つのアルコキシ基を有する。例えば、好ましくは、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシ−プロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピル−トリメトキシシランおよびγ−クロロプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種類のシランが成分C.3として使用される。成分C.3を含むサイズ剤付グラスファイバーは、サイズ剤のグラスファイバーへの良好な付着を示す。
【0052】
成分D
成分Dは、
D.1 D.2上の少なくとも1種類のビニルモノマー、5〜70wt.%、好ましくは10〜60wt.%、特に20〜50wt.%と
D.2 ガラス転移温度10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満の1種類以上の主鎖、30〜95wt.%、好ましくは40〜90wt.%、特に50〜80wt.%と
の1種類以上のグラフトポリマーを含む。
【0053】
モノマーD.1は、好ましくは、
D.1.1 ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/または(C〜C)アルキルメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、50〜99重量部と、
D.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(C〜C)アルキル(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)、例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド、1〜50重量部と、
の混合物である。
【0054】
好ましいモノマーD.1.1は、少なくとも1種類のモノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートから選択され、好ましいモノマーD.1.2は、少なくとも1種類のモノマーアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートから選択される。特に好ましいモノマーの組み合わせは、D.1.1スチレンとD.1.2アクリロニトリルまたはD.1.1およびD.1.2メチルメタクリレートである。
【0055】
グラフトポリマーDに好適な主鎖D.2は、好ましい態様において、飽和している。すなわち、実質的に二重結合を含まない。D.2は、特に好ましくは、アクリレートゴム、シリコーンゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムからなる群から選択される少なくとも1種類のゴムである。最も好ましくは、D.2は、シリコーンゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムからなる群から選択される少なくとも1種類のゴムである。
【0056】
D.2による好適なアクリレートゴムは、好ましくは、アルキルアクリレートと、任意に別の重合性エチレン性不飽和モノマー、D.2に対して40wt.%以下と、のポリマーである。好ましい重合性アクリレートとしては、C〜Cアルキルエステル、例えば、メチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0057】
架橋のために、1よりも多くの重合性二重結合を有するモノマーを共重合してもよい。架橋モノマーの好ましい例は、C原子3〜8個を有する不飽和モノカルボン酸とC原子3〜12個を有する不飽和1価アルコールまたはOH基2〜4個およびC原子2〜20個を有する飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;ポリ不飽和複素環化合物、例えばトリビニルおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジ−およびトリビニルベンゼン;更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、好ましくは、主鎖D.2に対して、0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、量を主鎖D.2の1wt.%未満に制限することが有利である。
【0058】
主鎖D.2の製造のためにアクリレートに加えて任意に使用してもよい好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニル−C〜C−アルキルエーテルおよびメチルメタクリレートである。
【0059】
D.2による別の好適な主鎖は、DE−OS 3 704 657、DE−OS 3 704 655、DE−OS 3 631 540およびDE−OS 3 631 539に記述されているようなグラフト活性部位を有するシリコーンゴムである。
【0060】
グラフトコポリマーDは、フリーラジカル重合によって、好ましくはエマルジョン重合によって製造される。
【0061】
主鎖D.2の平均粒度(d50値)は、一般的に、0.05〜1μm、好ましくは0.07〜0.5μm、特に好ましくは0.1〜0.4μmである。平均粒度d50は、50wt.%の粒子がその上にあり、かつ、50wt.%の粒子がその下にある直径である。これは、超遠心測定によって決定されうる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.und Z.Polymere 250(1972),782−1796)。
【0062】
エマルジョン重合によって製造されるグラフトポリマーにおける主鎖D.2のゲル含量は、好ましくは少なくとも30wt.%、特に好ましくは少なくとも40wt.%、特別には少なくとも50wt.%である(トルエン中で測定。)。ゲル含量は、25℃において、好適な溶媒中で、これらの溶媒に不溶な画分として決定される(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I and II,Georg Thieme−Verlag,Stuttgart 1977)。
【0063】
グラフト反応中、グラフトモノマーが必ずしも主鎖に完全にグラフトするわけではないことが知られているので、本発明によるグラフトポリマーDは、更に主鎖の存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られる生成物およびワークアップ中に一緒に形成される生成物も意味すると理解される。従って、これらの生成物は、更に、グラフトモノマーのフリー(コ)ポリマー、すなわち、ゴムに化学的に結合していない(コ)ポリマー、も含みうる。
【0064】
(E)別の成分
この組成物は、成分Eとして別の添加剤を含んでもよく、ポリマー添加剤、例えば難燃剤(例えば、有機リンまたはハロゲン化合物、特にビスフェノールAベースのオリゴホスフェート)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミドファイバーの物質のクラスの化合物)、滑剤および離型剤、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、成核剤、帯電防止剤、安定剤、成分C以外の充填剤および強化剤(例えば、カーボンファイバー、タルク、マイカ、カオリン、CaCO)、並びに染料および顔料(例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄)が特に好適である。
【0065】
成形組成物および成形物品の製造
本発明による熱可塑性成形組成物は、例えばそれぞれの成分を既知の方法で混合し、温度200℃〜320℃、好ましくは240〜300℃において、常套の装置、例えば密閉式ミキサー、押出機および二軸押出機、の中でそれらを溶融配合および溶融押出することによって製造されうる。
【0066】
個々の成分の混合は、既知の方法で、連続的にかまたは同時に、かつ、約20℃(室温)またはより高い温度において行うことができる。
【0067】
好ましい態様において、本発明による組成物の製造は、二軸押出機において行われ、成分A、B、DおよびEを最初に溶融および混合し、次に補助押出機を通じてグラスファイバーCを溶融混合物中に導入し、分散させる。
【0068】
従って、本発明は、更に、本発明による組成物の製造方法も提供する。
【0069】
本発明による成形組成物は、あらゆる種類の成形物品の製造に使用されうる。これらは、例えば、射出成形、押出およびブロー成形法によって製造されうる。加工の別の形態は、予め製造されたシートまたはフィルムからの熱成形による成形物品の製造である。
【0070】
これらの成形物品の例は、フィルム、プロファイル、あらゆる種類のハウジング部品、例えば、屋内電気器具、例えばジュースプレス、コーヒーマシーン、ミキサー、用のもの;事務機器、例えばモニター、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンター、コピー機、用のもの;シート、パイプ、電気設備の電線管、ウィンドウ、ドアおよび建設部門用の別のプロファイル(内装仕上げ材および外部適用)、並びに電気および電子部品、例えばスイッチ、プラグおよびソケットおよび実用車用、特に自動車分野用、の部品である。本発明による組成物は、以下の成形物品または成形部品:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の動力車用の内装部品、動力車用の車体部品、小型変圧器を含む電化製品用のハウジング、データの処理および伝達用の装置用のハウジング、医療機器用のハウジングおよびクラッディング、マッサージ器具およびそれらのハウジング、子供用乗物玩具、フラットウォールエレメント(flat wall element)、安全装置用のハウジング、断熱輸送コンテナ、衛生設備および浴室設備用の成形品、換気口用のカバーグリッドプレートおよび庭設備用のハウジング、の製造にも好適である。
【実施例】
【0071】
成分A:
重量平均分子量M28000g/mol(GPCによって決定。)のビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート。
【0072】
成分B−1:
アクリロニトリル含量23wt.%かつ重量平均分子量約130000g/molのSANコポリマー。
【0073】
成分B−2:
アクリロニトリル:ブタジエン:スチレンの含量比が20:28:52wt.%である、エマルジョン重合によって製造されたABSポリマー。
【0074】
成分C−1:
平均径が13μmであり、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとから製造されたエポキシ樹脂でできたサイズ剤を有するチョップトガラスストランド。成分C−1の炭素含量は0.6wt.%である。
【0075】
成分C−2:
平均径が13μmであり、ポリウレタンサイズ剤を有するチョップトガラスストランド。成分C−1の炭素含量は0.4wt.%である。
【0076】
成分D:
Metablen(登録商標)SRK200(三菱レイヨン株式会社,日本):エマルジョン重合によって製造されるスチレン−アクリロニトリルでグラフト化されたアクリレート−シリコーンコンポジットゴム。
【0077】
成分E−1:ペンタエリトリトールテトラステアレート
【0078】
成分E−2:ホスファイト安定剤
【0079】
本発明による成形組成物の製造および試験
これらの成分をWerner & Pfleiderer製のZSK−25二軸押出機中で溶融温度260℃において混合する。成形品を溶融温度260℃および300℃かつ金型温度80℃において、Arburg 270Eタイプの射出成形マシーンを使用して製造する。
【0080】
ISO 11443に従って260℃かつ剪断速度1000s−1において測定される溶融粘度は、溶融流動性の尺度の役割を果たす。
【0081】
耐衝撃性を、ISO 180−1Uに従って23℃において80mm×10mm×4mmの試験片において決定する。試験片を、溶融温度260℃および300℃において射出成形した。加工温度を上昇させたときの耐衝撃性aの変化は、組成物の加工安定性の尺度の役割を果たし、次式
【数1】

によって計算される。
【0082】
弾性率を、ISO 527に従って、260℃において射出成形された試験棒(test bar)において決定する。
【0083】
菜種油中の、室温における応力亀裂(ESC)抵抗は、耐薬品性の尺度の役割を果たす。応力亀裂によって引き起こされる破壊破損に要する時間を、溶融温度260℃において射出成形した寸法80mm×10mm×4mmの試験片において、ストレイン・ジグ(strain jig)を使用して2.4%の外部繊維歪に曝し、媒体に完全に浸漬して決定する。この測定を、ISO 4599に基づいて行う。
【0084】
ISO 180−1Uに従って23℃において、260℃において射出成形された寸法80mm×10mm×4mmの試験片において決定される、120℃のホットエア(hot air)において1500時間貯蔵したときの耐衝撃性の低減が耐熱老化性の尺度の役割を果たす。
【0085】
VW規格PV 1303に従って6回の照明サイクルにわたってホットライト(hot light)老化に曝された、260℃において射出成形された寸法60mm×40mm×2mmの試験片の色の変化(グレースケールにおける変化)は、耐紫外線性の尺度の役割を果たす。
【0086】
【表1】

【0087】
表1から、ブタジエンゴム変性スチレン樹脂を含む組成物(比較例1、3、5、7および9)や比較的多量のゴム変性グラフトポリマーとの組み合わせでSANを含む組成物(比較例9)が、同じグラスファイバー含量の本発明による実施例(実施例4、8、10〜12)と比較して不充分な流動性および不充分な弾性率を示すことがわかる。更に、ブタジエンゴム変性スチレン樹脂を使用する場合(比較例5)、耐熱老化性および耐光性も不充分である。エポキシポリマーベースのサイズ剤を有するグラスファイバーを含まない組成物(比較例1、2、5および6)は、エポキシポリマーベースのサイズ剤を有するグラスファイバーを有する類似の組成物と比較して低い靱性が認められる。エポキシポリマーベースのサイズ剤を有さないグラスファイバーを含むゴムフリーの組成物(比較例2および6)は良好な流動性を示すが、耐薬品性および加工安定性が非常に乏しい。光および熱の影響のもとでの流動性、剛性、耐薬品性、靱性、加工安定性および耐老化性の良好な組み合わせは、本発明による組成物においてのみ達成される(実施例4、8、10〜12)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、10〜85重量部、
B) ゴムフリービニルコポリマー、10〜50重量部、
C) エポキシポリマーを含むサイズ剤付グラスファイバー、5〜50重量部、
D) ゴム変性グラフトポリマー、0〜2重量部、および
E) 市販のポリマー添加剤、0〜10重量部
を含む組成物であって、成分D)と異なるゴム変性ポリマーを含まない組成物。
【請求項2】
ゴムフリービニルコポリマー(成分B)15〜40重量部を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゴムフリービニルコポリマー(成分B)20〜35重量部を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ゴム変性グラフトポリマー(成分D)0〜1重量部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ゴム変性グラフトポリマー(成分D)を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Cが
C.1 連続ストランド、長いグラスファイバーおよびチョップトガラスストランドからなる群からの少なくとも1つの成分から選択されるグラスファイバー、
C.2 エポキシポリマーを含むサイズ剤、並びに
C.3 要すれば定着剤
を含むサイズ剤付グラスファイバーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Cとしてグラスファイバーを実質的に
C.2.1 エポキシポリマー、C.2に対して50〜100wt.%並びに
C.2.2 ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリレート含有ポリマー、スチレン含有ポリマーおよびポリアミドの群から選択される1種類以上の別のポリマー、C.2に対して0〜50wt.%
からなるサイズ剤C.2と共に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
エポキシポリマーC.2.1として、
C.2.1.1 エピクロロヒドリンおよび
C.2.1.2 少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアルコール
から作られるエポキシ樹脂を使用する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ビスフェノールAを二官能性アルコール成分C.2.1.2として使用する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
成分Cによるサイズ剤付グラスファイバーの炭素含量が0.1〜1wt.%である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
成分Cによるグラスファイバーの平均径が5〜25μmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
成分Eとして、難燃剤、ドリップ防止剤、滑剤および離型剤、成核剤、帯電防止剤、安定剤、成分C以外の充填剤および強化剤、並びに染料および顔料からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
成分Bが
B.1 ビニル芳香族または環置換ビニル芳香族の群から選択される少なくとも1種類のモノマー、成分Bに対して70〜80wt.%並びに
B.2 ビニルシアニド、(メタ)アクリル酸(C〜C)アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体の群から選択される少なくとも1種類のモノマー、成分Bに対して20〜30wt.%
のゴムフリービニルコポリマーである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
成分B.1がスチレンであり、成分B.2がアクリロニトリルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
成分Dとして、実質的に二重結合を含まないゴムベースグラフトポリマーを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
成分Dとして、アクリレートゴム、シリコーンゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムからなる群から選択されるゴムベースグラフトポリマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
成形物品の製造への、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物を含む成形物品。

【公表番号】特表2010−536942(P2010−536942A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520456(P2010−520456)
【出願日】平成20年8月2日(2008.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006389
【国際公開番号】WO2009/021648
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】