説明

グラスライニング組成物

【課題】本発明の目的は、薄肉化可能で、良好な熱伝導性を有するグラスライニング組成物、特に、上ぐすり用グラスライニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で1〜20質量%含有することを特徴とし、また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で20〜120質量%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラスライニング組成物に関し、更に詳細には、化学工業、医薬品工業、食品工業等における厳しい使用条件に耐え得る鋼板あるいはステンレス系鋼板を基材としたグラスライニング機器のグラスライニング施釉層を薄肉化することができる上ぐすり用グラスライニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からグラスライニング機器は、低炭素鋼板あるいはステンレス系鋼板を素地とし、この素地金属と密着を強固にする下ぐすり用グラスライニング組成物を0.2〜0.4mm位焼き付けた後、高耐食性能を有する上ぐすり用グラスライニング組成物を通常0.6〜2.0mm位焼き付けることにより製造されている。
【0003】
従来のグラスライニング機器に使用されている下ぐすり用グラスライニング組成物及び上ぐすり用グラスライニング組成物は、下記の組成を有するフリット(ガラス溶融物粉末)から構成されている:
(A)SiO+TiO+ZrO:46〜67質量%
ただし、
SiO:46〜67質量%
TiO:0〜18質量%
ZrO:0〜12質量%
なお、成分(A)についての質量%表示はSiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示はNaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):0.9〜7質量%
ただし、
CaO:0.9〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示はCaO換算量である;
(D)B+Al:1.2〜22質量%
ただし、
:1.2〜22質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示はB換算量である;
(E)CoO+NiO+MnO:0〜5質量%
ただし、
CoO:0〜5質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示はCoO換算量である;
【0004】
また、着色成分としてSb、Cr、Fe、SnOの少なくとも1種を上記フリット組成100%に対して最大Fe換算量で5質量%まで添加されたフリットもある。更に、フリットの溶融を促進するために、前記SiO、CaO、NaO成分のうち5質量%を限度にフッ化物も使用されている。フッ化物としては例えばNaSiF、CaF、NaAlFが使用されている。
【0005】
また、グラスライニング施釉層の脆性質を改善するために、例えば特許文献1には、フリットを含む釉薬組成物であって、直径0.2〜1ミクロン、長さ/直径の形状比20以上の無機質ウイスカーを前記フリット100重量部(質量部)に対して20〜100重量部(質量部)含有してなることを特徴とするウイスカー含有釉薬組成物(第1項);ウイスカーがチタニア、チタン酸カリウム、アルミナ、炭化ケイ素及び窒化ケイからなる群から選ばれた少なくとも1種の無機質短結晶繊維である特許請求の範囲第1項記載の釉薬組成物(第2項)が開示されている。
【0006】
更に、グラスライニング施釉層の導電性を改善するために、例えば特許文献2には、フリットを含むグラスライニング組成物であって、直径0.5〜30ミクロン、長さ1.5〜10mm、長さ/直径の形状比50以上の金属繊維を前記フリット100重量部(質量部)に対して0.05〜1.5重量部(質量部)含有してなることを特徴とする導電性グラスライニング組成物(請求項1);金属繊維がステンレス系金属、貴金属系金属、及び白金と白金族金属との合金からなる群から選択される1種または2種以上である請求項1記載の導電性グラスライニング組成物(請求項2)が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、フリットを含むグラスライニング組成物であって、直径0.01ミクロン以上0.5ミクロン未満、長さ0.5〜1500ミクロン、長さ/直径の形状比50以上の金属繊維を前記フリット100重量部(質量部)に対して0.001〜0.05重量部(質量部)含有してなることを特徴とする導電性グラスライニング組成物(請求項1)が開示されている。
【0008】
更に、特許文献4には、フリットを含むグラスライニング組成物であって、直径0.1〜30ミクロン、長さ0.005〜3mm、長さ/直径の形状比50以上のセラミックス繊維を前記フリット100重量部(質量部)に対して0.05〜1.5重量部(質量部)含有してなることを特徴とする導電性グラスライニング組成物(請求項1);セラミックス繊維が炭化物系繊維及び/または炭素繊維である、請求項1記載の導電性グラスライニング組成物(請求項2);更に、直径0.01〜30ミクロン、長さ0.5ミクロン〜3mm、長さ/直径の形状比50以上の金属繊維をフリット100重量部(質量部)に対して0.001〜1.45重量部(質量部)含有してなる、請求項1または2記載の導電性グラスライニング組成物(請求項3)が開示されている。
【0009】
ここで、従来、グラスライニング機器におけるグラスライニング施釉層の厚みは、JIS R4201規格により0.6〜2.5mmと定められているが、実際のグラスライニング機器におけるグラスライニング施釉層の厚みは、焼成過程におけるピンホール発生、修正、手直し焼成等の反復により、1.3〜2.0mm程度で製品化されている。即ち、グラスライニング組成物の施釉は、1回当り0.2〜0.3mm位で、下ぐすり用グラスライニング組成物の施釉を1〜2回、上ぐすり用グラスライニング組成物の施釉を4〜6回行い、その都度、焼成炉内で溶融、焼き付けを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平4−8390号公報
【特許文献2】特開平10−81544号公報
【特許文献3】特開平11−116273号公報
【特許文献4】特開平11−189431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
グラスライニング機器、特に、グラスライニング製反応容器の低炭素鋼板あるいはステンレス系鋼板からなる素地の外側には、反応容器内の温度を制御するための熱媒体(液体)を通すためのジャケットが設置されており、熱媒体からの熱により反応容器内の反応液の温度を加熱したり、冷却したりしている。しかしながら、グラスライニング施釉層は、熱伝導率が小さく、熱媒体からの熱を反応容器内部へ伝えるための熱効率が非常に悪く、エネルギーコストの削減が要求される昨今重大な問題点となっている。
【0012】
そのため、グラスライニング施釉層の厚みを薄くすることが試みられているが、現在使用されているグラスライニング組成物では薄肉化すると、大気中での繰返し焼成負荷で、鉄母材の酸化による鉄成分の下ぐすり層への拡散と気泡の成長、上昇が促進され、焼成バテが起こり、密着不良によるグラスライニング施釉層の剥離や200ミクロン径以上の巨大気泡が発生し、下ぐすり層と上ぐすり層の合計厚みが0.6〜1.2mmのような薄いグラスライニング施釉層では品質不良となり、満足のいく特性を有するグラスライニング施釉層が得られていないのが現状である。
【0013】
従って、本発明の目的は、薄肉化可能で、良好な熱伝導性を有するグラスライニング組成物、特に、上ぐすり用グラスライニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、
(A)SiO+TiO+ZrO:41〜72質量%
ただし、
SiO:41〜72質量%
TiO:0〜10質量%
ZrO:0〜10質量%
なお、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):1〜7質量%
ただし、
CaO:1〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である;
(D)B+Al:1〜18質量%
ただし、
:1〜18質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である;
の組成を有するフリット、及び珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で1〜20質量%含有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、フリットが更に成分(E)を含有する特徴とする:
(E)CoO+NiO+MnO:0〜6質量%
ただし、
CoO:0〜6質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である
【0016】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、無機質耐火性粉体の含有量が、フリット100質量%に対し外割で3〜10質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロン以下であることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.2〜20ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比30以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.1〜2ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比50以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択される1種または2種の貴金属繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有することを特徴とする。
【0020】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、直径44ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末をフリット100質量%に対し外割で1〜10質量%含有することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、
(A)SiO+TiO+ZrO:41〜72質量%
ただし、
SiO:41〜72質量%
TiO:0〜10質量%
ZrO:0〜10質量%
なお、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):1〜7質量%
ただし、
CaO:1〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である;
(D)B+Al:1〜18質量%
ただし、
:1〜18質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である;
の組成を有するフリット、及び珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で20〜120質量%含有することを特徴とする。
【0022】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、フリットが更に成分(E)を含有することを特徴とする:
(E)CoO+NiO+MnO:0〜6質量%
ただし、
CoO:0〜6質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である
【0023】
また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、無機質耐火性粉体の含有量は、フリット100質量%に対し外割で40〜100質量%の範囲内であることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロン以下であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.2〜20ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比30以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有することを特徴とする。
【0026】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.1〜2ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比50以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択される1種または2種の貴金属繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、直径44ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末をフリット100質量%に対し外割で1〜20質量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の上ぐすり用グラスラスニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物によれは、グラスライニング施釉層を薄肉化することができ、更に、良好な熱伝導性を有するグラスライニング施釉層を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物及び上ぐすり用グラスライニング組成物から得られたグラスライニング層の熱伝導率を測定するために使用した装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の上ぐすり用及び下ぐすり用グラスライニング組成物に使用するフリット(ガラス溶融物粉末)は、下記の組成を有する:
(A)SiO+TiO+ZrO:41〜72質量%
ただし、
SiO:41〜72質量%
TiO:0〜10質量%
ZrO:0〜10質量%
なお、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):1〜7質量%
ただし、
CaO:1〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である;
(D)B+Al:1〜18質量%
ただし、
:1〜18質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である;
【0031】
ここで、成分(A)の含有量が、41質量%未満であると、フリット自体の強度が低下するために好ましくなく、また、72質量%を超えると、フリットの溶融粘性が高くなり、グラスライニング組成物の溶融点が上昇するために好ましくない。
【0032】
また、成分(B)の含有量が、8質量%未満であると、フリットの溶融性が悪くなるために好ましくなく、また、22質量%を超えると、フリットの線熱膨張係数が上昇し、物性バランスが崩れるために好ましくない。
【0033】
更に、成分(C)の含有量が、1質量%未満であると、フリットの耐アルカリ性能を向上させるためには不充分であり、また、7質量%を超えると、フリットの溶融粘性が高くなり、グラスライニング組成物の溶融点が上昇するために好ましくない。
【0034】
また、成分(D)の含有量が、1質量%未満であると、フリットの溶融性を低下させる効果と、失透防止効果が減少するために好ましくなく、また、18質量%を超えると、焼成中の発泡現象が著しくなるために好ましくない。
【0035】
更に、本発明のグラスライニング組成物に使用するフリットは、成分(E)を含有することができる:
(E)CoO+NiO+MnO:0〜6質量%
ただし、
CoO:0〜6質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である。
【0036】
ここで、成分(E)の含有量が、6質量%を超えると、焼成中の発泡現象が著しくなるために好ましくない。
【0037】
本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、上記組成を有するフリットと、珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体とを含有してなるものである。フリットと無機質耐火性粉体を併用することにより、グラスライニング施釉層を薄肉化することが可能となると共に耐火性並びに熱伝導性を向上させることができる。
【0038】
ここで、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物における無機質耐火性粉体の含有量は、フリット100質量%に対し外割で1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%の範囲内である。無機質耐火性粉体の含有量が1質量%未満では、その含有効果が発揮されないために好ましくなく、また、20質量%を超えると、上ぐすり施釉層に比較的大孔径の気泡が発生するために好ましくない。
【0039】
また、無機質耐火性粉体の粒径は、149ミクロン以下、好ましくは0.1〜74ミクロンの範囲内である。無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロンを超えると、グラスライニング施釉層を均一に薄肉化することができないために好ましくない。
【0040】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.2〜20ミクロン、好ましくは2〜15ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、好ましくは100〜800ミクロン、長さ/直径の形状比30以上、好ましくは50以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維を含有することができる。本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物に無機繊維を併用することにより、グラスライニング施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができる。ここで、無機繊維の直径が0.2ミクロン未満では、無機繊維自体の加工が難しく、現状では使用することができない。また、該直径が20ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣り、グラスライニング施釉層を薄層化することができないために好ましくない。また、無機繊維の長さが6ミクロン未満では、無機繊維自体のチップが難しく、また、該長さが1000ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。更に、無機繊維の長さ/直径の形状比が30未満であると、グラスライニング施釉層の耐火性や熱伝導性を向上させることができないために好ましくない。
【0041】
なお、無機繊維の含有量は、フリット100質量%に対して外割で0.1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%の範囲内である。ここで、無機繊維の含有量が、0.1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、無機繊維の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0042】
また、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、更に、直径0.1〜2ミクロン、好ましくは0.3〜1ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、好ましくは100〜800ミクロン、長さ/直径の形状比50以上、好ましくは100以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択された1種または2種の貴金属繊維を含有することができる。本発明のグラスライニング組成物に貴金属繊維を併用することにより、グラスライニング施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができると共に施釉層に導電性を付与することもできる。ここで、貴金属繊維の直径が0.1ミクロン未満では、貴金属繊維自体の加工が難しく、現状では使用することができない。また、該直径が2ミクロンを超えると、スリップ粘性が乏しくなるために好ましくない。また、貴金属繊維の長さが50ミクロン未満では、その添加効果が発現しないために好ましくなく、また、該長さが1000ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣り、グラスライニング施釉層を薄肉化することができないために好ましくない。更に、無機繊維の長さ/直径の形状比が30未満であると、グラスライニング施釉層の耐火性や熱伝導性を向上させることができないために好ましくない。
【0043】
なお、貴金属繊維の含有量は、フリット100質量%に対して外割で0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜4質量%の範囲内である。ここで、貴金属繊維の含有量が、0.1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、貴金属繊維の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0044】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物は、更に、直径44ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末を含有することができる。本発明のグラスライニング組成物に貴金属粉末を併用することにより、グラスライニング施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができると共にグラスライニング施釉層に導電性を付与することもできる。ここで、貴金属粉末の直径が44ミクロンを超えると、均一に分散せず、凝集するため好ましくない。
【0045】
なお、貴金属粉末の含有量は、フリット100質量%に対して外割で1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%の範囲内である。ここで、貴金属粉末の含有量が、1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、10質量%を超えると、高コストとなるため好ましくない。なお、貴金属粉末の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0046】
更に、本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物に上述の無機繊維、貴金属繊維、貴金属粉末を併用する場合、それらの合計量は、フリット100質量%に対して外割で0.2〜15質量%、好ましくは0.3〜10質量%の範囲内である。合計量が0.2質量%未満であると、それらの含有効果が発現しないために好ましくなく、また、15質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、無機繊維、貴金属繊維、貴金属粉末の合計量が上記範囲内であれば、上ぐすりグラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0047】
本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、上記組成を有するフリットと、珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体とを含有してなるものである。フリットと無機質耐火性粉体を併用することにより、グラスライニング施釉層を薄肉化することが可能となると共に耐火性並びに熱伝導性を向上させることができる。
【0048】
ここで、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物における無機質耐火性粉体の含有量は、フリット100質量%に対し外割で20〜120質量%、好ましくは40〜100質量%の範囲内である。無機質耐火性粉体の含有量が1質量%未満では、その含有効果が発揮されないために好ましくなく、また、20質量%未満であると、シケやコッパーヘッドが発生するために好ましくない。ここで、「シケ」とは、焼成により酸化が進み、テストピースの端部及び一部に下ぐすり用グラスライニング組成物がなくなったように見える状態(焼成バテ)を言い、「コッパーヘッド」とは、焼成により鉄素地から溶出した酸化鉄が下ぐすり用グラスライニング組成物の中で過飽和となって析出する銅色の斑点のことを言う。また、120質量%を超えると、焼成不良を起こす恐れがあるために好ましくない。
【0049】
なお、無機質耐火性粉体の粒径は、149ミクロン以下、好ましくは0.1〜74ミクロンの範囲内である。無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロンを超えると、グラスライニング施釉層を均一に薄肉化することができないために好ましくない。
【0050】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、直径0.2〜20ミクロン、好ましくは2〜15ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、好ましくは100〜800ミクロン、長さ/直径の形状比30以上、好ましくは50以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維を含有することができる。本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物に無機繊維を併用することにより、グラスライニング施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができる。ここで、無機繊維の直径が0.2ミクロン未満では、無機繊維自体の加工が難しく、現状では使用することができない。また、該直径が20ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣り、グラスライニング施釉層を薄層化することができないために好ましくない。また、無機繊維の長さが6ミクロン未満では、無機繊維自体のチップが難しく、また、該長さが1000ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。更に、無機繊維の長さ/直径の形状比が30未満であると、グラスライニング施釉層の耐火性や熱伝導性を向上させることができないために好ましくない。
【0051】
なお、無機繊維の含有量は、フリット100質量%に対して外割で0.1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%の範囲内である。ここで、無機繊維の含有量が、0.1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、無機繊維の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0052】
また、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、更に、直径0.1〜2ミクロン、好ましくは0.3〜1ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、好ましくは100〜800ミクロン、長さ/直径の形状比50以上、好ましくは100以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択された1種または2種の貴金属繊維を含有することができる。本発明のグラスライニング組成物に貴金属繊維を併用することにより、グラスライニング施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができると共にグラスライニング施釉層に導電性を付与することもできる。ここで、貴金属繊維の直径が0.1ミクロン未満では、貴金属繊維自体の加工が難しく、現状では使用することができない。また、該直径が2ミクロンを超えると、スリップ粘性が乏しくなるために好ましくない。また、貴金属繊維の長さが50ミクロン未満では、その添加効果が発現しないために好ましくなく、また、該長さが1000ミクロンを超えると、グラスライニング組成物としてのスリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣り、グラスライニング施釉層を薄肉化することができないために好ましくない。更に、無機繊維の長さ/直径の形状比が30未満であると、グラスライニング施釉層の耐火性や熱伝導性を向上させることができないために好ましくない。
【0053】
なお、貴金属繊維の含有量は、フリット100質量%に対して外割で0.1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%の範囲内である。ここで、貴金属繊維の含有量が、0.1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、5質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、貴金属繊維の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0054】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物は、更に、直径44ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末を含有することができる。本発明のグラスライニング組成物に貴金属粉末を併用することにより、施釉層の耐火性と熱伝導性を向上させることができると共に施釉層に導電性を付与することもできる。ここで、貴金属粉末の直径が44ミクロンを超えると、均一分散せず、凝集するため好ましくない。
【0055】
なお、貴金属粉末の含有量は、フリット100質量%に対して外割で1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内である。ここで、貴金属粉末の含有量が、1質量%未満であると、その含有効果が発現しないために好ましくなく、また、20質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、貴金属繊維の含有量が上記範囲内であれば、グラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0056】
更に、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物に上述の無機繊維、貴金属繊維、貴金属粉末を併用する場合、それらの合計量は、フリット100質量%に対して外割で0.2〜15質量%、好ましくは0.3〜10質量%の範囲内である。合計量が0.2質量%未満であると、それらの含有効果が発現しないために好ましくなく、また、15質量%を超えると、スリップ粘性が乏しくなり、スプレー施工性が著しく劣るために好ましくない。なお、無機繊維、貴金属繊維、貴金属粉末の合計量が上記範囲内であれば、下ぐすりグラスライニング焼成面での発泡や、凹凸現象がなく、良好な品質のグラスライニング施釉層を得ることができる。
【0057】
なお、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物並びに上ぐすり用グラスライニング組成物に使用する無機繊維及び白金繊維の寸法は、上述の範囲内であるが、フリット及び無機質耐火性粉体と混合する際に、無機繊維や白金繊維の粉砕、切断が生じ、グラスライニング組成物を施釉する時には上述の範囲内よりも小さい無機繊維や白金繊維が若干混入することがあるか、このような無機繊維や白金繊維が存在していても得られるグラスライニング施釉層の耐火性や熱伝導性を向上させることができ、それによってグラスライニング施釉層の薄層化が可能となる。
【0058】
本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物並びに上ぐすり用グラスライニング組成物は、下ぐすりまたは上ぐすりとして慣用の基材例えば鋼板あるいはステンレス系鋼板等へ慣用の方法により施釉することができる。例えば上記組成を有する下ぐすり用グラスライニング組成物には、下ぐすり用フリット100質量%に対して粘土を外割で3〜8質量%、好ましくは5〜7質量%、CMC(カルボキシメチルセルロース)を外割で0.01〜0.08質量%、好ましくは0.03〜0.06質量%、亜硝酸ソーダを外割で0.1〜0.6質量%、好ましくは0.2〜0.5質量%、及び水を添加したスリップとして使用することができる。また、上記組成を有する上ぐすり用グラスライニング組成物には、下ぐすり用フリット100質量%に対して粘土を外割で1〜5質量%、好ましくは2〜4質量%、CMC(カルボキシメチルセルロース)を外割で0.01〜0.08質量%、好ましくは0.03〜0.06質量%、塩化バリウムを外割で0.05〜0.3質量%、好ましくは0.1〜0.2質量%、及び水を添加したスリップとして使用することができる。
【0059】
なお、本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物並びに上ぐすり用グラスライニング組成物のスリップの施釉操作、焼成温度等の操作は特に限定されるものではなく、慣用、公知の操作を使用することができる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の上ぐすり用グラスライニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物を更に説明する。
上ぐすり用グラスライニング組成物及び下ぐすり用グラスライニング組成物に使用したフリットの原料配合割合を以下の表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1
上記下ぐすり用フリット100質量%に、表2に記載する添加割合(外割)の粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。
焼成は850℃で25分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、上ぐすり用グラスライニング組成物を施釉せずに、850℃×120分間の熱処理を施し、下ぐすり施釉層の焼成バテ現象を観察して焼成熱負荷への耐久性を検討した。得られた結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2中、外観観察の欄の×は、シケとコッパーヘッドが全体的に発生を示し、△は、シケとコッパーヘッドが少し発生を示し、□は、焼成不充分(表面に凹凸あり)を示し、○は、異常なしをそれぞれ示す。
この結果より、珪石粉をフリット100質量%に対して外割で20〜120質量%添加すると、0.25mmのような薄い施釉厚みでも焼成バテを防止することができることが判る。
【0065】
実施例2
上記下ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉30質量%(外割)、表3に記載する添加割合(外割)の粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)のアルミナ粉または窒化アルミニウム、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。
焼成は850℃で25分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、上ぐすり用グラスライニング組成物を施釉せずに、850℃×120分間の熱処理を施し、下ぐすり施釉層の焼成バテ現象を観察して焼成熱負荷への耐久性を検討した。得られた結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
実施例3
上記下ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉30質量%(外割)、表4に記載する添加割合(外割)の直径12ミクロン、長さ700ミクロン、長さ/直径の形状比58のシリカ繊維または直径3ミクロン、長さ300ミクロン、長さ/直径の形状比100のアルミナ繊維、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。
焼成は850℃で25分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、上ぐすり用グラスライニング組成物を施釉せずに、850℃×120分間の熱処理を施し、下ぐすり施釉層の焼成バテ現象を観察して焼成熱負荷への耐久性を検討した。得られた結果を表4に示す。
【0068】
【表4】

【0069】
実施例4
上記下ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉30質量%(外割)、表5に記載する添加割合(外割)の直径1ミクロン、長さ700ミクロン、長さ/直径の形状比700の白金繊維または直径0.8ミクロン、長さ500ミクロン、長さ/直径の形状比625の金繊維、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。
焼成は850℃で25分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、上ぐすり用グラスライニング組成物を施釉せずに、850℃×120分間の熱処理を施し、下ぐすり施釉層の焼成バテ現象を観察して焼成熱負荷への耐久性を検討した。得られた結果を表5に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
実施例5
上記下ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉30質量%(外割)、表6に記載する添加割合の粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の金粉、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)白金粉または粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の銀粉、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。
焼成は850℃で25分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、上ぐすり用グラスライニング組成物を施釉せずに、850℃×120分間の熱処理を施し、下ぐすり施釉層の焼成バテ現象を観察して焼成熱負荷への耐久性を検討した。得られた結果を表6に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
実施例6
上記下ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉60質量%(外割)、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の金粉5質量%(外割)、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように施釉した。なお、焼成は850℃で25分間行った。
次に、上記上ぐすり用フリット100質量%に、表7に記載する添加割合の粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、上記下ぐすり施釉層上に焼成厚みで0.4mmとなるように施釉し、下ぐすり施釉層と上ぐすり施釉層(グラスライニング層)の合計厚みが0.65mmのテストピースを得た。
焼成は800℃で35分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、800℃×120分間の熱処理を施すことによりグラスライニング層を評価した。評価は、炭化珪素刃の高速カッターで、テストピースを垂直に切断し、その切断面の泡構造をキーエンス社製デジタルマイクロスコープで観察したものである。得られた結果を表7に示す。
【0074】
【表7】

【0075】
表7中、外観観察において、×は、表面に凹凸が発生、△は、表面に凹凸が少し発生、○は、表面平滑をそれぞれ示す。
また、総合評価において、×は、切断面に直径300ミクロン以上の気泡発生、△は、切断面に直径150〜300ミクロンの気泡発生、□は、切断面に75〜150ミクロンの気泡発生、○は、異状なし(切断面に直径75ミクロン未満の気泡発生)をそれぞれ示す。
【0076】
実施例7
実施例6と同様の下ぐすり用グラスライニング組成物を使用して厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように下ぐすりを施釉した。なお、焼成は850℃で25分間行った。
次に、上記上ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉5質量%(外割)、表8に記載する添加割合(外割)の直径12ミクロン、長さ700ミクロン、長さ/直径の形状比58のシリカ繊維、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%及び水を添加してスリップを作成し、上記下ぐすり施釉層上に焼成厚みで0.4mmとなるように施釉し、下ぐすり施釉層と上ぐすり施釉層(グラスライニング層)の合計厚みが0.65mmのテストピースを得た。
焼成は800℃で35分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、800℃×120分間の熱処理を施すことによりグラスライニング層を評価した。評価は、実施例6と同様に観察したものである。得られた結果を表8に示す。
【0077】
【表8】

【0078】
実施例8
実施例6と同様の下ぐすり用グラスライニング組成物を使用して厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように下ぐすりを施釉した。なお、焼成は850℃で25分間行った。
次に、上記上ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉5質量%(外割)、表9に記載する添加割合(外割)の直径1ミクロン、長さ700ミクロン、長さ/直径の形状比700の白金繊維または直径0.8ミクロン、長さ500ミクロン、長さ/直径の形状比625の金繊維、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、上記下ぐすり施釉層上に焼成厚みで0.4mmとなるように施釉し、下ぐすり施釉層と上ぐすり施釉層(グラスライニング層)の合計厚みが0.65mmのテストピースを得た。
焼成は800℃で35分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、800℃×120分間の熱処理を施すことによりグラスライニング層を評価した。評価は、実施例6と同様に観察したものである。得られた結果を表9に示す。
【0079】
【表9】

【0080】
実施例9
実施例6と同様の下ぐすり用グラスライニング組成物を使用して厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に焼成厚みで0.25mmとなるように下ぐすりを施釉した。なお、焼成は850℃で25分間行った。
次に、上記上ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉5質量%(外割)、表10に記載する添加割合(外割)の粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の金粉または粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の銀粉、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、上記下ぐすり施釉層上に焼成厚みで0.4mmとなるように施釉し、下ぐすり施釉層と上ぐすり施釉層(グラスライニング層)の合計厚みが0.65mmのテストピースを得た。
焼成は800℃で35分間行い、焼成後の外観を観察した。その後、800℃×120分間の熱処理を施すことによりグラスライニング層を評価した。評価は、実施例6と同様に観察したものである。得られた結果を表10に示す。
【0081】
【表10】

【0082】
実施例10
実施例6と同様の下ぐすり用グラスライニング組成物を使用して厚さ4.5mm、100mm角の鉄素地に下ぐすりを施釉した。なお、焼成は850℃で25分間行った。
次に、上記上ぐすり用フリット100質量%に、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の珪石粉5質量%(外割)、粒径44ミクロン以下(325メッシュ以下)の金粉5質量%(外割)、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%(外割)及び水を添加してスリップを作成し、上記下ぐすり施釉層上に上ぐすりを施釉してテストピースを得た。なお、焼成は800℃で35分間行った。
なお、慣用グラスライニングは、下ぐすりとして上記下ぐすり用フリット100質量%に、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、亜硝酸ソーダ0.3質量%(外割)及び水を添加してスリップとしてものを使用し、上ぐすりとして上記上ぐすり用フリット100質量%に、粘土2質量%(外割)、CMC0.05質量%(外割)、塩化バリウム0.2質量%(外割)及び水を添加してスリップとしたものを使用した。
次に、得られたテストピースを、図1に示すような構成にて600Wのヒーター(1)上に、鉄素地(2)及びグラスライニング層(3)から構成されるテストピースが、鉄素地(2)がヒーターと接するように配置し、その上に11℃の水100mlが入った1リットルパイレックス(登録商標)製のガラスビーカー(4)を載置し、ヒーター(1)により加熱してガラスビーカー(4)中の水の温度を温度計(5)にて監視して100℃に到達するまでの時間を測定した。得られた結果を表11に記載する。
【0083】
【表11】

【0084】
本発明品の下ぐすり用グラスライニング組成物及び上ぐすり用グラスライニング組成物により構成されたテストピースは、施釉層の厚さを薄くすることができ且つ金粉を配合しているため良好な熱伝導性を有することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の下ぐすり用グラスライニング組成物並びに上ぐすり用グラスライニング組成物は、薄いグラスライニング層を施釉することができるため、高い熱伝導効率を要求される部位のグラスライニングとして使用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 ヒーター、2 鉄素地、 3 グラスライニング層、4 ガラスビーカー、5 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)SiO+TiO+ZrO:41〜72質量%
ただし、
SiO:41〜72質量%
TiO:0〜10質量%
ZrO:0〜10質量%
なお、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):1〜7質量%
ただし、
CaO:1〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である;
(D)B+Al:1〜18質量%
ただし、
:1〜18質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である;
の組成を有するフリット、及び珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で1〜20質量%含有することを特徴とする上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項2】
フリットが更に成分(E)を含有する、請求項1記載の上ぐすり用グラスライニング組成物:
(E)CoO+NiO+MnO:0〜6質量%
ただし、
CoO:0〜6質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である
【請求項3】
無機質耐火性粉体の含有量は、フリット100質量%に対し外割で3〜10質量%の範囲内である、請求項1または2記載の上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項4】
無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロン以下である、請求項1ないし3のいずれか1項記載の上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項5】
更に、直径0.2〜20ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比30以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有する、請求項1ないし4のいずれか1項記載の上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項6】
更に、直径0.1〜2ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比50以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択される1種または2種の貴金属繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有する、請求項1ないし5のいずれか1項記載の上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項7】
更に、直径44ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末をフリット100質量%に対し外割で1〜10質量%含有する、請求項1ないし6のいずれか1項記載の上ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項8】
(A)SiO+TiO+ZrO:41〜72質量%
ただし、
SiO:41〜72質量%
TiO:0〜10質量%
ZrO:0〜10質量%
なお、成分(A)についての質量%表示は、SiO換算量である;
(B)RO(RはNa、KまたはLiを表す):8〜22質量%
ただし、
NaO:8〜22質量%
O:0〜16質量%
LiO:0〜10質量%
なお、成分(B)についての質量%表示は、NaO換算量である;
(C)R’O(R’はCa、Ba、ZnまたはMgを表す):1〜7質量%
ただし、
CaO:1〜7質量%
BaO:0〜6質量%
ZnO:0〜6質量%
MgO:0〜5質量%
なお、成分(C)についての質量%表示は、CaO換算量である;
(D)B+Al:1〜18質量%
ただし、
:1〜18質量%
Al:0〜6質量%
なお、成分(D)についての質量%表示は、B換算量である;
の組成を有するフリット、及び珪石、アルミナ及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種または2種以上の無機質耐火性粉体をフリット100質量%に対して外割で20〜120質量%含有することを特徴とする下ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項9】
フリットが更に成分(E)を含有する、請求項8記載の下ぐすり用グラスライニング組成物:
(E)CoO+NiO+MnO:0〜6質量%
ただし、
CoO:0〜6質量%
NiO:0〜5質量%
MnO:0〜5質量%
なお、成分(E)についての質量%表示は、CoO換算量である
【請求項10】
無機質耐火性粉体の含有量は、フリット100質量%に対し外割で40〜100質量%の範囲内である、請求項8または9記載の下ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項11】
無機質耐火性粉体の粒径が149ミクロン以下である、請求項8ないし10のいずれか1項記載の下ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項12】
更に、直径0.2〜20ミクロン、長さ6〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比30以上のシリカ繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される1種または2種の無機繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有する、請求項8ないし11のいずれか1項記載の下ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項13】
更に、直径0.1〜2ミクロン、長さ50〜1000ミクロン、長さ/直径の形状比50以上の白金繊維及び金繊維からなる群から選択される1種または2種の貴金属繊維をフリット100質量%に対し外割で0.1〜5質量%含有する、請求項8ないし12のいずれか1項記載の下ぐすり用グラスライニング組成物。
【請求項14】
更に、直径44ミクロン以下の金、白金及び銀からなる群から選択される1種または2種以上の貴金属粉末をフリット100質量%に対し外割で1〜20質量%含有する、請求項8ないし13のいずれか1項記載の下ぐすり用グラスライニング組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−195640(P2010−195640A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43835(P2009−43835)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000209773)池袋琺瑯工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】