説明

グラビア印刷版

【課題】 従来のグラビア印刷の問題であったスクリーン線起因のギザつきに加えて、ドクター掻き終り側の図形の輪郭部で発生する滲みによって輪郭が波打ち形状となることを解消するグラビア印刷版を提供することを目的とする。
【解決手段】 ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝近傍部の単位面積あたりのセルおよび溝の容積を通常部より少なく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は文字や直線、曲線パターンなどの階調のないベタ図形を印刷するグラビア印刷版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なグラビア印刷では版胴に形成した網点状のセル群で図形を表現するため、図形の輪郭部分も網点形状で図形が形成され、輪郭に網点のスクリーン線に対応したギザつきが発生し意匠性が低下するという問題があった。
従来は、輪郭のギザつきを解消するべく、凹版印刷にて用いられている方式と同様の手法として〔実用新案 平2−13154〕、〔特開2003−300299〕、〔特許第3374439号〕に示すような図形の輪郭部に網点を設けない手法が提案されている。
しかし、提案されている手法では、図形の印刷方向後方輪郭端部(ドクタでインキを掻き取る掻き終り側)にて、80m/min程度以下の低速印刷時に顕著なインキの滲みが発生する場合があり、スクリーン線に起因するギザつきは解消しているもののインクの滲みにより波打った輪郭となってしまい対策としては不充分であった。(図1参照)
【0003】
【特許文献1】実用新案公報 平2−13154
【特許文献2】特開2003−300299
【特許文献3】特許第3374439号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠点であったスクリーン線起因のギザつきに加えて、ドクター掻き終り側の図形の輪郭部で発生する滲みによって輪郭が波打ち形状となることを解消するグラビア印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のグラビア印刷版の請求項1に係る発明は、ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝近傍部の単位面積あたりのセルおよび溝の容積を通常部より少なく設定したことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝近傍部の単位面積あたりのセルの容積を通常部より少なく設定したことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る発明は、ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝内側に輪郭に沿う形状の複数本の溝を設け、前記複数本の溝の各々の単位長さあたりの容積が輪郭端部に向かって徐々に少なくなる様に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、ベタ図形の外周輪郭端部を連続した溝にすることでスクリーン線起因のギザつきを防止し、さらに、ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の単位面積あたりのセルおよび溝の容積を通常部より少なく設定しているためインク滲みが図形の外側に及ばず、滲み起因の波打ち形状が解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して本発明を説明する。
図2は本発明のグラビア印刷版の設計方法の一例を説明する図で、ベタ図形1の外周輪郭部を印刷方向を考慮して領域設定した例を示す。ベタ図形1の外周輪郭部は印刷方向前方が溝A8、印刷方向後方が溝C10で囲まれ通常セル部7のセルが輪郭とならない様に配置される。セル部または溝B9は印刷方向後方に滲みが発生しない様に単位面積あたりのセルおよび溝の容積を通常セル部7より少なく設定する。セル部または溝B9を設定する場所を印刷方向と輪郭線のなす角度の鋭角側が45度以上の部分とすればほとんどの場合滲みを防止できるが、印刷速度、印圧、被印刷物のインク吸収特性、インク粘度、セル容積など滲みに関係する条件の組み合わせによっては対象とする輪郭線の角度や設定領域の巾などを加減することができる。
【0010】
図3および図4は本発明のグラビア印刷版の第1の形態を説明する断面図と平面図である。単位面積あたりのセルの容積を少なく設定するセル部9を通常部7のセルピッチと開口面積を同一にし、版深(セルや溝の深さ)を浅く設定した例である。単位面積あたりのセルの容積はセルの開口面積、版深、ピッチで決定されるから、それらの何れか、または組み合わせでも同様な効果を得るように設定することができる。ドクター13で掻き終わる端部の溝10はセル部9の最外周セルを連結する位置に配置されているが、セルと離間して配置されてもよい。
【0011】
図5および図6は本発明のグラビア印刷版の第2の形態を説明する断面図と平面図である。単位面積あたりの溝の容積を少なく設定する溝B9の溝は溝C10に沿う形状で複数本配置され、版深を通常セル部7と同一として溝巾を輪郭端部に向かって徐々に狭くなる様設定した例である。この場合も第1の形態と同様に溝のピッチ、版深、巾の組み合わせで上記以外の設定をしてもよい。組み合わせの方法は、グラビア印刷版の加工装置や図形データーの処理装置の適性を考慮して定めればよい。
【実施例】
【0012】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
通常セル部7は、スクリーン線数175(line/inch)、版深20μmとする。ただし、この線数、版深である必要はなく、スクリーン線数80〜350(line/inch)程度でも実施可能である。
溝A8は、印刷方向前方側の図形輪郭部で、溝幅は50μm以下とするが、20μm程度が望ましい。版深は通常セル部7と同じとするが浅くしてもよい。
溝C10は、印刷方向後方側の図形輪郭部で、溝幅は50μm以下とするが、20μm程度が望ましい。版深は通常セル部7の半分程度とする。
セル部9は、溝C10の領域から画像内側へ300μm程度の領域とする。この領域のセル体積を通常セル部7の50〜80%程度にする。
印刷方向の図形の巾が400μm程度以下の寸法で上記領域が重なる場合には、版胴を設計する際の優先順位として、溝C10>溝A8>セル部9>通常セル部7の順で領域設定する。
以上説明したグラビア印刷版を用いて一般的な条件、材料で印刷し評価した結果、従来の版でみられたギザつきや滲みによる輪郭の波打は発生せず効果が確認できた。
【0013】
(実施例2)
通常セル部7、溝A8、溝C10は実施例1と同一条件とする。
溝B部9は、溝C10の領域から画像内側へ200μm程度の領域とする。この領域の最も外側に20μm程度の溝を設け、図形輪郭に平行に順次10μm程度ずつ溝幅を拡げる。版深は通常セル部7と同一または浅くする。
印刷方向の図形の巾が300μm程度以下の寸法で上記領域が重なる場合には、版胴を設計する際の優先順位として、溝C10>溝A8>溝B部9>通常セル部7の順で領域設定する。
以上のグラビア印刷版を用いて一般的な条件、材料で印刷し評価した結果、実施例1と同様に従来の版でみられたギザつきや滲みによる輪郭の波打は発生せず効果が確認できた。
この実施例2の方法では実施例1と比較して複雑な手法を用いる必要がなく、 通常の腐食方式を用いて容易に版を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】滲みが発生した輪郭形状の例
【図2】本発明のグラビア印刷版の設計方法の一例を説明する図
【図3】本発明のグラビア印刷版の第1の形態を説明する断面図
【図4】本発明のグラビア印刷版の第1の形態を説明する平面図
【図5】本発明のグラビア印刷版の第2の形態を説明する断面図
【図6】本発明のグラビア印刷版の第2の形態を説明する平面図
【符号の説明】
【0015】
1 図形
2 印刷方向
3 ウェブ
4 ドクター掻き始め側
5 ドクター掻き終わり側
6 滲み
7 通常セル部
8 溝A
9 セル部または溝B部
10 溝C
11 版胴回転方向
12 ドクター掻き方向
13 ドクター
14 版


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝近傍部の単位面積あたりのセルおよび溝の容積を通常部より少なく設定したことを特徴とするグラビア印刷版。
【請求項2】
ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭端部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝近傍部の単位面積あたりのセルの容積を通常部より少なく設定したことを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷版。
【請求項3】
ベタ図形を印刷するグラビア印刷版において、印刷版上の印刷するベタ図形の外周輪郭部に連続した溝を設けるとともに、前記ベタ図形の印刷方向後方輪郭端部の、前記溝内側に輪郭に沿う形状の複数本の溝を設け、前記複数本の溝の各々の単位長さあたりの容積が輪郭端部に向かって徐々に少なくなる様に設定したことを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷版。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120299(P2010−120299A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296896(P2008−296896)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】