説明

グラファイトナノコンポジット

グラファイトナノ粒子(好ましくはグラフェンナノ粒子)を含むエラストマー組成物およびその製造方法。こうした組成物はタイヤのインナーチューブおよびタイヤのインナーライナーに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはタイヤのインナーライナーまたはインナーチューブなど空気バリアとして使用される、エラストマーおよびグラファイトのナノ粒子を含むエラストマー組成物と、それにより製造されるタイヤのインナーライナーおよびインナーチューブとに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの耐熱性および空気保持性の向上が引き続き求められている。向上したエラストマー材料を使用すれば、適度なタイヤ膨張がより長い時間維持されることで車の安全性および性能を高めることができるうえ、重量の低下により燃料経済性を向上させることも可能である。しかしながら、タイヤおよびインナーライナー業界の継続的な問題は、インナーライナーなどの空気バリアの加工性をタイヤ自体の空気保持性および耐久性を低下させずに向上させ得ることにある。
【0003】
ブロモブチルおよびクロロブチルゴムは典型的にはチューブレスタイヤの空気保持性のために使用される。米国特許第5,162,445号および同第5,698,640号に開示されているような臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)(BIMSまたはBIMSM:brominated poly(isobutylene−co−p−methylstyrene))は、特に、耐熱性が重要性である場合に使用されてきた。市販のエラストマー配合物の成分に何を選択するかは、所望の特性と分野および最終用途とのバランスによって決まる。たとえば、タイヤ業界では、タイヤ工場の未加工(未硬化)化合物の加工特性と硬化ゴムタイヤコンポジットの使用性能、さらにタイヤの性質、すなわちバイアスタイヤとラジアルタイヤ、さらに利用者とトラックタイヤと航空機タイヤはどれもそれらのバランスについて比較検討しなければならない重要な項目である。
【0004】
製品特性を変えて空気バリア特性を改善する1つの方法は、粘土(ナノクレイまたはオルガノクレイなど)をエラストマーに加えて「ナノコンポジット」を形成することであった。ナノコンポジットは、少なくとも1つの寸法がナノメートルの範囲にある無機粒子を含むポリマー系である(たとえば国際公開第2008/042025号を参照)。ナノコンポジットに使用される無機粒子の一般的な種類は、フィロシリケートである。フィロシリケートは、一般にインターカレートされた形態で提供される一般的なクラスの、いわゆる「ナノ−クレイ」または「粘土」の無機物であり、個々の粘土製品中に粘土のプレートレットまたは薄片が層状に並んでいて、薄片間は通常、隣接するラメラ間に別の化合物または化学種が挿入されることにより維持されている。理想的には、インターカレーションは、粘土表面間の空間または回廊にポリマーが入るナノコンポジット中で行われるべきである。最終的に、層剥離され、ポリマーが個々のナノメートル−サイズの粘土プレートレットと共に十分に分散することが望ましい。粘土が存在すると様々なポリマーブレンドの空気バリア特性が全体として改善されるため、空気透過性が低いナノコンポジット、特にタイヤの製造に使用されるような加硫エラストマーナノコンポジットが求められている。
【0005】
オルガノシリケート、雲母、ハイドロタルサイト、グラファイト炭素などのような板状ナノ充填剤の分散、層剥離および配向の程度は、得られたポリマーナノコンポジットの透過性に強く影響する場合がある。理論的には、ポリマーのバリア特性は、層剥離した高アスペクト比板状充填剤が体積パーセントでごくわずか分散しただけで、プレートレット付近の迂回路の長さに起因して拡散経路の長さが増大しやすくなるため大きく1桁向上する。ニールセン(Nielsen)、ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス(ケミストリー)(Journal of Macromolecular Science(Chemistry))、A1巻、p.929(1967年)には、不透過性で平面配向性を有する板状充填剤によるねじれの増加を明らかにすることでポリマーの透過性の低下を判定する簡便なモデルが開示されている。グーセフ(Gusev)ら、アドバンストマテリアルズ(Advanced Materials)、第l3巻、p.1641(2001年)には、透過性の低下と、板状充填剤の体積分率にアスペクト比を掛けた値とを関連付ける簡便な拡張指数関数が開示されており、これは直接三次元有限要素法による透過性計算により数値的にシミュレートした透過性値とよく相関する。
【0006】
ゴムの調合分野では、耐疲労性、破壊靱性および引張強さを得るためカーボンブラックおよびシリカなどの小型のサブミクロン充填剤が使用される。ミクロンを超える充填剤粒子は、応力を集中させ、欠陥を生じさせるように作用する傾向がある。このため、透過性を低下させるためにエラストマーに加えるのは板状ナノ充填剤が望ましい。アスペクト比が透過性低下に及ぼす効果を最大化するには、一般にインターカレートされた積層プレートレットの形で供給されるプレートレットの層剥離および分散の程度を最大化することが有用である。しかしながら、イソブチレンポリマーの場合、板状ナノ充填剤の分散および層剥離には、エントロピーペナルティーを克服するため十分かつ好ましいエンタルピーの寄与が必要になる。このため、粘土などのイオン性ナノ充填剤を一般に不活性で無極性の炭化水素エラストマーに分散させることは非常に困難であることが実際に立証されている。従来技術は、粘土粒子の変性、ゴム性ポリマーの変性、分散助剤の使用、および様々なブレンド法の使用により、分散の改善を試みてきたが、あまり成果を収めていない。
【0007】
BIMSMなどの飽和炭化水素ポリマーは、その「不活性」、他の大部分の材料との低反応性および不相溶性、さらに他の大部分の材料に付着させたり、または他の大部分の材料と併用したりすることの難しさのため、多くの領域でその使用が限られている。エラストマーの化学修飾、ブレンド成分の変性、および他の相溶化ブレンド成分の使用が試みられてきた。米国特許第5,162,445号には、不飽和コモノマーおよび/またはイソブチレンとの反応性官能基を持つコモノマーの共重合によりポリマーのブレンド相溶性またはブレンド共硬化性を改善する方法が開示されている。米国特許第5,548,029号には、飽和および不飽和エラストマーのブレンドを相溶化させるイソブチレン−p−メチルスチレンコポリマーのグラフトコポリマーが開示されている。
【0008】
米国特許出願公開第2006/0229404号には、剥離グラファイトを含むエラストマーの組成物の製造方法が開示されている。この組成物には、ジエンモノマーが10phr以上の剥離グラファイトの存在下で重合されているため、グラファイトがエラストマーをインターカレートしている。
【0009】
米国特許第6,548,585号には、グラファイト、リン酸ジルコニウム、カルコゲナイド、タルク、カオリナイト、ベノトナイト、モンモリロナイト、雲母、クロライトなどのような無機層状化合物を含む、BIMSMなどの臭素化コポリマーゴムのインナーチューブ組成物で製造された冷媒ホースが開示されている。
【0010】
こうしたナノスケール材料が存在すると、粘度が増加する傾向があるため、エラストマー組成物が加工しにくくなる。こうした問題に対処するため、エラストマー組成物にナフテン樹脂、パラフィン系樹脂、および脂肪族樹脂などの加工助剤を加えてもよい。たとえば、米国特許第4,279,284号を参照されたい。しかしながら、油および樹脂の存在により加工性を改善すると、特に望ましくない作用として空気不透過性が低下し、望ましくない色が生じる場合があり、他にも様々な特徴が見られる。
【0011】
溶融ブレンド、溶液ブレンドおよびエマルジョン法によるBIMSM−粘土ナノコンポジットの調製については、2005年7月18日に出願された、W.ウェンらによる、ナノコンポジットを製造するためのスプリットストリーム法(Split−Stream Process for Making Nanocomposites)を発明の名称とする、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/183,361号;および2005年7月18日に出願された、W.ウェンらによる、官能基を有するイソブチレンポリマー−無機粘土ナノコンポジットおよび有機水性エマルジョン法(Functionalized Isobutylene Polymer−Inorganic Clay Nanocomposites and Organic−Aqueous Emulsion Process)を発明の名称とする、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第11/184,000号(2007年1月18日に米国特許出願公開第2007/0015853号として公開された)に開示されている。
【0012】
このように、タイヤ、空気バリアに有用なエラストマー組成物の加工性の改善が依然として求められており、とりわけ、こうした組成物の空気不透過性を維持または改善しながらの空気保持性が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
0.1〜20phrのグラファイトナノ粒子(好ましくはグラフェンナノ粒子);
少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む1〜99wt%の少なくとも1種のエラストマー成分;および
10〜200phrのグラファイトではない少なくとも1種の充填剤
を含むエラストマー組成物に関する。
【0014】
優れた空気保持特性および優れた加工性を持つエラストマー組成物を提供し、その製造方法も提供する。少なくともある特定の実施形態では、エラストマー組成物は、グラフェンの1種または複数種のナノ粒子を含んでいてもよい。組成物は、少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む少なくとも1種のエラストマー成分、および任意に少なくとも1種の充填剤をさらに含んでもいてもよい。
【0015】
少なくとも1つの他の特定の実施形態では、エラストマー組成物は、グラフェンを含む1種または複数種のナノ粒子、ポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)から本質的になる少なくとも1種のエラストマー成分、および少なくとも1種の充填剤を含んでもいてもよい。
【0016】
少なくともある特定の実施形態では、本方法は、グラフェンを含む1種または複数種のナノ粒子を、少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む少なくとも1種のエラストマー成分、および少なくとも1種の充填剤に混合することを含んでもよく、混合ステップはエラストマー中にナノ粒子を分散させるのに十分な速度で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】記載した1つまたは複数の実施形態によるエラストマーナノコンポジットの酸素透過率とグラフェン量をグラフに示す。
【図2】記載した1つまたは複数の実施形態によるアミノ化エラストマーナノコンポジットの酸素透過率とグラフェン量をグラフに示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用する周期表族の新しい番号の付け方は、ケミカルアンドエンジニアリングニュース(CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS)、第63巻(5)、p.27(1985年)に記載されたものを使用する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」とは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマーなどの意味で使用し得る。同様に、コポリマーとは、任意に他のモノマーと共に少なくとも2種のモノマーを含むポリマーをいい得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、ポリマーを、モノマーを含むものとしていう場合、そのモノマーは、モノマーの重合体またはモノマーの誘導体のポリマー中に存在する。同様に、触媒成分を、その成分の中性の安定な形態を含むものとして記載する場合、その成分のイオン形態はモノマーと反応してポリマーを生成する形態であることを当業者ならばよく理解するであろう。
【0021】
本明細書で使用する場合、「エラストマー」または「エラストマー組成物」とは、ASTM D 1566の定義に合致した任意のポリマーまたはポリマーの組成物(ポリマーのブレンドなど)をいう。エラストマーは、ポリマーの溶融混合および/または反応器ブレンドなどポリマーの混合ブレンドを含む。この用語は、「ゴム」という用語と同義で使われる場合がある。
【0022】
本明細書で使用する場合、「phr」は「ゴム100部に対する部数」であり、エラストマー(単数または複数)またはゴム(単数または複数)100重量部を基準として、主要なエラストマー成分に対して組成物の各成分を測定する、当該技術分野において一般的な単位である。
【0023】
本明細書で使用する場合、「イソブチレンベースのエラストマー」または「イソブチレンベースのポリマー」または「イソブチレンベースのゴム」とは、イソブチレンを少なくとも70モルパーセント含むエラストマーまたはポリマーをいう。
【0024】
本明細書で使用する場合、「イソオレフィン」とは、炭素上に2つの置換基を持つ少なくとも1種のオレフィン炭素を有する任意のオレフィンモノマーをいう。
【0025】
本明細書で使用する場合、「マルチオレフィン」とは、2つ以上の二重結合を持つ任意のモノマーをいい、たとえば、マルチオレフィンは、イソプレンなどの共役ジエンのような2つの共役二重結合を含む任意のモノマーであってもよい。
【0026】
本明細書で使用する場合、「ナノコンポジット」または「ナノコンポジット組成物」とは、ポリマーマトリックス中に少なくとも1つの寸法がナノメートル範囲の無機粒子を含むポリマー系をいう。
【0027】
本明細書で使用する場合、「インターカレーション」とは、材料(無機もしくは有機分子またはイオン、オリゴマーまたはポリマーなど)がプレートレット充填剤の各層間に存在する組成物の状態をいう。当該業界および学界で知られているように、インターカレーションは、当初のプレートレット充填剤と比較した場合にX線ラインの検出における変化および/または減衰としてある程度現れる場合があり、当初のミネラルよりもバーミキュライト層の間隔が大きくなっていることが示唆される。
【0028】
本明細書で使用する場合、インターカレートした粒子中において対向するプレートレット表面間の「重複配列」とは、プレートレット間の対向する表面のインターカラントの分子尾部が単一または共通の層をなして重なり合っているか、または絡み合っている配置をいい、これに対し「2層配列」とは、程度の差はあるものの離れた層内でインターカラントの尾部が一般に縦につながる配置をいう。重複配列は一般にプレートレットの間隔がより密であることを示す一方、2層配列は面間隔がより大きくなる。
【0029】
本明細書で使用する場合、「層剥離」とは、当初の無機粒子の各層が分離するため、ポリマーが分離した各粒子を取り囲むようになるか、または取り囲んでいることをいう。実施形態の1つでは、プレートレットが不規則な間隔で配置されるように各プレートレット間に十分なポリマーまたは他の材料が存在する。たとえば、層剥離またはインターカレーションの存在は、層状プレートレットの不規則な間隔または間隔の増大のためX線ラインが示されないか、または面間隔の拡大を示すプロットによりある程度示唆される場合がある。しかしながら、当該業界および学界で知られているように、透過性試験、電子顕微鏡観察、原子間力顕微鏡観察など層剥離の結果を示唆する他の指標が有用な場合もある。本発明およびその特許請求の範囲において、層剥離は、100nm厚のサンプルについて透過型電子顕微鏡(TEM:transmission electron microscopy)により測定される。
【0030】
「アスペクト比」という用語は、ナノ充填剤の個々の薄片もしくは凝集物または薄片の重なりの厚さに対する薄片またはプレートレットのより大きな寸法の比を意味すると理解される。個々の薄片の厚さは、結晶解析法により測定することができるが、薄片のより大きな寸法は、透過型電子顕微鏡(TEM)による解析により測定されるのが一般的であり、どちらも当該技術分野において公知である。
【0031】
「平均アスペクト比」という用語は、他に記載がない限り、体積平均アスペクト比、すなわち、アスペクト比分布の三次モーメントをいう。
【0032】
本明細書で使用する場合、「溶媒」とは、別の物質を溶解できる任意の物質をいう。溶媒という用語を使用する場合、記載がない限り、少なくとも1種の溶媒または2種以上の溶媒をいう場合がある。ある種の実施形態では、溶媒は極性であり、他の実施形態では、溶媒は非極性である。
【0033】
本明細書で使用する場合、「溶液」とは、1種または複数種の物質(溶媒)中で1種または複数種の物質(溶質)が分子レベルまたはイオンレベルで均一に分散した混合物をいう。たとえば、溶液プロセスとは、エラストマーおよび変性層状充填剤がどちらも同じ有機溶媒または溶媒混合物中にとどまる混合プロセスをいう。
【0034】
本明細書で使用する場合、「懸濁」とは、固体、液体または気体中に分散した固体からなる系をいい、通常分散した固体はコロイドサイズよりも大きい粒子である。
【0035】
本明細書で使用する場合、「エマルジョン」とは、不混和液中に乳化剤を使用してあるいは使用せずに分散した液体または液体懸濁液からなる系をいい、通常液滴はコロイドサイズよりも大きい。
【0036】
本明細書で使用する場合、「炭化水素」とは、主として水素および炭素原子を含む分子または分子セグメントをいう。いくつかの実施形態では、炭化水素はさらに、以下に詳述するように炭化水素のハロゲン化型およびヘテロ原子含有型を含む。
【0037】
本明細書で使用する場合、「極性基」とは、ライナスポーリング(Linus Pauling)の電気陰性度の尺度により、結合している原子の電気陰性度の差が0.3よりも大きく1.7未満である、非対称に配置された極性結合を持つ原子の集団をいう。極性基では、ナノ充填剤の層間にあるカチオンとのカチオン交換を促進する電荷分離が起こるイオン性集団と異なり、一般に電荷分離が起こらない。極性基は、荷電したナノ充填剤表面と相互作用したり、あるいはナノ充填剤表面に(化学的、イオン的または物理的に)結合したインターカレートと反応したりできるが、通常分散助剤として働くものであり、一般にインターカレートとして働かない。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明はさらに:
1)0.1〜20phrのグラファイトナノ粒子(好ましくはグラフェンナノ粒子);
2)少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む、1〜99wt%の少なくとも1種のエラストマー成分;および
3)グラファイトではない10〜200phrの少なくとも1種の充填剤;
4)任意に、0〜49wt%の熱可塑性樹脂(組成物の重量に対して);
5)任意に、10〜200phrの充填剤;
6)任意に、1〜70phrのプロセス油;および
7)任意に、0.2〜15phrの硬化剤(cure agent)または促進剤
を含むエラストマー組成物(好ましくは空気バリア、好ましくはタイヤのインナーライナー)に関する。
【0039】
エラストマー成分
エラストマー成分は、少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つ1種または複数種のランダムコポリマーであってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。エラストマー成分は、少なくとも1種のイソブチレン誘導単位および少なくとも1種の他の重合可能な単位を持つエラストマーであってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。イソブチレンベースのコポリマーは、ハロゲン化されていても、あるいはされていなくてもよい。
【0040】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)、ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)、星型分岐ブチルゴム、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ポリイソブチレン、またはこれらの混合物であってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、ブロモブチルゴムおよびまたはクロロブチルゴムであってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。
【0041】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、ブチルゴムまたは分岐ブチルゴム、特にそのハロゲン化型を含む。有用なエラストマーは、オレフィンまたはイソオレフィンおよびマルチオレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、またはマルチオレフィンのホモポリマーを含んでいてもよい。これらおよび他の種類のエラストマーも当該技術分野において周知であり、ラバーテクノロジー(Rubber Technology)、p.209−581、(モーリスモートン(Maurice Morton)編、チャップマン・アンド・ホール(Chapman & Hall)、1995年)、ヴァンダービルトラバーハンドブック(The Vanderbilt Rubber Handbook)、p.105−122(ロバート F.オーム(Robert F.Ohm)編、アール・ティー・ヴァンダービルト社(R.T.Vanderbilt Co.,Inc.)、1990年)の中に、ならびにエドワード・クレスギおよびH.C.ワン(H.C.Wang)、カークオスマー工業化学百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)第8巻、p.934−955(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)第4版、1993年)に記載されている。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、天然ゴム、星型分岐ブチルゴム、およびこれらの混合物などの不飽和エラストマーであってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。
【0042】
エラストマー成分は、当該技術分野において公知の任意の好適な手段により製造することができ、本明細書の本発明は、エラストマーの製造の方法により限定されない。たとえば、ブチルゴムは、モノマーの混合物、少なくとも(1)イソブチレンなどC〜C12イソオレフィンモノマー成分と、(2)マルチオレフィン、モノマー成分とを持つモノマーの混合物を反応させることにより調製することができる。イソオレフィンは、全モノマー混合物の70〜99.5wt%;または85〜99.5wt%の範囲とすればよい。マルチオレフィン成分は、モノマー混合物中に30〜0.5wt%;または15〜0.5wt%;または8〜0.5wt%存在すればよい。
【0043】
イソオレフィンは、C〜C12化合物であってもよい。たとえば、イソオレフィンは、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテンであってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンおよびピペリレン、ならびに欧州特許第0279456号および米国特許第5,506,316号および同第5,162,425号に開示されているような他のモノマーなどC〜C14マルチオレフィンであってもよい。
【0044】
スチレンおよびジクロロスチレンなど他の重合可能なモノマーも、ブチルゴムの単独重合または共重合に好適である。記載したブチルゴムポリマーの一実施形態は、92〜99.5wt%のイソブチレンを0.5〜8wt%イソプレンと、またはなお別の実施形態では0.5wt%〜5.0wt%のイソプレンと反応させることで得られる。ブチルゴムおよびその製造方法は、たとえば、米国特許第2,356,128号、同第3,968,076号、同第4,474,924号、同第4,068,051号および同第5,532,312号に詳細に記載されている。
【0045】
望ましいブチルゴムの市販例として、ムーニー粘度が32±3〜51±5(125℃でML 1+8)のポリ(イソブチレン−co−イソプレン)であるEXXON(商標)BUTYLグレードがある。望ましいブチル系ゴムの別の市販例として、分子量粘度平均が0.9±0.15〜2.11±0.23×10g/molのVISTANEX(商標)ポリイソブチレンゴムがある。
【0046】
また、分岐または「星型分岐」ブチルゴムを使用してもよい。こうしたゴムは、たとえば、欧州特許第0678529号、米国特許第5,182,333号および同第5,071,913号に記載されている。1つまたはそれ以上の実施形態では、星型分岐ブチルゴム(「SBB:star−branched butyl rubber」)は、ハロゲン化されているかまたはされてないブチルゴム、およびハロゲン化されているかまたはされてないポリジエンまたはブロックコポリマーの組成物である。好適なポリジエン/ブロックコポリマーまたは分岐剤(以下「ポリジエン」)は、カチオン反応性であってもよく、ブチルまたはハロゲン化ブチルゴムの重合中に存在するか、またはブチルゴムとブレンドしてSBBを形成することもできる。分岐剤またはポリジエンは、好適であればどのような分岐剤でもよく、本発明は、SBBの製造に使用するポリジエンの種類に限定されるものではない。
【0047】
1つまたはそれ以上の実施形態では、SBBは、上記のようなブチルまたはハロゲン化ブチルゴムと、ポリジエン、およびスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM:ethylene−propylene diene rubber)、エチレン−プロピレンゴム(EPM:ethylene−propylene rubber)、スチレン−ブタジエン−スチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを含む群から選択される一部を水素添加したポリジエンのコポリマーとの組成物である。こうしたポリジエンは、モノマーwt%で表すと0.3wt%を超えるか、または0.3〜3wt%、または0.4〜2.7wt%の量で存在する。
【0048】
SBBの市販の実施形態としては、ムーニー粘度(125℃でML 1+8、ASTM D 1646)が34〜44のSB Butyl 4266(エクソンモービルケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)、テキサス州ヒューストン)がある。また、SB Butyl 4266の硬化特性は、以下の通りである:MHが69±6dN・m、MLが11.5±4.5dN・m(ASTM D2084)。
【0049】
エラストマー成分またはその一部はハロゲン化してもよい。好ましいハロゲン化ゴムは、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−メチルスチレンの臭素化コポリマー、イソブチレンおよびパラ−メチルスチレンの臭素化コポリマー、およびこれらの混合物を含む。ハロゲン化ブチルゴムは、上述のブチルゴム生成物のハロゲン化により製造される。ハロゲン化は、任意の手段により行うことができ、本明細書の本発明は、ハロゲン化プロセスにより限定されるものではない。ブチルポリマーなどのポリマーをハロゲン化する方法は、米国特許第2,631,984号、同第3,099,644号、同第4,554,326号、同第4,681,921号、同第4,650,831号、同第4,384,072号、同第4,513,116号および同第5,681,901号に開示されている。1つまたはそれ以上の実施形態では、ブチルゴムを、ヘキサン希釈液中、4〜60℃で臭素(Br)または塩素(Cl)をハロゲン化剤としてハロゲン化する。ハロゲン化ブチルゴムは、ムーニー粘度が20〜70(125℃でML 1+8)、または25〜55である。ハロゲンwt%は、ハロゲン化ブチルゴムの重量に対して0.1〜10wt%、または0.5〜5wt%である。なお別の実施形態では、ハロゲン化ブチルゴムのハロゲンwt%は1〜2.5wt%である。
【0050】
ハロゲン化ブチルゴムの市販の実施形態としては、ブロモブチル 2222(エクソンモービルケミカル社)がある。そのムーニー粘度は27〜37(125℃でML 1+8、ASTM 1646、修正)であり、ブロモブチル 2222の臭素含有量は1.8〜2.2wt%である。また、ブロモブチル 2222の硬化特性は以下の通りである:MHが28〜40dN・m、MLが7〜18dN・mである(ASTM D2084)。ハロゲン化ブチルゴムの別の市販の実施形態はブロモブチル 2255(エクソンモービルケミカル社)である。そのムーニー粘度は41〜51(125℃でML 1+8、ASTM D1646)であり、臭素含有量は1.8〜2.2wt%である。また、ブロモブチル 2255の硬化特性は以下の通りである:MHが34〜48dN・m、MLが11〜21dN・m(ASTM D2084)。
【0051】
記載した1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマーは、分岐または「星型分岐」ハロゲン化ブチルゴムを含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム(「HSBB:halogenated star−branched butyl rubber」)は、ハロゲン化されているかまたはされてないブチルゴムと、ハロゲン化されているかまたはされてないポリジエンまたはブロックコポリマーとの組成物である。ハロゲン化プロセスは、米国特許第4,074,035号;同第5,071,913号;同第5,286,804号;同第5,182,333号;および同第6,228,978号に詳細に記載されている。本発明は、HSBBの形成方法により限定されるものではない。ポリジエン/ブロックコポリマーまたは分岐剤(以下「ポリジエン」)は典型的には、カチオン反応性であり、ブチルまたはハロゲン化ブチルゴムの重合中に存在するか、またはブチルまたはハロゲン化ブチルゴムとブレンドしてHSBBを形成することもできる。分岐剤またはポリジエンは、好適であればどのような分岐剤でもよく、本発明は、HSBBの製造に使用するポリジエンの種類に限定されるものではない。
【0052】
1つまたはそれ以上の実施形態では、HSBBは、上記のようなブチルまたはハロゲン化ブチルゴムと、ポリジエン、およびスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーを含む群から選択される一部を水素添加したポリジエンのコポリマーとの組成物である。こうしたポリジエンは、モノマーwt%で表すと、0.3wt%を超えるか、または0.3〜3wt%、または0.4〜2.7wt%の量で存在する。
【0053】
HSBBの市販の実施形態としては、HSBBのムーニー粘度(125℃でML 1+8、ASTM D1646)が27〜37で、臭素含有量が2.2〜2.6wt%のブロモブチル 6222(エクソンモービルケミカル社)がある。また、ブロモブチル 6222の硬化特性は以下の通りである:MHが24〜38dN・m、MLが6〜16dN・m(ASTM D2084)。
【0054】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、ハロメチルスチレン誘導単位を含むイソオレフィンコポリマーであってもよい。ハロメチルスチレン単位は、オルト−アルキル置換スチレン単位でも、メタ−アルキル置換スチレン単位でも、またはパラ−アルキル置換スチレン単位でもよい。ハロメチルスチレン誘導単位は、パラ−異性体を少なくとも80重量%、一層好ましくは少なくとも90重量%を含むp−ハロメチルスチレンでもよい。「ハロ」基は任意のハロゲンでよいが、望ましくは塩素または臭素である。ハロゲン化エラストマーはさらに、スチレンモノマー単位に存在する少なくとも一部のアルキル置換基がベンジル位ハロゲンまたは以下にさらに記載する他の任意の官能基を含む、官能基を有するインターポリマーを含んでいてもよい。本明細書では、こうしたインターポリマーを「ハロメチルスチレン誘導単位含有イソオレフィンコポリマー」または単に「イソオレフィンコポリマー」という。
【0055】
コポリマーのイソオレフィンはC〜C12化合物であってもよく、その非限定的な例として、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテンなどの化合物がある。また、コポリマーはさらに、1種または複数種のマルチオレフィン誘導単位を含んでいてもよい。マルチオレフィンは、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエンおよびピペリレン、ならびに欧州特許第0279456号および米国特許第5,506,316号および同第5,162,425号に開示されているような他のモノマーなどのC〜C14マルチオレフィンであってもよい。コポリマーを構成し得る望ましいスチレン系モノマー誘導単位は、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン、インデンおよびインデンの誘導体、ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0056】
少なくともある特定の実施形態では、エラストマー成分は、エチレン誘導単位またはC〜Cα−オレフィン誘導単位と、ハロメチルスチレン誘導単位、好ましくは少なくともパラ−異性体を80重量%、一層好ましくは少なくとも90重量%含むp−ハロメチルスチレンとのランダムエラストマーコポリマーであってもよく、さらにスチレンモノマー単位に存在する少なくとも一部のアルキル置換基がベンジル位ハロゲンまたは他の任意の官能基を含む、官能基を有するインターポリマーを含んでいてもよい。好適なインターポリマーは、ポリマー鎖に沿ってランダムに間隔を開けた以下のモノマー単位のいずれかを含んでいてもよい。
【0057】
【化1】

【0058】
式中RおよびRは独立に水素、低級アルキル、好ましくはC〜Cアルキルおよび第一級または第二級アルキルハロゲン化物であり、Xはハロゲン、トリエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウムまたは他の官能基などの官能基である。望ましいハロゲンとして、塩素、臭素またはこれらの組み合わせがある。好ましくはRおよびRは各々水素である。−CRRH基および−CRRX基は、スチレン環のオルト、メタまたはパラ位、好ましくはパラで置換されていてもよい。上記の官能基を有する構造(2)は、インターポリマー構造内にp−置換スチレンとして60モル%以下または0.1〜5mol%存在することができる。なお別の実施形態では、官能基を有する構造(2)の量は0.4〜1mol%である。
【0059】
1つまたはそれ以上の実施形態では、官能基Xは、たとえばカルボン酸;カルボキシ塩;カルボキシエステル、アミドおよびイミド;ヒドロキシ;アルコキシド;フェノキシド;チオラート;チオエーテル;キサンテート;シアン化物;シアナート;アミノおよびこれらの混合物などの他の基でベンジル位ハロゲンを求核置換して組み込むことができる官能基であってもよい。こうした官能基を有するイソモノオレフィンコポリマー、その調製方法、官能基化方法および硬化方法は、米国特許第5,162,445号により詳細に開示されている。
【0060】
こうした官能基を有する材料で最も有用なものは、イソブチレンおよびアルキルスチレンのエラストマーランダムインターポリマーであり、アルキルスチレンは、好ましくはp−メチルスチレンであり、0.5〜20モル%アルキルスチレン、好ましくはp−メチルスチレンを含み、ベンジル環に存在するメチル置換基の最大60モル%は、臭素または塩素原子、好ましくは臭素原子(p−ブロモメチルスチレン)のほか、その酸型またはエステル官能基を有する型を含み、ハロゲン原子はマレイン酸無水物またはアクリル酸もしくはメタクリル酸官能基で置換されている。こうしたインターポリマーは、「ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)」または「臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)」と呼ばれ、EXXPRO(商標)エラストマー(エクソンモービルケミカル社、テキサス州ヒューストン)という名称で市販されている。「ハロゲン化」または「臭素化」という用語の使用は、コポリマーのハロゲン化法に限定されるものではなく、イソブチレン誘導単位、p−メチルスチレン誘導単位およびp−ハロメチルスチレン誘導単位を含み得るコポリマーの説明にも使用されることが理解されよう。
【0061】
こうした官能基を有するポリマーは、好ましくは組成分布が実質的に均一であり、ポリマーの少なくとも95重量%はp−アルキルスチレン含有量がポリマーの平均p−アルキルスチレン含有量の10%以内である。また、一層好ましいポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合、分子量分布(Mw/Mn)が5未満、一層好ましくは2.5未満と狭いこと、好ましい粘度平均分子量が200,000〜最大2,000,000の範囲であること、および好ましい数平均分子量が25,000〜750,000の範囲であることを特徴とする。
【0062】
コポリマーは、ルイス酸触媒を用いてモノマー混合物をスラリー重合し、続いてハロゲンと熱および/または光および/または化学開始剤などのラジカル開始剤との存在下で溶液中でハロゲン化し、好ましくは臭素化し、任意にその後異なる官能基の誘導単位で臭素を求電子置換反応して調製することができる。
【0063】
好ましいハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)は、一般に0.1〜5wt%のブロモメチル基を含む臭素化ポリマーである。なお別の実施形態では、ブロモメチル基の量は、0.2〜2.5wt%である。別の方法で表現すると、好ましいコポリマーは、ポリマーの重量に対して0.05から最大2.5モル%の臭素を、一層好ましくは0.1〜1.25モル%の臭素を含み、ポリマー骨格鎖に実質的にハロゲン環またはハロゲンを含まない。記載した1つまたはそれ以上の実施形態では、インターポリマーは、C〜Cイソモノオレフィン誘導単位と、アルキルスチレン、好ましくはp−メチルスチレン誘導単位、好ましくはp−ハロメチルスチレン誘導単位とのコポリマーであり、p−ハロメチルスチレン単位はインターポリマー内にインターポリマーに対して0.4〜1mol%存在する。1つまたはそれ以上の実施形態では、p−ハロメチルスチレンはp−ブロモメチルスチレンである。ムーニー粘度(1+8、125℃、ASTM D1646、修正)は30〜60ΜUである。
【0064】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマーの成分は、様々な量の1種、2種またはそれ以上の異なるエラストマーを含んでいてもよい。たとえば、記載した組成物の実施形態は、5〜100phrのハロゲン化ブチルゴム、5〜95phrの星型分岐ブチルゴム、5〜95phrのハロゲン化星型分岐ブチルゴム、または5〜95phrのハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)を含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、組成物は、40〜100phrのハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)、および/または40〜100phrのハロゲン化星型分岐ブチルゴム(HSBB)を含む。
【0065】
1種または複数種の好ましい実施形態では、エラストマー成分は、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR:styrene butadiene rubber)、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR:isoprene butadiene rubber)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR:styrene−isoprene−butadiene rubber)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキシドポリマー、星型分岐ブチルゴムおよびハロゲン化星型分岐ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星型分岐ポリイソブチレンゴム、星型分岐臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム;ポリ(イソブチレン−co−アルキルスチレン)、好ましくはイソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンなどのイソブチレン/メチルスチレンコポリマー、およびこれらの混合物であってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のエラストマー組成物は、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキシドポリマー、星型分岐ブチルゴムおよびハロゲン化星型分岐ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星型分岐ポリイソブチレンゴム、星型分岐臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム;イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンなどのイソブチレン/メチルスチレンコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される第2のエラストマー成分をさらに含んでいてもよい。他の実施形態では、本明細書に記載のエラストマー組成物は、10phr未満、好ましくは0phrの第2のエラストマー成分、好ましくは「第2のエラストマー成分」として0phrの上述のエラストマーを有する。
【0067】
少なくともある特定の実施形態では、エラストマー組成物は、天然ゴムを含んでいてもよい。天然ゴムについては、スブラマニアン(Subramanian)がラバーテクノロジーp.179−208(1995年)に詳細に記載している。天然ゴムとしては、SMR CV、SMR 5、SMR 10、SMR 20およびSMR 50ならびにこれらの混合物などマレーシアゴムからなる群から選択されるゴムを挙げることができ、こうした天然ゴムは100℃のムーニー粘度(ML 1+4)が30〜120、一層好ましくは40〜65である。本明細書で言及するムーニー粘度試験は、ASTM D−1646に従う。
【0068】
合成ゴムの一部の市販例として、NATSYN(商標)(グッドイヤーケミカル社(Goodyear Chemical Company))、およびBUDENE(商標)1207またはBR 1207(グッドイヤーケミカル社)が挙げられる。望ましいゴムは、ハイシスポリブタジエン(シス−BR)である。「シスポリブタジエン」または「ハイシスポリブタジエン」は、シス含量が少なくとも95%である1,4−シスポリブタジエンという意味で使用する。ハイシスポリブタジエンの商品例は、組成物BUDENE(商標)1207を使用した。好適なエチレン−プロピレンゴムは、VISTALON(商標)(エクソンモービルケミカル社)として市販されている。
【0069】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー成分は、1種または複数種の半結晶性コポリマー(SCC:semi−crystalline copolymer)を含んでいてもよい。半結晶性コポリマーは、米国特許第6,326,433号に記載されている。一般に、SCCは、エチレンまたはプロピレン誘導単位と4〜16個の炭素原子を持つα−オレフィン誘導単位とのコポリマーであり、1つまたはそれ以上の実施形態では、SCCはエチレン誘導単位と4〜10個の炭素原子を持つα−オレフィン誘導単位とのコポリマーであり、SCCはある程度の結晶化度を持つ。さらなる実施形態では、SCCは、1−ブテン誘導単位と5〜16個の炭素原子を持つ別のα−オレフィン誘導単位とのコポリマーであり、SCCはやはりある程度の結晶化度を持つ。SCCはさらにエチレンとスチレンとのコポリマーであってもよい。
【0070】
1つまたはそれ以上の実施形態では、官能基Xは、トリエチルアミン(TEA:triethylamine)またはトリメチルアミン(TMA:trimethylamine)でベンジル位ハロゲンを求核置換して組み込むことができるハロゲンとトリエチルアンモニウム官能基との組み合わせである。こうした官能基を有する材料の最も有用なものは、0.5〜20モルパーセントのパラ−メチルスチレンを含むイソブチレンとパラ−メチルスチレンとのエラストマーランダムインターポリマーであり、ベンジル環に存在するメチル置換基の最大60モルパーセントが、ハロゲン、たとえば塩素または好ましくは臭素原子(パラ(ブロモメチルスチレン))、およびトリエチルアンモニウムの混合物を含み、任意にエステルおよびエーテルなどの他の官能基を含んでいてもよい。
【0071】
こうした官能基を有するインターポリマーは組成分布が実質的に均一であればよく、エラストマーの少なくとも95重量%はパラ−アルキルスチレン含有量がポリマーの平均パラ−アルキルスチレン含有量の10%以内である。また、望ましいインターポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した場合、分子量分布(Mw/Mn)が5未満、一層好ましくは2.5未満と狭いこと、好ましい粘度平均分子量が200,000〜最大2,000,000の範囲であること、および好ましい数平均分子量が25,000〜750,000の範囲であることを特徴とする。
【0072】
官能基を有するエラストマーは、ルイス酸触媒を用いてモノマー混合物をスラリー重合し、続いてハロゲンと熱および/または光および/または化学開始剤などのラジカル開始剤との存在下で溶液中でハロゲン化し、好ましくは臭素化し、その後トリエチルアンモニウムなどの異なる官能基部分で臭素を求電子置換反応して調製することができる。官能基を有する好ましいエラストマーは一般に、ポリマー内のモノマー誘導単位の全量に対して0.1〜5モルパーセントの官能基を有するメチルスチレン基を含む。別の実施形態では、ブロモメチルおよびTEA−メチル基の全量は0.2〜3.0モルパーセント、なお別の実施形態では0.3〜2.8モルパーセント、なお別の実施形態では0.4〜2.5モルパーセント、なお別の実施形態では0.3〜2.0であり、望ましい範囲は、いずれかの上限といずれかの下限との任意の組み合わせとしてもよい。別の方法で表現すると、好ましいコポリマーはポリマーの重量に対して、臭素およびTEAを合わせて0.2〜10重量パーセント、別の実施形態では臭素およびTEAを合わせて0.4〜7重量パーセント、別の実施形態では0.6〜6重量パーセント含んでいてもよく、ポリマー骨格鎖に実質的にハロゲン環またはハロゲンを含まなくてもよい。TEA−BIMSポリマー内のTEA−メチルとブロモメチルとのモル比は、下限で1:100、1:50、1:20または1:10、上限で1:1、1:2、1:3または1:4までの幅があってもよく、望ましい範囲はいずれかの上限といずれかの下限との任意の組み合わせとしてもよい。
【0073】
好ましい実施形態では、エラストマーは、C〜Cイソオレフィン誘導単位(またはイソモノオレフィン)、パラ−メチルスチレン誘導単位(PMS:para−methylstyrene derived unit)、パラ−(ブロモメチルスチレン)誘導単位(BrPMS:para−(bromomethylstyrene) derived unit)および/またはパラ−(トリエチルアンモニウムメチルスチレン)誘導単位(TEAPMS:para−(triethylammoniummethylstyrene)derived unit)のコポリマーであるか、またはそれを含み、TEAPMS単位はインターポリマー内に、イソオレフィンおよびPMS、BrPMSの各単位の全モル数に対して0.1〜1.0モルパーセント存在し、インターポリマー内にイソオレフィンおよびPMSおよびPMSの各誘導単位の全モル数に対して0.3〜3.0モルパーセント存在し、一実施形態ではポリマーの総重量に対して3〜15重量パーセント存在し、別の実施形態では4重量パーセントから10重量パーセント存在する。
【0074】
上記またはその他の本明細書の1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを最大99wt%含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを30〜99wt%含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを35〜90wt%含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを40〜85wt%含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを40〜80wt%含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種のエラストマーの成分またはエラストマーを40〜60wt%含んでいてもよい。
【0075】
熱可塑性樹脂
エラストマー組成物は、1種または複数種の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。好適な熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン、ナイロンおよび他のポリマーが挙げられる。好適な熱可塑性樹脂は、窒素、酸素、ハロゲン、硫黄、またはハロゲンもしくは酸性基など1種または複数種の芳香族官能基と相互作用できる他の基を含む樹脂であってもよいし、あるいはそれを含んでいてもよい。
【0076】
好適な熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS:acrylonitrile−butadiene−styrene resin)、ポリフェニレンオキシド(PPO:polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(PPS:polyphenylene sulfide)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN:styrene−acrylonitrile resin)、スチレンマレイン酸無水物樹脂(SMA:styrene maleic anhydride resin)、芳香族ポリケトン(PEEK、PEDおよびPEKK)およびこれらの混合物を含む。
【0077】
好適な熱可塑性ポリアミド(ナイロン)として、ポリマー鎖内に繰り返しアミド単位を持つコポリマーおよびターポリマーなどの結晶性または樹脂性の高分子量固体ポリマーを挙げることができる。ポリアミドは、カプロラクタム、ピロリジオン、ラウリルラクタムおよびアミノウンデカン酸ラクタムなどの1種または複数種のεラクタムまたはアミノ酸の重合により、あるいは二塩基酸とジアミンとの縮合により調製することができる。繊維形成ナイロンおよび成形グレードのナイロンはどちらも好適である。こうしたポリアミドの例には、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6、6) ポリヘキサメチレンアゼルアミド(ナイロン−6、9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6、10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン−6、IP)および11−アミノ−ウンデカン酸(ナイロン−11)の縮合生成物がある。満足できるポリアミド(特に軟化点が275℃未満のもの)の他の例は、工業化学百科事典第16巻、p.1−105(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、1968年)、コンサイス・エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド(Concise Encyclopedia of Polymer Science and)、p.748−761(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、1990)、およびエンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス・アンド・テクノロジー第10巻(10 Encyclopedia of Polymer Science and Technology)、p.392−414(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ、1969年)に記載されている。市販されている熱可塑性ポリアミドは、軟化点または融点が好ましくは160〜260℃の線状結晶ポリアミドと一緒に使用すると好都合である。
【0078】
好適な熱可塑性ポリエステルは、無水物の脂肪族または芳香族のポリカルボン酸エステルの1種または混合物とジオールの1種または混合物とのポリマー反応生成物をさらに含んでいてもよい。満足できるポリエステルの例として、ポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンスクシナート)およびポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンアジパート)などのポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンC2〜6アルカンジカルボキシラート;ポリ(シス−1,4−シクロヘキサンジメチレン)オキサラートおよびポリ(シス−1,4−シクロヘキサンジメチレン)スクシナートなどのポリ(シスまたはトランス−1,4−シクロヘキサンジメチレン)アルカンジカルボキシラート、ポリエチレンテレフタラートおよびポリテトラメチレン−テレフタラートなどのポリ(C2〜4アルキレンテレフタラート)、ポリエチレンイソフタラートおよびポリテトラメチレン−イソフタラートなどのポリ(C2〜4アルキレンイソフタラート、および同種の材料が挙げられる。好ましいポリエステルは、ナフタレン酸またはフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、およびポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタラートなどC2〜Cジオールに由来するものである。好ましいポリエステルは、融点が160℃〜260℃の範囲である。
【0079】
使用可能なポリ(フェニレンエーテル)(PPE:poly(phenylene ether))熱可塑性樹脂は、アルキル置換フェノール類の酸化カップリング重合により生成され、市販されている周知の材料である。こうした材料は一般に、ガラス転移温度が190℃〜235℃の範囲の線状の非晶性ポリマーである。こうしたポリマー、その調製方法、およびポリスチレンとの組成物については米国特許第3,383,435号に詳細に記載されている。
【0080】
熱可塑性樹脂としてはさらに、セグメント化ポリ(エーテルco−フタラート)など上述のポリエステルのポリカーボネート類似体;ポリカプロラクトンポリマー;スチレンと50mol%未満のアクリロニトリルとのコポリマー(SAN)およびスチレン、アクリロニトリルおよびブタジエンの樹脂性コポリマー(ABS);ポリフェニルスルホンなどのスルホンポリマー;エチレンとC〜Cα−オレフィンとのコポリマー、およびエチレンとC〜Cα−オレフィンのホモポリマーであり、1つまたはそれ以上の実施形態ではプロピレン誘導単位のホモポリマー、さらに1つまたはそれ以上の実施形態ではエチレン誘導単位とプロピレン誘導単位とのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、および当該技術分野において公知の同様の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0081】
1つまたはそれ以上の実施形態では、本組成物は、動的加硫合金として形成される上述の熱可塑性樹脂(熱可塑性プラスチックまたは熱可塑性ポリマーとも呼ばれる)のいずれかをさらに含んでもよい。本明細書では「動的加硫」という用語は、エンジニアリング樹脂および加硫性エラストマーを高剪断条件下で加硫する加硫プロセスという意味で使用される。動的加硫の結果、加硫性エラストマーは架橋されると同時に、エンジニアリング樹脂マトリックス中に「マイクロゲル」の微粒子として分散される。
【0082】
動的加硫は、エラストマーの硬化温度以上の温度で各成分をロールミル、バンバリー(Banbury)RTMミキサー、連続ミキサー、ニーダー、または、たとえば、2軸スクリュー押出機などの混練押出機のような機器内で混練して行う。動的に硬化された組成物に特有の特徴は、エラストマー成分を十分に硬化できるにもかかわらず、組成物を押出、射出成形、圧縮成形など従来のゴム加工法により加工および再加工することができることである。スクラップまたはバリは、回収して再加工することができる。
【0083】
DVA(dynamically vulcanized alloy)に有用な特に好ましい熱可塑性ポリマーとして、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、ポリイミド、スチレンマレイン酸無水物(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PEKおよびPEKK)、およびこれらの混合物からなる群から選択されるエンジニアリング樹脂が挙げられる。好ましいエンジニアリング樹脂は、ポリアミドである。一層好ましいポリアミドは、ナイロン6およびナイロン11である。好ましくは、エンジニアリング樹脂(類)はポリマーブレンドに対して約10〜98重量パーセント、好ましくは約20〜95重量パーセントの範囲の量で存在すると好適である場合があり、エラストマーは約2〜90重量パーセント、好ましくは約5〜80重量パーセントの範囲の量で存在してもよい。好ましくは、エラストマーは、前記エンジニアリング樹脂に分散した粒子として前記組成物中に存在する。
【0084】
エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を49wt%まで含有していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を0.5〜45wt%含有していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を2〜35wt%含有していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を5〜30wt%含有していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂を10〜25wt%含有していてもよい。
【0085】
グラファイト/グラフェン
エラストマー組成物は、典型的には0.1〜20phrで存在するグラファイト(好ましくはグラフェン)ナノ粒子を含むのが一般的である。本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」という用語は、サイズが100ナノメートル未満(すなわち少なくとも1つの寸法(長さ、幅または厚さ)が100ナノメートル未満)の粒子または分子をいう。あるいは2つの寸法(長さ、幅または厚さ)が100ナノメートル未満であるか、あるいは3つすべての寸法(長さ、幅および厚さ)が100ナノメートル未満である。好ましい実施形態では、ナノ粒子は厚さが100ナノメートル未満であり、長さおよびまたは幅が厚さの少なくとも10倍(好ましくは厚さの20〜500倍、好ましくは30〜500倍)であるシートである。
【0086】
グラファイトは、好ましくは1種または複数種の剥離グラファイト層(膨張化グラファイトとも呼ばれる)の形態である。剥離グラファイト層は、ハマーズ(Hummers)法により製造することができる。(「グラフェンベースの複合材料(Graphene−based composite materials)」、スタンコビッチ、サーシャ(Stankovich,Sasha);ディキン、ドミトリーA.(Dikin,Dmitriy A.);ドメット、ジェフリー H.B.(Dommett,Geoffrey H.B.);コールハース、ケヴィン M.(Kohlhaas,Kevin M.);ジムニー、エリック J.(Zimney,Eric J.);スタック、エリー A.(Stach,Erie A.);ピナー、リチャード D.(Piner,Richard D.);グエン、ソンビン T.(Nguyen,SonBinh T.);ルーオフ、ロドニー S.(Ruoff,Rodney S.);ネイチャー(Nature)、2006年、第442巻、p.282−286)。このやり方で処理したグラファイトは、グラファイトシート上に1つまたは複数のヒドロキシル官能基、エポキシド官能基、カルボニル官能基および/またはカルボキシル官能基を有していてもよい。こうした基を使用すれば、エラストマー骨格上の官能基と反応させることができる。さらに、こうした基を使用して非重合性炭化水素を含む反応物と反応させることにより、シートの親水性を低下させることもできる。有用な反応基の例として、イソシアナート、アミン、カルボン酸、ベンジルハロゲン化物、ヒドロキシルおよび他のものが挙げられる。
【0087】
剥離グラファイト層は、プリンストン大学(Princeton University)のロバート・プリュドム(Robert Prud’homme)が記載した方法により製造することができる(「酸化グラファイトを剥離して得られる機能性単一グラフェンシート(Functionalized Single Graphene Sheets Derived from Splitting Graphite Oxide)」;ハネス C.シュニップ(Hannes C.Schniepp)、ジェルエン・リー(JeLuen Li)、マイケル J.マカリスター(Michael J.McAllister)、ヒロアキ・サイ(Hiroaki SaI)、マーガリータ・エレーラ−アロンソ(Margarita Herrera−Alonso)、ダグラス H.アダムソン(Douglas H.Adamson)、ロバート K.プリュドム(Robert K.Prud’homme)、ロバート・カー(Roberto Car)、、ダッドリー A.サビール(Dudley A.Saville)およびイルハン A.アクサイ(Ilhan A.Aksay)、ザジャーナルオブフィジカルケミストリー(The Journal of Physical Chemistry)−2006年B、第110巻、p.8535−8539;「酸素によるグラファイト材料の切開(Oxygen−Driven Unzipping of Graphitic Materials)」、ジェ−ルエン・リー(Je−Luen Li)、コンスタンチン N.クディン(Konstantin N.Kudin)、マイケル J.マカリスター、ロバート K.プリュドム、イルハン A.アクサイおよびロバート・カー、フィジカルレビューレターズ(Physical Review Letters)2006年、第96巻、17601号)。これは本質的に2段階のプロセスである。第1に、硫酸、硝酸および塩素酸カリウムの酸化液にグラファイトを4日間以上浸して酸化グラファイトに変換する。これによりグラファイトシートに様々な種類の酸素部分(エポキシ、カルボキシルなど)が付加されることで、シート間の間隔が開く。第2のステップでは酸化グラファイトを1050℃まで急速に加熱する。これで大半の酸素部位がC0に変換され、この材料はこのガスの発生により個々のシートに分かれる。これらのシートはなお少量の酸素を含んでおり、波形が非常にはっきりしているため、その後加工しても分かれたままである。シートはポリマーとブレンドすると、数百という効果的なアスペクト比を示す。こうした形状、およびPIB、およびExxpro(商標)エラストマーのような炭化水素ポリマーとの相性の良さから、5部という少量の剥離グラフェンを添加して、透過性を3〜5倍大幅に低減することができる。
【0088】
別の実施形態では、本明細書に有用なグラファイトは膨張化グラファイトである。膨張化グラファイトは典型的には、天然の鱗片状グラファイトを酸浴(硫酸、硝酸および酢酸、これらの組み合わせ、またはクロム酸の組み合わせ、その後濃硫酸)に浸漬して、結晶格子面を引き離すことにより、グラファイトを膨張させることで製造することができる。
【0089】
好ましくは、このナノコンポジットは、0.01〜10.0phrのグラファイト(好ましくはグラフェン)ナノ粒子を含む。1つまたはそれ以上の実施形態では、グラファイト(好ましくはグラフェン)ナノ粒子の量は約0.05phr〜約5.0phrの範囲である。1つまたはそれ以上の実施形態では、グラファイト(好ましくはグラフェン)ナノ粒子の量は約0.1phr〜約5.0phr;約0.5phr〜約5.0phr;約1.0phr〜約5.0phrの範囲である。1つまたはそれ以上の実施形態では、グラファイト(好ましくはグラフェン)ナノ粒子の量は、最低約0.05phr、0.5phrまたは1.2phrから最高約3.5phr、4.5phrまたは5.0phrmの範囲である。
【0090】
他の好ましい実施形態では、グラファイトの形状は針状または板状で、アスペクト比が1.2よりも大きく(好ましくは2よりも大きく、好ましくは3よりも大きく、好ましくは5よりも大きく、好ましくは10よりも大きく、好ましくは2〜20、好ましくは3〜10であり)、この場合、アスペクト比とは粒子の最小寸法(長さ、幅および厚さ)に対する最大寸法の平均の比である。他の実施形態では、グラファイトはアスペクト比が本質的に1(0.9〜1.1)であり;すなわち、針状または球状ではなく本質的に板状である。別の実施形態では、グラファイトを微粉砕する。有用なグラファイトは比表面積が10〜300m/cmであり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、グラファイト(好ましくはグラフェン)は最大50wt%が、典型的には5〜30wt%がβ型で存在する。他の実施形態では、グラファイト(好ましくはグラフェン)はα型で存在し、典型的にはβ型は1wt%未満、好ましくは0wt%である。
【0092】
好ましい実施形態では、膨張可能なグラファイトは以下の特性(膨張前)の1つまたは複数を持つ場合がある:a)粒度が32〜200メッシュ(あるいは粒子直径の中央値が0.1〜500ミクロン(あるいは0.5〜350ミクロン、あるいは1〜100ミクロン))および/またはb)膨張比が最大350cc/gおよび/またはc)pHが2〜11(好ましくは4〜7.5、好ましくは6〜7.5)。膨張可能なグラファイトは特にグラフテックインターナショナル(GRAFTech International)またはアズベリーカーボンズ(Asbury Carbons)、アントラサイトインダストリーズ(Anthracite Industries)から購入することができる。特に有用な膨張可能なグラファイトとしては、GRAFGUARD(商標)膨張可能グラファイトフレーク(Expandable Graphite Flakes)、および米国特許第3,404,061号;米国特許第4,895,713号;米国特許第5,176,863号;米国特許第5,443,894号;米国特許第6,460,310号;米国特許第6,669,919号に記載された膨張可能なグラファイトが挙げられる)。アズベリーカーボンズ膨張化グラファイト(Asbury Carbons Expanded Graphite)のグレード3721、1721、3393、3772、3577、1395、3626、3494、3570および3538も本明細書に有用である。
【0093】
好ましい実施形態では、膨張可能なグラファイトは開始温度(グラファイトが膨張し始める温度)が160℃以上、あるいは200℃以上、あるいは400℃以上、あるいは600℃以上、あるいは750℃以上、あるいは1000℃以上である。好ましくは、膨張可能なグラファイトは600℃での膨張比が少なくとも50:1cc/g、好ましくは少なくとも100:1cc/g、好ましくは少なくとも200:1cc/g、好ましくは少なくとも250:1cc/gである。別の実施形態では、膨張可能なグラファイトは150℃での膨張比が少なくとも50:1cc/g、好ましくは少なくとも100:1cc/g、好ましくは少なくとも200:1cc/g、好ましくは少なくとも250:1cc/gである。グラファイトは他のブレンド成分と組み合わせる前に膨張させてもよいし、または他のブレンド成分とブレンドしている間に膨張させてもよい。いくつかの実施形態では、グラファイトは、物品(空気バリアまたはタイヤのインナーライナーなど)として形成された後に膨張しない(膨張できない)。
【0094】
好ましい実施形態では、グラファイトはグラフェンであるか、またはグラフェンを含む。グラフェンは1原子の厚さのsp結合炭素原子の平面シートであり、炭素原子がハニカム結晶格子状に高密度に充填されている。グラフェンの炭素−炭素結合の長さは約1.42オングストロームである。グラファイトはグラフェンが積層したものと見なし得るため、グラフェンは、グラファイトを含むグラファイト材料の基本的な構造要素である。グラフェンは、グラファイトの微小機械劈開(たとえばグラファイトからグラフェンフレークを取り出すこと)またはインターカレートグラファイト化合物の層剥離により調製することができる。グラフェンフラグメントも同様に、グラファイトの化学修飾により調製することができる。まず、微結晶グラファイトを硫酸および硝酸の強い酸性混合物で処理する。次いでこの材料を酸化および層剥離して縁端部にカルボキシル基を持つ小さいグラフェンプレートを得る。これをチオニルクロリドで処理して酸クロリド基に変換し、次いでこれをオクタデシルアミンで処理して対応するグラフェンアミドに変換する。得られた材料(厚さ5.3オングストロームの円形グラフェン層)はテトラヒドロフラン、テトラクロロメタンおよびジクロロエタンに可溶である。(ニヨギ(Niyogi)らグラファイトおよびグラフェンの溶液特性。ジャーナルオブザアメリカンケミカルソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)第128巻(24)p.7720−7721(2006年)を参照。)
【0095】
別の実施形態では、グラファイトは、厚さ100ナノメートル未満、好ましくは50ナノメートル未満、好ましくは20ナノメートル未満の分散したナノシートとしてエラストマー組成物中に存在する。
【0096】
加工助剤
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種の加工助剤を含んでいてもよい。好適な加工助剤として、可塑剤、粘着付与剤、増量剤、化学コンディショナー、均質剤およびメルカプタンなどの嚼解剤、石油および加硫植物油、鉱油、パラフィン系油、ポリブテン油、ナフテン系油、芳香油、ワックス、樹脂、ロジン、またはパラフィン系油または鉱油および同種のものに比べて低動点、低排出などである他の合成液を挙げることができるが、これに限定されるものではない。加工助剤の市販例の一部として、SUNDEX(商標)(サンケミカルズ(Sun Chemicals))、ナフテン系プロセス油PARAPOL(商標)(エクソンモービルケミカル社)、数平均分子量が800〜3000のポリブテンプロセス油、およびパラフィン系石油のFLEXON(商標)(エクソンモービルケミカル社)が挙げられる。
【0097】
好ましい可塑剤は、ポリアルファオレフィン(PAO:polyalphaolefin)、高純度炭化水素液体組成物(HPFC:high purity hydrocarbon fluid composition)および国際公開第2004/014998号に記載されたものなどグループIII基油を含む。好ましいPAOは、デセンのオリゴマーおよびデセンとドデセンのコオリゴマーを含む。好ましいPAOは、テキサス州ヒューストンのエクソンモービルケミカル社からSuperSyn(商標)およびSpectraSyn(商標)PAOという商標名で入手可能である。
【0098】
好適なポリブテン油は、Mnが15,000g/mol未満である。また、好ましいポリブテン油は、3〜8個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を持つオレフィン誘導単位のホモポリマーまたはコポリマーを含む。なお別の実施形態では、ポリブテンは、Cラフィネートのホモポリマーまたはコポリマーである。「ポリブテン」ポリマーと呼ばれる好ましい低分子量ポリマーの実施形態は、たとえば、合成潤滑剤および高性能機能性流体(Synthetic Lubricants and High−Performance Functional Fluids)p.357−392(レスリー R.ルドニック(Leslie R.Rudnick)およびロナルド L.シュブキン(Ronald L.Shubkin)編、マーセルデッカー(Marcel Dekker)1999年)に記載されている(以下「ポリブテンプロセス油」または「ポリブテン」)。
【0099】
1つまたはそれ以上の実施形態では、ポリブテン油は、少なくともイソブチレン誘導単位を含み、任意に1−ブテン誘導単位および/または2−ブテン誘導単位を含むコポリマーであってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、ポリブテンは、イソブチレンの場合ホモポリマーであり、あるいはイソブチレンと1−ブテンまたは2−ブテンとのコポリマーであり、あるいはイソブチレンおよび1−ブテンおよび2−ブテンのターポリマーであり、イソブチレン誘導単位はコポリマーの40〜100wt%であり、1−ブテン誘導単位はコポリマーの0〜40wt%であり、2−ブテン誘導単位はコポリマーの0〜40wt%である。1つまたはそれ以上の実施形態では、ポリブテンはコポリマーまたはターポリマーであり、イソブチレン誘導単位はコポリマーの40〜99wt%であり、1−ブテン誘導単位はコポリマーの2〜40wt%であり、2−ブテン誘導単位はコポリマーの0〜30wt%である。なお別の実施形態では、ポリブテンは3つの単位のターポリマーであり、イソブチレン誘導単位はコポリマーの40〜96wt%であり、1−ブテン誘導単位はコポリマーの2〜40wt%であり、2−ブテン誘導単位はコポリマーの2〜20wt%である。なお別の実施形態では、ポリブテンはイソブチレンのホモポリマー、またはイソブチレンおよび1−ブテンのコポリマーであり、イソブチレン誘導単位はホモポリマーまたはコポリマーの65〜100wt%であり、1−ブテン誘導単位はコポリマーの0〜35wt%である。
【0100】
ポリブテンプロセス油は典型的には数平均分子量(Mn)が10,000g/mol未満、8000g/mol未満、または6000g/mol未満である。1つまたはそれ以上の実施形態では、このポリブテン油は数平均分子量が400g/molよりも大きいか、700g/molよりも大きいか、または900g/molよりも大きい。好ましい実施形態は、本明細書のいずれかの下限といずれかの上限との組み合わせとしてもよい。たとえば、記載したポリブテンの1つまたはそれ以上の実施形態では、ポリブテンは数平均分子量が400g/mol〜10,000g/mol、および700g/mol〜8000g/molである。ポリブテンプロセス油の有用な粘度は100℃で10〜6000cSt(センチストーク)、または100℃で35〜5000cStであるか、あるいは100℃で35cStより大きいか、または100℃で100cStよりも大きい。
【0101】
ポリブテン油の市販例として、PARAPOL(商標)450、700、950、1300、2400および2500などのプロセス油のPARAPOL(商標)Series(エクソンモービルケミカル社、テキサス州ヒューストン)が挙げられる。市販されているポリブテンプロセス油のPARAPOL(商標)Seriesはポリブテン合成液であり、個々の配合物は分子量が一定であり、これらの配合物はどれも記載した組成物中に使用することができる。ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したPARAPOL(商標)油の分子量は420g/mol Mn(PARAPOL(商標)450)〜2700g/mol Mn(PARAPOL(商標)2500)の範囲である。PARAPOL(商標)油のMWDは1.8〜3または2〜2.8の範囲である。表1は、実施形態に有用なPARAPOL(商標)油の特性の一部を示し、粘度はASTM D445−97により、分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
【0102】
【表1】

【0103】
PARAPOL(商標)プロセス油の他の特性は以下の通りである:PARAPOL(商標)プロセス油の密度(g/mL)は約0.85(PARAPOL(商標)450)〜0.91(PARAPOL(商標)2500)の範囲である。PARAPOL(商標)油の臭素数(CG/G)は、450Mnプロセス油の40から2700Mnプロセス油の8の範囲である。
【0104】
エラストマー組成物は、1種または複数種のポリブテンを、エラストマーに加える前にブレンドした混合物として含んでいてもよいし、あるいはエラストマーとブレンドした混合物として含んでいてもよい。このように、ポリブテンプロセス油混合物の量および識別点(たとえば、粘度、Mnなど)は多岐にわたる場合がある。したがって、記載した組成物において低粘度が望ましい場合、PARAPOL(商標)450を使用すればよく、一方より高粘度が望ましい場合、PARAPOL(商標)2500を使用してもよく、あるいはこれらの組成物を使用して他の任意の粘度または分子量を得てもよい。このように、この組成物は物理的性質を調節することができる。より具体的には、「ポリブテンプロセス油」または「ポリブテンプロセス油(類)」は、単一油、または本明細書に開示した範囲に示すような所望の任意の粘度または分子量(または他の特性)を得るのに使用する2種以上の油の組成物を含む。
【0105】
プロセス油または油類は、記載したエラストマー組成物中に1〜70phr;または2〜60phr;または4〜35phr;または5〜30phr存在していてもよい。プロセス油または油類は、一実施形態では記載したエラストマー組成物中に1〜70phr、別の実施形態では3〜60phr、なお別の実施形態では5〜50phr存在していてもよい。
【0106】
充填剤
エラストマー組成物は、炭酸カルシウム、粘土、雲母、シリカおよびシリケート、タルク、二酸化チタン、デンプン、ならびに木粉およびカーボンブラックなどの他の有機充填剤など1種または複数種の充填剤を含んでいてもよい。充填剤成分は典型的には、組成物の10〜200phr、一層好ましくは40〜140phrのレベルで存在する。いくつかの実施形態では、2種以上のカーボンブラックを組み合わせて使用し、たとえばRegal 85は1つだけでなく複数の粒度を持つカーボンブラックである。組み合わせには、カーボンブラックの表面積が異なる組み合わせも含まれる。同様に、別々に処理された2種類のブラックを使用してもよい。たとえば化学的に処理したカーボンブラックを、化学的に処理していないカーボンブラックと組み合わせてもよい。表面積が30m/g以上、および/またはフタル酸ジブチル油吸収量が80cm/100gm以上であるカーボンブラックは典型的には、0〜200phr、好ましくは10〜200phr、好ましくは20〜180phr、一層好ましくは30〜160phr、一層好ましくは40〜140phrのレベルで存在してもよい。
【0107】
1つまたはそれ以上の実施形態では、エラストマー組成物は、1種または複数種の層剥離した粘土を含んでいてもよい。層剥離した粘土は、「ナノクレイ」とも呼ばれ周知であり、その識別点、調製方法およびポリマーとのブレンドは、たとえば、特開第2000−109635号、同第2000−109605号、特開平第11−310643号;独国特許出願公開第19726278号;国際公開第98/53000号;米国特許第5,091,462号、同第4,431,755号、同第4,472,538号および同第5,910,523号に開示されている。膨潤性層状粘土材料は、天然または合成フィロシリケート、特にスメクチック粘土、たとえばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニアイト、ステベンサイトおよび同種のもののほか、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイトおよび同種のものを含んでいてもよい。こうした層状粘土は一般に、一緒に結合した厚さが4〜20Åまたは8〜12Åの複数のシリケートプレートレットを含有する粒子を含み、さらに層間表面にはNa、Ca+2、KまたはMg+2などの交換性カチオンを含む。
【0108】
層状粘土は、層状シリケートの層間表面に存在するカチオンとイオン交換反応を行う能力がある有機分子(膨張剤)による処理によりインターカレートし、層剥離することができる。好適な膨張剤として、脂肪族、芳香族またはアリール脂肪族のアミン、ホスフィンおよびスルフィドのアンモニウム、アルキルアミンまたはアルキルアンモニウム(第一級、第二級、第三級および第四級)、ホスホニウムまたはスルホニウムの誘導体などカチオン性界面活性剤が挙げられる。望ましいアミン化合物(またはそのアンモニウムイオン)はRN構造を持つものであり、式中、R、RおよびRは同一でも、または異なっていてもよいC〜C20アルキルまたはアルケンである。1つまたはそれ以上の実施形態では、剥離剤は、いわゆる長鎖第三級アミンであり、少なくともRはC14〜C20アルキルまたはアルケンである。
【0109】
膨張剤の別のクラスとして、層間表面に共有結合できるものが挙げられる。これには、−Si(R’)構造のポリシランがあり、式中R’は出現するごとに同一または異なっており、アルキル、アルコキシまたはオキシシランから選択され、Rはコンポジットのマトリックスポリマーと相性がよい有機ラジカルである。
【0110】
他の好適な膨張剤としては、12−アミノドデカン酸、ε−カプロラクタムおよび同種の材料など2〜30個の炭素原子を含むプロトン化アミノ酸およびその塩が挙げられる。好適な膨張剤および層状シリケートをインターカレートするプロセスについては米国特許第4,472,538号、同第4,810,734号、同第4,889,885号のほか、国際公開第92/02582号に開示されている。
【0111】
粘土または層剥離した粘土は、ナノコンポジットの機械的特性またはバリア特性、たとえば、引張強さまたは空気/酸素透過性に改善が見られるのに十分な量でナノコンポジットに組み込んでもよい。その量は一般にナノコンポジットのポリマー含有量に対して0.5〜15wt%;または1〜10wt%;または1〜5wt%の範囲である。ゴム100部に対する部数で表すと、粘土または層剥離した粘土は1〜30phr;または3〜20phr存在していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、層剥離した粘土はアルキルアミン−層剥離した粘土である。
【0112】
カーボンブラック
カーボンブラックは有機物の不完全燃焼により作製することができる。カーボンブラックの製造には主にオイルファーネス法およびサーマル法という2つの生成法がある。ファーネス法では燃料を過剰の空気で燃焼させて微粉化した炭素を製造する。反応;濾過と分離;ペレット化;および乾燥といういくつかの特徴的な製造区分がある。サーマル法はファーネス法と類似しているが、ファーネス法を連続的に行うものである。米国材料試験協会(ASTM:American Society of Testing Materials)は、粒度および表面酸化に基づくカーボンブラックの分類方式ASTM D1765を確立した。表面酸化の程度は、カーボンブラック充填ゴム化合物の硬化時間に影響する。「N」は通常硬化ブラックを表し、「S」は、緩速硬化ブラックをいう。NまたはSに続く3桁の接尾辞の最初の数字は粒度を示し、残りの2桁は任意に与えられる。
【0113】
ゴムに対するカーボンブラックの補強特性はサイズと、形状と、相互に化学的に結合した、形状が本質的に球状の一次粒子からなる凝集構造の界面化学とによる。カーボンブラックの最も重要な2つの特性は表面積と構造である。表面積は一次粒子のサイズに逆相関し、ポリマーとの物理的相互作用に利用できる面積の1つの尺度となる。ASTM D4820の窒素吸着(NSA)に対する値が最も小さいサーマルブラックとの表面積は、10〜140m/gの範囲である。また、表面積は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB:cetyl trimethylammonium bromide)吸着によっても測定される。カーボンブラックの構造は、凝集体内の一次粒子のサイズおよびつながり具合によって決まる。凝集体内の一次粒子が多くなるほど、形状が複雑になり空隙量(空隙率)が大きくなるためカーボンブラックは高次構造となる。ASTM D2414のフタル酸ジブチル(DBP:dibutylphthalate)油吸収量により測定すると、構造は35〜130cm/100gmまでの幅がある。ラバーテクノロジーp.59−85(1995年)に記載されているようなカーボンブラックの有用なグレードは、N110〜N990の範囲である。一層望ましくは、たとえば、タイヤトレッドに有用なカーボンブラックの実施形態は、ASTM(D3037、D1510およびD3765)で規定されるN229、N351、N339、N220、N234およびN110である。たとえば、タイヤのサイドウォールに有用なカーボンブラックの実施形態は、N330、N351、N550、N650、N660およびN762である。たとえば、インナーライナーまたはインナーチューブに有用なカーボンブラックの実施形態は、N550、N650、N660、N762、N990および同種のものである。
【0114】
本組成物は、表面積が30m/g未満で、フタル酸ジブチル油吸収量が80cm/100gm未満のカーボンブラックを含んでいてもよい。カーボンブラックとしては、N762、N774、N907、N990、Regal 85およびRegal 90を挙げることができるが、これに限定されるものではない。表2は有用なカーボンブラックの特性を示す。
【0115】
【表2】

【0116】
表面積が30m/g未満でフタル酸ジブチル油吸収量が80cm/100gm未満のカーボンブラックは典型的には、10〜200phr、好ましくは20〜180phr、一層好ましくは30〜160phr、一層好ましくは40〜140phrのレベルで存在する。
【0117】
硬化剤および促進剤
本エラストマー組成物は、顔料、促進剤、架橋結合および硬化材料、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤および充填剤などゴム混合物に慣用される1種または複数種の他の成分および添加剤を含んでいてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、ナフテン、芳香族またはパラフィン系エキステンダー油などの加工助剤(樹脂)は、1〜30phr存在していてもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、ナフテン系、脂肪族、パラフィン系および他の芳香族樹脂および油は実質的に組成物に存在しない。「実質的に存在しない」とは、ナフテン系、脂肪族、パラフィン系および他の芳香族樹脂が組成物中に存在しても、2phr以下程度であることを意味する。
【0118】
一般に、ポリマー組成物、たとえば、タイヤの製造に使用されるポリマー組成物は、架橋されている。加硫ゴム化合物の物理的性質、性能特性および耐久性は、加硫反応で形成される架橋の数(架橋密度)および種類と直接関係していることが知られている。(たとえば、ヘルト(Helt)ら、NRの加硫後の安定化(The Post Vulcanization Stabilization for NR)、ラバーワールド(Rubber World)p.18−23(1991年)を参照。架橋結合および硬化剤は、硫黄、酸化亜鉛および脂肪酸を含む。また、ペルオキシド硬化系を用いてもよい。一般に、ポリマー組成物は、たとえば硫黄のような硬化剤(curative)分子、金属酸化物(すなわち、酸化亜鉛)、有機金属化合物、ラジカル開始剤などを加えてから加熱して架橋することができる。特に、以下は、本発明に資する代表的な硬化剤(curative)である:ZnO、CaO、MgO、Al、CrO、FeO、FeおよびNiO。こうした金属酸化物は、対応するステアリン酸金属塩複合体(たとえば、Zn(ステアラート)、Ca(ステアラート)、Mg(ステアラート)およびAl(ステアラート))と、あるいはステアリン酸および硫黄化合物またはアルキルペルオキシド化合物と一緒に使用してもよい。(さらに、シール用NBR混合物の配合設計および硬化特性(Formulation Design and Curing Characteristics of NBR Mixes for Seals)、ラバーワールド p.25−30(1993年)も参照されたい。この方法は、エラストマー組成物の加硫を促進することができ、頻繁に使用される。
【0119】
促進剤は、アミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバマート、キサンテートおよび同種のものを含む。硬化過程の促進は、組成物に一定量の促進物質を加えることで達成できる。天然ゴムの加硫促進のメカニズムには、硬化剤(curative)、促進剤、活性化剤およびポリマー間の複雑な相互作用が関与する。理想的には、有効な硬化剤(curative)をすべて消費して、架橋により2本のポリマー鎖を結合してポリマーマトリックス全体の強度を向上させる効果的な架橋を形成する。多くの促進剤が当該技術分野において公知であり、以下に限定されるものではないが、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG:diphenyl guanidine)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD:tetramethylthiuram disulfide)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM:dithiodimorpholine)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD:tetrabutylthiuram disulfide)、2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS:benzothiazyl disulfide)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオスルファート二ナトリウム塩二水和物、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、90%MORと10%MBTSとの組成物(MOR90)、N−ターシャリーブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS:N−tertiarybutyl−2−benzothiazole sulfenamide)およびN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS:N−oxydiethylene thiocarbamyl−N−oxydiethylene sulfonamide)、亜鉛2−エチルヘキサノアート(ZEH:zinc 2−ethyl hexanoate)、N,N’−ジエチルチオ尿素がある。
【0120】
1つまたはそれ以上の記載した実施形態では、少なくとも1種の硬化剤は、0.2〜15phr、または0.5〜10phr存在する。硬化剤は、金属、促進剤、硫黄、ペルオキシド、および当該技術分野において一般的で上記のような他の薬などエラストマーの硬化を促進またはエラストマーの硬化に作用する上述の成分を含む。
【0121】
加工
成分の混合は、Banbury(商標)ミキサー、Brabender(商標)ミキサーまたは好ましくはミキサー/押出機など任意の好適な混合装置内で成分を組み合わせることで行うことができる。混合は、組成物に使用するエラストマーおよび/またはゴムの融点までの温度で、グラファイトおよび/または粘土が層剥離し、ポリマー内で均一に分散してナノコンポジットを形成するのに十分な速度で行えばよい。
【0122】
好適な混合速度は、約60RPM〜約8,500RPMまでの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合速度は、最低約60RPM、100RPMまたは300RPMから最高約500RPM、2,500RPMまたは8,000RPMまでの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合速度は、最低約500RPM、1,000RPMまたは2,500RPMから最高約5,500RPM、6,500RPMまたは8,000RPMまでの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合速度は、最低約100RPM、750RPMまたは1,500RPMから最高約6,500RPM、7,500RPMまたは8,500RPMまでの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合速度は、最低約5,000RPM、5,700RPMまたは6,000RPMから最高約7,000RPM、7,500RPMまたは7,700RPMまでの幅があってもよい。
【0123】
1つまたはそれ以上の実施形態では、混合温度は、約40℃〜約340℃までの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合温度は、約80℃〜300℃までの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合温度は、最低約30℃、40℃または50℃から最高約70℃、170℃または340℃までの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合温度は、最低約80℃、90℃または100℃から最高約120℃、250℃または340℃までの幅があってもよい。1つまたはそれ以上の実施形態では、混合温度は、最低約85℃、100℃または115℃から最高約270℃、300℃または340℃までの幅があってもよい。
【0124】
少なくともある特定の実施形態では、1種または複数種のエラストマーの70%〜100%を上記の速度で20〜90秒間混合してもよいし、または温度が40℃〜60℃になるまで混合してもよい。次いで、充填剤の3/4、およびエラストマーがある場合、その残りの量をミキサーに加えてもよく、混合は温度が90℃〜150℃になるまで続けてもよい。次に、残っている充填剤を残らず加え、さらにプロセス油を加えてもよく、混合は温度が140℃〜190℃になるまで続ければよい。次いで最終混合物はオープンミルでシートして終了させ、硬化剤(curative)を加える際に60℃〜100℃まで放冷すればよい。
【0125】
本明細書に記載の組成物は、フィルム、シート、成形品および同種のものなどの物品などに組み込むことができる。具体的には、本明細書に記載の組成物は、タイヤ、タイヤ部品(サイドウォール、トレッド、トレッドキャップ、インナーチューブ、インナーライナー、アペックス、チェーファー、ワイヤーコートおよびプライコート)、チューブ、パイプまたは空気不透過性があると都合がよい他の任意の用途として形成され得る。
【0126】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のエラストマー組成物から形成される物品は、下記のように40℃でMOCON OX−TRAN2/61透過性試験装置により測定すると透過性が105mm−cc/M−日以下、好ましくは100mm−cc/M−日以下、好ましくは95mm−cc/M−日以下、好ましくは90mm−cc/M−日以下、好ましくは85mm−cc/M−日以下、好ましくは80mm−cc/M−日以下である。
【0127】
別の実施形態では、本発明は、
1.0.1〜20phrのグラファイトナノ粒子(好ましくはグラフェンナノ粒子);少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む1〜99wt%の少なくとも1種のエラストマー成分;およびグラファイトではない10〜200phrの少なくとも1種の充填剤を含むエラストマー組成物。
2.上記1の組成物であって、ランダムコポリマーがハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、組成物。
3.熱可塑性樹脂をさらに含む、上記1または2の組成物。
4.数平均分子量が400g/molよりも大きく10,000g/mol未満であるポリブテン油をさらに含む上記1、2または3の組成物。
5.ポリブテンが2〜40phr存在する、上記4の組成物。
6.充填剤が炭酸カルシウム、粘土、雲母、シリカ、シリケート、タルク、二酸化チタン、デンプン、木粉、カーボンブラック、およびこれらの混合物からなる群から選択される、上記1、2、3、4または5の組成物。
7.層剥離した天然または合成モンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニアイト、スチーブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイト、およびこれらの混合物からなる群から選択される層剥離した粘土をさらに含む、上記1、2、3、4、5または6の組成物。
8.上記1、2、3、4、5、6または7の組成物を含む、タイヤ用インナーライナー。
9.ナノ粒子は最大5phrで存在するグラフェンナノ粒子であり、エラストマー成分はポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)から本質的になる、上記1、2、3、4、5、6、7または8の組成物。
10.ポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)はハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)である、上記9の組成物。
11.ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)はp−ブロモメチルスチレン含有量がコポリマーの重量に対して0.1〜10wt%である、上記10の組成物。
12.天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキシドポリマー、星型分岐ブチルゴムおよびハロゲン化星型分岐ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星型分岐ポリイソブチレンゴム、星型分岐臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム;イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンなどのイソブチレン/メチルスチレンコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される第2のエラストマー成分(第1のエラストマー成分と異なる)をさらに含む、上記1〜11のいずれかの組成物。
13.上記1〜12のいずれかの組成物を含む、タイヤ用インナーライナー。
14.エラストマーを熱可塑性樹脂と組み合わせて動的加硫合金を形成する、上記1〜13のいずれかの組成物。
15.エラストマー組成物を製造する方法であって、
ポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)のランダムコポリマーおよび少なくとも1種の充填剤を含む少なくとも1種のエラストマー成分に、グラファイトを含む1種または複数種のナノ粒子を混合することを含み、
混合ステップはエラストマー中にナノ粒子を分散させるのに十分な速度で行われる
方法。
16.物品を製造する方法であって:
a)膨張可能なグラファイトを加熱してナノ粒子を得ること;
b)1種または複数種のグラフェンナノ粒子を、充填剤と、イソブチレンのランダムコポリマーを含むエラストマー成分と混合すること;
c)混合物を物品として形成すること;
を含み、
混合ステップはエラストマー中にナノ粒子を分散させるのに十分な速度で行われ、グラファイトは、物品が0〜1000℃の温度にさらされても、それ以上膨張しない
方法。
17.エラストマーとの混合中に膨張可能なグラファイトを加熱することによりナノ粒子を得ることをさらに含む、上記15または16の方法。
18.エラストマーとの混合の前に膨張可能なグラファイトを加熱することによりナノ粒子を得ることをさらに含む、上記15、16または17の方法
に関する。
【実施例】
【0128】
上記の考察は、以下の非限定的な例を参照しながらさらに説明できる。以下の例は、記載した1種または複数種の実施形態に従い、タイヤのインナーライナーとしての使用に好適なある種のエラストマー組成物の加工性が改善される共に酸素保持特性が大幅な向上することを例証するために示す。
【0129】
グラファイトの膨張
膨張可能なグラファイト(約1g)をるつぼに移し、予熱した炉(約700℃)に入れて2分間拡張させた。次いで加熱したグラファイトを1Lビーカーに移し、これを100℃の真空オーブンで次に使用するまで保管した。グラファイトはGRAFGUARD(登録商標)膨張可能グラファイトフレーク(グラフテック)160−50N(既報告の膨張容積は600℃で250cc/g)またはアズベリーカーボンズ膨張可能グラファイト3772(報告された膨張比は300:1)であった。
【0130】
サンプルの調製
5つのサンプル(サンプル1〜5)を溶融混合により調製した。サンプルを調製するため、BRABENDER(登録商標)ミキサーを60RPMで130℃まで予熱し、次いで36グラムのエラストマー成分(10wt%p−メチルスチレン単位、0.85mol%ベンジル臭素官能基を有し、ムーニー粘度が32+/−1の臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)(以下「エラストマーA」))をミキサーに入れた。類似のBIMSM エラストマーがExxpro(商標)エラストマーとしてエクソンモービルケミカル社から市販されている。エラストマーが流れたら、直ちに表示量(表1を参照)の膨張化グラファイト(XEG)を加えた。混合から1分後、グラファイトベースのナノコンポジットを60phrのカーボンブラック(N660)と130℃〜145℃で7分間混合した。次いでこの混合物を硬化剤(curative)パッケージ(1.0phrのステアリン酸、1.0phrのKadox 911 ZnO、およびアール・ティー・ヴァンダービルト(コネティカット州ノーウォーク(Norwalk))製の2−メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(「MBTS」)1.0phrと40℃、40RPMで3分間混合した。
【0131】
得られたゴム化合物を混練し、圧縮成形し、硬化させた。硬化特性をODR 2000を使用して170℃、3度傾けて測定した。試験片は、T90+適切な遅延時間に相当する時間170℃で硬化させた。
【0132】
各サンプルを徐冷しながら圧縮成形して欠陥のないパッドを得た。ゴムサンプルには圧縮および硬化プレスを使用した。圧縮成形パッドの典型的な厚さは約0.3mm(15mil)であった。アーバープレスを使用して、透過性試験用に成形パッドから直径5cm(2インチ)のディスクを打ち抜いた。このディスクを測定の前に60℃の真空オーブンで一晩状態調整した。MOCON OX−TRAN 2/61透過性試験装置を40℃で使用し、ディスクの一方の側を0.07MPa(g)(10psig)の窒素、他方の側を0.07MPa(g)(10psig)の酸素としてディスクの酸素透過測定値を検査した。酸素がディスクを透過するのに要する時間、または窒素側の酸素濃度が一定値になる時間を記録し、酸素透過性の判定に使用した。2つのサンプルを同じ手順により調製した場合、2つの測定値の平均透過率の結果を得た。これを以下の表に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
図1は、表1にまとめた酸素透過率とグラフェン量をグラフに示す。表1および図1に示すように、グラフェンが存在すると酸素保持率が大きく上昇する(約20%)。グラフェンの添加量が増えてもほとんど差がないようであり、この種のグラフェンは類似の効果を示した。理論に拘泥するわけではないが、アズベリーの材料の方が膨張しやすかったと考えられる。これは、膨張後の材料の外観および充填剤の増量に伴う透過率の挙動によって示される。グラフテックが提供する膨張可能なグラファイトは膨張後に高度な凝集状態になったのに対し、アズベリーが提供する材料は緩やかな凝集状態になった。このことから、アズベリー材料の方が膨張しやすかったことが示唆される。膨張の程度によりナノコンポジット内のグラファイト/グラフェン材料が分散しやすくなり、したがって、酸素および空気保持性が向上すると考えられる。
【0135】
さらに、様々な溶媒を用いて5つのサンプル(6〜10)を溶液混合により調製した。サンプルを調製するため、50グラムのエラストマーAを500mLジャーに入れ、ジャーにヘキサン、THF、50/50混合ヘキサン/THF、酢酸エチル、または50/50混合ヘキサン/酢酸エチル(300mL)のいずれかの溶媒を流し入れてポリマーを溶解した。選択した溶媒中のポリマーの溶解を促進するため、ポリマーおよび溶媒を含むジャーをゆっくりとした振盪サイクルの水平シェーカー上に一晩置いた。膨張化グラファイト(0.50g、1.0phr、アズベリー)を選択した溶媒700mLに加えた。この懸濁液を24時間超音波で分解した。次いで、ポリマー溶液およびグラフェン懸濁液を2Lビーカー内で十分に混合した。過剰なイソプロパノールを加えてエラストマーA/グラフェン混合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、室温で乾燥させてから、80℃で一晩真空オーブンに入れた。最後に、エラストマーA/グラフェン混合物(36.0g)を60phrのカーボンブラック、1.0phrのMBTS、1.0phrのZnO、および1.0phrのステアリン酸と混合した。これらのサンプルから得られた絶対酸素透過率を以下の表2にまとめてある。
【0136】
【表4】

【0137】
表2に示すように、様々な溶媒の透過率は相互に比較して約±5%以内であった。透過率は同じようであることが観察されたものの、試験対象の溶媒中のエラストマーAの溶解度およびグラフェンの分散性に関する追加情報が得られた。エラストマーAはヘキサンには溶けるが、酢酸エチルには溶けないことが分かった。エラストマーAの溶解度は以下の順序で小さくなることが観察された:ヘキサン>50/50混合ヘキサン/TFIF>THF>50/50混合ヘキサン/酢酸エチル>酢酸エチル。さらに、グラフェンはヘキサンに分散すると考えられたが、そうではなかった。グラフェンはTHFに容易に分散したが、50/50混合ヘキサン/THF、酢酸エチル、50/50混合ヘキサン/酢酸エチルにも分散した。分散は以下の順序で低下することが観察された:50/50混合ヘキサン/THF>THF>50/50混合ヘキサン/酢酸エチル>酢酸エチル>ヘキサン。
【0138】
エラストマーAのアミノ化誘導体の調製:2L反応器内で100グラムのエラストマーAを1000mLの炭化水素溶媒(ヘキサンまたはトルエン)に溶解させた。反応器に3種類のレベル(0.0018、0.0036および0.0072モル)でトリエチルアミンを加えた。反応混合物を70℃〜75℃まで4時間加熱した。これによりポリマーのアミンレベルはそれぞれ0.05mol%、0.08mol%および0.18mol%になった。
【0139】
エラストマーA、エラストマーAのアミノ化誘導体およびグラフェンの高剪断混合により16のサンプル(8〜23)を調製した。これらのサンプルを調製するため、95.0gのエラストマーAを1Lジャーに入れた。ジャーに50/50混合ヘキサン/THF(500mL)を流し入れてポリマー溶解した。溶媒中のポリマーの溶解を促進するため、ポリマーおよび溶媒を含むジャーを、ゆっくりとした振盪サイクルの水平シェーカー上に一晩置いた。−エラストマーAのアミノ化誘導体を30/70アミノ化エラストマーA/エラストマーA溶液として使用して必要量のアミノ化エラストマー(以下の表3を参照)を得て、2Lビーカーに流し入れた。エラストマーA/アミノ化エラストマーA溶液に膨張化アズベリーグラファイトおよびTHFを加えて最終容量を1Lとした。この懸濁液を6500rpmで10分間高剪断混合した。次いでエラストマーA溶液をさらに加え、適切な量の50/50ヘキサン/THFを加えて最終容量を2Lとした。この懸濁液を6500rpmで20分間高剪断混合した。次いでこの溶液を4Lフラスコに移した。過剰なイソプロパノールを加えてエラストマーA/アミノ化エラストマーA/グラフェン混合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、室温で乾燥させてから、80℃の真空オーブンに一晩入れた。最後に、エラストマーA/アミノ化エラストマーA/グラフェン混合物。(36.0g)をカーボンブラック、MBTS、ZnOおよびHStと混合した。表3に、高剪断混合したアミノ化エラストマーA/グラフェンサンプルから得られた絶対酸素透過率をまとめてある。
【0140】
【表5】

【0141】
図2は、表3の様々なアミノ化ナノコンポジットの酸素透過率とグラフェン量をグラフに示す。表3および図2に示すように、酸素透過率は、ナノコンポジット中のグラフェン量が増加するにつれて低下する。さらに、官能基を有するエラストマーを加えると低極性充填剤と低極性マトリックスとの相互作用が増強され、酸素分子が通過できる間隙が減少し、最終的に試験対象の系のバリア特性が改善されることが観察された。
【0142】
様々な用語については上記に定義した。特許請求項の範囲に使用される用語が上記に定義されていない場合、その用語は、少なくとも1つの刊行物または発行された特許に記載されている通り、当業者がその用語に与える最も広義の定義を与えるものとする。さらに、本出願に引用した特許、試験手順、優先権書類および他の文書はすべて、こうした開示が本出願と矛盾しない範囲で参照によって全体をは援用が認められるすべての法域において援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー組成物であって、
0.1〜20phrのグラファイトナノ粒子(好ましくはグラフェンナノ粒子);
少なくとも1種のC〜Cイソモノオレフィン誘導単位を持つランダムコポリマーを含む1〜99wt%の少なくとも1種のエラストマー成分;および
グラファイトではない10〜200phrの少なくとも1種の充填剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記ランダムコポリマーはハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)、ハロゲン化星型分岐ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
数平均分子量が400g/molよりも大きく10,000g/mol未満であるポリブテン油をさらに含む、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリブテンは2〜40phr存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記充填剤は炭酸カルシウム、粘土、雲母、シリカ、シリケート、タルク、二酸化チタン、デンプン、木粉、カーボンブラックおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1、2、3、4または5に記載の組成物。
【請求項7】
層剥離した天然または合成モンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、フォルコンスコイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、マガダイト、ケニアイト、スチーブンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、アルミナートオキシド、ハイドロタルサイトおよびこれらの混合物からなる群から選択される層剥離した粘土をさらに含む、請求項1、2、3、4、5または6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の組成物を含む、タイヤ用インナーライナー。
【請求項9】
前記ナノ粒子は最大5phrで存在するグラフェンナノ粒子であり、前記エラストマー成分はポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)から本質的になる、請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)はハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ハロゲン化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)はp−ブロモメチルスチレン含有量が前記コポリマーの重量に対して0.1〜10wt%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム(IBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィド、ニトリルゴム、プロピレンオキシドポリマー、星型分岐ブチルゴムおよびハロゲン化星型分岐ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星型分岐ポリイソブチレンゴム、星型分岐臭素化ブチル(ポリイソブチレン/イソプレンコポリマー)ゴム;イソブチレン/メタ−ブロモメチルスチレン、イソブチレン/ブロモメチルスチレン、イソブチレン/クロロメチルスチレン、ハロゲン化イソブチレンシクロペンタジエンおよびイソブチレン/クロロメチルスチレンなどのイソブチレン/メチルスチレンコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される第2のエラストマー成分(前記第1のエラストマー成分と異なる)をさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の組成物を含む、タイヤ用のインナーライナー。
【請求項14】
前記エラストマーは熱可塑性樹脂と組み合わされて動的加硫合金を形成する、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
エラストマー組成物を製造する方法であって、
ポリ(イソオレフィン−co−p−メチルスチレン)のランダムコポリマーおよび少なくとも1種の充填剤を含む少なくとも1種のエラストマー成分にグラファイトを含む1種または複数種のナノ粒子を混合すること
を含み、
前記混合ステップは前記エラストマー中に前記ナノ粒子を分散させるのに十分な速度で行われる、
方法。
【請求項16】
物品を製造する方法であって、
a)膨張可能なグラファイトを加熱してナノ粒子を得ること;
b)1種または複数種のグラフェンナノ粒子を、充填剤と、イソブチレンのランダムコポリマーを含むエラストマー成分と混合すること;
c)前記混合物を物品として形成すること;
を含み、
前記混合ステップは前記エラストマー中に前記ナノ粒子を分散させるのに十分な速度で行われ、前記グラファイトは前記物品が0〜1000℃の温度にさらされても、それ以上膨張しない
方法。
【請求項17】
前記エラストマーとの混合中に膨張可能なグラファイトを加熱することにより前記ナノ粒子を得ることをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記エラストマーとの混合の前に膨張可能なグラファイトを加熱することにより前記ナノ粒子を得ることをさらに含む、請求項15、16または17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−530619(P2011−530619A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522080(P2011−522080)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048486
【国際公開番号】WO2010/016976
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】