グラフェンナノリボンの作成方法
【課題】作成効率が向上されて、品質も安定して高いグラフェンナノリボンの作成方法の提供。
【解決手段】カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程とを含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法。
【解決手段】カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程とを含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノリボンの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの更なる小型化を目指して、新たな材料や構造物が今なお開発され続けているが、中でもフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンナノリボンなどの炭素材料はその特殊な結晶性と導電性で特に注目されている。
【0003】
グラフェンナノリボンは目下のところ最も薄くかつ最も硬いと目されているナノ材料であり、複数の炭素原子がsp2混成軌道結合してできた六角形格子構造を有する、炭素原子1個分の厚さの紐状材料である。グラフェンナノリボンはほぼ完全な透明性を持ち、また熱伝導性においてもカーボンナノチューブやダイヤモンドを上回る5300W/m・Kの熱伝導率を呈す。更に、常温での電子移動度が15000cm2/V・sと銅や銀のそれよりも高く、逆に電気抵抗率は10−6Ω・cmと銅や銀のそれよりも低い。このことからグラフェンナノリボンは、今よりも更に薄く且つ電子移動速度が速い新たな電子部品やトランジスタの開発に、あるいは透明タッチパネルや液晶ディスプレイおよび太陽電池の作成に用いることができるのではないかと期待されている。
【0004】
グラフェンナノリボンの作成には、今のところ、例えば走査型トンネル顕微鏡を用いたリソグラフィー法や、蒸着法などが用いられている。また最近では、 カーボンナノチューブからグラフェンナノリボンを作成する方法も利用されており、例えば湿式化学法、物理化学法、層間剥離方法、触媒によるアプローチ、電気的方法、ソノケミカル方法そして電気化学法など様々な手法が提案されている。
【0005】
例えば非特許文献1ではカーボンナノチューブを切開してグラフェンナノリボンを作成する手法が開示されている。これによると、カーボンナノチューブを濃硫酸で処理した後に、過マンガン酸カリウムを強酸化剤として作用させ、その後、熱対流による加熱方法で55℃〜70℃に加熱すると、カーボンナノチューブが化学的に切開され、グラフェンナノリボンを得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】コシキン(Kosykin)、 外6名、「カーボンナノチューブを縦方向に切り開いてグラフェンナノリボンを形成(Longitudinal unzipping of carbon nanotubes to form graphene nanoribbons)」、ネイチャー(Nature、イギリス)、2009年4月16日、第458巻、p.872−876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この方法では、カーボンナノチューブを切開するためには加熱温度55℃〜70℃で少なくとも2時間は加熱しなくてはならないので、作業に長い時間がかかり、効率がよいとは言い難い。また2時間以上もの加熱により、カーボンナノチューブの構造が損なわれることもしばしばで、この点も作成されるグラフェンナノリボンの収率低下、更には品質低下に繋がる。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するために、作成効率が向上されて、さらに品質も安定して高いグラフェンナノリボンの作成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
(a)カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、
(b)酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、
(c)マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程と、
を含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法を提供する。
【0010】
前記分散媒は、pH値が1以上4未満であることが好ましい。
【0011】
また、前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であること、
更には5倍以上であることが好ましい。
【0012】
さらに前記酸化剤は、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、 過塩素酸カリウム、 過酸化水素および過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んたことが好ましい。
【0013】
前記工程(c)においては、出力が50W〜2000Wの範囲内のマイクロ波を用いることが好ましく、出力が150W〜300Wの範囲内であると尚よい。またマイクロ波を照射する時間は10以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記工程(b)の前に、前記カーボンナノチューブ分散液にマイクロ波を照射してこれを加熱することにより前記カーボンナノチューブに表面修飾を施す工程(d)を更に含んでもよく、前記工程(d)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用い、照射する時間は5分以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の方法によれば、カーボンナノチューブの分散液をマイクロ波により加熱することで温度を急速に上昇させることにより、従来の方法よりも短い時間でカーボンナノチューブを切開して、グラフェンナノリボンを得ることができるので、グラフェンナノリボンの作成効率が向上される。また、カーボンナノチューブを急速に加熱できるので、長時間の加熱によりカーボンナノチューブの構造が損なわれることもなく、品質が安定して高いグラフェンナノリボンが作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るグラフェンナノリボンの作成方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図2】カーボンナノチューブが酸化剤により切開される過程を概略的に示した図である。
【図3】本発明の各実施例で用いた多層カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図4】本発明の実施例1で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図5】本発明の実施例2で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図6】本発明の実施例3で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図7】多層カーボンナノチューブと、一般のグラフェンナノリボンと、本発明の実施例1〜3で得られたグラフェンナノリボンとのそれぞれのラマンスペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0018】
図1は本発明に係るグラフェンナノリボンの作成方法の好ましい実施手順を示すフローチャートであり、ステップS11からS14まで下記4つの工程を含んでいる。
【0019】
ステップS11では、カーボンナノチューブを分散媒中に分散させてナノチューブ分散液を得る。
【0020】
詳しく言うと、多層または単層のカーボンナノチューブを分散媒である酸性水溶液中に分散させ、室温で1時間撹拌するとナノチューブ分散液が得られる。
【0021】
ここで分散媒として用いる酸性水溶液の例としては、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸またはこれらの混合物の溶液が挙げられ、pH値は4未満であることが好ましい。pH値が4以上であると、酸性の度合いが足りず、続くステップでカーボンナノチューブの表面における官能基の反応性に悪影響を及ぼす。しかしまた、pH値が低すぎても、酸性の度合いが強すぎて、カーボンナノチューブの構造が損なわれ、結果として得られるグラフェンナノリボンの構造に悪影響を及ぼす。よって、ステップS11で用いる酸性水溶液としてはpH値が3以下であり1以上であることが更に好ましく、本実施例では、硫酸とリン酸を混合したpH値が3〜1の範囲内である酸性水溶液を用いた。
【0022】
ステップS12では、カーボンナノチューブの表面に化学修飾を施して表面修飾カーボンナノチューブを得る。
【0023】
詳しく言うと、ステップS12では、カーボンナノチューブ分散液をマイクロ波加熱することによりカーボンナノチューブの表面に官能基をグラフト重合させて、表面修飾されたカーボンナノチューブを得る。
【0024】
これは、カーボンナノチューブが表面修飾されていないと、酸性水溶液中で激しく凝集してしまい、結果としてグラフェンナノリボンの収率低下に繋がるからである。つまり、表面修飾を施すことでカーボンナノチューブの酸性水溶液中での分散性を高めることができ、これにより続くステップでの反応を高めることができ、ひいてはグラフェンナノリボンの収率を高めることができる。
【0025】
このステップS12における表面修飾方法は、カーボンナノチューブがマイクロ波を吸収しやすいという特性を利用したもので、カーボンナノチューブはその表面の分子がマイクロ波と共振し再配列されることで、表面修飾が果たされる。従来の熱対流により加熱する方法と比べて、マイクロ波により加熱する本方法は、より短い時間で表面修飾できるので、作業時間を短縮できるだけでなく、長時間の加熱によりカーボンナノチューブの構造が損なわれることも避けることができる。
【0026】
また、本ステップのマイクロ波加熱は、出力が50Wから2000Wの間で且つ加熱時間が10分以下であることが好ましい。出力が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、カーボンナノチューブの構造が損なわれる虞がある。逆に出力が低すぎると、反応に時間がかかるようになるので、カーボンナノチューブの表面修飾が不充分になり、酸性水溶液中での分散性低下に繋がる。よって、本ステップで用いるマイクロ波加熱は、更に言えば出力が150Wから300Wの間で、加熱時間が5分以下であることがなお好ましい。
【0027】
なお、ステップS11でカーボンナノチューブを酸性水溶液中に分散させる際には、カーボンナノチューブの分散性を高めるために、予め表面修飾した単層または多層のカーボンナノチューブを用いても構わない。この場合は、ステップS12を省略することができる。
【0028】
ステップS13では、酸化剤をカーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る。
【0029】
詳しく言うと、ステップS13では、酸化剤をこれまでのステップで得られたカーボンナノチューブ分散液に加えた後に、常温で約30分撹拌することで、カーボンナノチューブの表面を酸化剤とまんべんなく接触させて、反応液を得る。
【0030】
ここで用いる酸化剤の例としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウムまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
なお、ステップS13で酸化剤を加える目的は、図2に示されている酸化反応のように、炭素―炭素二重結合を酸化させてカーボンナノチューブの環状構造を解くことにあり、これによりカーボンナノチューブを縦方向に切り開いてグラフェンナノリボンを作成することができる。カーボンナノチューブの切開が効率的に進むかどうかは酸化剤の酸化力に係っており、酸化剤としては過塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、加える酸化剤の量が不充分だと、カーボンナノチューブの切開が不完全になり、結果としてグラフェンナノリボンの収率および純度が低下するので、酸化剤の添加量はカーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であることが好ましく、更に言えば5倍以上であることがなお好ましい。なお、酸化剤の添加量については、少なすぎる場合はカーボンナノチューブの切開に悪影響を与えるが、多すぎても確たる悪影響は無いので、ここでは上限を定めない。
【0032】
ステップS14では、マイクロ波で反応液を加熱し、反応液中のカーボンナノチューブを縦方向に切開してグラフェンナノリボンを作成する。
【0033】
詳しく言うと、ステップS13で得られた反応液にマイクロ波を照射してこれを加熱する。このように、酸化カーボンナノチューブに更にマイクロ波を吸収させると、炭素―炭素二重結合が共振を起こしついには結合が解かれる。これによりカーボンナノチューブを縦方向に速やかに切開して、グラフェンナノリボンを得ることが可能になる。
【0034】
なお、ステップS14において、マイクロ波の出力が低すぎると、一定の時間内に反応液に照射されるマイクロ波の量が不足し、加熱速度が足りなくなり、反応が不完全になる。逆に、マイクロ波の出力が高すぎると、反応液の温度変化が急激になるため加熱時間の制御が難しくなり、反応結果に悪影響を及ぼしかねず、また作業の安全性も損なわれる。よって、ステップS14では、マイクロ波の出力を50Wから2000Wの間、加熱時間を10分以下とし、反応液の温度は50℃から100℃の間であることが好ましく、更に言えば、マイクロ波の出力を150Wから300Wの間、加熱時間を5分以下とし、反応液の温度は60℃から80℃の間であることがなお好ましい。
【0035】
また、上記方法の様に酸化剤を用いてカーボンナノチューブを切開して作成されたグラフェンナノリボンの周縁には、酸化した官能基が形成される。そこで、例えば完全に炭素―水素結合のみからなるグラフェンナノリボンを作成したい場合には、ヒドラジン(H4N2)などの還元剤を加えて、酸化した官能基に還元処理を施せばよい。還元処理に用いる還元剤および反応条件に関しては、周知のものなのでここでは贅説を省く。
【0036】
上記のように、本発明は、カーボンナノチューブがマイクロ波を吸収しやすいという特性を利用したものであり、カーボンナノチューブを分散させた酸性水溶液にマイクロ波を照射すると、カーボンナノチューブにおいて分子の双極子の回転およびイオンの伝導が起きるので、温度を急速に上昇させることができる。これによりカーボンナノチューブの切開が、熱対流を用いて加熱するという従来の方法の10分の1の時間で果たされる。また、本方法によって得られるグラフェンナノリボンはその品質も向上される。
【0037】
以下に実施例を挙げ、本発明に係る上述の及びその他の特徴と効果を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例は説明を具体化するために示したものであり、本発明を限定する意図を表したものではないことを理解されたい。
【0038】
実施例1
硫酸水溶液45mlに、リン酸を5ml加えて、酸性水溶液を得た。この酸性水溶液に、図3に示したような多層カーボンナノチューブを0.05g加えてから、常温で約1時間撹拌してカーボンナノチューブ分散液を得た。その後、このカーボンナノチューブ分散液を200Wの出力で2分間マイクロ波加熱することで、カーボンナノチューブに表面修飾を施した。
【0039】
次に、このカーボンナノチューブ分散液に過マンガン酸カリウムを0.25g加えてから常温で30分間撹拌して反応液を得た。そしてこの反応液を150Wの出力で4分間マイクロ波加熱し、反応温度を約65℃に保った。
【0040】
最後に、反応液を減圧濾過して、フィルターに残った残滓を乾燥させ、グラフェンナノリボンを得た。
【0041】
実施例2および実施例3
実施例2および実施例3における作業工程は実施例1とほぼ同様であるが、異なるのは反応液をマイクロ波加熱する時の出力を実施例2では200W、実施例3では250Wとした点である。
【0042】
図4から図6はそれぞれ本発明の実施例1から実施例3で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。このように、本発明に係る方法に沿って出力150Wから250Wの間で上記反応液をマイクロ波加熱すれば、たった4分間でカーボンナノチューブが切開されグラフェンナノリボンを作成することができる。
【0043】
図7に示したグラフ中のL−1からL−5は、L−1から順に多層カーボンナノチューブ、一般のグラフェンナノリボン、本発明の実施例1〜3で得られたグラフェンナノリボンそれぞれのラマンスペクトルを表している。
【0044】
1360cm−1に現れたピークD(Dバンド)では無定形炭素、即ち炭素―炭素単結合が観察され、1580cm−1に現れたピークG(Gバンド)ではグラファイト、即ち炭素―炭素二重結合が観察される。また、2D(2Dバンド)はDバンドに対して対称的なピークである。図7のL−1およびL−2から、多層カーボンナノチューブの特徴的なピークはGバンドおよび2Dバンドに現れることがわかる。更に、グラフェンナノリボンは炭素―炭素単結合を含んでいるので、L−2にはDバンドも現れている。
【0045】
更に、本実施例1〜3で作成された各グラフェンナノリボンのラマンスペクトルL−3からL−5を、L−1とL−2に比べると、L−3からL−5はすべてL―2と共通の特徴を有していることがわかり、つまりは本発明に係る方法によれば、カーボンナノチューブをマイクロ波加熱して切開することによって従来よりも短い時間でグラフェンナノリボンを作成し得ることがわかる。
【0046】
以上まとめると、本発明に係るグラフェンナノリボンの制作方法におけるマイクロ波加熱は、カーボンナノチューブがマイクロ波のエネルギーを直接吸収するという特性を利用しているので、マイクロ波の出力と照射時間を調節することで温度を急速に上昇させることができ、カーボンナノチューブを効率的に切開することができる。このように、本発明に係る方法によれば、従来の熱対流による加熱と比べて作成にかかる時間を劇的に短縮することができ、これにより得られるグラフェンナノリボンの収率および品質をも向上させることができる。
以上、本発明を具体的な実施例に則して詳細に説明したが、本発明は上記実施例及び添付図面に限定されるものではなく、最も広い解釈の範囲に含まれる種々の変更を網羅していることが意図されていると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
なし
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンナノリボンの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの更なる小型化を目指して、新たな材料や構造物が今なお開発され続けているが、中でもフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラフェンナノリボンなどの炭素材料はその特殊な結晶性と導電性で特に注目されている。
【0003】
グラフェンナノリボンは目下のところ最も薄くかつ最も硬いと目されているナノ材料であり、複数の炭素原子がsp2混成軌道結合してできた六角形格子構造を有する、炭素原子1個分の厚さの紐状材料である。グラフェンナノリボンはほぼ完全な透明性を持ち、また熱伝導性においてもカーボンナノチューブやダイヤモンドを上回る5300W/m・Kの熱伝導率を呈す。更に、常温での電子移動度が15000cm2/V・sと銅や銀のそれよりも高く、逆に電気抵抗率は10−6Ω・cmと銅や銀のそれよりも低い。このことからグラフェンナノリボンは、今よりも更に薄く且つ電子移動速度が速い新たな電子部品やトランジスタの開発に、あるいは透明タッチパネルや液晶ディスプレイおよび太陽電池の作成に用いることができるのではないかと期待されている。
【0004】
グラフェンナノリボンの作成には、今のところ、例えば走査型トンネル顕微鏡を用いたリソグラフィー法や、蒸着法などが用いられている。また最近では、 カーボンナノチューブからグラフェンナノリボンを作成する方法も利用されており、例えば湿式化学法、物理化学法、層間剥離方法、触媒によるアプローチ、電気的方法、ソノケミカル方法そして電気化学法など様々な手法が提案されている。
【0005】
例えば非特許文献1ではカーボンナノチューブを切開してグラフェンナノリボンを作成する手法が開示されている。これによると、カーボンナノチューブを濃硫酸で処理した後に、過マンガン酸カリウムを強酸化剤として作用させ、その後、熱対流による加熱方法で55℃〜70℃に加熱すると、カーボンナノチューブが化学的に切開され、グラフェンナノリボンを得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】コシキン(Kosykin)、 外6名、「カーボンナノチューブを縦方向に切り開いてグラフェンナノリボンを形成(Longitudinal unzipping of carbon nanotubes to form graphene nanoribbons)」、ネイチャー(Nature、イギリス)、2009年4月16日、第458巻、p.872−876
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この方法では、カーボンナノチューブを切開するためには加熱温度55℃〜70℃で少なくとも2時間は加熱しなくてはならないので、作業に長い時間がかかり、効率がよいとは言い難い。また2時間以上もの加熱により、カーボンナノチューブの構造が損なわれることもしばしばで、この点も作成されるグラフェンナノリボンの収率低下、更には品質低下に繋がる。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決するために、作成効率が向上されて、さらに品質も安定して高いグラフェンナノリボンの作成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、
(a)カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、
(b)酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、
(c)マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程と、
を含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法を提供する。
【0010】
前記分散媒は、pH値が1以上4未満であることが好ましい。
【0011】
また、前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であること、
更には5倍以上であることが好ましい。
【0012】
さらに前記酸化剤は、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、 過塩素酸カリウム、 過酸化水素および過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んたことが好ましい。
【0013】
前記工程(c)においては、出力が50W〜2000Wの範囲内のマイクロ波を用いることが好ましく、出力が150W〜300Wの範囲内であると尚よい。またマイクロ波を照射する時間は10以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記工程(b)の前に、前記カーボンナノチューブ分散液にマイクロ波を照射してこれを加熱することにより前記カーボンナノチューブに表面修飾を施す工程(d)を更に含んでもよく、前記工程(d)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用い、照射する時間は5分以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上の方法によれば、カーボンナノチューブの分散液をマイクロ波により加熱することで温度を急速に上昇させることにより、従来の方法よりも短い時間でカーボンナノチューブを切開して、グラフェンナノリボンを得ることができるので、グラフェンナノリボンの作成効率が向上される。また、カーボンナノチューブを急速に加熱できるので、長時間の加熱によりカーボンナノチューブの構造が損なわれることもなく、品質が安定して高いグラフェンナノリボンが作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るグラフェンナノリボンの作成方法の好ましい実施例を示すフローチャートである。
【図2】カーボンナノチューブが酸化剤により切開される過程を概略的に示した図である。
【図3】本発明の各実施例で用いた多層カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図4】本発明の実施例1で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図5】本発明の実施例2で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図6】本発明の実施例3で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。
【図7】多層カーボンナノチューブと、一般のグラフェンナノリボンと、本発明の実施例1〜3で得られたグラフェンナノリボンとのそれぞれのラマンスペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0018】
図1は本発明に係るグラフェンナノリボンの作成方法の好ましい実施手順を示すフローチャートであり、ステップS11からS14まで下記4つの工程を含んでいる。
【0019】
ステップS11では、カーボンナノチューブを分散媒中に分散させてナノチューブ分散液を得る。
【0020】
詳しく言うと、多層または単層のカーボンナノチューブを分散媒である酸性水溶液中に分散させ、室温で1時間撹拌するとナノチューブ分散液が得られる。
【0021】
ここで分散媒として用いる酸性水溶液の例としては、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸またはこれらの混合物の溶液が挙げられ、pH値は4未満であることが好ましい。pH値が4以上であると、酸性の度合いが足りず、続くステップでカーボンナノチューブの表面における官能基の反応性に悪影響を及ぼす。しかしまた、pH値が低すぎても、酸性の度合いが強すぎて、カーボンナノチューブの構造が損なわれ、結果として得られるグラフェンナノリボンの構造に悪影響を及ぼす。よって、ステップS11で用いる酸性水溶液としてはpH値が3以下であり1以上であることが更に好ましく、本実施例では、硫酸とリン酸を混合したpH値が3〜1の範囲内である酸性水溶液を用いた。
【0022】
ステップS12では、カーボンナノチューブの表面に化学修飾を施して表面修飾カーボンナノチューブを得る。
【0023】
詳しく言うと、ステップS12では、カーボンナノチューブ分散液をマイクロ波加熱することによりカーボンナノチューブの表面に官能基をグラフト重合させて、表面修飾されたカーボンナノチューブを得る。
【0024】
これは、カーボンナノチューブが表面修飾されていないと、酸性水溶液中で激しく凝集してしまい、結果としてグラフェンナノリボンの収率低下に繋がるからである。つまり、表面修飾を施すことでカーボンナノチューブの酸性水溶液中での分散性を高めることができ、これにより続くステップでの反応を高めることができ、ひいてはグラフェンナノリボンの収率を高めることができる。
【0025】
このステップS12における表面修飾方法は、カーボンナノチューブがマイクロ波を吸収しやすいという特性を利用したもので、カーボンナノチューブはその表面の分子がマイクロ波と共振し再配列されることで、表面修飾が果たされる。従来の熱対流により加熱する方法と比べて、マイクロ波により加熱する本方法は、より短い時間で表面修飾できるので、作業時間を短縮できるだけでなく、長時間の加熱によりカーボンナノチューブの構造が損なわれることも避けることができる。
【0026】
また、本ステップのマイクロ波加熱は、出力が50Wから2000Wの間で且つ加熱時間が10分以下であることが好ましい。出力が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、カーボンナノチューブの構造が損なわれる虞がある。逆に出力が低すぎると、反応に時間がかかるようになるので、カーボンナノチューブの表面修飾が不充分になり、酸性水溶液中での分散性低下に繋がる。よって、本ステップで用いるマイクロ波加熱は、更に言えば出力が150Wから300Wの間で、加熱時間が5分以下であることがなお好ましい。
【0027】
なお、ステップS11でカーボンナノチューブを酸性水溶液中に分散させる際には、カーボンナノチューブの分散性を高めるために、予め表面修飾した単層または多層のカーボンナノチューブを用いても構わない。この場合は、ステップS12を省略することができる。
【0028】
ステップS13では、酸化剤をカーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る。
【0029】
詳しく言うと、ステップS13では、酸化剤をこれまでのステップで得られたカーボンナノチューブ分散液に加えた後に、常温で約30分撹拌することで、カーボンナノチューブの表面を酸化剤とまんべんなく接触させて、反応液を得る。
【0030】
ここで用いる酸化剤の例としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウムまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
なお、ステップS13で酸化剤を加える目的は、図2に示されている酸化反応のように、炭素―炭素二重結合を酸化させてカーボンナノチューブの環状構造を解くことにあり、これによりカーボンナノチューブを縦方向に切り開いてグラフェンナノリボンを作成することができる。カーボンナノチューブの切開が効率的に進むかどうかは酸化剤の酸化力に係っており、酸化剤としては過塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、加える酸化剤の量が不充分だと、カーボンナノチューブの切開が不完全になり、結果としてグラフェンナノリボンの収率および純度が低下するので、酸化剤の添加量はカーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であることが好ましく、更に言えば5倍以上であることがなお好ましい。なお、酸化剤の添加量については、少なすぎる場合はカーボンナノチューブの切開に悪影響を与えるが、多すぎても確たる悪影響は無いので、ここでは上限を定めない。
【0032】
ステップS14では、マイクロ波で反応液を加熱し、反応液中のカーボンナノチューブを縦方向に切開してグラフェンナノリボンを作成する。
【0033】
詳しく言うと、ステップS13で得られた反応液にマイクロ波を照射してこれを加熱する。このように、酸化カーボンナノチューブに更にマイクロ波を吸収させると、炭素―炭素二重結合が共振を起こしついには結合が解かれる。これによりカーボンナノチューブを縦方向に速やかに切開して、グラフェンナノリボンを得ることが可能になる。
【0034】
なお、ステップS14において、マイクロ波の出力が低すぎると、一定の時間内に反応液に照射されるマイクロ波の量が不足し、加熱速度が足りなくなり、反応が不完全になる。逆に、マイクロ波の出力が高すぎると、反応液の温度変化が急激になるため加熱時間の制御が難しくなり、反応結果に悪影響を及ぼしかねず、また作業の安全性も損なわれる。よって、ステップS14では、マイクロ波の出力を50Wから2000Wの間、加熱時間を10分以下とし、反応液の温度は50℃から100℃の間であることが好ましく、更に言えば、マイクロ波の出力を150Wから300Wの間、加熱時間を5分以下とし、反応液の温度は60℃から80℃の間であることがなお好ましい。
【0035】
また、上記方法の様に酸化剤を用いてカーボンナノチューブを切開して作成されたグラフェンナノリボンの周縁には、酸化した官能基が形成される。そこで、例えば完全に炭素―水素結合のみからなるグラフェンナノリボンを作成したい場合には、ヒドラジン(H4N2)などの還元剤を加えて、酸化した官能基に還元処理を施せばよい。還元処理に用いる還元剤および反応条件に関しては、周知のものなのでここでは贅説を省く。
【0036】
上記のように、本発明は、カーボンナノチューブがマイクロ波を吸収しやすいという特性を利用したものであり、カーボンナノチューブを分散させた酸性水溶液にマイクロ波を照射すると、カーボンナノチューブにおいて分子の双極子の回転およびイオンの伝導が起きるので、温度を急速に上昇させることができる。これによりカーボンナノチューブの切開が、熱対流を用いて加熱するという従来の方法の10分の1の時間で果たされる。また、本方法によって得られるグラフェンナノリボンはその品質も向上される。
【0037】
以下に実施例を挙げ、本発明に係る上述の及びその他の特徴と効果を更に具体的に説明する。なお、以下の実施例は説明を具体化するために示したものであり、本発明を限定する意図を表したものではないことを理解されたい。
【0038】
実施例1
硫酸水溶液45mlに、リン酸を5ml加えて、酸性水溶液を得た。この酸性水溶液に、図3に示したような多層カーボンナノチューブを0.05g加えてから、常温で約1時間撹拌してカーボンナノチューブ分散液を得た。その後、このカーボンナノチューブ分散液を200Wの出力で2分間マイクロ波加熱することで、カーボンナノチューブに表面修飾を施した。
【0039】
次に、このカーボンナノチューブ分散液に過マンガン酸カリウムを0.25g加えてから常温で30分間撹拌して反応液を得た。そしてこの反応液を150Wの出力で4分間マイクロ波加熱し、反応温度を約65℃に保った。
【0040】
最後に、反応液を減圧濾過して、フィルターに残った残滓を乾燥させ、グラフェンナノリボンを得た。
【0041】
実施例2および実施例3
実施例2および実施例3における作業工程は実施例1とほぼ同様であるが、異なるのは反応液をマイクロ波加熱する時の出力を実施例2では200W、実施例3では250Wとした点である。
【0042】
図4から図6はそれぞれ本発明の実施例1から実施例3で得られたグラフェンナノリボンを透過型電子顕微鏡を通して撮影した写真である。このように、本発明に係る方法に沿って出力150Wから250Wの間で上記反応液をマイクロ波加熱すれば、たった4分間でカーボンナノチューブが切開されグラフェンナノリボンを作成することができる。
【0043】
図7に示したグラフ中のL−1からL−5は、L−1から順に多層カーボンナノチューブ、一般のグラフェンナノリボン、本発明の実施例1〜3で得られたグラフェンナノリボンそれぞれのラマンスペクトルを表している。
【0044】
1360cm−1に現れたピークD(Dバンド)では無定形炭素、即ち炭素―炭素単結合が観察され、1580cm−1に現れたピークG(Gバンド)ではグラファイト、即ち炭素―炭素二重結合が観察される。また、2D(2Dバンド)はDバンドに対して対称的なピークである。図7のL−1およびL−2から、多層カーボンナノチューブの特徴的なピークはGバンドおよび2Dバンドに現れることがわかる。更に、グラフェンナノリボンは炭素―炭素単結合を含んでいるので、L−2にはDバンドも現れている。
【0045】
更に、本実施例1〜3で作成された各グラフェンナノリボンのラマンスペクトルL−3からL−5を、L−1とL−2に比べると、L−3からL−5はすべてL―2と共通の特徴を有していることがわかり、つまりは本発明に係る方法によれば、カーボンナノチューブをマイクロ波加熱して切開することによって従来よりも短い時間でグラフェンナノリボンを作成し得ることがわかる。
【0046】
以上まとめると、本発明に係るグラフェンナノリボンの制作方法におけるマイクロ波加熱は、カーボンナノチューブがマイクロ波のエネルギーを直接吸収するという特性を利用しているので、マイクロ波の出力と照射時間を調節することで温度を急速に上昇させることができ、カーボンナノチューブを効率的に切開することができる。このように、本発明に係る方法によれば、従来の熱対流による加熱と比べて作成にかかる時間を劇的に短縮することができ、これにより得られるグラフェンナノリボンの収率および品質をも向上させることができる。
以上、本発明を具体的な実施例に則して詳細に説明したが、本発明は上記実施例及び添付図面に限定されるものではなく、最も広い解釈の範囲に含まれる種々の変更を網羅していることが意図されていると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、
(b)酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、
(c)マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程と、
を含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項2】
前記分散媒は、pH値が1以上4未満であること
を特徴とした請求項1に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項3】
前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であること
を特徴とした請求項1または2に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で5倍以上であること
を特徴とした請求項1または2に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、 過塩素酸カリウム、 過酸化水素および過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んだこと
を特徴とした請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項6】
前記工程(c)においては、出力が50W〜2000Wの範囲内のマイクロ波を用いること
を特徴とした請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項7】
前記工程(c)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用いること
を特徴とした請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項8】
前記工程(c)においては、マイクロ波を照射する時間が10分以下であること
を特徴とした請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項9】
前記工程(c)においては、加熱された反応液の温度が50℃〜100℃の範囲内であること
を特徴とした請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項10】
前記工程(c)においては、加熱された反応液の温度が60℃〜80℃の範囲内であること
を特徴とした請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項11】
前記工程(b)の前に、前記カーボンナノチューブ分散液にマイクロ波を照射してこれを加熱することにより前記カーボンナノチューブに表面修飾を施す工程(d)を更に含むこと
を特徴とした請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項12】
前記工程(d)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用い、照射する時間は5分以下であること
を特徴とした請求項11に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項1】
(a)カーボンナノチューブを分散媒中に分散させカーボンナノチューブ分散液を得る工程と、
(b)酸化剤を前記カーボンナノチューブ分散液に添加して反応液を得る工程と、
(c)マイクロ波で前記反応液を加熱し、前記カーボンナノチューブを縦方向に切開する工程と、
を含むことを特徴としたグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項2】
前記分散媒は、pH値が1以上4未満であること
を特徴とした請求項1に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項3】
前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で2倍以上であること
を特徴とした請求項1または2に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、添加量が前記カーボンナノチューブに対して重量比で5倍以上であること
を特徴とした請求項1または2に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、 過塩素酸カリウム、 過酸化水素および過マンガン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んだこと
を特徴とした請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項6】
前記工程(c)においては、出力が50W〜2000Wの範囲内のマイクロ波を用いること
を特徴とした請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項7】
前記工程(c)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用いること
を特徴とした請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項8】
前記工程(c)においては、マイクロ波を照射する時間が10分以下であること
を特徴とした請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項9】
前記工程(c)においては、加熱された反応液の温度が50℃〜100℃の範囲内であること
を特徴とした請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項10】
前記工程(c)においては、加熱された反応液の温度が60℃〜80℃の範囲内であること
を特徴とした請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項11】
前記工程(b)の前に、前記カーボンナノチューブ分散液にマイクロ波を照射してこれを加熱することにより前記カーボンナノチューブに表面修飾を施す工程(d)を更に含むこと
を特徴とした請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【請求項12】
前記工程(d)においては、出力が150W〜300Wの範囲内のマイクロ波を用い、照射する時間は5分以下であること
を特徴とした請求項11に記載のグラフェンナノリボンの作成方法。
【図1】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−158514(P2012−158514A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15529(P2012−15529)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(505174633)長庚大学 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(505174633)長庚大学 (7)
【Fターム(参考)】
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