説明

グラフト共重合体を含有する撥剤組成物、グラフト共重合体、およびグラフト共重合体の製造方法

水性連続相、および水性連続相の中で分散したグラフト共重合体を含む撥剤組成物。
グラフト共重合体は、水酸基を有する水溶性の重合体幹ならびに水酸基で置換された炭素原子で重合体幹に結合した含フッ素基を有する枝を持っている。また、グラフト共重合体の製法、および撥剤組成物で基材を処理する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つの要旨において、本発明は、反対の化学的特性(例えば、親水性部分および疎水性部分)が1つの分子に組み合わせられているグラフト共重合体、および該グラフト共重合体を含んでなる撥剤組成物に関する。グラフト共重合体は、幹部分、および該幹からの延長部分(グラフト、すなわち、枝)の両方を含む。
他の要旨において、本発明は、グラフト共重合体の製造方法に関しており、ここで、ラジカルまたはイオン開始を用いて連続相中で行われ、幹からの延長部分の重合を始め、幹とグラフトの組成およびグラフトの数と長さが、グラフト共重合体の最終使用性能に望ましい特定構造を与えるように完全に制御されている。
【0002】
さらなる要旨において、本発明の撥剤組成物は基材に適用され、ここで、いくらかの望ましい様相における最終使用性質、例えば、撥油性、撥グリース性および/または撥水性は、組成物の適用によって向上する。このように処理された基材は、多孔性および表面感触性のようなその未処理状態の望ましい性質をも維持する。
【背景技術】
【0003】
パーフルオロカーボン基を有する物質には、紙、繊維製品、カーペットおよび不織布の用途(例えば「含フッ素重合体の技術」、J.G.Drobny、CRCプレス、2001年、第6章)を含む様々な基材に撥液性を与えることに長い歴史がある。
【0004】
特に、フッ素化合物を含んでいる処理は、紙基材のグリースと油による浸透に対する抵抗を改善する明白な目的のために紙基材を処理するために有益に用いられている。この疎油性は、迅速なサービス・レストラン食品ラップおよびペットフード・バッグのための様々な紙用途、ならびにカーボンレスのファン隔離(fan-apart)の形態および他の特殊な用途において有用である (「紙のサイジング」およびJ.M.Gess& J.M.Rodriquez ed、TAPPIプレス、2005年、第8章)。
【0005】
グラフト共重合体は多くの種類の構造を含んでもよい。典型的には、グラフトおよびブロック共重合体は両方とも2種類以上の単量体の長いシーケンスを持っているとして表示される。グラフト共重合体の全般的な説明が、教科書「重合の原理」、G.G.Odian、Wiley Interscience、1991年、第3版、715-725ページにおいて行われている。この説明はいくつかの経路の中で、セリウム(IV)イオンは、セリウムイオンとのレドックス反応を行うために、セルロースまたはポリビニルアルコールのような第二アルコールを含んでいる幹重合体をもたらすために、使用できることを教示している。得られた重合体ラジカルは重合を開始することができ、それにより、重合体の主鎖に対して単独重合体または共重合体の枝を作成することができる。得られた分岐状共重合体はグラフト共重合体の1種類である。グラフト共重合体は、それらの属性が保持される場合に、構造へ広く種々の単量体の属性を組み合わせるための手段を提供する。
【0006】
Kang-gen Lee(米国特許6,136,896号)は、ジオルガノシロキサンを用いたグラフト共重合体を教示する。しかしながら、幹がグラフト共重合体を作成するために他の単量体と様々な「マクロモノマー」との重合の間に組み立てられ、グラフト共重合体が、幹から構築されず、耐油性と耐グリース性のための用途を有しない。Matakawa(米国特許6,503,313号)は、フッ素で処理されシロキサン基を組込むグラフト共重合体を教示する。得られたグラフト共重合体は、Kang-gen Leeのグラフト共重合体に構造において類似している。得られた組成物は、外部建築物の被覆において主要な末端用途を見いだしている。また、重合中で利用された有機溶媒は、末端用途について好適なものではない。Hinterwaldner(米国特許5,070,121号)は、主として障壁保護および耐食性のためのグラフト共重合体を教示する。このグラフト共重合体は、適用の間に自分で重合し、オリゴマー材料を含んでいるメルトフィルムである。このグラフト共重合体は、本発明中で熟慮した食物接触用途に適していない。
【0007】
Walker(米国特許4,806,581号)は、塊状重合によって調製されたグラフト共重合体を教示する。この文献が、使用可能な単量体のうちの1つとして具体的に記載されていないフルオロアクリレートを含むが、塊状重合法が主要な教示であり、本発明の重合体の調製には物理的に現実的ではない。他のものは、繊維製品の処理用のフルオロアクリレートのブロック共重合体に関して教示する(米国特許第6,855,772、6,617,267、および6,379,753号)。しかし、フルオロアクリレートを含んでいてもよいこれらのグラフト共重合体は単量体または重合体である無水マレイン酸に基づいて調製されている。無水マレイン酸は、繊維製品の繊維への反応的な結合部位を作る。これらの反応性基は、処理溶液における固有の不安定性を示し、本発明を考慮すると欠点がある。
【0008】
本発明と対照的に、Miller (米国特許5,362,847号)は、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの幹を利用し、フルオロアクリレート単量体を幹の上にグラフトするグラフト共重合を教示する。その後、得られたグラフト共重合体は、丈夫なコーティングを作成するために、架橋剤と組み合わせられる。本発明と異なり、この文献は、キシレンのような有毒の有機溶媒においてグラフト重合を行なう。得られた重合体からの有機溶媒の除去には問題があり、残余の溶媒が規制の心配となる。
【0009】
米国特許出願公開US2005/0096444 A1号(リーら)は、ビニル含有単量体とマクロモノマーの組立体から作成されたグラフト共重合体を開示する。これは、上に参考文献として記載したKang-gen Leeの生成物に性質において類似している。これらのマクロモノマー重合体は、酸塩化物によるマクロモノマーの機能化の後に有毒の有機溶媒中で重合される。有機溶媒重合の結果により組み立てられた炭化水素幹鎖は、水酸基を含んでおらず、また、本発明において述べられているような自己乳化剤としてそれも働くことができない。
【0010】
グラフト共重合体の作成で使用される開始剤としてセリウムを使用することが、米国特許2,922,768号において示される。セリウム開始剤は、デンプンおよびセルロースのような天然高分子のグラフトに広く用いられている(米国特許第4,375,535、4,376,852、5,130,394および5,667,885号)。しかし、含フッ素官能性の組み込みは開示されていない。
【特許文献1】米国特許6,136,896号
【特許文献2】米国特許6,503,313号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フッ素化合物による基材処理の利点は広く十分に理解されている。それらの利点を与えるための基材の処理において困難がしばしば発生する。本発明は、多くの工業用含フッ素共重合体の乳化重合を達成するために乳化剤の使用する場合の問題を解決する。これらの乳化剤は、多数の手順において障害となり、基材上の含フッ素共重合体の性能を低下させる。本発明のグラフト共重合体は、幹重合体の水素結合容量によって、基材に対して良好な結合を有する問題を解決する。アクリルアミドのような良好な水素結合共単量体に対する必要性(それは規制の問題である。)は、軽減されるか除去される。さらに、幹重合体の加水分解の程度を減少させることは、疎水性表面への接着を改善するために用い得る。また、本発明は、グラフトの構造に起因して、非常に様々の含フッ素鎖の長さを有する含フッ素ビニル単量体からの有利な性能を提供することができる。フルオロアルキル鎖の長さが従来の重合体において短くされる場合、含フッ素共重合体の性能が低下することがある。本発明は、他の含フッ素共重合体の危険な揮発性有機化合物含量を増加させる共溶媒の必要性を軽減するかまたは除去する。
【0012】
本発明の含フッ素グラフト共重合体は、本発明に複数回にわたってグラフト重合技術を適用することができるという点で、ビニル・パーフルオロアクリレートへの広く分布する反応性比の共単量体を組込む問題を解決する。これは、従来の重合の間に通常に伴う障害なく、1つの幹重合体に非常に様々の共重合体を組込むことを可能にする。本発明は、既存の幹鎖に沿ってグラフトをどのようにして組込むかという難問をも解決する。グラフトされた鎖を作成するために、酸塩化物のような、危険で高反応性の中間体を使用する必要性はない。
【0013】
本発明の含フッ素グラフト共重合体は、連続相が水であるので、含フッ素共重合体の重合を行うために、有機溶媒を構成する有毒および/または揮発性の有機化合物(VOC)を用いる必要性を軽減できる。従って、これらグラフト共重合体が主として水系であるので、これらのグラフト共重合体はほぼすべての処理系に本質的に混和性である。本発明の含フッ素グラフト共重合体は、所望の撥液性を発現するように処理の後に処理基材を加熱キュアする必要性を除去することによって撥剤処理の用途の範囲を拡張できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、安全性と実行の両方の点から上記の利点を備えているグラフト共重合体(1)およびグラフト共重合体を含有する撥剤組成物、ならびにグラフト共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
第1の要旨によれば、本発明の上記の目的は、(2)撥剤組成物であって、撥剤組成物は、水性連続相;および
前記水性連続相中で分散したグラフト共重合体を含んで成り、
該グラフト共重合体は、水酸基を有する水溶性の重合体幹、および水酸基で置換された炭素原子において重合体幹に結合した含フッ素基を有する枝を有している撥剤組成物によって達成される。
好ましい態様において、(3)撥剤組成物は、組成物全体の10重量%以下の量で乳化剤を含む。また、好ましい態様において、(4)撥剤組成物は、組成物全体の50重量%以下の量で溶媒を含む。
【0016】
第2の要旨によれば、本発明の上記の目的は、(5)水酸基を有する重合体に、該幹重合体と連鎖重合できる単量体を連鎖重合させて、該単量体から誘導された幹重合体からの枝を有するグラフト共重合体を形成することを含んでなる、グラフト共重合体の製造方法であって、
中性〜酸性のpH条件下で、重合開始剤の存在下、および実質的に乳化剤がない状態で、該連鎖重合を連続相中で行う、グラフト共重合体の製造方法によって達成される。
【0017】
好ましい態様において、(6)重合開始剤は、酸化剤と還元剤を含む酸化還元系を含んでなり、幹重合体が還元剤であり、酸化剤が多価の金属イオンを含んでなる。
別の好ましい態様において、(7) 酸化剤として働く多価の金属イオンはCe4+を含んでなる。
【0018】
他の好ましい態様において、(8)幹重合体は水溶性または水分散性である。
さらに他の好ましい態様において、(9)連続相は水性連続相である。
さらに他の好ましい態様において、(10)単量体は含フッ素単量体を含んでなる。
さらに他の好ましい態様において、(11)連続相は水性連続相であり、上記(10)に記載の該単量体、すなわち含フッ素単量体は、幹重合体の存在下で、連続層に溶解性または分散性である。
さらに他の好ましい態様において、(12) 上記(10)に記載の該単量体は、幹重合体の不存在下で、連続相に可溶性または分散性でない。
【0019】
第3の要旨によれば、本発明の目的は、(13) 上記(10)に記載の組成物で処理された基材によって達成される。
好ましい態様において、(14)基材は紙、繊維製品、カーペットおよび不織材料から成る群から選択された繊維状の基材である。
別の好ましい態様において、(15)基材は、金属、プラスチック、革、複合物およびガラスから成る群から選択された非繊維状のものであり、処理済および未処理の両方であり、多孔性および非多孔性の両方である。
【0020】
他の好ましい態様において、(16)噴霧、浸漬およびパッディングのいずれかによって、必要により他の化合物と組み合わせて、上記(2)に記載の組成物の溶液を適用することによって製造された、請求項13に記載の処理基材。
さらに他の好ましい態様において、(17)処理基材は、前記基材を形成する間に前記(2)に記載の組成物を組込むことにより、あるいは前記基材を構成する成分に前記(2)に記載の組成物を組み入れることにより製造される。
【0021】
さらに他の好ましい態様において、(18)前記(2)に記載の組成物は、撥剤組成物に基材を浸漬することによって調製された処理繊維状基材へのグラフト共重合体のエグゾースト(吸尽)を向上させるのに充分な種類および量で塩をさらに含んでなり、基材は、撥剤組成物に浸漬する前または後にあるいは前後の両方で加熱されて、過剰な水を除去する。
【0022】
さらに他の好ましい態様において、(19) 本発明は、前記(2)に記載の撥剤組成物に繊維状基材を浸漬することによって製造された処理繊維状基材であって、組成物は3.5以下のpHで基材に配給され、基材へのグラフト共重合体の吸尽を向上させ、基材を加熱して、過剰の水を除去する処理繊維状基材を提供する。
【0023】
さらに他の好ましい態様において、(20) 本発明は、前記(18)に記載の組成物で処理された基材を提供する。
さらに他の好ましい態様において、(21,22,23) 上記(13,19,20)に記載の処理基材は、さらに、洗浄および乾燥の一方または両方に付されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のグラフト共重合体は、親水性および疎水性、および/または親油性の部分を含んでいてよい。本発明のグラフト共重合体は幹重合体を含んでいる。1つの態様において、この幹重合体は、その未変性の状態において、親水性であり、かつ水溶性であるかまたは分散性である。好ましい態様において、幹重合体は水酸基を含んでいる。さらに好ましい態様において、幹重合体は、第一炭化水素幹重合体鎖の炭素上で置換されている第二水酸基を含んでいる。これらの種類の幹重合体の例は、天然および合成デンプン、セルロース、ヘミセルロース、合成ポリビニルアルコールおよびポリビニルアルコール/共ビニルアセテートであってよい。幹重合体は、蛋白質に基づいてもよい。
【0025】
好ましくは、幹重合体はポリビニルアルコール/共ビニルアセテートを含み、さらに好ましくは、ポリビニルアルコールから誘導された単位を主要部分として含んでいる。ビニルアルコール単量体は市販で入手可能ではない。したがって、1つの可能な工業的経路において、酢酸ビニルが連鎖重合によって重合され、所望の分子量とされる。その後、得られたポリ酢酸ビニル(PVAc)は、塩基触媒反応によってメタノールでアルコール分解に付すことができる。アルコール分解度は所望のポリビニルアルコール濃度を与えるように制御される。ポリビニルアルコール/共ビニルアセテートは、CELVOLのような商標の下に、非常に様々のアルコール分解度と分子量で市販により入手可能である。
【0026】
幹重合体の水酸基含量は、幹重合体がその未変性状態で水溶性かまたは水分散性であるような含量である。一般に、幹重合体には、100%のポリ酢酸ビニルから調製されたポリ酢酸ビニル幹重合体の1〜100パーセントの水酸基置換、特に50〜100パーセントの水酸基置換があってもよい。
【0027】
幹重合体鎖上の他の変形において、その自然の状態から100%まで、例えば特定の幹重合体鎖のために20%〜80%の潜在的な水酸基部位を有するように、水酸基濃度は変わってもよい。第一の炭化水素幹重合体鎖の炭素上で置換された水酸基は、好ましくは第二水酸基である。本発明の組成物は上に記述された製造工程によって得られてもよい。
【0028】
水酸基で置換された炭素原子で重合体幹に結合した含フッ素基を有する枝の説明は、グラフト共重合体の合成で使用される含フッ素単量体(および非フッ素単量体)に関する下に示すものに含まれている。グラフト共重合体の1分子当たりの含フッ素基を有する枝の数は、その使用と用途に依存する。一般に、幹重合体と(例えば、ポリフルオロ化基を有するビニル単量体から誘導された)含フッ素基を有する枝との重量比は、1:99から99:1、好ましくは10:90〜90:10、特に25:75〜75:25であってよい。 (例えば、非フッ素ビニル単量体から誘導された)非フッ素の他の枝が、発明の目的を達成するように量で、一般に、グラフト共重合体の、90%までの重量比で、例えば10%〜60%の重量比で存在してもよい。非フッ素単量体も、共重合体グラフト鎖を作成するために含フッ素単量体とともに共重合されてもよい。このグラフト鎖は、ランダムかブロックであってよく、直鎖あるいは分岐状であってよい。
【0029】
撥剤組成物におけるグラフト共重合体の量は、一般に、約5 重量%〜約50 重量%である。水性連続相における分散液として存在する場合、グラフト共重合体粒子は、0.05μm〜2.0μmの平均粒径(直径に相当)を有していてよい。グラフト共重合体は、好ましくは約1,000〜約1,000,000、より好ましくは約20,000〜約200,000の数平均分子量を有する。
【0030】
グラフト共重合体に加えて、発明の目的が得られる限り、撥剤組成物は、特定の制限なしで、グラフト共重合体の安定性および/または性能を改善することを意図するような添加物をさらに含んでいてもよい。
【0031】
連続相は一般に水であるが、全生成物(つまり、撥剤組成物)に基づいて、50重量%まで、好ましくは30重量%まで、最も好ましくは10%までの量で追加的な共溶媒をさらに含んでいてよい。他の好ましい態様において、撥剤組成物は共溶媒を実質的に含んでいない(例えば、連続相は水のみから成る)。
【0032】
本明細書において、「実質的に共溶媒を含んでいない」という用語は、撥剤組成物が、水以外の溶媒を、8重量%までの量、好ましくは2重量%までの量で含んでおり、最も好ましくは水以外の溶媒を含んでいない、ことを意味する。
本明細書において、グラフト共重合体について「水溶性」および「水分散性」という用語は、該物質が水に完全に溶解するかまたは安定したコロイド分散液を形成することを意味する。
【0033】
好ましくは、撥剤組成物は、当該技術で既知の、脂肪アルコールエトキシラートのような乳化剤および他の乳化剤を実質的に含んでいない。本明細書において、「乳化剤を実質的に含んでいない」という用語は、撥剤組成物が、乳化剤を(組成物全体に基づいて)10 重量%未満、より好ましくは1重量%未満で含んでおり、最も好ましくは(検出できる限界で)乳化剤を含んでいないことを意味する。
【0034】
本発明のグラフト共重合体を製造する方法によれば、連鎖重合可能な単量体を、幹重合体鎖から延びて延長部分(グラフト)を作成するために利用する。一般に、これら単量体は、グラフト共重合体における幹重合体と著しく異なった性質および/または性能特性を持っていてよい。好ましい態様において、フルオロアルキルおよび非フルオロアルキル基は、ラジカル的に重合することができる末端基を有する。本発明のグラフト共重合体は、グラフト共重合体を作成するためにこれらの単量体の1つ以上を組込んでいる。さらに好ましい態様は、フルオロアクリレート、シリコアクリレート、脂肪族のアクリレート、および最終使用用途のために有用な他の官能性アクリレート、例えば、アミン、アミドおよびハロゲン化物を含んでいるものからなる単量体の群である。
【0035】
パーフルオロアルキル基含有 (メタ)アクリレート、すなわち、RfMは、次の一般式で表すものであってよい:
Rf─A2─OCOCR18=CH2 (RfM)
[式中、Rfは1〜21の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
R18は、水素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)またはメチル基であり、
A2は二価の有機基である。]
【0036】
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの例としては、次のようなものが挙げられる:

【0037】
[式中、Rfは1〜21の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
R1は、水素または1〜10の炭素原子を有するアルキル基であり、
R2は1〜10の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R3は水素、ハロゲンあるいはメチル基であり、
Arは、置換基を有していてよいアリーレン基であり、
nは1〜10の整数である。]
【0038】
パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては下記のものが挙げられる。
【0039】
CF3(CF2)3(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)3(CH2)2OCOCCl=CH2
CF3(CF2)3(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)3(CH2)2OCOCF=CH2
CF3(CF2)5(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)5(CH2)2OCOCCl=C H2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)6(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
CF3[C6F10(CF2)2]SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)3SO2(CH2)3OCOCH=CH2
CF3(CF2)5SO2(CH2)3OCOCH=CH2
【0040】


【0041】
もちろん、少なくとも2種類のフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートを併用することができる。
パーフルオロアルキル基を有するビニル単量体は、他の含フッ素単量体であってよい。他の含フッ素単量体の具体例としては、CF3(CF2)7CH=CH2のような(例えば、1〜21の炭素原子を有する)含フッ素オレフィンが挙げられる。
【0042】
非フッ素ビニル単量体(VM)の例としては、(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。(メタ)アクリレートエステルは、(メタ)アクリル酸と、一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、二価のアルコール)のような脂肪族アルコールの間のエステルであってよい。
【0043】
非フッ素ビニル単量体の例としては次のようなものが挙げられる:
(メタ)アクリレート、例えば、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル (メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル・モノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリン・モノ(メタ)アクリレート、
β-アクリロイルオキシエチルハイドロジェンスクシネート、β-メタクリロイルオキシエチル-ハイドロジェンフタレート、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、グリコシルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチル酸ホスフェート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジアクリレート;
スチレン類、例えば、スチレンおよびp-イソプロピルスチレン;
(メタ)アクリルアミド類、例えば、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドおよび2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸;
またビニルアルキルエーテルのようなビニルエーテル。
【0044】
それの例としては、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニルのようなビニルハロゲン化物、ビニリデンハロゲン化物、アクリロニトリル、ビニルアルキルケトン、N-ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、4-ビニルピリジンおよび(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0045】
非フッ素ビニル単量体としては、シリコン含有単量体、例えば、(メタ)アクリロイル基含有アルキルシラン、(メタ)アクリロイル基含有アルコキシシランおよび(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンであってよい。
シリコン含有単量体の例としては、
(メタ)アクリロキシトリアルキルシラン、(メタ)アクリロキシ-トリアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシポリシロキサン、(メタ)アクリロキシプロピルトリアルキルシラン、(メタ)アクリロキシプロピル-トリアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルポリシロキサン、アリルトリアルキルシラン、アリルトリアルコキシシラン、アリルポリ-シロキサン、ビニルトリアルキルシラン、ビニルトリアルコキシシランおよびビニルポリシロキサンが挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリロキシプロピルポリシロキサンは、



[式中、R20はHまたはCH3であり、R21はHまたはCH3であり、R22はHまたはCH3であり、R23はHまたはCH3であり、nは1〜100である。]
(例えば、(メタ)アクリロキシプロピルポリジメエチルシロキサン)
であってよい。
【0047】
少なくとも2種類の非フッ素ビニル単量体をも併用することができる。
幹からの重合体枝の生成は、当業者に良く知られている(ラジカル的またはイオン的な)標準方法によって単量体の連鎖重合の開始により行なわれる。好ましい態様において、連続相に溶解性である開始剤は、幹重合体で始まる連鎖重合を始めるために用いられ、重合反応が進むことを可能にする。さらに好ましい態様は、この目的のための酸化還元反応の開始剤を利用する。例は、セリウムイオンあるいは他の酸化剤、例えば、ポリビニルアルコールの幹鎖に沿った遊離基を形成するために、V5+、Cr6+およびMn3+から選択された多価のイオンを使用すること、および次いでその遊離基から重合を進行することである。
【0048】
重合開始剤の他の例は、過酸化物と還元剤の組合せ、無機の還元剤と酸化剤の組合せあるいは無機-有機のレドックス対を含んでいる。特に、幹重合体または含フッ素単量体が、レドックス対の1つの成分として働いてもよい。他の例が、前に参考文献として載せられたOdianによって記述されている。重合開始剤の量は、幹重合体および単量体選択に依存するが、一般に組成物の0.01重量%〜2.0重量%である。
【0049】
本発明の新規で予期しない要旨は、その構造の選択によって、連続相に対して潜在的に可溶性ではないこの重合の単量体のための乳化剤として働くという幹重合体のユニークな能力である。
【0050】
理論に結びつけるものではないが、幹重合体が、重合を可能にするように、連続相における単量体を安定させることを典型的に必要とされる界面活性剤の代替となっている。従来の乳化重合およびマイクロエマルジョン重合において、これら界面活性剤は重合完了の後に除去することが難しく、また、最終重合体の性能および制御能力に害を与えるように作用する。使用された単量体の種々の性質により、重合あるいは得られたグラフト共重合体のいずれかの安定性を向上させる乳化剤および/または共溶媒を加えることが依然として必要であってよい。しかし、これらの量および種類は顕著に減少されている。
【実施例】
【0051】
合成(グラフト共重合体の調製)
本発明のさらに新規かつ予期できない要旨は、重合を行うのに必要な穏やかな条件である。本発明の好ましい態様は、グラフト重合を行うために水性連続相を利用する。開始剤および他の成分の選択に依存して、本発明のグラフト重合は、室温と大気圧の条件、あるいはこれらより高い条件で起こることができる。これらの重合は穏やかな攪拌の下で起こり、合理的な量の時間で過剰の労力を要しないで高度の転換率を与えるように進行する。得られたグラフト共重合体生成物は連続相における安定した分散物である。
【0052】
実施例1
一般に、本発明の実施に適している反応条件は、15℃〜80℃の温度、0psi〜100psiの圧力および5秒〜72時間の重合時間である。中性〜酸性のpH条件(例えば7〜1のpH)下で反応を行うことも好ましい。
【0053】
これらの反応において特に関心のあることは、開始剤と単量体との比、開始剤と幹重合体上の反応部位との比、および開始剤と幹重合体上の反応部位との比である。
【0054】
本発明の重合例は次のとおりである:
1. だいたいの合計反応体積 = 100ml
2. 10,000MWで80%加水分解のポリビニルアルコール(PVA)を約95mlの水に溶解し、室温でN2により溶液をパージし、約6%固体分のPVA溶液にする(プロペラまたは攪拌子による混合、あるいは超混合(ウルトラミキシング)または均質化による)。
3. 水中のセリウムアンモニウムナイトレート(CAN)を調製し、室温でN2でパージする。
4. 室温でN2でフルオロアクリレート単量体をパージする。
5. 攪拌しながら、PVA溶液に、5mlのCAN溶液を注入する。
6. 攪拌しながら、PVA/CAN溶液に所定体積のフルオロアクリレートを注入する。
7. 室温で反応を進行させる。
8. 濃度比に応じて、開始複合(清澄な琥珀色の溶液)は10秒から1時間以上の間続く。
9. 成功する場合、不透明なラテックスの形成が2時間以内に発生する。
10. 乳白色ラテックスの外観は約5〜6時間の後に一定のままでありえる。
11. 1〜2日の後に収率を測定する。
【0055】
実施例2
本実施例は、工程5および6の順序が逆である以外は、実施例1と同じである。
グラフト単量体の添加の後に開始剤を注入する。本実施例において、開始剤の添加の前までに、プロペラまたは攪拌子の使用あるいは超混合または均質化を通じて、追加的な攪拌を適用することができる。
【0056】
実施例3
本実施例は、工程2においてトリプロピレングリコール共溶媒を5重量%固体分で含んでいる以外は、実施例1または2と同じである。
【0057】
実施例4
本実施例は、工程2においてエトキシルされた脂肪アルコール乳化剤を0.5重量%固体分で含んでいる以外は、実施例1または2と同じである。
【0058】
実施例5
本実施例は、工程2においてトリプロピレングリコール共溶媒を5重量%固体分で、およびエトキシル化された脂肪アルコール乳化剤を0.5%固体分で両方を含んでいる以外は、実施例1または2と同じである。
【0059】
本発明の1つの使用できる概略の構造は下に示すとおりである。ここで、RfMとVMが前記のとおりであり、n、m、o、p、q、r、sおよびtがすべて、繰返単位の数を表わす。
グラフト鎖は、ランダム、ブロックあるいはそれらの混合であってよい。
【0060】
実施例6
本実施例は、工程2、3および4のN2パージを除外する以外は、実施例1あるいは2と同じである。すべての材料を注入した後に、N2パージを行う。
【0061】
実施例7
本実施例は、フルオロアクリレート単量体と同じ工程で共単量体を注入する以外は、実施例1または2と同じである。
【0062】
実施例8
本実施例は、フルオロアクリレート単量体、共単量体(s)および/または開始剤を、反応中で部分として注入する以外は、実施例1または2と同じである。
これは、反応の間に各材料の単一か複数の注入であっていてよい。
本発明の1つの使用できる概略の構造は下に示すとおりである。ここで、RfMとVMが前記のとおりであり、n、m、o、p、q、r、sおよびtがすべて、繰返単位の数を表わす。
グラフト鎖は、ランダム、ブロックあるいはそれらの混合であってよい。
【0063】
撥剤組成物の調製
上に記述されるように調製されたグラフト共重合体を、低い剪断の機械混合によって、1重量%〜50重量%の量で、水あるいは主として水を含んでいる水性相の中に分散させる。他の薬剤、限定されるものではないが、例えば、緩衝剤、塗膜形成剤、発泡剤、遮断薬、架橋剤、塩類、生物的制御剤、保存剤、曇り剤、安定剤、水溶性重合体、および/またはバインダーを撥剤組成物に加えてもよい。このように調製された撥剤組成物は安定していて、さらに詳細に下に記述されるような使用のために蓄えられてもよい。
【0064】
撥剤組成物は、さらに撥剤組成物の合計の50%以下で溶媒または有機溶媒または水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。この目的に用いる水溶性有機溶媒の具体例は、アセトン、エチレングリコール・モノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチル・エーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、2-t-ブトキシエタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールあるいはトリプロピレングリコールである。
少なくとも2種類の水水性の有機溶媒を併用して用いることができる。
【0065】
撥剤組成物はさらに、全組成物の0.1〜10重量%の量で、非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を含んでいてもよい。重合体を分散させるために用いられる界面活性剤は、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、両性乳化剤あるいは非イオンの乳化剤であってよい。界面活性剤は、複数の非イオン性乳化剤の混合物、あるいはアニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤の混合物またはカチオン性乳化剤と非イオン性乳化剤の混合物、あるいは両性乳化剤と非イオン性乳化剤の混合物であることが好ましい。混合物において、非イオン性乳化剤の望ましい重量比は1:9〜9:1までである。この目的に用いられた一般的な化学カテゴリーの界面活性剤としては、これらに限定される訳ではないが、エトキシル化されたアルコール、アルキルフェノール、エトキシル化された脂肪酸、エトキシル化された脂肪アルコール、エトキシル化された脂肪族アミン、エトキシル化されたグリセリド、ソルビタンエステル、エトキシル化されたソルビタンエステル、エステル、リン酸エステル、グリセリンエステル、ブロック重合体、プロポキシレート、アルカノールアミド、アミンオキシド、アルキルアミンオキシド、ラノリン誘導体、ヒドロキシスルタイン(sultaines)、アミン・アミド、また非イオン物質用のエトキシル化およびプロポキシ化されたエーテル、脂肪酸塩、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、エーテルカルボキシレート、ナフタリンスルホネート、ホルムアルデヒド縮合物、ならびにアニオン物質用のカルボキシレート、ならびにカチオン物質用のアルキルアミン塩および第四級アンモニウム塩、両性物質用のアルキルベタイン、アラニン、イミダゾリニウムベタイン、アミドベタイン、酢酸ベタインおよびアミンオキシドが挙げられる。
【0066】
非イオンの乳化剤の具体例としては、エチレンオキシドと以下の化合物との縮合生成物、ヘキサデカノール、n-アルカノール、sec-アルカノール、t-アルカノール、オレイン酸、アルカン(C12-C16)チオール、ソルビタンモノ脂肪酸(C7-C19)またはアルキル(C12-C18)アミンなど、ならびにグリコール、アルキルグリコールエーテル、ジグリコールアルキルエーテル、ケトンおよびエステルが挙げられる。
【0067】
アニオン性乳化剤の具体例としては、ナトリウム・アルキル(C12-C18)スルフェート、アルカン(C12-C18)ヒドロキシスルホン酸およびアルケン誘導体ナトリウム塩、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、アルファ-スルホ-オメガ-(9-オクタデケニルオキシ)-アンモニウム塩などがあげられる。
【0068】
カチオン性乳化剤の具体例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルのテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチル-ベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシ-エチレンアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリ-オキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロ-ポリオキシエチレン)アンモニウムクロライドおよびN-[2-(ジエチル-アミノ)エチル]オレアミドハイドロクロライドが挙げられる。
【0069】
両性乳化剤の具体例としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルベタインおよびラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが挙げられる。
少なくとも2種類の界面活性剤を併用して用いることができる。
【0070】
本発明の撥剤組成物は、また分散の均一性を維持するために安定剤を含んでいてもよい。
これらの安定剤は、重合体であってよく、具体例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(エチレンオキシド)、ナトリウムスチレンスルホン酸塩あるいはポリ(アクリル酸)ナトリウム塩が挙げられる。
【0071】
本発明の分散物は、好ましくはコーティング、浸せき、スプレー、パディング、ロール塗布あるいはこれら手順の組合せによって基材に適用することができる。例えば、0.1〜10重量%の固形分を持っている本発明の溶液を用いることができる。セルロース(紙)基材の処理のために調製された例は、本発明のフッ素化合物(全溶液の0.1〜10重量%)と組み合わせた、調理されたエチル化コーンスターチ(溶液の2重量%〜20受領%)の水性混合物から成ってもよい。ナイロンカーペット基材の処理用に調製した例は、本発明のフッ素化合物(全溶液の0.1重量%〜10重量%)と組み合わせた、ステインブロック剤(基材の0.1重量%〜10重量%)および/または発泡剤(全溶液の0.1重量%〜10重要%)の水性混合物を含んでいてよい。
【0072】
処理された基材の調製
基材へのこれらのグラフト共重合体の適用は、特定の制限をしないで当業者によく知られているあらゆる手段によって行ってよい。本発明のグラフト共重合体は、霧吹き、浸せき、パディングあるいは他の手段で基材を処理することによって、基材の性能特性を向上させる目的で基材に適用され、同時に、基材の他の本質的特質を同時に変更しない。この処理の後、基材は、洗浄、乾燥によってさらに加工され、および/または追加の仕上げ処理に付されてよい。本発明の別の新規かつ予想できない要旨は、これらの処理適用中のグラフト共重合体の安定性である。例としては、紙または繊維製品の処理が挙げられ、ここで、本発明のグラフト共重合体が、複数の他の処理剤および/または化合物を含む溶液に添加され、紙または繊維製品の基材に後に適用される撥剤組成物を形成する。既存の撥液処理材料の中にある高い量の乳化剤は、この溶液の化学的安定性および物理的安定性に対して頻繁に有害である。また、基材処理の均一性は、この溶液の不安定性によって悪影響を受ける。
【0073】
本明細書において、用語「組成物で基材を処理する」は、組成物は基材に適用することを意味し、また用語「組成物で基材を処理する」は、組成物に含まれているグラフト共重合体が基材に付着するという結果を与える。
【0074】
処理された基材に組み込まれるグラフト共重合体の量は、基材の性質、グラフト共重合体の組成、および意図した適用に依存する。前に説明したように、処理溶液が調製される。この溶液は、好ましくはコーティング、浸せき、スプレー、パディング、ロール塗布あるいはこれらの手順の組合せによって基材に適用することができる。パディング適用方法の例としては、基材を溶液のバスにパディング(浸漬)し、次いで過剰の液体を搾りロールで除去し、基材の重量に基づいて0.01〜10重量%の乾燥ピックアップ量(基材上の乾燥重合体の重量)を与えることが挙げられる。その後、処理された基材を100〜200℃で加熱することが好ましい。
【0075】
Bottorffへの米国特許出願公開2003/0217824号は、基材としての紙のための様々な処理方法および性能評価試験を記載しているが、これを参照として本明細書に組込む。Yamaguchiへの米国特許6,794,010号は、基材としてのカーペットのための様々な処理方法および性能評価試験を記載しているが、これを参照として本明細書に組込む。久保への米国特許5,614,123号は、基材としての繊維製品のための様々な処理方法および性能評価試験を記載しているが、これを参照として本明細書に組込む。Bradley(ブラッドレィ)への米国特許5,688,157号は、不織布用の様々な性能評価試験を記載しているが、これを参照として本明細書に組込む。ブラッドレィへの米国特許5,688,157号は、フッ素化合物と不織布の内的処理を説明する。その一方で、Cohenへの米国特許5,834,384号(これは参照として本明細書に組込まれる。)に説明されるように、局所的(外的に)に適用されていてもよい。本発明の他の新規で予期できない態様において、処理基材の乾燥を室温で行ってもよいということであり、これにより、所望の撥液性が基材に付与される。
【0076】
他の好ましい態様において、処理された基材は、基材を形成しながら撥剤組成物を組込むことにより調製され、あるいは基材を構成する成分に撥剤組成物を組み込むことにより製造される。例えば、紙の形成方法の間に、本発明の含フッ素化合物は紙の形成直前に、重合体含有薬剤とともに、水性の薄いセルロース繊維液に加えられてもよい。次いで、紙は、プレスされ、表面処理または被覆され、および乾燥される。乾燥は、高い温度あるいは室温の下で行ってよい。
【0077】
本発明の含フッ素組成物でこのように処理された紙は、紙を折り曲げまたはしわにして、セルロース繊維を露出する場合にさえ、油、グリースおよび/または水浸透に対する向上した抵抗性を示す。非表面処理の他の例は、不織布の材料(上に説明した米国特許5,688,157号を参照)の形成においてであってもよく、ここで、本発明の含フッ素化合物を、押出/紡糸に先立って配合される材料およびブルーミング剤と組み合わせてよい。
【0078】
他の好ましい態様において、処理された基材は、基材上にグラフト共重合体を吸尽することにより調製されている。Clarkへの米国特許6,197,378号は、様々な処理方法、配合、およびエグゾースト(吸尽)用途のための試験について記述しており、これを参照として本明細書に組込む。吸尽用途のために調製されるバスは、典型的に、限定されるものではないが、金属塩の添加を必要とするが、金属塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸アルミニウムおよび硫酸クロムが挙げられる。
【0079】
バス組成物のpH値は0.5以上であってよい。また、基材は、バスにおける処理の前または後または両方において、蒸気にさらされる。他の成分、例えば、ステインブロック剤およびバスのpHを調節するのに必要な酸をバスにおいて含むことができる。他の好ましい態様において、処理された基材は、基材上にグラフト共重合体を吸尽することにより調製されている。Jonesへの米国特許第5,851,595および5,520,962号は、様々な処理方法、配合、および吸尽用途のための試験について記述しており、これを参照として本明細書に組込む。バスのpHは3.5未満であるべきである。バス液からの過剰の水は、基材を加熱することによって除去され、基材上にグラフト共重合体を吸尽できる。
【0080】
実施例9〜16
一般に、所定の基材を処理するための処理条件は上に記述された通りである。
紙への特定の用途において、紙基材の内的処理または表面処理のいずれかについて、処理は、水溶液にグラフト共重合体および当技術で既知の他の添加材を添加することによって達成される。内的処理については、水溶液を、紙ウェブの形成の前に木材パルプ繊維と混合させる。表面処理については、水溶液を、浸漬およびプレスあるいは噴霧適用により、形成シートに適用する。
【0081】
紙とボードの表面処理は、溶液が適用されるときに、その間で連続的な紙シートが通過する2つの柔軟な被覆ロールから成るサイズプレスの使用によって典型的に達成される。
【0082】
実験処理装置を実施例9〜16の適用に用いた。装置と紙は、装置上で直接測定して、75%のウェットピックアップを与えた。処理レベルを達成するために十分なグラフト重合体を含有する溶液を、各実施例で用いた。結果は、以下の表1に要約して示す。
【0083】
【表1】

【0084】
基材に適用された時、本発明のグラフト共重合体の適用により与えられた撥液性能は、従来の撥剤に同等であるかあるいは優れている。この撥液性は、この適用のために従来から考えられるもののいずれにも、例えば、水、油、グリース、しみ、土、および当業者に知られているいずれかの他のものにも関係する。この撥液性は、材料への基材の繰り返された露出に対して考慮された耐久性をも有する。
示されている上記のような発明の形態および詳細に種々の変更を行うことは、当業者にとって明白である。そのような変更は、ここに添付する請求項の概念および範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する水溶性重合体幹、および水酸基で置換された炭素原子で重合体幹に結合した含フッ素基を有する枝を有してなるグラフト共重合体。
【請求項2】
水性連続相;および
前記水性連続相の中で分散しているグラフト共重合体であって、水酸基を有する水溶性重合体幹、および水酸基で置換された炭素原子で重合体幹に結合した含フッ素基を有する枝を有してなるグラフト共重合体
を含んでなる撥剤組成物。
【請求項3】
組成物全体の10重量%以下の量で乳化剤を含む請求項2に記載の撥剤組成物。
【請求項4】
組成物全体の50重量%以下の量で溶媒を含む請求項2に記載の撥剤組成物。
【請求項5】
水酸基を有する幹重合体に、該幹重合体と連鎖重合できる単量体を連鎖重合させて、該単量体から誘導された幹重合体からの枝を有するグラフト共重合体を形成することを含んでなる、グラフト共重合体の製造方法であって、
中性〜酸性のpH条件下で、重合開始剤の存在下、該連鎖重合を連続相中で行う、グラフト共重合体の製造方法。
【請求項6】
該重合開始剤は、酸化剤と還元剤を含む酸化還元系を含んでなり、幹重合体が還元剤であり、酸化剤が多価の金属イオンを含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
多価の金属イオンはCe4+を含んでなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該幹重合体は水溶性または水分散性である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
該連続相は水性連続相である請求項5に記載の方法。
【請求項10】
該単量体は含フッ素単量体を含んでなる請求項5に記載の方法。
【請求項11】
該連続相は水性連続相であり、該単量体は、幹重合体の存在下で連続層に溶解性または分散性である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該単量体は、幹重合体の不存在下の連続相において可溶性または分散性でない請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項2の組成物で処理された基材。
【請求項14】
基材は紙、繊維製品、カーペットおよび不織材料から成る群から選択された繊維状の基材である請求項13に記載の処理基材。
【請求項15】
基材は、金属、プラスチック、革、複合物およびガラスから成る群から選択された非繊維状のものであり、処理済および未処理の両方であり、多孔性および非多孔性の両方である請求項13に記載の処理基材。
【請求項16】
噴霧、浸漬およびパッディングのいずれかによって、必要により他の化合物と組み合わせて、請求項1に記載の組成物の溶液を適用することによって製造された、請求項13に記載の処理基材。
【請求項17】
前記基材を形成する間に請求項2の組成物を組込むことにより、あるいは前記基材を構成する成分に請求項2の組成物を組込むことにより製造された請求項13に記載の処理基材。
【請求項18】
組成物は、撥剤組成物に基材を浸漬することによって調製された処理繊維状基材へのグラフト共重合体の吸尽を向上させるのに充分な種類および量で塩をさらに含んでなり、基材は、撥剤組成物に浸漬する前または後のいずれかであるいは前後の両方で加熱されて、過剰な水を除去する請求項2に記載の組成物。
【請求項19】
請求項2に記載の撥剤組成物に繊維状基材を浸漬することによって製造された処理繊維状基材であって、組成物は3.5以下のpHで基材に配給され、基材へのグラフト共重合体の吸尽を向上させ、基材を加熱して、過剰の水を除去する処理繊維状基材。
【請求項20】
請求項18に記載の組成物で処理された基材。
【請求項21】
さらに、洗浄および乾燥の一方または両方に付されている請求項13に記載の処理基材。
【請求項22】
さらに、洗浄および乾燥の一方または両方に付されている請求項19に記載の処理基材。
【請求項23】
さらに、洗浄および乾燥の一方または両方に付されている請求項20に記載の処理基材。

【公表番号】特表2009−503124(P2009−503124A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506085(P2008−506085)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/JP2006/315890
【国際公開番号】WO2007/018276
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】