説明

グリコシル化された基質から切断される末端単糖の固相検出

本発明は、炭水化物を分析する新規方法に関する。本発明は、グリコシル化基質から放出され得る末端単糖を、例えばエキソグルコシダーゼを用いて検出することにおいて特に有用である。グリコシル化基質からの放出後、末端単糖を固体支持体上で捕捉し、ボロネート検出剤と一緒にインキュベートし、ボロネート検出剤の助けによって検出することができる。本発明の方法は、炭水化物の配列決定を含む様々な目的のために有用であり、そこでは、所定の特異性を有するエキソグリコシダーゼが放出のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用した全ての特許および非特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、炭水化物分析の分野に関する。詳細には、本発明は、炭水化物鎖の末端の糖残基を同定する方法、および生体試料で見られる炭水化物などの炭水化物を配列決定する新しい方法に関する。したがって、一態様では、本発明は、炭水化物検出および構造的特徴付けの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
炭水化物は、天然には多くの形態で存在する。ヒトを含む動物では、例には溶液中の遊離の還元糖(例えば血清中の単糖グルコース)、溶液中の遊離のオリゴ糖(例えばミルク中の二糖ラクトース)が含まれ、それらは、セラミドなどの脂質(ガングリオシドの場合のように)に共有結合しているか、またはホスファチジルイノシトールを通して膜アンカーに結合している様々なアミノ酸(例えばアスパラギン、セリン、スレオニン、他)との共有結合を通して、ペプチドまたはタンパク質に結合することができる。糖は、グルクロニドなど、代謝に関与する一部のものを含む、多くの小分子に結合しているのも見られる。上記の例では、糖鎖の長さは、1から100個を超える糖残基まで変動することができる。
【0004】
細菌および植物を含む下等生物では、さらにより多くの構造が存在する。細菌細胞の表面は、数千残基の長さの糖重合体によって覆われることができ、それらは、細菌の検出における抗原として、およびワクチンとしての役をすることができる。糖は、細菌細胞壁に不可欠な部分である。糖は、それ自体抗生物質(アミノグリコシド抗生物質、例えばストレプトマイシンなど)であることができ、または、抗生物質(例えばエリスロマイシンおよびバンコマイシン)の必須成分として、酵素阻害剤(アカルボースの場合のように)として、もしくは抗癌剤(例えばカリケアマイシン)として見出すことができる。
【0005】
特に関心のある1つの領域は、糖タンパク質および糖脂質に結合して見出される炭水化物鎖(グリカン)の構造である。糖タンパク質のグリコシル化パターンは、それらの生物学的利用率、それらのターゲティングを含むそれらの生物学的機能にとって重要であることが示され、腫瘍細胞の転移可能性と直接関連付けされている。例えば、ヒト血清トランスフェリンのグリコシル化パターンは、炭水化物欠乏グリコシル化症候群と呼ばれる一連の遺伝疾患の診断試験として用いられている。特定の糖脂質配列が、糖尿病においてニューロン発達および細胞表面シグナル伝達に関与することが示され、それらがその特徴であるテイ・サックスなどのある特定の代謝疾患で蓄積される。
【0006】
上記のオリゴ糖および多糖類の糖残基間の結合は、αまたはβ配置を有することができ、グリカンは多重分枝であることができる。したがって、グリカン鎖に可能な構造の多様性は甚大であり、したがって、それらの構造的特徴付けは本質的に複雑である。したがって、研究、診断、組換え糖タンパク質のグリコシル化のモニタリングおよび新しい医薬用薬剤の開発において、炭水化物およびグリカン構造の検出、構造的特徴付け、同定、定量および化学的/酵素的操作の方法に強い関心がある。この最後の場面では、エリスロポイエチンなどの組換え糖タンパク質薬剤のグリカン鎖の末端ガラクトシル化およびシアル化の程度は、その効果にとって極めて重要である。
【0007】
炭水化物構造の分析のためにいくつかの方法が現在用いられ、これらは最近レビューされている。未誘導体化オリゴ糖および糖脂質は、NMR分光法、質量分光分析およびクロマトグラフィーによって分析することができる。ずっとより大きな糖タンパク質については、質量分光分析はより限定された情報を提供するが、それらのタンパク分解消化物、すなわち糖ペプチドの分析は、広く用いられている。未誘導体化オリゴ糖に関する間接的な構造情報を、レクチン、抗体または酵素などの炭水化物結合タンパク質と相互作用するそれらの能力から推測することもできる。
【0008】
炭水化物自体は特徴的な発色団を有さず、N−アセチル基だけであり、光学的または分光学的検出によってそれらの分離をモニタリングすることは、通常用いられない。しかし、ポリオールのパルス化電流測定検出は、クロマトグラフィーにおいて検出のための重要な技術となってきた。この技術は、溶液中の単糖の検出および同定にも適用されている。
【0009】
炭水化物の高感度検出のために最も広く使われている方法は、放射性TAGまたは蛍光TAGによる還元末端(ラクトール、ヒドロキシアルデヒドおよびヒドロキシケトンの互変異性体)の標識である。糖タンパク質および糖脂質から炭水化物を切断して、糖タンパク質(エキソグリコシダーゼまたは酸加水分解によって放出される単糖を含む)、糖脂質および他の複合糖質からの必要とされる還元糖の生成を可能にする、化学的および酵素的方法の両方が記載されている。最も一般的には、そのような還元糖は、還元アミノ化条件下、すなわち、最初に形成されるイミン(C=N)がアミン(CH−NH)に還元されて安定結合を生成する条件下で、蛍光分子のアミノ含有誘導体と反応させられる。ほとんどの場合、標識反応は、大きく過剰な標識剤を用いて溶液中で実施されてきた。このことは、分析の前またはその間に、過剰な標識剤およびその副産物の分離を必要とする。質量分光分析で役立つ他のTAGは、アミノ化または還元アミノ化によって同様に加えられ、次に、質量分光器によって検出が実施される。
【0010】
特異的検出を可能にするために標識が加えられると、その後、上記の炭水化物(単糖を含む)を分離および検出/定量にまわすことができる。特異的グリコシダーゼがタグを付けた炭水化物に作用する場合、それらは、1つまたは複数の糖残基を切断し、例えば、HPLC、CEでの蛍光検出器、またはSDS−PAGEでのそれらの移動性の変化によって検出されるクロマトグラフィーもしくは電気泳動の移動性の変化、あるいは、質量分光器におけるm/z値の変化によって検出されるそれらの質量の変化を引き起こすことができる。より高いスループット分析を提供するために、多数の酵素を用いた。
【0011】
下で、先行技術の短い概要を提供する。
【0012】
Gao et al. 2003は、溶液中の炭水化物の誘導体化に適する技術をレビューしている。溶液中では、炭水化物は還元アミノ化によって誘導体化することができる。一般に、アミンの−NH2基は、還元糖のアルデヒド基またはケトン基と反応し、それによって−C=N構造の化合物を生成することができる。そのような化合物は、例えばNaCNBH3によってさらに還元することができる。Gao et al., 2003は、グリコシル化された基質から放出される末端単糖の捕捉または検出を開示していない。
【0013】
米国特許第5,100,778号は、識別標識をオリゴ糖の還元末端残基に置くこと、複数の別々の部分に分割すること、各部分を、例えば特異的グリコシダーゼで処理すること、生成物をプールすること、および得られたプールを分析することを含む、オリゴ糖配列決定の方法を記載している。この文書は、固定化された末端単糖を記載していない。
【0014】
米国特許第4,419,444号は、炭水化物残基を含有する有機化合物を、反応性−NH2基を有する支持体に化学的に結合する方法を記載している。この方法は、炭水化物のC−C結合の切断によって反応性アルデヒドを生成する炭水化物ジオールの過ヨウ素酸酸化、または−CH2OH基の−CHO基への酵素的酸化を含む。両方の酸化は、炭水化物の構造の変化を起こす。反応性アルデヒドは、−NH2基との反応によって固定化することができる。炭水化物含有化合物の固定化の後、安定性を高めるために還元ステップ(例えば、NaBH4を用いる)を実施することができる。この文書には、炭水化物含有化合物から切断した後の、単一の単糖の固定化が記載されていない。さらに、炭水化物の化学的性質は変化させられており、この変化は、グリコシダーゼによる特異的な酵素的切断などの、さらなる調節を損なう可能性がある。この文書には、それへの分子構造の付加をもたらす、固定化炭水化物への化学試薬の添加も記載されていない。
【0015】
国際公開第92/719974号は、オリゴ糖の配列決定方法を記載している。この方法は、固体支持体へのオリゴ糖の固定化、および以降の様々なグリコシダーゼによる処理を含む。固定化の前に、オリゴ糖をコンジュゲート体に連結することができる。この文書には、固定化された末端単糖の調節も、実際、本発明のタグ付き化合物による処理も記載されていない。
【0016】
Lohse et al.(「Solid-Phase Oligosaccharide Tagging (SPOT): Validation on Glycolipid-Derived Structures」、Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 4167-4172)は、糖脂質由来の構造物上での固相オリゴ糖タグ付けを開示しているが、この論文には、固定化単糖の分析前のグリコシル化基質からの末端単糖の切断も、実際、本明細書で開示される特定のボロン酸化合物の使用も開示されていない。
【0017】
過去には、溶液中の炭水化物を標識および検出するために、例えば以下の文献で開示されているものなど、様々なボロン酸化合物が用いられてきた。
【0018】
・「Boronic Acids: Preparation, Applications in Organic Synthesis and Medicine」、Dennis G. Hall編、Wiley-VCH出版、特にchapter 12および13(「Boronic Acid-based receptors and sensors for saccharides」および「Biological and medicinal applications of boronic acids」)。
【0019】
・Yan et al.、「Boronolectins and Fluorescent Boronolectins: An Examination of the Detailed Chemistry Issues Important for the Design」、Medicinal Reseach Reviews, Vol. 25, No. 5, 490-520, 2005
・Mulla et al.、「3-Methoxycarbonyl-5-nitrophenyl boronic acid: high affinity diol recognition at neutral pH」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter 14 (2004) 25-27
・Dowlut et al.、「An Improved Class of Sugar-Binding Boronic Acids, Soluble and Capable of Complexing Glycosides in Neutral Water」、J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 4226-7
・Hoeg-Jensen.、「Preparation and Screening of Diboronate Arrays for Identification of Carbohydrate Binders」、QSAR Comb., Sci. 2004, 23
・Boduroglu et al.、「A calorimetric titration method for quantification of millimolar glucose in a pH 7.4 aqueous phosphate buffer」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter 15 (2005) 3974-3977
・Davis et al.、「Simple and Rapid Visual Sensing of Saccharides」、Organic Letter, 1999 Vol. 1, No. 2, 331-334
・He et al.、「Chromophore Formation in Resorcinarene Solutions and the Visual detection of Mono- and Oligosaccharides」、J. Am. Chem. Soc. 2003, 124, 5000-5009
・Gray et al.、「Specific sensing between inositol epimers by a bis(boronate)」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15 (2005) 5416-5418)
しかし、前述化合物のいずれも、固体支持体に固定化された炭水化物、また、実際、固体支持体に結合した末端単糖を標識および検出するために用いられなかった。
【0020】
上のセクションには、グリカンの生物学的重要性および複雑性が記載され、ボロネートなどのTAGを、炭水化物含有分子から切断した後の固定化された末端単糖にではないが、単糖を含む糖に結合させることのいくつかの利点が要約されている。現在まで、そのようなTAG結合は、大いに過剰なタグ付け剤(および、しばしば還元剤などの追加の化学薬剤)を用いて溶液中で実施されてきただけであり、したがって、検出またはさらなる操作の前に適用すべき、時間を要し、しばしば困難な分離技術を必要とする。したがって、反応開始物質、試薬、副生成物および求める後統の生成物を分離するための複雑な方法を必要とせずに、末端単糖の同定を通して炭水化物をより簡単に配列決定することを可能にする簡単な方法を非常に必要としている。本明細書で、そのような簡単な方法を記載する。
【発明の概要】
【0021】
溶液中では、単糖は主に環状の形態で見られる。したがって、溶液中では、アルドヘキソースは例えば主にピラノースとして存在し、より小さな分画はフラノースとして存在する。非常に小さい分画だけが、開鎖アルデヒドまたは水和物として存在する(例えば、Zhu et al., 2001, J. org. Chem, 66:6244-6251を参照のこと)。興味深いことに、Dowlut et al., 2006, J. Am. Chem. Soc, 128: 4226-4227は、「非還元糖およびグリコシドに結合することが証明されているボロン酸単位はまだない」(4226頁、第1段8〜10行)と述べている。この文書には、グリコシドに極めて低い親和性(22〜34M-1の範囲のKa)で結合するだけである、特定のオルソ置換アリールボロン酸がさらに開示されている。したがって、還元剤が存在しない溶液中では、非常に小さい分画の単糖だけがボロネートと相互作用することができる。
【0022】
上記から明らかなように、糖の特定の立体配置構造は、ボロン酸またはボラネートと相互作用する能力にとって非常に重要である。先行技術には、固定化された糖がボロン酸またはボロネートの結合を可能にする立体配座を採用することができるかどうかについて記載されてもおらず、ヒントも提供されていない。興味深いことに、本発明は、ボロネートが、固定化された末端単糖の検出に有用である可能性を開示する。実際、本発明は、タグ付けされたボロネートを用いて、固定化された末端単糖を視覚的に検出することさえできることを開示する。
【0023】
したがって、本発明は、グリコシル化された基質上の末端単糖の分析方法を提供し、前記方法は、
(i)好ましくはエキソグリコシダーゼを用いて前記グリコシル化基質から前記単糖を分離するステップ、
(ii)前記分離した単糖を固体支持体上の捕捉基に共有結合させるステップ、
(iii)前記共有結合された単糖を、式X:
TAG−R−ボロネート
(式中、
TAG=検出可能なタグ部分、
R=有機部分、
ボロネート=ボロン酸部分またはそのエステル)
を有する検出剤と一緒にインキュベートするステップであって、前記ボロネートは前記R基に含まれる炭素原子に結合されるステップ、
(iv)検出剤を単糖に結合させるステップ、
(v)単糖に結合した検出剤を検出するステップを含む。
【0024】
好ましくは、前記検出剤は、TAG−R−B(OH)2、TAG−R−B(OH)(OR’)またはTAG−R−B(OR’)(OR’’)から選択される式を有し、
上式で、R’およびR’’は脂肪族または芳香族でよく、任意選択でRと共有結合する。
【0025】
グリコシル化された基質に含まれる単糖の効率的な配列決定を可能にするために、前記方法に含まれるステップは、(本明細書の下でさらに記載されるように)少なくとも1回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上繰り返すことができる。本方法は、同じグリコシル化された基質上の異なる炭水化物鎖について実施することおよび/または1回を超えて繰り返すこともできる。
【0026】
本発明の方法は、生物薬剤などの組換え糖タンパク質の末端グリコシル化パターンの検出、同定および定量に適用することができ、例えば、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖類およびオリゴ糖などのグリコシル化基質上に存在する末端の単糖類残基を同定および定量するために適用することができる。詳細には、本方法は、末端シアル化糖タンパク質と末端ガラクトシル化糖タンパク質とを区別することが示されている。
【0027】
したがって、一実施形態で、本発明の方法は、ある病的状態と関連する特定のグリコシル化パターンを特定するために用いることができる。したがって、本発明のさらなる態様では、異常な糖タンパク質グリコシル化と関連する疾患の診断方法であって、患者から得られた糖タンパク質の試料に、本明細書で開示される方法を適用することを含む方法が開示される。
【0028】
本発明の方法は、生成物の細菌汚染について検査するために有利に用いることもでき、したがって、本発明の他の態様では、医薬用生成物などの生成物の細菌汚染についてモニタリングする方法であって、前記生成物の試料に、本明細書で開示される方法の1つを適用することを含む方法が提供される。
【0029】
さらに、本発明の方法での使用に適する検出剤、ならびに単糖と前記検出剤との間で形成される共有結合付加物が本明細書で開示される。さらに、本発明による検出剤での使用に適する蛍光化合物が開示される。
【0030】
本発明の他の態様では、本発明の方法で用いるために適する部品キットであって、少なくとも1つの固体支持体、少なくとも1つの捕捉基、および本明細書で開示される検出剤の1つまたは複数を含む、部品キットが開示される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】エキソグリコシダーゼを用いるグリコシル化基質からの末端単糖の放出。本実施例では、エキソグリコシダーゼは、末端のβ−ガラクトース残基を切断して基質から遊離の単糖(D−ガラクトース)を放出し、脱ガラクトシル化アグリコンを残すβ−ガラクトシダーゼである。
【図2】2種類の捕捉基を用いる固体支持体上の単糖の捕捉およびさらなる任意選択の処理。放出された単糖Bの閉鎖形態と開鎖カルボニルとの間の平衡を、Dに示す。カルボニルの形態は、E上の固定化−NH2基と反応して水を失い、Gを与える。G中の未反応の−NH2基をキャップしてIを与えることができ、I中のC=N結合を還元してJを与えることができ、−NH基をキャップしてLを与えることもできる。最初の捕捉生成物Gを直接Kに還元することもでき、それをさらにキャップしてLを与えることができる。−YH捕捉基を有する第二の型の固体支持体Fは、付加によってDの開鎖カルボニル基と直接反応してHを与えることもできる。
【図3】共有結合付加物Nを形成する、検出剤TAG−R−ボロネート(M)と捕捉された単糖(G〜Lのいずれか、図2)との反応。G〜L(図2)のいずれかの概略図は、固定化単糖が、ホウ素原子に結合することができるジオールを含有することを示す。他の結合基、例えばトリオール、アミノアルコールまたはヒドロキシ酸も可能である。TAGは、固体支持体の摂動を通して、直接または間接に検出することができる。
【図4】競合リガンドOを用いる、不溶性複合体Nから溶液への結合したTAG−R−ボロネート(P)の戻し放出。Pの構造は、競合リガンドの構造によって決まるが、ホウ素原子に結合したOH、ORまたはN基を組み込む。
【図5】TAG−R−ボロネートMの構造a〜cの例。a)フェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAG置換基は、ホウ素に対してo、mまたはpであることができる例:X=m−NH、TAG=テトラメチルローダミン;b)o−アミノメチル部分を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAG置換基は、ホウ素に対してo、mまたはpであることができるR=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたアリール。例:X=p−NH、TAG=テトラメチルローダミン、R=Me;c)置換されたo−アミノメチル部分を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたアリール。例:X=CH2、TAG=テトラメチルローダミン、R=Hボロネートの遊離酸型を示すが、エステルも含意される。
【図6】TAG−R−ボロネートMの構造の例d〜f。d)電気陰性置換基を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAGおよびY置換基は、ホウ素に対してo、mまたはpであることができるY=電気陰性基、例えばNO2、COOR、CN、COR、SO2OH、SO2R、CF3(R=H、アルキルまたはアリール)例:Y=m−NO2、X=m−CONHCH2CH2NH−、TAG=リサミン(Lissamine)(2);e)ピリジンボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、BおよびX−TAG置換基は、環窒素に対してo、mまたはpであることができる例:X=m−NH、m−B(OH)2、TAG=テトラメチルローダミン;f)スルホンアミドまたはスルホン置換基を有するフェニルボロン酸誘導体:Sは、ホウ素に対してo、mまたはpであることができるX=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NR(R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたアリール)例:X=NHCH2CO、TAG=テトラメチルローダミン。ボロネートの遊離酸型を示すが、エステルも含意される。
【図7】TAG−R−ボロネートMの構造の例g〜i。g)o−ヒドロキシメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAG置換基は、ホウ素に対してo、mまたはpであることができる例:X=p(CH2に対して)−NH、TAG=テトラメチルローダミン(1);h)置換されたo−ヒドロキシメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、CO例:X=CH2CO、TAG=テトラメチルローダミン;i)第四級アンモニウム置換基を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、R=H、アルキルシクロアルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたシクロアルキル、置換されたアリール。例:R=CH2CO、TAG=テトラメチルローダミン。ボロネートの遊離酸型を示すが、エステルも含意される。
【図8】TAG−R−ボロネートMの構造の例j〜l。j)複数のアリールボロン酸を有する誘導体;X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、Y=連結部分X−TAG置換基は、アリール基または連結部分の上にあることができる例:Ar=フェニル、Y=m,m−CH2 TAG=テトラメチルローダミン;k)芳香族複素5員環のボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAGおよびB(OH)2置換基は、o、mであることができるM=N、O、S例:X=o(Mに対して)−CO、TAG=テトラメチルローダミン、m(Mに対して)−B(OH)2。l)融合環を有するフェニルボロン酸誘導体:X=アルキル、アリール、ヘテロアリール、置換されたアルキル、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール、融合したアルキルまたはヘテロアリール環、NH、O、S、CO、X−TAG置換基は、ホウ素に対してo、mまたはpであることができる環は、任意の2つの隣接位置で融合してもよい環は置換されてもよい例:o−ナフタレン誘導体の:X=m−NH、TAG=テトラメチルローダミン、融合環=フェニル。ボロネートの遊離酸型を示すが、エステルも含意される。
【図9】いくつかのキャッピング剤の構造。
【図10】捕捉ビーズの合成
【図11】蛍光ヒドロキシメチル−ボロネート1の合成
【図12】蛍光ニトロ−ボロネート2の合成
【図13】1による処理済捕捉ビーズの染色、およびグリセロールによる染色ビーズからの1の溶出。上パネル:AFet+およびGal−stdと命名したビーズは外観が明赤色であり、他は白色である。中央パネル:グリセロールによる洗浄の後、全てのビーズの外観は白色である。下パネル:AFet+およびGal−stdと命名したビーズのグリセロール洗浄液の外観は明赤色であり、他は透明である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
脂肪族基:脂肪族化合物は、炭素原子が環よりもむしろ直鎖状または分枝鎖状に結合している非芳香族の有機化合物である。脂肪族には、脂肪酸およびパラフィン炭化水素(アルカン)の他の誘導体だけでなく、不飽和化合物、例えばエチレン(アルケン)およびアセチレン(アルキン)も含まれる。炭素鎖に結合している最も高い頻度で発見される非炭素原子には、水素、酸素、窒素、硫黄および様々なハライドが含まれる。シクロアルカンなどの脂環式化合物は、それらの化学構造に1つまたは複数の非芳香環を有する脂肪族化合物である。ビシクロアルカンは、1つまたは2つの炭素の位置で結合した2つの炭素環を有する。ほとんどの脂肪族化合物は非常に発熱性の燃焼反応を有し、したがって、例えば、メタンなどの炭化水素が研究室のブンゼンバーナーに燃料を供給することを可能にする。
【0033】
脂肪族残基は、任意選択で置換された直鎖状の脂肪族残基、または任意選択で置換された分枝状の脂肪族残基であってよい。脂肪族残基は、任意選択で置換された環状アルキルであってもよい。「環状アルキル」には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルなどの基、ならびに上で定義される直鎖および分枝鎖アルキル基で置換された環が含まれ、多環式アルキル基、例えばそれらに限定されないがアダマンチルノルボルニル、およびビシクロ[2.2.2]オクチル、ならびに上で定義される直鎖および分枝鎖アルキル基で置換された環も含まれる。したがって、非置換のアルキル基には、一級アルキル基、二級アルキル基および三級アルキル基が含まれる。非置換のアルキル基は、リガンドの1つまたは複数の炭素原子、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子に結合することができる。環状脂肪族残基は、例えば、C5〜C16シクロアルキル基を含むか、それからなることができる。一般にシクロアルキルがアリールまたはヘテロアリール残基で置換される場合は、より短い鎖長が生成してもよい。一実施形態では、任意選択で置換された脂肪族残基は、C5〜C20アルキル基を含むか、それからなる。一般にアルキルがアリールまたはヘテロアリール残基で置換される場合は、より短い鎖長が生成してもよい。アリールまたはヘテロアリールで置換されたアルキル基のさらなる例には、例えば、直鎖状(C1〜C10)、分枝状(C4〜C10)または環状(C5〜C10)の基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基などのプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などのブチル基、n−アミル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基などのペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基などのオクチル基、n−ノニル基などのノニル基、n−デシル基などのデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、メンチル基、2,3,4−トリメチル−3−ペンチル基、2,4−ジメチル−3−ペンチル基などが含まれる。2つの好ましい脂肪族基は、エチルまたはメチル基である。
【0034】
芳香族の基:用語「芳香族」または「アリール」部分は、単環式または多環式の炭化水素基を意味し、それは、アレーンおよびそれらの置換生成物を含む環状、脱局在化(4n+2)パイ電子系を有する。本発明での使用に適する芳香族部分の例には、それらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、トルエン、チオフェンおよびピリジンが含まれる。
【0035】
炭水化物:総称「炭水化物」には、単糖、オリゴ糖および多糖、ならびに、カルボニル基(アルジトール)の還元、カルボン酸への1つまたは複数の末端基の酸化または、水素原子、アミノ基、チオール基もしくは類似したヘテロ原子基による1つまたは複数のヒドロキシ基の置換によって単糖から誘導される物質が含まれる。それには、これらの化合物の誘導体も含まれる。
【0036】
単糖類:本状況では「単糖類」は単糖を指し、それは、例えば、アルドース(ポリヒドロキシアルデヒド)、ケトース(ポリヒドロキシケトン)、それらの酸化誘導体、例えばアルデュロン酸(例えばグルクロン酸)、ケトアルドン酸(例えばシアル酸またはKdo)、ならびにそれらのデオキシ誘導体およびアミノ誘導体であることができる。
【0037】
糖:本明細書で用いられる用語「糖」は、単糖、オリゴ糖、多糖、ならびに単糖、オリゴ糖または多糖を含む化合物を包含する。用語「炭水化物」および「糖」は、本明細書で互換的に用いられる。
【0038】
オリゴ糖/多糖:オリゴ糖および多糖は、グリコシド状に連結した単糖からなる化合物である。一般に、多糖は少なくとも10個の単糖残基を含むが、一般のオリゴ糖は2〜20個の範囲の単糖を含む。オリゴ糖および多糖は、直鎖状または分枝状であることができる。
【0039】
TAG:本状況および図1(下記参照)で、用語「TAG」は、他の分子に共有結合し、それによって共有結合を経た前記他の分子を標識することができる、任意の原子、分子または実体を示すものとする。
【0040】
単糖:親単糖は、3つ以上の炭素原子を有するポリヒドロキシアルデヒドH−[CHOH]n−CHOまたはポリヒドロキシケトンH−[CHOH]n−CO−[CHOH]m−Hである。総称「単糖」(オリゴ糖または多糖と対照的に)は単一の単位を表し、他のそのような単位へのグリコシド連結はない。それは、親化合物は(潜在的な)カルボニル基を有する場合は、アルドース、ジアルドース、アルドケトース、ケトースおよびジケトース、加えてデオキシ糖およびアミノ糖、ならびにそれらの誘導体を含む。単糖の好ましい例は、4〜9個の範囲の炭素を含み、例えば、ポリヒドロキシアルデヒドについては、nは3〜8の範囲の整数であり、ポリヒドロキシケトンについては、n+mは3〜8の範囲の整数である。用語「単糖」は、単糖誘導体、例えば、酸化、脱酸素、好ましくは水素原子、アミノ基またはチオール基による1つまたは複数のヒドロキシル基の置換、ならびに、ヒドロキシ基またはアミノ基のアルキル化、アシル化、硫酸化またはリン酸化によって得られるものを含むこともできる。その全ては本発明の方法を用いて識別可能であると予想される、様々なカテゴリーの単糖を下に記載する:
・アルデヒドカルボニルまたは潜在的なアルデヒドカルボニル基を有する単糖は、アルドースと呼ばれ、ケトンカルボニルまたは潜在的なケトンカルボニル基を有するものは、ケトースと呼ばれる。用語「潜在的なアルデヒドカルボニル基」は、閉環から生じるヘミアセタール基を指す。同様に、用語「潜在的ケトンカルボニル基」は、ヘミケタール構造を指す。
・5員環(テトラヒドロフラン)を有する糖の環状ヘミアセタールまたはヘミケタールはフラノースと呼ばれ、6員環(テトラヒドロピラン)を有するそれらはピラノースと呼ばれる。
・2つの(潜在的)アルデヒドカルボニル基を含有する単糖は、ジアルドースと呼ばれる)
・2つの(潜在的)ケトンカルボニル基を含有する単糖は、ジケトースと呼ばれる
・1つの(潜在的)アルデヒド基および1つの(潜在的)ケトン基を含有する単糖は、ケトアルドースと呼ばれる。
・アルコールのヒドロキシ基が水素原子によって置換された単糖は、デオキシ糖と呼ばれる
・アルコールのヒドロキシ基がアミノ基によって置換された単糖は、アミノ糖と呼ばれる
ヘミアセタールのヒドロキシ基が置換される場合、化合物はグリコシルアミンと呼ばれる。
・CHOH基による単糖のカルボニル基の置換から形式的に生じる多価アルコールは、アルジトールと呼ばれる。
・カルボキシ基によるアルデヒド基の置換によってアルドースから形式的に誘導されるモノカルボン酸は、アルドン酸と呼ばれる。
・カルボニル基による第二のCHOH基の置換によってアルドン酸から形式的に誘導されるオキソカルボン酸は、ケトアルドン酸と呼ばれる。
・カルボキシ基によるCH2OH基の置換によってアルドースから形式的に誘導されるモノカルボン酸は、ウロン酸と呼ばれる。
・カルボキシ基による両方の末端基(CHOおよびCH2OH)の置換によってアルドースから形成されるジカルボン酸は、アルダル酸と呼ばれる。
【0041】
グリコシド:グリコシドは、糖のヘミアセタールまたはヘミケタールのヒドロキシ基と第二の化合物のヒドロキシ基との間の水の除去によって形式的に生じる、混合されたアセタールである。2つの成分間の結合は、グリコシド結合と呼ばれる。
グリコシル化基質上の末端単糖の分析方法
本発明の第一の態様では、グリコシル化基質上の末端単糖の分析方法が提供され、前記方法は、
(i)好ましくはエキソグリコシダーゼを用いて前記グリコシル化基質から前記単糖を分離するステップと、
(ii)前記分離した単糖を固体支持体上の捕捉基に共有結合させるステップと、
(iii)前記共有結合された単糖を、式X:
TAG−R−ボロネート
(式中、
TAG=検出可能なタグ部分、
R=有機部分、
ボロネート=ボロン酸部分またはそのエステル)
を有する検出剤と一緒にインキュベートするステップであって、前記ボロネートは前記R基に含まれる炭素原子に結合されるステップと、
(iv)検出剤を単糖に結合させるステップと、
(v)単糖に結合した検出剤を検出するステップとを含む。
【0042】
本発明の一実施形態では、上記の方法が、固体支持体への固定化の後、捕捉基と単糖との間の結合を還元するステップを含まないことが好ましい。したがって、例えば、単糖がC=N結合を通して固体支持体に結合する場合、前記C=Nは、固定化された単糖をボランまたはホウ化水素などの還元剤と接触させることによって故意に還元されないことが好ましい。
【0043】
他の実施形態では、固定化された単糖を、検出剤とのインキュベーションの前または同時に還元剤と接触させないことが好ましい。
【0044】
本方法の段階を、本明細書において、下でさらに詳細に記載する:
(i)前記グリコシル化基質から前記単糖を分離する
本発明の方法の段階(i)は、グリコシル化基質A(例えば図1を参照)から単糖を分離するステップを含む
本発明の一実施形態では、前記グリコシル化基質が、一般構造糖−C=N−リンカー−スペーサー−固体の固定化された糖ではないことが好ましい。
【0045】
単糖:好ましい実施形態では、単糖は、天然の単糖または、炭水化物を含む天然のもしくは組換えで生成された化合物から遊離した単糖であり、好ましくは遊離の後にさらなる修飾を受けていない。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態では、単糖は、アルドース、ケトース、デオキシ糖、アミノ糖およびそれらの誘導体、例えばそれらの酸化誘導体からなる群から選択されるような、単糖類である。適する単糖類の例には、ガラクトース、フコース、N−アセチルグルコサミン、ガラクツロン酸およびシアル酸が含まれる。
【0047】
当分野の技術者に公知である単糖を含む任意のグリコシル化基質を、本発明の方法で用いることができる。例えば、前記グリコシル化基質は、グリコシル化された抗生物質、糖タンパク質、糖脂質、グリコシル化されたステロイド、オリゴ糖、多糖からなる群から選択することができる。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態では、グリコシル化基質は、真核生物から入手できる基質である。したがって、グリコシル化基質は、好ましくは真核生物由来の糖タンパク質、糖脂質またはプロテオグリカンからなる群から選択することができる。他の実施形態では、前記グリコシル化基質は、好ましくは真核生物細胞の細胞膜から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質またはプロテオグリカンからなる群から選択される。
【0049】
原核生物から入手できるグリコシル化基質で本発明の方法を実施することが、望ましいこともあり得る。したがって、本発明の一実施形態では、グリコシル化基質は、原核生物から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質、リポ多糖または多糖からなる群から選択される。他の実施形態では、グリコシル化基質は、原核生物の細胞表面または細胞膜から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質、リポ多糖または多糖からなる群から選択される。
【0050】
他の実施形態では、グリコシル化基質は、グリコシル化された抗生物質、グリコシル化されたステロイド、グリコシル化された天然生成物またはグリコシル化されたペプチドからなる群から選択される。
【0051】
グリコシル化基質は、様々なソースから誘導することができる。例えば、グリコシル化基質は、生物または生物の一部、例えば動物または植物または1つまたは複数の特定の動物もしくは植物の組織から、原核生物もしくは真核生物の細胞などの生物から、ウイルスから、インビトロ培養された哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌類、細菌細胞、酵母またはファージから得ることができる。例えば、グリコシル化基質は、前記の細胞、微生物または生物のいずれかの抽出物から単離することができる。そのような抽出物は、遊離の炭水化物などのグリコシル化基質を含むことができる。抽出物は、単糖、オリゴ糖、多糖または炭水化物部分を含む化合物、特に糖タンパク質または糖脂質または、炭水化物が結合し、一般にグリコシドと呼ばれる小有機分子を含むこともできる。糖タンパク質は、炭水化物成分が、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質成分に連結している化合物である。したがって、本明細書で用いるように、用語糖タンパク質は、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンも包含する。糖脂質は、グリコシド結合によってアシルグリセロール、スフィンゴイド、セラミド(N−アシルスフィンゴイド)またはリン酸プレニルなどの疎水性部分に結合している、1つまたは複数の単糖、オリゴ糖、多糖または炭水化物部分を含有する化合物である。グリコシドは、例えば、O、NまたはSを通して1つまたは複数の糖にグリコシド状に連結した、小さな(分子量100〜5000)有機分子であることができる。
【0052】
グリコシル化基質は、化学合成または化学的/酵素的合成の生成物、例えば、溶液中または固相上で化学合成によってインビトロで調製されたオリゴ糖であることもできる。これらの同じ合成オリゴ糖は、酵素反応によって、例えば硫酸化、リン酸化またはグリコシル化によってさらに修飾することができる。したがって、本明細書で記載される方法は、合成もしくは半合成のオリゴ糖またはオリゴ糖ライブラリの単糖の同定のために用いることもできる。
【0053】
任意選択で、分析されるグリコシル化基質は、試料中に、例えば、非グリコシル化基質を含む試料などの複合試料中に含まれてもよい。したがって、一部の実施形態では、本発明の方法が、ステップ(i)の後に追加のステップを含むことが有益であり得、そこでは、前記試料の(好ましくは高分子量の)成分が、例えば、より大きな多糖類または非多糖成分、特にポリペプチドなどの巨大分子の除去のために除去される。前記成分を除去する1つの方法は、サイズ排除、好ましくは限外ろ過または透析によるものである。前記成分を除去する他の方法は、試料を、単糖には透過性であるがタンパク質などの高分子量の分子には透過性でないメンブランに通すことを含んでいた。前記メンブランは、例えば、セントリコン(ミリポア社製)メンブランまたは透析メンブランであることができる。他の実施形態では、試料の前記成分は、C18または炭素などの疎水性相上での吸収によって除去される。
【0054】
分離ステップ:ステップ(i)の分離ステップは、当分野の技術者に公知である様々な方法によって実施することができる。好ましくは、前記分離ステップは、エキソグリコシダーゼ、例えば細菌性エキソグリコシダーゼ、例えば、α−マンノシダーゼ、α−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−キシロシダーゼ、α−フコシダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、α−グルクロニダーゼ、α−イズロニダーゼ、α−シアリダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−キシロシダーゼ、β−フコシダーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−イズロニダーゼおよびβ−シアリダーゼからなる群から選択されるエキソグリコシダーゼを用いて実施される。
【0055】
したがって、前記末端単糖は、細菌性多糖または糖脂質に作用して、デオキシ糖、アミノ糖、置換アミノ糖、分枝鎖糖、O−メチル糖などを切断するグリコシダーゼを用いて分離することができる。
【0056】
多くの有用なグリコシダーゼが当技術分野でさらに記載されており、例えば米国特許第5,100,778号または国際公開第92/19974号に記載されているグリコシダーゼのいずれかを、本発明で使用することができる。
【0057】
エキソグリコシダーゼを用いるグリコシル化基質からの末端単糖の放出の例を、図1に示す。
【0058】
溶解性基質単糖−O−R−基質(A)を、グリコシダーゼが溶解性である溶液、一般的には添加カチオンを含むか含まない緩衝溶液中で、既知の特異性を有するエキソグリコシダーゼと一緒にインキュベートする。エキソグリコシダーゼは、グリコシドから単一の末端単糖残基を切断することができる。AのR基は、好ましくは、糖タンパク質または糖ペプチド中の炭水化物(例えば単糖もしくはオリゴ糖)単位またはアミノ酸、多糖またはオリゴ糖中の単糖単位、糖脂質中の単糖単位または脂質、あるいは、例えばグリコシル化された抗生物質またはステロイド中の単糖単位または有機アグリコンである。末端の単糖単位が、グリコシダーゼによって加水分解され得る構造およびアノマー配置(αまたはβ)を有する場合、それは切断されて還元糖(単糖、B)およびアグリコン(HO−R−基質、C)を生成する。
【0059】
多くのグリコシダーゼの特異性は公知であり、そのようなよく特徴付けられたグリコシダーゼは、オリゴ糖の配列決定で用いられてきた。したがって、これらの酵素は、単糖環の立体化学およびグリコシド結合のαまたはβ配置に特異的であり得る。それらの多くは、隣接する糖への単糖類の結合の正確な位置に関しても、特異的である。例えば、いくつかのα−グリコシダーゼはα1〜3結合だけを切断し、他はα1〜6結合だけを切断する。したがって、オリゴ糖の全体構造は、時々、連続したグリコシダーゼ消化によって決定することができる。
【0060】
他の実施形態では、末端単糖は、例えば酸加水分解、例えば穏やかな酸加水分解を用いて化学的に分離される。穏やかな加水分解のために、例えば、グリコシル化基質を、摂氏80度で1時間0.1Nトリフルオロ酢酸水で処理することができる。O結合単糖は、アルカリ性β除去などの化学的方法により、またはO−グリコシダーゼなどの酵素を用いる酵素処理によって、糖タンパク質から切断することができる。単糖は、酸性または塩基性の反応を用いて小有機分子から切断することもできる。
(ii)前記分離した単糖を固体支持体上の捕捉基に共有結合させること
本発明の方法の段階(ii)は、前記分離した単糖を固体支持体上の捕捉基に共有結合させるステップを含む。
【0061】
捕捉基:「捕捉」基は、遊離した単糖(B)のカルボニル基への求核攻撃によって共有結合を形成することができる、反応性化学基を意味する。この「捕捉」ステップの2つの異なるバージョンの例を、図2に図示する。放出された単糖Bの閉鎖形態と開鎖カルボニルとの間の平衡を、Dに示す。カルボニル形態は固体支持体(E)に連結する固定化(例えばNH2)−捕捉基と反応して、捕捉された単糖(G)を与える。Gの未反応捕捉基を任意選択でキャップして、「キャップされた」捕捉基(I)を与えることができ、任意選択でさらなる還元および/またはキャッピングステップでJおよびLが与えられる。最初の捕捉生成物Gを直接Kに還元することもでき、それをさらにキャップしてLを与えることができる。代替実施形態では、−YH捕捉基を有する第二の型の固体支持体Fも、付加によってDの単糖の開鎖カルボニル基形態と直接反応して、Hとして補足される単糖を与えることができる。好ましくは、固体支持体上の捕捉基に結合した単糖との間で形成される共有結合付加物は、少なくとも2つのOH−基を含む。
【0062】
本発明の方法での使用に適する多くの捕捉基は、当分野の技術者に公知である。好ましくは、捕捉基は−NHR基を含むかまたはそれからなり、Rは、アルキル、アリール、置換されたアルキルまたは置換されたアリール基からなる群から選択される。例えば、捕捉は−NH2基を含むかまたはそれからなることができる。好ましい一実施形態では、捕捉基は構造−M−NH2を含むかまたはそれからなり、Mはヘテロ原子である。
【0063】
一実施形態では、捕捉基は硫黄原子またはリン原子を含むかまたはそれからなる。
【0064】
他の好ましい実施形態では、捕捉基は、カルバニオンへのイオン化および続く糖アルデヒドへの求核攻撃が可能な酸性−CH−基を含むかまたはそれからなる。この種の化合物は当分野の技術者に公知であり、一般的に以下の基の1つまたは複数に隣接するCH基を含む。
1つまたは複数のカルボニル基(−CH−CO−)、
ニトリル基(例えば−CH−CNを生成する)
ニトロ基(例えば−CH−NO2を生成する)
スルホン基(例えば−CH−SO2−を生成する)
・少なくとも1つの−NH2基を含む捕捉基:本発明の好ましい一実施形態によると、リンカーは捕捉基を含み、その捕捉基は少なくとも1つの−NH2基を含む。好ましいフォーマットでは、捕捉基は、任意選択の基Rを通してリンカーに結合する−NH2基で終わる。したがって、捕捉基は、好ましくはR−NH2構造である。Rは、単純アルキル、アリールまたは置換されたアルキルまたはアリール基であることができる。好ましくは、リンカー−M−NH2型の構造を形成するために、Rは−NH2基に直接結合しているヘテロ原子を含有すべきであり、上式で、Mはヘテロ原子(すなわち炭素ではない)であり、好ましくは、MはN、OおよびSからなる群から選択される。構造リンカー−O−NH2、リンカー−NH−NH2、リンカー−CO−NH−NH2、リンカー−NH−CO−NH−NH2、リンカー−S(O)2NH−NH2およびリンカー−S−NH2などのように、Mがヘテロ原子である化合物が特に好ましい。
【0065】
この実施形態では、単糖の捕捉は、捕捉基の−NH2基を、例えば前記単糖の還元末端と、すなわちアルデヒド、ケトンまたはヘミアセタール基と反応させることによってなされる。反応は任意のpH値で起こることができるが、pH2〜9の範囲が最も好ましい。本方法は、1つまたは複数の添加剤、例えば、単糖の開鎖アルデヒド形態と単糖のヘミアセタール形態との間の平衡を促進または有利に変化させることができる添加剤の添加を含むことができ、ここで、開鎖アルデヒド形態が好ましい。添加剤は、例えば、金属イオン、ボロネートまたはシリケートであることができる。捕捉は、共有結合性二重結合(C=Nで示す)を通して固体支持体に結合される種を生成し、Cは単糖部分から、Nは捕捉基から誘導される。この固定化単糖は、その環状形と平衡であることもでき、特に、単糖がピラノースであるならば、固定化された単糖は、その環状6員環形(例えば図2の化合物BおよびDを参照)と平衡であることができるが、単糖上の適当なOH基が非置換である場合、それは、その5員環形と平衡であることもできる。
【0066】
・リンカー基:捕捉基は、任意選択で、リンカー基を通して固体支持体に結合させることができる。前記リンカー基は、捕捉基を固体支持体に連結することができる任意の分子であることができる。リンカーは、固相有機合成で通常使用されるものなどの多種多様のリンカーのいずれかでよい。リンカーは、切断が不可能なリンカーまたは切断可能なリンカーであることができる。
【0067】
切断が不可能なリンカーは、例えば、アルキル、アリール、エーテルまたはアミドであることができ、前記のいずれかを任意選択で置換することができる。例えば、前記のいずれかをヘテロ原子で置換することができ、または、それらは、O−アルキル、アルキル、アリールまたはヘテロ原子を分岐として含有することができる。一実施例では、リンカーはPEGおよび/またはポリアミドを含むかまたは基本的にそれらからなる。
【0068】
リンカーは、反応を起こさせて、固体支持体から捕捉基を含有する部分(それが捕捉して、任意選択でさらに修飾された分子を含む)を切断することができる部位を含むことができる。そのようなリンカーは切断可能なリンカーと呼ばれ、固相有機合成で広く利用されている。切断可能なリンカーの例は公知であり、切断は、親電子体、求核体、酸化剤、還元剤、フリーラジカル、酸、塩基、光、熱または酵素によってもたらすことができる。
【0069】
切断可能なリンカーは、例えば、酸不安定(例えば、Rink, 1987, Tetrahedrom Lett., 28: 387に記載のRinkアミド、およびPlunkett et al., 1995, J. Org. Chem., 60: 6006-7に記載の痕跡を残さないシリルリンカー)、塩基不安定(例えば、Atherton et al. 1981, J. Chem. Soc. Perkin Trans, 1: 538に記載のHMBA)または感光性(例えば、Homles et at., 1995, J. Org. Chem., 60: 2318-2319に記載の2−ニトロベンジル型)であることができる。リンカーは、シリルリンカー(例えば、Boehm et al., 1996, J. Org. Chem., 62: 6498-99に記載のフッ化物で切断されるもの)、アリルリンカー(例えば、Kunz et al., 1988, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 27: 711-713)および安全捕捉スルホンアミドリンカー(例えば、Kenner et al., 1971, Chem. Commun., 12: 636-7に記載のもの)などのように、実施する化学作用の種類により特異的および限定的であることができる。酵素切断が可能なリンカーは、例えばReents et al., 2002, Drug Discov. Today, 7: 71-76に記載の酵素切断が可能なリンカーのいずれか、または、Waldmann et al., 2001, Chem. Rev. 101: 3367-3396によるレビューに記載の酵素不安定保護基の、任意の官能化誘導体でよい。熱不安定リンカーは、例えば、Meng et al., 2004, Angew. Chem. Int. Ed., 43: 1255-1260に記載の型でよい。
【0070】
・反応条件:捕捉反応は、任意の有益な溶媒で実施することができる。当分野の技術者は、所与の任意の化合物に有益な溶媒を特定することが容易に可能になる。溶媒は、例えば、水、水性緩衝液、有機溶媒ならびに水性および有機の混合溶媒からなる群から選択することができる。溶媒は、酸、塩基、有機アミン、アニリン、塩、二価の金属カチオン、界面活性剤、封入−錯体形成分子、例えばシクロデキストリンもしくはカリックスアレーンを含む錯化剤、キレート化剤(例えばEDTA)、ボレート、ボロネートまたはシリケートなどの1つまたは複数の添加剤を含む、前記のいずれかでもよい。
【0071】
好ましい実施形態では、反応に加えられる固体支持体の量は、単糖に関してモル過剰の捕捉基が存在するように調節され、好ましくは前記過剰は大きく、例えば少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、例えば少なくとも50倍、例えば少なくとも100倍以上である。この過剰は、単糖のより効率的な捕捉を確実にする。
【0072】
捕捉反応は任意の温度で実施することができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度である。
【0073】
・固体支持体:捕捉基を支持することができ、当分野の技術者に公知である任意の適する固体支持体を、本発明の方法で用いることができる。例えば、固体支持体は、重合体、固体、不溶性粒子および表面からなる群から選択することができる。例には、PEGAおよびSPOCCが含まれる。
【0074】
固体支持体は、好ましくはビーズである。他の好ましい実施形態では、固体支持体は、ガラススライド、マイクロタイターウェルまたは金属コーティングされたスライド、例えば金コーティングされたスライドなどのスライドである。固体支持体は、ヒドロキシルアミンで修飾された表面であることができ、その場合には、それは好ましくは、制御孔ガラス(CPG)ビーズまたはガラススライドである。
【0075】
本明細書で用いる用語「固体支持体」は、物理的固体に加えて不溶性重合体、不溶性粒子、表面、メンブランおよび樹脂を包含し、好ましくは、固体支持体は不溶性重合体、不溶性粒子、表面または樹脂である。
【0076】
したがって、「固体支持体」は、不溶性無機マトリックス(ガラス等)、不溶性重合体(プラスチック等、例えばポリスチレン)、有機および無機の成分の部分からなる不溶性マトリックス(例えば一部のハイブリッドシリケート、例えばR−Si−O−構造の化合物)、固相合成で常用される有機重合体(ポリスチレン、PEGA樹脂、PEG樹脂、SPOCC樹脂およびそれらのハイブリッド)、ポリエチレングリコール鎖(それらはある有機溶媒中では溶解性であることができ、他の溶媒の添加によって不溶性にすることができる)であってよい。固体は、金属(金等)、合金または複合材、例えばインジウム−酸化スズまたはマイカであってもよい。
【0077】
固相合成で用いられる有機重合体には、例えば以下のものが含まれる。TentaGel(Rapp polymere、Tubingen、Germanyから市販)、ArgoGel(Argonaut Technologies社、San Carlos、CAから市販)、PEGA(Polymer Laboratories、Amherst、MAから市販)、POEPOP(Renil et al., 1996, Tetrahedron Lett., 37: 6185-88;Versamatrix、Copenhagen、Denmarkから入手可能)およびSPOCC(Rademann et al, 1999, J. Am. Chem. Soc., 121: 5459-66;Versamatrix、Copenhagen、Denmarkから入手可能)。
【0078】
本発明の一実施形態では、固体支持体は、表面音響波センサー(例えば、Samoyolov et al. 2002, J. Molec. Recognit. 15: 197-203に記載のセンサーのいずれか)、表面プラズモン共鳴センサー(例えば、Homola et al., 1999, Sensors and Actuators B, 54: 3-15によってレビューされているセンサーのいずれか)、または、例えば、Mukhopadhyay、Nano Left. 2005, 5, 2385-88に記載のナノ物理的カンチレバーセンサーなどのセンサーである。
【0079】
そのような固体支持体は、ガラスなどの無機物質、金などの金属、有機重合物質またはそれらのハイブリッドであることができ、タンパク質もしくは多糖、デンドリマーなどのオリゴマー、またはポリアクリルアミドもしくはポリエチレングリコールなどの重合体などの様々なコーティングで覆うことができる。
【0080】
好ましい実施形態では、固体支持体はグラスである。
【0081】
・洗浄:末端単糖が捕捉基との反応を通して固体支持体上に固定化されると(例えば、図2に例示したステップを参照)、任意選択で固体支持体を洗浄して、共有結合していない物質を除去することができる。したがって、グリコシル化基質が、例えば、他の化合物を含む試料で提供される場合、還元糖を前記試料から精製することができる。したがって、本発明には、グリコシル化基質が非精製形で提供されることが含まれる。
【0082】
当分野の技術者は、所与の固定化単糖に適する洗浄条件を特定することが容易にできる(例えば、図2の化合物G〜Lのいずれか)。洗浄は、例えば、界面活性剤および変性剤に加えて本明細書で指摘されている添加剤のいずれかを任意選択で含む、本明細書で指摘されている溶媒のいずれかで実施することができる。洗浄は任意の温度で実施することができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度である。
(iii)前記共有結合された単糖を検出剤と一緒にインキュベートする
本発明の方法の段階(iii)は、前記共有結合された単糖を式X:、
TAG−R−ボロネート
(式中、
TAG=検出可能なタグ部分、
R=有機部分、
ボロネート=ボロン酸部分またはそのエステル)
を有する検出剤と一緒にインキュベートするステップであって、前記ボロネートは前記R基に含まれる炭素原子に結合されるステップを含む。
好ましくは、過剰量の前記検出剤を用いる。
【0083】
「ボロネート」は、ボロン酸部分またはそのエステルを含む任意の好適な化学部分を意味し、好ましくは、ボロネートはボロン酸である。
【0084】
検出剤は、例えば、アリールボロネートまたはヘテロアリールボロネートを含むことができる。
【0085】
この過程を、図3に図式的に示す。
【0086】
検出剤は、
TAG−R−B(OH)2、TAG−R−B(OH)(OR’)またはTAG−R−B(OR’)(OR’’)
からなる群から選択される式を有することが好ましく、上式で、R’およびR’’は脂肪族または芳香族でよく、任意選択でRと共有結合し、例えば、環状ボロネート構造を生じる。例えば、R’およびR’’は、C16直鎖状または分枝状アルキル、C57脂肪族環およびC57芳香族環からなる群から個々に選択することができる。Rが環である場合には、R’はRと融合環を形成することもでき、この実施形態では、R’は4〜7員環の脂肪族ヘテロ環であることができ、それは任意選択で置換される。例えば、前記ヘテロ環は、R’が結合するBおよびO原子を含む5員環であることができる。前記ヘテロ環は置換することができないか、または置換することができる。
【0087】
したがって、本発明の一実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図5の群a)に例示するようなフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0088】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図5の群b)に例示するような、o−アミノメチル部分を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0089】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図5の群c)に例示するような、置換されたo−アミノメチル部分を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0090】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図6の群d)に例示するような、電気陰性置換基を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0091】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図6の群e)に例示するような、スルホンアミドまたはスルホン置換基を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0092】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図6の群f)に例示するようなピリジンボロン酸誘導体を含む。
【0093】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図7の群g)に例示するような、o−ヒドロキシメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0094】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図7の群h)に例示するような、置換されたo−ヒドロキシメチル基を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0095】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図7の群i)に例示するような、第四級アンモニウム置換基を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0096】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図8の群j)に例示するような複数のアリールを有するボロン酸誘導体を含む。
【0097】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図8の群k)に例示するような、芳香族複素5員環のボロン酸誘導体を含む。
【0098】
本発明の他の実施形態では、TAG−R−ボロネートは、図8の群l)に例示するような、2つ以上の融合環、例えば2、3、4、5または6個の環を有するフェニルボロン酸誘導体を含む。
【0099】
好ましい一実施形態では、検出剤は、図11に示すテトラメチルローダミン由来の蛍光ヒドロキシメチル−ボロネート1の式を有する。
【0100】
他の好ましい実施形態では、検出剤は、図12に示すリサミン由来の蛍光ニトロ−ボロネート2の式に従う。
【0101】
本明細書で記載されるように、R部分は任意の化学基、例えば脂肪族または芳香族の部分であることができる。したがって、Rは、例えば5〜6員環の芳香族もしくは複素環式芳香族の環または融合環芳香族環系、例えば任意の2つの位置で融合した各5〜6員環の2つの融合環などの、芳香族の環または複素環式芳香族の環であることができる(例えば図8、lを参照のこと)。例えば、複素環式芳香族の環は、N、OおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子を1〜3個の範囲、例えば1個、例えば2個含む、5〜6員環、例えば5員環でよい。前記芳香族の環または複素環式芳香族の環は任意選択で置換することができ、例えば、アルキル、例えばC16アルキル、アミノアルキル、例えばC16アミノアルキル、例えばC−NRx2、第一級もしくは第二級もしくは第三級アミノ基または硫酸基で置換することができ、上式で、Rxは−H、アルキル、シクロアルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたシクロアルキルまたは置換されたアリール、例えば−H、C16アルキル、C57シクロアリールまたはC57アリールでよい。
【0102】
好ましい実施形態では、前記芳香族または複素環式芳香族の環はX−TAGで置換されるか、または前記置換基の1つがX−TAGに共有結合し、上式で、Xは、−NH−、−CO−、アルキル(例えばC1〜6アルキル、例えばメチルもしくはエチル)、アリール(例えばC5〜7アリール)、ヘテロアリール(例えば5〜7員環のアリール環)、置換アルキル、置換アリール、置換ヘテロアリール、融合したアルキルもしくはヘテロアルキル、ヘテロアリール環、−O−および−S−からなる群から選択される。例えば、Xは、−NH−、−CO−、−CH2−、−CH2−CH2−、フェニル、−O−および−S−からなる群から選択することができる。
【0103】
例えばある種の検出剤の定量を向上させるために、検出ステップの前または後に、検出剤を固体支持体から放出することが望ましいこともある。しかし、本発明の一部の実施形態では、検出剤は固体支持体から放出されない。図4に示すように、放出ステップは、例えば、固体支持体を、単糖との結合を巡って検出剤と競合する溶解性化合物の溶液と接触させることによって、達成することができる。前記溶解性化合物は、例えば、グリセロールまたはグルシトールなどの多価アルコール、またはジエタノールアミンなどのアミノアルコールでよい。
【0104】
TAG部分:検出剤は、好ましくは、TAG部分を含んで提供される。例えば、蛍光部分、発光部分および着色部分からなる群から選択される、任意の適するTAG部分を用いることができる。適する具体的な部分には、とりわけ、クマリン、テトラメチルローダミン、リサミンまたはフルオレセインが含まれる。
【0105】
本発明の好ましい一実施形態では、TAGは有益な分光学的特性を有する。有益な分光学的特性とは、TAGが、例えば分光分析によって、容易に視覚化され得ることを意味する。したがって、TAGは、例えば、分光学的に検出可能であってよい。好ましい実施形態では、TAGは蛍光TAGである。そのようなTAGの例は、RP HauglandによるHandbook of Fluorescent Probes and Research Products、第9版、Molecular Probesで見ることができる。
【0106】
そのようなTAGを付加した生成物は、検出可能な光を吸収および再放射することができる。固体支持体上に存在するそのようなTAGの数は、固体支持体上に捕捉される単糖の数を反映する。したがって、提供される固体支持体が過剰な捕捉基を含む場合、試料中に当初存在する単糖の数はTAGの蛍光によって推定することができる。蛍光分子以外のTAGを、用いることもできる。これらには、放射性TAG、リン光性TAG、化学発光TAG、UV吸収TAG、ナノ粒子、量子ドット、着色化合物、電気化学活性TAG、赤外活性TAG、ラマン分光法もしくはラマン散乱で活性であるTAG、原子間力顕微鏡法によって検出可能なTAG、または、金属原子もしくはそのクラスターを含むTAGが含まれ得る。
【0107】
固体支持体が表面音響波センサー、表面プラズモン共鳴センサーまたはカンチレバーなどのセンサーであるならば、TAGに特異的に結合するそのような種の付加は、TAGに比例し、したがって糖分子の数に比例するシグナルを生成することができる。一例は、TAGが、ビオチンの活性エステルとの反応によって通常導入される、ビオチン残基である場合である。TAGがビオチン残基である場合のアビジン−タンパク質の付加は、センサーによって容易に検出、報告されるシグナルを生成することができる。固定化TAGへの第二の結合パートナーの結合を検出するために用いることができるセンサーの他の例には、それらに限定されないが、圧電センサー、電流測定センサー、表面プラズモン蛍光分光センサー、二重分極干渉分析(DPI)センサー、波長識別光学センサー(WIOS)、インピーダンスセンサー、光導波管格子結合器センサー、音響センサーおよび熱量センサーが含まれる。
【0108】
単糖が分光学的性質を有するTAGに結合すると、前記分光学的性質を測定することができる。光学的性質は、固体支持体上にまだ固定化されている糖(例えば図3の化合物N)について、または、競合リガンドによって溶液中に放出された糖(例えば図4の化合物P)について測定することができる。分光学的性質を有するタグの性質に従い、前記特性は、分光分析などの従来の方法を用いて測定することができる。したがって、本発明の方法は、単糖に結合したTAGを、分光分析によって検出するステップを含むことができる。
【0109】
本発明の一実施形態では、TAGが、眼による視覚的検査によっても検出可能であり得る、着色部分または蛍光部分であることが好ましい。この実施形態では、TAGは、例えば、当分野の技術者に公知である任意の蛍光部分、例えば、インビトロゲンから入手可能なThe Hand book-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies 10th edition-Molecular Probesに記載の蛍光部分のいずれかであってよい。例えば、TAGは6−TRITCまたはテトラメチルローダミンであってよい。
【0110】
本発明の検出基での使用に適するさらなる好ましいボロン酸化合物が、以下の参考文献に開示されている。
【0111】
・「Boronic Acids: Preparation, Applications in Organic Synthesis and Medicine」、Dennis G. Hall編、Wiley-VCH出版、特にchapter 12および13(「Boronic Acid-based receptors and sensors for saccharides」および「Biological and medicinal applications of boronic acids」)。
【0112】
・Yan et al.、「Boronolectins and Fluorescent Boronolectins: An Examination of the Detailed Chemistry Issues Important for the Design」、Medicinal Reseach Reviews, Vol. 25, No. 5, 490-520, 2005
・Mulla et al.、「3-Methoxycarbonyl-5-nitrophenyl boronic acid: high affinity diol recognition at neutral pH」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter 14 (2004) 25-27
・Dowlut et al.、「An Improved Class of Sugar-Binding Boronic Acids, Soluble and Capable of Complexing Glycosides in Neutral Water」、J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 4226-7
・Hoeg-Jensen.、「Preparation and Screening of Diboronate Arrays for Identification of Carbohydrate Binders」、QSAR Comb., Sci. 2004, 23
・Boduroglu et al.、「A calorimetric titration method for quantification of millimolar glucose in a pH 7.4 aqueous phosphate buffer」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter 15 (2005) 3974-3977
・Davis et al.、「Simple and Rapid Visual Sensing of Saccharides」、Organic Letter, 1999 Vol. 1, No. 2, 331-334
・He et al.、「Chromophore Formation in Resorcinarene Solutions and the Visual detection of Mono- and Oligosaccharides」、J. Am. Chem. Soc. 2003, 124, 5000-5009
・Gray et al.、「Specific sensing between inositol epimers by a bis(boronate)」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15 (2005) 5416-5418)
・キャッピングおよび還元:捕捉基に末端単糖を結合した後に、固定化された単糖(例えば図3の化合物G〜L)に結合した固体支持体は、未反応の遊離捕捉基をまだ有してもよく、その有用性の範囲を増加させる特異な操作を受けさせることができる。したがって、一実施形態では、本方法のステップ(iv)の前に、キャッピング剤を未結合の捕捉基に結合させる。例えば、本発明の好ましい一実施形態では、還元糖の固定化の後に、結合した単糖が好ましくは固体支持体上の捕捉基から放出されない条件下で、未反応の捕捉基をキャッピング剤によってキャップする。キャッピングの後、固体支持体は遊離捕捉基をもはや含まず、含まれるのは、例えば親電子体に対して減少した反応性を有するキャップされた基だけである。
【0113】
当分野の技術者に公知である任意の適するキャッピング剤を、本発明で用いることができる。例えば、前記キャッピング剤は、−NH2基と反応することができるキャッピング基である。好ましいキャッピング剤の例を、図9に開示する。
【0114】
・−NH2基と反応するキャッピング基:本発明の好ましい一実施形態では、単糖の固定化の後、未反応の−NH2基を、キャッピング剤、例えばアシル化剤(例えば、無水酢酸)または当技術分野で公知である他の窒素反応性剤によって、CのC=N結合が反応しない条件下でキャップする。キャッピングの後、固体支持体は遊離アミン基をもはや含まず、含まれるのは、親電子体に対して非常に低い反応性を有するキャップされた窒素原子(N(H)キャップ)だけである。化合物Cのキャップ生成物は、例えば、−RN(H)キャップ基を含有することができ、上式で、(H)は、キャップ基の構造に従い存在しても存在しなくてもよい。
【0115】
例えば、具体的な実施形態では、糖を固体支持体に連結するC=N結合が−NH−に還元される場合、それは、配列R−NH−CH2−中の形式的にSP3にハイブリダイズされた窒素原子であることができる。特定の反応をこの基に向かわせ、単糖において特異的および化学量論的反応を起こさせることができる。
【0116】
好ましくは、キャッピング剤は、C=N官能基と実質的に反応することなく、残りの−NH2基と特異的に反応する。そのような試薬は当技術分野で公知であり、アミド結合形成で用いられる一般的なアシル化剤、例えば、無水酢酸、他のアルカノン酸無水物、芳香族無水物(例えば無水安息香酸)、環状無水物(例えば無水コハク酸、無水フタル酸)、他の活性エステル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステルおよび、ペプチド結合の固相合成を含むアミド結合形成で一般的に使用される様々な活性エステルが含まれる。−NH2基は、あるいは、対応する遊離酸、および、ペプチド結合形成で常用されるDCCなどのin−situ活性化剤を加え、それによってin situで活性エステルを生成することによってキャップすることができる。−NH2基に対して反応性であることが知られている他の試薬、例えば、アルキルイソチオシアネート(R−NCS)、アリールイソチオシアンテ(Ar−NCS)、アルキル化剤R−L(Lは一般的に系列Cl、Br、I、OS(O)2R’からの脱離基であり、R’はアルキルまたはアリールでよい)、マイケル受容体、例えばα−β不飽和カルボニル化合物(CHR=CH−CO−、式中、RはH、アルキルまたはアリールまたは置換アルキルもしくはアリールでよい)またはα−β不飽和スルホン(CHR=CHS(O)2R’またはAr、式中、RはH、アルキルまたはアリールまたは置換アルキルもしくはアリールでよい)、スルホン化剤(例えばRSO2Cl)およびそれらの誘導体を用いることができる。同様に、−NH2基を、一般式RO−C(O)Lのカーボネートの活性エステルとの反応によってキャップすることができ、式中、Lは上記の通りである。
【0117】
・還元:本発明の好ましい一実施形態では、単糖をリンカー(例えば、図1の化合物GまたはI)に連結する結合は、還元剤を用いて還元される。しかし、本発明の他の実施形態では、本方法はそのような還元ステップを含まない。当分野の技術者に公知であるように、この結合は、様々な公知の還元剤によって還元することができる。単糖をリンカーに連結する結合がC=N結合である場合、好ましくは、還元剤は、水素原子をNに置きながら、二重結合を飽和させることができる。特に価値のあるものは、BH結合を含むボランまたはホウ化水素であり、例には、NaBH4、NaCNBH3、および、BH3−ピリジン、BH3−ジメチルスルフィドなどのようなBH3複合体が含まれる。SiH結合を含むシランなどの構造R3SiHを有するシランを用いることもでき、同様に、水素転移剤、例えばジイミド、または、均一水素化触媒もしくは金属−H結合を含む水素化触媒を用いることもできる。
【0118】
還元は、好ましくはリンカーを通して固体支持体に連結される糖CH−NH−構造を有する、反応性単糖を生成する。一般に、単糖がアルデヒドであるならば、還元は、糖CH2−NH−構造の化合物を生成する。単糖がケトンであるならば、還元は、糖CH−NH−構造の化合物を生成する。
【0119】
本発明の一実施形態では、キャッピングステップが実施され、次に、還元ステップが実施される。本方法の他の好ましい実施形態では、キャッピングおよび還元ステップの順序は反対である。
【0120】
一実施形態では、還元をin situで実施することができ、そのことは、還元剤(例えばNaCNBH3)を単糖と同時に固体支持体に加えることができることを意味する。したがって本発明には、単糖を含む試料を、固体支持体および還元剤と同時にインキュベートすることができることが含まれる。
【0121】
(iv)検出剤を単糖に結合させる
本発明の方法の段階(iv)は、検出剤を単糖に結合させるステップを含む。
【0122】
TAG−R−ボロネートと捕捉された単糖とのこの反応を、図3に例示する。固体支持体に結合している捕捉された単糖(G〜Lのいずれか)を、一般式TAG−R−ボロネート(M)の官能化ボロン酸の溶液と接触させ、上式で、Rは好ましくは芳香族または複素環式芳香族である。「TAG」は、タグ付けされた種を直接、例えば蛍光タグを用いて、または間接的に、例えば重金属TAGに起因する質量変化を測定することにより、特異的に検出することを可能にする任意の部分であってよい。G〜Lのいずれかとのインキュベーションの後、TAG−R−ボロネート(M)は単糖−固体支持体に(例えば、少なくとも1つのOH−基を通して)共有結合したままであり、任意選択で、未結合のTAG−R−ボロネートを洗い流すことができる。これにより、TAG−R−ボロネート付加物(N)と呼ばれる固体物質が残る。結合した単糖類がない場合、TAG−R−ボロネートは固体支持体に結合したままでいることはなく、固体支持体から流失し、その後、固体支持体から結合したTAGがなくなる。
【0123】
任意選択で、本発明による方法は、ステップ(iv)の後にさらなるステップを含み、そこでは、未結合の検出剤が、好ましくは洗浄によって除去される。したがって、一実施形態では、タグ付けされた固定化末端単糖(例えば化合物N、図3)は、任意のさらなる操作の前に洗浄される。したがって、いかなる量の未結合のTAGも除去される。タグ付けされた単糖は固体支持体上に固定化されるので、洗浄を容易に達成することができる。
【0124】
洗浄後、共有結合したTAGだけが存在する。したがって、TAGの量は、固定化された糖の量と関連付けることができる。したがって、TAGの存在を判定することによって、固定化された糖の量を判定することができる。所与の試料中の事実上全ての単糖が固定化されるならば、一態様では、したがって、本方法は、試料中に存在する単糖の量を判定することを可能にする。
【0125】
当分野の技術者は、所与のタグ付けされた単糖に適する洗浄条件を特定することが容易にできる(例えば、図3の化合物N)。洗浄は、例えば、水、水性緩衝液、有機溶媒ならびに水性および有機の混合溶媒からなる群から選択される溶媒で実施することができる。溶媒は、塩、二価の金属カチオン、界面活性剤、封入−錯体形成分子、例えばシクロデキストリンもしくはカリックスアレーンを含む錯化剤、キレート化剤(例えばEDTA)、ボレート、ボロネートまたはシリケートなどの1つまたは複数の添加剤を含む、前記のいずれかでもよい。さらに、溶媒は、界面活性剤および変性剤を任意選択で含むことができる。洗浄は任意の温度で実施することができるが、好ましくは0〜100℃の範囲の温度である。
【0126】
(v)単糖に結合した検出剤を検出する
本発明の方法の段階(v)は、単糖に結合した検出剤を検出するステップを含む。
【0127】
この検出ステップは、グリコシル化基質Aから切断された末端単糖のアイデンティティに関して結論を引き出させることを可能にし、例えば、この検出ステップは、グリコシル化基質上の末端単糖の少なくとも1つの同定を可能にする。好ましい一同定方法は、用いる特異的分離方法による単糖の間接的な同定によるものであり、例えば、本方法のステップ(i)で特異的グリコシダーゼを用いる場合、用いるグリコシダーゼの特異性に基づいて、分離した単糖のアイデンティティを推測することができる。
【0128】
多くの方法が、検出剤の検出で用いるのに適することが、当分野の技術者に公知である。例えば、検出ステップは、吸光度または蛍光を測定することによって実施することができる。したがって、検出ステップは、蛍光分光分析などの分光分析を用いて実施することができる。
【0129】
分析が、グリコシル化基質の上の単糖の少なくとも1つの定量を可能にすることが好ましい。したがって、TAG−R−ボロネート付加物の上に存在するTAGの量は、捕捉された参照単糖の標準曲線を用いてその量をしたがって推定することができる、存在する単糖の量を表す。例えば、定量は、得られた結果を、既知の標準試料の異なる濃度を用いて得られた標準曲線と比較することによって実施することができる。
【0130】
本発明の一実施形態では、TAG分子は、定量の前に固体支持体から放出される。
【0131】
この放出ステップは図4で例示され、そこでは、競合リガンド(O)を含む切断剤の溶液とそれを接触させることによって、溶解性のTAG−R−ボロネート(P)がTAG−R−ボロネート付加物(N)から放出されて溶液中に戻される。次に、溶液中に放出されたTAG−R−ボロネート(P)を、分光法などの、TAGを検出する溶液方法によって推定することができる。G〜Lのいずれかによる構造を有する残りの固体−支持体上では、TAGはもはや検出可能ではない。
【0132】
切断剤(O)は、例えば、固定化単糖と競合してボロネート部分への共有結合を形成する、溶解性の化合物であることができる。そのような化合物には、グリセロールもしくはグルシトールのような多価アルコール、または、ジエタノールアミンのようなアミノアルコールが含まれる。ある条件下では、水またはアルコールは、競合リガンドとして作用することができる。
【0133】
本発明の一実施形態では、標準品の所定量を、グリコシル化された基質を含む試料に加える。これにより、固定化後の任意の放出された単糖の定量を容易にすること、および/または複合試料における捕捉ビーズの効率を検証することができる。標準品は、例えば、−NH2と反応することができる化合物であってよい。好ましくは、標準品はアルデヒドまたはケトン、より好ましくは単糖などの糖である。
【0134】
本発明は、驚くべきことに、ボラネートと固定化末端単糖との間の高い親和性を開示する。したがって、本発明の方法は、比較的感度の低い方法を検出のために用いるために、十分に高感度である。したがって、驚くべきことに本発明の好ましい一実施形態では、検出は肉眼による視覚的検出でよい。肉眼による視覚的検出は、例えば、実施例1に記載され、本明細書の図13に開示されている通りに実施することができる。
方法を繰り返す
有利には、本明細書で記載の方法は少なくとも1回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上、繰り返すことができる。このことは、例えば、本明細書で記載の方法を、多糖などのグリコシル化された分子の単糖の配列決定のために用いることを望む場合に有利であり得る。本明細書で開示される方法のいずれかの繰り返しを、グリコシル化基質の異なる試料について並行して実施すること、および/または前記グリコシル化基質から単糖を分離するために異なる方法を用いて実施することができる。例えば、用いるグリコシダーゼの特異性を通して関連する単糖のアイデンティティを間接的に判定するために、1つまたは複数の異なる特異的グリコシダーゼを(任意選択で並行試料について)用いてその方法を繰り返すことができる。
【0135】
したがって一態様で、本発明は、オリゴ糖または多糖の配列決定方法であって、多糖または多糖を含む分子に、本明細書で開示される方法のいずれかを適用することを含む方法を提供する。
疾患の診断方法
本発明の方法は、ある病的状態と関連する特定のグリコシル化パターンを特定するために用いることができ、したがって、本発明のさらなる態様では、異常な糖タンパク質グリコシル化と関連する疾患の診断方法であって、患者から得られた糖タンパク質の試料に、本明細書で開示される方法のいずれかを適用することを含む方法が開示される。関心のあるグリコシル化基質上の1つまたは複数の単糖の同定は、例えば、特定の疾患クラスと関連する特異的グリコシル化パターンの診断を可能にする。異常なグリコシル化パターンに関連する好ましい疾患には、それらに限定されないが、炭水化物欠乏グリコシル化症候群(CDGS)、CDGS I、CDGS II、CDGS III、CDGS IV、ニューロン疾患、糖尿病、テイ・サックス病および癌が含まれる。
生成物の細菌汚染のモニタリング方法
本発明の方法は、生成物の細菌汚染について検査するために有利に用いることもできる。したがって、本発明の他の態様では、食品、飲料品または医薬用生成物などの生成物の細菌汚染についてモニタリングする方法であって、前記生成物の試料に本明細書で開示される方法の1つを適用することを含む方法が提供される。これは、例えばSinclair et al.「Glycoengineering: the Effect of Glycosylation on the Properties of Therapeutic proteins」に開示されているように、例えば治療的グリコシル化タンパク質の品質を確認するために特に有利であろう。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、治療的グリコシル化タンパク質を特徴付ける方法であって、本明細書で記載の方法のいずれかを実施することを含む方法が提供される。
共有結合付加物
本発明の方法を実施する場合、本明細書で開示されるように、単糖と検出剤との間に共有結合付加物が形成される。したがって、本発明の一態様では、本明細書で開示される単糖のいずれかなどの固相上に捕捉される単糖と、式X:
TAG−R−ボロネート、
を有する検出剤、例えば本明細書で開示される検出剤のいずれかとの間に形成される、共有結合付加物が開示される。
【0136】
好ましくは、共有結合付加物は、固体支持体上の捕捉基に共有結合される。
蛍光化合物
本発明の方法を実施する場合、蛍光化合物を、検出剤のTAG成分として用いることが好ましい。したがって、本発明の一態様では、TAG化合物として有用な新規蛍光化合物が開示され、それは、本発明で用いられる検出剤を作製するために用いることができる。本明細書で開示される蛍光化合物のどれでも用いることができる。2つの好ましい蛍光化合物は、以下の構造、蛍光ヒドロキシメチル−ボロネート1(図11に示す)および蛍光ニトロ−ボロネート2(図12に示す)を有する
本明細書で開示される蛍光化合物のいずれかの製造方法は、例えば「Boronic Acids: Preparation, Applications in Organic Synthesis and Medicine」、Dennis G. Hall編、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim出版、特にchapter 1「Structure, Properties, and Preparation of Boronic Acid Derivatives. Overview of Their Reactions and Applications」に開示されているように、当分野の技術者に公知である。
部品キット
本発明の他の態様では、本発明の方法で用いるために適する部品キットであって、少なくとも1つの固体支持体(例えば、本明細書で開示される固体支持体のいずれか)、少なくとも1つの捕捉基(例えば、本明細書で開示される捕捉基のいずれか)、および、本明細書で開示される検出剤のいずれかなどの、1つまたは複数の検出剤を含む部品キットが開示される。前記部品キットは、少なくとも1つの特異的グリコシダーゼ、および/またはグリコシル化基質の試料を、好ましくは定量的または定性的アッセイにおける陽性対照用として、さらに含むこともできる。
【実施例】
【0137】
以下は、本発明の方法の例示的な実施例であり、本発明を限定するものとみなしてはならない。
使用略語
AMP−CPG:アミノプロピル制御孔ガラス
DMF:ジメチルホルムアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
TBTU:N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)ウロニウムテトラフルオロボレート
DCM:ジクロロメタン
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン
6−TRITC:6−テトラメチルローダミンイソチオシアネート
ES−MS:エレクトロスプレー質量スペクトル
EDC:N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
BSA:ウシ血清アルブミン
rt:室温
実施例1
捕捉ビーズの合成(図10)
アミノプロピル制御孔ガラス(AMP−CPG、ミリポア社製品番号AMP 1400B)(500mg、負荷アミノ基、約50μmol/g)を、DMF(3×2mL)、DMF中の50%DIPEA(3×2mL)、およびDMF(3×2mL)で洗浄した。次に、ビーズを室温で2時間、DMF(2mL)中のヒドロキシルアミンリンカー3(45mg、100μmol)、TBTU(25mg、75μmol)およびDIPEA(13μL、75μmol)の混合液で処理した。ビーズを、DMF(3×2mL)およびDCM(3×2mL)で洗浄した。室温で15分間、ビーズをピリジン(2mL)中の50%Ac2Oで処理することによって、未反応のアミノ基をキャップした。室温で30分間、ビーズをトルエン(2mL)中の5%ジクロロジメチルシランで処理し、続いて乾燥MeOH中で10分間インキュベートすることによって、シラノール基(ガラス表面の)をキャップした。シラノールキャッピングを繰り返した。ビーズを、MeOH、DMFおよびDCMで洗浄した。ビーズの小部分を取り出し、既知の濃度の切断されたFmoc基を用いて作成した標準曲線と比較した、DMF中の10%DBUによる処理後に放出されたFmoc基の吸光度に基づき、負荷は約35μmol/gであると判定された。
蛍光ヒドロキシメチルボロネート1の合成(図11)
6−TRITC(4、7.4mg、17μmol)を、0.1MのNaHCO3/Na2CO3緩衝液pH9(1mL)およびDMF(1mL)中の5−アミノ−2−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸(5、Combi−Blocks社製品番号BB−2043、3.1mg、17μmol)の溶液に加えた。暗所で、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、未精製の生成物を水に溶解し、Sep−Pakカートリッジ(C−18)に吸着させ、それをH2Oで洗浄した。H2O中の30〜50%MeCN(10%の0.1M HClを含有する)による溶出は、紫色の固体(6.3mg、64%)の1を与えた。ES−MS、m/z測定値593.2([MH]+計算値593.2)。
エチレンジアミン伸長リサミン7の調製(図12)
DCM(5mL)中のエチレンジアミン(232μL、3.47mmol)の溶液に、リサミンローダミンBスルホニルクロリド(6、5/6異性体の混合物、100mg、0.17mmol)を一気に加えた。暗所で、混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を真空下で濃縮し、未精製の生成物を、Sep−Pakカートリッジ(C−18)への吸着によって精製し、それをH2Oで洗浄した。H2O中の30%MeCN(10%の0.1M HClを含有する)による溶出は、紫色の固体の7を与え、それを、さらなる特徴付けなしに用いた。
蛍光ニトロボロネート2の合成(図12)
乾燥DCM(1mL)中の(3−カルボキシ−5−ニトロフェニル)ボロン酸(8、Combi−Blocks社製品番号BB2476、1.76mg、8.33μmol)、HOBt.H2O(1.13mg、8.33μmol)、EDC・HCl(1.60mg、8.33μmol)およびDIPEA(1.45μL、8.33μmol)の懸濁液に、7(5.00mg、8.33μmol)を加えた。暗所で、混合物を室温で2時間撹拌した。さらなるDCM(5mL)を加え、混合物を飽和NaHCO3および0.1MのHClで洗浄した。有機相を真空下で濃縮し、未精製の生成物を、CHCl3(1%の0.1M HClを含有する)中の50%MeOHを用いて乾燥カラム真空クロマトグラフィーによって精製した。生成物を含有する分画を濃縮し、DCM(5mL)で再溶解し、半飽和NaHCO3水で洗浄した。有機相を乾燥(Na2SO4)、ろ過および濃縮し、紫色の固体(4.7mg、70%)の生成物2を得た。ES−MS、m/z測定値816.3([MNa]+、計算値816.2)。
酵素消化のためのウシ血清アルブミン(BSA)の調製。
【0138】
BSA(5×2mg/mLアンプル、Pierce社製#23209)を水(5L)に対して2回透析し、セントリコン30限外ろ過試験管内で20mg/mLまで濃縮した。
糖タンパク質消化のためのβ−ガラクトシダーゼの調製。
【0139】
メンブランを洗浄するために、セントリコン30限外ろ過試験管を水(2mL)で洗浄して予備調整し、次に、室温で8分間遠心回転させた。ウシ精巣からの市販のβ−ガラクトシダーゼ(Sigma社製、G4142)を緩衝液(0.1Mクエン酸/リン酸、pH5.0)に溶解し、2mLをセントリコン試験管に加えた。残り50μLになるまで、試験管を4000×gで遠心回転させた。ろ液を捨て、残留物を緩衝液で2mLにした。残り50μLになるまで、これを再び遠心分離した。ろ液を捨て、緩衝液を2mLまで加え、遠心分離する全工程を、さらに4回繰り返した。最終ろ液を捨てた後に、試験管を反転させて1000×gで2分間遠心回転させ、直ちに使用できる緩衝液中の酵素溶液を得た。
タンパク質および糖タンパク質の試料のβ−ガラクトシダーゼによる消化。
【0140】
10mg/mLのタンパク質(フェチュイン(Sigma社製F3004)、アシアロフェチュイン(Sigma社製A4781)および上記の透析されたBSAの溶液を、β−ガラクトシダーゼ(0.23ユニット/mL)の添加のあるなしの両方で、37℃の緩衝液中で一晩インキュベートした。メンブランからグリセロールを除去するためにメンブランを純水で洗浄(500μL、14,000×gで30分間遠心分離する)し、振盪によって残留物を除去し、受容試験管を新しい受容試験管に置換することによって、6つのYM−10限外ろ過試験管を調製した。次に、6つのインキュベーション溶液の各々の200μLを新たに調製したYM−10試験管に加え、それを、14,000×gで45分間遠心分離した。各試験管からのろ液を捕捉実験のために用い、それらは、Fet−(ガラクトシダーゼを加えないフェチュインの溶液)、Fet+(ガラクトシダーゼを加えたフェチュインの溶液)、AFet−(ガラクトシダーゼを加えないアシアロフェチュインの溶液)、AFet+(ガラクトシダーゼを加えたアシアロフェチュインの溶液)、BSA−(ガラクトシダーゼを加えないBSAの溶液)およびBSA+(ガラクトシダーゼを加えたBSAの溶液)と呼ばれる。
捕捉−ビーズ上のガラクトースの捕捉。
【0141】
全ての操作は、アルゴン気流下で実施した。ビーズ(10mg、0.35μmolのFmoc保護捕捉基、図10)を、8つのガラス試験管のそれぞれに入れ、DMF(200μL)中の10%DBUによる20分間の処理によって、それぞれをFmoc脱保護した。切断溶液をデカントし、ビーズをDMF(3×2mL)および0.1Mクエン酸塩/リン酸緩衝液pH5(3×1mL)で洗浄し、洗浄液はそれぞれデカントした。
【0142】
生じたヒドロキシルアミン捕捉ビーズ(図10)のそれぞれの1つの試験管に、Fet−、Fet+、AFet−、AFet+、BSA−、BSA+、緩衝液中のガラクトース(2mM)(Gal−stdと呼ぶ)および緩衝液単独(ブランクと呼ぶ)の50μLを加えた。さらなる緩衝液(50μL)を、各試験管に加えた。試験管に栓をし、加熱ブロック内において60℃で一晩インキュベートした。室温に冷却後、MeOH中の50%無水酢酸を加え、20分間穏やかに振盪することによって、残りの捕捉基をキャップした。
【0143】
残りの操作は、アルゴン下で実施しなかった。各試験管からのビーズを、テフロンフリットを有するプラスチック注射器へ移し、緩衝液(3×0.5mL)、H2O(3×0.5mL)、MeOH(3×0.5mL)、H2O(3×0.5mL)、DMF中の5%DIPEA(0.5mL)、DMF(3×0.5mL)、H2O(3×0.5mL)およびMeOH(3×0.5mL)の吸引によって洗浄した。各バッチのビーズの一部を、真空下で乾燥させた。
蛍光ヒドロキシメチルボロネート1による処理の後の、処理された捕捉ビーズ上の捕捉されたガラクトースの染色および視覚的検出(図13)
Fet−、Fet+、AFet−、AFet+、BSA−、BSA+、Gal−stdおよびブランク溶液のそれぞれに曝露させた上記の乾燥させた捕捉ビーズ(2mg)を、DMF(1×0.5mL)で洗浄し、DMF(100μL)中の0.5mMの1(図11)と0.1Mカーボネート緩衝液pH9(100μL)との混合液で処理した。生じた試料を、室温で1時間穏やかに振盪した。ビーズを、DMF(3×0.5mL)、0.1Mカーボネート緩衝液pH9(1×0.5mL)、H2O(1×0.5mL)、DMF(3×0.5mL)、DCM(3×0.5mL)で洗浄した。ビーズの一部を小さなガラスバイアルへ移し、携帯デジタルカメラで撮影した(図13、上パネル)。
染色したビーズからの蛍光ボロネートの放出(図13)
グリセロール/MeOH/H2O(1:2:2、v/v/v、100μL)の溶液を、図13の上パネルに示すビーズを含有する試験管のそれぞれに加えた。試料を、1時間穏やかに振盪した。上清を各試験管から取り出し、新しいプラスチックエッペンドルフ試験管に移した。AFet+およびGal−stdと命名した試験管からの上清は明赤色であったが、他のビーズからの上清は透明であった(図13、下パネル)。グリセロール/MeOH/H2O(1:2:2、v/v/v、100μL)により残りのビーズをもう一度洗浄すると、AFet+およびGal−stdと命名したビーズは再び白色になり、他から区別できなかった(図13、中パネル)。
(これらの実施例は、図11に示す化合物1の使用を例示する。図12に示す化合物2は、捕捉ビーズの上で捕捉されるガラクトースの染色および検出について化合物1に等しく効果的であることが見出され、グリセロールによる処理後、等しく効率的に放出された。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコシル化された基質上の末端単糖の分析方法であって、
(i)エキソグルコシダーゼを用いて前記グリコシル化基質から前記単糖を分離するステップと、
(ii)前記分離した単糖を固体支持体上の捕捉基に共有結合させるステップと、
(iii)前記共有結合された単糖を、式X:
TAG−R−ボロネート
(式中、
TAG=検出可能なタグ部分、
R=有機部分、
ボロネート=ボロン酸部分またはそのエステルである)
を有する検出剤と一緒にインキュベートするステップであって、前記ボロネートは前記R基に含まれる炭素原子に結合されるステップと、
(iv)検出剤を単糖に結合させるステップと、
(v)単糖に結合した検出剤を直接または間接に検出するステップとを含む方法。
【請求項2】
ステップ(iv)の後にさらなるステップを含み、未結合の検出剤が好ましくは洗浄によって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉基がリンカー基を通して固体支持体に結合される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iv)の前にキャッピング剤を未結合の捕捉基に結合させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
捕捉基が−NHR基を含むかまたはそれからなり、式中、Rは、水素(H)、アルキル、アリール、置換されたアルキルまたは置換されたアリール基からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉基が硫黄またはリン原子を含むかまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉基が、カルバニオンへのイオン化および続く糖アルデヒドへの求核攻撃が可能な酸性−CH−基を含むかまたはそれからなる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉基が構造−M−NH2を含むかまたはそれからなり、式中、Mはヘテロ原子である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記固体支持体が、重合体、固体、不溶性粒子および表面、例えばPEGAまたはSPOCCからなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記固体支持体がビーズである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記固体支持体が、ガラススライド、マイクロタイターウェルまたは金属コーティングされたスライド、例えば金コーティングされたスライドなどのスライドである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記固体支持体がヒドロキシルアミンで修飾された表面、例えば制御孔ガラス(CPG)ビーズまたはガラススライドである、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記分析がグリコシル化基質上の末端単糖の少なくとも1つの同定を可能にする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記検出ステップが吸光度の測定によって実施される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記検出ステップが蛍光の測定によって実施される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記検出ステップが蛍光分光分析などの分光分析によって実施される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記分析がグリコシル化基質上の単糖の少なくとも1つの定量を可能にする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記定量化が得られた結果を標準試料と比較することによって実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記グリコシル化基質が、グリコシル化された抗生物質、糖タンパク質、糖脂質、グリコシル化されたステロイド、オリゴ糖、多糖からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記グリコシル化基質が、好ましくは真核生物由来の糖タンパク質、糖脂質またはプロテオグリカンからなる群から選択される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記グリコシル化基質が、真核生物細胞の細胞膜から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質またはプロテオグリカンからなる群から選択される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記グリコシル化基質が、原核生物から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質または多糖からなる群から選択される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記グリコシル化基質が、原核生物の細胞表面または細胞膜から得ることができるかまたは得られる、糖タンパク質、糖脂質または多糖からなる群から選択される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシル化基質が、グリコシル化された抗生物質、グリコシル化されたステロイド、グリコシル化された天然生成物またはグリコシル化されたペプチドからなる群から選択される、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記単糖が、アルドース、ケトース、デオキシ糖、アミノ糖およびそれらの誘導体、例えばそれらの酸化誘導体、またはそれらの置換された誘導体からなる群から選択されるような単糖類である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記分離ステップが細菌のエキソグリコシダーゼを用いて実施される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記末端単糖が、細菌性多糖または糖脂質に作用して、デオキシ糖、アミノ糖、置換アミノ糖、分枝鎖糖、O−メチル糖などを切断するグリコシダーゼを用いて分離される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エキソグリコシダーゼが、α−マンノシダーゼ、α−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−キシロシダーゼ、α−フコシダーゼ、α−N−アセチルグルコサミニダーゼ、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、α−グルクロニダーゼ、α−イズロニダーゼ、α−シアリダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−キシロシダーゼ、β−フコシダーゼ、β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、β−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−イズロニダーゼおよびβ−シアリダーゼからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記末端単糖が酸加水分解、例えば穏やかな酸加水分解を用いて分離される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記分析されるグリコシル化基質が試料中に含まれ、ステップ(i)の後に追加のステップを含み、前記試料の成分が、例えばサイズ排除によって、好ましくは限外ろ過または透析によって除去される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記試料の前記成分が、C18または炭素などの疎水性相上での吸収によって除去される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記キャッピング剤が、図9に記載されているもののいずれかから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記検出剤が、TAG−R−B(OH)2、TAG−R−B(OH)(OR’)またはTAG−R−B(OR’)(OR’’)から選択される式を有し、
上式で、R’およびR’’は脂肪族または芳香族でよく、任意選択でRと共有結合する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記検出剤が、図5に開示されている群のいずれかから選択される式を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記検出剤が、図6に開示されている群のいずれかから選択される式を有する、請求項1から33のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記検出剤が、図7に開示されている群のいずれかから選択される式を有する、請求項1から33のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記検出剤が、図8に開示されている群のいずれかから選択される式を有する、請求項1から33のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記検出剤が、図11および12に示す式1または2を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記検出剤がアリールボロネートまたはヘテロアリールボロネートを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記検出剤のTAG部分が、蛍光部分、発光部分および着色部分からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記検出剤のTAG部分が、クマリン、テトラメチルローダミン、リサミンまたはフルオレセインからなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記検出剤のR部分が、脂肪族または芳香族の部分である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記検出剤が、検出ステップの前または後に固体支持体から放出される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記放出ステップが、固体支持体を、単糖との結合を巡って検出剤と競合する溶解性化合物の溶液と接触させることによって達成される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記溶解性化合物が、グリセロールまたはグルシトールなどの多価アルコール、またはジエタノールアミンなどのアミノアルコールである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
グリコシル化基質上で少なくとも1回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上繰り返される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
異なる試料について並行して実施される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
1つまたは複数の異なるグリコシダーゼを用いて繰り返される、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
多糖の配列を決定する方法であって、多糖または多糖を含む分子に、前記請求項のいずれかに記載の方法を適用することを含む方法。
【請求項50】
異常な糖タンパク質または糖脂質のグリコシル化と関連する疾患の診断方法であって、患者から得られた糖タンパク質または糖脂質の試料に、前記請求項のいずれかに記載の方法を適用することを含む方法。
【請求項51】
異常なグリコシル化パターンに関連する前記疾患が、炭水化物欠乏グリコシル化症候群(CDGS)、CDGS I、CDGS II、CDGS III、CDGS IV、ニューロン疾患、糖尿病、テイ・サックス病および癌からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
医薬用生成物などの生成物の細菌汚染についてモニタリングする方法であって、前記生成物の試料に請求項1から49のいずれかに記載の方法を適用することを含む方法。
【請求項53】
単糖と式X:
TAG−R−ボロネート
(式中、
TAG=検出可能なタグ部分、
R=有機部分、
ボロネート=ボロン酸部分またはそのエステルである)
を有する検出剤との間に形成される共有結合付加物であって、前記ボロネートは前記R基に含まれる炭素原子に結合される付加物。
【請求項54】
前記検出剤が図5に記載のものから選択される、請求項53に記載の共有結合付加物。
【請求項55】
前記検出剤が図6に記載のものから選択される、請求項53又は54に記載の共有結合付加物。
【請求項56】
前記検出剤が図7に記載のものから選択される、請求項53から55のいずれかに記載の共有結合付加物。
【請求項57】
前記検出剤が図8に記載のものから選択される、請求項53から56のいずれかに記載の共有結合付加物。
【請求項58】
固体支持体上の捕捉基に共有結合される、請求項53から57のいずれかに記載の共有結合付加物。
【請求項59】
図11または12の蛍光化合物のいずれかによる式を有する蛍光化合物。
【請求項60】
少なくとも1つの固体支持体、少なくとも1つの捕捉基および検出剤を含む部品キット。
【請求項61】
前記検出剤が請求項33から43のいずれかに記載のものである、請求項60に記載の部品キット。
【請求項62】
少なくとも1つの特異的グリコシダーゼをさらに含む、請求項60又は61に記載の部品キット。
【請求項63】
グリコシル化基質の試料をさらに含む、請求項60から62のいずれかに記載の部品キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−542233(P2009−542233A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518720(P2009−518720)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000352
【国際公開番号】WO2008/006373
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】