グリシンメチルトランスフェラーゼ(GNMT)動物モデル及びその使用
【課題】 本発明はグリシンメチルトランスフェラーゼ(GNMT)動物モデルとその使用に関連する。また、本発明はガン、特に肝臓ガンを予防するか治療することにおけるGNMT製品の使用に関連する。
【解決手段】 本発明そしてゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えを行うことによって乱されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild−type)の表現型に相対しそのマウスの異常な肝臓機能からなる表現型が生じ、その乱される位置はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875である。本発明はさらにアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法をある患者に提供し、その患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与する。
【解決手段】 本発明そしてゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えを行うことによって乱されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild−type)の表現型に相対しそのマウスの異常な肝臓機能からなる表現型が生じ、その乱される位置はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875である。本発明はさらにアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法をある患者に提供し、その患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリシンメチルトランスフェラーゼ(GNMT)動物モデルとその使用に関連する。また、本発明はガン、特に肝臓ガンを予防するか治療することにおけるGNMT製品の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
細胞異常による人間のかかる病気の中で、最も一般的なタイプの一つはガンであり、現在、それは主な死亡原因でもある。ガンは根本的な間葉に侵入し破壊して、すなわち、局部侵入をする完全的に増殖する(悪性)腫瘍である。場合によっては、浸透したガン細胞はさらに腫瘍で新たに形成されたリンパ管や血管に辿り着き、局部のリンパ節や遠くの臓器に運ばれ、そこで新たなガン巣(転移)を作り出す可能性もある。少なくともいくつかの正常な増殖を制御するメカニズムに再び制御されない細胞――どんな組織でも起こる――はその異常な増殖が起こるということから、腫瘍は一般的に認識されている。ガンは別として、腫瘍は単に局部的に起こり悪性にならないこともある。つまり、良性腫瘍ということである。あるいは、腫瘍細胞はただガン細胞の形態学的外見を持っているだけで元の位置に残る可能性がある。つまり、非浸透ガンである。ところが、その場合は、腫瘍はその部位でガンになることもある。
【0003】
腫瘍の悪性度を判断する絶対の方法はない。しかし、組織の顕微鏡検査は依然として現在慣用のいくつかの方法の中で、最も信頼できる方法である。病理学的研究において、腫瘍は組織学的で細胞学的基準に基づいた構造逆分化(退形成)の度合いのおよその判断によって、等級分けされることができる。しかし一方で、特定構造の特徴を失っても分化において生化的特徴をまだ保有している細胞があれば、構造的に分化される様に見えるが、正常な機能的特性は既に多くを失ってしまった細胞もあるとも考えられる。他方、腫瘍は均質でなく一つ以上の腫瘍等級のある領域を含む可能性もあるので、発展した腫瘍は、構造や、機能、成長可能性、薬またはX線に対する抵抗力、浸透性及び転移の能力が異なる細胞の混合集団から成るとも考えられる。その二つの制限は、腫瘍の組織学的検査の効果を減少させる。さらに、そのような標本抽出による検査は、大規模な調査にふさわしくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既に長い時間、悪性の絶対標識(マーカー)を発見しようとする多くの試みがなされている。腫瘍特異性や腫瘍に関わるタンパク質を特定しようとする他の試みは、直接測定や、そうしたタンパク質に対する特定の抗体を開発することによって、今現在も実施されている。それらは診断だけではなく、ガン細胞の破壊方策を提供する面においても有望なアプローチであると思われる。さまざまな物質が生体内に存在し集中するのは、特定のガンを起こす可能性があるということが報告されている。その例として、腫瘍胎児抗原(例えば、アルファフェトプロテイン)や血清蛋白(例えば、フェリチン)、酵素、ポリアミン、異所性ホルモン、細胞のマーカー、レセプター、腫瘍に関わるウイルス抗原などが挙げられます。しかし、ガンの診断において最も一般的に用いられる方法は、上記の物質のものより、組織学に依存する。絶対標識(マーカー)が一つも発見されないことはガンの研究において大きな欠乏である。
【0005】
最近の観測では、発ガン現象に密接的に関連する物質を捜すことに、いくつかの予測が提供される。ガンは腫瘍遺伝子の起動と腫瘍抑制遺伝子の不活化をもたらすいくつかの遺伝子異常に起因すると認識されている。さらに、そうした腫瘍形成に関わる重要な遺伝子の弁別的な発現は、細胞の中の伝令RNA (mRNA)量で反映されることができる。大量のmRNAの中に効率のあるものを選出し変異要因のある mRNAは、その差異を示すことのできる技術DD(Differential Display)から小さな要因の部分を分離し、それにより、腫瘍細胞及び正常細胞に違った要因が表面上に現される。(Liang et al., Cancer Research 52, 6966-6968, 1992)
【0006】
世界で最も一般的なガンの1つである人間の肝細胞癌(HCC)は、通常、肝硬変を誘発するウイルス感染や化学発ガン物質に接触することで起こる慢性炎症性肝疾患から成るものである。(Yu,M.W. et al., Crit Rev. Oncol. Hematol. 17, 71-91, 1994; Schafer,D.F. et al., Lancet 353, 1253-1257, 1999; Williams,J.H. et al., Am. J. Clin. Nutr. 80, 1106-1122, 2004) いくつかの地域(中国やアフリカなど)では、肝細胞癌は主にウイルス感染(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)やアフラトキシンB1(AFB1)に汚染された食べ物、そして他の形で摂取されたアフラトキシンに起因する。(Williams,J.H. et al., Am. J. Clin. Nutr. 80, 1106-1122, 2004; Chen,C.J., Hepatology 16, 1150-1155, 1992) アフラトキシンの代謝産物は、アスペルギラス・フラバス(Aspergillus flavus)とアスペルギラス・パラシティカス(Aspergillus parasiticus) 菌類は高温多湿な環境での二次産物である。そうした遍在している菌類は米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなどの主食作物に影響する。(McLean,M. & Dutton,M.F., Pharmacol. Ther. 65, 163-192, 1995)生物学的なシステムに直面する科学物質、または外来異物(AFB1など)は代謝プロセスによって変えられることができる。解毒経路の第一相では、多環芳香族炭化水素と塩化炭化水素に誘発されるシトクロムP450アイソザイムは基質に一つの酸素原子を加え、生物活性はその偶発的な後遺症である。(Hsieh,D.P.H., Elsevier Scientific Publishers, Amsterdam, 1986; Hsieh,D.P.H., Academic, Cambridge, 1987; Aoyama,T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 87, 4790-4793, 1990; Swenson,D.H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 60, 1036-1043, 1974)反応性中間体アフラトキシンB1 8,9エポキシド(CYPアイソザイムから作られます、例えば、サイトクロームP450IA2とP450IIIA4)は多くの動物の種の中で発ガン性を持っている。その肝臓のDNAとの共有結合は肝発ガンにおける重要なステップであることが示されている。(Forrester,L.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 87, 8306-8310, 1990; Koser,P.L. et al., J Biol. Chem 263, 12584-12595, 1988) 最も重要な第二相酵素は、グルタチオンS転移酵素グループに属し、グルタチオンと潜在的に毒性を持っている求電子剤との化学結合を促進させ、それらの毒性を消失させる。(Degen,G.H. & Neumann,H.G., Chem. Biol. Interact. 22, 239-255, 1978; Hayes,J.D. et al., Pharmacol. Ther. 50, 443-472, 1991) その後、反応の良いアフラトキシンB1 8,9エポキシドは遺伝子を攻撃し損害を与える。生体内で形成するAFB1−DNA付加体は主にAFB1-N7−グアニンである。(Croy,R.G. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 75, 1745-1749, 1978; Kensler,T.W. et al., Cancer Res. 46, 3924-3931, 1986) AFB1はDNAと共有結合をし、p53遺伝子のコドン249における第三ポジションでの塩基(それは AFB1による突然変異誘発がよく起こっているものだと考えられる)で、G・C→T・Aトランスバーションを誘発するということを指摘した報告は、少なくとも二つある (Bressac,B. et. al., Nature 350, 429-431, 1991; Hsu,I.C. et al., Nature 350, 427-428) 。
【0007】
グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)は、グリシンからサルコシンを合成する作用を促進させる細胞内の酵素である。それによって、グリシンはS-アデノシルメチオニン(SAMe)からメチル基を取得してサルコシンになり、その後、サルコシンデヒドロゲナーゼで水素を取り除かれてグリシンに戻すこともでる。後者の反応はエネルギーを生み出し、一つの炭素をSAMeから取り抜く。そのため、GMTはSAMe対S-アデノシルホモシステイン(SAH)の比率を調節することにおいて大切な役割を担うわけです。ネズミの肝臓のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GMT)における属性、例えば、飲食におけるメチオニンのレベルによって変動させられ関連させられているその活動状態と、メチオニンを多く摂取した食事による誘導性は、GNMTはSAMeの組織集合やメチオニンの代謝を管理することでも重要な役を果たすものと考えられる (Ogawa, H. et al., J. Biol. Chem., 257:3447-3452, 1982) 。しかし、GNMTは単なる生体内で代謝した全部のメチオニンの20%に関わることが発見された (Case et al., J. Nutr. 106: 1721-1736, 1976) が、そのたんぱく質は発育十分なネズミやハツカネズミの肝臓に多くあり、ほとんどが肝臓であらゆる可溶性たんぱく質の1%〜3%を占める (Heady et al., J. Biol. Chem., 248:69-72, 1973) 。そのため、GNMTはほかの生理的な機能を発揮する可能性もあり、ネズミの肝サイトゾールから純化された葉酸結合蛋白と全く同じ様に働くものがあるということが発見された (Cook, R. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3631-3634, 1984) 。近年、GNMTはサイトクロームP4501A1遺伝子(CYP1A1)における5'-フランキング領域と相互に作用する4S多環芳香族炭化水素結合蛋白であることは、ラハ(Raha)とほか(J. Biol. Chem., 269:5750-5756)によって証明されている。また、GNMTは肝細胞で最も豊富で効率的なメチルトランスフェラーゼで、その活動はほかのメチルトランスフェラーゼに影響を与えることも可能である。例えば、tRNA-メチルトランスフェラーゼは活動がGNMTに妨害されることができる (Kerr et al., J. Biol. Chem., 247:4248-4252, 1972) 。脂質動員合成物、例えば、SAMe及びその前駆物質であるメチオニンやコリン、ベタインはネズミやハツカネズミのモデルでさまざまな発ガン性物質に誘発される肝腫瘍の発展を予防できると、多くの実験室から研究結果が提出されている。GNMTは肝細胞におけるSAMeのレベルと密接な関連をもっており、そしてその酵素の活動がSAMeによって活性化されるかもしれないという発見により、GNMTは肝ガンに対する科学的予防経路の過程にかかわるとも考えられる (Pascale et al., Anticancer Res., 13:1341-1356, 1993) 。
【0008】
GNMT発現のレベルはヒト肝細胞ガンの細胞株(Cell Lines)と腫瘍組織のどちらでも減少させることできるということが発表されている (Liu, H. H. et al, J. Biomed. Sci.10, 87-97, 2003; Chen,Y.M. et al., Int. J. Cancer 75, 787-793, 1998) 。人間のGNMT遺伝子は6p12染色体領域に集中され、その多型を特徴づけられる。(Chen, Y. M. et al., Genomics 66, 43-47, 2000)いくつかのヒトGNMT遺伝子多型における遺伝子型分析は、肝細胞ガン組織のうちに36−47%の遺伝子マーカーが染色体欠失という現象があることを示し、(Tseng,T.L. et al., Cancer Res. 63, 647-654, 2003) そしてGNMTはベンゾピレン(BaP)デトックス経路にかかわり、GNMT発現細胞で形成するBPDE-DNA 付加体を減らすことが発表されている (Chen,S.Y. et al., Cancer Res. 64, 3617-3623, 2004) 。
【0009】
前の研究結果は、ネズミの肝サイトゾールでマルチプロテイン(multiple proteins)はAFB1を化合させることができるということを指摘しています。(Taggart,P. et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 182, 68-72, 1986) AFB1結合にかかわる細胞質ゾルのたんぱく質は、輸送や代謝、発ガンせい性物質の作用において働く潜在力を持っている可能性がある ( Dirr, H. W. & Schabort,J.C., Biochem. Int. 14, 297-302, 1987) 。
【発明の効果】
【0010】
本発明はゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えを行うことによって乱されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild-type)の表現型に相対しそのマウスの異常な肝臓機能からなる表現型が生じ、その乱される位置はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875である。
【0011】
本発明は肝臓疾患や異常の予防または治療に対する候補エージェント(agent)をスクリーニングする方法をも提供し、それは
a.本発明のノックアウトマウスを提供し、
b.ある候補エージェントをそのノックアウトマウスに投与し、
c.そのノックアウトマウスの肝臓機能を候補エージェントを投与しないノックアウトマウスの肝臓機能と比較し、そして肝臓機能を好転させるエージェントは例の肝臓疾患や非常に効果があるエージェントとして選ばれるといったことから成る。
【0012】
本発明は一組のプライマーを提供する。それは(i) SEQ ID Nos 1と2 、または (ii) SEQ ID Nos 1と2である。
【0013】
本発明はさらにGNMTノックアウトマウスにおける調節遺伝子群のデーターベースを提供する。
【0014】
本発明は肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データーベースをも提供する。
【0015】
本発明はさらにアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法をある患者に提供し、その患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与する。
【0016】
本発明はアフラトキシンB1(AFB1)によって引き起こされる疾患に対する治療または予防のできる合成物を提供し、それはグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成する。
【0017】
現在の発明において、正常細胞と腫瘍細胞におけるGNMT遺伝子は有意差が見られることが明らかに分かる。本発明の目的は、GNMTの遺伝子発現の相対的なレベルを測定することによって細胞の異常を見つける方法を提供することである。さらにもう一つの目的は、異常な細胞にGNMTを送ることによって細胞の異常を修正する方法を提供することである。精神活性の薬をスクリーニングするのに役立ついくつかの非人間のトランスジェニック動物モデルが提供される。そうした動物は、遺伝子組み換えGNMT遺伝子を持っている。遺伝子における配列の改変は、削除または機能突然変異において他の喪失や、部位指定変異またはランダム変異によるヌクレオチド配列の持つ外来遺伝子の導入、ほかの種からの外来遺伝子の導入またはそれらの組合せなどが含まれます。遺伝子改変が行われたトランスジェニック動物はホモ接合性あるいはヘテロ接合性の可能性がある。
【0018】
GNMTは、AFB1処理の後で核移動を経る。本発明のテスト結果によると、AFB1はSAMeと同じ結合部位を争ってGNMTと結合することである。GNMTはAFB1-DNA付加体形成を減らしAFB1処理を受けている細胞の生存率を促進することによってAFB1に誘発された細胞毒性を拮抗するという考えが実証された。最後に、GNMTトランスジェニックマウスモデルより発見された結果は、GNMTの過剰発現はAFB1に誘発された原発性肝細胞癌(HCC)に対して保護効果があるということが示されている。
【0019】
本発明は、患者にアフラトキシンB1に起因する病気を治療するか予防する方法を提供する。それは効果的量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含んでいるプラスミドを患者に投与することから成る。
【0020】
好適な実施例において、その病気は原発性肝細胞癌(HCC)となっている。
【0021】
現在の方法では、処置または予防は、AFB1-DNA付加体の形成を妨害することによってなされる。
【0022】
遺伝子治療において、プラスミドはプラスミドワクチンとして見なすことができ、遺伝子治療における現在の技術によって患者の体に直接施されることができる。
【0023】
本発明は、ゲノムの混乱がneucleotidesにおけるSEQの547-4875でNo.8を確認することから発見したマウスの異常な肝機能から成立し、野生のタイプ表現型と比較して、表現型を生じるためにGlycine N-メチル基転移酵素(GNMT)遺伝子座位を組み換えによって崩壊するノックアウトmouceを提供する。
【0024】
本発明はゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えによって崩壊されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild-type)の表現型に相対し例のマウスの肝臓機能の異常からなる表現型が生じ、その崩壊はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875で起こる。
【0025】
特に、ヌクレオチドはGNMTエクソン1-4とエクソン5の一部分である。グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ活性の欠如の表現型は、野生型の表現型に相対して成熟したグリシン-N-メチルトランスフェラーゼの減少した量はその原因だと考えられる。
ノックアウトマウスの準備において、グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ遺伝子はヘテロローガスヌクレオチド配列(例えばネオマイシン)との組み換えによって崩壊される。
【0026】
その中で「異常な肝機能」という用語は制限されないが、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇を含む。
【0027】
トランスジェニック動物
ここで使われている「導入遺伝子」という用語は、哺乳類の細胞(特に生きている動物の哺乳動物細胞株)のゲノムに遺伝物質を人工的に挿入されたか挿入されようとしていることを説明する。導入遺伝子は細胞を変えるのに用いられる。それは、外来DNAの編入に次いで細胞における遺伝子の永遠的なものであるか一時的な変化(望ましくは永遠的なものの遺伝子変化)が誘発されるということを意味している。永遠的なものの遺伝子変化は、通常、細胞のゲノムにDNAの導入によって成し遂げられる。安定した統合を備えるベクターは、プラスミド、レトロウイルスと他の動物ウイルス、YACsなどを含みます。興味があるのはトランスジェニック哺乳類(例えば牛やブタ、ヤギ、馬など)、特に齧歯動物(例えばネズミ、マウスなど)である。
【0028】
トランスジェニック動物は染色体外遺伝因子として呈すか、その細胞、特に生殖細胞の全部または一部に安定的に結合される外来の核酸配列を包含します。明記しない限り、トランスジェニック動物は生殖系細胞系の細胞群が安定した変化を包含することが仮定される。その動物が最初に構成されている間、細胞のサブセットだけは変えられたゲノムを持っている「キメラ」または「キメラ動物」は生み出される。キメラは主に繁殖目的で使われます。それによって望ましいトランスジェニック動物が生み出される。ヘテロ接合性の変異がある動物はキメラの繁殖によって生み出される。雄と雌のヘテロ接合体は一般的にホモ接合性の動物を生み出すように繁殖される。トランスジェニック動物は2つのグループに分類され、口語で「ノックアウト」と「ノックイン」と呼ばれる。本発明では、ノックアウトは内在性GNMT遺伝子の一方または両方の対立遺伝子が部分的であるか完全な機能損失を持っている。ノックインは内在性遺伝子から変えられた遺伝子配列と機能を得た導入遺伝子が導入されている。その二つは結合されるかもしれないが、その場合、天然に存在する遺伝子の能力が奪われ、そして変化した遺伝子型が導入される。
【0029】
ノックアウトにおいて、目標遺伝子発現は検知されることができないか、重要ではないことが望ましい。GNMT遺伝子のノックアウトとは、GNMT遺伝子のその機能がかなり減少されたということである。それによって、発現は検知されることができないか重要ではないレベルだけを呈している。それは様々な手段によって成し遂げられる可能性もあるが、崩壊したコーディング配列の導入、例えば一つまたは一つ以上の停止コドンの挿入やDNA断片の挿入などや、コーディング配列の削除、コーディング配列に代えて停止コドンの置換などはその例である。時には、外来の導入遺伝子配列は最終的にゲノムから削除され、変異を行う前の配列に真の変化を残す。異なるアプローチは、「ノックアウト」を達成するのに用いられると考えられる。天然の遺伝子は全部または一部の染色体削除が誘発されるかもしれないが、非コード領域(特にプロモーター領域)や、3’制御配列、エンハンサーの削除、またはGNMT遺伝子の発見を促進する遺伝子の削除などが含まれる。機能的なノックアウトは、天然の遺伝子の発現を妨害するアンチセンス構成物の導入によっても成し遂げられる可能性がある。
【0030】
「ノックアウト」は条件つきのノックアウトをも含む。例えば、目標遺伝子の変異は以下の状況で起こる:その動物が目標遺伝子変異を促進する物質にさらされること、目標遺伝子の位置で組み換えを促進する酵素の導入(例えばCre-loxシステムにおけるCre)、または出生後に目標遺伝子変異を誘導する他の方法である。
【0031】
目標遺伝子の「ノックイン」は、宿主細胞ゲノムに変異を与え、天然のGNMT変えられた遺伝子の発現または機能に終わることを意味する。増加する(異所性を含む)か減少する発見は、目標遺伝子の追加したコピーの導入、または強化された内在性目標遺伝子のコピーの発見を提供する制御配列を有効に挿入するすることによって達成するとも考えられる。そうした変異は構造性的な条件つきなものと思われる。すなわち活性剤または抑制物質の存在に依存している。
【0032】
外来遺伝子は通常ホスト動物より異なる種から得たか、さもなければそのコーディングまたは非コーディング配列が変えられる。導入された遺伝子は野生型の遺伝子や、天然に存在する多型または遺伝的に操作られた配列である可能性も考えられる。例えばコーディングまたは非コーディング領域への削除や置換、または挿入が行われるということである。導入された配列は、GNMTポリペプチドをエンコードするとも考えられる。導入された遺伝子がコーディング配列である場合、それは通常、プロモーター(それは構成性的または誘導可能であるとも考えられる)やホスト動物の発現において必要である他の制御配列に“作動可能に連結(operably linked)”される。“作動可能に連結(operably linked)”されると言うことは適切な分子(例えば転写活性化タンパク質)が制御配列に結合される時、DNA配列と制御配列が遺伝子発現を可能にする方式で連結されたということである。
【0033】
興味があるがそれに制限していない特定の構築物は、アンチセンスGNMT遺伝子を含んでいる。アンチセンスGNMT遺伝子は天然のGNMT発現と優性阻害GNMT突然変異の発見、GNMT遺伝子の過剰発現を妨げるものです。検知されることができるマーカー、例えばlac Zはその遺伝子座(そこで発見の増加 (upregulation)は簡単に検知された表現型の変化に終わる)に導入する可能性がある。
【0034】
GNMT遺伝子で一連の小さな削除と/または置換がされると考えられる。それによって、DNA結合で異なるエクソンの役割や転写調節などを決定する。細胞におけるGNMTタンパク質の発見を提供する(さもなければ、その細胞は正常に生み出されない)ことによって、細胞の行為の変化が誘発されることができる。
【0035】
相同的組換え用のDNA構築物は、少なくとも一部の望ましい遺伝子改変があるGNMT遺伝子を含んで、そして目標遺伝子座にホモロジーのある領域をも含んでいる。ランダムな統合用のDNA構築物は、組み換えを伝達するのにホモロジーのある領域を含む必要はない。便利なのは、正と負の選択用のマーカーは含まれる。目標とされている遺伝子改変のある細胞を相同的組換えを通して生み出す方法は技術(art)において知られている。胚性幹細胞(ES細胞)を得るために、ES細胞系は使用されるか、あるいは、胚細胞は新たにホスト(例えばマウス、ネズミ、モルモットなど)から得られるとも考えられる。
【0036】
そのような細胞は適当な線維芽細胞層で発育するか、適当な成長因子(例えば白血病抑制因子(LIF))が存在している時に発育する。ES細胞は性質転換されたとき、トランスジェニック動物を産むのに用いられる可能性もある。性質転換の後、そうした細胞は適切な培地でフィーダー細胞層の上にメッキをされる。その構築物を含んでいる細胞は、選択的な培地を使用することによって検知されるとも考えられる。コロニーは発育に十分な時間を経た後、選ばれて相同的組換えや構築物の統合の発生について分析されます。そうしたコロニーは陽性である場合、それから胚操作と胚盤胞注入において使われる可能性も考えられる。胚盤胞は生後4〜6週間目の過剰排卵する雌から得られるものである。ES細胞はトリプシン処理され、そして、その改変された細胞は胚盤胞の割腔に注入される。注入の後、胚盤胞はそれぞれ偽妊娠の雌の子宮角に戻される。雌はその後、妊娠期間に入り、産まれた一腹の子が構築物を持っている変異細胞がスクリーンされる。胚盤胞とES細胞の異なる表現型に備えることによって、キメラの後代検定は、すぐに探知されることができる。
【0037】
したがって、本発明は本発明のノックマウスから備えられた細胞または細胞株を提供する。好適な実施例において、細胞または細胞株は幹細胞、ES細胞卵母細胞と胚細胞を含めているグループから選ばれる未分化細胞である。
【0038】
キメラ動物は改変された遺伝子の有無についてスクリーニングされ、そして改変されている雌および雄が交尾することによってホモ接合性の妊娠が生じます。もしその遺伝子変異は開発においてある程度で致死性を引き起こすならば、組織または臓器は同種異系間やコンジェニック系統における移植や移植片として、または試験管内(in vitro)培養において維持されてもよいと考えられる。
【0039】
関心のゲノム配列は、リストアップされた配列の間で定められ、開始コドンと停止コドンの間で存在している核酸から成り、そして通常天然の染色体で存在する全てのイントロンを含みます。それは更に成熟したmRNAで見つけた3'と 5'UTR(untranslated regions)を含む可能性も考えられる。それは、特定の転写制御配列や翻訳制御配列(例えばプロモーター、エンハンサーなど)、そして転写領域の5'または3'端のどちらにおいて1kb(より多い可能性がある)のフランキングゲノムDNAを更に含むものとも考えられる。そのゲノムDNAは100kbpやより小さい断片として隔離され、非常なフランキング染色体配列を持っていないと考えられる。
【0040】
薬物をスクリーニングする分析評価
本発明はさらに肝臓疾患や異常の予防または治療に対する候補エージェントをスクリーニングする方法をも提供し、それは
a.本発明のノックアウトマウスを提供し、
b.ある候補エージェントをそのノックアウトマウスに投与し、
c.そのノックアウトマウスの肝臓機能を候補エージェントを投与しないノックアウトマウスの肝臓機能と比較し、そして肝臓機能を好転させるエージェントは例の肝臓疾患や異常に効果があるエージェントとして選ばれるといったことから成る。
【0041】
そこから派生された被験者のトランスジェニック動物または細胞を用いることにより、GNMTポリペプチドと結合するか、それを調整するか、拮抗するか、苦しませるリガンドまたはサブストレートを識別することができる。そうしたポリペプチドに対して効果の思わしくない薬をスクリーニングすることにも関心がある。ヒト細胞に低い毒性を持つ薬品のスクリーニング評価について、特に興味があるものと思われる。
【0042】
多種多様な分析評価はその目的のために使われる可能性もあるが、生体内の行動研究や、投与後に薬剤の局在の識別、標識された試験管内のタンパク質-タンパク質結合の分析評価、タンパク質-DNA結合の分析評価、ゲルシフト法、タンパク質結合の免疫測定法などを含んでいる。特定の分析評価に従い、全動物、あるいはそこから派生された細胞が使われるかもしれません。細胞はある動物から新たに隔離されるかもしれないか、培養基において不死化にされるかもしれません。特に関心の細胞は、神経および脳組織を含む。
【0043】
ここで用いられる用語「エージェント(agent)」というのは、GNMTポリペプチドの生物学的作用に影響を及ぼす能力を持つ分子(例えばタンパク質または医薬)のことである。
【0044】
通常、複数の分析評価混合物は同時に異なるエージェント濃度でされることにより、そうした濃度に異なる反応を得る。一般的に、こうした濃度のうちに、1つがネガコン(negative control)の仕組みをしており、すなわちゼロ濃度や検知のレベル以下である。
【0045】
好適な実施例において、そのエージェントは原発性肝細胞癌(HCC)や、糖原病、肝臓形成異常または脂肪肝を予防するか、治療することに使われる。
【0046】
候補エージェントは、一般的に有機分子(望ましくは50以上、およそ2,500未満のダルトンの分子量を有する小さな有機化合物)であるが、多数の化学的な種類(chemical classes)がある。候補エージェントはタンパク質(特に水素結合)と構造的な相互作用に必要な官能基から成り、一般的に少なくともアミン、またはカルボニル、水酸基、カルボキシル基それぞれ一つ持っており、望ましくはそうした化学の官能基のうちに、少なくとも2つを持つ。候補エージェントはしばしば周期的な炭素または複素環構造および/または芳香族構造または多環芳香族構造を含み、上記の官能基の一つまたは一つ以上の代用をする。候補エージェントは、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、派生物、構造類似物またはその組合せといった生体分子の間で発見されるが、それに制限してはいない。
【0047】
候補エージェントは、合成であるか天然合成物のライブラリを含む多種多様な源から得られる。例えば、多種多様な有機化合物と生体分子におけるランダムで誘導された合成(ランダム化されたオリゴヌクレオチドとオリゴペプチドの発現を含む)に使えるいくつかの手段が考えられる。あるいは、細菌や菌類、植物、そして動物性抽出物の形として天然合成物のライブラリは、入手するか、すぐに生産される。その上、自然であるか総合的に生産されたライブラリと合成物は、従来の化学的や、物理的で、生化学的手段を通してすぐに改変されて、そして組合せライブラリを作成するのに用いられる可能性も考えられる。既知の薬理学的エージェントは構造類似物を生じるが、誘導された、又はランダムな化学改変、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、amidificationなどを受けるものとも考えられる。
【0048】
スクリーニングは既知の薬理活性化合物とその化学類似物に向けられると考えられる。既知の肝ガンに対する制ガン剤または肝病気に対する薬の中で、非常に抑制作用(hepatoprotective effect)のある薬物に特に興味がる。
【0049】
ノックアウトマウスを準備するために、本発明は一対のプライマーをも提供する。それは(i) SEQ ID Nos 1と2または(ii) SEQ ID Nos 3と4である。
【0050】
本発明は、上流にある調整遺伝子(up-regulatory)と下流にある調節遺伝子(down-regulatory)を研究するために、GNMTノックアウトマウスにおける調節遺伝子のデータベースを更なる提供する。
【0051】
更なる本発明は、肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データベースを提供し、それは
(a) 生存と増殖:PTEN、PI3K、Akt 1、GSK3βまたはβ-カテニン
(b) ガン遺伝子:サイクリンD1、C-mycまたはC-ジュン;そして、
(c) 腫瘍抑制遺伝子:Rbまたはp53。
からなる。
【0052】
本発明はアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防のできる合成物をも提供し、それはグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成する。好適な実施例において、GNMTは二量体形成であるか四量体形成である。
【0053】
本発明の組み合わせは、主食作物(例えば米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなど)の補助的な添加物として適用されることができる。
【0054】
本発明は特定の方法論や、プロトコル、細胞株、動物の種または属、構築物、記述された試薬に限られていないことは理解すべきである。そうしたものは、もちろん、変化させる可能性がある。もう一つ理解すべきことは、ここで使用される用語が特定の実施例を説明するという目的だけで使われ、本発明の範囲を制限しようとするのはその目的ではないということである。本発明は、添付した特許請求の範囲だけによって制限されるのである。
【0055】
本記載にあるものと添付した特許請求の範囲において使われているように、単数形と、「と」、「その」といった言葉は複数の指示物を含み、又は、その文脈が明確に指摘するので、その点にも注意しなければならない。
【0056】
特に定義しない限り、ここで使用されるすべての専門的で科学的な用語は、本発明の属する技術(art)範囲における関連的技能を身につける人が理解しているのと同じ意味を持っている。ここに記述されている方法や装置、材料と類似したまたは同等したものは、すべて本発明の実施(practice)またはテスト(test)において使われることができるが、現在説明するのは、望ましい方法や装置、材料である。
【0057】
ここに言及したすべての出版物は、細胞株や構築物、本発明に適用されるかもしれないそうした出版物で記述される方法といった例を、記述し明らかにする目的で言及した。上記に言及された、そして全篇のテキストを貫くそうした出版物は、本発明の出願年月日の前に発表されることだけで言及する。先行発明によって発明者がそのような発表に先だつ権利を許可されないものと解釈されるものではない。
【0058】
以下の実施例は関連する技術を身につけた者たちに本発明の製作および応用について全面的な説明を提供するために挙げられる。本発明の範囲を制限することを目的とはしない。使われる数(例えば総計や温度、濃度など)に関して正確さを確保しようという努力はされたが、若干の実験誤差と逸脱は許容できる。特に指摘しない限り、パーセント(百分比)は重量百分比のことで、分子量は平均分子量、温度は摂氏の温度で、そして圧力は気圧を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
目標ベクターを構築するために、ラムダ(λ)ファージクローン3-2と5-3に代謝されるDNA断片は、プラスミド-pBluescrip II KSに挿入されました。左アーム(left arm)はPst Iを用いてファージクローン5-3から代謝され、pNeoベクターに挿入された。右アーム(right arm)はHinc IIを用いてファージクローン3-2から代謝され、TKベクターに挿入された。右アームとTK遺伝子を含んでいる断片がNot Iを用いて代謝され、左アームを含んでいるpNeoベクターに挿入されるこのによって目標ベクターを生み出す(図1)。
【0060】
(マウスGNMT遺伝子のエクソン 1-4およびエクソン5の一部分を入れ替える)ネオマイシン遺伝子は、目標ベクターで2つのDNA断片(3.1kbと3.7kb)に挟まれる。チミジンキナーゼ遺伝子が負の選択マーカーとして使われた。(図2A)40μg目標ベクターは、AscIを用いて線形化され、エレクトロポーレーションによってES細胞(129/Sv-派生系)に導入された。サザンブロット分析を使って278個のクローンをスクリーニングした後(図2B)、組み換えクローンが隔離されマイクロインジェクション法によって胚盤細胞に注入された。そのため4匹の雄キメラマウスは生み出され、雌C57BL/6マウスを育てるのに用いられた。アグーチ(Agouti)のF1世代は崩壊された対立遺伝子における生殖細胞系の伝送(germline transmission)が検知されるために、PCRが用いられた。ヘテロ接合性のF1雄マウスが雌の野生型C57B/6マウスと戻り交配されて、C57BL/6ゲノム遺伝的背景を持つマウス(C57BL/6 genome background mice)を生み出します。PCRは、野生型(+/+)とGNMTヘテロ接合性(+/-)、GNMT-/-マウスを区別するために用いられ、下記のプライマーが使用された:
GNMTにおいて
GNMT-F(5'-GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGC)とGNMT-R(5'-TTGCAGTCTGGCAAGTGAGC);
ネオマイシンにおいて
ネオマイシンF(5'-GTTCCTTGCGCAGCTGTGCT)とネオマイシンR(5'-CGGCCACAGTCGATGAATCC)。
正常のGNMT対立遺伝子はそうしたGNMTプライマーにより772bp断片を生じ、そして崩壊された対立遺伝子はそうしたネオマイシンプライマーにより409bp断片を生じた。(図2C)肝臓におけるGNMTタンパク質の発現は、サザンブロット分析で分析された; その結果が示したように、野生型と比較したら、GNMT+/-マウスは肝臓におけるGNMT発現がおよそ50%が減って、GNMT-/-マウスはその肝臓でGNMTが検知されることができなかった。(図2D)
【0061】
生後11週間で、雄と雌の野生型とGNMT+/-、GNMT-/-マウス(組ごとに6匹やそれ以上のマウス)は表現型分析のために犠牲になった。SAMeとSAH濃度は、HPLCを用いて検知された。同性の野生型マウスに比べると、GNMT-/-マウスは雄とも雌ともSAMeの肝臓濃度がかなり増えた(p<0.05)。対照的に、GNMT+/-マウスにおけるSAMeの肝臓濃度は野生型マウスより2.8倍低くて(表1)、そして雄と雌のGNMT-/-マウスにおけるSAHの肝臓濃度は野生型マウスと類似している。したがって、SAMe/SAHの比率は雄と雌のGNMT-/-マウスにおいてそれぞれ42と67倍増えた(表1)。ホモシステインレベルは、そうした異なるマウスグループで不変のままだった。メチオニンレベルは、GNMT-/-マウスにおいて野生型マウスよりその量が1.9〜2.4倍多かった(表1)。
【0062】
表1 野生型とGNMT欠損マウスにおける、肝臓でのSAMeとSAH濃度および血清ホモシステインとメチオニン濃度である。
野生型肝腫瘍形成GNMT-/-マウスの研究で、表現型GNMT-/-マウスは12週目まで隔週ごとに磁気共鳴画像とソノグラムを使って追跡した。その結果は7匹の雌GNMT-/-マウスのうち7匹の腫瘍が0.5mm以上成長したHCC、これは16.1ヶ月目のものと意味する。対照的に、我々が21ヶ月6匹の雄GNMT-/-マウスの研究を追跡している中、一匹はHCCがあり、二匹は13ヶ月で早まって犠牲になり、他は不明確である。したがって、14ヶ月から15ヶ月の雌のGNMT-/-マウスは、50%(二分の一)がHCCを持っていた。21ヶ月から22ヶ月で、雌のGNMT-/-マウスの6匹のうち6匹(100%)はHCCが発達した。雄の18ヶ月から21ヶ月のGNMT-/-マウスは75%(四分の三)が肝小結節に発達があった。野生型肝腫瘍形成の雌GNMT-/-マウスが指し示すものは、雄のGNMT-/-マウスよりも深刻である。一方、37.5%(八分の三)の雌GNMT-/-マウスは血管腫が発達した。全ての雌GNMT-/-マウスが脂肪変性に変化した中、雄GNMT-/-マウスは三分の一だけだった。
【0063】
表2 GNMT-/-マウスは生後13-21ヵ月目での肝腫瘍形成である。
a.マウスが犠牲になった年齢。
b.18ヶ月で二匹の雄の肝小結節が0.6cm以下で、一匹の雄には肝小結節がなかった。
c.二匹のマウスは軟弱過ぎたため、肝小結節を持たなかった。
d.このマウスは麻酔処置によって犠牲になった。
e.21ヶ月で、肝臓にある小結節が超音波によって検出された。
f.18ヶ月で小結節は検出されなかった。
g.18ヶ月で0.5cmの小結節が検出された。
h.該当なし。
【0064】
マイクロアレイ分析は、GNMTノックアウトマウスと野生型マウスと代謝の違いを観察するのに適用された。野生型と比較したら、mRNAレベルにおいて雌のGNMT欠損マウスは1896個の遺伝子がかなり増加し、雄のGNMT 欠損マウスは2429個の遺伝子がかなり増加した。そうした遺伝子のうち、それぞれ二倍以上変化した543個と843個の遺伝子は、更なる機能分析のために選ばれた。我々は、CrossPathプログラム(http://ibs.sinica.edu.tw/crosspath/)を使い、KEGG経路データベースに基づいてそれらの遺伝子を機能によって分類した。表3と表4は、発現量の異なる遺伝子は発現量が二倍または二倍以上増加しているのが所定の経路で分類された機能的な経路を示した。それによって、雌と雄GNMT欠損マウスにおいて主な経路増加はPPARシグナル伝達経路および細胞周期で起こるものである。そのうえ、サイトカイン(cytokine)-サイトカイン受容体へのインタラクション及びMAPKシグナル経路は、雌と雄GNMT欠損マウスにおいて減少した。表5は、リアルタイム定量PCR法によってGNMT-/-マウスにおいていろいろな組織における異なる経路に属している遺伝子のmRNA発現レベルvs.同齢の野生型マウスにおいて肝臓組織におけるそのmRNA発現レベルの比率が測られることを示している。その結果は、GNMT-/-マウスにおいていくつかの生存と増殖に関わる遺伝子はかなり減少し、そして三つのガン遺伝子は増加したことを示している。
【0065】
表3-1 KEGG経路データベースによる生後11週間での雌と雄GNMT欠損マウスにおける調節遺伝子の機能的分類である。
* GNMT欠損マウスと野生型マウスにおいて発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0066】
表3-2. 生後14-18ヵ月目でKEGG経路データベースによって機能的な分類をした雌と雄GNMT-/-マウスにおける腫瘍と腫瘍に隣接した組織の調節遺伝子個数である。
* GNMT-/-マウスにおいて腫瘍と腫瘍に隣接した組織と発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0067】
表4 KEGG経路データベースによる雌と雄GNMT欠損マウスにおける下流にある調節遺伝子(down-regulatory genes)の機能的分類である。
* GNMT欠損マウスと野生型マウスにおいて発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0068】
表5 リアルタイム定量PCR法によってGNMT-/-マウスにおいていろいろな組織における異なる経路に属している遺伝子のmRNA発現レベルvs.同齢の野生型マウスにおいて肝臓組織におけるそのmRNA発現レベルの比率が測られることを示している。
PTEN(phosphatase and tensinhomolog)はガン抑制遺伝子PTENで、PI3K(phosphatidylinositol 3-kinase)はホスファチジルイノシトール3-キナーゼで、GSK3β(glycogen synthase kinase)はグリコーゲンシンターゼキナーゼで、Rb(retinoblastoma)は網膜芽腫で、Tは腫瘍状組織で、TAは腫瘍に隣接した組織で、KOはGNMT-/-マウスで、WTは野生型のマウスである。
a.生後11週間でGNMT-/-マウス対野生型のマウスの遺伝子発現プロフィールの比率である。その生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
b.腫瘍に隣接した組織対野生型のマウスにおける肝臓組織の遺伝子発現プロフィールの比率である。その生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
c.腫瘍状組織対野生型のマウスにおける肝臓組織の遺伝子発現プロフィールの比率である。生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
GNMT-/-マウスモデルがより発ガン物質に影響されやすいことを証明するために、マウスらに対してアフラトキシンB1(AFB1)を用いてテストした。AFB1は、以下の剤量で腹膜内に二回投与された:生後七日目で体重一グラム当たり10ugで、生後九週間で体重一グラム当たり40ugである。AFB1で処置されたすべて(5/5)の雌および57.1%(4/7)の雄GNMT -/-マウスには肝臓結節が検知されたが、AFB1で処置された野生型のマウスも溶媒(トリカプリリン、tricaprylin)で処置された他のグループも生後13-14ヵ月目でまだ肝腫瘍が起こることはないと、その結果は示している(表6)。
【0069】
表6 生後13ヵ月目でそれぞれ溶媒またはAFB1で処置された2匹の遺伝子型マウス(genotypes mice)の肝腫瘍形成である。
HE染色でマウス肝臓部の組織薄片を見たら、AFB1で処置された野生型のマウスは異常が現れなかったが、AFB1で処置された雄のGNMT-/-マウスにはデイスプラジア結節や早期HCC、脂肪結節が検知され(図9AとB)、そして雌のGNMT-/-マウスには硬化性HCC(Sclenosing HCC)や限局性脂肪沈着におけるデイスプラジア結節が検知された(図9CとD)。
【0070】
材料と方法:細胞培養および処置
肝臓ガン細胞株[HA22T/VGH]はWaxman,D.J. & O'Connor,C. Growth Hormone Regulation of Sex-Dependent Liver Gene Expression. Molecular Endocrinology 20, 2613 (2006)によって作製されたもので、ヒト肝芽腫細胞株-HepG2から取り出された安定発現クローンは、Mode,A. & Gustafsson,J.A. Sex and the Liver−A Journey Through Five Decades. Drug Metabolism Reviews 38, 197-207 (2006)に基づいて作製されたものである。Chen, S.Y. et al. Glycine N-methyltransferase tumor susceptibility gene in the benzo(a)pyrene-detoxification pathway. Cancer Res. 64, 3617-3623 (2004)といった論文で述べた[SCG2]は、この実施例でも使われています。本発明で使われる細胞は、10%のウシ胎児血清(HyClone、特殊血清)を含んでいるダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(GIBCO BRL, Grand Island, NY)で維持された。AFB1はDMSOで溶解され、処置が培養基において行われた。
【0071】
免疫蛍光染色および共焦点顕微鏡
培養されたHA22T/VGH細胞はカバースリップの上に置かれて20 mM のAFB1または0.1% のDMSOで三時間処置された後、4%のパラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS, pH 7.4)(溶液I)によって室温で20分固定された。そうした細胞は透過溶液(permeablization solution)(定着液Iに0.5%のトリトンX-100を加えたもの)の中で室温で5分培養された後、そのカバースリップはブロッキング液(5%BSA 加 PBS)とともに室温で一時間インキュベート(保温)され、そしてウサギ抗GNMT抗血清(1:200)とともにもう一時間インキュベートされた。FITC(蛍光色素)を共役しているヤギ抗ウサギIgG抗体(Chemicon、Temecula、CA、USA)が第二の抗体として使われた。核はヘキスト33258(シグマアルドリッチ)で対比染色された。共焦点顕微鏡は、オリンパスFluoviewアルゴンとクリプトンスキャニングレーザーシステムと、Fluoviewイメージ分析ソフトウェア(Olympus, Melville, NY)といった装備を整えているオリンパスIX70倒置蛍光顕微鏡を用いて実行された。
【0072】
LGAドッキング
LGAがAFB1といろいろな形のGNMTとのインタラクションサイトを解明するのに用いられた。ソフトウェアのAutodock 3.0が最も良いリガンド結合インタラクションを確認するのに使われた。前述のとおり、ネズミGNMTからのX線結晶学データがドッキングという目的に使われたのは、ネズミGNMTおよび人間のGNMTはアミノ酸配列で91%のホモロジー(homology)を有しているからである。(Pakhomova,S. et al., Proteins Structure Function and Bioinformatics 57, 331-337, 2004) パラメータは、10 runと50の集団サイズ、27,000世代または2.5×105のエネルギー評価に達する停止基準を含んでいる(先に出るのはどちらでも可能)。二乗平均平方根偏差の群集構造(A root mean square deviation conformational clustering)の許容偏差値0.5 Aはリガンドの結晶座標から計算されたものである。手続きの詳細は前のレポートを参照。(Morris GM et al. J Comput Chem 19, 1639-1662, 1998)
【0073】
細胞毒性評価
MTT分析評価は、AFB1の細胞毒性効果を決めるのに用いられた。省略して表現すると、細胞は96穴プレートに播かれて培養されている。評価の時点において、培養液は10 mLのMTT貯蔵液(5mg/mL)を含んでいる100mLの新鮮液に穴ずつ替えられた。MTTで4時間細胞にラベルをつけたら、その新鮮液は穴ずつ100 mLのDMSOに37°Cで10分替えられた。そのような試料を混合し540nMで吸光度を測定した。半數致死濃度(LC50)の測定に、7000個のHuH-7細胞は96穴プレートに播き18時間培養した。細胞はそれぞれ異なる濃度のAFB1で処置され、そしてMTT分析評価は一連の時点において一組ごとに三回実行された。生存率は、実験群におけるOD値割る溶媒対照群におけるOD値によって計算される。そういった細胞毒性評価を行うために、5000個のHuH-7細胞は異なる量のアデノウイルスまたはGNMT cDNAを有するレンチウイルスに8時間感染してから、その培養液を替えまた10時間培養される。72時間のAFB1処置の後、MTT分析評価は生存率を測定するのに実行された。
【0074】
AFB1-DNA付加体は競合 ELISA 法で測量
GNMTの保護効果を評価するために、安定SCG2-1-1細胞クローンまたはGNMT組み換えアデノウイルス(Ad-GNMT)に感染したHepG2細胞は一晩中10cmのペトリ皿で培養され、AFB1または0.1%のDMSOで16時間処理されて、それからDNA抽出が行われた。すべての試料は、すべての開環型付加体(adducts in ring-opened form)の中和を確実にするために、15mMのNa2CO3と30mMのNaHCO3(pH 9.6)で37°Cで二時間処置された。Hsieh,L.L. et al., Immunological detection of aflatoxin B1-DNA adducts formed in vivo. Cancer Res. 48, 6328-6331 (1988)という論文で述べてられているように、AFB1-DNA付加体レベルは6A10抗体を使っている競合ELISA法で測定された。各々のELISA分析は三回実行された。吸光度なら490nMで測定した。
【0075】
pPEPCKex−flGNMTトランスジェニックの構築
我々は肝臓と腎臓に特異的なトランスジェニックベクターであるpPEPCKexを使用しました。それはマウスホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK; Valera,A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 91, 9151-9154, 1994) プロモーターと、0.3kbの合成イントロン(synthetic intron)、0.6kbのヒト成長ホルモンポリAシグナル(Poly A Signal)を含む。pPEPCKex-flGNMTトランスジェニックプラスミドは、1.2kbのヒトGNMT cDNA (9-1-2 プラスミドより; Chen,Y.M. et al., Int. J. Cancer 75, 787-793, 1998) をpPEPCKexベクターにおける制限酵素サイトであるNotIとXhoIに挿入することによって構築された。pPEPCKex-flGNMTプラスミドをAscIで制限酵素消化後の線形4.3kbの断片はマイクロインジェクション法において使われた。
【0076】
GNMT TGマウスの生成
GNMT TGマウスはFVB受精卵の前核へのマイクロインジェクションによって生み出され、特定病原フリー(Specific Pathogen Free)の施設で育てられた。それらの尾は生後3週間での離乳期で切られた。ゲノムDNAは、プロテイナーゼK(PK)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を組み合わせた前処理法(Promaga)、そしてフェノール/クロロホルム抽出法によって単離された。そして、そうしたTGマウスの遺伝子型はPCRで測定された。GNMT-TGを見つけるために、668-bpのヒトGNMT特異的なDNA断片はPCRプローブによって94℃(30秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)といったサイクル条件でプライマーのGNMT-F 5’- GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGC-3’およびGNMT-R 5’- GCGCTCGAGTCAGTCTGTCCTCTTGAGCAC-3’を用いて30サイクルで増幅された。
【0077】
大量のAFB1 の投与
本発明で使われるAFB1(Sigma Co, St Louis, MO) は濃度0.2mg/mLのトリカプリリン(Sigma)に溶かされたものである。生後7日目に各グループの6匹以上のマウスは腹膜内にアフラトキシンB1を注射し(AFB1 10mg/kg体重)、そして2ヵ月後同じ投与量を追加した。そのプロトコルは前にGhebraniousとSellによって修正された(Ghebranious,N. & Sell,S. Hepatology 27, 383-391,1998)。注射後9ヵ月で、そうしたマウスは病理検査のために犠牲になった。病理組織検査のために、器官(肝臓と肺、腎臓を含む)の5分の2は10%のホルマリンで固定され;残りの器官はin situ ハイブリダイゼーションやDNAとRNA、タンパク質分析のため、-80℃で保存された。
【0078】
RNA分析
メーカーの指示に従い、全RNAはTRIzol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)によって凍った組織から抽出された。全RNA試料のための量は分光光度計で定量化された。ノーザンブロットハイブリダイゼーションは前述の通りに実行された。cDNAプローブはプラスミド9-1-2におけるヒトGNMT遺伝子によって作製され、相補的DNAはSuperScript II RNase H-Reverse Transcriptase Kit (Invitrogen)を用いて肝臓RNA(2mg)から作り出された。GNMTのためのプライマー配列はF1: GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGCとR1: GCGCTCGAGTCAGTCTGTCCTCTTGAGCACで、β-アクチンのためのプライマー配列はF2: GTGGGGCGCCCCAGGCACCAとR2: CTCCTTAATGTCACGCACGATTTCである。PCR条件は下記の通りである:94°Cで5分間のプレ変性(pre-denaturation)、94℃(30秒)と60℃(30秒)、72℃(1分)で30サイクルの増幅に次いで72°Cで10分の延長(extension)を行った。
【0079】
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析を実行するために、10μgの全部の肝臓タンパク質抽出物は10%のSDS-PAGEによって分離され、PVDF(polyvinylidene difluoride)膜(PVDF; Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)に転写された。その手順はWaxman,D.J. & O'Connor,C. Growth Hormone Regulation of Sex-Dependent Liver Gene Expression. Molecular Endocrinology 20, 2613 (2006) に記述してある。その分析において、マウス抗GNMT単クローン性抗体(mAB)14-1はGNMT20を検出するのに用いられた。
【0080】
GNMT酵素活性分析
この分析はCook,R.J. & Wagner,C. Glycine N-methyltransferase is a folate binding protein of rat liver cytosol. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 81, 3631-3634 (1984)という論文で述べてある手順によって修正されたものである。それはGNMT-TGマウスから採った肝臓組織のGNMT酵素活性を測るのに用いられた。一部分の肝臓は0.25Mの蔗糖と1mMのEDTA、1mMのアジ化ナトリウム、そして0.1mMのphenymethylsulfonylflourideを含んでいる3倍容量の氷冷リン酸バッファー(10mM、pH 7.0)によって均質化された。30分間20,000X gで遠心分離された後、産物として生じた上清液は取り除かれ、2-メルカプトエタノールは最終濃度10mMに加えられる。タンパク質の濃度を測ったら、250ugのタンパク質は100mMのトリスバッファー(pH 7.4)と50mMのグリシン、0.23mMのSAMe、そして2.16uMの S-アデノシル−L−[メチル−3H]−メチオニン(S-adenosyl-L-[methyl-3H]-methionine)(76.4Ci/mmol)を有する100ulの反応混合物に加えられた。37°Cで30分培養した後、反応は10%トリクロロ酢酸と5%の活性炭との混合物50ulを添加することによって終了した。各反応は三回実行される。
【0081】
免疫組織化学的染色方法
GNMTタンパク質に対する免疫組織化学による発現解析はモノクローナル抗体(mAB)14-1を1:200希釈で使用することによって実施された。パラフィンに包埋した肝臓の部分(4um)はGNMT抗体とともに培養され、メーカーの指示に従いDABキット(DakoCytomation)で検出した。
【0082】
AFB1によって誘発されるGNMT核転座である
GNMT cDNAはHA22T/VGH細胞にAFB1またはDMSO(溶媒対照)を16時間トランスフェクトした。(図10AとB)図10で示すように、GNMT分布は最初に細胞質に制限された(図10A)が、AFB1処置(図10B)の後で、細胞核に部分的に転位した。そうした結果は、AFB1(およびBaP)がGNMT核転座を誘発することを示した。
【0083】
また、それはAFB1で処置した細胞中でGNMTに核転座が生じたことを証明し、GNMTはAFB1-DNA付加体の形成を減らす、そしてAFB1で処置した細胞の生存率を上昇させることができることを示した(図10)。AFB1-DNA付加物形成は肝臓発ガンに関係する(Bressac,B. et al., Nature 350, 429-431, 1991; Hsu,I.C. et al., Nature 350, 427-428, 1991)。そして、肝細胞におけるGNMTの減少がその発ガン物質に対する肝臓の敏感性を増やすことも証明された。したがって、GNMTはそうした環境発ガン物質に対する細胞の防衛機構に関係する。
【0084】
GNMT-AFB1インタラクションのモデリング
Larmarckian 遺伝アルゴリズム(LGA) とX線結晶学データの組合せはGNMTとAFB1間の物理的インタラクションを予測するのに用いられた。ネズミGNMTタンパク質はアミノ酸配列においてヒトGNMTタンパク質と91%のホモロジーを持っているので、我々はネズミGNMTタンパク質に対するX線結晶学データによりAFB1ドッキング実験が行われた。表7で示すデータによると、AFB1はGNMTの二量体(Protein Data Bankコード1D2C)と四量体(1D2G)形成と低い結合エネルギーレベルで(それぞれ-9.41と-10.06 kcal/モル)結合した。
【0085】
表7 Larmarckian 遺伝アルゴリズムを用いて行ったGNMTタンパク質とAFB1 分子a間のドッキングの探索
AFB1とSAMe(-9.85kcal/モル)に結合しないGNMT二量体(1XVA)間の結合エネルギーを、AFB1とすでにSAMe(53.25kcal/モル)に結合しているGNMT二量体間の結合エネルギーと比較したら、その結果はAFB1はSAMeと同じ結合部位を争ってGNMTと結合することを指摘する。AFB1分子(およびBaP)はGNMT二量体と四量体において分子配向性(molecular orientation)が少し違うが、分子バスケット(molecular basket)内部に同じ位置にある(図11A)。GNMTアミノ酸残基がAFB1(Ala64とVal69、Leu136、Gly137、Ser139)の極近くにあることは図11Bに示される。
【0086】
その実施例は(a) GNMTの基質SAMe結合部位にAFB1結合性領域があること、そして(b)AFB1はGNMTの二量体と四量体形成の両方とも結合することを指摘する。GNMT四量体(1D2G)のR175K変異体形成(mutant form)は、結合部位のすぐ近く(~5 A)にあるR/K残基がGNMT-AFB1集団構造(cluster formation)にほとんど効果を及ぼさないことを証明するのに用いられた(表7)。その結果は、GNMTが分子バスケットであるという議論と一致する。この独特の構造は、GNMTはSAMeだけでなくベンゾピレン(BaP)のような多環式芳香族炭化水素(PAH)分子と結合することができるという事実と一致していと考えられる。GNMTの結晶構造により、GNMTの活性部位の内面にある多くのチロシン残基(33、44、177、194、220、242、283)が他の残基とともに発ガン物質に相互作用している環境を提供する可能性もある。GNMTがAFB1とも結合することができることとも思われる。
【0087】
AFB1によって誘発された細胞毒性はGNMTによって拮抗される
MTT分析は細胞の生存率を判定するのに用いられた。細胞毒性分析の条件を最適化するために、HuH-7細胞は一連の時点で異なる濃度のAFB1で処置された。図11Aで示すように、AFB1の半(數)致死濃度(LC50)は処置の持続時間によるものである。16 mM に達するAFB1処置は細胞毒性効果が24時間以内で不分明である。しかし、処置の48時間後にHuH-7細胞は4 mMのAFB1で処置されたグループさえ、生存率がかなり下がった。72時間でAFB1のLC50はおよそ12 mMである。AFB1処置を受けた細胞にGNMTの影響を判明するために、我々はGNMT cDNAを運んでいるアデノウイルスを感染させることによってHuH-7細胞内でGNMTたんぱく質を発見した。Ad-GFPコントロールウイルスに感染しているHuH-7細胞と比較したら、AFB1で処置されたHuH-7細胞の生存率は少し増加したが、Ad-GNMTを投与すればかなり増加する(図11B)。類似した結果は、GNMT遺伝子がレンチウイルスベクターによって導入された別個のシステムで観察された(図11C)。そうした結果は、GNMTがAFB1処置によって誘導される細胞毒性効果に拮抗することができることを証明した。
【0088】
AFB1-DNA付加体形成に対するGNMTの抑制影響
AFB1-DNA付加体形成に対するGNMTの影響を判明するために、我々は抗体6A10で競合酵素免疫測定法(EIA)を行うことによってAFB1-DNA付加体形成を測り、HepG2細胞株-SCG2-1-1とSCG2-negから得る一対の安定クローンおよびGNMT組み換えアデノウイルスに感染されたHepG2細胞を利用する。
【0089】
細胞は、DNA抽出の前にDMSOと異なる濃度のAFB1で16時間処置されました。その間、明らかな細胞毒性効果がなかった。SCG2-1-1細胞中のAFB1-DNA付加体の量は、SCG2-neg細胞中のその量のおよそ50%になった(図11D)。さらに、GNMT組み換えアデノウイルス(ad-GNMT)の感染によるGNMT過剰発見も、投与する方法によってAFB1-DNA付加体形成を減らした(図11E)。Ad-GFPに感染された細胞と比較して、5MOI のAd-GNMTに感染されたHepG2細胞は両方のAFB1濃度でも40%を超えるAFB1-DNA付加体形成の減少という結果となる。50MOIのAd-GNMTに感染されたHepG2細胞はAFB1-DNA付加体形成がおよそ70%の減少が見られた。実験の結果は、抑制率に基づくAFB1-DNA形成量によって計算された。それは、実験のデータにより、コントロール細胞(Ad-GFPに感染されたSCG2-neg細胞とHepG2細胞)と比較して、GNMTを発現している細胞で形成したAFB1-DNA付加体の数がかなり減少したことを指摘した。それは、GNMTにはAFB1-DNA付加体形成を減らすことによってAFB1処置を受けた細胞に対する保護役割があることを証明した。
【0090】
GNMT-TGマウスの作製
生体内でAFB1によって誘発された発ガンに対するGNMTの影響を判明するために、ヒトGNMTトランスジェニックマウス(TG)モデルは作製された。GNMT-TGマウスを生み出すのに用いられるプラスミドは図14aに示されたようにpPEPCKex-flGNMTプラスミドである。それはマウスPEPCKプロモーター(Valera,A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 91, 9151-9154, 1994)でヒトGNMT発現を駆動することができる。GNMT-TGマウスはFVB受精卵の前核へのマイクロインジェクションによって生み出された。ノーザンブロット解析法は、ヒトGNMTが予想の通り、特にマウスの肝臓と腎臓で発見することを証明した(図14B)。
【0091】
GNMT-TGマウスと野生型マウスのGNMTの発見プロフィールは、RT-PCR法およびウエスタンブロット分析で測定されました。図12Aで示すように、野生型マウスは年齢増加とともにGNMTのmRNA表現レベルが増加し、生後7週間でプラトーに達した。特に一週目と3週目の時点で、GNMT-TGマウスは野生型マウスよりGNMT mRNAの遺伝子発現レベルが高かった。そのうえ、ウエスタンブロット分析は示したが、生後一週間~三週間で雄の野生型マウスはGNMTのタンパク質レベルが検知することが不可能だが、生後一週間で雌の野生型マウスはGNMTのタンパク質が低い発現レベルで検知されることができる。対照的に、雄と雌のGNMT-TGマウスは両方とも生後一週間でタンパクの量がより高かった(図12A)。そうした結果は、生後1-3週間で野生型のマウスよりGNMT-TGマウスのほうはGNMT発現が高いことを示した。さらに、我々はGNMT-TGマウスでGNMT酵素活性を、野生型マウスで肝臓ライセートを検知した。生後九週と11週間でGNMT-TGマウスにおけるGNMT酵素活性は野生型マウスよりかなり高かった(p<0.05)が、生後九週間での雄は唯一の例外である(図12B)。
【0092】
その実験において、GNMT-TGマウスには特異的なダイエットが提供されなかった。特に生後一週目と3週目でGNMT-TGマウスは野生型マウスより肝臓におけるGNMT遺伝子発見レベルが高く(図12A)、そして生後七週目でプラトーに達した。
【0093】
AFB1によって誘発された肝腫瘍形成はGNMT-TGマウス体内で遮断
GNMT-TGマウスと野生型マウスは腹膜内にAFB1が投与され、生後11ヵ月目で犠牲になった。その雄と雌のマウスのかかる肝腫瘍の全体的な発病率は表八で見られた。
【0094】
表8 AFB1溶媒で処置された2つの遺伝子型のマウスにおける肝腫瘍形成。
AFB1で処置された雄と雌のGNMT-TGマウスは両方とも肝腫瘍が形成しなかったが、
AFB1で処置された6匹の雄の野生型マウスのうちで4匹(67%)は肝腫瘍が形成された。また、溶媒(tricaprylin)で処置されたマウスは腫瘍が検知されなかった。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度は、生後11ヵ月目でGNMT-TGマウスと野生型マウスの肝機能をモニターするために測定された。AFB1処置群において、雄の野生型マウスは雄のGNMT-TGマウスより平均血清ALT値が高かったが、雌のGNMT-TGマウスと野生型マウス間で差がなかった。病理検査は、AFB1処置を受けた雄の野生型マウスには異形成とHCCがある(図13A)ものの、AFB1処置を受けた雄のGNMT-TGマウスは正常のパターンが観察される(図13B)ことを明らかにした。免疫組織化学的染色は、GNMTは正常の肝細胞の場合にはサイトゾールでその発現が豊かであった(図13D)ものの腫瘍細胞の場合にはそれが減少した(図13C)ことを証明しました。その現象は、ウエスタンプロット分析によって確認される(図13E)し、ヒトHCCでも観察される。
【0095】
AFB1処置の実験では、マウスらはGNMT-TGマウスにおけるGNMTの発現が野生型マウスより高かった時、AFB1を注射した。その結果は、GNMT-TGマウスは雄とも雌とも肝腫瘍形成が出ないが、AFB1で処置された6匹の雄の野生型マウスのうちで4匹(67%)は肝腫瘍が形成した(表8)ことを示しました。その実施例において、雄の野生型マウスにおける肝腫瘍形成率は10%から67%まで増加した。同じ処置手順で、雄のGNMT-TGマウスは肝腫瘍形成が出なかった。さらに、GNMTタンパク質は低い濃度でもウエスタンプロット分析によって生後一週間という早い時期に雌マウスの肝臓で検知されることができる。そうしたGNMTタンパク質は保護効果を及ぼし雌の野生型マウス体内でAFB1によって誘発された肝腫瘍形成を防いだ(AFB1で処置された雌マウスは一匹も肝腫瘍が形成しなかった)。その実験は、GNMTは雄のGNMT-TGマウスをAFB1によって誘発された肝腫瘍形成から守ることができることも証明した。
【0096】
さらに、病理検査は、AFB1で処置された野生型マウスで形成した肝腫瘍はHCCであることを確認した(図13A)。免疫組織化学的染色およびウエスタンプロット分析から得た結果は、腫瘍組織におけるGNMT発現レベルが低下することを示した(図13CとE)。その結果は我々の前のヒトHCCに対する調査結果と首尾一貫しており、それに、発ガンに対するGNMT制御性においてマウスと人間は非常に類似していることを示唆した。したがって、GNMTは発ガンの予防において役に立つことが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】目標ベクターを構築する策略が表されている。
【図2】GNMT遺伝子座に対して予測される修正が表されている。(A)目標ベクターはGNMTエクソン1−4と一部分のエクソン5でネオマイシン耐性遺伝子に入れ替わるという設定がされている。ネオマイシン正の選択マーカーは二つの相同の部分がついており、そして目標ベクターの3’ 端でTK(チミジンキナーゼ)負の選択マーカーが付け加えられる。(B) 胚性幹細胞(ES細胞)クローンについてのサザンブロット分析。BamHI(B)-BamHI DNA断片サイズは、7.9kb(野生型対立遺伝子)から5.3kb(組み換え型対立遺伝子)に減少した。(C) PCR(遺伝子増幅)法によるGNMTノックアウトマウスの遺伝子型。正常なGNMT対立遺伝子は772 bp断片を生じ、分離された対立遺伝子は409bp断片を生じた。野生型+/+と、GNMTヘテロ+/-、-/- GNMT -/-マウス。 (D)GNMTタンパク質の発見はウエスタンプロット分析により確認されました。個々のレーンは10 mgの肝臓ライセートを含んでいる。GNMT分子量:32 kDa。GAPDH(グリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素):内部標準。
【図3】遺伝子のmRNA発現レベルにおけるリアルタイム定量PCR法は炭素一炭素代謝経路に参与することが表されている。WTM (野生型の雄)とKOM (GNMT -/- 雄)、KOF (GNMT -/-雌)の肝臓組織でのmRNA発見プロフィールはWTF (野生型の雌)マウスに正常化された。*, p<0.05. Ahcy(S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素);Ms(メチオニンシンターゼ);Cbs(シスタチオニン-β-シンターゼ);Mthfr(5-10メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素);Mthfd1(メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ)(NADP+ 依存性);メテニルテトラヒドロホール酸シクロヒドロラーゼ(metheny ltetrahydrofolate cyclohydrolase);ホルミルテトラヒドロ葉酸シンターゼ;Aldh1l1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ1家族、メンバーL1);Atic(5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ);Shmt2(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ2);Mthfs(5,10-メテニルテトラヒドロホール酸シンテターゼ);Ftcd(ホルムイミノトランスフェラーゼシクロデアミナーゼ)。
【図4】GNMT -/-マウスは肝腫大を起こし、血清ALT値レベルが著しく高いことが描かれている。(A)肝臓の重量対体の重量の比率。(B)野生型やGNMT +/-、GNMT -/-マウスの血清ALT値レベルの比較。*, p<0.05; **, p<0.01.どちらも野生型のマウスと比較されている。
【図5】野生型とGNMT -/-マウスの肝臓病理検査を表している。肝臓の肉眼検査は雄の野生型(A)と、雄GNMT +/-(B)、雄GNMT -/- (C)、そして雌GNMT -/-マウス(D)である。そうしたマウスは犠牲になる前に八時間も断食した。肝臓組織のHE染色が行われるのは生後11週間の雄の野生型(EとI)をはじめ、雄GNMT +/-(FとJ)と雄GNMT -/-(GとK)、雌GNMT -/-(HとL)、生後九週間の雄GNMT(Q)、そして生後九週間の雌GNMT -/-マウス(S)である。肝臓組織のPAS染色が行われるのは生後11週間の雄の野生型(M)をはじめ、雌の野生型(N)と雄GNMT -/-(O)、雌GNMTナル(P)、生後九週間の雄GNMT -/-(R)、そして生後九週間の雌GNMT -/-マウス(T)である。拡大:E-H には100X, I-Tには 400X。
【図6】野生型とGNMT -/-マウスの血液生化学的パラメータによる血液学と分析を表している。(A) 野生型のマウス(ソリッドサークル)とGNMT -/-マウス(オープンサークル)において白血球や好中球、リンパ球、単球、好酸球、そして好塩基球も視野に入れている。水平のバーは平均値を示します。(B) 野生型(ソリッドサークル)とGNMT -/-マウス(オープンサークル)における血清グルコースやコレステロール、トリグリセリドのレベルである。水平のバーは平均血清濃度を示す。*, p<0.05; **, p<0.01。どちらも野生型マウスと比較している。
【図7】遺伝子のmRNA発現レベルにおけるリアルタイム定量PCR分析はいろいろな種類の糖原病(GSD)に繋がっていることが示されている。mRNAの発現プロフィールは野生型のマウスには正常化された。(A)そのマウスの生後11週間目;(B)そのマウスの生後九ヶ月目。*, p<0.05; **, p<0.01。Gys2(グリコーゲンシンターゼ2);G6Pase(ぶどう糖 6-ホスファターゼ);G6PT(グルコース-6-リン酸輸送体);Gaa(アルファ-グルコシダーゼ);Agl(アミロ-1,6-グルコシダーゼ);Gbe1(ブランチングエンザイム1);Pygl(グリコーゲンホスホリラーゼ);Phka2(ホスホリラーゼキナーゼアルファ2);Fbp1(フルクトース1,6-ビスホスファターゼ);そしてPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)。
【図8】雄と雌GNMT -/-マウスには超音波や磁気共鳴画像(MRI)、肉眼検査、HE染色、そしてレチクリン染色が行われた結果である。雄GNMT -/-(A)と雌GNMT -/-(G)は肝臓に超音波が行われ;雄GNMT -/- (BとC)と雌GNMT -/-マウス (HとI)は肝臓にMRIとMRI再構成が行われ;雄GNMT -/- (D)と雌GNMT -/-マウス(J)は肝臓に肉眼検査が行われ;雄GNMT -/- (E)と雌GNMT -/- (K)は肝臓にHE染色が行われ;そして雄GNMT -/- (F)と雌GNMT -/- (l)は肝臓組織にレチクリン染色が行われた。
【図9】野生型とGNMT -/-マウスはいくつかの早期の原発性肝細胞癌(HCC)マーカーに対するリアルタイム定量PCR分析(グリピカン-3やLYVE1、サバイビン、そしてα‐フェトプロテイン)が示されている。
【図10】アフラトキシンB1による処理に次いでグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)における(A-B)核移動が示されている。カバースリップに載せられているHA22T細胞は5mg GNMT-フラッグでトランスフェクトされ、そしてR4 (ウサギアンチGNMT) 抗血清で治療するか反応する前に溶媒のDMSO(ジメチルスルホキシド) (A)または40 mM AFB1 (B)によって処理されました。免疫蛍光染色には、われわれはFITC(蛍光色素)を共役しているヤギ抗ウサギ抗体を用いた。核はヘキスト33258で染色された。バー:20 mM。(C-E)ベンゾピレン(BaP)のモデルと、ラマルキアン式の遺伝的アルゴリズムによって四量体形のGNMTと分子結合したアフラトキシンB1(AFB1)である。(C) S-アデノシルホモシステインに結び付いた四量体形のネズミGNMT(シアン)(PDBコード1D2H) と分子結合されたBaP(緑)とAFB1(赤い)分子である。(B) BaP(緑)とAFB1(赤い)分子の分子結合モデルを示すモノマーである。GNMT構造(PDBコード1D2H)とGNMT-AFB1錯体の分子結合モデルによりいくつかのAFB1炭素原子のすぐ近くにあるGNMTアミノ酸残基(Ala64, Val69, Leu136, Gly137 and Ser139)が示されている。(E) AFB1 (左)およびBaP (右)の構造。
【図11】GNMTはAFB1の細胞毒性効果を拮抗することが示されている。(A-C) AFB1の誘発した細胞毒性は、GNMT過剰発現によって減少される。MTT分析評価は、AFB1で扱われるHuH-7細胞の生存率を決めるのに用いられた。A、いくつかの時間に異なった量のAFB1で処理するHuH-7細胞の生存曲線である。50パーセントの発育阻止濃度はその処理の持続期間によるものである。HuH-7細胞にAFB1で72時間処理したIC50は12uM程である。B、HuH-7細胞はGNMT遺伝子またはGFP支配遺伝子を運ばれるアデノウイルスに16時間感染された。AFB1で72時間処理された後、細胞はMTT分析評価を受けた。HuH-7細胞の生存率は、Ad-GNMTの投薬によって多少増加した。8uMの AFB1で処理されたHuH-7細胞のグループで、HuH-7細胞の生存率は、Ad-GNMTの投薬によってかなり増加した。C、類似した結果は他のシステムでも観察されたが、HuH-7細胞はレンチウイルスベクターによってGNMT遺伝子を導入された。* p<0.05、 ** p<0.01。(D-E) GNMT過剰発現は、AFB1-DNA付加体の形成を減少した。D、SCG2-negとSCG2-1-1細胞は、DNA抽出の結果を得る前にDMSOや示された濃度の AFB1で処理された。AFB1-DNA付加体は、競合 ELISA 法で測定された。白いバーと灰色のバーはそれぞれSCG2-negとSCG2-1-1を示す。データは、mean±SDを代表する。*, p<0.01; **, t-検定によるp<0.001。E、Ad-GFPとAd-GNMTを感染しているHepG2細胞は、この分析評価を実行するのに用いられました。白いバーは、Ad-GFPを感染しているHepG2細胞を示し;灰色のバーは、5 MOI Ad-GNMTを感染しているHepG2細胞を示し;黒色のバーは、50 MOI Ad-GNMTを感染しているHepG2細胞を示す。*一元配置(一要因の)分散分析による。
【図12】GNMT-TGと野生型のマウスにあるGNMTの発現プロフィールと酵素活動が説明されている。A、1、野生型の雄(開いているダイヤモンド);2、トランスジェニック雄(閉じたダイヤモンド); 3、野生型の雌(開いている正方形);そして4、トランスジェニック雌(閉じた正方形)におけるGNMTタンパク質濃度は、ウエスタンブロット分析(上部のパネル)と量的データ(下部のパネル)によって測定された。その結果により、生後5週間の間でトランスジェニック動物は野生型より多くのGNMTタンパク質を持つことが判明された。B、1、野生型の雄;2、トランスジェニック雄;3、野生型の雌;そして4、トランスジェニック雌はGNMTの酵素活動が比較された。
【図13】4つのグループの雄マウスの肝臓に、H&EとIHC染色が行われたことである。発ガン性物質処理を受けているマウスの肝臓のH&E染色による顕微鏡写真である。(A) AFB1. X 200で処理された野生型のマウス(B)AFB1. X 200で処理されたGNMTトランスジェニックマウス。パラフィン固定組織におけるGNMT発現の免疫組織化学分析である。(C) AFB1. X 200で処理された野生型。(D)AFB1. X 200で処理されたGNMTトランスジェニック。(E)非腫瘍組織(N)と腫瘍組織(T)からの細胞抽出物に対するウエスタンブロット分析。その結果として、3つのマウスグループで腫瘍組織のGNMT発現レベルは非腫瘍組織より低いことが判明された。
【図14】pPEPCKex-flGNMTプラスミドの構築が示されている。pPEPCKex(ベクター)とpSK-flGNMT(挿入)はNot IとXho Iで消化し結合することによって、pPEPCKex-flGNMTが生じた。B.トランスジェニックまたは野生型のマウスのいろいろな臓器におけるマウス内在性とヒトGNMT mRNAの発現は、ノーザンブロット解析法で測定されました。1)GNMTトランスジェニックマウスの腎臓RNA。2)GNMTトランスジェニックマウスの肝臓RNA。3)野生型のマウスの脳RNA。4)野生型のマウスの腎臓RNA。5)野生型のマウスの肝臓RNA。その結果は、GNMTトランスジェニックマウスは肝臓と腎臓でヒトGNMT遺伝子(導入遺伝子)が表現されることを示されている。
【符号の説明】
【0098】
10 TKベクター
11 ファージクローン 3−2
20 pNeoベクター
50 右アームのTKベクター
60 左アームのpNeoベクター
70 目標ベクター
80 目標ベクターの直線型
90 原内対立遺伝子
100 目標対立遺伝子
【技術分野】
【0001】
本発明はグリシンメチルトランスフェラーゼ(GNMT)動物モデルとその使用に関連する。また、本発明はガン、特に肝臓ガンを予防するか治療することにおけるGNMT製品の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
細胞異常による人間のかかる病気の中で、最も一般的なタイプの一つはガンであり、現在、それは主な死亡原因でもある。ガンは根本的な間葉に侵入し破壊して、すなわち、局部侵入をする完全的に増殖する(悪性)腫瘍である。場合によっては、浸透したガン細胞はさらに腫瘍で新たに形成されたリンパ管や血管に辿り着き、局部のリンパ節や遠くの臓器に運ばれ、そこで新たなガン巣(転移)を作り出す可能性もある。少なくともいくつかの正常な増殖を制御するメカニズムに再び制御されない細胞――どんな組織でも起こる――はその異常な増殖が起こるということから、腫瘍は一般的に認識されている。ガンは別として、腫瘍は単に局部的に起こり悪性にならないこともある。つまり、良性腫瘍ということである。あるいは、腫瘍細胞はただガン細胞の形態学的外見を持っているだけで元の位置に残る可能性がある。つまり、非浸透ガンである。ところが、その場合は、腫瘍はその部位でガンになることもある。
【0003】
腫瘍の悪性度を判断する絶対の方法はない。しかし、組織の顕微鏡検査は依然として現在慣用のいくつかの方法の中で、最も信頼できる方法である。病理学的研究において、腫瘍は組織学的で細胞学的基準に基づいた構造逆分化(退形成)の度合いのおよその判断によって、等級分けされることができる。しかし一方で、特定構造の特徴を失っても分化において生化的特徴をまだ保有している細胞があれば、構造的に分化される様に見えるが、正常な機能的特性は既に多くを失ってしまった細胞もあるとも考えられる。他方、腫瘍は均質でなく一つ以上の腫瘍等級のある領域を含む可能性もあるので、発展した腫瘍は、構造や、機能、成長可能性、薬またはX線に対する抵抗力、浸透性及び転移の能力が異なる細胞の混合集団から成るとも考えられる。その二つの制限は、腫瘍の組織学的検査の効果を減少させる。さらに、そのような標本抽出による検査は、大規模な調査にふさわしくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既に長い時間、悪性の絶対標識(マーカー)を発見しようとする多くの試みがなされている。腫瘍特異性や腫瘍に関わるタンパク質を特定しようとする他の試みは、直接測定や、そうしたタンパク質に対する特定の抗体を開発することによって、今現在も実施されている。それらは診断だけではなく、ガン細胞の破壊方策を提供する面においても有望なアプローチであると思われる。さまざまな物質が生体内に存在し集中するのは、特定のガンを起こす可能性があるということが報告されている。その例として、腫瘍胎児抗原(例えば、アルファフェトプロテイン)や血清蛋白(例えば、フェリチン)、酵素、ポリアミン、異所性ホルモン、細胞のマーカー、レセプター、腫瘍に関わるウイルス抗原などが挙げられます。しかし、ガンの診断において最も一般的に用いられる方法は、上記の物質のものより、組織学に依存する。絶対標識(マーカー)が一つも発見されないことはガンの研究において大きな欠乏である。
【0005】
最近の観測では、発ガン現象に密接的に関連する物質を捜すことに、いくつかの予測が提供される。ガンは腫瘍遺伝子の起動と腫瘍抑制遺伝子の不活化をもたらすいくつかの遺伝子異常に起因すると認識されている。さらに、そうした腫瘍形成に関わる重要な遺伝子の弁別的な発現は、細胞の中の伝令RNA (mRNA)量で反映されることができる。大量のmRNAの中に効率のあるものを選出し変異要因のある mRNAは、その差異を示すことのできる技術DD(Differential Display)から小さな要因の部分を分離し、それにより、腫瘍細胞及び正常細胞に違った要因が表面上に現される。(Liang et al., Cancer Research 52, 6966-6968, 1992)
【0006】
世界で最も一般的なガンの1つである人間の肝細胞癌(HCC)は、通常、肝硬変を誘発するウイルス感染や化学発ガン物質に接触することで起こる慢性炎症性肝疾患から成るものである。(Yu,M.W. et al., Crit Rev. Oncol. Hematol. 17, 71-91, 1994; Schafer,D.F. et al., Lancet 353, 1253-1257, 1999; Williams,J.H. et al., Am. J. Clin. Nutr. 80, 1106-1122, 2004) いくつかの地域(中国やアフリカなど)では、肝細胞癌は主にウイルス感染(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)やアフラトキシンB1(AFB1)に汚染された食べ物、そして他の形で摂取されたアフラトキシンに起因する。(Williams,J.H. et al., Am. J. Clin. Nutr. 80, 1106-1122, 2004; Chen,C.J., Hepatology 16, 1150-1155, 1992) アフラトキシンの代謝産物は、アスペルギラス・フラバス(Aspergillus flavus)とアスペルギラス・パラシティカス(Aspergillus parasiticus) 菌類は高温多湿な環境での二次産物である。そうした遍在している菌類は米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなどの主食作物に影響する。(McLean,M. & Dutton,M.F., Pharmacol. Ther. 65, 163-192, 1995)生物学的なシステムに直面する科学物質、または外来異物(AFB1など)は代謝プロセスによって変えられることができる。解毒経路の第一相では、多環芳香族炭化水素と塩化炭化水素に誘発されるシトクロムP450アイソザイムは基質に一つの酸素原子を加え、生物活性はその偶発的な後遺症である。(Hsieh,D.P.H., Elsevier Scientific Publishers, Amsterdam, 1986; Hsieh,D.P.H., Academic, Cambridge, 1987; Aoyama,T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 87, 4790-4793, 1990; Swenson,D.H. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 60, 1036-1043, 1974)反応性中間体アフラトキシンB1 8,9エポキシド(CYPアイソザイムから作られます、例えば、サイトクロームP450IA2とP450IIIA4)は多くの動物の種の中で発ガン性を持っている。その肝臓のDNAとの共有結合は肝発ガンにおける重要なステップであることが示されている。(Forrester,L.M., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 87, 8306-8310, 1990; Koser,P.L. et al., J Biol. Chem 263, 12584-12595, 1988) 最も重要な第二相酵素は、グルタチオンS転移酵素グループに属し、グルタチオンと潜在的に毒性を持っている求電子剤との化学結合を促進させ、それらの毒性を消失させる。(Degen,G.H. & Neumann,H.G., Chem. Biol. Interact. 22, 239-255, 1978; Hayes,J.D. et al., Pharmacol. Ther. 50, 443-472, 1991) その後、反応の良いアフラトキシンB1 8,9エポキシドは遺伝子を攻撃し損害を与える。生体内で形成するAFB1−DNA付加体は主にAFB1-N7−グアニンである。(Croy,R.G. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 75, 1745-1749, 1978; Kensler,T.W. et al., Cancer Res. 46, 3924-3931, 1986) AFB1はDNAと共有結合をし、p53遺伝子のコドン249における第三ポジションでの塩基(それは AFB1による突然変異誘発がよく起こっているものだと考えられる)で、G・C→T・Aトランスバーションを誘発するということを指摘した報告は、少なくとも二つある (Bressac,B. et. al., Nature 350, 429-431, 1991; Hsu,I.C. et al., Nature 350, 427-428) 。
【0007】
グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)は、グリシンからサルコシンを合成する作用を促進させる細胞内の酵素である。それによって、グリシンはS-アデノシルメチオニン(SAMe)からメチル基を取得してサルコシンになり、その後、サルコシンデヒドロゲナーゼで水素を取り除かれてグリシンに戻すこともでる。後者の反応はエネルギーを生み出し、一つの炭素をSAMeから取り抜く。そのため、GMTはSAMe対S-アデノシルホモシステイン(SAH)の比率を調節することにおいて大切な役割を担うわけです。ネズミの肝臓のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GMT)における属性、例えば、飲食におけるメチオニンのレベルによって変動させられ関連させられているその活動状態と、メチオニンを多く摂取した食事による誘導性は、GNMTはSAMeの組織集合やメチオニンの代謝を管理することでも重要な役を果たすものと考えられる (Ogawa, H. et al., J. Biol. Chem., 257:3447-3452, 1982) 。しかし、GNMTは単なる生体内で代謝した全部のメチオニンの20%に関わることが発見された (Case et al., J. Nutr. 106: 1721-1736, 1976) が、そのたんぱく質は発育十分なネズミやハツカネズミの肝臓に多くあり、ほとんどが肝臓であらゆる可溶性たんぱく質の1%〜3%を占める (Heady et al., J. Biol. Chem., 248:69-72, 1973) 。そのため、GNMTはほかの生理的な機能を発揮する可能性もあり、ネズミの肝サイトゾールから純化された葉酸結合蛋白と全く同じ様に働くものがあるということが発見された (Cook, R. J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:3631-3634, 1984) 。近年、GNMTはサイトクロームP4501A1遺伝子(CYP1A1)における5'-フランキング領域と相互に作用する4S多環芳香族炭化水素結合蛋白であることは、ラハ(Raha)とほか(J. Biol. Chem., 269:5750-5756)によって証明されている。また、GNMTは肝細胞で最も豊富で効率的なメチルトランスフェラーゼで、その活動はほかのメチルトランスフェラーゼに影響を与えることも可能である。例えば、tRNA-メチルトランスフェラーゼは活動がGNMTに妨害されることができる (Kerr et al., J. Biol. Chem., 247:4248-4252, 1972) 。脂質動員合成物、例えば、SAMe及びその前駆物質であるメチオニンやコリン、ベタインはネズミやハツカネズミのモデルでさまざまな発ガン性物質に誘発される肝腫瘍の発展を予防できると、多くの実験室から研究結果が提出されている。GNMTは肝細胞におけるSAMeのレベルと密接な関連をもっており、そしてその酵素の活動がSAMeによって活性化されるかもしれないという発見により、GNMTは肝ガンに対する科学的予防経路の過程にかかわるとも考えられる (Pascale et al., Anticancer Res., 13:1341-1356, 1993) 。
【0008】
GNMT発現のレベルはヒト肝細胞ガンの細胞株(Cell Lines)と腫瘍組織のどちらでも減少させることできるということが発表されている (Liu, H. H. et al, J. Biomed. Sci.10, 87-97, 2003; Chen,Y.M. et al., Int. J. Cancer 75, 787-793, 1998) 。人間のGNMT遺伝子は6p12染色体領域に集中され、その多型を特徴づけられる。(Chen, Y. M. et al., Genomics 66, 43-47, 2000)いくつかのヒトGNMT遺伝子多型における遺伝子型分析は、肝細胞ガン組織のうちに36−47%の遺伝子マーカーが染色体欠失という現象があることを示し、(Tseng,T.L. et al., Cancer Res. 63, 647-654, 2003) そしてGNMTはベンゾピレン(BaP)デトックス経路にかかわり、GNMT発現細胞で形成するBPDE-DNA 付加体を減らすことが発表されている (Chen,S.Y. et al., Cancer Res. 64, 3617-3623, 2004) 。
【0009】
前の研究結果は、ネズミの肝サイトゾールでマルチプロテイン(multiple proteins)はAFB1を化合させることができるということを指摘しています。(Taggart,P. et al., Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 182, 68-72, 1986) AFB1結合にかかわる細胞質ゾルのたんぱく質は、輸送や代謝、発ガンせい性物質の作用において働く潜在力を持っている可能性がある ( Dirr, H. W. & Schabort,J.C., Biochem. Int. 14, 297-302, 1987) 。
【発明の効果】
【0010】
本発明はゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えを行うことによって乱されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild-type)の表現型に相対しそのマウスの異常な肝臓機能からなる表現型が生じ、その乱される位置はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875である。
【0011】
本発明は肝臓疾患や異常の予防または治療に対する候補エージェント(agent)をスクリーニングする方法をも提供し、それは
a.本発明のノックアウトマウスを提供し、
b.ある候補エージェントをそのノックアウトマウスに投与し、
c.そのノックアウトマウスの肝臓機能を候補エージェントを投与しないノックアウトマウスの肝臓機能と比較し、そして肝臓機能を好転させるエージェントは例の肝臓疾患や非常に効果があるエージェントとして選ばれるといったことから成る。
【0012】
本発明は一組のプライマーを提供する。それは(i) SEQ ID Nos 1と2 、または (ii) SEQ ID Nos 1と2である。
【0013】
本発明はさらにGNMTノックアウトマウスにおける調節遺伝子群のデーターベースを提供する。
【0014】
本発明は肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データーベースをも提供する。
【0015】
本発明はさらにアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法をある患者に提供し、その患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与する。
【0016】
本発明はアフラトキシンB1(AFB1)によって引き起こされる疾患に対する治療または予防のできる合成物を提供し、それはグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成する。
【0017】
現在の発明において、正常細胞と腫瘍細胞におけるGNMT遺伝子は有意差が見られることが明らかに分かる。本発明の目的は、GNMTの遺伝子発現の相対的なレベルを測定することによって細胞の異常を見つける方法を提供することである。さらにもう一つの目的は、異常な細胞にGNMTを送ることによって細胞の異常を修正する方法を提供することである。精神活性の薬をスクリーニングするのに役立ついくつかの非人間のトランスジェニック動物モデルが提供される。そうした動物は、遺伝子組み換えGNMT遺伝子を持っている。遺伝子における配列の改変は、削除または機能突然変異において他の喪失や、部位指定変異またはランダム変異によるヌクレオチド配列の持つ外来遺伝子の導入、ほかの種からの外来遺伝子の導入またはそれらの組合せなどが含まれます。遺伝子改変が行われたトランスジェニック動物はホモ接合性あるいはヘテロ接合性の可能性がある。
【0018】
GNMTは、AFB1処理の後で核移動を経る。本発明のテスト結果によると、AFB1はSAMeと同じ結合部位を争ってGNMTと結合することである。GNMTはAFB1-DNA付加体形成を減らしAFB1処理を受けている細胞の生存率を促進することによってAFB1に誘発された細胞毒性を拮抗するという考えが実証された。最後に、GNMTトランスジェニックマウスモデルより発見された結果は、GNMTの過剰発現はAFB1に誘発された原発性肝細胞癌(HCC)に対して保護効果があるということが示されている。
【0019】
本発明は、患者にアフラトキシンB1に起因する病気を治療するか予防する方法を提供する。それは効果的量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含んでいるプラスミドを患者に投与することから成る。
【0020】
好適な実施例において、その病気は原発性肝細胞癌(HCC)となっている。
【0021】
現在の方法では、処置または予防は、AFB1-DNA付加体の形成を妨害することによってなされる。
【0022】
遺伝子治療において、プラスミドはプラスミドワクチンとして見なすことができ、遺伝子治療における現在の技術によって患者の体に直接施されることができる。
【0023】
本発明は、ゲノムの混乱がneucleotidesにおけるSEQの547-4875でNo.8を確認することから発見したマウスの異常な肝機能から成立し、野生のタイプ表現型と比較して、表現型を生じるためにGlycine N-メチル基転移酵素(GNMT)遺伝子座位を組み換えによって崩壊するノックアウトmouceを提供する。
【0024】
本発明はゲノムがグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)遺伝子座における組み換えによって崩壊されたノックアウトマウスを提供し、それによって、野生型(wild-type)の表現型に相対し例のマウスの肝臓機能の異常からなる表現型が生じ、その崩壊はSEQ ID No. 8におけるヌクレオチド547-4875で起こる。
【0025】
特に、ヌクレオチドはGNMTエクソン1-4とエクソン5の一部分である。グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ活性の欠如の表現型は、野生型の表現型に相対して成熟したグリシン-N-メチルトランスフェラーゼの減少した量はその原因だと考えられる。
ノックアウトマウスの準備において、グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ遺伝子はヘテロローガスヌクレオチド配列(例えばネオマイシン)との組み換えによって崩壊される。
【0026】
その中で「異常な肝機能」という用語は制限されないが、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇を含む。
【0027】
トランスジェニック動物
ここで使われている「導入遺伝子」という用語は、哺乳類の細胞(特に生きている動物の哺乳動物細胞株)のゲノムに遺伝物質を人工的に挿入されたか挿入されようとしていることを説明する。導入遺伝子は細胞を変えるのに用いられる。それは、外来DNAの編入に次いで細胞における遺伝子の永遠的なものであるか一時的な変化(望ましくは永遠的なものの遺伝子変化)が誘発されるということを意味している。永遠的なものの遺伝子変化は、通常、細胞のゲノムにDNAの導入によって成し遂げられる。安定した統合を備えるベクターは、プラスミド、レトロウイルスと他の動物ウイルス、YACsなどを含みます。興味があるのはトランスジェニック哺乳類(例えば牛やブタ、ヤギ、馬など)、特に齧歯動物(例えばネズミ、マウスなど)である。
【0028】
トランスジェニック動物は染色体外遺伝因子として呈すか、その細胞、特に生殖細胞の全部または一部に安定的に結合される外来の核酸配列を包含します。明記しない限り、トランスジェニック動物は生殖系細胞系の細胞群が安定した変化を包含することが仮定される。その動物が最初に構成されている間、細胞のサブセットだけは変えられたゲノムを持っている「キメラ」または「キメラ動物」は生み出される。キメラは主に繁殖目的で使われます。それによって望ましいトランスジェニック動物が生み出される。ヘテロ接合性の変異がある動物はキメラの繁殖によって生み出される。雄と雌のヘテロ接合体は一般的にホモ接合性の動物を生み出すように繁殖される。トランスジェニック動物は2つのグループに分類され、口語で「ノックアウト」と「ノックイン」と呼ばれる。本発明では、ノックアウトは内在性GNMT遺伝子の一方または両方の対立遺伝子が部分的であるか完全な機能損失を持っている。ノックインは内在性遺伝子から変えられた遺伝子配列と機能を得た導入遺伝子が導入されている。その二つは結合されるかもしれないが、その場合、天然に存在する遺伝子の能力が奪われ、そして変化した遺伝子型が導入される。
【0029】
ノックアウトにおいて、目標遺伝子発現は検知されることができないか、重要ではないことが望ましい。GNMT遺伝子のノックアウトとは、GNMT遺伝子のその機能がかなり減少されたということである。それによって、発現は検知されることができないか重要ではないレベルだけを呈している。それは様々な手段によって成し遂げられる可能性もあるが、崩壊したコーディング配列の導入、例えば一つまたは一つ以上の停止コドンの挿入やDNA断片の挿入などや、コーディング配列の削除、コーディング配列に代えて停止コドンの置換などはその例である。時には、外来の導入遺伝子配列は最終的にゲノムから削除され、変異を行う前の配列に真の変化を残す。異なるアプローチは、「ノックアウト」を達成するのに用いられると考えられる。天然の遺伝子は全部または一部の染色体削除が誘発されるかもしれないが、非コード領域(特にプロモーター領域)や、3’制御配列、エンハンサーの削除、またはGNMT遺伝子の発見を促進する遺伝子の削除などが含まれる。機能的なノックアウトは、天然の遺伝子の発現を妨害するアンチセンス構成物の導入によっても成し遂げられる可能性がある。
【0030】
「ノックアウト」は条件つきのノックアウトをも含む。例えば、目標遺伝子の変異は以下の状況で起こる:その動物が目標遺伝子変異を促進する物質にさらされること、目標遺伝子の位置で組み換えを促進する酵素の導入(例えばCre-loxシステムにおけるCre)、または出生後に目標遺伝子変異を誘導する他の方法である。
【0031】
目標遺伝子の「ノックイン」は、宿主細胞ゲノムに変異を与え、天然のGNMT変えられた遺伝子の発現または機能に終わることを意味する。増加する(異所性を含む)か減少する発見は、目標遺伝子の追加したコピーの導入、または強化された内在性目標遺伝子のコピーの発見を提供する制御配列を有効に挿入するすることによって達成するとも考えられる。そうした変異は構造性的な条件つきなものと思われる。すなわち活性剤または抑制物質の存在に依存している。
【0032】
外来遺伝子は通常ホスト動物より異なる種から得たか、さもなければそのコーディングまたは非コーディング配列が変えられる。導入された遺伝子は野生型の遺伝子や、天然に存在する多型または遺伝的に操作られた配列である可能性も考えられる。例えばコーディングまたは非コーディング領域への削除や置換、または挿入が行われるということである。導入された配列は、GNMTポリペプチドをエンコードするとも考えられる。導入された遺伝子がコーディング配列である場合、それは通常、プロモーター(それは構成性的または誘導可能であるとも考えられる)やホスト動物の発現において必要である他の制御配列に“作動可能に連結(operably linked)”される。“作動可能に連結(operably linked)”されると言うことは適切な分子(例えば転写活性化タンパク質)が制御配列に結合される時、DNA配列と制御配列が遺伝子発現を可能にする方式で連結されたということである。
【0033】
興味があるがそれに制限していない特定の構築物は、アンチセンスGNMT遺伝子を含んでいる。アンチセンスGNMT遺伝子は天然のGNMT発現と優性阻害GNMT突然変異の発見、GNMT遺伝子の過剰発現を妨げるものです。検知されることができるマーカー、例えばlac Zはその遺伝子座(そこで発見の増加 (upregulation)は簡単に検知された表現型の変化に終わる)に導入する可能性がある。
【0034】
GNMT遺伝子で一連の小さな削除と/または置換がされると考えられる。それによって、DNA結合で異なるエクソンの役割や転写調節などを決定する。細胞におけるGNMTタンパク質の発見を提供する(さもなければ、その細胞は正常に生み出されない)ことによって、細胞の行為の変化が誘発されることができる。
【0035】
相同的組換え用のDNA構築物は、少なくとも一部の望ましい遺伝子改変があるGNMT遺伝子を含んで、そして目標遺伝子座にホモロジーのある領域をも含んでいる。ランダムな統合用のDNA構築物は、組み換えを伝達するのにホモロジーのある領域を含む必要はない。便利なのは、正と負の選択用のマーカーは含まれる。目標とされている遺伝子改変のある細胞を相同的組換えを通して生み出す方法は技術(art)において知られている。胚性幹細胞(ES細胞)を得るために、ES細胞系は使用されるか、あるいは、胚細胞は新たにホスト(例えばマウス、ネズミ、モルモットなど)から得られるとも考えられる。
【0036】
そのような細胞は適当な線維芽細胞層で発育するか、適当な成長因子(例えば白血病抑制因子(LIF))が存在している時に発育する。ES細胞は性質転換されたとき、トランスジェニック動物を産むのに用いられる可能性もある。性質転換の後、そうした細胞は適切な培地でフィーダー細胞層の上にメッキをされる。その構築物を含んでいる細胞は、選択的な培地を使用することによって検知されるとも考えられる。コロニーは発育に十分な時間を経た後、選ばれて相同的組換えや構築物の統合の発生について分析されます。そうしたコロニーは陽性である場合、それから胚操作と胚盤胞注入において使われる可能性も考えられる。胚盤胞は生後4〜6週間目の過剰排卵する雌から得られるものである。ES細胞はトリプシン処理され、そして、その改変された細胞は胚盤胞の割腔に注入される。注入の後、胚盤胞はそれぞれ偽妊娠の雌の子宮角に戻される。雌はその後、妊娠期間に入り、産まれた一腹の子が構築物を持っている変異細胞がスクリーンされる。胚盤胞とES細胞の異なる表現型に備えることによって、キメラの後代検定は、すぐに探知されることができる。
【0037】
したがって、本発明は本発明のノックマウスから備えられた細胞または細胞株を提供する。好適な実施例において、細胞または細胞株は幹細胞、ES細胞卵母細胞と胚細胞を含めているグループから選ばれる未分化細胞である。
【0038】
キメラ動物は改変された遺伝子の有無についてスクリーニングされ、そして改変されている雌および雄が交尾することによってホモ接合性の妊娠が生じます。もしその遺伝子変異は開発においてある程度で致死性を引き起こすならば、組織または臓器は同種異系間やコンジェニック系統における移植や移植片として、または試験管内(in vitro)培養において維持されてもよいと考えられる。
【0039】
関心のゲノム配列は、リストアップされた配列の間で定められ、開始コドンと停止コドンの間で存在している核酸から成り、そして通常天然の染色体で存在する全てのイントロンを含みます。それは更に成熟したmRNAで見つけた3'と 5'UTR(untranslated regions)を含む可能性も考えられる。それは、特定の転写制御配列や翻訳制御配列(例えばプロモーター、エンハンサーなど)、そして転写領域の5'または3'端のどちらにおいて1kb(より多い可能性がある)のフランキングゲノムDNAを更に含むものとも考えられる。そのゲノムDNAは100kbpやより小さい断片として隔離され、非常なフランキング染色体配列を持っていないと考えられる。
【0040】
薬物をスクリーニングする分析評価
本発明はさらに肝臓疾患や異常の予防または治療に対する候補エージェントをスクリーニングする方法をも提供し、それは
a.本発明のノックアウトマウスを提供し、
b.ある候補エージェントをそのノックアウトマウスに投与し、
c.そのノックアウトマウスの肝臓機能を候補エージェントを投与しないノックアウトマウスの肝臓機能と比較し、そして肝臓機能を好転させるエージェントは例の肝臓疾患や異常に効果があるエージェントとして選ばれるといったことから成る。
【0041】
そこから派生された被験者のトランスジェニック動物または細胞を用いることにより、GNMTポリペプチドと結合するか、それを調整するか、拮抗するか、苦しませるリガンドまたはサブストレートを識別することができる。そうしたポリペプチドに対して効果の思わしくない薬をスクリーニングすることにも関心がある。ヒト細胞に低い毒性を持つ薬品のスクリーニング評価について、特に興味があるものと思われる。
【0042】
多種多様な分析評価はその目的のために使われる可能性もあるが、生体内の行動研究や、投与後に薬剤の局在の識別、標識された試験管内のタンパク質-タンパク質結合の分析評価、タンパク質-DNA結合の分析評価、ゲルシフト法、タンパク質結合の免疫測定法などを含んでいる。特定の分析評価に従い、全動物、あるいはそこから派生された細胞が使われるかもしれません。細胞はある動物から新たに隔離されるかもしれないか、培養基において不死化にされるかもしれません。特に関心の細胞は、神経および脳組織を含む。
【0043】
ここで用いられる用語「エージェント(agent)」というのは、GNMTポリペプチドの生物学的作用に影響を及ぼす能力を持つ分子(例えばタンパク質または医薬)のことである。
【0044】
通常、複数の分析評価混合物は同時に異なるエージェント濃度でされることにより、そうした濃度に異なる反応を得る。一般的に、こうした濃度のうちに、1つがネガコン(negative control)の仕組みをしており、すなわちゼロ濃度や検知のレベル以下である。
【0045】
好適な実施例において、そのエージェントは原発性肝細胞癌(HCC)や、糖原病、肝臓形成異常または脂肪肝を予防するか、治療することに使われる。
【0046】
候補エージェントは、一般的に有機分子(望ましくは50以上、およそ2,500未満のダルトンの分子量を有する小さな有機化合物)であるが、多数の化学的な種類(chemical classes)がある。候補エージェントはタンパク質(特に水素結合)と構造的な相互作用に必要な官能基から成り、一般的に少なくともアミン、またはカルボニル、水酸基、カルボキシル基それぞれ一つ持っており、望ましくはそうした化学の官能基のうちに、少なくとも2つを持つ。候補エージェントはしばしば周期的な炭素または複素環構造および/または芳香族構造または多環芳香族構造を含み、上記の官能基の一つまたは一つ以上の代用をする。候補エージェントは、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、派生物、構造類似物またはその組合せといった生体分子の間で発見されるが、それに制限してはいない。
【0047】
候補エージェントは、合成であるか天然合成物のライブラリを含む多種多様な源から得られる。例えば、多種多様な有機化合物と生体分子におけるランダムで誘導された合成(ランダム化されたオリゴヌクレオチドとオリゴペプチドの発現を含む)に使えるいくつかの手段が考えられる。あるいは、細菌や菌類、植物、そして動物性抽出物の形として天然合成物のライブラリは、入手するか、すぐに生産される。その上、自然であるか総合的に生産されたライブラリと合成物は、従来の化学的や、物理的で、生化学的手段を通してすぐに改変されて、そして組合せライブラリを作成するのに用いられる可能性も考えられる。既知の薬理学的エージェントは構造類似物を生じるが、誘導された、又はランダムな化学改変、例えばアシル化、アルキル化、エステル化、amidificationなどを受けるものとも考えられる。
【0048】
スクリーニングは既知の薬理活性化合物とその化学類似物に向けられると考えられる。既知の肝ガンに対する制ガン剤または肝病気に対する薬の中で、非常に抑制作用(hepatoprotective effect)のある薬物に特に興味がる。
【0049】
ノックアウトマウスを準備するために、本発明は一対のプライマーをも提供する。それは(i) SEQ ID Nos 1と2または(ii) SEQ ID Nos 3と4である。
【0050】
本発明は、上流にある調整遺伝子(up-regulatory)と下流にある調節遺伝子(down-regulatory)を研究するために、GNMTノックアウトマウスにおける調節遺伝子のデータベースを更なる提供する。
【0051】
更なる本発明は、肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データベースを提供し、それは
(a) 生存と増殖:PTEN、PI3K、Akt 1、GSK3βまたはβ-カテニン
(b) ガン遺伝子:サイクリンD1、C-mycまたはC-ジュン;そして、
(c) 腫瘍抑制遺伝子:Rbまたはp53。
からなる。
【0052】
本発明はアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防のできる合成物をも提供し、それはグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成する。好適な実施例において、GNMTは二量体形成であるか四量体形成である。
【0053】
本発明の組み合わせは、主食作物(例えば米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなど)の補助的な添加物として適用されることができる。
【0054】
本発明は特定の方法論や、プロトコル、細胞株、動物の種または属、構築物、記述された試薬に限られていないことは理解すべきである。そうしたものは、もちろん、変化させる可能性がある。もう一つ理解すべきことは、ここで使用される用語が特定の実施例を説明するという目的だけで使われ、本発明の範囲を制限しようとするのはその目的ではないということである。本発明は、添付した特許請求の範囲だけによって制限されるのである。
【0055】
本記載にあるものと添付した特許請求の範囲において使われているように、単数形と、「と」、「その」といった言葉は複数の指示物を含み、又は、その文脈が明確に指摘するので、その点にも注意しなければならない。
【0056】
特に定義しない限り、ここで使用されるすべての専門的で科学的な用語は、本発明の属する技術(art)範囲における関連的技能を身につける人が理解しているのと同じ意味を持っている。ここに記述されている方法や装置、材料と類似したまたは同等したものは、すべて本発明の実施(practice)またはテスト(test)において使われることができるが、現在説明するのは、望ましい方法や装置、材料である。
【0057】
ここに言及したすべての出版物は、細胞株や構築物、本発明に適用されるかもしれないそうした出版物で記述される方法といった例を、記述し明らかにする目的で言及した。上記に言及された、そして全篇のテキストを貫くそうした出版物は、本発明の出願年月日の前に発表されることだけで言及する。先行発明によって発明者がそのような発表に先だつ権利を許可されないものと解釈されるものではない。
【0058】
以下の実施例は関連する技術を身につけた者たちに本発明の製作および応用について全面的な説明を提供するために挙げられる。本発明の範囲を制限することを目的とはしない。使われる数(例えば総計や温度、濃度など)に関して正確さを確保しようという努力はされたが、若干の実験誤差と逸脱は許容できる。特に指摘しない限り、パーセント(百分比)は重量百分比のことで、分子量は平均分子量、温度は摂氏の温度で、そして圧力は気圧を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
目標ベクターを構築するために、ラムダ(λ)ファージクローン3-2と5-3に代謝されるDNA断片は、プラスミド-pBluescrip II KSに挿入されました。左アーム(left arm)はPst Iを用いてファージクローン5-3から代謝され、pNeoベクターに挿入された。右アーム(right arm)はHinc IIを用いてファージクローン3-2から代謝され、TKベクターに挿入された。右アームとTK遺伝子を含んでいる断片がNot Iを用いて代謝され、左アームを含んでいるpNeoベクターに挿入されるこのによって目標ベクターを生み出す(図1)。
【0060】
(マウスGNMT遺伝子のエクソン 1-4およびエクソン5の一部分を入れ替える)ネオマイシン遺伝子は、目標ベクターで2つのDNA断片(3.1kbと3.7kb)に挟まれる。チミジンキナーゼ遺伝子が負の選択マーカーとして使われた。(図2A)40μg目標ベクターは、AscIを用いて線形化され、エレクトロポーレーションによってES細胞(129/Sv-派生系)に導入された。サザンブロット分析を使って278個のクローンをスクリーニングした後(図2B)、組み換えクローンが隔離されマイクロインジェクション法によって胚盤細胞に注入された。そのため4匹の雄キメラマウスは生み出され、雌C57BL/6マウスを育てるのに用いられた。アグーチ(Agouti)のF1世代は崩壊された対立遺伝子における生殖細胞系の伝送(germline transmission)が検知されるために、PCRが用いられた。ヘテロ接合性のF1雄マウスが雌の野生型C57B/6マウスと戻り交配されて、C57BL/6ゲノム遺伝的背景を持つマウス(C57BL/6 genome background mice)を生み出します。PCRは、野生型(+/+)とGNMTヘテロ接合性(+/-)、GNMT-/-マウスを区別するために用いられ、下記のプライマーが使用された:
GNMTにおいて
GNMT-F(5'-GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGC)とGNMT-R(5'-TTGCAGTCTGGCAAGTGAGC);
ネオマイシンにおいて
ネオマイシンF(5'-GTTCCTTGCGCAGCTGTGCT)とネオマイシンR(5'-CGGCCACAGTCGATGAATCC)。
正常のGNMT対立遺伝子はそうしたGNMTプライマーにより772bp断片を生じ、そして崩壊された対立遺伝子はそうしたネオマイシンプライマーにより409bp断片を生じた。(図2C)肝臓におけるGNMTタンパク質の発現は、サザンブロット分析で分析された; その結果が示したように、野生型と比較したら、GNMT+/-マウスは肝臓におけるGNMT発現がおよそ50%が減って、GNMT-/-マウスはその肝臓でGNMTが検知されることができなかった。(図2D)
【0061】
生後11週間で、雄と雌の野生型とGNMT+/-、GNMT-/-マウス(組ごとに6匹やそれ以上のマウス)は表現型分析のために犠牲になった。SAMeとSAH濃度は、HPLCを用いて検知された。同性の野生型マウスに比べると、GNMT-/-マウスは雄とも雌ともSAMeの肝臓濃度がかなり増えた(p<0.05)。対照的に、GNMT+/-マウスにおけるSAMeの肝臓濃度は野生型マウスより2.8倍低くて(表1)、そして雄と雌のGNMT-/-マウスにおけるSAHの肝臓濃度は野生型マウスと類似している。したがって、SAMe/SAHの比率は雄と雌のGNMT-/-マウスにおいてそれぞれ42と67倍増えた(表1)。ホモシステインレベルは、そうした異なるマウスグループで不変のままだった。メチオニンレベルは、GNMT-/-マウスにおいて野生型マウスよりその量が1.9〜2.4倍多かった(表1)。
【0062】
表1 野生型とGNMT欠損マウスにおける、肝臓でのSAMeとSAH濃度および血清ホモシステインとメチオニン濃度である。
野生型肝腫瘍形成GNMT-/-マウスの研究で、表現型GNMT-/-マウスは12週目まで隔週ごとに磁気共鳴画像とソノグラムを使って追跡した。その結果は7匹の雌GNMT-/-マウスのうち7匹の腫瘍が0.5mm以上成長したHCC、これは16.1ヶ月目のものと意味する。対照的に、我々が21ヶ月6匹の雄GNMT-/-マウスの研究を追跡している中、一匹はHCCがあり、二匹は13ヶ月で早まって犠牲になり、他は不明確である。したがって、14ヶ月から15ヶ月の雌のGNMT-/-マウスは、50%(二分の一)がHCCを持っていた。21ヶ月から22ヶ月で、雌のGNMT-/-マウスの6匹のうち6匹(100%)はHCCが発達した。雄の18ヶ月から21ヶ月のGNMT-/-マウスは75%(四分の三)が肝小結節に発達があった。野生型肝腫瘍形成の雌GNMT-/-マウスが指し示すものは、雄のGNMT-/-マウスよりも深刻である。一方、37.5%(八分の三)の雌GNMT-/-マウスは血管腫が発達した。全ての雌GNMT-/-マウスが脂肪変性に変化した中、雄GNMT-/-マウスは三分の一だけだった。
【0063】
表2 GNMT-/-マウスは生後13-21ヵ月目での肝腫瘍形成である。
a.マウスが犠牲になった年齢。
b.18ヶ月で二匹の雄の肝小結節が0.6cm以下で、一匹の雄には肝小結節がなかった。
c.二匹のマウスは軟弱過ぎたため、肝小結節を持たなかった。
d.このマウスは麻酔処置によって犠牲になった。
e.21ヶ月で、肝臓にある小結節が超音波によって検出された。
f.18ヶ月で小結節は検出されなかった。
g.18ヶ月で0.5cmの小結節が検出された。
h.該当なし。
【0064】
マイクロアレイ分析は、GNMTノックアウトマウスと野生型マウスと代謝の違いを観察するのに適用された。野生型と比較したら、mRNAレベルにおいて雌のGNMT欠損マウスは1896個の遺伝子がかなり増加し、雄のGNMT 欠損マウスは2429個の遺伝子がかなり増加した。そうした遺伝子のうち、それぞれ二倍以上変化した543個と843個の遺伝子は、更なる機能分析のために選ばれた。我々は、CrossPathプログラム(http://ibs.sinica.edu.tw/crosspath/)を使い、KEGG経路データベースに基づいてそれらの遺伝子を機能によって分類した。表3と表4は、発現量の異なる遺伝子は発現量が二倍または二倍以上増加しているのが所定の経路で分類された機能的な経路を示した。それによって、雌と雄GNMT欠損マウスにおいて主な経路増加はPPARシグナル伝達経路および細胞周期で起こるものである。そのうえ、サイトカイン(cytokine)-サイトカイン受容体へのインタラクション及びMAPKシグナル経路は、雌と雄GNMT欠損マウスにおいて減少した。表5は、リアルタイム定量PCR法によってGNMT-/-マウスにおいていろいろな組織における異なる経路に属している遺伝子のmRNA発現レベルvs.同齢の野生型マウスにおいて肝臓組織におけるそのmRNA発現レベルの比率が測られることを示している。その結果は、GNMT-/-マウスにおいていくつかの生存と増殖に関わる遺伝子はかなり減少し、そして三つのガン遺伝子は増加したことを示している。
【0065】
表3-1 KEGG経路データベースによる生後11週間での雌と雄GNMT欠損マウスにおける調節遺伝子の機能的分類である。
* GNMT欠損マウスと野生型マウスにおいて発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0066】
表3-2. 生後14-18ヵ月目でKEGG経路データベースによって機能的な分類をした雌と雄GNMT-/-マウスにおける腫瘍と腫瘍に隣接した組織の調節遺伝子個数である。
* GNMT-/-マウスにおいて腫瘍と腫瘍に隣接した組織と発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0067】
表4 KEGG経路データベースによる雌と雄GNMT欠損マウスにおける下流にある調節遺伝子(down-regulatory genes)の機能的分類である。
* GNMT欠損マウスと野生型マウスにおいて発現は少なくとも二倍の違いを示した遺伝子の個数。
【0068】
表5 リアルタイム定量PCR法によってGNMT-/-マウスにおいていろいろな組織における異なる経路に属している遺伝子のmRNA発現レベルvs.同齢の野生型マウスにおいて肝臓組織におけるそのmRNA発現レベルの比率が測られることを示している。
PTEN(phosphatase and tensinhomolog)はガン抑制遺伝子PTENで、PI3K(phosphatidylinositol 3-kinase)はホスファチジルイノシトール3-キナーゼで、GSK3β(glycogen synthase kinase)はグリコーゲンシンターゼキナーゼで、Rb(retinoblastoma)は網膜芽腫で、Tは腫瘍状組織で、TAは腫瘍に隣接した組織で、KOはGNMT-/-マウスで、WTは野生型のマウスである。
a.生後11週間でGNMT-/-マウス対野生型のマウスの遺伝子発現プロフィールの比率である。その生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
b.腫瘍に隣接した組織対野生型のマウスにおける肝臓組織の遺伝子発現プロフィールの比率である。その生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
c.腫瘍状組織対野生型のマウスにおける肝臓組織の遺伝子発現プロフィールの比率である。生データは内部統制のGAPDによって標準的にされた。
GNMT-/-マウスモデルがより発ガン物質に影響されやすいことを証明するために、マウスらに対してアフラトキシンB1(AFB1)を用いてテストした。AFB1は、以下の剤量で腹膜内に二回投与された:生後七日目で体重一グラム当たり10ugで、生後九週間で体重一グラム当たり40ugである。AFB1で処置されたすべて(5/5)の雌および57.1%(4/7)の雄GNMT -/-マウスには肝臓結節が検知されたが、AFB1で処置された野生型のマウスも溶媒(トリカプリリン、tricaprylin)で処置された他のグループも生後13-14ヵ月目でまだ肝腫瘍が起こることはないと、その結果は示している(表6)。
【0069】
表6 生後13ヵ月目でそれぞれ溶媒またはAFB1で処置された2匹の遺伝子型マウス(genotypes mice)の肝腫瘍形成である。
HE染色でマウス肝臓部の組織薄片を見たら、AFB1で処置された野生型のマウスは異常が現れなかったが、AFB1で処置された雄のGNMT-/-マウスにはデイスプラジア結節や早期HCC、脂肪結節が検知され(図9AとB)、そして雌のGNMT-/-マウスには硬化性HCC(Sclenosing HCC)や限局性脂肪沈着におけるデイスプラジア結節が検知された(図9CとD)。
【0070】
材料と方法:細胞培養および処置
肝臓ガン細胞株[HA22T/VGH]はWaxman,D.J. & O'Connor,C. Growth Hormone Regulation of Sex-Dependent Liver Gene Expression. Molecular Endocrinology 20, 2613 (2006)によって作製されたもので、ヒト肝芽腫細胞株-HepG2から取り出された安定発現クローンは、Mode,A. & Gustafsson,J.A. Sex and the Liver−A Journey Through Five Decades. Drug Metabolism Reviews 38, 197-207 (2006)に基づいて作製されたものである。Chen, S.Y. et al. Glycine N-methyltransferase tumor susceptibility gene in the benzo(a)pyrene-detoxification pathway. Cancer Res. 64, 3617-3623 (2004)といった論文で述べた[SCG2]は、この実施例でも使われています。本発明で使われる細胞は、10%のウシ胎児血清(HyClone、特殊血清)を含んでいるダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(GIBCO BRL, Grand Island, NY)で維持された。AFB1はDMSOで溶解され、処置が培養基において行われた。
【0071】
免疫蛍光染色および共焦点顕微鏡
培養されたHA22T/VGH細胞はカバースリップの上に置かれて20 mM のAFB1または0.1% のDMSOで三時間処置された後、4%のパラホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS, pH 7.4)(溶液I)によって室温で20分固定された。そうした細胞は透過溶液(permeablization solution)(定着液Iに0.5%のトリトンX-100を加えたもの)の中で室温で5分培養された後、そのカバースリップはブロッキング液(5%BSA 加 PBS)とともに室温で一時間インキュベート(保温)され、そしてウサギ抗GNMT抗血清(1:200)とともにもう一時間インキュベートされた。FITC(蛍光色素)を共役しているヤギ抗ウサギIgG抗体(Chemicon、Temecula、CA、USA)が第二の抗体として使われた。核はヘキスト33258(シグマアルドリッチ)で対比染色された。共焦点顕微鏡は、オリンパスFluoviewアルゴンとクリプトンスキャニングレーザーシステムと、Fluoviewイメージ分析ソフトウェア(Olympus, Melville, NY)といった装備を整えているオリンパスIX70倒置蛍光顕微鏡を用いて実行された。
【0072】
LGAドッキング
LGAがAFB1といろいろな形のGNMTとのインタラクションサイトを解明するのに用いられた。ソフトウェアのAutodock 3.0が最も良いリガンド結合インタラクションを確認するのに使われた。前述のとおり、ネズミGNMTからのX線結晶学データがドッキングという目的に使われたのは、ネズミGNMTおよび人間のGNMTはアミノ酸配列で91%のホモロジー(homology)を有しているからである。(Pakhomova,S. et al., Proteins Structure Function and Bioinformatics 57, 331-337, 2004) パラメータは、10 runと50の集団サイズ、27,000世代または2.5×105のエネルギー評価に達する停止基準を含んでいる(先に出るのはどちらでも可能)。二乗平均平方根偏差の群集構造(A root mean square deviation conformational clustering)の許容偏差値0.5 Aはリガンドの結晶座標から計算されたものである。手続きの詳細は前のレポートを参照。(Morris GM et al. J Comput Chem 19, 1639-1662, 1998)
【0073】
細胞毒性評価
MTT分析評価は、AFB1の細胞毒性効果を決めるのに用いられた。省略して表現すると、細胞は96穴プレートに播かれて培養されている。評価の時点において、培養液は10 mLのMTT貯蔵液(5mg/mL)を含んでいる100mLの新鮮液に穴ずつ替えられた。MTTで4時間細胞にラベルをつけたら、その新鮮液は穴ずつ100 mLのDMSOに37°Cで10分替えられた。そのような試料を混合し540nMで吸光度を測定した。半數致死濃度(LC50)の測定に、7000個のHuH-7細胞は96穴プレートに播き18時間培養した。細胞はそれぞれ異なる濃度のAFB1で処置され、そしてMTT分析評価は一連の時点において一組ごとに三回実行された。生存率は、実験群におけるOD値割る溶媒対照群におけるOD値によって計算される。そういった細胞毒性評価を行うために、5000個のHuH-7細胞は異なる量のアデノウイルスまたはGNMT cDNAを有するレンチウイルスに8時間感染してから、その培養液を替えまた10時間培養される。72時間のAFB1処置の後、MTT分析評価は生存率を測定するのに実行された。
【0074】
AFB1-DNA付加体は競合 ELISA 法で測量
GNMTの保護効果を評価するために、安定SCG2-1-1細胞クローンまたはGNMT組み換えアデノウイルス(Ad-GNMT)に感染したHepG2細胞は一晩中10cmのペトリ皿で培養され、AFB1または0.1%のDMSOで16時間処理されて、それからDNA抽出が行われた。すべての試料は、すべての開環型付加体(adducts in ring-opened form)の中和を確実にするために、15mMのNa2CO3と30mMのNaHCO3(pH 9.6)で37°Cで二時間処置された。Hsieh,L.L. et al., Immunological detection of aflatoxin B1-DNA adducts formed in vivo. Cancer Res. 48, 6328-6331 (1988)という論文で述べてられているように、AFB1-DNA付加体レベルは6A10抗体を使っている競合ELISA法で測定された。各々のELISA分析は三回実行された。吸光度なら490nMで測定した。
【0075】
pPEPCKex−flGNMTトランスジェニックの構築
我々は肝臓と腎臓に特異的なトランスジェニックベクターであるpPEPCKexを使用しました。それはマウスホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK; Valera,A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 91, 9151-9154, 1994) プロモーターと、0.3kbの合成イントロン(synthetic intron)、0.6kbのヒト成長ホルモンポリAシグナル(Poly A Signal)を含む。pPEPCKex-flGNMTトランスジェニックプラスミドは、1.2kbのヒトGNMT cDNA (9-1-2 プラスミドより; Chen,Y.M. et al., Int. J. Cancer 75, 787-793, 1998) をpPEPCKexベクターにおける制限酵素サイトであるNotIとXhoIに挿入することによって構築された。pPEPCKex-flGNMTプラスミドをAscIで制限酵素消化後の線形4.3kbの断片はマイクロインジェクション法において使われた。
【0076】
GNMT TGマウスの生成
GNMT TGマウスはFVB受精卵の前核へのマイクロインジェクションによって生み出され、特定病原フリー(Specific Pathogen Free)の施設で育てられた。それらの尾は生後3週間での離乳期で切られた。ゲノムDNAは、プロテイナーゼK(PK)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を組み合わせた前処理法(Promaga)、そしてフェノール/クロロホルム抽出法によって単離された。そして、そうしたTGマウスの遺伝子型はPCRで測定された。GNMT-TGを見つけるために、668-bpのヒトGNMT特異的なDNA断片はPCRプローブによって94℃(30秒)、60℃(30秒)、72℃(1分)といったサイクル条件でプライマーのGNMT-F 5’- GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGC-3’およびGNMT-R 5’- GCGCTCGAGTCAGTCTGTCCTCTTGAGCAC-3’を用いて30サイクルで増幅された。
【0077】
大量のAFB1 の投与
本発明で使われるAFB1(Sigma Co, St Louis, MO) は濃度0.2mg/mLのトリカプリリン(Sigma)に溶かされたものである。生後7日目に各グループの6匹以上のマウスは腹膜内にアフラトキシンB1を注射し(AFB1 10mg/kg体重)、そして2ヵ月後同じ投与量を追加した。そのプロトコルは前にGhebraniousとSellによって修正された(Ghebranious,N. & Sell,S. Hepatology 27, 383-391,1998)。注射後9ヵ月で、そうしたマウスは病理検査のために犠牲になった。病理組織検査のために、器官(肝臓と肺、腎臓を含む)の5分の2は10%のホルマリンで固定され;残りの器官はin situ ハイブリダイゼーションやDNAとRNA、タンパク質分析のため、-80℃で保存された。
【0078】
RNA分析
メーカーの指示に従い、全RNAはTRIzol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)によって凍った組織から抽出された。全RNA試料のための量は分光光度計で定量化された。ノーザンブロットハイブリダイゼーションは前述の通りに実行された。cDNAプローブはプラスミド9-1-2におけるヒトGNMT遺伝子によって作製され、相補的DNAはSuperScript II RNase H-Reverse Transcriptase Kit (Invitrogen)を用いて肝臓RNA(2mg)から作り出された。GNMTのためのプライマー配列はF1: GCGGCGGCCGCATGCTGGTGGAAGAGGGCとR1: GCGCTCGAGTCAGTCTGTCCTCTTGAGCACで、β-アクチンのためのプライマー配列はF2: GTGGGGCGCCCCAGGCACCAとR2: CTCCTTAATGTCACGCACGATTTCである。PCR条件は下記の通りである:94°Cで5分間のプレ変性(pre-denaturation)、94℃(30秒)と60℃(30秒)、72℃(1分)で30サイクルの増幅に次いで72°Cで10分の延長(extension)を行った。
【0079】
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析を実行するために、10μgの全部の肝臓タンパク質抽出物は10%のSDS-PAGEによって分離され、PVDF(polyvinylidene difluoride)膜(PVDF; Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)に転写された。その手順はWaxman,D.J. & O'Connor,C. Growth Hormone Regulation of Sex-Dependent Liver Gene Expression. Molecular Endocrinology 20, 2613 (2006) に記述してある。その分析において、マウス抗GNMT単クローン性抗体(mAB)14-1はGNMT20を検出するのに用いられた。
【0080】
GNMT酵素活性分析
この分析はCook,R.J. & Wagner,C. Glycine N-methyltransferase is a folate binding protein of rat liver cytosol. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 81, 3631-3634 (1984)という論文で述べてある手順によって修正されたものである。それはGNMT-TGマウスから採った肝臓組織のGNMT酵素活性を測るのに用いられた。一部分の肝臓は0.25Mの蔗糖と1mMのEDTA、1mMのアジ化ナトリウム、そして0.1mMのphenymethylsulfonylflourideを含んでいる3倍容量の氷冷リン酸バッファー(10mM、pH 7.0)によって均質化された。30分間20,000X gで遠心分離された後、産物として生じた上清液は取り除かれ、2-メルカプトエタノールは最終濃度10mMに加えられる。タンパク質の濃度を測ったら、250ugのタンパク質は100mMのトリスバッファー(pH 7.4)と50mMのグリシン、0.23mMのSAMe、そして2.16uMの S-アデノシル−L−[メチル−3H]−メチオニン(S-adenosyl-L-[methyl-3H]-methionine)(76.4Ci/mmol)を有する100ulの反応混合物に加えられた。37°Cで30分培養した後、反応は10%トリクロロ酢酸と5%の活性炭との混合物50ulを添加することによって終了した。各反応は三回実行される。
【0081】
免疫組織化学的染色方法
GNMTタンパク質に対する免疫組織化学による発現解析はモノクローナル抗体(mAB)14-1を1:200希釈で使用することによって実施された。パラフィンに包埋した肝臓の部分(4um)はGNMT抗体とともに培養され、メーカーの指示に従いDABキット(DakoCytomation)で検出した。
【0082】
AFB1によって誘発されるGNMT核転座である
GNMT cDNAはHA22T/VGH細胞にAFB1またはDMSO(溶媒対照)を16時間トランスフェクトした。(図10AとB)図10で示すように、GNMT分布は最初に細胞質に制限された(図10A)が、AFB1処置(図10B)の後で、細胞核に部分的に転位した。そうした結果は、AFB1(およびBaP)がGNMT核転座を誘発することを示した。
【0083】
また、それはAFB1で処置した細胞中でGNMTに核転座が生じたことを証明し、GNMTはAFB1-DNA付加体の形成を減らす、そしてAFB1で処置した細胞の生存率を上昇させることができることを示した(図10)。AFB1-DNA付加物形成は肝臓発ガンに関係する(Bressac,B. et al., Nature 350, 429-431, 1991; Hsu,I.C. et al., Nature 350, 427-428, 1991)。そして、肝細胞におけるGNMTの減少がその発ガン物質に対する肝臓の敏感性を増やすことも証明された。したがって、GNMTはそうした環境発ガン物質に対する細胞の防衛機構に関係する。
【0084】
GNMT-AFB1インタラクションのモデリング
Larmarckian 遺伝アルゴリズム(LGA) とX線結晶学データの組合せはGNMTとAFB1間の物理的インタラクションを予測するのに用いられた。ネズミGNMTタンパク質はアミノ酸配列においてヒトGNMTタンパク質と91%のホモロジーを持っているので、我々はネズミGNMTタンパク質に対するX線結晶学データによりAFB1ドッキング実験が行われた。表7で示すデータによると、AFB1はGNMTの二量体(Protein Data Bankコード1D2C)と四量体(1D2G)形成と低い結合エネルギーレベルで(それぞれ-9.41と-10.06 kcal/モル)結合した。
【0085】
表7 Larmarckian 遺伝アルゴリズムを用いて行ったGNMTタンパク質とAFB1 分子a間のドッキングの探索
AFB1とSAMe(-9.85kcal/モル)に結合しないGNMT二量体(1XVA)間の結合エネルギーを、AFB1とすでにSAMe(53.25kcal/モル)に結合しているGNMT二量体間の結合エネルギーと比較したら、その結果はAFB1はSAMeと同じ結合部位を争ってGNMTと結合することを指摘する。AFB1分子(およびBaP)はGNMT二量体と四量体において分子配向性(molecular orientation)が少し違うが、分子バスケット(molecular basket)内部に同じ位置にある(図11A)。GNMTアミノ酸残基がAFB1(Ala64とVal69、Leu136、Gly137、Ser139)の極近くにあることは図11Bに示される。
【0086】
その実施例は(a) GNMTの基質SAMe結合部位にAFB1結合性領域があること、そして(b)AFB1はGNMTの二量体と四量体形成の両方とも結合することを指摘する。GNMT四量体(1D2G)のR175K変異体形成(mutant form)は、結合部位のすぐ近く(~5 A)にあるR/K残基がGNMT-AFB1集団構造(cluster formation)にほとんど効果を及ぼさないことを証明するのに用いられた(表7)。その結果は、GNMTが分子バスケットであるという議論と一致する。この独特の構造は、GNMTはSAMeだけでなくベンゾピレン(BaP)のような多環式芳香族炭化水素(PAH)分子と結合することができるという事実と一致していと考えられる。GNMTの結晶構造により、GNMTの活性部位の内面にある多くのチロシン残基(33、44、177、194、220、242、283)が他の残基とともに発ガン物質に相互作用している環境を提供する可能性もある。GNMTがAFB1とも結合することができることとも思われる。
【0087】
AFB1によって誘発された細胞毒性はGNMTによって拮抗される
MTT分析は細胞の生存率を判定するのに用いられた。細胞毒性分析の条件を最適化するために、HuH-7細胞は一連の時点で異なる濃度のAFB1で処置された。図11Aで示すように、AFB1の半(數)致死濃度(LC50)は処置の持続時間によるものである。16 mM に達するAFB1処置は細胞毒性効果が24時間以内で不分明である。しかし、処置の48時間後にHuH-7細胞は4 mMのAFB1で処置されたグループさえ、生存率がかなり下がった。72時間でAFB1のLC50はおよそ12 mMである。AFB1処置を受けた細胞にGNMTの影響を判明するために、我々はGNMT cDNAを運んでいるアデノウイルスを感染させることによってHuH-7細胞内でGNMTたんぱく質を発見した。Ad-GFPコントロールウイルスに感染しているHuH-7細胞と比較したら、AFB1で処置されたHuH-7細胞の生存率は少し増加したが、Ad-GNMTを投与すればかなり増加する(図11B)。類似した結果は、GNMT遺伝子がレンチウイルスベクターによって導入された別個のシステムで観察された(図11C)。そうした結果は、GNMTがAFB1処置によって誘導される細胞毒性効果に拮抗することができることを証明した。
【0088】
AFB1-DNA付加体形成に対するGNMTの抑制影響
AFB1-DNA付加体形成に対するGNMTの影響を判明するために、我々は抗体6A10で競合酵素免疫測定法(EIA)を行うことによってAFB1-DNA付加体形成を測り、HepG2細胞株-SCG2-1-1とSCG2-negから得る一対の安定クローンおよびGNMT組み換えアデノウイルスに感染されたHepG2細胞を利用する。
【0089】
細胞は、DNA抽出の前にDMSOと異なる濃度のAFB1で16時間処置されました。その間、明らかな細胞毒性効果がなかった。SCG2-1-1細胞中のAFB1-DNA付加体の量は、SCG2-neg細胞中のその量のおよそ50%になった(図11D)。さらに、GNMT組み換えアデノウイルス(ad-GNMT)の感染によるGNMT過剰発見も、投与する方法によってAFB1-DNA付加体形成を減らした(図11E)。Ad-GFPに感染された細胞と比較して、5MOI のAd-GNMTに感染されたHepG2細胞は両方のAFB1濃度でも40%を超えるAFB1-DNA付加体形成の減少という結果となる。50MOIのAd-GNMTに感染されたHepG2細胞はAFB1-DNA付加体形成がおよそ70%の減少が見られた。実験の結果は、抑制率に基づくAFB1-DNA形成量によって計算された。それは、実験のデータにより、コントロール細胞(Ad-GFPに感染されたSCG2-neg細胞とHepG2細胞)と比較して、GNMTを発現している細胞で形成したAFB1-DNA付加体の数がかなり減少したことを指摘した。それは、GNMTにはAFB1-DNA付加体形成を減らすことによってAFB1処置を受けた細胞に対する保護役割があることを証明した。
【0090】
GNMT-TGマウスの作製
生体内でAFB1によって誘発された発ガンに対するGNMTの影響を判明するために、ヒトGNMTトランスジェニックマウス(TG)モデルは作製された。GNMT-TGマウスを生み出すのに用いられるプラスミドは図14aに示されたようにpPEPCKex-flGNMTプラスミドである。それはマウスPEPCKプロモーター(Valera,A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 91, 9151-9154, 1994)でヒトGNMT発現を駆動することができる。GNMT-TGマウスはFVB受精卵の前核へのマイクロインジェクションによって生み出された。ノーザンブロット解析法は、ヒトGNMTが予想の通り、特にマウスの肝臓と腎臓で発見することを証明した(図14B)。
【0091】
GNMT-TGマウスと野生型マウスのGNMTの発見プロフィールは、RT-PCR法およびウエスタンブロット分析で測定されました。図12Aで示すように、野生型マウスは年齢増加とともにGNMTのmRNA表現レベルが増加し、生後7週間でプラトーに達した。特に一週目と3週目の時点で、GNMT-TGマウスは野生型マウスよりGNMT mRNAの遺伝子発現レベルが高かった。そのうえ、ウエスタンブロット分析は示したが、生後一週間~三週間で雄の野生型マウスはGNMTのタンパク質レベルが検知することが不可能だが、生後一週間で雌の野生型マウスはGNMTのタンパク質が低い発現レベルで検知されることができる。対照的に、雄と雌のGNMT-TGマウスは両方とも生後一週間でタンパクの量がより高かった(図12A)。そうした結果は、生後1-3週間で野生型のマウスよりGNMT-TGマウスのほうはGNMT発現が高いことを示した。さらに、我々はGNMT-TGマウスでGNMT酵素活性を、野生型マウスで肝臓ライセートを検知した。生後九週と11週間でGNMT-TGマウスにおけるGNMT酵素活性は野生型マウスよりかなり高かった(p<0.05)が、生後九週間での雄は唯一の例外である(図12B)。
【0092】
その実験において、GNMT-TGマウスには特異的なダイエットが提供されなかった。特に生後一週目と3週目でGNMT-TGマウスは野生型マウスより肝臓におけるGNMT遺伝子発見レベルが高く(図12A)、そして生後七週目でプラトーに達した。
【0093】
AFB1によって誘発された肝腫瘍形成はGNMT-TGマウス体内で遮断
GNMT-TGマウスと野生型マウスは腹膜内にAFB1が投与され、生後11ヵ月目で犠牲になった。その雄と雌のマウスのかかる肝腫瘍の全体的な発病率は表八で見られた。
【0094】
表8 AFB1溶媒で処置された2つの遺伝子型のマウスにおける肝腫瘍形成。
AFB1で処置された雄と雌のGNMT-TGマウスは両方とも肝腫瘍が形成しなかったが、
AFB1で処置された6匹の雄の野生型マウスのうちで4匹(67%)は肝腫瘍が形成された。また、溶媒(tricaprylin)で処置されたマウスは腫瘍が検知されなかった。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)濃度は、生後11ヵ月目でGNMT-TGマウスと野生型マウスの肝機能をモニターするために測定された。AFB1処置群において、雄の野生型マウスは雄のGNMT-TGマウスより平均血清ALT値が高かったが、雌のGNMT-TGマウスと野生型マウス間で差がなかった。病理検査は、AFB1処置を受けた雄の野生型マウスには異形成とHCCがある(図13A)ものの、AFB1処置を受けた雄のGNMT-TGマウスは正常のパターンが観察される(図13B)ことを明らかにした。免疫組織化学的染色は、GNMTは正常の肝細胞の場合にはサイトゾールでその発現が豊かであった(図13D)ものの腫瘍細胞の場合にはそれが減少した(図13C)ことを証明しました。その現象は、ウエスタンプロット分析によって確認される(図13E)し、ヒトHCCでも観察される。
【0095】
AFB1処置の実験では、マウスらはGNMT-TGマウスにおけるGNMTの発現が野生型マウスより高かった時、AFB1を注射した。その結果は、GNMT-TGマウスは雄とも雌とも肝腫瘍形成が出ないが、AFB1で処置された6匹の雄の野生型マウスのうちで4匹(67%)は肝腫瘍が形成した(表8)ことを示しました。その実施例において、雄の野生型マウスにおける肝腫瘍形成率は10%から67%まで増加した。同じ処置手順で、雄のGNMT-TGマウスは肝腫瘍形成が出なかった。さらに、GNMTタンパク質は低い濃度でもウエスタンプロット分析によって生後一週間という早い時期に雌マウスの肝臓で検知されることができる。そうしたGNMTタンパク質は保護効果を及ぼし雌の野生型マウス体内でAFB1によって誘発された肝腫瘍形成を防いだ(AFB1で処置された雌マウスは一匹も肝腫瘍が形成しなかった)。その実験は、GNMTは雄のGNMT-TGマウスをAFB1によって誘発された肝腫瘍形成から守ることができることも証明した。
【0096】
さらに、病理検査は、AFB1で処置された野生型マウスで形成した肝腫瘍はHCCであることを確認した(図13A)。免疫組織化学的染色およびウエスタンプロット分析から得た結果は、腫瘍組織におけるGNMT発現レベルが低下することを示した(図13CとE)。その結果は我々の前のヒトHCCに対する調査結果と首尾一貫しており、それに、発ガンに対するGNMT制御性においてマウスと人間は非常に類似していることを示唆した。したがって、GNMTは発ガンの予防において役に立つことが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】目標ベクターを構築する策略が表されている。
【図2】GNMT遺伝子座に対して予測される修正が表されている。(A)目標ベクターはGNMTエクソン1−4と一部分のエクソン5でネオマイシン耐性遺伝子に入れ替わるという設定がされている。ネオマイシン正の選択マーカーは二つの相同の部分がついており、そして目標ベクターの3’ 端でTK(チミジンキナーゼ)負の選択マーカーが付け加えられる。(B) 胚性幹細胞(ES細胞)クローンについてのサザンブロット分析。BamHI(B)-BamHI DNA断片サイズは、7.9kb(野生型対立遺伝子)から5.3kb(組み換え型対立遺伝子)に減少した。(C) PCR(遺伝子増幅)法によるGNMTノックアウトマウスの遺伝子型。正常なGNMT対立遺伝子は772 bp断片を生じ、分離された対立遺伝子は409bp断片を生じた。野生型+/+と、GNMTヘテロ+/-、-/- GNMT -/-マウス。 (D)GNMTタンパク質の発見はウエスタンプロット分析により確認されました。個々のレーンは10 mgの肝臓ライセートを含んでいる。GNMT分子量:32 kDa。GAPDH(グリセルアルデヒドリン酸脱水素酵素):内部標準。
【図3】遺伝子のmRNA発現レベルにおけるリアルタイム定量PCR法は炭素一炭素代謝経路に参与することが表されている。WTM (野生型の雄)とKOM (GNMT -/- 雄)、KOF (GNMT -/-雌)の肝臓組織でのmRNA発見プロフィールはWTF (野生型の雌)マウスに正常化された。*, p<0.05. Ahcy(S-アデノシルホモシステイン加水分解酵素);Ms(メチオニンシンターゼ);Cbs(シスタチオニン-β-シンターゼ);Mthfr(5-10メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素);Mthfd1(メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ)(NADP+ 依存性);メテニルテトラヒドロホール酸シクロヒドロラーゼ(metheny ltetrahydrofolate cyclohydrolase);ホルミルテトラヒドロ葉酸シンターゼ;Aldh1l1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ1家族、メンバーL1);Atic(5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ);Shmt2(セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ2);Mthfs(5,10-メテニルテトラヒドロホール酸シンテターゼ);Ftcd(ホルムイミノトランスフェラーゼシクロデアミナーゼ)。
【図4】GNMT -/-マウスは肝腫大を起こし、血清ALT値レベルが著しく高いことが描かれている。(A)肝臓の重量対体の重量の比率。(B)野生型やGNMT +/-、GNMT -/-マウスの血清ALT値レベルの比較。*, p<0.05; **, p<0.01.どちらも野生型のマウスと比較されている。
【図5】野生型とGNMT -/-マウスの肝臓病理検査を表している。肝臓の肉眼検査は雄の野生型(A)と、雄GNMT +/-(B)、雄GNMT -/- (C)、そして雌GNMT -/-マウス(D)である。そうしたマウスは犠牲になる前に八時間も断食した。肝臓組織のHE染色が行われるのは生後11週間の雄の野生型(EとI)をはじめ、雄GNMT +/-(FとJ)と雄GNMT -/-(GとK)、雌GNMT -/-(HとL)、生後九週間の雄GNMT(Q)、そして生後九週間の雌GNMT -/-マウス(S)である。肝臓組織のPAS染色が行われるのは生後11週間の雄の野生型(M)をはじめ、雌の野生型(N)と雄GNMT -/-(O)、雌GNMTナル(P)、生後九週間の雄GNMT -/-(R)、そして生後九週間の雌GNMT -/-マウス(T)である。拡大:E-H には100X, I-Tには 400X。
【図6】野生型とGNMT -/-マウスの血液生化学的パラメータによる血液学と分析を表している。(A) 野生型のマウス(ソリッドサークル)とGNMT -/-マウス(オープンサークル)において白血球や好中球、リンパ球、単球、好酸球、そして好塩基球も視野に入れている。水平のバーは平均値を示します。(B) 野生型(ソリッドサークル)とGNMT -/-マウス(オープンサークル)における血清グルコースやコレステロール、トリグリセリドのレベルである。水平のバーは平均血清濃度を示す。*, p<0.05; **, p<0.01。どちらも野生型マウスと比較している。
【図7】遺伝子のmRNA発現レベルにおけるリアルタイム定量PCR分析はいろいろな種類の糖原病(GSD)に繋がっていることが示されている。mRNAの発現プロフィールは野生型のマウスには正常化された。(A)そのマウスの生後11週間目;(B)そのマウスの生後九ヶ月目。*, p<0.05; **, p<0.01。Gys2(グリコーゲンシンターゼ2);G6Pase(ぶどう糖 6-ホスファターゼ);G6PT(グルコース-6-リン酸輸送体);Gaa(アルファ-グルコシダーゼ);Agl(アミロ-1,6-グルコシダーゼ);Gbe1(ブランチングエンザイム1);Pygl(グリコーゲンホスホリラーゼ);Phka2(ホスホリラーゼキナーゼアルファ2);Fbp1(フルクトース1,6-ビスホスファターゼ);そしてPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)。
【図8】雄と雌GNMT -/-マウスには超音波や磁気共鳴画像(MRI)、肉眼検査、HE染色、そしてレチクリン染色が行われた結果である。雄GNMT -/-(A)と雌GNMT -/-(G)は肝臓に超音波が行われ;雄GNMT -/- (BとC)と雌GNMT -/-マウス (HとI)は肝臓にMRIとMRI再構成が行われ;雄GNMT -/- (D)と雌GNMT -/-マウス(J)は肝臓に肉眼検査が行われ;雄GNMT -/- (E)と雌GNMT -/- (K)は肝臓にHE染色が行われ;そして雄GNMT -/- (F)と雌GNMT -/- (l)は肝臓組織にレチクリン染色が行われた。
【図9】野生型とGNMT -/-マウスはいくつかの早期の原発性肝細胞癌(HCC)マーカーに対するリアルタイム定量PCR分析(グリピカン-3やLYVE1、サバイビン、そしてα‐フェトプロテイン)が示されている。
【図10】アフラトキシンB1による処理に次いでグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)における(A-B)核移動が示されている。カバースリップに載せられているHA22T細胞は5mg GNMT-フラッグでトランスフェクトされ、そしてR4 (ウサギアンチGNMT) 抗血清で治療するか反応する前に溶媒のDMSO(ジメチルスルホキシド) (A)または40 mM AFB1 (B)によって処理されました。免疫蛍光染色には、われわれはFITC(蛍光色素)を共役しているヤギ抗ウサギ抗体を用いた。核はヘキスト33258で染色された。バー:20 mM。(C-E)ベンゾピレン(BaP)のモデルと、ラマルキアン式の遺伝的アルゴリズムによって四量体形のGNMTと分子結合したアフラトキシンB1(AFB1)である。(C) S-アデノシルホモシステインに結び付いた四量体形のネズミGNMT(シアン)(PDBコード1D2H) と分子結合されたBaP(緑)とAFB1(赤い)分子である。(B) BaP(緑)とAFB1(赤い)分子の分子結合モデルを示すモノマーである。GNMT構造(PDBコード1D2H)とGNMT-AFB1錯体の分子結合モデルによりいくつかのAFB1炭素原子のすぐ近くにあるGNMTアミノ酸残基(Ala64, Val69, Leu136, Gly137 and Ser139)が示されている。(E) AFB1 (左)およびBaP (右)の構造。
【図11】GNMTはAFB1の細胞毒性効果を拮抗することが示されている。(A-C) AFB1の誘発した細胞毒性は、GNMT過剰発現によって減少される。MTT分析評価は、AFB1で扱われるHuH-7細胞の生存率を決めるのに用いられた。A、いくつかの時間に異なった量のAFB1で処理するHuH-7細胞の生存曲線である。50パーセントの発育阻止濃度はその処理の持続期間によるものである。HuH-7細胞にAFB1で72時間処理したIC50は12uM程である。B、HuH-7細胞はGNMT遺伝子またはGFP支配遺伝子を運ばれるアデノウイルスに16時間感染された。AFB1で72時間処理された後、細胞はMTT分析評価を受けた。HuH-7細胞の生存率は、Ad-GNMTの投薬によって多少増加した。8uMの AFB1で処理されたHuH-7細胞のグループで、HuH-7細胞の生存率は、Ad-GNMTの投薬によってかなり増加した。C、類似した結果は他のシステムでも観察されたが、HuH-7細胞はレンチウイルスベクターによってGNMT遺伝子を導入された。* p<0.05、 ** p<0.01。(D-E) GNMT過剰発現は、AFB1-DNA付加体の形成を減少した。D、SCG2-negとSCG2-1-1細胞は、DNA抽出の結果を得る前にDMSOや示された濃度の AFB1で処理された。AFB1-DNA付加体は、競合 ELISA 法で測定された。白いバーと灰色のバーはそれぞれSCG2-negとSCG2-1-1を示す。データは、mean±SDを代表する。*, p<0.01; **, t-検定によるp<0.001。E、Ad-GFPとAd-GNMTを感染しているHepG2細胞は、この分析評価を実行するのに用いられました。白いバーは、Ad-GFPを感染しているHepG2細胞を示し;灰色のバーは、5 MOI Ad-GNMTを感染しているHepG2細胞を示し;黒色のバーは、50 MOI Ad-GNMTを感染しているHepG2細胞を示す。*一元配置(一要因の)分散分析による。
【図12】GNMT-TGと野生型のマウスにあるGNMTの発現プロフィールと酵素活動が説明されている。A、1、野生型の雄(開いているダイヤモンド);2、トランスジェニック雄(閉じたダイヤモンド); 3、野生型の雌(開いている正方形);そして4、トランスジェニック雌(閉じた正方形)におけるGNMTタンパク質濃度は、ウエスタンブロット分析(上部のパネル)と量的データ(下部のパネル)によって測定された。その結果により、生後5週間の間でトランスジェニック動物は野生型より多くのGNMTタンパク質を持つことが判明された。B、1、野生型の雄;2、トランスジェニック雄;3、野生型の雌;そして4、トランスジェニック雌はGNMTの酵素活動が比較された。
【図13】4つのグループの雄マウスの肝臓に、H&EとIHC染色が行われたことである。発ガン性物質処理を受けているマウスの肝臓のH&E染色による顕微鏡写真である。(A) AFB1. X 200で処理された野生型のマウス(B)AFB1. X 200で処理されたGNMTトランスジェニックマウス。パラフィン固定組織におけるGNMT発現の免疫組織化学分析である。(C) AFB1. X 200で処理された野生型。(D)AFB1. X 200で処理されたGNMTトランスジェニック。(E)非腫瘍組織(N)と腫瘍組織(T)からの細胞抽出物に対するウエスタンブロット分析。その結果として、3つのマウスグループで腫瘍組織のGNMT発現レベルは非腫瘍組織より低いことが判明された。
【図14】pPEPCKex-flGNMTプラスミドの構築が示されている。pPEPCKex(ベクター)とpSK-flGNMT(挿入)はNot IとXho Iで消化し結合することによって、pPEPCKex-flGNMTが生じた。B.トランスジェニックまたは野生型のマウスのいろいろな臓器におけるマウス内在性とヒトGNMT mRNAの発現は、ノーザンブロット解析法で測定されました。1)GNMTトランスジェニックマウスの腎臓RNA。2)GNMTトランスジェニックマウスの肝臓RNA。3)野生型のマウスの脳RNA。4)野生型のマウスの腎臓RNA。5)野生型のマウスの肝臓RNA。その結果は、GNMTトランスジェニックマウスは肝臓と腎臓でヒトGNMT遺伝子(導入遺伝子)が表現されることを示されている。
【符号の説明】
【0098】
10 TKベクター
11 ファージクローン 3−2
20 pNeoベクター
50 右アームのTKベクター
60 左アームのpNeoベクター
70 目標ベクター
80 目標ベクターの直線型
90 原内対立遺伝子
100 目標対立遺伝子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) SEQ ID Nos 1と2または
(ii) SEQ ID Nos 3と4であることを特徴とする一対のプライマー。
【請求項2】
表3−1と3−2にリストされる上流にある調節遺伝子および表3−1と3−2、そして表4とにリストされる下流にある調節遺伝子からなることを特徴とするGNMTノックアウトマウスの調節遺伝子データベース。
【請求項3】
(a)生存と増殖:PTEN、P13K、Akt1、GSK3βまたはβ-カテニン;
(b)ガン遺伝子:サイクリンD1、C−mycまたはC−ジュン;そして、
(c)腫瘍抑制遺伝子:Rbまたはp53。
からなることを特徴とする肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データベース。
【請求項4】
患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与することを特徴とするアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法。
【請求項5】
前記疾患は原発性肝細胞癌(HCC)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
処置または予防はAFB1−DNA付加体形成を妨害することによってなされることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
プラスミドは患者の体に直接施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成するアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防のできることを特徴とする合成物。
【請求項9】
GNMTが二量体形または四量体形であることを特徴とする請求項8に記載の合成物。
【請求項10】
主食作物の補助的な添加物であることを特徴とする請求項8に記載の合成物。
【請求項11】
米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなどの主食作物であることを特徴とする請求項10に記載の合成物。
【請求項1】
(i) SEQ ID Nos 1と2または
(ii) SEQ ID Nos 3と4であることを特徴とする一対のプライマー。
【請求項2】
表3−1と3−2にリストされる上流にある調節遺伝子および表3−1と3−2、そして表4とにリストされる下流にある調節遺伝子からなることを特徴とするGNMTノックアウトマウスの調節遺伝子データベース。
【請求項3】
(a)生存と増殖:PTEN、P13K、Akt1、GSK3βまたはβ-カテニン;
(b)ガン遺伝子:サイクリンD1、C−mycまたはC−ジュン;そして、
(c)腫瘍抑制遺伝子:Rbまたはp53。
からなることを特徴とする肝細胞ガンのシグナル伝達経路遺伝子データベース。
【請求項4】
患者に効果的な量のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)やGNMTを含むプラスミドを投与することを特徴とするアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防の方法。
【請求項5】
前記疾患は原発性肝細胞癌(HCC)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
処置または予防はAFB1−DNA付加体形成を妨害することによってなされることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
プラスミドは患者の体に直接施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
グリシン-N-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)と医学的に、あるいは食物許容できるキャリアー(pharmaceutically or food acceptable carrier)で構成するアフラトキシンB1(AFB1)に引き起こされる疾患に対する治療または予防のできることを特徴とする合成物。
【請求項9】
GNMTが二量体形または四量体形であることを特徴とする請求項8に記載の合成物。
【請求項10】
主食作物の補助的な添加物であることを特徴とする請求項8に記載の合成物。
【請求項11】
米やとうもろこし、キャッサバ、堅果類、ピーナッツ、チリ、スパイスなどの主食作物であることを特徴とする請求項10に記載の合成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−160805(P2011−160805A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58017(P2011−58017)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2008−69852(P2008−69852)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(507388074)国立陽明大学 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2008−69852(P2008−69852)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(507388074)国立陽明大学 (6)
【Fターム(参考)】
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