説明

グリセリン及び/又はグリセリン重合体のモノベンジル型エーテルの製造方法

【課題】ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとを、ZSM−5型ゼオライトの存在下で反応させることを特徴とする(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリン及び/又はグリセリン重合体(重合度2〜6)(以下まとめて、(ポリ)グリセリンと称する場合がある)のモノベンジル型エーテルの製造方法に関し、より詳細には、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エーテル合成法の1つとして、アルコールを原料とし、酸性触媒を用い、アルコール2分子から1分子の水を脱水縮合する方法が知られている。例えば、ジメチルエーテルのような対称エーテルは、硫酸等の酸性触媒存在下でメタノールを脱水縮合して製造することができる。
しかし、非対称エーテル体の合成においては、目的とする異種アルコール同士の反応以外に、同一アルコール同士のエーテル化も進行するため、目的物である非対称エーテルへの選択性が低下する課題がある。
この課題の解決策として、特定のアルコールと触媒の組み合わせにより、副反応である同一アルコール同士のエーテル化を抑制し、非対称エーテル化合物を得る方法が開示されている。例えば、特許文献1には、酸触媒の存在下、フェネチルアルコールを脂肪族第1級アルコールでエーテル化し、置換フェネタノールエーテルを製造する方法が開示されている。また、特許文献2では、ベンジル型アルコールと異種又は同一アルコールを用いたエーテル化反応で、有効量のゼオライト触媒を用いる検討がなされている。
【0003】
このような非対称エーテル化を行う場合に、一方のアルコールとしてグリセリンのような多価アルコールを使用する場合、多価アルコールはエーテル化反応部位である水酸基が2つ以上あるため、同一アルコールがエーテル化した副生物以外に、異種アルコール同士のエーテル化物からなる多くの反応生成物が生じ得る。例えば、グリセリンとベンジルアルコールのエーテル化を行った場合には、同一アルコール同士がエーテル化したものとしてジベンジルエーテル、ポリグリセリンが、グリセリンとベンジルアルコールが反応したものとしてグリセリンの2つの水酸基がエーテル化された1,3−ジベンジルグリセリルエーテル、1,2−ジベンジルグリセリルエーテル、3つの水酸基がエーテル化された1,2,3−トリベンジルグリセリルエーテルが、ポリグリセリンがベンジルエーテル化されたものとしてモノベンジルジグリセリルエーテルなど様々な反応生成物が生じる。
そのため、グリセリンのエーテル化物であるグリセリルエーテルを合成する場合、エピクロロヒドリン或いはグリシドールを原料としてグリシジルエーテルを合成し、環化する方法などが通常とられる。
【0004】
【特許文献1】特表平8−511799号公報
【特許文献2】特表2003−521436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ベンジル型アルコールと、多価アルコールである(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、ZSM−5型ゼオライトを触媒として作用させることにより、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、グリセリンを例にとった場合、ベンジル型アルコールとグリセリンとのエーテル化反応によりグリセリンのベンジル型エーテルを合成する場合、通常、モノエーテル体の他に、ジ体、トリ体、同一アルコール同士のエーテルなどの副生物を生じるが、本発明では、ZSM−5型ゼオライトを触媒として作用させることで、グリセリンモノベンジル型エーテルを選択的に合成することが可能となる。
【0007】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> ベンジル型アルコールとグリセリン及びグリセリン重合体(重合度2〜6)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、ZSM−5型ゼオライトの存在下で反応させることを特徴とするグリセリン及び/又はグリセリン重合体のモノベンジル型エーテルの製造方法である。
<2> ベンジル型アルコールが、下記一般式(1)で表される構造からなる前記<1>に記載のグリセリン及び/又はグリセリン重合体のモノベンジル型エーテルの製造方法である。
【化2】

ただし、前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ、水素原子、又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、Aはそれぞれ、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又はハロゲノ基からなる置換基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、nは置換基Aの数を示し、0〜3の整数を示す。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ベンジル型アルコールと、多価アルコールである(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
((ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法)
本発明の(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルの製造方法は、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとを、ZSM−5型ゼオライトの存在下で反応(エーテル化反応)させることを特徴とする。
【0010】
<ベンジル型アルコール>
前記ベンジル型アルコールは、芳香族環に直結した1個の水素原子が、以下の基:
【化3】

によって置換されている炭素環を意味し、中でも、下記一般式(I)で表される構造からなる化合物であることが好ましい。
【化4】

【0011】
前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ、水素原子、又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、前記炭化水素基における炭素鎖は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよい。前記R及びRが、水素原子、又は炭素数1〜8の炭化水素基であると、モノエーテル体の選択性が高まる点で、有利である。
前記一般式(1)中、Aはそれぞれ、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又はハロゲノ基からなる置換基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、前記アルキル基、アルコキシ基における炭素鎖は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよい。
前記一般式(1)中、nは置換基Aの数を示し、0〜3の整数を示す(無置換から3置換体までを示す)。中でも、反応性の点から、無置換又は1置換体が好ましい。一方、4置換以上であると、立体障害の点から反応性が劣る。
【0012】
前記ベンジル型アルコールの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(ポリ)グリセリンの使用量に対して、1.0〜1.5モル当量が好ましく、1.0〜1.2モル当量がより好ましい。前記ベンジル型アルコールの使用量が、前記(ポリ)グリセリンの使用量に対して、1.0モル当量より少ないと、未反応の原料が残存し、精製工程が多段階になることがあり、1.5モル当量より多いと、副生物が生成しモノエーテル体の選択性が低下することがある。
【0013】
<グリセリン>
前記グリセリンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合成グリセリンを用いてもよく、或いは植物燃料由来のものを用いてもよい。即ち、植物油である菜種油、大豆油、パーム油、ヒマワリ油などの植物油脂をエステル化してバイオディーゼル燃料を得る際に、副生物として得られるグリセリンであってもよい。前記のようにして得られるグリセリンは、原料、製造方法に由来して、グリセリン以外の成分を含む場合があるが、精製によって不純物を除去したものを使用してもよいし、不純物の純度によっては、そのまま使用しても問題はない。
前記グリセリンの使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ベンジル型アルコールとの使用量比が前記した範囲内となるように使用されることが好ましい。
<ポリグリセリン>
前記ポリグリセリンは、グリセリンが重縮合した構造を有し、一般的に式(2)の様に示されるが、この構造には限定されず、グリセリンが重縮合した構造を有する物であればよく、合成の過程で生成する化合物、例えば2級水酸基部位がエーテル化した化合物や環状物も含む。合成方法は特に規定されないが、例えば、グリセリンを塩基触媒存在下で縮合反応させる手法や、グリシドールを原料として重合する手法などが挙げられる。グリセリンの重合度nは2〜6であり、好ましくはn=2である。nが6より大きいと、反応性の低下が懸念される。
【化5】

【0014】
<ZSM−5型ゼオライト>
前記ZSM−5型ゼオライト(結晶性アルミノシリケートZSM−5)とは、モービルオイル社が開発した合成ゼオライトであり(米国特許第3,702,886号明細書)、本発明の実施に際して触媒として使用される。前記ZSM−5型ゼオライトは、結晶構造中に、酸素10員環の入口を有する三次元の細孔を有する特異なゼオライトである。本発明の実施に際して、前記ZSM−5型ゼオライト中のカチオンは、プロトン、NH4(アンモニウム)、Mg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、La、Ce等の希土類金属であることが好ましく、中でもアンモニウム型とプロトン型がより好ましい。
前記ZSM−5型ゼオライトにおける、結晶を構成するSiOとAlのモル比(シリカ/アルミナ比)は、モノエーテル体の選択性の点から、20〜300であることが好ましく、更にモノエーテル体の収率の点から、20〜100であることがより好ましい。前記シリカ/アルミナ比が、300より大きいと、疎水性が高くなりグリセリンと触媒の反応性が低下することがある。なお、前記シリカ/アルミナ比が20より小さいZSM−5型ゼオライトは、構造上、不安定であり合成困難である。
【0015】
前記ZSM−5型ゼオライトの使用量は、前記グリセリンの使用量に対して、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜6質量%であることがより好ましく、1〜6質量%であることが更に好ましい。前記ZSM−5型ゼオライトの使用量が、前記グリセリンの使用量に対して、0.001質量%より少ないと、反応性が低下し、反応完結に長時間を要することがあり、10質量%より多いと、基質の反応性が高くなり、モノエーテル体の選択性が低下することが懸念される。
【0016】
<エーテル化反応>
前記エーテル化反応は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記グリセリンに対して、所定量の前記ベンジル型アルコールと、前記ZSM−5型ゼオライト(触媒)を添加し、攪拌しながら反応させることにより行うことができる。なお、前記グリセリン、前記ベンジル型アルコール、前記ZSM−5型ゼオライトの添加順序に、特に制限はない。
反応温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、室温〜300℃で行われ、中でも100〜200℃で行われることが好ましい。反応温度が、300℃より高いと、副反応が進行しモノエーテル体の選択性が低下することが懸念され、室温より低いと、反応速度が低く効率的でない。
反応時間も、特に制限はなく、温度等の条件によって適宜選択することができるが、通常、30分〜20時間で行われ、中でも3〜10時間で行われることが好ましい。反応時間が、30分より短いと、反応が進行せず原料が大量に回収される恐れがあり、20時間より長いと、副反応が進行しモノエーテル体の選択性が低下することが懸念される。
更に、反応圧力や不活性ガスの条件に関しても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて、減圧下、或いは常圧または加圧下で窒素などのキャリアーガスを用いて反応を行うことができる。
【0017】
<グリセリンモノベンジル型エーテル>
前記したように、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、ZSM−5型ゼオライトを触媒として使用することにより、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる。なお、前記(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルは、(ポリ)グリセリンの複数の水酸基のうち1つの水酸基のみがベンジル型アルコールでエーテル化された化合物であり、本明細書中においては、前記(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを、「(ポリ)グリセリンモノエーテル体」、「モノエーテル体」等と称する場合がある。得られたグリセリンモノベンジル型エーテルは、例えば、界面活性剤や溶剤等に好適に利用可能である。
【実施例】
【0018】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
50mlのナス型フラスコに、グリセリン10.2g(0.11mol)、ベンジルアルコール12.4g(0.11mol)、及び、触媒としてZEOLYST社製 CBV3020E(ZSM−5型ゼオライト)0.5g(5質量%/グリセリン)を添加し、攪拌しながらオイルバスで150℃まで加熱した状態で7時間反応(エーテル化反応)させた。反応液をピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化したサンプルについて、ガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。GC分析条件、並びに、収率及び選択率の算出方法は以下の通りである。結果を表1に示す。
【0020】
−GC分析−
・測定装置:ヒューレットパッカード製HP−5890
・測定条件
カラム:HP Ultra2
オーブン温度:100℃→300℃(10℃/min)、10分保持
キャリヤーガス:He
注入口温度:320℃
検出器温度:320℃(FID)
スプリット比:50:1
注入量:1μL
【0021】
−収率・選択率−
収率、選択率は、前記GC分析の面積比を基準に、以下の式(1)、(2)により求めた。

YM=M/(G+M+P)×100 式(1)
SM=M/R×100 式(2)

式(1)、(2)中、YMは(ポリ)グリセリンモノエーテル体の収率(%)を、Mは(ポリ)グリセリンモノエーテル体の、Gは(ポリ)グリセリンの、Pは(ポリ)グリセリンに複数個のベンジル基を有する全てのエーテル体のそれぞれ反応液中のGC面積比を示す。また、SMは(ポリ)グリセリンモノエーテル体の選択率(%)を、Rは反応液中の全反応生成物のGC面積比合計値を示す。ここで、「全反応生成物」は、反応終了後に反応液中に含まれる(ポリ)グリセリンとベンジル型アルコール以外の全ての生成物を示す。なお、1%未満のGC面積比のものは切り捨てて、N.D.とした。
【0022】
(実施例2)
触媒として、ZEOLYST社製 CBV3024E(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
(実施例3)
触媒として、ZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
(実施例4)
触媒として、ZEOLYST社製 CBV8014(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
(実施例5)
触媒として、ZEOLYST社製 CBV28014(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
(実施例6)
ベンジルアルコールを4−イソプロピルベンジルアルコール(15.7g、0.11mol:東京化成工業(株);I0272)に代え、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノイソプロピルベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
(実施例7)
ベンジルアルコールを4−メトキシベンジルアルコール(15.2g、0.11mol:東京化成工業(株);M0107)に代え、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノメトキシベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
(実施例8)
ベンジルアルコールを4−メチルベンジルアルコール(13.4g、0.11mol:東京化成工業(株);M0162)に代え、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノメチルベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0029】
(実施例9)
ベンジルアルコールを4−クロロベンジルアルコール(15.7g、0.11mol:東京化成工業(株);C0565)に代え、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノクロロベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
(実施例10)
ベンジルアルコールを4−ヒドロキシベンジルアルコール(13.7g、0.11mol:東京化成工業(株);H0224)に代え、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)を用い、反応温度を150℃から100℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノヒドロキシベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例11)
50mlのナス型フラスコに、ジグリセリン14.7g(0.09mol)、ベンジルアルコール10.0g(0.09mol)、及び、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)0.5g(3質量%/ジグリセリン)を添加し、攪拌しながらオイルバスで180℃まで加熱した状態で9時間反応(エーテル化反応)させた。反応液をピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化したサンプルについて、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施し、目的とするジグリセリンモノベンジルエーテル(ジグリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。GC分析条件、並びに、収率及び選択率の算出方法は実施例1記載の通りである。結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1)
触媒として、フェリオライト触媒(ZEOLYST社製 CP914)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
(比較例2)
触媒として、βゼオライト触媒(ZEOLYST社製 CP811E−75)(SiO/Al=24)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
(比較例3)
触媒として、βゼオライト触媒(ZEOLYST社製 CP811E−75)(SiO/Al=75)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
(比較例4)
触媒として、12−タングスト(IV)リン酸n水和物(関東化学(株) 32200−20)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0036】
(比較例5)
触媒として、ナフィオンNR50(ALDRICH 309389−25G)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
(比較例6)
触媒として、硫酸化ジルコニア(和光純薬工業(株) 269−01471)を用いた以外は、実施例1と同様にしてエーテル化反応を行った。得られた反応液について実施例1と同様にしてGC分析を実施し、目的とするグリセリンモノベンジルエーテル(グリセリンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
(比較例7)
50mlのナス型フラスコに、トリメチロールプロパン12.0g(0.09mol)、ベンジルアルコール10.1g(0.09mol)、及び、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)0.5g(4質量%/トリメチロールプロパン)を添加し、攪拌しながらオイルバスで180℃まで加熱した状態で9時間反応(エーテル化反応)させた。反応液をピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化したサンプルについて、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施し、目的とするトリメチロールプロパンモノベンジルエーテル(トリメチロールプロパンモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。GC分析条件、並びに、収率及び選択率の算出方法は実施例1記載の通りである。結果を表2に示す。
【0039】
(比較例8)
50mlのナス型フラスコに、ネオペンチルグリコール9.27g(0.09mol)、ベンジルアルコール10.1g(0.09mol)、及び、触媒としてZEOLYST社製 CBV5524G(ZSM−5型ゼオライト)0.5g(5質量%/ネオペンチルグリコール)を添加し、攪拌しながらオイルバスで180℃まで加熱した状態で9時間反応(エーテル化反応)させた。反応液をピリジンと無水酢酸を用いてアセチル化したサンプルについて、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィー(GC)分析を実施し、目的とするネオペンチルグリコールモノベンジルエーテル(ネオペンチルグリコールモノエーテル体)の収率及び選択率を測定した。GC分析条件、並びに、収率及び選択率の算出方法は実施例1記載の通りである。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1〜2の結果から、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、ZSM−5型ゼオライト(実施例1〜10)を触媒として作用させることにより、他の触媒(比較例1〜8)を作用させた場合に比べて、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテル((ポリ)グリセリンモノエーテル体)を得ることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法によれば、ベンジル型アルコールと(ポリ)グリセリンとのエーテル化反応において、高い収率及び選択率で(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルを得ることができる。得られた(ポリ)グリセリンモノベンジル型エーテルは、例えば、界面活性剤、溶剤等に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジル型アルコールとグリセリン及びグリセリン重合体(重合度2〜6)からなる群から選ばれる少なくとも1種とを、ZSM−5型ゼオライトの存在下で反応させることを特徴とするグリセリン及び/又はグリセリン重合体のモノベンジル型エーテルの製造方法。
【請求項2】
ベンジル型アルコールが、下記一般式(1)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項1に記載のグリセリン及び/又はグリセリン重合体のモノベンジル型エーテルの製造方法。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ、水素原子、又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、Aはそれぞれ、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、又はハロゲノ基からなる置換基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、nは置換基Aの数を示し、0〜3の整数を示す。

【公開番号】特開2010−64991(P2010−64991A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233894(P2008−233894)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】