説明

グリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィンを含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または掻痒症の治療のための医薬組成物

本発明は、グリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィンを有効成分として含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療のための局所的使用のための、医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、尿毒症性乾燥症および尿毒症性掻痒症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
維持腎透析(MRD)を受けている患者は、様々な皮膚科学的合併症を呈する。これらの合併症の中では、乾燥症(ざらざらした鮫肌(rough and scaly skin)、尿毒症性乾燥症とも呼ばれる)および掻痒症(尿毒症性掻痒症とも呼ばれる)が最もありふれた症状である。慢性腎不全の患者では、これらの非特異的症状の両方が、透析が必要となる前に観察されるが、患者が血液透析または腹膜透析のいずれかのMRDを開始すると有意に増大する。これらは古典的には急性腎不全では存在せず、尿素の血漿レベルとは相関しない。さらには、これらは典型的には腎移植後に消失する。尿毒症性乾燥症は、他の乾燥症状態(通常の乾燥症、アトピー性乾燥症など)とは、その臨床徴候、病因および治療管理により、明確に一線を画す。
【0003】
尿毒素性乾燥症は、MRDを受けている患者でとてもありふれた病訴である。文献によれば、それは50%〜80%の患者を冒すが、MRD開始前や腎移植後では30%〜40%の患者がこの症状を報告する。年齢は悪化因子である。それは、ときどき全身を冒し、通常は、いくつかの領域(足、前腕、手、背)でより深刻である。膨大なシリーズでは、乾燥症の強度は、MRD患者の30%〜40%で穏和であり、35%〜50%で中程度であり、15%〜30%で深刻であるとして記載されている。これは、慢性の症候群であり、乾燥した皮膚の外観、皮膚の著しい剥離および荒れ、並びに貧弱な皮膚の緊張性(すなわち、一度皮膚が上方に引っ張られると、迅速に通常の外形を取ることができない)を含む病像を伴う。深刻な事例では、手のひらおよび足の裏の大きな鱗屑および亀裂並びに角質溶解性のくぼみまたは角皮症を伴う魚鱗癬様の損傷が見られることがあり、状態の異常角化の要素の特色をなす。気候や環境因子(風、寒さ、低湿度)の負の影響が頻繁に報告される。関連する徴候は、早熟な皮膚老化(弾力線維症)、低減した発汗および掻痒症(尿毒症性掻痒症とも呼ばれる)である。
【0004】
尿毒症性乾燥症は、尿毒症性掻痒症に寄与する重要な因子であると考えられている。乾燥症同様に、掻痒症の頻度は、MRD患者において大きく増加し、35%〜65%であるが、他方、それはMRDを受けていない慢性腎不全の患者の約30%で観察される。尿毒症性掻痒症の頻度は、乾燥症を伴う患者で、伴わない患者よりも高い。公表された膨大なシリーズに基づくと、中程度から深刻な強度の乾燥症は、尿毒症性掻痒症を50%〜100%増加させる。同様に、尿毒症性掻痒症の深刻度は、乾燥症の深刻度に直接関連するように見える:乾燥症が強まるほど、掻痒症の強度が増大する。
【0005】
反対に、それは、より透過性の高い膜(ヘモファン(hemophane)またはクプロファン(cuprophane))で透析される患者よりも掻痒症の発症率が高い、透過性のより低い透析膜(ポリスルホン(polysulphone))を用いる血液透析患者を除いて、患者の年齢、性別、基礎をなす腎疾患または血液透析に用いられる透析物の種類(アセテートベースまたはバイカーボネートベース)などの因子には大きな影響を受けない。尿毒症性乾燥症と同様に、尿毒症性掻痒症は、時折、血液透析の期間中または直後の悪化の期間を伴う、慢性症状である。それは、広がりうるし、局所に制限されうる。特に、乾燥症を伴うと、掻痒症は活発な引掻き行動を引き起こし、広範な爪痕、苔癬化、結節性痒疹(多発性茶結節(multiple brown nodules))および、時折、皮下重複感染(二次性膿痂疹)を生み出しうる。やっかいな睡眠および日常活動の障害が共通している。尿毒症性掻痒症の病態生理学は理解されておらず、多因子的に見える。可能性のある因子の中で、尿毒症性乾燥症が主要因子であると考えられてきた。
【0006】
MRD患者における尿毒症性乾燥症の原因ははっきりしていない。多因子が、皮膚の脱水、低減した皮脂および汗排泄を含む、MRD患者の荒れた鱗状の皮膚の外観に対して寄与しうる。他の可能な説明は、ビタミンAの代謝の変化であり、尿毒症患者で濃度が上昇する。ビタミンA過剰症候群の乾燥症の皮膚は、MRDを受ける乾燥症患者の皮膚損傷に似ている。皮膚の表面脂質レベルの低下を引き起こす脂腺の萎縮も、尿毒症性乾燥症の病因に関係しうる。他の可能性のある因子としては、ヒスタミンを放出する皮膚のマスト細胞数の増加による、甲状腺の活動低下および皮膚炎症が挙げられる。
【0007】
MRD患者における尿毒症性乾燥症の治療のための主要な手段は、依然として局所的な皮膚軟化薬の大量な使用である。その効能の証明はなされていないが、セラピストらにより広く受け入れられている。保湿性皮膚軟化薬は、主に再水和効果または閉塞特性を有し、継続して定期的に、すなわち、少なくとも1日に2度、用いたときに最大の効果が得られる。しかし、尿毒症性乾燥症の患者は、特に深刻な事例では、従来の皮膚軟化薬に対しては抵抗性であり、特に、局所的な製品並びに石けんおよび界面活性剤に対する刺激性を発達させる傾向があることが知られている。
【0008】
尿毒症性乾燥症患者の主な問題の一つは、入手可能な保湿性皮膚軟化薬では、病変に対して得られる結果が乏しいことである。このことは、より深刻な事例で特に当てはまる。従来の保湿性皮膚軟化薬療法に対する病変の乏しい応答を説明するために、いくつかの仮説:
)繰り返されるMRDの期間中に生じる絶え間ない皮膚の脱水過程;2)持続性バリアの機能不全を生じ、閉塞性の強力な治療を要求する状態の異常角化の要素;が提案されている。同様に、皮膚軟化薬療法は、尿毒症性掻痒症に、部分的ではあるが、かなりの有益な効果を有し、1日2回の塗布だけで患者の33〜43%で掻痒症の著しい緩和が見られる2,3。結果として、尿毒症性乾燥症における医薬製品として皮膚軟化剤製品は開発されておらず、患者は、化粧品市場で入手可能な数々の皮膚軟化剤製品を彼ら自身で試すことを余儀なくされる。膨大な種類の皮膚軟化剤の使用は、標準的な皮膚軟化薬に含有される張力活性剤およびその他の刺激物に対する彼らの非許容性を悪化させる
【0009】
現在入手可能な皮膚軟化薬製品のさらなる問題は、それらが際限ない数の、香気物質や張力活性剤などの不活性成分を高濃度に含むことである。過剰な数の成分および過剰な用量へのこの暴露は、健常者に対するよりも、MRD患者が局所的な非許容性を発達させるリスクが高い可能性がある。
【0010】
また、皮膚軟化薬製品に基づく治療の問題は、皮膚軟化薬のコストである。このことは、MRDを受ける患者の乏しい服薬遵守の一因である可能性がある。皮膚軟化薬の効能の条件としては、乾燥症領域、すなわち、体表の大きな領域への製品の毎日の大量かつ繰り返しの塗布が挙げられる。治療は長期的である。入手可能な製品は、欧州共同体を含む大多数の国の化粧品の規制のもとで登録されている。それらのいずれも提案された表示で承認されておらず、少数のそれらが他の表示で倫理的な製品として市販されてきた。それにも関わらず、MRD患者はこれらの製品に対する医療上のニーズを有しており、それらは化粧品市場を通さずに彼らに提供されることがない。結果として、製品は最大限のコストでのみ患者に入手可能である。塗布される物質は、不完全な被覆を避けるために、大量、約1mg/cmであるべきで、通常の服薬遵守の患者では製品の大量消費の結果となる。例えば、これは、完全な被覆(全体表領域(BSA):1.70m、表面塗布:50%BSA、2mg/cmの塗布、2塗布/日、製品密度〜1000)のために、成人患者において約250mL/週の消費を要求するであろう。欧州化粧品市場での皮膚軟化薬の概算コストが製品100mLで約10ユーロと仮定すると、費用は成人一人当り月100ユーロに及ぶと見積ることができる。製品の実質的な医療給付無しでは、皮膚軟化薬の事実上のコストは、提案された表示により影響される患者によるその最適な使用を変動させてしまう可能性が非常に高いことは明らかである。
【0011】
従って、標準化された尿毒症性乾燥症および掻痒症において良好な臨床的な効能並びに標的集団においてよりよい服薬遵守およびよりよい許容性を示し、かつ医薬製品として承認された皮膚軟化薬治療法には、重要なニーズがある。
【0012】
この目的のために、本発明者らは、グリセロールおよびパラフィンベースの皮膚軟化薬が下記のように尿毒症性乾燥症患者において潜在的に有効かつ安全であるための必須の特性を明らかにすることを示してきた:1)グリセロールを活性用量(15%)で用いると迅速な水分補給効果を発揮すること;2)ワセリン形態および流動形態の両方を組み合わせたパラフィンを用いると刺激物に対するバリア機能を保持すること;および3)グリセロールとパラフィンの協調的作用によって異角化症および皮膚バリア修復の正常化が促進されること。
【0013】
第二に、本発明者らは、尿毒症性乾燥症に対してグリセロールおよびパラフィンベースの皮膚軟化薬の治療上の効能を示す、ランダム化され、かつプラシボ対照をおいた2回の二重盲目試験を実施した。2回の調査により、好適な水中油型(o/w)エマルジョンにおける二つの活性物質の組み合わせの良好な効能および優れた安全性が確認された。加えて、それにより、尿毒症性掻痒症の軽減に対する予測しなかった良好な結果、すなわち、掻痒症の約75%の減少が示された。ある試験では、他の保湿性皮膚軟化薬が通常1日2回用いられるのに対して、その製品は1日1回の塗布で尿毒症性乾燥症および掻痒症の緩和の病変の軽減が達成されることがさらに示された。
【0014】
MRDを受けている患者は、有利なことに、本発明による尿毒症性乾燥症の治療に関連している。
【0015】
従って、本発明の第一の対象は、グリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィンを有効成分として含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療のための局所的使用のための医薬組成物に関する。
【0016】
副作用を低減するために、有利には、前記局所的使用は、1日1回の用量計画、好ましくは少なくとも2週間、好ましくは4週間にわたる1日1回の用量計画を有する。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物は、皮膚科学的組成物である。
【0018】
好ましくは、本発明の組成物は、15種、好ましくは10種未満の成分を含んでなる。
【0019】
維持腎透析(MRD)を受けている患者は、有利なことに、本発明による尿毒症性乾燥症の治療に関連している。
【0020】
本発明の意味では、「活性な組合せ」(active association)とはグリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィンの組合せを意味する。
【0021】
有利には、白色ワセリンおよび流動パラフィンは、それぞれ、「欧州薬局方」第6版のモノグラフNo.0496、モノグラフNo.1799およびモノグラフNo.0239に従って制御される。
【0022】
有利には、活性の白色ワセリンは、35〜70℃、好ましくは51〜57℃、より好ましくは約54℃の滴点を有する。滴点は、「欧州薬局方」第6版に記載の工程2.2.17に従って測定される。
【0023】
有利には、活性な組合せの白色ワセリンは、175〜195 1/10mm、好ましくは約185 1/10mm(25℃での円錐貫入)の稠度を有する。
【0024】
有利には、活性な組合せの白色ワセリンは、100℃で4〜5cSt、好ましくは100℃で4.8cStの粘度を有する。
【0025】
活性な組合せは、本発明による組成物中に、組成物の全重量に対して10〜50重量/重量%、好ましくは20〜30重量/重量%の割合で存在し;グリセロールの濃度は、組成物の全重量に対して5〜30重量/重量%、好ましくは10〜20重量/重量%、より好ましくは約15重量/重量%であり、白色ワセリンの濃度は、組成物の全重量に対して3〜20重量/重量%、好ましくは5〜10重量/重量%、より好ましくは約8重量/重量%であり、流動パラフィンの濃度は、組成物の全重量に対して0.5〜5重量/重量%、好ましくは1〜3重量/重量%、より好ましくは約2重量/重量%である。
【0026】
水は、組成物の全重量に対して30〜80重量/重量%である。
【0027】
有利には、本発明による組成物は、約15重量/重量%のグリセロール、約8重量/重量%の白色ワセリンおよび約2重量/重量%の流動パラフィンを含んでなる。
【0028】
本発明による皮膚科学的組成物は、通常の皮膚科学的に許容される賦形剤をさらに含んでなる。
【0029】
好ましくは、本発明による皮膚科学的組成物は、油中水型(W/O)若しくは水中油型(O/W)エマルジョン、水中油中水型(W/O/W)若しくは油中水中油型(O/W/O)エマルジョン、水分散液(hydrodispertion)若しくは油分散液(lipodispersion)、またはゲル若しくはエアゾールであり、より好ましくは、油中水型(W/O)若しくは水中油型(O/W)エマルジョンであり、最も好ましくは、水中油型(O/W)エマルジョンである。
【0030】
実際、製剤の種類(純粋な物質、溶液およびエマルジョン)およびエマルジョンの種類(W/OまたはO/Wエマルジョン)が、活性な組合せの活性に関与する。
【0031】
純粋な物質として用いられると、粉末形態で塗られた場合には白色ワセリンは閉塞活性を有さないが、油相(液体状)で塗られると、高い閉塞効果を有する。このことは、皮膚表面に均一に塗られれば、パラフィンが閉塞特性を示すことを示す。白色ワセリンを均一に塗るために、例えばエマルジョンで製剤される液状の白色ワセリンが要求される。エマルジョン中のパラフィンは溶液のパラフィンよりも、より閉塞性である
【0032】
エマルジョンそれ自体の水分補給効果および閉塞効果は、それらの種類(w/oまたはo/w)によって異なる。白色ワセリンのw/o製剤は高い用量(46.75%)であっても、角質層(SC)の水分量の著しい増加を引き起こすことができるが、経表皮水分喪失(TEWL)低減による皮膚バリア機能には限られた効果を有するか、またはなにも著しい効果は有さない。同様に、o/wエマルジョンは単独で、皮膚の水分補給に対して限られた効果を示すか、またはそれどころかSCバリア機能に対して有害な効果を示す。流動パラフィンを伴うと、o/wエマルジョンはw/oエマルジョンよりも早く水分を喪失し、w/oエマルジョンよりも早期の、しかし穏和な閉塞性を示し始める。対照的に、o/w製剤におけるパラフィンへのグリセロールの添加は、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)誘発皮膚脱水を防ぐことができる。同じSLSモデルを用いて、Grunewaldらは、同じo/w製剤および他のw/oの市販の製剤中の尿素と比較して、皮膚脱水の予防に関して、o/wエマルジョンとグリセロールの同様の協調的な効果を示した。o/wエマルジョン中のグリセロールは、水分補給などの作用の単純な物理化学的メカニズムというよりはむしろ、破壊されたSCの長期の再生工程を通して働く9,10,11
【0033】
結論として、一方では、グリセロールを欠いたo/wエマルジョンは、SCの水分に対する限られた、または一時的な効果を有し、皮膚バリアに可能な有害な効果を有する一方で、w/oエマルジョンはより良好な水分補給特性を発揮するが、限られたバリア効果しか発揮しない。他方、o/wエマルジョンはグリセロールの水分補給効果および再生効果を促進するが、w/oエマルジョンは単に皮膚の水分補給を誘発する保護膜として働く。
【0034】
好ましくは、エマルジョン形態の本発明による組成物中に存在するパラフィン小滴の90%が30μm、より好ましくは25μm未満のサイズを有する。
【0035】
実際、エマルジョン中の白色ワセリンの閉塞特性も、製剤を構成する小滴のサイズにより異なる。パラフィン粒子が小さくなると、白色ワセリンは閉塞性を増し、30μm未満の小滴サイズで活性の最適な閾値に達する。内部立体顕微鏡調査によれば、実施例1の組成物A中に分散するパラフィン小滴の90%以上が25μm未満のサイズを有する。このことは、提案された製剤中のパラフィン分散液がこの活性化合物の最適な生物学的利用性を提供することを示している。
【0036】
クリーム、ローション、ゲル、軟膏、エマルジョン、マイクロエマルジョン、スプレーなどの形態の局所的塗布のための組成物を得るためには、皮膚科学的に許容される賦形剤は、当業者に周知の賦形剤のいずれの賦形剤であってもよい。
【0037】
本発明による組成物は、特に、適切な乳化剤、稠度付与剤、ゲル化剤、保湿剤、展着剤、安定化剤、着色剤、香料および保存剤などの添加剤を含んでなることができる。
【0038】
適切な乳化剤としては、ステアリン酸、トロラミン、ラノリンアルコール類(例えば、Amerchol L101、すなわち、鉱物油90%とラノリンアルコール類10%との混合物)が挙げられる。
【0039】
好ましくは、適切な乳化剤は、SCに対して破壊的効果を有さず、従って、バリア機能を変化させない。当業者であれば、その一般的知識に基づいて適切な乳化剤を選択するであろう。例えば、ステアリン酸は、5%の濃度では、ヒトの正常な皮膚およびSLSで改変した皮膚に対して変化を誘発しないことが示されている12
【0040】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して約5重量/重量%の乳化剤を含んでなる。
【0041】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して1〜5重量/重量%、好ましくは約3重量/重量%のステアリン酸を含んでなる。
【0042】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0〜2重量/重量%、好ましくは約0.5重量/重量%のトロラミンを含んでなる。
【0043】
適切な稠度付与剤としては、グリセロールモノステアレートおよびPEGを挙げることができる。
【0044】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して約5重量/重量%の稠度付与剤を含んでなる。
【0045】
有利には、本発明による組成物は、組成物の全重量に対して2〜10重量/重量%、好ましくは約5重量/重量%のグリセロールモノステアレートを含んでなる。
【0046】
適切な保存剤としては、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピルおよびクロロクレゾールを挙げることができる。
【0047】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して約0.1重量/重量%の保存剤を含んでなる。
【0048】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0〜1重量/重量%、好ましくは約0.09重量/重量%のパラヒドロキシ安息香酸メチルを含んでなる。
【0049】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0.05〜1重量/重量%、好ましくは約0.1重量/重量%のパラヒドロキシ安息香酸プロピルを含んでなる。
【0050】
適切な展着剤としては、ジメチコーンおよびポリジメチルシクロシロキサンを挙げることができる。
【0051】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して約2重量/重量%の展着剤を含んでなる。
【0052】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して0.2〜2重量/重量%、好ましくは約0.5重量/重量%のジメチコーンを含んでなる。
【0053】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して1〜3重量/重量%、好ましくは約2.5重量/重量%のポリジメチルシクロシロキサンを含んでなる。
【0054】
適切な保湿剤としては、ポリエチレングリコール、好ましくはポリエチレングリコール600を挙げることができる。
【0055】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して約8重量/重量%の保湿剤を含んでなる。
【0056】
有利には、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して2〜10重量/重量%、好ましくは約5重量/重量%のポリエチレングリコールを含んでなる。
【0057】
エマルジョンの水相に用いられる水は、蒸留水または皮膚−化粧用特性を有する温泉水とすることができる。
【0058】
有利には、本発明の組成物は以下:
− 約15%のグリセロール
− 約8%の白色ワセリン
− 約2%の流動パラフィン
− 約1〜5%のステアリン酸
− 約2〜10%のグリセロールモノステアレート
− 約1〜3%のポリジメチルシクロシロキサン
− 約0.2〜2%のジメチコーン
− 約2〜10%のポリエチレングリコール600
− 約0〜2%のトロラミン
− 約0.05〜1%のパラヒドロキシ安息香酸プロピル
− 水 q.s.
を含んでなる。
【0059】
本発明の第二の対象は、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療のための薬剤の調製のための本発明による組成物の使用に関する。
【0060】
本発明の第三の対象は、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療のための薬剤の調製のための、グリセロール、流動パラフィンおよびワセリンの組合せを有効成分として含んでなる組成物の使用に関する。
【0061】
本発明の第四の対象は、本発明による組成物のその必要のある患者への皮膚塗布、好ましくは1日1回、を含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療方法に関する。
【0062】
本発明の第五の対象は、グリセロール、流動パラフィンおよびワセリンの組み合わせを含んでなる組成物を、それを必要とする患者に皮膚塗布すること、好ましくは1日1回、を含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療方法に関する。
【0063】
好ましくは、前記治療方法は、少なくとも2週間、好ましくは4週間の継続期間を有する。
【0064】
本発明はさらに、下記の図および実施例に照らして例示される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、稠度計測−実施例2の基準線値に対する進展の平均%を示す図である。
【図2】図2は、TEWL−実施例2の基準線値に対する進展の平均%を示す図である。
【図3】図3は、56日間にわたり1日2回、組成物Aを塗布した実施例3の調査集団における、尿毒症性乾燥症の経時的な深刻度スコアを示す図である。p<0.001(群内分析)
【図4】図4は、実施例3の調査集団における、56日間にわたる1日2回、組成物Aを塗布する治療のもとでの、尿毒症性掻痒症の経時的な深刻度スコアを示す図である。p<0.0001(群内分析)
【図5】図5は、実施例4の調査集団における、133日間にわたる1日1回の組成物B(133日目まで)およびビヒクル(ほんの28日目まで)の塗布による治療のもとでの、尿毒症性乾燥症の経時的な深刻度スコアを示す図である。p<0.05、**p<0.005(群間分析)
【実施例】
【0066】
実施例1:配合組成
組成物A
− 15gのグリセロール
− 8gの白色ワセリン
− 2gの流動パラフィン
− 賦形剤として、ステアリン酸、グリセロールモノステアレート、ポリジメチルシクロシロキサン、ポリエチレングリコール(PEG)600、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、ジメチコーン、トロラミン、Amerchol L101(商標)
− 100gの水 q.s.
組成物B
− 15gのグリセロール
− 8gの白色ワセリン
− 2gの流動パラフィン
− 賦形剤として、ステアリン酸、グリセロールモノステアレート、ポリジメチルシクロシロキサン、ポリエチレングリコール(PEG)600、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、ジメチコーン、トロラミン、
− 100gの水 q.s.
【0067】
実施例2:皮膚水分補給およびバリア機能の修復に対する、実施例1の配合組成における有効成分グリセロールおよびパラフィンの別々のおよび組み合わさった寄与の調査
穏和な深刻度から中程度の深刻度(Kligmanスコア:2または3)の一般的な乾燥症を伴う計55人の健常ボランティア(年齢幅:18〜40歳)が、比較の、ランダム化された二重盲検試験に登録された。グリセロール単独(15%)、パラフィン単独(10%)、それらの組み合わせ(組成物A)およびそれらのビヒクルが、単一の皮膚塗布として、薄層(1フィンガーティップユニット(finger tip unit)、すなわち、製品約1grに相当)で、個々の個体において彼らの前腕のランダムに割り当てた部位(前腕に2回の試験治療)に試験された。試験部位のランダム化は、ラテン方陣法を用いて行った。皮膚水分含量は、試験治療塗布後12時間まで(基準線、1時間、2時間、4時間、8時間、10時間および12時間)、CM825装置(Courage−Khazaka社製)を用いたコルネオメトリー(corneometry)により測定し、皮膚バリア機能は、エバポリメトリー(evaporimetry)を用いたTEWLにより評価した。機械的測定は、制御された環境条件(温度:22±2℃;相対湿度:50±10%)で行われた。試験製品の局所的許容性は、試験の最後(12時間)に皮膚科医により評価された。所期の分析計画は、クロスオーバー型の分散分析(analysis of variance in cross−over)である。
【0068】
55人のランダム化した対象のうち、4対象が主要なプロトコル違反により統計解析に含まれなかった。従って、効能を試験した集団は51人のボランティアで構成された(試験されたすべての患者またはAPT集団)。ランダム化コードを開いた後に、技術的な問題に関連すると考えられる異常なTEWL値を有する2人のボランティアが見つかった。代わりに、治療間の差異を、繰り返し測定を伴う分散分析(ANOVA)により測定し、下記の2回の多重対比較試験により補正した:ボンフェローニ(Bonferroni)試験およびダネット(Dunnett)試験。完了のために、両方のAPT集団(49人のボランティアの限定APT集団、51人のボランティアの完全APT集団)における結果を下記に示す。
【0069】
限定APT集団における皮膚水分含量の結果を図1で説明する。基準線値を比較したところ、双方の集団(限定APT、完全APT)の治療群間には差異は認められなかった。限定APT集団分析において、ビヒクル単独での治療は、1時間後に約40%のSC水分補給の増加を生じ、12時間まで次第に減少した。パラフィンはビヒクルと比較して穏和な水分補給効果を示したが、有意(p<0.03)であった。逆に、グリセロールは、基準線と比較して65%の水分含量の劇的な増加を誘発し、この増加は全観察期間(12時間)にわたり維持された。グリセロール治療群とビヒクル群間の差異は、統計的な差(p<0.0001、ボンフェローニ試験)であった。同様に、グリセロールとパラフィンの組合せは、グリセロール単独と同等の高い皮膚水分補給を生じた(ビヒクルと比較してp<0.0001、ボンフェローニ試験;ダネット試験により確認された:p=0.0001)。完全APT集団分析では、ビヒクルと比較して優位な水分補給効果を示さなかったパラフィンを除き、結果と統計データは限定APT集団分析で得られたものと同様であった。従って、組成物Aの水分補給能力は、主にグリセロールに起因した。
【0070】
限定ATP集団におけるTEWLの結果を図2で説明する。治療群間のTEWL値は、APT集団の双方で、基準線で同様であった。限定APT集団分析では、ビヒクル単独で8時間までのTEWLの減少が誘発され、1時間後に最大値(15%の減少)であった。グリセロール単独では、ビヒクルと比較してTEWLを有意には変化させなかった。パラフィン単独では、ビヒクルよりもTEWL減少に対して若干ではあるが有意に効果的であった(p<0.02、ボンフェローニ試験)。グリセロールとパラフィンとの組み合わせのみ、ビヒクルと比較して、TEWLのより大きく(1時間後に基準線から約20%の減少)、かつ、より持続する(10時間まで)減少を生じた(p<0.002、ボンフェローニ試験;ダネット試験により確認された:p=0.0009)。完全APT分析では、ビヒクルと比較して優位な効果を示さなかったパラフィン単独を除き、結果と統計データは限定APT集団と同等であった。
【0071】
結果として、組成物Aの閉塞能力は、大部分はグリセロールとパラフィンとの組み合わせにより発揮されているのであって、各活性化合物単独では効果が無い(グリセロール)か、わずかな効果(パラフィン)しか与えられなかった。従って、グリセロールのパラフィンへの添加はパラフィンの閉塞効果を増強させる。
【0072】
提案された医薬製品は顕著な水分補給効果と閉塞効果の両方を有していることが結論された。
【0073】
グリセロール単独は、保湿効果を示すもののTEWLに対しては作用を示さず、パラフィン単独は、TEWLに対してはわずかな効果を示すものの皮膚水分補給に対しては効果を示さなかった。
【0074】
2つの化合物の組み合わせのみが、水分補給効果および閉塞効果の両方を最善の状態で発揮し、このことはグリセロールとパラフィン間の協調的作用を示す。
【0075】
実施例3:第一の臨床研究
研究集団
100人の患者(100)が下記の組み入れ基準に従って4つの参加センター(25/センター)に登録された。研究集団は、末期腎臓疾患(ESRD)のためにMRD(血液透析または腹膜透析)を受けている少なくとも10歳の、男女の患者を含むことが予定された。これらの患者は、彼らのESRD状態に関連した尿毒症性乾燥症を呈していた。尿毒症性乾燥症は、中程度から深刻、すなわち、2〜4の深刻度スコアを伴うものであり、同等の深刻度の下腿の2つの対称な領域に広がっていた。尿毒症性乾燥症は尿毒症性掻痒症を伴い、または伴わなかった。
【0076】
試験成分の一つに既知のアレルギーを有する患者、および研究の良好な管理に干渉し得る併発性の健康状態を有する患者は、除外された。研究開始前7日以内にいかなる保湿または皮膚軟化局所用製剤で治療された患者、研究開始前4週以内に抗掻痒症薬(例えば、抗ヒスタミン剤、コレスチラミン、オピオイド阻害剤、木炭)の不安定な投与計画で治療された患者、および研究開始前8週以内に光線療法で治療された患者もまた、除外された。
【0077】
最終的には小児患者は含まれず、参加センターは成人のみの紹介センターであった。地域の倫理委員会のリクエストに応じて、一つのセンター(フランス)では子供が登録集団から除外された。
【0078】
一人のランダム化された患者が基準線(1日目)の翌日に彼の承諾を二次的に取り下げ、試験製品を塗布されることは無かった。従って、この患者は分析から除外され、少なくとも1回の試験製品の塗布を受けた99人のランダム化された患者(年齢の中央値が65歳の53人の男性、46人の女性)がintent−to−treatの集団に含められた。
【0079】
ITT研究集団の人口統計学的特色(年齢および性別)は表1に示されている。
【表1】

【0080】
表1は、実施例3の研究集団の基準線時の皮膚科学的特色および健康状態を示す表である。
【0081】
研究デザイン
研究は、多施設共同的であり、続く2つのフェーズに編成された。フェーズI(基準線〜7日目)は、試験製品(組成物A、活性製品)をそのビヒクルに対して個人内(左下腿と右下腿の比較)で評価する比較期間であった。試験製品のビヒクルは、有効成分の組成物Aに欠いた賦形剤製剤であり、比較の水分補給対照として役立った。それは、色および外観を組成物Aに合わせた。このフェーズは、ランダム化し、かつ二重盲検法とした。フェーズII(7日目〜56日目)は、試験製品(組成物A)を単独で評価する、比較のない、非盲検の期間であった。
【0082】
フェーズIでは、患者はランダムに指定された一つの下腿上に組成物Aおよびビヒクルそれぞれを1日2回で7日間塗布された。体の他の乾燥症領域は、治療されないことを求められた。フェーズIIでは、組成物Aは体のすべての乾燥症および掻痒症領域上に1日2回で49日間塗布された。塗布する製品の量は、損傷の表面積に依存し(1mg/cm)、患者はフィンガーチップを単位として各治療領域に用いられる用量を通知されたが、1フィンガーチップは製品約1gに相当する。塗布する製品の量を最適化するため、各体領域に対する製品のフィンガーチップ数を推奨する表が患者らに与えられた。
【0083】
研究訪問は、基準線、7日目、28日目、および56日目に行われた。終点測定における観察者間の変動を最小化するために、各患者はすべての訪問で同一の医師により評価された。
【0084】
評価パラメータ
すべての評価は治療の割り当てを知らされなかった。治療への応答は期間Iの終わり(7日目)の下腿上でのEl Gammalスコアの少なくとも2等級の低下として定義された。センター間での変動性を最小化するために、各等級を図解するフォトグレーダーが提供された。乾燥症の他の評価パラメータとしては、3点分類尺度(0=右側が左側と同等、1=右側が左側より良好、2=左側が右側より良好)を用いて7日目に研究者により行われる試験側の選択、および、D−Squame(商標)技術を用いた基準線時および7日目の各下腿上の鱗屑の機械測定(鱗屑の程度と密度を測定するSURFTパラメータ;鱗屑の厚みを測定するMOD)が挙げられる。尿毒症性乾燥症の経時的な深刻度は、4つの試験部位上(各下腿、動静脈のシャントの無い前腕、および胸部)で全研究にわたり評価され、合計スコアとして表された。患者への志向性評価は、基準線時、28日目および56日目での100mm視覚的アナログスケール(VAS)を用いた広範囲の掻痒症の自動確認法、並びに、基準線時および56日目での典型的鱗屑ショートフォーム−12(SF−12)質問票および皮膚科学特異的皮膚科学のライフクオリティーインデックス(DLQI)の両方を用いた彼らのクオリティーオブライフの評価で構成された。簡単には、SF−12は身体的成分(身体健康度(physical Component Summay)またはPCS−12;集団全体でPCS=50)および精神的成分(精神健康度(Mental Component Summary)またはMCS−12;通常MCS=50)を2分する一般的健康状態の多目的測定であり、DLQIは患者の生活の質に対する皮膚科学的疾患の影響を測定する(健康な皮膚を有する集団でのDLQI<0.5)。研究者による広域の許容性と、効能、局所的許容性および審美性に対する製品の容認性も研究の終わりに評価された。有害事象は全研究にわたり記録された。
【0085】
データ分析
一次効能パラメータの統計分析は、マクネマー(McNemar)検定により行われた。質的な二次効能パラメータは、ウィルコクソン符号順位(Wilcoxon signed−rank)検定または試験側の選択のための符号順位検定、およびノンパラメトリックウィルコクソン検定による質的パラメータにより評価された。記述的な分析が許容性および有害事象に対して与えられた。
【0086】
結果
7日目の治療群間の比較データは表2に要約されている。治療応答は、活性製品により治療された足で72人の患者(73%)で見られ、ビヒクルで治療された足では44人の患者(44%)で見られた。治療群間の差異は統計学的に有意(p<0.0001)であった。同様に、研究者による試験側の選択は、活性治療において有利であり(60人の患者、61%)、ビヒクル治療では、13人の患者(13%)でより良好であり、26人の患者(26%)で活性治療と同等であることが分かった。活性製品が、ビヒクルと比較して統計学的に有意な様式で、鱗屑の程度および密度(SURFTパラメータ)がその厚み(MODパラメータ)同様に基準線から減少することに有効であったことが、7日目のD−Squame(商標)による鱗屑測定により確認された。
【表2】

【0087】
表2は、実施例3の研究集団の7日後における2つの治療群間での下腿の尿毒症性乾燥症の深刻度の比較を示す表である。
【0088】
4つの試験領域における経時的な合計臨床スコアは、28日目で劇的な減少(平均±SEM:1.4±0.2)を示し、56日目まで維持された(1.3±0.2;二回の訪問でp<0.001、群内分析;図3)。患者により評価された全体的な掻痒症(100−mm VAS)もまた、28日目(平均±SEM:13.9±2.19mm)および56日目(10.66±2.14mm;p<0.0001、群内分析)で著しく、すなわち約75%改善した(図4)。56日目には、尿毒症性乾燥症および掻痒症の改善は、DLQIの著しい改善(平均±SEM:2.27±0.46)およびSF−12(PCS:33.89±1.34;MCS:46.72±1.28)の適度な改善を伴った。基準線のスコアと56日目のスコアとの差異は、すべてのライフクオリティースケールで統計的に有意(p<0.0001、群内分析)であった。
【0089】
研究の終了時(56日目)では、研究者による試験製品の全体的な許容性(N=93、6人の患者でデータを消失)が、82人の患者(88%)で非常に良い、7人の患者(8%)で良い、1人の患者(1%)で悪い、3人の患者(3%)で非常に悪いと評価された。患者による製品の容認性は、効能(98人中82人の患者、84%)、局所的許容性(90人中84人の患者、93%)、および審美的な容認性(88人中82人の患者、93%)の点で、高いまたは非常に高い満足を満たした。計21の有害事象が報告され、そのうち5つは試験製品に関連すると考えられ、5人の患者(5%)で生じた。それらはすべて局所的であり、2件の掻痒症の悪化、2件の局所的焼けまたは知覚過敏、および1件の過敏性反応(紅斑)を含んでいた。4件の有害事象が穏和な程度であると評価され、1件が深刻であった。最後に、ほぼ2件が製品の一時的または明確な中止により完全に解決したと記録された。1事例では研究終了時には未解決であり、もう1事例ではフォローアップの記録を有さなかった。
【0090】
全体的な結論
この臨床研究により、グリセロールおよびパラフィン(固形および液体形態)を組み合わせた局所用組成物Aが中程度から深刻な程度の尿毒症性乾燥症の有効な治療であることが示された。乾燥症病変に対するその主要な効果は、7日後に達成され、28日後にさらに改善され、56日目に維持されていた。組成物Aの効果は、病変の臨床的等級の有意な減少により見られるように臨床的なものであり、鱗屑の広がり(SURFT)および厚み(MOD)を評価する2つのパラメータの有意な減少により示されるように機械的な(D−Squame(商標))ものである。
【0091】
組成物Aによる尿毒症性乾燥症の治療は、尿毒症性掻痒症の著しい改善を伴った。このことから、組成物Aは尿毒症性掻痒症を改善させることができることが示された。それはまた、生活の質の顕著な改善を伴った。
【0092】
患者による組成物Aの容認性は、効能、許容性および使用の容易さの点で、患者の大多数において満足であるか非常に満足であった。
【0093】
製品の局所的許容性は非常に良好であった。試験製品に関連した局所的AEとしては、紅斑(1%)、掻痒症(2%)、局所的焼け(1%)および痛み(1%)があった。
【0094】
結論として、組成物Aは中程度から深刻な尿毒症性乾燥症を伴う患者において、尿毒症性掻痒症と同様の良好な効能および安全性を示した。
【0095】
実施例4:第二の臨床研究:中程度から深刻な尿毒症性乾燥症を伴う患者における組成物Bの長期的な効能と安全性
研究の目的は以下の通りであった:1)実生活の設定(初回治療、維持治療)における尿毒症性乾燥症に対する組成物Bの長期的効能を示すため;2)長期使用後の組成物Bの長期的な局所的許容性および患者の容認性を評価するため;3)尿毒症性乾燥症患者の長期治療過程における組成物Bの治療用量での用量計画を決定するため。
【0096】
研究集団
登録される患者は、実施例3の研究で登録された患者と同様の算入および除外基準を用いて、中程度から深刻な尿毒症性乾燥症を伴う患者とした。5箇所の試験領域(右下腿、左下腿、動静脈シャントの無い前腕、胸部、首の背側)の少なくとも1箇所が、少なくとも2の深刻度スコアを有する尿毒症性乾燥症を呈し、維持腎透析(MRD、血液透析、腹膜透析)を伴う少なくとも18歳の男女の患者が登録された。
【0097】
240人の患者が計画され;237人が選択され、235人、すなわち活性群(組成物B)内に118人の患者およびビヒクル群内に117人の患者が研究において最終的にランダム化された。
【0098】
研究デザイン
研究は以下の3つの期間から構成された:
期間I(初回治療)、研究がランダム化され、ビヒクルを対照とし、二重盲検とし、2つの並行群であり、かつ、比較に基づく。
期間II(治療フリーのフォローアップ)、ランダム化され、ビヒクルを対照とし、二重盲検とし、2つの並行群であり、かつ、比較に基づき、患者が治療を受けない。
および、
期間III、非盲目であり、対照が無く、すべての患者が活性製品のみを塗布され、かつ、治療維持期間である。
活性製品は実施例1の組成物Bとした。基準製品は、そのビヒクル(すなわち、グリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィン無しの組成物B)とし、比較の水分補給の対照として用いた。期間I中は、組成物Bまたはそのビヒクルは2〜4フィンガーチップの局所的塗布で、1日1回塗布された(治療する乾燥症領域の所在に従い)。期間III中は、組成物Bのみが自由に塗布された。
【0099】
治療の期間は:
−期間I中は28日(基準線から28日目);
期間II中は21日間まで(29日目から49日目まで)。期間Iの終わり(28日目)に持続性の病変を有さない患者(すなわち、すべての試験領域が2より小さい深刻度スコアを有する患者)のみが期間IIに参加した(および、もし、35日目または42日目に再発が生じた場合には、彼らは期間IIIに参加した)。28日目に持続性の病変を有する患者(すなわち、少なくとも2の深刻度スコアを有する少なくとも一つの試験領域を有する患者)は、直接的に期間IIIに参加した。
−期間IIIは少なくとも84日間であった(49日目から、期間II中に再発が生じた場合にはより早い日、から133日目まで)。
【0100】
評価パラメータおよび統計分析:
評価パラメータは、intent−to−treatの集団で実施された。主要な効能パラメータは以下の通りであった:
−乾燥症の深刻度:二つの治療群での応答レートを、フィッシャーの正確確率検定を用いて、期間Iの終わり(28日目)に比較した。
−二つの治療群間での再発までの時間をログランク検定を用いて比較した。
【0101】
二つ目のパラメータは以下であった:
− 尿毒症性乾燥症の経時的な深刻度スコア(ウィルコクソンの符号順位検定)、
− 鱗屑測定(D−Squame(商標)、ウィルコクソンの符号順位検定)、
− 効能、局所的許容性および使用の容易さに関する、患者による試験製品の容認性(記述的な分析)、
− 塗布の頻度および製品消費(記述的な分析)、
− 有害事象(記述的な分析)。
【0102】
効能の結果:
中程度から深刻な乾燥症を伴う患者におけるグリセロール(15%)およびパラフィン(10%)の組み合わせの長期的な効能および安全性を調査した、この枢軸的な期間IIIの治験により、実施例3のより短い期間の研究での前記の効能結果が確認された。組成物Bの臨床的に顕著な効果は、1日1度の治療計画を4週間(期間I)用いて示され、1日2回で1週間用いた組成物Aの臨床的効果と同等であった。実際に、治療応答は、組成物Bで治療された72人の患者(60%)で、および、ビヒクルで治療された48人の患者(41%)で示された。組成物Bに有利な差異は、統計学的に有意であった(p=0.004)。
【0103】
活性治療が初回治療(期間II)後に中止された場合には、組成物Bの穏和な残存効果が観察されたが、ビヒクルと比較して有意ではなかった。このことは、活性製品は、病変が鎮静した場合でも継続的な治療を必要とする、緩和効果を主に有することを示唆する。
【0104】
尿毒症性乾燥症の臨床スコアの経時的な研究により、組成物Bの迅速かつ劇的な効果が確認され、1週間後から先でビヒクルと比較して統計学的に有意であった(期間I;図5)。治療の中止は、3週間後(期間III)に病変の進行的再発を引き起こした。最後に、組成物Bによる全患者の治療は、1日1度の平均頻度の塗布計画(期間III)で病変の沈静化を再び引き起こした。効果の持続性は非常に良好であり、持続的な治療のもとでの疾患の再発レートは非常に低かった(期間IIIの終わりで2%)。実施例3の研究と同様に、D−Squame(商標)を用いた鱗屑の機械的測定により、研究者によりなされた臨床的評価が確認され、組成物B治療中の鱗屑の減少は統計的に有意な差異(p<0.001、群内分析)を伴い、かつビヒクルと比較しても統計的に有意な差異(p<0.01、郡間分析)を伴っていた。
【0105】
患者による組成物Bの容認性は、効能の点(患者の92%において満足から非常に満足)で使用の容易さ(93%)同様に非常に高かった。この期間IIIの枢軸的な研究により、中程度から深刻な尿毒症性乾燥症の適用症において製品の、下記のスケジュールに記載の投与計画を確立することもできた:
乾燥症領域全体を覆う1塗布当り約10グラムのクリーム量で、1日当り1回の塗布の用量で、長期的および継続的に治療。
【0106】
安全性の結果:
尿毒症性乾燥症を伴う患者におけるその長期的使用の後の組成物Bの良好な安全性が示された。非全身吸収性の活性成分を含有する局所製品として、製品の投与は、如何なる全身性の副作用も引き起こさなかった。実施例3の研究と同様に、製品に関連する有害事象は希であり、12人/235人の患者(5%)と報告された。これらのAEは、すべて局所的であり、塗布部位での過敏または紅斑反応(5人の患者、21%)、アレルギー性皮膚炎または局所的小水包(3人の患者、1.3%)、悪化した掻痒症(3人の患者、1.3%)および発汗障害(1人の患者、0.4%)を含んでいた。これらのデータは、局所投与物全般に対して特に過敏性を発達させやすいことが知られる標的集団と関連して、非常に有利な結果として強調されるべきである。
【0107】
秀逸な局所的許容特性のもう一つの証明は、局所許容性(患者の96%において良好から非常に良好)に関する製品の患者の容認性であり、実施例3の研究における結果とも一致していた。
【0108】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロール、白色ワセリンおよび流動パラフィンの組み合わせを有効成分として含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療のための局所的使用のための、医薬組成物。
【請求項2】
前記局所的使用が、1日1回の投与計画を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1日1回の投与計画が、少なくとも2週間、好ましくは4週間である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
15種未満、好ましくは10種未満の成分を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
維持腎透析(MRD)を受けている患者における尿毒症性乾燥症の治療のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
白色ワセリンが、35℃〜70℃の滴点を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
白色ワセリンが、51℃〜57℃、好ましくは約54℃の滴点を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
白色ワセリンが、175〜195 1/10mm(25℃での円錐貫入)、好ましくは約185 1/10mm(25℃での円錐貫入)の稠度を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
白色ワセリンが、100℃で4〜5cSt、好ましくは100℃で約4.8cStの粘度を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
約15%のグリセロール、約8%の白色ワセリンおよび約2%の流動パラフィンを含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ステアリン酸、モノステアリン酸グリセロール、ポリジメチルシクロシロキサン、ジメチコーン、ポリエチレングリコール600、トロラミンおよびパラヒドロキシ安息香酸プロピルからなる群から選択される、1または数種の賦形剤を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
水中油型(O/W)エマルジョンの形態である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の組成物のその必要のある患者への皮膚塗布、好ましくは1日1回、を含んでなる、尿毒症性乾燥症および/または尿毒症性掻痒症の治療方法。
【請求項14】
少なくとも2週間、好ましくは4週間にわたる、請求項13に記載の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−524045(P2012−524045A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505180(P2012−505180)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055066
【国際公開番号】WO2010/119132
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248504)
【氏名又は名称原語表記】ORFAGEN
【Fターム(参考)】