説明

グリッド揺動装置および乳房X線撮影装置

【課題】グリッド揺動装置において、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッドの揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができるようにする。
【解決手段】マグネット21a〜21dが右方向または左方向の磁場を発生させ、可動コイル22a〜22dが、可動コイル駆動制御部25により供給される電流(または高調波を含んだ電流)の波形に応じて、マグネット21a〜21dにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。そして、可動コイル駆動制御部25が、撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、当該電流を可動コイル22a〜22dに供給することによって、可動コイル22a〜22dが取り付けられたX線撮影用グリッド23を揺動させる。または、高調波を含んだ電流を可動コイル22a〜22dに供給して磁場を発生させることにより、可動コイル22a〜22dが小刻みの振動した状態でX線撮影用グリッド23を揺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線の照射により被検体から発生する散乱X線を除去するためのX線撮影用グリッドを揺動させるグリッド揺動装置および乳房X線撮影装置に関し、特に、X線撮影用グリッドを揺動させる際の揺動距離および揺動速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳房X線撮影装置などのX線撮影装置は、X線の照射により被検体から発生する散乱X線を除去するためのX線撮影用グリッドを備えるとともに、当該X線撮影用グリッドを揺動させることによって、フィルムやイメージングプレートなどのX線画像情報記録媒体に取り込まれるグリッド陰影(グリッド縞目)を除去するグリッド揺動装置(「ブッキーブレンデ装置」とも呼ばれる)を備えるのが一般的である(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、従来のグリッド揺動装置の一例を示す図である。同図(a)に示すように、従来のグリッド揺動装置は、たとえば、板バネなどによって揺動可能に支持されたX線撮影用グリッドをソレノイド駆動プランジャーにより揺動(往復動)させる。ここで、X線撮影用グリッドを揺動させるための機構としては、ソレノイド駆動プランジャーの他にも、モータ駆動カム(同図(b)を参照)やモータ駆動クランクアーム(同図(c)を参照)などが用いられる。
【0004】
このように、グリッド揺動装置が、X線撮影が行われている間、X線撮影用グリッドを揺動させることにより、被検体から発生した散乱X線がX線撮影用グリッドによって効果的に除去され、さらに、X線画像情報記録媒体に取り込まれるグリッド陰影も除去されるので、良質のX線画像を撮影することができるようになる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−11002号公報
【特許文献2】特開2004−329783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したグリッド陰影を効率よく確実に除去するためには、撮影時間に応じてX線撮影用グリッドの揺動距離および揺動速度を微調整する必要がある。しかしながら、上述した従来のグリッド揺動装置では、X線撮影用グリッドを揺動させる機構が機械的な機構であるため、最適な揺動条件を設定することが困難であるという問題があった。
【0007】
具体的には、ソレノイド駆動プランジャーを用いた場合には、板バネの繰り返し反動力を利用するため揺動距離および揺動速度が固定的になり、機械的な動作のばらつきを是正するための微調整が困難であった。また、モータ駆動クランクアームを用いた場合には、モータやクランクアームを含む部品系が運動する際にそれぞれの質量によって慣性力が生じるため、揺動距離および揺動速度の微調整が困難であった。
【0008】
また、モータ駆動カムを用いた場合には、機械的摩擦力などによってモータ、カム部品および駆動力伝達部品を含む部品系が経時的に劣化し、この劣化にともなう部品系の質量の変化によって慣性力にばらつきが生じるため、揺動距離および揺動速度の微調整が困難となっていた。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッドを揺動する際の揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができるグリッド揺動装置およびX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、被検体にX線を照射することによって当該被検体のX線画像を撮影するX線撮影装置で用いられるグリッド揺動装置であって、所定方向の磁場を発生させる磁石と、前記磁石により発生する磁場中に配置され、電流が供給された場合に当該電流の波形に応じて前記磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる磁場発生手段と、前記磁石または前記磁場発生手段のいずれか一方が取り付けられ、前記X線の照射により前記被検体および撮影台などから発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッドと、撮影時間に基づいて前記電流の波形を決定し、当該電流を前記磁場発生手段に供給することによって、前記X線撮影用グリッドを揺動させるグリッド揺動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の本発明は、被検体の乳房にX線を照射することによって当該乳房のX線画像を撮影する乳房X線撮影装置であって、所定方向の磁場を発生させる磁石と、前記磁石により発生する磁場中に配置され、電流が供給された場合に当該電流の波形に応じて前記磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる磁場発生手段と、前記磁石または前記磁場発生手段のいずれか一方が取り付けられ、前記X線の照射により前記乳房から発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッドと、撮影時間に基づいて前記電流の波形を決定し、当該電流を前記磁場発生手段に供給することによって、前記X線撮影用グリッドを揺動させるグリッド揺動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または4記載の本発明によれば、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッドを揺動する際の揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るグリッド揺動装置および乳房X線撮影装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、ここでは、被検体を透過したX線をフィルムやイメージングプレートなどのX線画像情報記録媒体に記録することによりX線画像を撮影する乳房X線撮影装置に本発明を適用した場合について説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、本実施例1に係る乳房X線装置の全体構成について説明する。図1は、本実施例1に係る乳房X線撮影装置の全体構成を示す外観図である。同図に示すように、この乳房X線撮影装置10は、X線照射装置11と、乳房圧迫板12と、撮影台13とを有する。X線照射装置11は、X線を発生するX線管を内部に備え、撮影台13の上に載置された乳房に向けてX線を照射する装置である。
【0015】
乳房圧迫板12は、撮影時に被検体の乳房を圧迫するための乳房圧迫器である。撮影台13は、撮影時に乳房を載置するための台であり、乳房を透過したX線を記憶するフィルムやイメージングプレートなどのX線画像情報記録媒体と、X線の照射時に被検体から発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッドを有するグリッド揺動装置と、X線画像情報記録媒体を通過したX線を検出するX線検出器などを内部に備えている。
【0016】
次に、乳房X線撮影装置10の内部構成について説明する。図2は、本実施例1に係る乳房X線撮影装置10の内部構成を示す図である。同図に示すように、乳房X線撮影装置10は、X線管14と、X線画像情報記録媒体15と、X線検出器16と、グリッド揺動装置20とをそれぞれ内部に備えている。
【0017】
このうち、グリッド揺動装置20は、被検体Pの乳房の下でX線画像情報記録媒体15を覆うように設置されており、所定方向の磁場を発生させるマグネット21と、電流が供給されることにより磁場を発生させる可動コイル22と、乳房から発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッド23と、事前撮影における撮影時間を計測する撮影時間計測部24と、撮影時間に基づいて可動コイル22に供給される電流の波形を決定する可動コイル駆動制御部25とを有する。
【0018】
かかる構成のもと、撮影時には、X線管14によってX線を発生させ、そのX線が乳房圧迫板12(図示せず)と撮影台13(図示せず)との間で圧迫された被検体Pの乳房に照射される。被検体Pの乳房を透過したX線は、X線撮影用グリッド23を通過する際に、被検体Pの乳房と撮影台13から発生する散乱X線が除去さる。そして、グリッド23を通過したX線画像情報がX線画像情報記録媒体15に記録されることによってX線画像が撮影される。このとき、X線画像情報記録媒体15に記録されたX線の一部はX線画像情報記録媒体15を通過し、X線検出器16によって検出される。
【0019】
こうして撮影が行われている間、グリッド揺動装置20は、グリッド陰影がX線画像情報記録媒体15に取り込まれるのを防ぐため、所定の揺動距離および揺動速度でX線撮影用グリッド23を揺動させる。このとき、グリッド揺動装置20は、従来のグリッド揺動装置ように機械的な機構を用いるのではなく、マグネット21と可動コイル22との間で発生する電磁力を用いてX線撮影用グリッド23を揺動させる。以下、かかるグリッド揺動装置20の構成についてさらに具体的に説明する。
【0020】
図3は、本実施例1に係るグリッド揺動装置20の構成を示す図であり、(a)は正面図、(c)は平面図、(b)および(d)はマグネットおよび可動コイルの拡大右側面図である。同図に示すように、このグリッド揺動装置20は、4つのマグネット21a〜21d、4つの可動コイル22a〜22d、X線撮影用グリッド23、撮影時間計測部24(図示せず)、可動コイル駆動制御部25、マグネット固定部26aおよび26b、可動コイル固定部27aおよび27b、板バネ28a〜28d、ならびに、グリッド支持部29aおよび29bを備えている。
【0021】
マグネット21a〜21dは、所定方向の磁場を発生させる磁石であり、それぞれ、同じ方向の磁場を発生させるように配設されている。ここで、マグネット21aおよび21bは、マグネット固定部26aによって左右に並ぶように撮影台13の奥側に固定されており、マグネット21cおよび21dは、マグネット固定部26bによって左右に並ぶように撮影台13の手前側に固定されている。なお、ここでは、マグネット21a〜21dは、それぞれ右から左へ向かう磁場を発生させるように配設されていることとする。
【0022】
可動コイル22a〜22dは、導線を円筒状に巻いたコイル(空芯コイル)であり、それぞれ、マグネット21a〜21dを内包するように配置されている。ここで、可動コイル22aおよび22bは、可動コイル固定部27aを介してX線撮影用グリッド23に取り付けられ、可動コイル22cおよび22dは、可動コイル固定部27bを介してX線撮影用グリッド23に取り付けられている。
【0023】
そして、可動コイル22a〜22dは、それぞれ、可動コイル駆動制御部25から電流が供給されると、その電流の波形に応じて、マグネット21a〜21dにより発生した磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。ここでは、可動コイル22a〜22dは、右方向および左方向の磁場を交互に発生させる。
【0024】
このように、可動コイル22a〜22dがマグネット21a〜21dにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させることによって、可動コイル22a〜22dとマグネット21a〜21dとの間で引力および反力が交互に発生することになり、その結果、X線撮影用グリッド23が、可動コイル22a〜22dとともに左右方向へ揺動する。
【0025】
X線撮影用グリッド23は、X線の照射により被検体Pの乳房および撮影台13などから発生する散乱X線を除去するグリッドであり、板バネ28a〜28dを介して、撮影台13に固定されたグリッド支持部29aおよび29bにより左右方向へ揺動可能に支持されている。このX線撮影用グリッド23には、前述したように、可動コイル固定部27aおよび27bを介して、可動コイル22a〜22dがそれぞれ取り付けられている。
【0026】
撮影時間計測部24は、本撮影の前に行われる事前撮影において撮影時間を計測する処理部である。具体的には、この撮影時間計測部24は、事前撮影においてX線検出器16によってX線が検出された時間を計測し、計測結果を撮影時間として可動コイル駆動制御部25に引き渡す。
【0027】
可動コイル駆動制御部25は、撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、当該電流を可動コイル22a〜22dに供給することによって、X線撮影用グリッド23を揺動させる処理部である。具体的には、この可動コイル駆動制御部25は、撮影時間計測部24から受け取った撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、決定した波形の電流を可動コイル22a〜22dそれぞれに供給することによって、X線撮影用グリッド23を揺動させる処理部である。ここでは、可動コイル駆動制御部25によって、X線撮影用グリッド23が左右方向へ揺動する。
【0028】
図4は、可動コイル駆動制御部25により供給される電流の一例を示す図である。可動コイル駆動制御部25は、同図(a)または(b)のように時間の経過とともに振幅が周期的に変化するとともに、高調波が含まれた電流を可動コイル22a〜22dそれぞれに供給する。なお、ここで供給される電流の波形は、必ずしも同図に示したものに限られるわけではなく、正弦波や矩形波、変形矩形波、三角波などさまざまな波形であってよい。
【0029】
そして、電流を供給する際には、可動コイル駆動制御部25は、あらかじめシミュレーションにより撮影時間ごとに決められた最適な揺動距離および揺動速度でX線撮影用グリッド23が揺動するように、電流の振幅および周波数を決定する。ここで決定する電流の振幅および周波数は、揺動距離および揺動速度に応じて微細な単位で調整することが可能であるので、従来の機械的な機構では困難であった微調整も容易に行うことができる。
【0030】
ここで、可動コイル駆動制御部25が、事前撮影で計測した撮影時間に基づいて自動的に最適な揺動距離および揺動速度を決定することによって、撮影時間に応じてX線撮影用グリッド23の揺動を容易に微調整することができるようになる。なお、ここでは、事前撮影で計測した撮影時間に基づいて自動的に揺動距離および揺動速度を設定することとしたが、撮影時間に応じて操作者が手動で電流の波形を微調整することによって、最適な揺動距離および揺動速度を設定するようにしてもよい。
【0031】
また、ここで、可動コイル駆動制御部25が、高調波を含んだ電流を可動コイル22a〜22dに供給することによって、X線撮影用グリッド23が小刻みな振動を続けながら揺動するようになる。これにより、電流の振幅がプラスからマイナスへ切り替わるタイミングでも、停止することなくX線撮影用グリッド23の揺動方向を切り替えることが可能になり、グリッド陰影を残さず除去することができるようになる。
【0032】
上述してきたように、本実施例1では、マグネット21a〜21dが右方向または左方向の磁場を発生させ、可動コイル22a〜22dが、可動コイル駆動制御部25により供給される電流の波形に応じて、マグネット21a〜21dにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。そして、可動コイル駆動制御部25が、撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、当該電流を可動コイル22a〜22dに供給することによって、可動コイル22a〜22dが取り付けられたX線撮影用グリッド23を揺動させるので、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッド23を揺動する際の揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができる。
【0033】
ところで、本発明に係るグリッド揺動装置20の構成は、図3に示したものに限られるわけではなく、マグネットおよびコイルの位置や数、種類などを変えることによって、他にもさまざまな形態で実現することが可能である。そこで、以下では実施例2および3として、グリッド揺動装置の他の構成について説明する。
【実施例2】
【0034】
たとえば、X線撮影用グリッドの質量に応じて、マグネットおよび可動コイルの数を増やしてもよい。図5は、本実施例2に係るグリッド揺動装置の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は拡大側面図である。同図に示すように、本実施例2に係るグリッド揺動装置30は、8つのマグネット31a〜31h、8つの可動コイル32a〜32h、X線撮影用グリッド23、撮影時間計測部24、可動コイル駆動制御部25、マグネット固定部36aおよび36b、板バネ28a〜28d、ならびに、グリッド支持部29aおよび29bを備えている。
【0035】
なお、撮影時間計測部24、可動コイル駆動制御部25、板バネ28a〜28d、ならびに、グリッド支持部29aおよび29bについては、実施例1と同じ機能を有するものであるためここでは図示を省略している。
【0036】
マグネット31a〜31hは、所定方向の磁場を発生させる磁石であり、それぞれ、同じ方向の磁場を発生させるように配設されている。ここで、マグネット31a〜31dは、マグネット固定部36aによって、それぞれ左右に一列に並ぶように撮影台13の奥側に固定されており、マグネット31e〜31hは、マグネット固定部36bによって、それぞれ左右に一列に並ぶように撮影台13の手前側に固定されている。なお、ここでは、マグネット31a〜31hは、それぞれ右から左へ向かう磁場を発生させるように配設されていることとする。
【0037】
可動コイル32a〜32hは、導線を円筒状に巻いたコイル(空芯コイル)であり、それぞれ、マグネット31a〜31hを内包するように配置されている。ここで、可動コイル32a〜32dは、左右に一列に並ぶようにX線撮影用グリッド23の奥側に取り付けられており、可動コイル32e〜32hは、左右に一列に並ぶようにX線撮影用グリッド23の手前側に取り付けられている。
【0038】
そして、可動コイル32a〜32hは、それぞれ、可動コイル駆動制御部25から電流が供給されると、その電流の波形に応じて、マグネット31a〜31hにより発生した磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。ここでは、可動コイル32a〜32hは、右方向または左方向の磁場を交互に発生させる。
【0039】
このように、可動コイル32a〜32hがマグネット31a〜31hにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させることによって、可動コイル32a〜32hとマグネット31a〜31hとの間で引力および反力が交互に発生することになり、その結果、X線撮影用グリッド23が、可動コイル32a〜32hとともに左右方向へ揺動する。
【0040】
上述してきたように、本実施例2では、マグネット31a〜31hが右方向または左方向の磁場を発生させ、可動コイル32a〜32hが、可動コイル駆動制御部25により供給される電流の波形に応じて、マグネット31a〜31hにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。そして、可動コイル駆動制御部25が、撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、当該電流を可動コイル32a〜32hに供給することによって、可動コイル32a〜32hが取り付けられたX線撮影用グリッド23を揺動させるので、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッド23を揺動する際の揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができる。
【0041】
さらに、本実施例2では、実施例1にくらべてマグネットおよび可動コイルの数を増やしているので、全体としてX線撮影用グリッド23を揺動させる力を大きくすることが可能になる。このように、マグネットおよび可動コイルの数を増やすことによって、X線撮影用グリッド23の質量が大きい場合でも、揺動距離および揺動速度を適切に微調整することができるようになる。
【実施例3】
【0042】
また、たとえば、可動コイルの代わりに、磁性材料(鉄など)の芯のまわりにコイルを巻いたマグネットコイル(電磁石)を用いてもよい。図6は、本実施例3に係るグリッド揺動装置の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)はマグネットコイルの拡大正面図である。同図に示すように、本実施例3に係るグリッド揺動装置40は、8つのマグネット41a〜41h、8つのマグネットコイル42a〜42h、X線撮影用グリッド23、撮影時間計測部24、可動コイル駆動制御部25、マグネットコイル固定部47aおよび47b、板バネ28a〜28d、ならびに、グリッド支持部29aおよび29bを備えている。
【0043】
なお、撮影時間計測部24、可動コイル駆動制御部25、板バネ28a〜28d、ならびに、グリッド支持部29aおよび29bについては、実施例1と同じ機能を有するものであるためここでは図示を省略している。
【0044】
マグネット41a〜41hは、所定方向の磁場を発生させる磁石であり、それぞれ、同じ方向の磁場を発生させるように配設されている。ここで、マグネット41a〜41dは、左右に一列に並ぶようにX線撮影用グリッド23の奥側に取り付けられ、マグネット41e〜41hは、左右に一列に並ぶように、X線撮影用グリッド23の手前側に取り付けられている。なお、ここでは、マグネット41a〜41hは、それぞれ手前から奥へ向かう磁場を発生させるように配設されていることとする。
【0045】
マグネットコイル42a〜42hは、磁性材料(鉄など)の芯のまわりにコイルを巻いた電磁石であり、コイルに電流が供給されることによって所定方向の磁場を発生させる。ここで、マグネットコイル42a〜42dは、それぞれ、マグネットコイル固定部47aによって、マグネット41a〜41dと対向するように撮影台13の奥側に固定されている。また、マグネットコイル42e〜42hは、それぞれ、マグネットコイル固定部47bによって、マグネット41e〜41hと対向するように撮影台13の手前側に固定されている。
【0046】
そして、マグネットコイル42a〜42hは、それぞれ、可動コイル駆動制御部25から供給されると、供給された電流の波形に応じて、マグネット41a〜41hにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。ここでは、マグネットコイル42a〜42hは、手前方向または奥方向の磁場を交互に発生させる。
【0047】
このように、マグネットコイル42a〜42hがマグネット41a〜41hにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させることによって、マグネットコイル42a〜42hとマグネット41a〜41hとの間で引力および反力が交互に発生することになり、その結果、X線撮影用グリッド23が、マグネット41a〜41hとともに左右方向へ揺動する。
【0048】
上述してきたように、本実施例3では、マグネット41a〜41hが手前方向または奥方向の磁場を発生させ、マグネットコイル42a〜42hが、可動コイル駆動制御部25により供給される電流の波形に応じて、マグネット41a〜41hにより発生する磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる。そして、可動コイル駆動制御部25が、撮影時間に基づいて電流の波形を決定し、当該電流をマグネットコイル42a〜42hに供給することによって、マグネット41a〜41hが取り付けられたX線撮影用グリッド23を揺動させるので、撮影時間に応じて、X線撮影用グリッド23を揺動する際の揺動距離および揺動速度を容易に微調整することができる。
【0049】
なお、上記実施例1、2および3では、機械的な機構を用いずにX線撮影用グリッドを揺動させるよう構成しているので、部品系の経時的な劣化によってX線撮影用グリッド揺動距離および揺動速度にばらつきが生じるのを防ぐことが可能になり、安定してX線撮影用グリッドを揺動させることができるようになるという効果も得られる。
【0050】
また、上記実施例1、2および3では、乳房X線撮影装置に備えられたグリッド揺動装置について説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、X線診断装置など他のX線撮影装置に備えられたグリッド揺動装置についても同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るグリッド揺動装置および乳房X線撮影装置は、被検体にX線を照射することによって当該被検体のX線画像を撮影するX線撮影装置に有用であり、特に、撮影時間に応じてX線撮影用グリッドの揺動距離および揺動速度を微調整する必要がある場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例1に係る乳房X線撮影装置の全体構成を示す外観図である。
【図2】本実施例1に係る乳房X線撮影装置の内部構成を示す図である。
【図3】本実施例1に係るグリッド揺動装置の構成を示す図である。
【図4】可動コイル駆動制御部により供給される電流の一例を示す図である。
【図5】本実施例2に係るグリッド揺動装置の構成を示す図である。
【図6】本実施例3に係るグリッド揺動装置の構成を示す図である。
【図7】従来のグリッド揺動装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 乳房X線撮影装置
11 X線照射装置
12 乳房圧迫板
13 撮影台
14 X線管
15 X線画像情報記録媒体
16 X線検出器
20,30,40 グリッド揺動装置
21,21a〜21d,31a〜31h,41a〜41h マグネット
22,22a〜22d,32a〜32h 可動コイル
23 X線撮影用グリッド
24 撮影時間計測部
25 可動コイル駆動制御部
26a,26b,36a,36b マグネット固定部
27a,27b 可動コイル固定部
28a〜28d 板バネ
29a,29b グリッド支持部
42a〜42h マグネットコイル
47a,47b マグネットコイル固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射することによって当該被検体のX線画像を撮影するX線撮影装置で用いられるグリッド揺動装置であって、
所定方向の磁場を発生させる磁石と、
前記磁石により発生する磁場中に配置され、電流が供給された場合に当該電流の波形に応じて前記磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる磁場発生手段と、
前記磁石または前記磁場発生手段のいずれか一方が取り付けられ、前記X線の照射により前記被検体から発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッドと、
撮影時間に基づいて前記電流の波形を決定し、当該電流を前記磁場発生手段に供給することによって、前記X線撮影用グリッドを揺動させるグリッド揺動制御手段と、
を備えたことを特徴とするグリッド揺動装置。
【請求項2】
前記グリッド揺動制御手段は、高調波が含まれた電流を前記磁場発生手段に供給することを特徴とする請求項1に記載のグリッド揺動装置。
【請求項3】
本撮影の前に行われる事前撮影において撮影時間を計測する撮影時間計測手段をさらに備え、
前記グリッド揺動制御手段は、前記撮影時間計測手段により計測された撮影時間に基づいて前記電流の波形を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のグリッド揺動装置。
【請求項4】
被検体の乳房にX線を照射することによって当該乳房のX線画像を撮影する乳房X線撮影装置であって、
所定方向の磁場を発生させる磁石と、
前記磁石により発生する磁場中に配置され、電流が供給された場合に当該電流の波形に応じて前記磁場と同方向および逆方向の磁場を交互に発生させる磁場発生手段と、
前記磁石または前記磁場発生手段のいずれか一方が取り付けられ、前記X線の照射により前記乳房から発生する散乱X線を除去するX線撮影用グリッドと、
撮影時間に基づいて前記電流の波形を決定し、当該電流を前記磁場発生手段に供給することによって、前記X線撮影用グリッドを揺動させるグリッド揺動制御手段と、
を備えたことを特徴とする乳房X線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−18110(P2009−18110A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184714(P2007−184714)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(502390441)東芝メディカル製造株式会社 (3)
【Fターム(参考)】