説明

グリッパ織機上で織物耳を形成する方法および装置

本発明は、グリッパ織機上において挿入側の織物耳(35)を形成する方法および装置に関し、a)ボビン(1、2、41、42)上に供給されたいくつかの緯糸(3、4、43、44)の1つを選択的にグリッパ(6)の走行経路(5)内に配置しつつ他の緯糸(3、4、43、44)を前記走行経路の外側に保持し、b)前記走行経路内に配置された前記緯糸をグリッパ(6)によって把握して織機杼口に挿入し、c)挿入した緯糸(3)を製織筬(31)によって結合ライン(33)に対して筬打ちし、d)前記挿入した緯糸(3)を筬打ちの直後に挿入側において切断し、e)切断した前記緯糸(3)の前記ボビン側の糸端を、吸入チャンバブロック(10、20)の異なる吸入チャンバによってそれぞれ把握して支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および4の特徴によってグリッパ織機あるいは織機上において織物耳を形成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グリッパ織機上において織物耳を形成する周知の方法および装置は、別々のスプールあるいはボビンに供給されたいくつかの緯糸によって製織する間に、製織された布あるいは生地の両側に、すなわち緯糸の杼投げ側あるいは挿入側および引き出し側に、いわゆる掴み耳あるいは補助耳を生じさせる。加えて、そのような掴み耳においては、実際に製織される織物のためのメインの経糸の外側に多くの補助経糸が横方向に配置される。また、この補助的な経糸は杼口をつくる動きを受け、緯糸はその自由端がこれらの補助的な経糸の間に置かれ拘束されて支持される。このようにして、幅の狭い補助的に製織される掴み耳と呼ばれる細片が生じる。
【0003】
この掴み耳には、挿入された緯糸を捕えあるいは支持するという目的がある。製織の間、挿入側の掴み耳は、関連付けられた緯糸が反復、すなわち製織パターンに応じて再び挿入されるまで、各緯糸のボビン側の緯糸の糸端を支持する。したがって、いくつかの緯糸挿入サイクルにおいて挿入されない緯糸は、それが再び挿入されるまで挿入側の掴み耳に沿って走行する。
【0004】
この掴み耳は、実際に製織された織物から切り離されて糸くずを形成する。最新のグリッパ織機の生産能力を考慮すると、特に価値の高い高価な糸で製織する間に、この糸くずによって相当な量の損失が発生する。
【0005】
この損失を減少させる装置は、ドイツ特許DE3418764C1号公報により公知である。この装置によると、掴み耳を形成するために必要な補助的な経糸は、別個の補助的な製織筬によって導かれる。メインの製織筬による通常の筬打ち運動の他に、この補助的な製織筬が外側を向いた横方向の摺動動作を行う。それによって、筬打ちの間に、製織された織物と掴み耳との間に切断通路あるいは隙間が形成される。切断通路あるいは隙間のために必要な緯糸の糸長は、掴み耳を越えて外側に突出する耳くずから掴み耳内へと引き込まれ、それによって切断通路あるいは隙間の幅で判断したときの緯糸の糸くずが減少する。
【0006】
掴み耳の糸くずの更なる減少は、欧州特許公開EP0878570A1号公報に記載されている装置および方法によって達成される。この文献によると、掴み耳は、回転レノ耳形成装置の助けを借りつつ2つのレノ経糸によって形成される。その点については、一杯に回転するレノ技術の使用により、掴み耳におけるいくつかの補助的な経糸に代えて2つのレノ経糸だけが必要である点、および幅の狭い掴み耳において緯糸の糸長が短くなるという点において糸くずが減少する。
【0007】
最後に、シャトルレス織機上において製織した織物の布端あるいは耳を切断する方法は、ドイツ特許公開DE3137831A1号公報により公知であるが、この方法においては掴み耳あるいは補助耳の使用が完全に回避されている。挿入の後、挿入された緯糸は挿入側において切断され、かつ織物側の緯糸の糸端はその後で切断される。それによって、糸くずがもう一度発生する。ドイツ特許公開DE3137831A1号公報は、単色製織の方法は記載しているものの、緯糸を挿入した後に切断されるボビン側の緯糸が、次の緯糸の挿入のために適した時間および適した場所においてどのようにグリッパに供給されるかについては開示していない。特に、いくつかの緯糸が供給される製織、いわゆる多色製織の間にこれを達成することは容易でない。多色製織においては、いくつかの緯糸が様々に異なる供給ボビンから引っ張られあるいは引き寄せられ、同時に緯糸の挿入のために予め支持される。しかしながら、これらの緯糸は、グリッパによって順番に次々と織機の杼口に挿入される。グリッパが正しい緯糸を把握して織機の杼口に挿入するために、挿入される緯糸は、差出要素あるいは投入要素によって、グリッパ走行経路に隣接して保持されている緯糸の糸シートあるいは織り糸シートからグリッパの走行経路内へと動かされる。このようにして、様々に異なる色の緯糸により、例えばパターン化された製織織物を生産することができる。しかしながら、互いに隣接している様々に異なるボビンからの同じタイプおよび同じ色の緯糸を処理することができ、それによってボビン交換の間隔を長くすることによるより高い故障安全性およびより低い人的負荷を達成することができる。また、このタイプの製織は、多色製織と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、糸くずが可能な限り少ない、グリッパ織機における多色製織のための方法および装置を提供しかつ確実なものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明の請求項1の特徴を有する方法および特許項4の特徴を有する装置によって達成される。この目的に適した更なる成果は、各従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明によると、グリッパ織機上において挿入側の織物耳を形成するために、ボビン上に供給されかつ支持されているいくつかの緯糸のうち、第1の緯糸はグリッパの走行経路内に配置されるが、他の緯糸は走行経路の外側に保持される。グリッパの走行経路内に配置された緯糸は、グリッパによって把握され、織機の杼口に挿入され、挿入の後に結合あるいは織交ラインに対し製織筬によって筬打ちされる。この結合あるいは織交ラインは製織された織物の端部に相当し、最後に挿入されて筬打ちされた緯糸がそこに沿って配置される。挿入された緯糸は、筬打ちされた直後に挿入側において切断される。織機の挿入側において緯糸を切断すると、2つの緯糸の糸端が発生する。第1に、織物側の緯糸の糸端は残された織物端あるいは織物耳を形成する。第2に、ボビン側の緯糸の糸端は緯糸を切断した後においてもまだボビンとつながっている。本発明によると、切断された各緯糸のボビン側の糸端は、吸入チャンバブロックの異なる吸入チャンバによって把握されて支持される。同じボビンからの緯糸を次に挿入する間、ボビン側の緯糸の糸端は先の緯糸の端部と同様に織機の杼口に挿入されて、織機の引き出し側に織物端あるいは織物耳を形成する。
【0011】
好ましくは、説明する方法のステップは複数回繰り返され、挿入側に糸くずが発生することなしに、挿入側に織物端あるいは織物耳を有した製織織物が生じる。
【0012】
本発明の方法の最も重要な利点は、多色製織における把み耳の使用が回避され、それによってかなりの材料の節減を達成できることである。このことは、挿入された緯糸を切断した後でボビン側の緯糸の糸端を別々に把握するとともに、各緯糸が再び挿入されるまでボビン側の緯糸の糸端を支持する、吸入チャンバを有した挿入側の吸入チャンバブロックによって達成される。それによって、隣接する緯糸の絡みあるいはもつれが回避される。このことは有益である。特に粗い織り糸には、他の織り糸と接触する間の絡みあるいはもつれによって、互いにくっつく傾向があるからである。緯糸の糸端が互いに別々に把握されて支持されていることにより、挿入される緯糸に他の緯糸がもつれあるいはくっついて、挿入される緯糸を把握した後のグリッパが更に他の緯糸を織機の杼口の方向に引っ張ることが防止される。意図せずに前方に引っ張られた緯糸は、生産の中断、故障、あるいは製織された織に欠陥を生じさせる。
【0013】
それ自体は公知のように、予め定めた製織パターンにしたがって挿入される緯糸の選択が達成される。製織パターンは、いわゆる製織パターンの反復の形態で織機の制御装置に保持されあるいは記憶されている。
【0014】
各緯糸をグリッパの走行経路に配置するために、例えばその自由端にそれぞれ設けられている鳩目によって関連する緯糸が導かれる、糸を差し出しあるいは投入する針の形態の、駆動される糸差出要素あるいは糸投入要素が用いられる。この投入針は、有利には、緯糸を挿入するグリッパに対して正確な時間に各緯糸を差し出しあるいは投入するために、すなわちグリッパの走行経路に緯糸を配置するために、電気モータで駆動されるとともに織機の制御装置によって制御される。このとき、例えば欧州特許EP0478986B1号公報を参照すると、いわゆる糸差出要素が投入要素として記載されている。しかしながら、投入要素のための駆動力を織機の主駆動装置から導き出すことができる。この場合、投入要素の運動は、例えばカムディスクによる動力伝達によって制御することができる。
【0015】
グリッパは、全般的にグリッパバンドあるいはグリッパロッドの前端に固定されるとともに、能動的に作動しあるいは起動するグリッパクランプまたは受動的なグリッパクランプから構成することができる。
【0016】
吸入チャンバブロックは、切断されたボビン側の緯糸の糸端が気流によって把握されて支持されるように作動する。気流は、様々に異なる種類の織り糸の気流内における挙動に影響を及ぼすために、特に有利にはその容積流量および時間を調整することができる。このことは、織機のオペレータが、緯糸をしっかりと把握して支持するためには十分に強いが、同時に緯糸の糸端が気流によって損傷を受けるほどには強くないように、気流を調整できるようにする。緯糸の糸特性に応じ、吸入チャンバブロックは、吸入チャンバに把握されて支持された緯糸の糸端が2、3ミリメートルから数センチメートルの間の長さであるように配置される。吸入チャンバ内における長い緯糸の糸端はより低い把持吸引圧力を必要とするが、短い緯糸の糸端は吸入チャンバ内により高い把持吸引圧力を必要とする。その点については、必須の把持吸引圧力は緯糸の直径および粗さに応じて定まる。
【0017】
本発明の方法の好ましい実施形態によると、吸入チャンバブロックは、可動要素によって各緯糸のために異なる吸入チャンバを利用可能とする。可動要素の機能および可能な実施形態は、本発明の装置の以下の説明においてより詳細に説明される。
【0018】
この方法を実施するための、グリッパ織機上において挿入側の織物端あるいは織物耳を形成する装置について説明する。この装置によると、異なるボビンから引っ張られあるいは引き寄せられた少なくとも2つの緯糸が、少なくとも1つのグリッパによって経糸から形成される織機杼口の内側に順番に挿入されるとともに、最も外側の経糸の近傍に配置されたはさみあるいはカッタによって挿入側で切断される。カッタの近傍に、ボビン側の緯糸の糸端を支持する1つの吸入チャンバブロックが設けられる。この吸入チャンバブロックは各緯糸を別々に把握して支持するために個々の吸入チャンバに分割されており、各吸入チャンバは各緯糸に割り当てられ、それによって各吸入チャンバは可動要素によって各緯糸に提供されあるいは利用できるようになっている。
【0019】
はさみあるいはカッタという用語は、あらゆる種類の適切な切断装置をカバーするものと理解されるべきである。例えば、溶融ワイヤ装置あるいはレーザ切断装置のような熱的な切断装置をも含めることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、2つの緯糸によって製織する装置に関する。その点について、可動要素は、吸入チャンバブロックの内部に設けられて傾動しあるいは回動するフラップを有する。制御可能に切り替えられる回動フラップにより、吸入チャンバブロックは2つの吸入チャンバに分割される。各吸入チャンバは、2つの緯糸のうちの1つにそれぞれ割り当てられる。それによって2つの緯糸の糸端を別々に把握して支持することが可能となり、緯糸が互いにもつれあるいはくっつくことが回避される。緯糸のもつれあるいはくっつきは、製織プロセスの望まれない中断、あるいは製織された織物の欠陥あるいは異常につながる。
【0021】
本発明の更なる態様は、切り替え可能な回動フラップの制御された作動に関する。好ましくは、この作動は投入要素の作動と同期する。投入要素により、挿入される各緯糸は、織機の杼口の方向に駆動されあるいは移動するグリッパの経路内に移動し、グリッパは正しい緯糸をしっかりと把握し挿入することができる。この点に関して重要なことは、挿入されない緯糸がグリッパの経路の完全に外側に支持されていて、挿入されない緯糸とグリッパとの間に衝突が生じないことである。投入要素の作動に同期する回動フラップの作動により、一方では、挿入される緯糸をグリッパの経路内に最適に配置することができる。吸入チャンバブロック内の緯糸の糸端が、回動フラップの動きに追従するからである。また他方では、挿入されない緯糸はグリッパの経路の明らかに外側に支持される。投入要素の可能な実施形態は、本発明の方法の説明において既に上述したとおりである。
【0022】
各緯糸の案内および位置決めの更なる改良のために、分離レバーが、好ましくは吸入チャンバの吸引開口の近くに回動可能に配置される。この分離レバーは、基本的に回動フラップに同期して作動しあるいは始動され、2つの緯糸の糸端が互いに分離しつつ確実に把握され支持されるようにする。
【0023】
本発明の更に好ましい実施形態には、いくつかの吸入チャンバを有して可動に配置された吸入チャンバブロックが含まれる。挿入された緯糸を切断した後、ボビン側の緯糸の糸端は割当られた吸入チャンバに案内されるが、把握される緯糸が供給されあるいはそれに割り当てられた吸入チャンバを利用できるように、吸入チャンバブロックの全体が移動する。その点について、可動要素は吸入チャンバブロックの駆動装置の一部である。この駆動装置は、例えば電気モータとすることができる。この駆動装置は、信号伝達ラインを介して織機の制御装置に接続され、それによって織機の制御装置は可動要素および吸入チャンバブロックの動きを制御する。吸入チャンバブロックの全体的な動きにより、挿入された緯糸を切断した後に他の緯糸とは別個にボビン側の緯糸を把握するべく、各吸入チャンバはそれに割り当てられている緯糸を目標として移動する。このようにして、各緯糸は吸入チャンバによって別々に把握されて支持される。それによって、緯糸の糸端のもつれあるいはくっつきが防止される。
【0024】
可動に配置される吸入チャンバブロックの好ましい実施形態は、いくつかの扇状に形成された吸入チャンバに分割されている円形あるいは扇状に形成された断面を有する、傾動自在あるいは回動自在に配置された吸入チャンバブロックである。この実施形態において、可動要素は、例えば電気モータ回転駆動装置のロータシャフトとすることができる。このロータシャフトの回転軸は、円形あるいは扇状に形成された断面に対し垂直な平面内において、円形あるいは扇状の中心位置を貫通して延びるように配置される。吸入チャンバはまた、個別に制御された吸気が作用しあるいは影響を与えるように実施することができる。追加される機械的な保持手段との組み合わせにより、必要な吸気の量を減少させることができ、個々の吸引チャンバには、緯糸の糸端を把握するためだけに必要なより大きな容積流量の吸気が時間を限って影響を与えあるいは作用する。その後、例えば、より小さい容積流量の吸気によって糸を支持することができる。特に多数の色の緯糸で製織するときに、この実施形態は空気の消費に有利な影響を及ぼす。
【0025】
本発明はまた、織物耳を押し込みあるいは横たえる装置と組み合わせることができる。その点について、挿入された緯糸を切断した後に形成される織物端あるいは織物耳は、次の緯糸の挿入のために再び開かれた織機杼口の内側に織物側の緯糸の糸端を折り込みあるいは押し込むことによって、折り込まれたあるいは押し込まれた織物耳に加工することができる。機械式および空気式の織物耳押込装置の両方が良く知られているので、ここではより詳細には説明しない。
【0026】
さらに本発明には、上述した装置の1つによって特徴付けられる織機が含まれる。本発明およびさらなる利点は、以下のいくつかの例示的な実施形態に関連して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態の吸入チャンバブロックを有した本発明の装置の概略図。
【図2】吸入チャンバブロックを有した図1の装置の緯糸を挿入する側の斜視図。
【図3】第2実施形態の吸入チャンバブロックを有した本発明の装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示す構造は、ボビン1,2から引っ張られあるいは引き寄せられるとともに緯糸挿入のために供給されかつ支持されている緯糸3,4を示している。投入要素7、8は、2つの緯糸3,4のうちの1つを、基本的にグリッパ6の水平に配置された走行通路5に対して垂直な方向に選択的に移動させる。グリッパ6は、経糸32によって形成されているを織機杼口の内側へと、走行経路5上を矢印36で表されている挿入方向に移動する。吸入チャンバブロック10は、グリッパ6と経糸32で形成されている織機杼口との間に配置されている。吸入チャンバブロックの主要部分はハウジング19であるが、蓋あるいはカバーなしに図1に示されているため、吸入チャンバブロック10内に配置されている吸入チャンバ12および回動フラップ11が見えている。回動フラップ11は、吸入チャンバブロックの内部スペースを上側吸入チャンバ12および下側吸入チャンバ13に分離している。下側吸入チャンバ13は、上側吸入チャンバ12の下側に配置されるとともに回動フラップ11で覆われているため、この図には見えていない。回動フラップ11は、吸入チャンバブロックの内側に回動軸16の回りに回動可能に取り付けられており、その回動位置に応じて、吸入開口30を実質的にあるいはほとんどの部分を上側吸入チャンバ12のためにあるいは下側吸入チャンバ13のために開放する。
【0029】
図2に示されている状態において、回動フラップ11は、見えてはいないが上側位置にあって、吸入開口30を実質的にあるいはほとんどの部分を下側吸入チャンバ13のために開放している。
【0030】
分離レバー14が、吸入チャンバ12、13の吸入開口30の近傍で吸入チャンバブロック10上に配置されている。それらの間に位置する案内溝を有した分離指が、分離レバー14の前端に配置されている。緯糸3,4は、各案内溝内で案内される。分離レバー14は、吸入チャンバブロック10のハウジング19上にある回転軸15の回りに回動可能に取り付けられている。分離レバー14は、レバー17,18およびいくつかの偏向要素を具備する機械的なロッドリンクを介して回動フラップ11の回転軸16に駆動接続されていて、回動フラップ11と同期しつつ強制的に動かされる。回動フラップ11の駆動装置は図示されていない。例えば電気、空気あるいは液圧による駆動装置のような、最も周知の駆動装置を利用することができる。例えば、回動軸16に回転可能に接続された電気的な回転駆動装置により、有利で簡単な実施形態が提供される。この回転駆動装置は、好ましくは織機の制御装置に信号を伝達するように接続され、回動フラップ11は制御されて駆動される。ロッドリンク17,18を介して、分離レバー14もまた回動フラップ11と同期しつつ駆動される。
【0031】
吸入チャンバブロック10と織機杼口の間には、最も外側の経糸の近傍で、ほぼ結合あるいは織交ライン33の高さの位置に、はさみあるいはカッタ9が配置されている。結合あるいは織交ライン33は、すでに完成している製織生地あるいは織物34に対してまさに挿入された緯糸3がそこにおいて製織筬31によって筬打ちされる、いわゆる結合あるいは織交点の全てを接続したものである。
【0032】
図示した状態において、製織筬31は、結合あるいは織交ライン33に対する筬打ちの後、既にその後退位置に戻っている。最後に筬打ちされた緯糸3はすでに切断され、緯糸の糸端は対応する下側吸入チャンバ13内に引き込まれている。下側吸入チャンバ13はその上にある回動フラップ11によって覆われているので、この吸入チャンバ13に引き込まれた緯糸の糸端は見ることができず、点線で示されている。
【0033】
本発明の装置の作動について以下に説明する。緯糸3を挿入するために、最初に投入要素7が下方に移動して、この投入要素7の糸小穴に糸通しされている緯糸3を、水平に配置されているグリッパ6の走行経路を横糸3が横切る位置に引っ張る。その間、緯糸3の端は、吸入チャンバブロック10の下側吸入チャンバ13内にしっかりと保持される。グリッパの走行経路5に投入された緯糸3の正確に再現可能な位置を保証するために、投入要素7,8とグリッパ6の走行経路5との間に、糸供給縁あるいは投入縁37が設けられている。差し出されあるいは投入された緯糸3を投入要素7、8が投入縁37の下方に配置するので、差し出されてあるいは投入された緯糸3は投入縁37上で偏向し、かつ投入縁37はあらゆる場合において差し出されあるいは投入された緯糸3、4の上下方向位置を決定する。
【0034】
その後、グリッパ6は、矢印36で表されている挿入方向へとその走行経路5上を移動するとともに、差し出されあるいは投入された緯糸3を把握する。緯糸3は、グリッパ6の緯糸クランプにしっかりと締め付けられる。連続的に移動するグリッパ6は、吸入チャンバブロック10の下側吸入チャンバ13から緯糸3の端部を引っ張り、緯糸3を織機杼口へと移送する。織機杼口の中央部において反対側に配置されている受取グリッパに緯糸3を移送した後、グリッパ6は織機杼口からその初期位置に向けて再び移動し、同時に受取グリッパが織機杼口の全体にわたって緯糸3を引っ張る。
【0035】
吸入チャンバブロック10がグリッパ6の走行経路の近傍に配置されているため、挿入される緯糸3の把握に関連して、最も短い緯糸の糸端だけがグリッパ6を越えて突出している。この突出している緯糸の糸端は、製織された織物34の引き出し側に糸くずを形成するため、できる限り短くするべきである。能動的に作動するグリッパクランプは、突出する緯糸の糸端をきわめて短いものとし、このグリッパクランプは、織機杼口の方向の経路上にあるグリッパ6が吸入チャンバブロック10に対して最小限の間隔距離にあるときに初めて閉じる。
【0036】
グリッパクランプが閉じる間における更なる時間遅れにより、いわゆるループアウトによって、突出する緯糸の糸端を実際にさらに短くすることができる。その点について、挿入方向36に移動するグリッパ6は、すでに把握されているがまだ締め付けられていない緯糸3または4を吸入チャンバブロック10の外側に引っ張るとともに、緯糸の糸端を吸入チャンバブロック10から完全に引き出される前にきつく締め付ける。このループアウトが確実に機能するように、ボビン1から来ている緯糸3は、糸クランプによって締め付けられる。この糸クランプは、見えていないが、ボビン1と投入要素7との間に配置されて、緯糸の糸端がループアウトする間に吸入チャンバブロック10の外側で緯糸3がボビン1から引っ張り出されないようにきつく締め付ける。すなわち、糸クランプの締付力は、吸入チャンバブロック10の把握力よりも大きくなければならない。
【0037】
緯糸3は、織機杼口の内側に完全に引っ張られると、製織筬31によって結合あるいは織交ラインに対して筬打ちされる。同時に織機杼口が閉じて、織機杼口の経糸32が挿入された緯糸3を結合する。結合の直後に、緯糸3は、最も外側の経糸の近傍にあるはさみ9により、挿入側において切断される。
【0038】
ここで、吸入チャンバブロック10は、結合あるいは織交ライン33に対して筬打ちされた緯糸が吸入チャンバの吸入開口30を直接通過して延びるように織機上に配置されている。それによって、緯糸3のボビン側の端部は、はさみ9によって切断された直後に吸入チャンバブロックの気流によって把握され、かつ対応する吸入チャンバ13に引き込まれることが保証される。
【0039】
筬打ちされた緯糸を切断した後における、この緯糸に割り当てられている吸入チャンバ内での、この緯糸のボビン側の糸端の信頼できる把握は、回動フラップ11および分離レバー14の機能によって保証される。このため、回動フラップ11および分離レバー4の動きは、織機の制御装置によって、例えばグリッパおよび投入要素7,8といった緯糸の挿入に参加している他の構成要素の動きと同期する。回動フラップ11および分離レバー14は、2色の緯糸で製織する間、上側位置あるいは下側位置にある。中間位置は設けられていない。
【0040】
緯糸3を挿入する間、回動フラップ11は、図2に示したようにその上側位置にある。したがって、この緯糸3に割り当てられている下側吸入チャンバ13のために、吸入開口30は実質的にあるいはほとんどの部分が覆われず、切断された緯糸3の糸端は気流によって下側吸入チャンバ13内に吸引される。反対に、回動フラップ11は、緯糸4を挿入する間にはその下側位置にあり、気流は基本的に吸入チャンバ12を介して導かれ、緯糸4の糸端は吸入チャンバ12によって把握されて支持される。
【0041】
分離レバー14は、吸入チャンバブロックの外側において2つの緯糸3,4を分離し、対応する緯糸を吸入開口30の前方に最適に位置させ、各緯糸の糸端は、それに割り当てられている吸入チャンバ12あるいは13に吸い込まれる。このため、分離レバー14は、回動フラップ11の動きに同期しつつ、上側位置と下側位置との間でその回転軸15の回りに回動する。
【0042】
図3の構造は、吸入チャンバブロック10,20の実施形態において、図1の構造と相違している。図1および図2の吸入チャンバブロック10は、2色の緯糸での製織のために設けられている。対照的に、図3に示されるとともに請求項10および11に記載されている吸入チャンバブロック20は、2つを上回る色の緯糸での製織に適している。また、それは、各緯糸の色のために、すなわち各緯糸のために別々の吸入チャンバ21、22、23、24がその内部に設けられている、1つの吸入チャンバブロックを備えている。図示した実施形態は、4つの緯糸色での製織を可能とする。それに割り当てられている吸入チャンバ21、22、23、24によって、各緯糸を別々に把握し支持することができるからである。個々の緯糸3、4と吸入チャンバ21、22、23、24との間の割当てを実行するために、吸入チャンバブロック20の全体が、基本的に上下方向に配置されている支軸25の回りに傾動しあるいは回動する。把握された緯糸の糸端は、対応する同様に上下方向に配置された吸入チャンバ21、22、23、24内に支持される。図示した状態において、製織筬31は、結合あるいは織交ライン33に対する筬打ちの後、すでにその後退位置に戻っている。最後に筬打ちされた緯糸43はすでに切断され、緯糸の糸端は割当られた吸入チャンバ24内に引き込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパ織機上において挿入側の織物耳(35)を形成する方法であって、
a) ボビン(1、2、41、42)上に供給されて支持されているいくつかの緯糸(3、4、43、44)の1つを選択的にグリッパ(6)の走行経路(5)内に配置しつつ他の緯糸(3、4、43、44)を前記走行経路の外側に保持し、
b) 前記走行経路内に配置された前記緯糸をグリッパ(6)によって把握して織機杼口に挿入し、
c) 挿入した緯糸(3)を製織筬(31)によって結合ライン(33)に対して筬打ちし、
d) 前記挿入した緯糸(3)を筬打ちの直後に挿入側において切断し、
e) 切断した前記緯糸(3)の前記ボビン側の糸端を、吸入チャンバブロック(10、20)の異なる吸入チャンバによってそれぞれ把握して支持することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップa)からe)を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸入チャンバブロックは、可動要素により、各緯糸に対し異なる吸入チャンバをそれぞれ提供しあるいは準備していることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
グリッパ織機上において挿入側の織物耳(35)を形成する装置であって、
異なるボビン(1、2)から引き出されるとともに、経糸(32)から形成される織機杼口に少なくとも1つのグリッパ(6)によって順番に挿入され、かつはさみ(9)によって挿入側において切断される少なくとも2つの緯糸(3、4、43、44)を備える装置において、
ボビン側の緯糸の糸端を把握して支持するための吸入チャンバブロック(10、20)が前記はさみ(9)の近傍に設けられ、
前記吸入チャンバブロックは、それぞれ1つの緯糸を把握して支持する少なくとも2つの吸入チャンバ(12、13)に分割され、
前記吸入チャンバは、可動要素によって各緯糸のために提供されあるいは準備されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記可動要素は、前記吸入チャンバブロックの内部に設けられた回動フラップ(11)から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記回動フラップの制御された切り替えが、前記緯糸のための投入要素(7、8)の動きに同期していることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記緯糸(3、4)をそれぞれ案内して位置決めするための分離レバー(14)が吸引開口(30)の近傍に回動可能に配置され、
前記分離レバー(14)は、前記緯糸の糸端を順番に把握しかつ保持できるように、前記回動フラップ(11)に同期して作動可能となっていることを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記可動要素は、前記吸入チャンバブロック(20)の駆動装置の一部であり、それによって前記緯糸をそれぞれ異なる吸入チャンバに割り当てることができるように、前記吸入チャンバブロック(20)が可動に配置されていることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項9】
前記吸入チャンバブロックが回動可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記吸入チャンバブロック(20)が、円形あるいは扇状に形成された断面を有し、
前記吸入チャンバ(21、22、23、24)は、それぞれ扇状に形成された横断面を具備していることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
請求項4乃至10のいずれか一項に記載の装置によって特徴付けられる織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−538993(P2009−538993A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512401(P2009−512401)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/DE2007/000695
【国際公開番号】WO2007/137544
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(591021578)リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (28)
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】