説明

グリーンハニカム成形体の欠陥を検査する方法、及び、グリーンハニカム成形体の欠陥の検査装置

【課題】グリーンハニカム成形体の欠陥を容易に検査できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】互いに平行に伸びる複数の流路110を形成する隔壁112、及び、複数の流路110の内の一部の上端及び残部の下端を閉鎖する封口部114を有するグリーンハニカム成形体100の欠陥を検査する方法である。複数の流路110の下端に対してガスによる圧力を印加する工程と、複数の流路110の上端近傍のガス屈折率の分布を可視化する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンハニカム成形体の欠陥を検査する方法、及び、グリーンハニカム成形体の欠陥の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、いわゆるハニカムフィルタの焼成前の成形体であるグリーンハニカム成形体の欠陥検査方法が知られている。例えば、特許文献1、2には、微粒子を含むガス流をグリーンハニカム成形体の入口端面に提供し、このグリーンハニカム成形体の出口端面を出るガス流をスクリーンなどの透過性部材を通して流し、この透過性部材を出る微粒子を光源を用いて照明することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−503508号公報
【特許文献2】特表2002−357562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、微粒子がグリーンハニカム成形体内に残存してしまうため、検査後に微粒子を除去する必要があり煩雑である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、グリーンハニカム成形体の欠陥を容易に検査できる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、互いに平行に伸びる複数の流路を形成する隔壁、及び、前記複数の流路の内の一部の一端及び前記複数の流路の内の残部の他端を閉鎖する封口部を有するグリーンハニカム成形体の欠陥を検査する方法である。そして、この方法は、複数の流路の一端に対してガスによる圧力を印加する工程と、複数の流路の他端近傍のガス屈折率の分布を可視化する工程と、を備える。
【0007】
本発明によれば、流路同士が連通する欠陥や封口部の欠陥が無い場合、各流路の一端又は他端が封口部によって閉鎖されているので、ガスが流路を通過して流路の他端から流出することはない。これに対して、隔壁に流路同士を連通させる欠陥があったり、流路の封口部に欠陥がある場合、圧力を印加するためのガスが流路を通過してその流路の他端から流出する。したがって、漏れるガスの屈折率を他端近傍における雰囲気ガスの屈折率と異ならせておくことにより、屈折率の分布が変化し、この変化を可視化することにより欠陥の有無や場所を検出できる。
【0008】
ここで、屈折率の分布を、シャドウグラフ法、マッハツェンダー法、及び、シュリーレン法のいずれかにより可視化することが好ましく、特に、シュリーレン法により検出することが好ましい。
【0009】
また、複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスの密度を0℃、1atmにおいて1としたときに、圧力を印加するためのガスの密度が0℃、1atmにおいて0.1〜0.9、又は、1.1〜5.0であることが好ましい。これにより、雰囲気ガスと、漏れるガスとの間に十分な屈折率差が与えられて、ガスの漏れを好適に検出できる。
【0010】
具体的には、複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスとは異なる組成のガスにより複数の流路の一端に対して圧力を印加することが好ましい。
【0011】
特に、複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスが空気であり、圧力を印加するためのガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、酸素、及び、二酸化炭素からなる群から選択されるいずれかのガス、又は、この群の内の2種以上の混合ガス、又は、この群の内の1種以上と空気との混合ガスであることが好ましい。
【0012】
また、複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスとは異なる温度のガスにより、複数の流路の一端に対して圧力を印加することも好ましく、これにより、圧力を印加するガスとして複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスと同じ組成のガスを用いる場合であっても、ガスに密度差を与えることができ、可視化が可能である。
【0013】
また、可視化する工程において、可視化する視野内に(好ましくは、複数の流路の他端近傍に)スケールを配置することが好ましく、これによりガスが漏れた場所を特定しやすく、欠陥の位置を把握しやすい。
【0014】
また、可視化する工程において、複数の流路の他端近傍のガスの屈折率の分布を、複数の流路の軸線と直交する方向から可視化することが好ましい。これにより、ガスの漏れを検出しやすい。
【0015】
特に、可視化する工程において、複数の流路の他端近傍のガスの屈折率の分布を、複数の流路の軸線と直交する2方向からそれぞれ可視化することが好ましい。これにより、漏れの場所についての二次元的な情報(例えば、座標)が得られ、欠陥のある流路の特定が容易である。
【0016】
また、グリーンハニカム成形体は、無機化合物源と、バインダと、を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様は、互いに平行に伸びる複数の流路を形成する隔壁、及び、複数の流路の内の一部の一端側及び複数の流路の内の残部の他端側を閉鎖する封口部を有するグリーンハニカム成形体の欠陥の検査装置である。この装置は、複数の流路の一端に対してガス供給源から供給されるガスによる圧力を印加する圧力印加部材と、複数の流路の他端近傍のガス屈折率の分布を可視化する可視化部と、を備える。
【0018】
本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、上述の検査方法により欠陥を有さないハニカム成形体を選別する工程と、
前記選別されたハニカム成形体を焼成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、グリーンハニカム成形体の欠陥を容易に検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1の(a)は検査対象となるグリーンハニカム成形体100の斜視図、図1の(b)は(a)のIb−Ib矢視図である。
【図2】図2は、グリーンハニカム成形体100の欠陥の検査装置400の概略断面図である。
【図3】図3は、図2の上面図である。
【図4】図4の(a),(b)は、それぞれシュリーレン部300A,300Bのカメラによって撮影された像400A,400Bの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態で検査対象となるグリーンハニカム成形体100について説明する。
【0022】
本実施形態において対象となるグリーンハニカム成形体100は、図1の(a)及び(b)に示すように、互いに平行に伸びる複数の流路110を形成する隔壁112、及び、複数の流路110の内の一部の一端(図1の(b)の左端)、及び、複数の流路110の内の残部の他端(図1の(b)の右端)を閉鎖する封口部114を有する円柱体である。
【0023】
グリーンハニカム成形体100の流路110が延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、グリーンハニカム成形体100の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。流路110の断面のサイズは、例えば、正方形の場合一辺0.8〜2.5mmとすることができる。隔壁112の厚みは、0.05〜0.5mmとすることができる。
【0024】
グリーンハニカム成形体100は、焼成することにより多孔性セラミクスとなるグリーン(未焼成体)であり、セラミクス原料を含む非多孔性の材料である。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0025】
グリーンハニカム成形体100は、好ましくは、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0026】
例えば、セラミクスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0027】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。有機バインダの量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部である。また、有機バインダの下限量は、0.1重量部であることが好ましく、より好ましくは3重量部である。
【0028】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0029】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜40重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜25重量部である。
【0030】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0031】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、0〜20重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜8重量部である。
【0032】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。溶媒の使用量は、無機化合物源粉末の100重量部に対して、10重量部〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは20重量部〜80重量部である。また、グリーンハニカム成形体全体の重量に対する溶媒の重量は特に限定されないが、10〜30wt%が好ましく、15〜20wt%がより好ましい。
【0033】
上述のように、グリーンハニカム成形体100の複数の流路110のうちの一部の左端が封口部114により封口され、グリーンハニカム成形体100の複数の流路110のうちの残部の右端が封口部114により封口されている。封口部114としては、グリーンハニカム成形体100と同様の、焼成することによりセラミクスとなる材料を用いることができる。上述の「複数の流路110のうちの一部」と「複数の流路110のうちの残部」とは、好ましくは、図1の(a)に示すように、端面側から見て行列状に配列された複数の流路の内の、縦方向及び横方向それぞれ1つおきに選択された流路の組合せである。
【0034】
このようなグリーンハニカム成形体100は例えば以下のようにして製造することができる。
【0035】
まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、所望の長さに切断後、公知の方法で乾燥することにより、グリーンハニカム成形体100を得ることができる。その後、公知の方法によって流路110の端部を封口すればよい。
【0036】
続いて、図2及び図3を参照して、グリーンハニカム成形体100の検査装置について説明する。
この検査装置400は、グリーンハニカム成形体100の複数の流路110の一端(図2の下端)にガス供給源210から供給されるガスによる圧力を印加するための圧力印加部材200と、複数の流路110の他端(図2の上端)近傍のガス屈折率の分布を可視化する可視化部としてのシュリーレン部300A,300Bと、スケール360A,360Bと、を備える。
【0037】
圧力印加部材200は、グリーンハニカム成形体100の軸方向(複数の流路110の軸方向)の一端部(図2では下端部)を外側から包囲してシールする筒状シール部201と、複数の流路110の下端110bと対向する部分に空間Vを形成する空間形成部202とを有する。
【0038】
空間形成部202には、バルブV1を有するラインL1を介してガス供給源210が接続されている。
【0039】
ガス供給源210のガスは、複数の流路110の上端110tの近傍の雰囲気ガスとは異なる屈折率のガスであれば特に限定されない。異なる屈折率とするためには、ガスの密度を変えればよい。ガス供給源210のガスの密度は、0℃、1atmにおける雰囲気ガスの密度(例えば空気)を1として、0℃、1atmにおいて0.1〜0.9、又は、1.1〜5.0であることが好ましい。
【0040】
具体的には、例えば、ガス供給源210のガスとして、雰囲気ガスとは異なる組成のガスを用いればよい。例えば、検査の容易さから雰囲気ガスは空気であることが好ましく、雰囲気ガスが空気である場合には、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、酸素、及び、二酸化炭素からなる群から選択されるいずれかのガス、又は、この群の内の2種以上の混合ガス(空気組成を除く)、又は、この群の内の1種以上と空気との混合ガスであることが好ましい。また、ガス供給源210のガスの温度は0〜30℃であることが好ましい。
【0041】
また、ガス供給源210のガスと雰囲気ガスとの組成が同じ場合であっても、ガス供給源210のガスの温度を、雰囲気ガスとは異なる温度とすることにより雰囲気ガス中に漏出した状態で密度差、すなわち屈折率差を与えることもできる。この場合、温度差は、10〜50℃とすることが好ましい。勿論組成、及び、温度の両方に差をつけてもよい。
【0042】
図3に示すシュリーレン部300A,300Bは、それぞれ、図2に示すようにグリーンハニカム成形体100の複数の流路110の上端110t近傍のガス屈折率の分布を可視化するものであり、光源部301、及び観測部302をそれぞれ備える。光源部301は、光源340、及び、光源340から出射する光を平行光にするコリメータレンズ350を備える。観測部302は、コリメータレンズ350から出射され、複数の流路110の上端110t上を通過した光を収束させるコリメータレンズ320、収束した光の焦点位置に設けられたナイフエッジ330、及び、ナイフエッジ330通過後の光の像を撮影するカメラ310を備える。
【0043】
本実施形態では、図3に示すように、第1のシュリーレン部300Aの光源部301及び観測部302は、複数の流路110が伸びるZ方向に垂直な方向であるX方向に互いに離間しつつ、複数の流路110の上端110tの近傍の部分を間に挟むように配置されている。一方、第2のシュリーレン部300Bの光源部301及び観測部302は、複数の流路110が伸びるZ方向に垂直な方向であるY方向に互いに離間しつつ、複数の流路110の上端110tの近傍の部分を間に挟むように配置されている。これにより、複数の流路110の上端110t近傍のガスの屈折率の分布を、複数の流路110の軸線であるZ軸と直交する2方向(X方向及びY方向)からそれぞれ可視化可能となっている。
【0044】
図2及び図3に示すように、スケール360Aは、シュリーレン部300Aが観察する視野内に存在するように、スケール360Bは、シュリーレン部300Bが観察する視野内に存在するように、それぞれ複数の流路110の上端110tよりも上方かつ各シュリーレン部300A,300Bの光源部301寄りに配置されている。スケール360A,360Bは、それぞれ、シュリーレン部300A,300Bの観測部302から見て、複数の流路110の中心軸に対応する位置にそれぞれマーク361を有する。
【0045】
続いて、上述の検査装置400を使用したグリーンハニカム成形体100の検査方法について説明する。
【0046】
ここでは、一例として、図2に示すように、グリーンハニカム成形体100の隔壁112には、欠陥として、上端が封口された流路110xと、下端が封口された流路110yとを連通させる孔hがあるものとする。ここで、図2及び図3に示すように、流路110xは、スケール360Bにおいて一番左側のマーク361の位置にあり、かつ、スケール360Aにおいて下から3番目のマーク361の位置にある。一方、流路110yは、スケール360Bにおいて左から2番目のマーク361の位置にあり、スケール360Aにおいて下から3番目のマーク361の位置にあるものとする。
【0047】
まず、圧力印加部材200をグリーンハニカム成形体100の下部に装着する。そして、バルブV1を開放して、例えば、アルゴンガスにより、グリーンハニカム成形体100の複数の流路110の下端にガスによる圧力を印加する(圧力を印加する工程)。圧力は特に限定されないが、例えば、大気圧に対する差圧として、0.01〜1MPaとすることができる。そして、複数の流路110の上端110tの近傍には、雰囲気ガスの流れが殆ど無い状態、例えば、流速1m/s以下としておくことが好ましい。また、実験の容易さから、雰囲気ガスの温度は0〜30℃であることが好ましい。
【0048】
このように圧力を印加すると、図2に示すような孔hが存在する場合、流路110x、孔h、及び、流路110yによって複数の流路110の上端110tと下端110bとを結ぶ流路が形成されるため、当該欠陥がある流路110yの上端から、加圧に使用したガスGが流出する。封口部114が欠落している場合や、封口部114と流路110とのあいだに隙間が生じている等の欠陥がある場合も同様である。これに対して、グリーンハニカム成形体100に、上述のような欠陥が無い場合には、複数の流路110の下端に圧力が印加されても、複数の流路110の上端110tを越えてガスが流れ出ることはできず、複数の流路110の上端110t上にガスは流出しない。
【0049】
そして、ガスGの屈折率が、複数の流路110の上端近傍の雰囲気ガスの屈折率と異なるため、欠陥がある場合には流路110yの上端近傍では屈折率のムラが生ずる。
【0050】
そして、この屈折率のムラを、シュリーレン部300A,300Bによってそれぞれ明暗の差等として可視化する(可視化する工程)。例えば、シュリーレン部300A,300Bのカメラによって撮影される像400A,400Bの模式図をそれぞれ図4の(a),(b)に示す。
【0051】
像400Aでは、スケール360Aの左から3番目のマーク361の上に屈折率のムラに基づく濃淡がある部分Dが見え、像400Bでは、スケール360Bの左から2番目のマーク361の上に屈折率のムラに基づく濃淡がある部分Dが見え、座標(3、2)というデータを得ることができる。
【0052】
像400A,400Bに基づいて、人手によって部分Dの有無や位置を判断してもよいが、公知の画像処理方法によって、部分Dの有無や位置を判断してもよい。
【0053】
本発明によれば、流路の欠陥の有無に応じて、当該流路110yの近傍に屈折率のムラが生じ、これを可視化することにより欠陥の有無や場所を容易に検出できる。
【0054】
特に、本実施形態では、複数の流路110の上端110t近傍のガスの屈折率の分布を、複数の流路110の軸線(Z軸)と直交する2方向(X方向、Y方向)からシュリーレン部300A,300Bによってそれぞれ可視化するので、屈折率にムラのある場所について二次元的な情報(座標)が得られ、欠陥のある流路の特定が容易である。また、スケール360A,360Bを備えることにより、より一層、欠陥のある流路の特定が容易となっている。
【0055】
また、ガス中に、ガス以外の微粒子(例えば、グリコール系微粒子や、水蒸気ミスト)を添加する必要が無いので、検査後に微粒子を除去する必要がなく簡便である。
【0056】
そして、本実施形態により良品と判断されたグリーンハニカム成形体を、公知の方法で焼成することにより、セラミクス多孔体から形成されたセラミクスハニカム焼成体が得られる。このセラミクスハニカム焼成体は、ディーゼル粒子フィルタ(DPF)等として使用できる。
【0057】
本発明は上記実施形態に限定されずさまざまな変形態様が可能である。
例えば、上記実施形態では、屈折率の分布の可視化方法として、シュリーレン法を採用しているがガスの屈折率差を可視化できるものであればこれに限定されず、例えば、シャドウグラフ法やマッハツェンダー法を採用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、2つのシュリーレン部300A、300Bを有するが、いずれかのシュリーレン部のみを有していても欠陥の有無の判定は可能であり、また、大体の欠陥の位置は把握できる。
【0059】
また、上記実施形態では、雰囲気ガスが空気であるが、他のガスを雰囲気ガスとしてもよいことは言うまでも無い。
【0060】
また、上記実施形態では、グリーンハニカム成形体100の流路110が上下方向に配置されているが、いずれの方向を向いても実施可能である。
【0061】
また、上記実施形態では、流路110の断面形状は、略正方形であるがこれに限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等にすることができる。また、流路110には、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。また、流路の配置も、図1では正方形配置であるが、これに限定されず、断面において流路の中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、千鳥配置等にすることができる。さらに、グリーンハニカム成形体の外形も、円柱に限られず、例えば3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
100…グリーンハニカム成形体、110…流路、110t…流路の上端(一端)、110b…流路の下端(他端)、112…隔壁、114…封口部、200…圧力印加部材、300A,300B…可視化部、360…スケール、400…検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に伸びる複数の流路を形成する隔壁、及び、前記複数の流路の内の一部の一端及び前記複数の流路の内の残部の他端を閉鎖する封口部を有するグリーンハニカム成形体の欠陥を検査する方法であって、
前記複数の流路の一端に対してガスによる圧力を印加する工程と、
前記複数の流路の他端近傍のガス屈折率の分布を可視化する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記屈折率の分布を、シャドウグラフ法、マッハツェンダー法、及び、シュリーレン法のいずれかにより可視化する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記屈折率の分布を、シュリーレン法により検出する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスの密度を0℃、1atmにおいて1とした場合に、前記圧力を印加するためのガスの密度が0℃、1atmにおいて0.1〜0.9、又は、1.1〜5.0である請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスとは異なる組成のガスにより前記複数の流路の一端に対して圧力を印加する請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスが空気であり、前記圧力を印加するためのガスが、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、キセノン、クリプトン、酸素、及び、二酸化炭素からなる群から選択されるいずれかのガス、又は、この群の内の2種以上の混合ガス、又は、この群の内の1種以上と空気との混合ガスである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記複数の流路の他端近傍の雰囲気ガスとは異なる温度のガスにより前記複数の流路の一端に対して圧力を印加する請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記可視化する工程において、前記可視化する視野内にスケールを配置する請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記可視化する工程において、前記複数の流路の他端近傍のガスの屈折率の分布を、前記複数の流路の軸線と直交する方向から可視化する請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記可視化する工程において、前記複数の流路の他端近傍のガスの屈折率の分布を、前記複数の流路の軸線と直交する2方向からそれぞれ可視化する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記グリーンハニカム成形体は、無機化合物源と、バインダと、を含む請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
互いに平行に伸びる複数の流路を形成する隔壁、及び、前記複数の流路の内の一部の一端及び前記複数の流路の内の残部の他端を閉鎖する封口部を有するグリーンハニカム成形体の欠陥の検査装置であって、
前記複数の流路の一端に対してガス供給源から供給されるガスによる圧力を印加する圧力印加部材と、
前記複数の流路の他端近傍のガス屈折率の分布を可視化する可視化部と、を備える検査装置。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法により欠陥を有さないハニカム成形体を選別する工程と、
前記選別されたハニカム成形体を焼成する工程と、を含むハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257388(P2011−257388A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107391(P2011−107391)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】