グルコース濃度測定装置・光学装置・リング状光束形成装置およびグルコース濃度測定方法。
【課題】グルコース濃度測定において、測定ノイズを有効に軽減もしくは防止し、測定精度を高める。
【解決手段】前眼房の光学的厚さを検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率と予め設定されたグルコース濃度の対応関係に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置であって、前眼房の光学的厚さを検出する光学装置および、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段を有し、光学装置の有する「照明用光束の断面形状をリング状に整形してリング状照明光束とするリング状光束形成手段」が、測定用光束が眼球における1つの境界面に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光がピンホール板上に形成するリング像の内径が、ピンホールの開口径以上となるようにリング状照明光束の内径を規制する機能を有する。
【解決手段】前眼房の光学的厚さを検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率と予め設定されたグルコース濃度の対応関係に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置であって、前眼房の光学的厚さを検出する光学装置および、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段を有し、光学装置の有する「照明用光束の断面形状をリング状に整形してリング状照明光束とするリング状光束形成手段」が、測定用光束が眼球における1つの境界面に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光がピンホール板上に形成するリング像の内径が、ピンホールの開口径以上となるようにリング状照明光束の内径を規制する機能を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、グルコース濃度測定装置、このグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置、この光学装置に用いられるリング状光束形成装置、およびグルコース濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「血液中のグルコース濃度」は、個人により平均レベルは異なるが、特に糖尿病疾患に対する投薬の要否を決定する重要な指標値となっている。グルコース濃度は、食餌、運動、疾患の併発等により「短時間の間に大きく変動する特性」を有しており、血中グルコース濃度の急激な上昇によって投薬に緊急を要する場合も少なくない。
【0003】
近時「人の眼球における角膜と水晶体との間にある前眼房を満たす前眼房内媒質のグルコース濃度」が、個人差はあるが「血中グルコース濃度と極めて高い相関関係」を有することが知られている。
【0004】
さらに「前眼房内媒質のグルコース濃度と前眼房内媒質の屈折率との間に極めて高い相関がある」との知見に基づき、前眼房内媒質の屈折率を測定することにより「前眼房内媒質のグルコース濃度を非侵襲的に測定」することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に「第5のグルコース濃度測定方法を実施するための第5のグルコース濃度測定装置の一実施形態」として記載されたものは、共焦点光学系の利用により「特定波長の単一光源のみでグルコース濃度測定を可能にしたもの」である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−239567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼球には、周知の如く、外部から内部に向って「角膜、前眼房、水晶体、硝子体」が順に配置し、硝子体の最奥部に網膜が存在する。
特許文献1のグルコース濃度測定方式で前眼房材質の屈折率を求める場合、集光光束を角膜と前眼房との境界面、前眼房と水晶体との境界面上に順次に集光させて、前眼房の光学的厚さを検出するが「集光光束が集光している境界面」以外の面(角膜表面や水晶体と硝子体との境界面等)からの反射光が測定ノイズとして作用しやすい。
【0008】
この発明は、グルコース濃度測定において、測定ノイズを有効に軽減もしくは防止し、測定精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のグルコース濃度測定装置は「眼球における前眼房の光学的厚さを光学的方法により検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率を用い、予め設定された屈折率とグルコース濃度の対応関係に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出する装置であって、光学装置および演算手段を有する。
【0010】
なお「前眼房内媒質」は前眼房内部を満たす液状の媒質であり、「眼房水」とも呼ばれている。
【0011】
「光学装置」は、眼球の前眼房の光学的厚さを光学的に検出する装置である。
「演算手段」は、光学装置により検出される前記光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段を有する。
【0012】
光学装置は、具体的には、照明用光源、コリメートレンズ、集光レンズ、光検出器、光路分離手段、検出レンズ、ピンホール板、集光位置変位手段、リング状光束形成手段を有する。
【0013】
「照明用光源」は、照明光を放射する光源でレーザ光源である。従って、照明用光源からは「レーザ光」が放射される。
照明用光源としては公知の各種のレーザ光源を用いることができるが、小型で低コストであることから「半導体レーザ」は好適なものの一つである。他のレーザ光源として面発光型レーザ(VCSEL)も好適である。
照明用光源がレーザ光源であることから、放射されるレーザ光は実質的な「直線偏光状態」である。
【0014】
「コリメートレンズ」は、照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化する。このように平行光束化されたレーザ光束を「照明用光束」と呼ぶ。
照明用光束は、その全てが照明に用いられるのではなく、後述のように「少なくとも光束中心部を除かれた残り」が照明に用いられる。
【0015】
「集光レンズ」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束を、眼球に向って集光する集光光束に変換する。
「光検出器」は、照明用光束を照射された眼球から集光レンズを介して戻る測定光束を受光して電気信号に変換する。「測定光束」は、眼球の角膜表面や内部の境界面で反射されて集光レンズを逆向きに透過した光である。
【0016】
光検出器としては従来から広く知られた各種の受光素子を用いることができる。
【0017】
「光路分離手段」は、測定光束を「照明用光束の光路から光検出器側へ分離」する手段であり、半透鏡や各種ビームスプリッタを適宜に用いることができる。光路分離手段は従って、コリメートレンズから集光レンズへ向う照明用光束の光路上に配置される。
【0018】
「検出レンズ」は、光路分離手段により分離された測定光束を、光検出器の受光面近傍に向けて集光させるレンズである。
「ピンホール板」は、光検出器の受光面近傍の所定位置に(固定的に)配置される。
【0019】
即ち、ピンホール板は「集光レンズによる照明用光束の集光位置」を物点とするとき、集光レンズと検出レンズとによる「物点に対する像点」位置に、所定開口径のピンホールを有する。
【0020】
「集光位置変位手段」は、集光レンズによる照明用光束の集光位置を、集光レンズの光軸方向に変位させる手段である。
「リング状光束形成手段」は、コリメートレンズと集光レンズとの間の光路上に配置され、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状を「リング状に整形してリング状照明光束とする」手段である。
【0021】
「照明用光束の断面形状」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の伝搬方向(コリメートレンズの光軸方向)に直交する仮想的な平面による光束の断面形状である。
【0022】
コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状は一般に「円形状もしくは楕円形状」である。そして、このような断面形状をもつ照明用光束が、その断面形状をリング状、即ち「円環状あるいは楕円環状」に変換されて照明に供されるのである。
【0023】
「演算手段」は、前眼房基礎データおよび「前眼房内媒質の屈折率とグルコース濃度との対応関係」についてのデータを設定可能であり、照明用光束が、前眼房の前側境界面および後側境界面に集光するときときの「集光位置の変位量」として検出される「前眼房の光学的厚さ」に基づき房媒質の屈折率を演算し、さらに、演算された屈折率に基づき「前眼房内媒質のグルコース濃度」を演算する機能を有する。
【0024】
「前眼房基礎データ」は、グルコース測定装置を使用する使用者(グルコース濃度を測定される被測定者)の個人データであり、予め測定された「前眼房の厚さ」と前眼房内媒質の「基準的な屈折率」である。「前眼房の厚さ」は実質的に一定である。
【0025】
「前眼房内媒質の屈折率とグルコース濃度との対応関係」は、基本的には被測定者における両者の対応関係であるが、例えば、特許文献1に記載された関係:
n=1.33322+1.6×10−6×G (n:前眼房内媒質の、G:グルコース濃度(mg/dl)。)
を用いることができる。
【0026】
「前眼房の前側境界面(以下、単に「前側境界面」と言う)」は、前眼房と角膜との境界面を謂う。
「前眼房の後側境界面(以下、単に「後側境界面」と言う。)」は、前眼房と水晶体との境界面を言う。
また、角膜の空気との境界面は前述の如く「角膜表面」と呼び、水晶体と硝子体との境界面は「水晶体後側境界面」と呼ぶことにする。
【0027】
「前眼房内媒質のグルコース濃度」は、前眼房を満たしている前眼房内媒質に含まれるグルコースの濃度である。前述の如く、このグルコース濃度は血中グルコース濃度と高い相関を有する。
【0028】
「リング状光束形成手段」は、測定用光束が眼球における1つの境界面(上記「角膜表面」、「前側境界面」、「後側境界面」、「水晶体後側境界面」)に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光が「ピンホール板上に形成するリング像」の内径が、ピンホールの開口径以上となるように、リング状照明光束の内径(リング状照明光束の「リング状の断面形状」の内径)を規制する機能を有する。
【0029】
集光レンズによる集光光束は「眼球に向って集束しつつ入射する」ので、例えば、照明用光束が、角膜表面に集光しているときは、前側境界面、後側境界面、水晶体後側境界面を照射する光は発散性であり、これらの境界面上をリング状に照射する。
【0030】
角膜、前眼房、水晶体、硝子体はそれぞれ屈折率の異なる媒質で構成されているので、上記境界面では屈折率が不連続に変化しており、従ってこれら境界面で反射が生じる。
【0031】
このとき、角膜表面を照射する光は角膜表面に集光しているので、角膜表面からの反射光は「集光位置」を物点とし、集光レンズと検出レンズとの作用により、ピンホール板のピンホール位置に集光する。このピンホール位置への集光光束のビームウエスト径を、ピンホールの開口径より大きくとれば、角膜表面からの反射光(測定光束)はもれなく光検出器の受光面に入射する。
【0032】
上記各境界面の「リング状に照射された部分」からの反射光は、集光レンズと検出レンズとによりピンホール板の近傍に「リング状の像(リング像)」を結像するが、その結像位置はピンホール板とは「ずれている」ため、ピンホール板上では「若干ぼけた状態」になる。
【0033】
また、集光レンズによる集光光束が前側境界面に集光する状態では、角膜表面は集束途上の光束によりリング状に照射され、後側境界面、水晶体後側境界面は発散状態の光束によりリング状に照射される。
前側境界面からの反射光は、ピンホールの位置に集光する。角膜表面、後側境界面、水晶体後側境界面の「リング状の照射部分からの反射光」は、やはり、ピンホール板上に若干ぼけた「リング状」部分を照射する。
【0034】
同様に、集光レンズによる集光光束が「後側境界面に集光する状態」では、角膜表面と前側境界面は集束途上の光束によりリング状に照射され、水晶体後側境界面は発散状態の光束によりリング状に照射される。
後側境界面からの反射光はピンホールの位置に集光する。角膜表面、前側境界面、水晶体後側境界面の「リング状の照射部分からの反射光」は、やはり、ピンホール板を若干ぼけた「リング状」に照射する。
【0035】
「水晶体後側境界面に集光光束が集光する」ときは、角膜表面、前側境界面、後側境界面は何れも集束途上の光束によりリング状に照射され、これらの照射部分からの反射光は、ピンホール板上の「若干ぼけたリング状部分(リング像)」を照射する。水晶体後側境界面での反射光はピンホール位置に集光する。
【0036】
従って、ピンホールの開口径が「ピンホール位置に集光する光束のビームウエスト」よりも大きく、ピンホール板上に生成される「リング状に照射される部分(リング像)のうちで最小のものの内径」よりも小さければ、集光光束が集光している「角膜表面や他の境界面」からの各反射光を適正にピンホールを通して光検出器に導き得るとともに、「集光光束が集光することなくリング状に照射している面」からの反射光はピンホール板により、光検出器に対して有効に遮断され測定に対するノイズ光となることがない。
【0037】
上記請求項1記載のグルコース濃度測定装置に用いられる「集光位置変位手段」は、集光レンズをその光軸方向へ変位させるレンズ変位装置であることができる(請求項2)。集光位置変位手段としてはまた、上記光学装置の「照明用光源、コリメートレンズ、集光レンズ、光検出器、光路分離手段、検出レンズ、ピンホール板、リング状光束形成手段」を一体的に構成し、これらを一体として集光レンズの光軸方向へ変位させる変位手段として構成しても良い。
【0038】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光する遮光板であることができる(請求項3)。
【0039】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置はまた「集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間」に1/4波長板を有し、光路分離位置と1/4波長板との間に、リング状光束形成手段を配置した構成とすることができる。「光路分離位置」は、測定光束の光路が、照明光束用の光路から分離する位置である。
【0040】
リング状光束形成手段は「コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光し、眼球から集光レンズと1/4波長板とを介して戻る測定光束を、そのまま光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の遮光板」とすることができ(請求項4)、あるいはまた「コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束から除去し、眼球から集光レンズと1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の回折素子」とすることもできる(請求項5)。
【0041】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」はまた、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の「少なくとも光束中心部を回折させて前記照明用光束から除去する回折素子」であることもできる(請求項6)。
【0042】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」はまた、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の光束断面形状を「リング状の発散光」に変換する第1の光学素子と、リング状の発散光に変換された光束を「リング状の光束断面を持つ平行光束」に変換する第2の光学素子とを有することができる(請求項7)。
【0043】
上記請求項1〜7の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置は、集光レンズの眼球側に「照明用光束の波長の光は透過させるバンドパスフィルタ」を有することができる(請求項8)。
「バンドパスフィルタ」は、測定に対して外乱となる外部光を有効に除去できるものであればよく、照明用光束の光を含む波長帯域の光を適宜に通過させるものであればよい。
【0044】
請求項8記載のグルコース濃度測定装置は、照明用光源とバンドパスフィルタの何れかが「光路を偏向させる偏向ミラー」を備えることができる(請求項9)。
【0045】
この発明の「光学装置」は、上記請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置である(請求項10)。
【0046】
また、請求項11記載の「リング状光束形成手段」は、上記請求項4または5または6または7記載のグルコース濃度測定装置に用いられるリング状光束形成手段である。
【0047】
請求項12記載のグルコース濃度測定方法は、上記請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置を用いるグルコース濃度測定方法である。
【発明の効果】
【0048】
以上に説明したように、この発明によればグルコース測定装置における測定ノイズを有効に軽減させ、もしくは防止させることができ、グルコース濃度を精度良く測定できる。
【0049】
また、後述する実施の形態のようにこの発明のグルコース測定装置は小型に形成でき、携帯を容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施の形態を説明する。
図1はグルコース濃度測定装置の実施の1形態を説明するための図である。
図1(a)において、符号11は照明用光源、符号12はコリメータレンズ、符号13は遮光板、符号14は偏光ビームスプリッタ、符号15は1/4波長板、符号16は集光レンズ、符号17は眼球、符号18は検出レンズ、符号19はピンホール板、符号20は光検出器、符号21は外光カットフィルタ、符号22は変位手段、符号23は制御・演算表示手段を示す。
【0051】
照明用光源11はレーザ光源で、この例においては「端面発光型の半導体レーザ」が用いられている。放射される光は赤外領域の「不可視光領域(例えば、波長:850nm)のレーザ光」で不可視光であるので、これを眼球に照射しても「瞳が閉じる」こともないので、適正な測定を行なうことができる。
【0052】
照明用光源11から放射されたレーザ光は、コリメートレンズ12により平行光に変換されて照明用光束LAとなり、照明用光束LAの主光線に直交するように配置された遮光板13を通過する。
【0053】
遮光板13は「コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの断面形状をリング状に整形してリング状照明光束LBとするリング状光束形成手段」を構成するものである。
【0054】
即ち、遮光板13は、透明な平行平板の片面に「例えば、金属蒸着等による遮光パターン」が形成されたものであり、図1(c)に示すように、円環状の光透過部13aと遮光部13b、13cとを有している。遮光部13b、13cによる遮光は吸収により行なっても良いし反射により行なっても良い。
【0055】
従って図1(d)に示すように、照明用光束LAが遮光板13を通過すると、通過した光束は「光束断面形状LB1がリング状」であるリング状照明光束LBとなる。遮光板13の円環状の光透過部13aの中心は、照明用光束LAの主光線の位置と合致する。
【0056】
即ち、遮光板13は「コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部」を遮光する。
【0057】
このように「光束断面形状がリング状となった平行光束」であるリング状照明光束LBは、偏光ビームスプリッタ14に入射する。
照明用光源11から放射されるレーザ光は「実質的な直線偏光状態」にあり、偏光ビームスプリッタ14は、リング状照明光束LBをP偏光として透過させるように態位を調整されている。
【0058】
偏光ビームスプリッタ14を透過したリング状照明光束LBは、ついで1/4波長板15を透過して「円偏光」に変換され、集光レンズ16により集光光束に変換され、外光カットフィルタ21を介して眼球17に向って集光する。
【0059】
外光カットフィルタ21は「外部の光がノイズとして作用するのを防止」する上で有効であり、これを用いることが好ましいが測定の原理上は必ずしも必要ではない。
【0060】
眼球17により反射された光は「戻り光」となり、外光カットフィルタ21と集光レンズ16とを介して「測定光束LC」となる。
【0061】
この測定光束LCは、1/4波長板15を透過すると直線偏光状態となるが、その偏光面はリング状照明光束LBの偏光面とは直交しており、従って偏光ビームスプリッタ14に対してS偏光状態となり、偏光ビームスプリッタ14により反射されてリング状照明光束LBの光路から分離する。
【0062】
即ち、偏光ビームスプリッタ14と1/4波長板15とは「光路分離手段」を構成している。
【0063】
このように、リング状照明光束LBの光路(照明用光束LAの光路でもある。)から分離した測定光束LCは検出レンズ18により集光されて、ピンホール板19に向う。
測定光束LCが平行光束であれば、検出レンズ18による「測定光束LCの集光位置」は検出レンズ18の焦点位置であり、この焦点を含む焦点面に合致させてピンホール板19が配置され、ピンホール19aの位置は上記「焦点」に合致している。
従って、集光レンズ16と検出レンズ18とは「共焦点光学系」を構成する。
【0064】
ピンホール板19は図1(e)に示すように、中央部にピンホール19aを形成されて、光検出器20の受光面の近傍に配置され、ピンホール19aの部分でのみ測定光束LCを通過させる。
そして、測定光束LCのうち「ピンホール19aを通過した部分」のみが光検出器20の受光面に入射する。
ピンホール19aの開口径は、検出レンズ18に平行光束状態の測定光束LCが入射するときに、検出レンズ18によって集光される集光径(ビームウエスト径)に略等しく設定されている。
【0065】
光検出器20は受光した光量に応じた電気信号を出力し、この出力は制御・演算表示装置23に入力する。制御・演算表示装置23は、この実施の形態において「演算手段」を構成する。
【0066】
変位手段22は「集光位置変位手段」を構成するものであり、集光レンズ16を光軸方向(図1(a)で上下方向)に変位させる。この変位手段22としては、モータと案内機構等「従来から知られた適宜のもの」を用いることができる。
【0067】
集光レンズ16に入射するリング状照明光束LBは平行光束であるから、集光レンズ16と「集光レンズ16によるリング状照明光束LBの集光位置」との間隔は不変であり、集光レンズ16光軸方向に変位させることにより、上記集光位置を(集光レンズ16との間隔を一定に保ちつつ)上記光軸方向に変位させることができる。
【0068】
「演算手段」を構成する制御・演算表示装置23は、変位装置22による集光レンズ16の変位を制御し、集光レンズ16の変位量を決定する。
【0069】
ここで、眼球17の構造を「測定に必要な部分」のみに簡略化して説明する。
図1(b)において、符号17aで示す部分は「角膜」、符号17cで示す部分は「水晶体」、符号17dで示す部分は「硝子体」である。
【0070】
角膜17aと水晶体17cとで挟まれた部分が「前眼房」であり、符号17bで示す。
【0071】
図1(b)において符号R1は「角膜表面」であり、以下単に「面R1」と称する。
【0072】
符号R2は角膜17aと前眼房17bとの境界面(「前側境界面」)であり以下単に「面R2」と称する。同様に、符号R3は前眼房17bと水晶体17cとの境界面(「後側境界面」)で以下単に「面R3」と称し、符号R4は水晶体17cと硝子体17dの境界面で以下単に「面R4」と称する。
【0073】
以下の説明において「眼球内における面間隔」は、図1(b)に示された眼球の「中心を通る左右方向の直線(眼球光軸)」を考えるとき、この直線上において隣接する面間の間隔である。
前眼房17bについて言えば「上記直線上における面R2と面R3の間の部分」であり、以下「面R2とR3との間隔」を前眼房17bの厚さ:dとする。前眼房17bの厚さ:dは「個人に固有の量」であるが、環境や経時で実質的に変化せず、従って、光学的厚さの算出に当たっては「定数」として扱うことができる。
【0074】
一方、前眼房17bを満たす「前眼房内媒質」の屈折率は、身体状況に応じて変化する量であり、これを「n」で表すこととする。このとき、前眼房17bの光学的厚さは「n・d」である。
【0075】
「前眼房内媒質の屈折率」は被測定者において予め測定され、基準となる屈折率:n0(適正なグルコース濃度に対応する。)を与えるときの値が基準値として制御・演算表示装置23に予め設定されている。即ち、上記「d」と「n0」とが「前眼房基礎データ」である。
【0076】
また、前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係(予め、測定により決定されている。)も制御・演算表示装置23に予め設定されているのである。
【0077】
後述するように、集光レンズ16の変位量として前眼房17bの光学厚さが測定され、この光学厚さと上記前眼房基準データとから前眼房内媒質の屈折率:nが制御・演算表示装置23により算出される。
【0078】
このように算出された屈折率:nと上記「前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係」に基づき、グルコース濃度が制御・演算表示装置23により決定される。
決定されたグルコース濃度は制御・演算表示装置23の「表示部(ディスプレイ 図示されず)」に表示される。なお、表示部を「外部装置」としてグルコース濃度測定装置と別体にしてもよい。
【0079】
以上に説明したように、図1に実施の形態を示すグルコース濃度測定装置は、眼球17における前眼房17bの光学的厚さ:(n・d)を光学的方法により検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率:nを演算し、演算された屈折率:nを用い、予め設定された「屈折率とグルコース濃度の対応関係」に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置である。
【0080】
そして、この装置は、眼球の前眼房17bの光学的厚さ:(n・d)を光学的に検出する光学装置および、この光学装置により検出される光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段23とを有する。
【0081】
「光学装置」は、照明用光源11と、この照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化するコリメートレンズ12と、このコリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAを、眼球17に向って集光する集光光束に変換する集光レンズ16と、眼球17から集光レンズ16を介して戻る測定光束LCを受光して電気信号に変換する光検出器20と、測定光束LCを照明用光束LAの光路から光検出器20側へ分離する光路分離手段14、15と、この光路分離手段により分離された測定光束LCを、光検出器20の受光面近傍に向けて集光させる検出レンズ18と、光検出器の受光面近傍の所定位置に配置され、集光レンズ16による照明用光束LA(LB)の集光位置を物点とするとき、集光レンズ16と検出レンズ18とによる「物点に対する像点位置」に所定開口径のピンホール19aを有するピンホール板19と、集光レンズ16による照明用光束の集光位置を集光レンズ16の光軸方向に変位させる集光位置変位手段22と、コリメートレンズ12と集光レンズ16との間の光路上に配置され、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの断面形状をリング状に整形してリング状照明光束LBとするリング状光束形成手段13とを有する。
【0082】
演算手段23は、前眼房基礎データ:(d、n0)および、前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係についてのデータを設定可能である。
【0083】
以下に、測定のあらましを説明する。
図1(a)において、変位手段22により集光レンズ16を光軸上で眼球17に向けて変位させていくと、先ず、集光レンズ16による集光光束は角膜17aの表面である面R1上に集光する。図1(a)はこの状態を示している。
【0084】
このとき、面R1で反射した光は測定光束として光検出器20の受光面に入射するが、面R1で反射される光の反射点と、ピンホール19aの位置とが、集光レンズ16と検出レンズ18とによる共焦点光学系により共役関係となるので、測定光束はピンホール19aを通過して光検出器20に最大光量として入射する。
【0085】
集光レンズ16がさらに眼球側へ変位するにつれて、集光光束の集光位置は眼球17の内部へ向い、集光光束は、面R2、R3、R4の位置に順次に集光する。その集光の度ごとに、前記共焦点光学系の共役関係がなりたち、光検出器20の受光面に入射する光量が大きくなる。
【0086】
図1(f)は、上記集光レンズの「変位量」を横軸とし、光検出器20の「出力」を縦軸として、集光レンズ16の変位量と光検出器20の出力の関係を示したものである。横軸の変位量は、集光レンズ16の「眼球側への変位を正」としている。
【0087】
集光レンズ16の変位に従い、出力には4つの極大LR1、LR2、LR3、LR4が順次に生じる。前述の説明から明らかなように、極大LR1は集光光束が面R1に集光している状態で発生し、以下、極大LR2、LR3、LR4は集光光束が面R2、R3、R4に集光している状態で発生する。
【0088】
このとき、図1(f)に示す変位量:DSは、集光光束が面R2(角膜と前眼房の境界面である前側境界面)に集光した状態から、集光光束が面R3(前眼房と水晶体の境界面である後側境界面)に集光した状態となるまでに「集光レンズ16が変位した変位量」であり、これは「前眼房17bの光学的厚さ:n・d」に等しい。
【0089】
演算手段である制御・演算表示装置23は、上記変位量:DSを持って「前眼房の光学的厚さ:n・d」として特定する。
【0090】
前述の如く、前眼房基礎データ:(d、n0)は予め制御・演算表示装置23に設定されているから、前眼房17bの「基準の光学的厚さ:d・n0」は既知である。
そして、前眼房基礎データにおける「前眼房17bの厚さ:d」は、環境や経時で実質的に変化せず、光学的厚さの算出に当たっては「定数」として扱うことができるので、既知の量:d、n0と、上記変位量:DSとして特定された「測定された光学的厚さ:n・d」とから、測定時における前眼房媒質の屈折率:nを算出できる。
【0091】
即ち、測定された光学的厚さ:DSと基準の光学的厚さ:n0・dとの差が「ΔD」であるとすると、この差は、測定時の屈折率:nと基準の屈折率:n0との差:Δnによるものであり、従って、
ΔD=Δn・d
となって、屈折率の変化量:Δnは、
Δn=ΔD/d
となり、これから、測定により特定される前眼房媒質の屈折率:nは、
n=n0+ΔD/d
として算出できる。
【0092】
制御・演算表示装置23は、上記演算を行なって前眼房媒質の屈折率:nを算出する。
【0093】
このように算出された屈折率:nを用い、制御・演算表示装置23内に予め設定されている「屈折率:nとグルコース濃度との対応関係(この関係はテーブルとして与えられていても良いし、演算式の形で与えられていても良い。)」に従い、グルコース濃度が決定され、表示部に表示される。従って「グルコース濃度の演算」は、演算式による演算という形で行なうこともできるし、テーブルの参照という形で行なうこともできる。
【0094】
決定されたグルコース濃度を、表示部への表示で被測定者にリアルタイムで知らせる代わりに、あるいは表示部への表示とともに、外付けメモリカード(SDカード)などによりデータとして記録しておくことも可能である。
【0095】
上記の如く「演算手段」である制御・演算表示装置23は、照明用光束(LA、LB)が、前眼房17bの前側境界面R2に集光した後、後側境界面R3に集光するまでの「集光位置の変位量:DS」として検出される「前眼房の光学的厚さ」に基づき前眼房内媒質の屈折率:nを演算し、さらに、演算された屈折率:nに基づき前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する機能を有する。
【0096】
ピンホール板19におけるピンホール19aの開口径は、これを小さくしすぎると光検出器へ到達する測定光束の光量が少なくなり、測定精度が低下したり測定に長時間を要する等の問題があり、上記「開口径」は、測定光束が「平行光束である場合」に検出レンズ18により集光されたときの集束径、所謂ビームウエスト径以上の大きさが必要である。
【0097】
しかし、ピンホール19aの開口径が大きい場合、測定光束LCに含まれるノイズ成分が検出されて測定精度を低下させる虞がある。
この発明においては、上記「測定光束に含まれるノイズ成分」の影響を以下のようにして除去もしくは有効に軽減させる。
【0098】
前述の如く、集光レンズ16がその光軸方向に於いて眼球17の側へ変位するに従い、集光光束は面R1〜R4に順次に集光して、光検出器20の出力に図1(f)に示す極大LR1〜LR4を生じる。
【0099】
前述の如く、集光光束が面R1〜R4の何れか1つ、例えば面R2に集光しているとき、他の面、即ち面R1、R3、R4はリング状照明光束LBの一部が「リング状に照射」されており、これらリング状の照射部で反射された光束は、測定光束の一部となって検出レンズ18に入射し、ピンホール板19に向けて集束する。
【0100】
このように、集光レンズ16による集光光束がある面Ri(i=1〜4)に集光しているとき、他の面Rj(j≠i)からの反射光は「測定光束の一部」となって光検出器20へ向い、光検出器20に受光されると光検出器20の出力にノイズ成分として影響する。
【0101】
このようなノイズ成分の影響は、図1(f)に示した「出力の極大」の幅をブロード化し、変位距離:DSの制度を低下させ、ひいては前眼房の光学的厚さ、グルコース濃度に対する誤差の原因となる。
【0102】
このようなノイズ成分の影響を、この発明では、リング状光束形成手段13により、リング状照明光束LBの「円環状の光束断面の内径」を調整することにより除去又は有効に軽減するのである。
【0103】
集光レンズ16と検出レンズ18とは前述の如く「共焦点光学系」を構成するので、集光レンズ16により集光される集光光束の集光位置と、ピンホール19aの位置とは、前述の如く、共役の関係にある。
【0104】
従って、集光レンズ16による集光光束が「ある面Ri(i=1〜4)」に集光しているとき、他の面Rj(j≠i)からの反射光が、集光レンズ16と検出レンズ18とにより集光する位置は、検出レンズ18の光軸上で「ピンホール板19の前後方向」にずれる。
【0105】
集光レンズ16による集光光束が「ある面Ri(i=1〜4)に集光している場合」において、面Riよりも後側(集光レンズ16から遠い側)の面Rjによる反射光が「検出レンズ18により集光する位置」は、図2(a)に示すように、ピンホール板19よりも「検出レンズ18側」にずれる。
【0106】
逆に、集光レンズ16による集光光束がある面Ri(i=1〜4)に集光している場合において、面Riよりも前側(集光レンズ16に近い側)の面Rkによる反射光が「検出レンズ18により集光する位置」は、図2(b)に示すように、ピンホール板19よりも「検出レンズ18から離れる側」にずれる。
【0107】
図2で、符号Pで示す面が上記面Rj、Rkによる反射光の集光する位置である。
【0108】
上記面Rj(j≠i)、Rk(k≠i)による反射光は測定光束に含まれるノイズ成分であるが、図2に示すように、ピンホール板19上では「リング状」になる。これは、眼球が「リング状照明光束を集光させた光」で照明されるからである。
【0109】
これら「Rj(j≠i)、Rk(k≠i)による反射光」を以下「ノイズ光」と呼ぶ。
【0110】
ピンホール19aの開口径(図2において符号「φp」で示す。)に対し、上記ノイズ光がピンホール板19をリング状に照射する部分(前述の「リング像」であるが、これを以下「照射リング」と呼ぶ。)の内径が常に大きくなるようにすれば、上記ノイズ光の影響を除去できる。
これは、リング状照明光束LBの「円環状の光束断面の内径」を、リング状光束形成手段13により規制することにより可能である。
【0111】
即ち、リング状光束形成手段に「集光レンズ16による集束光が、眼球17における1つの面Riに集光されるとき、他の面Rj(j≠i)により反射された「ノイズ光」が、ピンホール板19上を照射する「照射リング」の内径が、ピンホール19aの開口径:φp以上となるように、リング状照明光束LBの内径を規制する機能」を持たせる。
【0112】
ノイズ光が検出レンズ18により集光する位置の「ピンホール板19に対するずれ量:L」は、ノイズ光が反射される面Rj(j≠i)の「面Riからの距離」に対応して変化する。
【0113】
具体的に説明すると、照明用光源10から放射されるレーザ光の波長:λ、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの光束径(遮光板13の透過部13aの外径):φC、集光レンズ16の焦点距離:fO、検出レンズ18の焦点距離:fC、眼球17の面RiとRjの距離:ΔTを用いて計算する。
【0114】
(A)「ピンホール19aの径:φP」
ピンホール19aの直径(開口径):φPは、正規の測定光束(面Riに集光して反射された測定光束)が検出レンズ18によって集光されたときのビームウエスト径に対応し、下記の式(1)によって計算される。
【0115】
式(1)によって計算されるピンホール19aの直径:φPは「検出レンズ18によって集光される正規の反射光を通過させるために必要な最低の直径」であるから「式(1)によって算出される値以上の値」をもって直径:φPとすればよい。
φP=K×λ/NA=K×λ/{φC/(2×fC)} (1)
(1)において、Kは「レーザ光の光強度分布により設定される係数」、NAは「検出レンズ18の開口数」であり「{φC/(2×fC)}」により近似する。
【0116】
(B)「他の面Rj(j≠i)からの反射光(ノイズ光)の検出レンズ18による集光位置(図2に符号:Pで示す位置)とピンホール板19との距離:L」
距離:Lは、以下の近次式(2)により算出される。
【0117】
L=(2×ΔT)×(fC/fO)2 (2)
「(fC/fO)2」は、集光レンズ16と検出レンズ18とによる「共焦点光学系」の縦倍率であり、ΔTは、面Ri(集光レンズ16による集光光束が集光している)と面Rjとの間隔である。
【0118】
(C)「遮光板13の内径・外径」
遮光板13の遮光部13bの直径:φSを計算する。
【0119】
図2(a)、(b)に示すように、ノイズ光の集光点Pの位置により「集光するノイズ光の光軸に対する角度」が異なり、遮光部13bの直径:φSも集光点Pの位置により異なる。
【0120】
集光点Pが、図2(b)のように「ピンホール板19の後方」に位置する場合には、ノイズ光の「光軸に対する角度」が小さく、ピンホール板19に形成される「照射リング」の内径が「ピンホール19aの直径:φPより小さくなる場合」には、ピンホール19aを通過する光束部分がノイズの原因となるので、この集光光束がピンホール板19を照射する照射リングの内径がピンホール19aの直径:φP以上となるように、遮光部13bの直径:φSを設定しなければならない。
【0121】
「他の面Rjの検出レンズ18による集光点位置Pが、図2(a)に示すようにピンホールPaの手前側にある場合の遮光部13bの直径:φSF」
集光点Pを介してピンホール板19上に形成される面Rjからのノイズ光による照射リングの内径をピンホール径:φPと同一とし、この場合における「検出レンズ18に入射するノイズ光における「光束中央部の遮光された部分」の直径、即ち、遮光部13bの直径をφSFとすると式(3)が成立する。
【0122】
(φP/2)/L=(φSF/2)/(fC−L) (3)
これは式(4)のように変形できる。
【0123】
φSF=fC×φP/L−φP (4)
この場合、遮光部13bの直径:φSFは遮光部13bの「最低の大きさ」を表すものであるから、遮光部13bの直径:φSFを下記の式(5)によって規定できる。
φSF≧fC×φP/L−φP (5)
「他の面Rjによるノイズ光の「検出レンズ18による集光点P」の位置が図2(b)のようにピンホール19aの後側にある場合の遮光部13bの直径:φSR」
この場合、検出レンズ18によって集光される他の面Rjからのノイズ光の一部、具体的には、同ノイズ光がピンホール板19のピンホール19aの周辺部を照射する照射リングにおける「ピンホール19aより内側の部分」は、ピンホール19aを通過してピンホール板19の後方で集光する。
【0124】
したがって、ノイズ光がピンホール19に到達したノイズ光の「中央部の遮光部分」の直径をピンホール径:φPと同一とし、この場合における遮光部13bの直径をφSRとすれば、式(3)と同様に下記の式(6)が成立し、上記と同様、遮光部13bの直径:φSRを式(6)に基づき式(7)によって規定できる。
(φP/2)/L=(φSR/2)/(fC+L) (6)
φSR≧fC×φP/L+φP (7)
式(5)と(7)によって規定される、遮光部13bの直径:φSFと直径:φSRの大小を比較すると、直径:φSFよりも直径:φSRの方が常に大きい。
【0125】
従って、遮光部13bの直径:φSとして直径:φSRを採用するのがよい。
【0126】
図3にはグルコース濃度測定装置の実施の別形態を説明図的に示す。繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われるものについては図1におけると同一の符号を用いた。
【0127】
この実施の形態においては、集光レンズ16と光路分離手段における光路分離位置(偏光ビームスプリッタ14の分離面)の間に1/4波長板15を有し、光路分離位置と1/4波長板15との間に、リング状光束形成手段31が配置された構成である。
リング状光束形成手段31は、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部を遮光し、眼球17から集光レンズ16と1/4波長板15とを介して戻る測定光束をそのまま、光路分離位置側へ透過させる「偏光選択型の遮光板」である。
【0128】
偏光選択性の遮光板31は、図3(b)に示すように、リング状の光透過部31aを挟んで遮光部31b、31cが形成されておいる。
照明用光源11から放射され、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAは、偏光ビームスプリッタ14を透過し、光遮光部31b、31cは、この直線偏光状態の照明用光束LAを遮光してリング状照明光束LBとする。
【0129】
眼球17から戻る測定光束は、1/4波長板15を透過して、偏光面を往路と直交する方向に変換されており、リング状光束形成手段31をそのまま透過して偏光ビームスプリッタ14に戻り、照明用光束LAの光路から分離される。
【0130】
偏光選択型の遮光板31の遮光部31b、31cとしては、偏光子、例えば、一般に知られた「オートクローニング方式などを用いた多層膜構成のもの」等を用いれば良い。
【0131】
偏光選択型の遮光板31における遮光部31b、31cの形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
【0132】
図3の実施の形態においては、集光レンズ16と1/4波長板15と偏光選択性の遮光板31とをハウジングHSにより一体化し、変位手段16によりハウジングHSごと集光レンズ16の光軸方向へ変位可能としている。
【0133】
このようにすることにより、変位装置22によりハウジングHSが一体として変位するので「集光レンズ16と遮光板31との位置関係の変動」を低減でき、眼球17における所定の面に光スポットを正確に形成できる。
【0134】
偏光選択型の遮光板と1/4波長板とは、これらを、例えば、図3(c)に示すように透明平行平板310の両面に、遮光膜311および1/4波長膜312として形成することにより一体化しても良い。
このようにすると、部品点数の削減、軽量化に伴い、変位装置22の動作負荷を低減でき、より安定した「集光レンズ16の位置制御」が可能となる。
【0135】
図4はグルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1におけると同一の符号を付した。
【0136】
図4の実施の形態は、図1(a)に示す構成において、リング状光束形成手段としての遮光板13を、回折素子32で置き換えたものである。
回折素子32は図4(b)に示すように「同心円状の回折格子」を形成されている。
【0137】
「回折格子」は、図4(c)に示す領域32b、32cの部分に形成され、領域32aの部分は「透過領域」となっている。
【0138】
従って、図4(d)に示すように、コリメートレンズで平行光束化された照明用光束LAが回折素子32に入射すると、領域32a(図4(c))に入射する光束はそのまま透過して、リング状の光束断面LB1を有するリング状照明光束LBとなる。
【0139】
透過領域32a以外の部分に入射した照明用光束LAは、回折素子32により回折光LCとして回折されて照明用光束LAから除去され、測定に関与しなくなる。
【0140】
回折格子32において、回折格子の形成される領域32b、32cの形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
回折素子の断面の溝形状としては矩形状のようなものを用いればよく、溝深さは1次回折光が最も強くなる深さを選択すればよい。
【0141】
回折格子の溝ピッチは「回折される回折光LCが眼球17に集光せず、眼球17から戻るノイズ光が光検出器20に入射しないように散乱されるのに十分な狭ピッチ構造」であればよい。なお回折溝の形状は矩形に限定されず、階段形状、鋸歯形状であってもよく、とくに鋸歯形状は高回折効率を有するため遮光機能として好適である。
【0142】
図5は、グルコース濃度測定方法の「実施の他の形態」を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1、図3におけると同一の符号を付した。
【0143】
この実施の形態は、図3に示した実施の形態において、偏光選択性の遮光板31に換えて「偏光選択型の回折素子32A」を用いた点に特徴がある。
図示の如く、この実施の形態においても、遮光板32Aと1/4波長板15と集光レンズ16とはハウジングHSにより一体化され、ハウジングHSごと変位手段22により、集光レンズ16の光軸方向へ変位可能となっている。
【0144】
従って、変位装置22によるハウジングHSの変位に際して、集光レンズ16と遮光板32Aとの位置関係の変動が低減でき、眼球17における所定の境界面に光スポットを正確に形成できる。
【0145】
図5(a)の実施の形態では、集光レンズ16と「光路分離手段の光路分離位置(偏光ビームスプリッタ14)」との間に1/4波長板15を有し、光路分離位置と1/4波長板15の間にリング状光束形成手段32Aが配置され、リング状光束形成手段32Aは、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束LAから除去し、眼球17から集光レンズ16と1/4波長板15とを介して戻る測定光束をそのまま光路分離位置側へ透過させる「偏光選択型の回折素子32A」である。
【0146】
偏光選択型の回折素子32Aは、図5(b)に示すように照明用光束LAのうち、光束中心部を回折光LCとして回折させて照明用光束LBから除去するとともに、円環状の光束断面形状LB1を持つリング状照明光束LBとして形成する。
【0147】
眼球17から戻る測定光束は、1/4波長板15を透過して往路とは偏光面が90度旋回し、偏光選択型の回折素子32Aをそのまま透過して光路分離位置側へ伝搬する。
【0148】
偏光選択型の回折素子32Aは「照明用光束LAの一部を回折させ、眼球17から戻る光は1/4波長板15を介して偏光方向が往路光に対して直交するような回折素子」であればよく、例えば「回折構造に波長よりも短い微細周期構造を重畳して偏光選択型の回折機能を発現させた」素子を用いることができる。
【0149】
回折格子自体の形態は、それが偏光選択性を持つことを除けば、図4(b)、(c)に示した回折素子のものと同様であり、回折格子の形成される領域の形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
また、図5には図示されていないが、図3の実施の形態の場合と同様に、偏光選択性の回折素子32Aと、1/4波長板15とを、同一基板の表裏に形成し、これらを一体化することができ、このようにすることにより、部品点数の削減、軽量化が可能となり、変位手段22の動作負荷を低減でき、より安定した集光レンズ位置の制御が可能となる。
【0150】
図6は、グルコース濃度測定装置の「実施の他の形態」を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1におけると同一の符号を付した。
【0151】
図6に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態における遮光板13に換え、リング状光束形成手段33として、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの光束断面形状を「リング状の発散光」に変換する第1の光学素子33Aと、リング状の発散光に変換された光束を「リング状の光束断面を持つ平行光束」に変換する第2の光学素子33Bとを有するものを用いた点に特徴の一端がある。
【0152】
第1、第2の光学素子33A、33Bは「アキシコンレンズ」であって、円錐状の面を有し、それぞれの円錐面の頂部を対向させ、各円錐軸をコリメートレンズ12の光軸に合致させて配置されている。
【0153】
図6(b)に示すように、照明用光束LAは、第1の光学素子33Aにより、光軸の回りに発散する発散光束に変換されて第2の光学素子33Bに入射し、再び平行光束に変換されてリング状照明光束LBとなる。
【0154】
このとき、第1、第2の光学素子33A、33bの間隔を調整することにより、リング状照明光束LBの内径を調整でき、この調整によりリング状照明光束LBの内径を、図1の実施の形態の場合と同様に設定できる。
【0155】
リング状光束形成手段33は、リング状照明光束LBの外周辺部を規制する機能を持たないので、図6の実施の形態では、透明平行平板の片面に「中空のリング状遮光部」を有する開口制限素子35を設け、リング状光束形成手段33により形成されたリング状照明光束LBの光束外周部を形成して、リング状照明光束LBの光束断面の「リング幅」を所望の大きさに設定する。
【0156】
なお、アキシコンレンズ33A、33Bとして「円錐形状をフレネル化したフレネルアキシコンレンズ」を用いてもよい。また、開口制限素子35はハウジングHSに開口として形成されてもよく、あるいは、集光レンズ16のレンズ面上にコートすることによって形成してもよい。
【0157】
上に説明したグルコース濃度測定装置の実施の各形態を用いることにより、請求項12にかかるグルコース濃度測定方法が実施される。
【0158】
なお、上に説明した実施の各形態では、リング状照明光束におけるリング状の断面形状における「内径」を規制するとともに「外径をも規制」している。この発明のグルコース測定装置は「ノイズ光による照射リングの内径をピンホールの開口径より大きくする」ことによりノイズ光の影響を軽減もしくは防止することにあるから、リング状照明光束の外径は必ずしも規制する必要はない。
【0159】
しかし、リング状照明光束の外径を規制しない場合には、測定光束がピンホール位置に形成するビームウエスト径が小さくなり、ピンホール板の設定精度が厳しくなるので、リング状照明光束の外径も規制することが好ましい。
【0160】
上に説明した実施の各形態では、外光カットフィルタ22が用いられている。
外光カットフィルタ21は、照明用光源11から放射されるレーザ光の波長の光は透過させ、グルコース濃度測定装置外部からの光を反射するバンドパスフィルタである。
【0161】
例えば、レーザ光の波長帯として近赤外域、例えば900〜1400nmの範囲内の波長:λ1(例えば850nm)の光を発する照明用光源を用いる場合、この波長域の光を透過させ「可視波長域(400〜800nm)」を反射するように、図7のような分光透過率特性を有するバンドパスフィルタを用いればよい。
【0162】
かかる特性を発するバンドパスフィルタとしては、真空蒸着やスパッタリング法により多層膜を形成したものや、波長以下の周期の凹凸形状が形成されたものなどを用いうる。
【0163】
また、照明用光源11として用いられる半導体レーザへの戻り光を防止するために、レーザ光源11と偏光ビームスプリッタ14の間の光路中に「眼球17へ向かうレーザ光をそのまま透過」させ、この光と直交する偏光方向の光を「反射、回折、散乱の何れかの手段により、照明用光源11へは戻らないようにする素子」を配置するのが好ましい。このようにすれば照明用光源のレーザ発振を安定化できる。
【0164】
また照明用光源11と外光カットフィルタ21との間の光路中に「光量を低減させるためのNDフィルタ」を配置してもよい。これにより「眼球17に入射するリング状照明光束の強度を所定の値(目への入射が許容されるMPE値(JIS C−6802:レーザ放射による障害発生率が50%のレベルの1/10のレーザ光強度を規定する値))を下回る値にリング状照明光束の強度を規制できる。
【0165】
なお、眼球17から反射される測定光束を高効率に所得するため、NDフィルタはレーザ光源11と偏光ビームスプリッタ14の間の光路中に配置されるのが良い。
【0166】
NDフィルタは照明用光源11から外光カットフィルタ21に至る光路上に配置される「何れかの光学素子」の表面にコーティングして形成してもよい。このようにすれば部品点数を増すことなくND機能を追加できる。
【0167】
照明用光学系11として半導体レーザを用いる場合、半導体レーザから放射されるレーザ光のファーフィールドパターンは楕円形状である。
リング状照明光束LBは断面形状が円環状であるので、楕円状の光束断面からこのような光束断面形状を得るには、コリメートレンズ12のNAを大きくして大面積の楕円状光束断面を得、これからリング状光束形成手段で円環状の光束断面を切り出すようにすればよいが、光利用効率が悪く、コリメートレンズも大型化しやすい。
【0168】
これを避けるには、コリメートレンズ12と偏光ビームスプリッタ14の間に「ビーム整形手段」を設け、光束断面形状を楕円形状から円形状へ整形すればよい。
【0169】
ビーム整形手段は、例えば、図8(a)に示すように、くさび状のプリズムPLを介して「入射側光束断面が楕円形状のレーザ光束」を、「射出側光束断面が円形状のレーザ光束」に変換するものや、同図(b)に示す、光束断面形状を一方向(図の上下方向)に引き伸ばす2つの回折面を有する回折素子RLを用いるものや、図8(c)に示すように、凹シリンダレンズL1と凸シリンダレンズL2を同軸に組み合わせたもの等でもよい。
【0170】
上述の実施の形態においては、照明用光源11から射出されるレーザ光の偏光方向に応じてレーザ光を透過および反射させる偏光ビームスプリッタ14を用いたが、「照明用光源11から射出されたレーザ光を眼球17に導き、眼球17からの反射光を光検出器20に導くことができる光学素子」であれば他の光学素子でもよい。
【0171】
例えば、偏光ビームスプリッタ14に代えて、入射光の半分を透過させ、半分を反射させるハーフミラーを用いてもよい。
【0172】
照明用光源11から集光レンズ16までの光路中に「球面収差を補正する手段」を配置してもよい。
一般に「集光レンズは眼球内の特定の位置に平行光束を集光する」ように設計される。
【0173】
そして集光位置からずれた位置に対しては球面収差が発生する。
そこで集光レンズのレンズ位置に応じ、集光スポット上で発生する球面収差を打ち消す球面収差を発生させる球面収差補正手段を具備することにより、集光する各面(前述の面R1〜R4)に良好な集光スポットを形成することが可能となる。
【0174】
球面収差補正手段としては、コリメートレンズ12の位置を光軸方向に変移させ集光レンズ16への入射する光の発散状態を変化させる方法や、図9のように凹レンズL10と凸レンズL11からなる2群レンズの間隔を変化させ、集光レンズ16へ入射するリング状照明光束の発散状態を変化させる方法や、瞳半径位置に応じて光路差を発生させ通過ビームに所定の球面収差を付加できる液晶素子などを用いることができる。
【0175】
また、照明用光源11から外光カットフィルタ21までの光路中に、偏向ミラーを配置し、光路を適宜に屈曲させるようにできる。例えば、図10に示すように、外光カットフィルタ21と偏向ミラーMLを一体化した反射プリズムなどを構成してもよい。
【0176】
図11に、グルコース濃度測定装置の外観形状と使用方法の1例を説明図的に示す。
図11(a)において符号100を持って示す装置本体の前面に外光カットフィルタ21が配置されている。
【0177】
外光カットフィルタ21は図7に示すような分光透過率特性を有し、可視領域の光(外部光)を反射させるので、これをミラーとして用いることができる。
【0178】
外光カットフィルタ21に、図11(c)に示すようにアライメントマークALMを形成しておき、図11(b)のように、このアライメントマークALMを目視すると、外光カットフィルタ21に眼球17の像が写る。測定者は、外光カットフィルタ21に移る眼球17の位置をアライメントマークALMに対して調整して、眼球17の位置を調整することができる。
【0179】
図11(d)に示すのは、眼球17の瞳が、グルコース濃度測定装置の集光レンズ16の光軸上に正しく位置するが、上記光軸上で適正な位置にない状態であり、このことは瞳の「外光カットフィルタ21による像17I」の大きさが「アライメントマークALMの円形マーク」よりも小さいことで知られる。
【0180】
従って、瞳の像17Iの中心がアライメントマークALMの中央に合致した状態で、眼球17と装置本体との位置を集光レンズの光軸方向に調整し、図11(e)に示すように、瞳の像17Iの中心がアライメントマークALMの中心と合致し、なおかつ、瞳の像17Iの大きさがアライメントマークALMの円形マークの大きさに合致した状態で、適正な測定態位が実現する。このようにアライメントマークALMを見ながら容易にグルコース濃度測定装置に対する眼球の3次元アライメントが可能である。
【0181】
上には、裸眼に対する測定の場合を説明したが、この発明のグルコース濃度測定方法は「コンタクトレンズを装着した測定者」に対して対応することができる。
コンタクトレンズの使用時には、角膜の表面とコンタクトレンズの裏面が接し、コンタクトレンズの表面が空気と接する。
【0182】
従って、グルコース濃度測定装置に「コンタクトレンズの装着の有無を選択できるスイッチ機能」を設けておき、該スイッチからの入力信号に応じて「前眼房の屈折率」を得るための光検出器20の出力ピークとして「3番目と4番目」を選択するようにする。
【0183】
すなわち、光検出器20の出力はピークが5つになるため「3番目と4番目のピーク間隔が前眼房の光路長」となる。このとき球面収差が発生するので、前述の収差補正手段を外部入力信号に応じて所定状態に変移するようにすればよい。外部入力装置を設けずに、5つの反射ピークの出力を前提としたコンタクトレンズ専用のグルコース濃度測定装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】グルコース濃度測定装置の実施の形態を説明するための図である。
【図2】発明の特徴部分を説明するための図である。
【図3】グルコース濃度測定装置の実施の別形態を説明するための図である。
【図4】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図5】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図6】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図7】外光カットフィルタを説明するための図である。
【図8】ビーム整形手段を説明するための図である。
【図9】収差補正手段を説明するための図である。
【図10】偏向ミラーを用いて光路屈曲させる場合の1例を説明するための図である。
【図11】グルコース濃度測定装置の外形形状と使用状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0185】
11 照明用光源
12 コリメートレンズ
14 偏光ビームスプリッタ
15 1/4波長板
16 集光レンズ
17 眼球
18 検出レンズ
19 ピンホール板
20 光検出器
22 変位装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、グルコース濃度測定装置、このグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置、この光学装置に用いられるリング状光束形成装置、およびグルコース濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「血液中のグルコース濃度」は、個人により平均レベルは異なるが、特に糖尿病疾患に対する投薬の要否を決定する重要な指標値となっている。グルコース濃度は、食餌、運動、疾患の併発等により「短時間の間に大きく変動する特性」を有しており、血中グルコース濃度の急激な上昇によって投薬に緊急を要する場合も少なくない。
【0003】
近時「人の眼球における角膜と水晶体との間にある前眼房を満たす前眼房内媒質のグルコース濃度」が、個人差はあるが「血中グルコース濃度と極めて高い相関関係」を有することが知られている。
【0004】
さらに「前眼房内媒質のグルコース濃度と前眼房内媒質の屈折率との間に極めて高い相関がある」との知見に基づき、前眼房内媒質の屈折率を測定することにより「前眼房内媒質のグルコース濃度を非侵襲的に測定」することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に「第5のグルコース濃度測定方法を実施するための第5のグルコース濃度測定装置の一実施形態」として記載されたものは、共焦点光学系の利用により「特定波長の単一光源のみでグルコース濃度測定を可能にしたもの」である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−239567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
眼球には、周知の如く、外部から内部に向って「角膜、前眼房、水晶体、硝子体」が順に配置し、硝子体の最奥部に網膜が存在する。
特許文献1のグルコース濃度測定方式で前眼房材質の屈折率を求める場合、集光光束を角膜と前眼房との境界面、前眼房と水晶体との境界面上に順次に集光させて、前眼房の光学的厚さを検出するが「集光光束が集光している境界面」以外の面(角膜表面や水晶体と硝子体との境界面等)からの反射光が測定ノイズとして作用しやすい。
【0008】
この発明は、グルコース濃度測定において、測定ノイズを有効に軽減もしくは防止し、測定精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のグルコース濃度測定装置は「眼球における前眼房の光学的厚さを光学的方法により検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率を用い、予め設定された屈折率とグルコース濃度の対応関係に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出する装置であって、光学装置および演算手段を有する。
【0010】
なお「前眼房内媒質」は前眼房内部を満たす液状の媒質であり、「眼房水」とも呼ばれている。
【0011】
「光学装置」は、眼球の前眼房の光学的厚さを光学的に検出する装置である。
「演算手段」は、光学装置により検出される前記光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段を有する。
【0012】
光学装置は、具体的には、照明用光源、コリメートレンズ、集光レンズ、光検出器、光路分離手段、検出レンズ、ピンホール板、集光位置変位手段、リング状光束形成手段を有する。
【0013】
「照明用光源」は、照明光を放射する光源でレーザ光源である。従って、照明用光源からは「レーザ光」が放射される。
照明用光源としては公知の各種のレーザ光源を用いることができるが、小型で低コストであることから「半導体レーザ」は好適なものの一つである。他のレーザ光源として面発光型レーザ(VCSEL)も好適である。
照明用光源がレーザ光源であることから、放射されるレーザ光は実質的な「直線偏光状態」である。
【0014】
「コリメートレンズ」は、照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化する。このように平行光束化されたレーザ光束を「照明用光束」と呼ぶ。
照明用光束は、その全てが照明に用いられるのではなく、後述のように「少なくとも光束中心部を除かれた残り」が照明に用いられる。
【0015】
「集光レンズ」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束を、眼球に向って集光する集光光束に変換する。
「光検出器」は、照明用光束を照射された眼球から集光レンズを介して戻る測定光束を受光して電気信号に変換する。「測定光束」は、眼球の角膜表面や内部の境界面で反射されて集光レンズを逆向きに透過した光である。
【0016】
光検出器としては従来から広く知られた各種の受光素子を用いることができる。
【0017】
「光路分離手段」は、測定光束を「照明用光束の光路から光検出器側へ分離」する手段であり、半透鏡や各種ビームスプリッタを適宜に用いることができる。光路分離手段は従って、コリメートレンズから集光レンズへ向う照明用光束の光路上に配置される。
【0018】
「検出レンズ」は、光路分離手段により分離された測定光束を、光検出器の受光面近傍に向けて集光させるレンズである。
「ピンホール板」は、光検出器の受光面近傍の所定位置に(固定的に)配置される。
【0019】
即ち、ピンホール板は「集光レンズによる照明用光束の集光位置」を物点とするとき、集光レンズと検出レンズとによる「物点に対する像点」位置に、所定開口径のピンホールを有する。
【0020】
「集光位置変位手段」は、集光レンズによる照明用光束の集光位置を、集光レンズの光軸方向に変位させる手段である。
「リング状光束形成手段」は、コリメートレンズと集光レンズとの間の光路上に配置され、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状を「リング状に整形してリング状照明光束とする」手段である。
【0021】
「照明用光束の断面形状」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の伝搬方向(コリメートレンズの光軸方向)に直交する仮想的な平面による光束の断面形状である。
【0022】
コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状は一般に「円形状もしくは楕円形状」である。そして、このような断面形状をもつ照明用光束が、その断面形状をリング状、即ち「円環状あるいは楕円環状」に変換されて照明に供されるのである。
【0023】
「演算手段」は、前眼房基礎データおよび「前眼房内媒質の屈折率とグルコース濃度との対応関係」についてのデータを設定可能であり、照明用光束が、前眼房の前側境界面および後側境界面に集光するときときの「集光位置の変位量」として検出される「前眼房の光学的厚さ」に基づき房媒質の屈折率を演算し、さらに、演算された屈折率に基づき「前眼房内媒質のグルコース濃度」を演算する機能を有する。
【0024】
「前眼房基礎データ」は、グルコース測定装置を使用する使用者(グルコース濃度を測定される被測定者)の個人データであり、予め測定された「前眼房の厚さ」と前眼房内媒質の「基準的な屈折率」である。「前眼房の厚さ」は実質的に一定である。
【0025】
「前眼房内媒質の屈折率とグルコース濃度との対応関係」は、基本的には被測定者における両者の対応関係であるが、例えば、特許文献1に記載された関係:
n=1.33322+1.6×10−6×G (n:前眼房内媒質の、G:グルコース濃度(mg/dl)。)
を用いることができる。
【0026】
「前眼房の前側境界面(以下、単に「前側境界面」と言う)」は、前眼房と角膜との境界面を謂う。
「前眼房の後側境界面(以下、単に「後側境界面」と言う。)」は、前眼房と水晶体との境界面を言う。
また、角膜の空気との境界面は前述の如く「角膜表面」と呼び、水晶体と硝子体との境界面は「水晶体後側境界面」と呼ぶことにする。
【0027】
「前眼房内媒質のグルコース濃度」は、前眼房を満たしている前眼房内媒質に含まれるグルコースの濃度である。前述の如く、このグルコース濃度は血中グルコース濃度と高い相関を有する。
【0028】
「リング状光束形成手段」は、測定用光束が眼球における1つの境界面(上記「角膜表面」、「前側境界面」、「後側境界面」、「水晶体後側境界面」)に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光が「ピンホール板上に形成するリング像」の内径が、ピンホールの開口径以上となるように、リング状照明光束の内径(リング状照明光束の「リング状の断面形状」の内径)を規制する機能を有する。
【0029】
集光レンズによる集光光束は「眼球に向って集束しつつ入射する」ので、例えば、照明用光束が、角膜表面に集光しているときは、前側境界面、後側境界面、水晶体後側境界面を照射する光は発散性であり、これらの境界面上をリング状に照射する。
【0030】
角膜、前眼房、水晶体、硝子体はそれぞれ屈折率の異なる媒質で構成されているので、上記境界面では屈折率が不連続に変化しており、従ってこれら境界面で反射が生じる。
【0031】
このとき、角膜表面を照射する光は角膜表面に集光しているので、角膜表面からの反射光は「集光位置」を物点とし、集光レンズと検出レンズとの作用により、ピンホール板のピンホール位置に集光する。このピンホール位置への集光光束のビームウエスト径を、ピンホールの開口径より大きくとれば、角膜表面からの反射光(測定光束)はもれなく光検出器の受光面に入射する。
【0032】
上記各境界面の「リング状に照射された部分」からの反射光は、集光レンズと検出レンズとによりピンホール板の近傍に「リング状の像(リング像)」を結像するが、その結像位置はピンホール板とは「ずれている」ため、ピンホール板上では「若干ぼけた状態」になる。
【0033】
また、集光レンズによる集光光束が前側境界面に集光する状態では、角膜表面は集束途上の光束によりリング状に照射され、後側境界面、水晶体後側境界面は発散状態の光束によりリング状に照射される。
前側境界面からの反射光は、ピンホールの位置に集光する。角膜表面、後側境界面、水晶体後側境界面の「リング状の照射部分からの反射光」は、やはり、ピンホール板上に若干ぼけた「リング状」部分を照射する。
【0034】
同様に、集光レンズによる集光光束が「後側境界面に集光する状態」では、角膜表面と前側境界面は集束途上の光束によりリング状に照射され、水晶体後側境界面は発散状態の光束によりリング状に照射される。
後側境界面からの反射光はピンホールの位置に集光する。角膜表面、前側境界面、水晶体後側境界面の「リング状の照射部分からの反射光」は、やはり、ピンホール板を若干ぼけた「リング状」に照射する。
【0035】
「水晶体後側境界面に集光光束が集光する」ときは、角膜表面、前側境界面、後側境界面は何れも集束途上の光束によりリング状に照射され、これらの照射部分からの反射光は、ピンホール板上の「若干ぼけたリング状部分(リング像)」を照射する。水晶体後側境界面での反射光はピンホール位置に集光する。
【0036】
従って、ピンホールの開口径が「ピンホール位置に集光する光束のビームウエスト」よりも大きく、ピンホール板上に生成される「リング状に照射される部分(リング像)のうちで最小のものの内径」よりも小さければ、集光光束が集光している「角膜表面や他の境界面」からの各反射光を適正にピンホールを通して光検出器に導き得るとともに、「集光光束が集光することなくリング状に照射している面」からの反射光はピンホール板により、光検出器に対して有効に遮断され測定に対するノイズ光となることがない。
【0037】
上記請求項1記載のグルコース濃度測定装置に用いられる「集光位置変位手段」は、集光レンズをその光軸方向へ変位させるレンズ変位装置であることができる(請求項2)。集光位置変位手段としてはまた、上記光学装置の「照明用光源、コリメートレンズ、集光レンズ、光検出器、光路分離手段、検出レンズ、ピンホール板、リング状光束形成手段」を一体的に構成し、これらを一体として集光レンズの光軸方向へ変位させる変位手段として構成しても良い。
【0038】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光する遮光板であることができる(請求項3)。
【0039】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置はまた「集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間」に1/4波長板を有し、光路分離位置と1/4波長板との間に、リング状光束形成手段を配置した構成とすることができる。「光路分離位置」は、測定光束の光路が、照明光束用の光路から分離する位置である。
【0040】
リング状光束形成手段は「コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光し、眼球から集光レンズと1/4波長板とを介して戻る測定光束を、そのまま光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の遮光板」とすることができ(請求項4)、あるいはまた「コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束から除去し、眼球から集光レンズと1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の回折素子」とすることもできる(請求項5)。
【0041】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」はまた、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の「少なくとも光束中心部を回折させて前記照明用光束から除去する回折素子」であることもできる(請求項6)。
【0042】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置における「リング状光束形成手段」はまた、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の光束断面形状を「リング状の発散光」に変換する第1の光学素子と、リング状の発散光に変換された光束を「リング状の光束断面を持つ平行光束」に変換する第2の光学素子とを有することができる(請求項7)。
【0043】
上記請求項1〜7の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置は、集光レンズの眼球側に「照明用光束の波長の光は透過させるバンドパスフィルタ」を有することができる(請求項8)。
「バンドパスフィルタ」は、測定に対して外乱となる外部光を有効に除去できるものであればよく、照明用光束の光を含む波長帯域の光を適宜に通過させるものであればよい。
【0044】
請求項8記載のグルコース濃度測定装置は、照明用光源とバンドパスフィルタの何れかが「光路を偏向させる偏向ミラー」を備えることができる(請求項9)。
【0045】
この発明の「光学装置」は、上記請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置である(請求項10)。
【0046】
また、請求項11記載の「リング状光束形成手段」は、上記請求項4または5または6または7記載のグルコース濃度測定装置に用いられるリング状光束形成手段である。
【0047】
請求項12記載のグルコース濃度測定方法は、上記請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置を用いるグルコース濃度測定方法である。
【発明の効果】
【0048】
以上に説明したように、この発明によればグルコース測定装置における測定ノイズを有効に軽減させ、もしくは防止させることができ、グルコース濃度を精度良く測定できる。
【0049】
また、後述する実施の形態のようにこの発明のグルコース測定装置は小型に形成でき、携帯を容易とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施の形態を説明する。
図1はグルコース濃度測定装置の実施の1形態を説明するための図である。
図1(a)において、符号11は照明用光源、符号12はコリメータレンズ、符号13は遮光板、符号14は偏光ビームスプリッタ、符号15は1/4波長板、符号16は集光レンズ、符号17は眼球、符号18は検出レンズ、符号19はピンホール板、符号20は光検出器、符号21は外光カットフィルタ、符号22は変位手段、符号23は制御・演算表示手段を示す。
【0051】
照明用光源11はレーザ光源で、この例においては「端面発光型の半導体レーザ」が用いられている。放射される光は赤外領域の「不可視光領域(例えば、波長:850nm)のレーザ光」で不可視光であるので、これを眼球に照射しても「瞳が閉じる」こともないので、適正な測定を行なうことができる。
【0052】
照明用光源11から放射されたレーザ光は、コリメートレンズ12により平行光に変換されて照明用光束LAとなり、照明用光束LAの主光線に直交するように配置された遮光板13を通過する。
【0053】
遮光板13は「コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの断面形状をリング状に整形してリング状照明光束LBとするリング状光束形成手段」を構成するものである。
【0054】
即ち、遮光板13は、透明な平行平板の片面に「例えば、金属蒸着等による遮光パターン」が形成されたものであり、図1(c)に示すように、円環状の光透過部13aと遮光部13b、13cとを有している。遮光部13b、13cによる遮光は吸収により行なっても良いし反射により行なっても良い。
【0055】
従って図1(d)に示すように、照明用光束LAが遮光板13を通過すると、通過した光束は「光束断面形状LB1がリング状」であるリング状照明光束LBとなる。遮光板13の円環状の光透過部13aの中心は、照明用光束LAの主光線の位置と合致する。
【0056】
即ち、遮光板13は「コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部」を遮光する。
【0057】
このように「光束断面形状がリング状となった平行光束」であるリング状照明光束LBは、偏光ビームスプリッタ14に入射する。
照明用光源11から放射されるレーザ光は「実質的な直線偏光状態」にあり、偏光ビームスプリッタ14は、リング状照明光束LBをP偏光として透過させるように態位を調整されている。
【0058】
偏光ビームスプリッタ14を透過したリング状照明光束LBは、ついで1/4波長板15を透過して「円偏光」に変換され、集光レンズ16により集光光束に変換され、外光カットフィルタ21を介して眼球17に向って集光する。
【0059】
外光カットフィルタ21は「外部の光がノイズとして作用するのを防止」する上で有効であり、これを用いることが好ましいが測定の原理上は必ずしも必要ではない。
【0060】
眼球17により反射された光は「戻り光」となり、外光カットフィルタ21と集光レンズ16とを介して「測定光束LC」となる。
【0061】
この測定光束LCは、1/4波長板15を透過すると直線偏光状態となるが、その偏光面はリング状照明光束LBの偏光面とは直交しており、従って偏光ビームスプリッタ14に対してS偏光状態となり、偏光ビームスプリッタ14により反射されてリング状照明光束LBの光路から分離する。
【0062】
即ち、偏光ビームスプリッタ14と1/4波長板15とは「光路分離手段」を構成している。
【0063】
このように、リング状照明光束LBの光路(照明用光束LAの光路でもある。)から分離した測定光束LCは検出レンズ18により集光されて、ピンホール板19に向う。
測定光束LCが平行光束であれば、検出レンズ18による「測定光束LCの集光位置」は検出レンズ18の焦点位置であり、この焦点を含む焦点面に合致させてピンホール板19が配置され、ピンホール19aの位置は上記「焦点」に合致している。
従って、集光レンズ16と検出レンズ18とは「共焦点光学系」を構成する。
【0064】
ピンホール板19は図1(e)に示すように、中央部にピンホール19aを形成されて、光検出器20の受光面の近傍に配置され、ピンホール19aの部分でのみ測定光束LCを通過させる。
そして、測定光束LCのうち「ピンホール19aを通過した部分」のみが光検出器20の受光面に入射する。
ピンホール19aの開口径は、検出レンズ18に平行光束状態の測定光束LCが入射するときに、検出レンズ18によって集光される集光径(ビームウエスト径)に略等しく設定されている。
【0065】
光検出器20は受光した光量に応じた電気信号を出力し、この出力は制御・演算表示装置23に入力する。制御・演算表示装置23は、この実施の形態において「演算手段」を構成する。
【0066】
変位手段22は「集光位置変位手段」を構成するものであり、集光レンズ16を光軸方向(図1(a)で上下方向)に変位させる。この変位手段22としては、モータと案内機構等「従来から知られた適宜のもの」を用いることができる。
【0067】
集光レンズ16に入射するリング状照明光束LBは平行光束であるから、集光レンズ16と「集光レンズ16によるリング状照明光束LBの集光位置」との間隔は不変であり、集光レンズ16光軸方向に変位させることにより、上記集光位置を(集光レンズ16との間隔を一定に保ちつつ)上記光軸方向に変位させることができる。
【0068】
「演算手段」を構成する制御・演算表示装置23は、変位装置22による集光レンズ16の変位を制御し、集光レンズ16の変位量を決定する。
【0069】
ここで、眼球17の構造を「測定に必要な部分」のみに簡略化して説明する。
図1(b)において、符号17aで示す部分は「角膜」、符号17cで示す部分は「水晶体」、符号17dで示す部分は「硝子体」である。
【0070】
角膜17aと水晶体17cとで挟まれた部分が「前眼房」であり、符号17bで示す。
【0071】
図1(b)において符号R1は「角膜表面」であり、以下単に「面R1」と称する。
【0072】
符号R2は角膜17aと前眼房17bとの境界面(「前側境界面」)であり以下単に「面R2」と称する。同様に、符号R3は前眼房17bと水晶体17cとの境界面(「後側境界面」)で以下単に「面R3」と称し、符号R4は水晶体17cと硝子体17dの境界面で以下単に「面R4」と称する。
【0073】
以下の説明において「眼球内における面間隔」は、図1(b)に示された眼球の「中心を通る左右方向の直線(眼球光軸)」を考えるとき、この直線上において隣接する面間の間隔である。
前眼房17bについて言えば「上記直線上における面R2と面R3の間の部分」であり、以下「面R2とR3との間隔」を前眼房17bの厚さ:dとする。前眼房17bの厚さ:dは「個人に固有の量」であるが、環境や経時で実質的に変化せず、従って、光学的厚さの算出に当たっては「定数」として扱うことができる。
【0074】
一方、前眼房17bを満たす「前眼房内媒質」の屈折率は、身体状況に応じて変化する量であり、これを「n」で表すこととする。このとき、前眼房17bの光学的厚さは「n・d」である。
【0075】
「前眼房内媒質の屈折率」は被測定者において予め測定され、基準となる屈折率:n0(適正なグルコース濃度に対応する。)を与えるときの値が基準値として制御・演算表示装置23に予め設定されている。即ち、上記「d」と「n0」とが「前眼房基礎データ」である。
【0076】
また、前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係(予め、測定により決定されている。)も制御・演算表示装置23に予め設定されているのである。
【0077】
後述するように、集光レンズ16の変位量として前眼房17bの光学厚さが測定され、この光学厚さと上記前眼房基準データとから前眼房内媒質の屈折率:nが制御・演算表示装置23により算出される。
【0078】
このように算出された屈折率:nと上記「前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係」に基づき、グルコース濃度が制御・演算表示装置23により決定される。
決定されたグルコース濃度は制御・演算表示装置23の「表示部(ディスプレイ 図示されず)」に表示される。なお、表示部を「外部装置」としてグルコース濃度測定装置と別体にしてもよい。
【0079】
以上に説明したように、図1に実施の形態を示すグルコース濃度測定装置は、眼球17における前眼房17bの光学的厚さ:(n・d)を光学的方法により検出し、検出された光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率:nを演算し、演算された屈折率:nを用い、予め設定された「屈折率とグルコース濃度の対応関係」に基づき、前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置である。
【0080】
そして、この装置は、眼球の前眼房17bの光学的厚さ:(n・d)を光学的に検出する光学装置および、この光学装置により検出される光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段23とを有する。
【0081】
「光学装置」は、照明用光源11と、この照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化するコリメートレンズ12と、このコリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAを、眼球17に向って集光する集光光束に変換する集光レンズ16と、眼球17から集光レンズ16を介して戻る測定光束LCを受光して電気信号に変換する光検出器20と、測定光束LCを照明用光束LAの光路から光検出器20側へ分離する光路分離手段14、15と、この光路分離手段により分離された測定光束LCを、光検出器20の受光面近傍に向けて集光させる検出レンズ18と、光検出器の受光面近傍の所定位置に配置され、集光レンズ16による照明用光束LA(LB)の集光位置を物点とするとき、集光レンズ16と検出レンズ18とによる「物点に対する像点位置」に所定開口径のピンホール19aを有するピンホール板19と、集光レンズ16による照明用光束の集光位置を集光レンズ16の光軸方向に変位させる集光位置変位手段22と、コリメートレンズ12と集光レンズ16との間の光路上に配置され、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの断面形状をリング状に整形してリング状照明光束LBとするリング状光束形成手段13とを有する。
【0082】
演算手段23は、前眼房基礎データ:(d、n0)および、前眼房内媒質の屈折率:nとグルコース濃度との対応関係についてのデータを設定可能である。
【0083】
以下に、測定のあらましを説明する。
図1(a)において、変位手段22により集光レンズ16を光軸上で眼球17に向けて変位させていくと、先ず、集光レンズ16による集光光束は角膜17aの表面である面R1上に集光する。図1(a)はこの状態を示している。
【0084】
このとき、面R1で反射した光は測定光束として光検出器20の受光面に入射するが、面R1で反射される光の反射点と、ピンホール19aの位置とが、集光レンズ16と検出レンズ18とによる共焦点光学系により共役関係となるので、測定光束はピンホール19aを通過して光検出器20に最大光量として入射する。
【0085】
集光レンズ16がさらに眼球側へ変位するにつれて、集光光束の集光位置は眼球17の内部へ向い、集光光束は、面R2、R3、R4の位置に順次に集光する。その集光の度ごとに、前記共焦点光学系の共役関係がなりたち、光検出器20の受光面に入射する光量が大きくなる。
【0086】
図1(f)は、上記集光レンズの「変位量」を横軸とし、光検出器20の「出力」を縦軸として、集光レンズ16の変位量と光検出器20の出力の関係を示したものである。横軸の変位量は、集光レンズ16の「眼球側への変位を正」としている。
【0087】
集光レンズ16の変位に従い、出力には4つの極大LR1、LR2、LR3、LR4が順次に生じる。前述の説明から明らかなように、極大LR1は集光光束が面R1に集光している状態で発生し、以下、極大LR2、LR3、LR4は集光光束が面R2、R3、R4に集光している状態で発生する。
【0088】
このとき、図1(f)に示す変位量:DSは、集光光束が面R2(角膜と前眼房の境界面である前側境界面)に集光した状態から、集光光束が面R3(前眼房と水晶体の境界面である後側境界面)に集光した状態となるまでに「集光レンズ16が変位した変位量」であり、これは「前眼房17bの光学的厚さ:n・d」に等しい。
【0089】
演算手段である制御・演算表示装置23は、上記変位量:DSを持って「前眼房の光学的厚さ:n・d」として特定する。
【0090】
前述の如く、前眼房基礎データ:(d、n0)は予め制御・演算表示装置23に設定されているから、前眼房17bの「基準の光学的厚さ:d・n0」は既知である。
そして、前眼房基礎データにおける「前眼房17bの厚さ:d」は、環境や経時で実質的に変化せず、光学的厚さの算出に当たっては「定数」として扱うことができるので、既知の量:d、n0と、上記変位量:DSとして特定された「測定された光学的厚さ:n・d」とから、測定時における前眼房媒質の屈折率:nを算出できる。
【0091】
即ち、測定された光学的厚さ:DSと基準の光学的厚さ:n0・dとの差が「ΔD」であるとすると、この差は、測定時の屈折率:nと基準の屈折率:n0との差:Δnによるものであり、従って、
ΔD=Δn・d
となって、屈折率の変化量:Δnは、
Δn=ΔD/d
となり、これから、測定により特定される前眼房媒質の屈折率:nは、
n=n0+ΔD/d
として算出できる。
【0092】
制御・演算表示装置23は、上記演算を行なって前眼房媒質の屈折率:nを算出する。
【0093】
このように算出された屈折率:nを用い、制御・演算表示装置23内に予め設定されている「屈折率:nとグルコース濃度との対応関係(この関係はテーブルとして与えられていても良いし、演算式の形で与えられていても良い。)」に従い、グルコース濃度が決定され、表示部に表示される。従って「グルコース濃度の演算」は、演算式による演算という形で行なうこともできるし、テーブルの参照という形で行なうこともできる。
【0094】
決定されたグルコース濃度を、表示部への表示で被測定者にリアルタイムで知らせる代わりに、あるいは表示部への表示とともに、外付けメモリカード(SDカード)などによりデータとして記録しておくことも可能である。
【0095】
上記の如く「演算手段」である制御・演算表示装置23は、照明用光束(LA、LB)が、前眼房17bの前側境界面R2に集光した後、後側境界面R3に集光するまでの「集光位置の変位量:DS」として検出される「前眼房の光学的厚さ」に基づき前眼房内媒質の屈折率:nを演算し、さらに、演算された屈折率:nに基づき前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する機能を有する。
【0096】
ピンホール板19におけるピンホール19aの開口径は、これを小さくしすぎると光検出器へ到達する測定光束の光量が少なくなり、測定精度が低下したり測定に長時間を要する等の問題があり、上記「開口径」は、測定光束が「平行光束である場合」に検出レンズ18により集光されたときの集束径、所謂ビームウエスト径以上の大きさが必要である。
【0097】
しかし、ピンホール19aの開口径が大きい場合、測定光束LCに含まれるノイズ成分が検出されて測定精度を低下させる虞がある。
この発明においては、上記「測定光束に含まれるノイズ成分」の影響を以下のようにして除去もしくは有効に軽減させる。
【0098】
前述の如く、集光レンズ16がその光軸方向に於いて眼球17の側へ変位するに従い、集光光束は面R1〜R4に順次に集光して、光検出器20の出力に図1(f)に示す極大LR1〜LR4を生じる。
【0099】
前述の如く、集光光束が面R1〜R4の何れか1つ、例えば面R2に集光しているとき、他の面、即ち面R1、R3、R4はリング状照明光束LBの一部が「リング状に照射」されており、これらリング状の照射部で反射された光束は、測定光束の一部となって検出レンズ18に入射し、ピンホール板19に向けて集束する。
【0100】
このように、集光レンズ16による集光光束がある面Ri(i=1〜4)に集光しているとき、他の面Rj(j≠i)からの反射光は「測定光束の一部」となって光検出器20へ向い、光検出器20に受光されると光検出器20の出力にノイズ成分として影響する。
【0101】
このようなノイズ成分の影響は、図1(f)に示した「出力の極大」の幅をブロード化し、変位距離:DSの制度を低下させ、ひいては前眼房の光学的厚さ、グルコース濃度に対する誤差の原因となる。
【0102】
このようなノイズ成分の影響を、この発明では、リング状光束形成手段13により、リング状照明光束LBの「円環状の光束断面の内径」を調整することにより除去又は有効に軽減するのである。
【0103】
集光レンズ16と検出レンズ18とは前述の如く「共焦点光学系」を構成するので、集光レンズ16により集光される集光光束の集光位置と、ピンホール19aの位置とは、前述の如く、共役の関係にある。
【0104】
従って、集光レンズ16による集光光束が「ある面Ri(i=1〜4)」に集光しているとき、他の面Rj(j≠i)からの反射光が、集光レンズ16と検出レンズ18とにより集光する位置は、検出レンズ18の光軸上で「ピンホール板19の前後方向」にずれる。
【0105】
集光レンズ16による集光光束が「ある面Ri(i=1〜4)に集光している場合」において、面Riよりも後側(集光レンズ16から遠い側)の面Rjによる反射光が「検出レンズ18により集光する位置」は、図2(a)に示すように、ピンホール板19よりも「検出レンズ18側」にずれる。
【0106】
逆に、集光レンズ16による集光光束がある面Ri(i=1〜4)に集光している場合において、面Riよりも前側(集光レンズ16に近い側)の面Rkによる反射光が「検出レンズ18により集光する位置」は、図2(b)に示すように、ピンホール板19よりも「検出レンズ18から離れる側」にずれる。
【0107】
図2で、符号Pで示す面が上記面Rj、Rkによる反射光の集光する位置である。
【0108】
上記面Rj(j≠i)、Rk(k≠i)による反射光は測定光束に含まれるノイズ成分であるが、図2に示すように、ピンホール板19上では「リング状」になる。これは、眼球が「リング状照明光束を集光させた光」で照明されるからである。
【0109】
これら「Rj(j≠i)、Rk(k≠i)による反射光」を以下「ノイズ光」と呼ぶ。
【0110】
ピンホール19aの開口径(図2において符号「φp」で示す。)に対し、上記ノイズ光がピンホール板19をリング状に照射する部分(前述の「リング像」であるが、これを以下「照射リング」と呼ぶ。)の内径が常に大きくなるようにすれば、上記ノイズ光の影響を除去できる。
これは、リング状照明光束LBの「円環状の光束断面の内径」を、リング状光束形成手段13により規制することにより可能である。
【0111】
即ち、リング状光束形成手段に「集光レンズ16による集束光が、眼球17における1つの面Riに集光されるとき、他の面Rj(j≠i)により反射された「ノイズ光」が、ピンホール板19上を照射する「照射リング」の内径が、ピンホール19aの開口径:φp以上となるように、リング状照明光束LBの内径を規制する機能」を持たせる。
【0112】
ノイズ光が検出レンズ18により集光する位置の「ピンホール板19に対するずれ量:L」は、ノイズ光が反射される面Rj(j≠i)の「面Riからの距離」に対応して変化する。
【0113】
具体的に説明すると、照明用光源10から放射されるレーザ光の波長:λ、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの光束径(遮光板13の透過部13aの外径):φC、集光レンズ16の焦点距離:fO、検出レンズ18の焦点距離:fC、眼球17の面RiとRjの距離:ΔTを用いて計算する。
【0114】
(A)「ピンホール19aの径:φP」
ピンホール19aの直径(開口径):φPは、正規の測定光束(面Riに集光して反射された測定光束)が検出レンズ18によって集光されたときのビームウエスト径に対応し、下記の式(1)によって計算される。
【0115】
式(1)によって計算されるピンホール19aの直径:φPは「検出レンズ18によって集光される正規の反射光を通過させるために必要な最低の直径」であるから「式(1)によって算出される値以上の値」をもって直径:φPとすればよい。
φP=K×λ/NA=K×λ/{φC/(2×fC)} (1)
(1)において、Kは「レーザ光の光強度分布により設定される係数」、NAは「検出レンズ18の開口数」であり「{φC/(2×fC)}」により近似する。
【0116】
(B)「他の面Rj(j≠i)からの反射光(ノイズ光)の検出レンズ18による集光位置(図2に符号:Pで示す位置)とピンホール板19との距離:L」
距離:Lは、以下の近次式(2)により算出される。
【0117】
L=(2×ΔT)×(fC/fO)2 (2)
「(fC/fO)2」は、集光レンズ16と検出レンズ18とによる「共焦点光学系」の縦倍率であり、ΔTは、面Ri(集光レンズ16による集光光束が集光している)と面Rjとの間隔である。
【0118】
(C)「遮光板13の内径・外径」
遮光板13の遮光部13bの直径:φSを計算する。
【0119】
図2(a)、(b)に示すように、ノイズ光の集光点Pの位置により「集光するノイズ光の光軸に対する角度」が異なり、遮光部13bの直径:φSも集光点Pの位置により異なる。
【0120】
集光点Pが、図2(b)のように「ピンホール板19の後方」に位置する場合には、ノイズ光の「光軸に対する角度」が小さく、ピンホール板19に形成される「照射リング」の内径が「ピンホール19aの直径:φPより小さくなる場合」には、ピンホール19aを通過する光束部分がノイズの原因となるので、この集光光束がピンホール板19を照射する照射リングの内径がピンホール19aの直径:φP以上となるように、遮光部13bの直径:φSを設定しなければならない。
【0121】
「他の面Rjの検出レンズ18による集光点位置Pが、図2(a)に示すようにピンホールPaの手前側にある場合の遮光部13bの直径:φSF」
集光点Pを介してピンホール板19上に形成される面Rjからのノイズ光による照射リングの内径をピンホール径:φPと同一とし、この場合における「検出レンズ18に入射するノイズ光における「光束中央部の遮光された部分」の直径、即ち、遮光部13bの直径をφSFとすると式(3)が成立する。
【0122】
(φP/2)/L=(φSF/2)/(fC−L) (3)
これは式(4)のように変形できる。
【0123】
φSF=fC×φP/L−φP (4)
この場合、遮光部13bの直径:φSFは遮光部13bの「最低の大きさ」を表すものであるから、遮光部13bの直径:φSFを下記の式(5)によって規定できる。
φSF≧fC×φP/L−φP (5)
「他の面Rjによるノイズ光の「検出レンズ18による集光点P」の位置が図2(b)のようにピンホール19aの後側にある場合の遮光部13bの直径:φSR」
この場合、検出レンズ18によって集光される他の面Rjからのノイズ光の一部、具体的には、同ノイズ光がピンホール板19のピンホール19aの周辺部を照射する照射リングにおける「ピンホール19aより内側の部分」は、ピンホール19aを通過してピンホール板19の後方で集光する。
【0124】
したがって、ノイズ光がピンホール19に到達したノイズ光の「中央部の遮光部分」の直径をピンホール径:φPと同一とし、この場合における遮光部13bの直径をφSRとすれば、式(3)と同様に下記の式(6)が成立し、上記と同様、遮光部13bの直径:φSRを式(6)に基づき式(7)によって規定できる。
(φP/2)/L=(φSR/2)/(fC+L) (6)
φSR≧fC×φP/L+φP (7)
式(5)と(7)によって規定される、遮光部13bの直径:φSFと直径:φSRの大小を比較すると、直径:φSFよりも直径:φSRの方が常に大きい。
【0125】
従って、遮光部13bの直径:φSとして直径:φSRを採用するのがよい。
【0126】
図3にはグルコース濃度測定装置の実施の別形態を説明図的に示す。繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われるものについては図1におけると同一の符号を用いた。
【0127】
この実施の形態においては、集光レンズ16と光路分離手段における光路分離位置(偏光ビームスプリッタ14の分離面)の間に1/4波長板15を有し、光路分離位置と1/4波長板15との間に、リング状光束形成手段31が配置された構成である。
リング状光束形成手段31は、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部を遮光し、眼球17から集光レンズ16と1/4波長板15とを介して戻る測定光束をそのまま、光路分離位置側へ透過させる「偏光選択型の遮光板」である。
【0128】
偏光選択性の遮光板31は、図3(b)に示すように、リング状の光透過部31aを挟んで遮光部31b、31cが形成されておいる。
照明用光源11から放射され、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAは、偏光ビームスプリッタ14を透過し、光遮光部31b、31cは、この直線偏光状態の照明用光束LAを遮光してリング状照明光束LBとする。
【0129】
眼球17から戻る測定光束は、1/4波長板15を透過して、偏光面を往路と直交する方向に変換されており、リング状光束形成手段31をそのまま透過して偏光ビームスプリッタ14に戻り、照明用光束LAの光路から分離される。
【0130】
偏光選択型の遮光板31の遮光部31b、31cとしては、偏光子、例えば、一般に知られた「オートクローニング方式などを用いた多層膜構成のもの」等を用いれば良い。
【0131】
偏光選択型の遮光板31における遮光部31b、31cの形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
【0132】
図3の実施の形態においては、集光レンズ16と1/4波長板15と偏光選択性の遮光板31とをハウジングHSにより一体化し、変位手段16によりハウジングHSごと集光レンズ16の光軸方向へ変位可能としている。
【0133】
このようにすることにより、変位装置22によりハウジングHSが一体として変位するので「集光レンズ16と遮光板31との位置関係の変動」を低減でき、眼球17における所定の面に光スポットを正確に形成できる。
【0134】
偏光選択型の遮光板と1/4波長板とは、これらを、例えば、図3(c)に示すように透明平行平板310の両面に、遮光膜311および1/4波長膜312として形成することにより一体化しても良い。
このようにすると、部品点数の削減、軽量化に伴い、変位装置22の動作負荷を低減でき、より安定した「集光レンズ16の位置制御」が可能となる。
【0135】
図4はグルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1におけると同一の符号を付した。
【0136】
図4の実施の形態は、図1(a)に示す構成において、リング状光束形成手段としての遮光板13を、回折素子32で置き換えたものである。
回折素子32は図4(b)に示すように「同心円状の回折格子」を形成されている。
【0137】
「回折格子」は、図4(c)に示す領域32b、32cの部分に形成され、領域32aの部分は「透過領域」となっている。
【0138】
従って、図4(d)に示すように、コリメートレンズで平行光束化された照明用光束LAが回折素子32に入射すると、領域32a(図4(c))に入射する光束はそのまま透過して、リング状の光束断面LB1を有するリング状照明光束LBとなる。
【0139】
透過領域32a以外の部分に入射した照明用光束LAは、回折素子32により回折光LCとして回折されて照明用光束LAから除去され、測定に関与しなくなる。
【0140】
回折格子32において、回折格子の形成される領域32b、32cの形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
回折素子の断面の溝形状としては矩形状のようなものを用いればよく、溝深さは1次回折光が最も強くなる深さを選択すればよい。
【0141】
回折格子の溝ピッチは「回折される回折光LCが眼球17に集光せず、眼球17から戻るノイズ光が光検出器20に入射しないように散乱されるのに十分な狭ピッチ構造」であればよい。なお回折溝の形状は矩形に限定されず、階段形状、鋸歯形状であってもよく、とくに鋸歯形状は高回折効率を有するため遮光機能として好適である。
【0142】
図5は、グルコース濃度測定方法の「実施の他の形態」を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1、図3におけると同一の符号を付した。
【0143】
この実施の形態は、図3に示した実施の形態において、偏光選択性の遮光板31に換えて「偏光選択型の回折素子32A」を用いた点に特徴がある。
図示の如く、この実施の形態においても、遮光板32Aと1/4波長板15と集光レンズ16とはハウジングHSにより一体化され、ハウジングHSごと変位手段22により、集光レンズ16の光軸方向へ変位可能となっている。
【0144】
従って、変位装置22によるハウジングHSの変位に際して、集光レンズ16と遮光板32Aとの位置関係の変動が低減でき、眼球17における所定の境界面に光スポットを正確に形成できる。
【0145】
図5(a)の実施の形態では、集光レンズ16と「光路分離手段の光路分離位置(偏光ビームスプリッタ14)」との間に1/4波長板15を有し、光路分離位置と1/4波長板15の間にリング状光束形成手段32Aが配置され、リング状光束形成手段32Aは、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束LAから除去し、眼球17から集光レンズ16と1/4波長板15とを介して戻る測定光束をそのまま光路分離位置側へ透過させる「偏光選択型の回折素子32A」である。
【0146】
偏光選択型の回折素子32Aは、図5(b)に示すように照明用光束LAのうち、光束中心部を回折光LCとして回折させて照明用光束LBから除去するとともに、円環状の光束断面形状LB1を持つリング状照明光束LBとして形成する。
【0147】
眼球17から戻る測定光束は、1/4波長板15を透過して往路とは偏光面が90度旋回し、偏光選択型の回折素子32Aをそのまま透過して光路分離位置側へ伝搬する。
【0148】
偏光選択型の回折素子32Aは「照明用光束LAの一部を回折させ、眼球17から戻る光は1/4波長板15を介して偏光方向が往路光に対して直交するような回折素子」であればよく、例えば「回折構造に波長よりも短い微細周期構造を重畳して偏光選択型の回折機能を発現させた」素子を用いることができる。
【0149】
回折格子自体の形態は、それが偏光選択性を持つことを除けば、図4(b)、(c)に示した回折素子のものと同様であり、回折格子の形成される領域の形状は、先に説明した図1の実施の形態の場合と同様に設定される。
また、図5には図示されていないが、図3の実施の形態の場合と同様に、偏光選択性の回折素子32Aと、1/4波長板15とを、同一基板の表裏に形成し、これらを一体化することができ、このようにすることにより、部品点数の削減、軽量化が可能となり、変位手段22の動作負荷を低減でき、より安定した集光レンズ位置の制御が可能となる。
【0150】
図6は、グルコース濃度測定装置の「実施の他の形態」を説明するための図である。
繁雑を避けるため、混同の虞がないと思われる部分に付いては、図1におけると同一の符号を付した。
【0151】
図6に示す実施の形態は、図1に示す実施の形態における遮光板13に換え、リング状光束形成手段33として、コリメートレンズ12により平行光束化された照明用光束LAの光束断面形状を「リング状の発散光」に変換する第1の光学素子33Aと、リング状の発散光に変換された光束を「リング状の光束断面を持つ平行光束」に変換する第2の光学素子33Bとを有するものを用いた点に特徴の一端がある。
【0152】
第1、第2の光学素子33A、33Bは「アキシコンレンズ」であって、円錐状の面を有し、それぞれの円錐面の頂部を対向させ、各円錐軸をコリメートレンズ12の光軸に合致させて配置されている。
【0153】
図6(b)に示すように、照明用光束LAは、第1の光学素子33Aにより、光軸の回りに発散する発散光束に変換されて第2の光学素子33Bに入射し、再び平行光束に変換されてリング状照明光束LBとなる。
【0154】
このとき、第1、第2の光学素子33A、33bの間隔を調整することにより、リング状照明光束LBの内径を調整でき、この調整によりリング状照明光束LBの内径を、図1の実施の形態の場合と同様に設定できる。
【0155】
リング状光束形成手段33は、リング状照明光束LBの外周辺部を規制する機能を持たないので、図6の実施の形態では、透明平行平板の片面に「中空のリング状遮光部」を有する開口制限素子35を設け、リング状光束形成手段33により形成されたリング状照明光束LBの光束外周部を形成して、リング状照明光束LBの光束断面の「リング幅」を所望の大きさに設定する。
【0156】
なお、アキシコンレンズ33A、33Bとして「円錐形状をフレネル化したフレネルアキシコンレンズ」を用いてもよい。また、開口制限素子35はハウジングHSに開口として形成されてもよく、あるいは、集光レンズ16のレンズ面上にコートすることによって形成してもよい。
【0157】
上に説明したグルコース濃度測定装置の実施の各形態を用いることにより、請求項12にかかるグルコース濃度測定方法が実施される。
【0158】
なお、上に説明した実施の各形態では、リング状照明光束におけるリング状の断面形状における「内径」を規制するとともに「外径をも規制」している。この発明のグルコース測定装置は「ノイズ光による照射リングの内径をピンホールの開口径より大きくする」ことによりノイズ光の影響を軽減もしくは防止することにあるから、リング状照明光束の外径は必ずしも規制する必要はない。
【0159】
しかし、リング状照明光束の外径を規制しない場合には、測定光束がピンホール位置に形成するビームウエスト径が小さくなり、ピンホール板の設定精度が厳しくなるので、リング状照明光束の外径も規制することが好ましい。
【0160】
上に説明した実施の各形態では、外光カットフィルタ22が用いられている。
外光カットフィルタ21は、照明用光源11から放射されるレーザ光の波長の光は透過させ、グルコース濃度測定装置外部からの光を反射するバンドパスフィルタである。
【0161】
例えば、レーザ光の波長帯として近赤外域、例えば900〜1400nmの範囲内の波長:λ1(例えば850nm)の光を発する照明用光源を用いる場合、この波長域の光を透過させ「可視波長域(400〜800nm)」を反射するように、図7のような分光透過率特性を有するバンドパスフィルタを用いればよい。
【0162】
かかる特性を発するバンドパスフィルタとしては、真空蒸着やスパッタリング法により多層膜を形成したものや、波長以下の周期の凹凸形状が形成されたものなどを用いうる。
【0163】
また、照明用光源11として用いられる半導体レーザへの戻り光を防止するために、レーザ光源11と偏光ビームスプリッタ14の間の光路中に「眼球17へ向かうレーザ光をそのまま透過」させ、この光と直交する偏光方向の光を「反射、回折、散乱の何れかの手段により、照明用光源11へは戻らないようにする素子」を配置するのが好ましい。このようにすれば照明用光源のレーザ発振を安定化できる。
【0164】
また照明用光源11と外光カットフィルタ21との間の光路中に「光量を低減させるためのNDフィルタ」を配置してもよい。これにより「眼球17に入射するリング状照明光束の強度を所定の値(目への入射が許容されるMPE値(JIS C−6802:レーザ放射による障害発生率が50%のレベルの1/10のレーザ光強度を規定する値))を下回る値にリング状照明光束の強度を規制できる。
【0165】
なお、眼球17から反射される測定光束を高効率に所得するため、NDフィルタはレーザ光源11と偏光ビームスプリッタ14の間の光路中に配置されるのが良い。
【0166】
NDフィルタは照明用光源11から外光カットフィルタ21に至る光路上に配置される「何れかの光学素子」の表面にコーティングして形成してもよい。このようにすれば部品点数を増すことなくND機能を追加できる。
【0167】
照明用光学系11として半導体レーザを用いる場合、半導体レーザから放射されるレーザ光のファーフィールドパターンは楕円形状である。
リング状照明光束LBは断面形状が円環状であるので、楕円状の光束断面からこのような光束断面形状を得るには、コリメートレンズ12のNAを大きくして大面積の楕円状光束断面を得、これからリング状光束形成手段で円環状の光束断面を切り出すようにすればよいが、光利用効率が悪く、コリメートレンズも大型化しやすい。
【0168】
これを避けるには、コリメートレンズ12と偏光ビームスプリッタ14の間に「ビーム整形手段」を設け、光束断面形状を楕円形状から円形状へ整形すればよい。
【0169】
ビーム整形手段は、例えば、図8(a)に示すように、くさび状のプリズムPLを介して「入射側光束断面が楕円形状のレーザ光束」を、「射出側光束断面が円形状のレーザ光束」に変換するものや、同図(b)に示す、光束断面形状を一方向(図の上下方向)に引き伸ばす2つの回折面を有する回折素子RLを用いるものや、図8(c)に示すように、凹シリンダレンズL1と凸シリンダレンズL2を同軸に組み合わせたもの等でもよい。
【0170】
上述の実施の形態においては、照明用光源11から射出されるレーザ光の偏光方向に応じてレーザ光を透過および反射させる偏光ビームスプリッタ14を用いたが、「照明用光源11から射出されたレーザ光を眼球17に導き、眼球17からの反射光を光検出器20に導くことができる光学素子」であれば他の光学素子でもよい。
【0171】
例えば、偏光ビームスプリッタ14に代えて、入射光の半分を透過させ、半分を反射させるハーフミラーを用いてもよい。
【0172】
照明用光源11から集光レンズ16までの光路中に「球面収差を補正する手段」を配置してもよい。
一般に「集光レンズは眼球内の特定の位置に平行光束を集光する」ように設計される。
【0173】
そして集光位置からずれた位置に対しては球面収差が発生する。
そこで集光レンズのレンズ位置に応じ、集光スポット上で発生する球面収差を打ち消す球面収差を発生させる球面収差補正手段を具備することにより、集光する各面(前述の面R1〜R4)に良好な集光スポットを形成することが可能となる。
【0174】
球面収差補正手段としては、コリメートレンズ12の位置を光軸方向に変移させ集光レンズ16への入射する光の発散状態を変化させる方法や、図9のように凹レンズL10と凸レンズL11からなる2群レンズの間隔を変化させ、集光レンズ16へ入射するリング状照明光束の発散状態を変化させる方法や、瞳半径位置に応じて光路差を発生させ通過ビームに所定の球面収差を付加できる液晶素子などを用いることができる。
【0175】
また、照明用光源11から外光カットフィルタ21までの光路中に、偏向ミラーを配置し、光路を適宜に屈曲させるようにできる。例えば、図10に示すように、外光カットフィルタ21と偏向ミラーMLを一体化した反射プリズムなどを構成してもよい。
【0176】
図11に、グルコース濃度測定装置の外観形状と使用方法の1例を説明図的に示す。
図11(a)において符号100を持って示す装置本体の前面に外光カットフィルタ21が配置されている。
【0177】
外光カットフィルタ21は図7に示すような分光透過率特性を有し、可視領域の光(外部光)を反射させるので、これをミラーとして用いることができる。
【0178】
外光カットフィルタ21に、図11(c)に示すようにアライメントマークALMを形成しておき、図11(b)のように、このアライメントマークALMを目視すると、外光カットフィルタ21に眼球17の像が写る。測定者は、外光カットフィルタ21に移る眼球17の位置をアライメントマークALMに対して調整して、眼球17の位置を調整することができる。
【0179】
図11(d)に示すのは、眼球17の瞳が、グルコース濃度測定装置の集光レンズ16の光軸上に正しく位置するが、上記光軸上で適正な位置にない状態であり、このことは瞳の「外光カットフィルタ21による像17I」の大きさが「アライメントマークALMの円形マーク」よりも小さいことで知られる。
【0180】
従って、瞳の像17Iの中心がアライメントマークALMの中央に合致した状態で、眼球17と装置本体との位置を集光レンズの光軸方向に調整し、図11(e)に示すように、瞳の像17Iの中心がアライメントマークALMの中心と合致し、なおかつ、瞳の像17Iの大きさがアライメントマークALMの円形マークの大きさに合致した状態で、適正な測定態位が実現する。このようにアライメントマークALMを見ながら容易にグルコース濃度測定装置に対する眼球の3次元アライメントが可能である。
【0181】
上には、裸眼に対する測定の場合を説明したが、この発明のグルコース濃度測定方法は「コンタクトレンズを装着した測定者」に対して対応することができる。
コンタクトレンズの使用時には、角膜の表面とコンタクトレンズの裏面が接し、コンタクトレンズの表面が空気と接する。
【0182】
従って、グルコース濃度測定装置に「コンタクトレンズの装着の有無を選択できるスイッチ機能」を設けておき、該スイッチからの入力信号に応じて「前眼房の屈折率」を得るための光検出器20の出力ピークとして「3番目と4番目」を選択するようにする。
【0183】
すなわち、光検出器20の出力はピークが5つになるため「3番目と4番目のピーク間隔が前眼房の光路長」となる。このとき球面収差が発生するので、前述の収差補正手段を外部入力信号に応じて所定状態に変移するようにすればよい。外部入力装置を設けずに、5つの反射ピークの出力を前提としたコンタクトレンズ専用のグルコース濃度測定装置を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】グルコース濃度測定装置の実施の形態を説明するための図である。
【図2】発明の特徴部分を説明するための図である。
【図3】グルコース濃度測定装置の実施の別形態を説明するための図である。
【図4】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図5】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図6】グルコース濃度測定装置の実施の他の形態を説明するための図である。
【図7】外光カットフィルタを説明するための図である。
【図8】ビーム整形手段を説明するための図である。
【図9】収差補正手段を説明するための図である。
【図10】偏向ミラーを用いて光路屈曲させる場合の1例を説明するための図である。
【図11】グルコース濃度測定装置の外形形状と使用状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0185】
11 照明用光源
12 コリメートレンズ
14 偏光ビームスプリッタ
15 1/4波長板
16 集光レンズ
17 眼球
18 検出レンズ
19 ピンホール板
20 光検出器
22 変位装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球における前眼房の光学的厚さを光学的方法により検出し、検出された前記光学的厚さに基づき前記前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された前記屈折率を用い、予め設定された前記屈折率とグルコース濃度の対応関係に基づき、前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置であって、
眼球の前眼房の光学的厚さを光学的に検出する光学装置および、この光学装置により検出される前記光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段とを有し、
前記光学装置は、
照明用光源と、この照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化するコリメートレンズと、
このコリメートレンズにより平行光束化された照明用光束を、眼球に向って集光する集光光束に変換する集光レンズと、
前記眼球から前記集光レンズを介して戻る測定光束を受光して電気信号に変換する光検出器と、
前記測定光束を前記照明用光束の光路から前記光検出器側へ分離する光路分離手段と、
この光路分離手段により分離された測定光束を、前記光検出器の受光面近傍に向けて集光させる検出レンズと、
前記光検出器の受光面近傍の所定位置に配置され、前記集光レンズによる照明用光束の集光位置を物点とするとき、前記集光レンズと検出レンズとによる前記物点に対する像点位置に所定開口径のピンホールを有するピンホール板と、
前記集光レンズによる照明用光束の集光位置を前記集光レンズの光軸方向に変位させる集光位置変位手段と、
前記コリメートレンズと前記集光レンズとの間の光路上に配置され、前記コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状をリング状に整形してリング状照明光束とするリング状光束形成手段と、を有し、
前記演算手段は、前眼房基礎データおよび、前眼房内媒質の屈折率と前記グルコース濃度との対応関係についてのデータを設定可能で、前記照明用光束が、前記前眼房の前側境界面および後側境界面に集光するときときの前記集光位置の変位量として検出される前記前眼房の光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、さらに、演算された屈折率に基づき前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する機能を有し、
前記リング状光束形成手段は、前記測定用光束が眼球における1つの境界面に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光がピンホール板上に形成するリング像の内径が、前記ピンホールの開口径以上となるように、前記リング状照明光束の内径を規制する機能を有するものであることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のグルコース濃度測定装置において、
集光位置変位手段が、集光レンズをその光軸方向へ変位させるレンズ変位装置であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
リング状光束形成手段が、
コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光する遮光板であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間に1/4波長板を有し、
前記光路分離位置と1/4波長板との間に、リング状光束形成手段が配置され、
このリング状光束形成手段は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光し、眼球から前記集光レンズと前記1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま前記光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の遮光板であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
前記集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間に1/4波長板を有し、
前記光路分離位置と前記1/4波長板の間にリング状光束形成手段が配置され、
前記リング状光束形成手段は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束から除去し、眼球から前記集光レンズと前記1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま前記光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の回折素子であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項6】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
リング状光束形成手段が、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて前記照明用光束から除去する回折素子であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項7】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
前記リング状光束形成手段が、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の光束断面形状をリング状の発散光に変換する第1の光学素子と、前記リング状の発散光に変換された光束をリング状の光束断面を持つ平行光束に変換する第2の光学素子とを有することを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置において、
集光レンズの眼球側に、照明用光束の波長の光は透過するバンドパスフィルタを有することを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項9】
請求項8記載のグルコース濃度測定装置において、
照明用光源とバンドパスフィルタの何れかが、光路を偏向させる偏向ミラーを備えることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置。
【請求項11】
請求項4または5または6または7記載のグルコース濃度測定装置に用いられるリング状光束形成手段。
【請求項12】
請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置を用いるグルコース濃度測定方法。
【請求項1】
眼球における前眼房の光学的厚さを光学的方法により検出し、検出された前記光学的厚さに基づき前記前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された前記屈折率を用い、予め設定された前記屈折率とグルコース濃度の対応関係に基づき、前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算算出するグルコース濃度測定装置であって、
眼球の前眼房の光学的厚さを光学的に検出する光学装置および、この光学装置により検出される前記光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、演算された屈折率に対応する前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する演算手段とを有し、
前記光学装置は、
照明用光源と、この照明用光源から放射されるレーザ光束を平行光束化するコリメートレンズと、
このコリメートレンズにより平行光束化された照明用光束を、眼球に向って集光する集光光束に変換する集光レンズと、
前記眼球から前記集光レンズを介して戻る測定光束を受光して電気信号に変換する光検出器と、
前記測定光束を前記照明用光束の光路から前記光検出器側へ分離する光路分離手段と、
この光路分離手段により分離された測定光束を、前記光検出器の受光面近傍に向けて集光させる検出レンズと、
前記光検出器の受光面近傍の所定位置に配置され、前記集光レンズによる照明用光束の集光位置を物点とするとき、前記集光レンズと検出レンズとによる前記物点に対する像点位置に所定開口径のピンホールを有するピンホール板と、
前記集光レンズによる照明用光束の集光位置を前記集光レンズの光軸方向に変位させる集光位置変位手段と、
前記コリメートレンズと前記集光レンズとの間の光路上に配置され、前記コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の断面形状をリング状に整形してリング状照明光束とするリング状光束形成手段と、を有し、
前記演算手段は、前眼房基礎データおよび、前眼房内媒質の屈折率と前記グルコース濃度との対応関係についてのデータを設定可能で、前記照明用光束が、前記前眼房の前側境界面および後側境界面に集光するときときの前記集光位置の変位量として検出される前記前眼房の光学的厚さに基づき前眼房内媒質の屈折率を演算し、さらに、演算された屈折率に基づき前記前眼房内媒質のグルコース濃度を演算する機能を有し、
前記リング状光束形成手段は、前記測定用光束が眼球における1つの境界面に集光されるとき、他の境界面により反射された戻り光がピンホール板上に形成するリング像の内径が、前記ピンホールの開口径以上となるように、前記リング状照明光束の内径を規制する機能を有するものであることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のグルコース濃度測定装置において、
集光位置変位手段が、集光レンズをその光軸方向へ変位させるレンズ変位装置であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
リング状光束形成手段が、
コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光する遮光板であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間に1/4波長板を有し、
前記光路分離位置と1/4波長板との間に、リング状光束形成手段が配置され、
このリング状光束形成手段は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を遮光し、眼球から前記集光レンズと前記1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま前記光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の遮光板であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
前記集光レンズと、光路分離手段の光路分離位置との間に1/4波長板を有し、
前記光路分離位置と前記1/4波長板の間にリング状光束形成手段が配置され、
前記リング状光束形成手段は、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて照明用光束から除去し、眼球から前記集光レンズと前記1/4波長板とを介して戻る測定光束をそのまま前記光路分離位置側へ透過させる偏光選択型の回折素子であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項6】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
リング状光束形成手段が、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の少なくとも光束中心部を回折させて前記照明用光束から除去する回折素子であることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項7】
請求項1または2記載のグルコース濃度測定装置において、
前記リング状光束形成手段が、コリメートレンズにより平行光束化された照明用光束の光束断面形状をリング状の発散光に変換する第1の光学素子と、前記リング状の発散光に変換された光束をリング状の光束断面を持つ平行光束に変換する第2の光学素子とを有することを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置において、
集光レンズの眼球側に、照明用光束の波長の光は透過するバンドパスフィルタを有することを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項9】
請求項8記載のグルコース濃度測定装置において、
照明用光源とバンドパスフィルタの何れかが、光路を偏向させる偏向ミラーを備えることを特徴とするグルコース濃度測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置に用いられる光学装置。
【請求項11】
請求項4または5または6または7記載のグルコース濃度測定装置に用いられるリング状光束形成手段。
【請求項12】
請求項1〜9の任意の1に記載のグルコース濃度測定装置を用いるグルコース濃度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−254(P2010−254A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162392(P2008−162392)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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