説明

グルタミルtRNA合成酵素(GtS)フラグメント

本発明は変異体及び類似体を含む、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)グルタミルtRNAシンテターゼ(GtS)タンパクのポリペプチド断片、及びその様なポリペプチド断片を有するワクチンに関する。特に、本発明は、肺炎連鎖球菌に誘発される防御免疫のためのその様なワクチンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)細胞壁に由来するグルタミルtRNA合成酵素(GtS)タンパク質に関する。詳細には、本発明は、肺炎連鎖球菌に対して防御免疫を誘発するGtSの免疫原性フラグメント、およびポリペプチドに基づくワクチンとしてそれらを使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
肺炎連鎖球菌は、ヒトの呼吸器における共生細菌に属すが、髄膜炎および肺血症のような浸潤性感染も引き起こす場合がある。発展途上国では、ほとんどの子供たちが鼻咽頭に肺炎連鎖球菌を保菌するようになりつつある。浸潤性感染(菌血症、肺血症または髄膜炎など)または粘膜性感染(肺炎および中耳炎など)になり得る肺炎球菌による疾病が多く発生している。肺炎連鎖球菌は、発展途上国であるアフリカや他の地域において、子供に非流行性の髄膜炎をもたらす主な原因となっている。毎年、およそ100万〜200万人の子供たちが肺炎球菌性肺炎のため死亡している。特に、世界中の5歳以下の子供たちの死亡を考察すると、約20%が肺炎球菌性肺炎のために死亡している。罹患率および死亡率が高く、抗菌剤に耐性を持つ肺炎連鎖球菌株が持続的に出現するため、ワクチン接種のような効果的な防止手段を開発する必要性が高まっている。肺炎球菌の7原子価の多糖結合ワクチンは、乳幼児における浸潤性疾病の割合を著しく低減させ、浸潤性疾病の割合をワクチン接種していない地域の人々に著しく限定させた(Kyaw et al.,N.Engl.J.Med.2006,354,1455−63)。しかし、このワクチンに含まれていない株を原因とする保菌および疾病が増えている(Musher DM.,N.Engl.J. Med.2006,354,1522−4,Huang et al.,Pediatrics 2005,116,e408−13)。
【0003】
最適な抗肺炎球菌ワクチンは、安全、効果的、広範囲(ほとんどの肺炎球菌株を網羅すること)、および入手可能(安価であり大量に入手できること)であるべきである。既存の肺炎球菌多糖体および多糖結合ワクチンは、狭いものの有意な肺炎球菌セロタイプ群に対して防御を与えるが、ワクチン接種した対象は、ワクチンが網羅していない株には感染し易いままである。注目すべきは、現在の肺炎球菌結合ワクチンは、一般的に肺炎球菌株に対して適用範囲が狭く、それにより先進国と比較して発展途上国で疾病が広がっている。適用範囲が限定されていることに加え、結合ワクチンは生産に手間がかかり高額であるため、量産が制限されて貧しい国々の多くは予算を超えてしまう。
【0004】
密着結合した粘膜上皮面は、病原体の侵入および該病原体の産生物を防止する第1防御ラインを構成する。肺炎連鎖球菌は、鼻咽頭の粘膜細胞に接着することにより、明らかな炎症反応を示さず保菌させる。臨床的疾病が生じると、肺炎連鎖球菌は鼻咽頭から中耳もしくは肺内へと蔓延するか、または粘膜上皮細胞層を越えて粘膜下層の中に、基底部まで沈着する(Ring et al.,J.Clin.Invest.1998,102:347−60)。肺炎連鎖球菌の接着、蔓延および浸潤に関与する分子は、莢膜多糖体、細胞壁のペプチドグリカンおよび表面タンパク質を含む(Jedrzejas MJ.Microbiol.Mol.Biol.Rev.2001,65,187−207)。
【0005】
年齢を重ねるにつれ肺炎連鎖球菌の細胞壁タンパク質に対する抗体反応が増し、罹患率との関連性が低くなることが認められた(Lifshitz et al.Clin.Exp.Immunol.2002,127,344−53)。長期間にわたる子供たちの一連の血清が、生化学的、免疫学的およびMALDI TOF的研究を使用して、年齢に依存する抗原性(Ling et al.,Clin Exp Immunol 2004,138,290−8)を提示する肺炎連鎖球菌の細胞壁タンパク質を同定するために利用された。そのようなタンパク質の一つがグルタミルtRNA合成酵素(GtS)である。
【0006】
2007年に、Mizrachi−Nebenzahlら(J.Infect.Dis.,196,945−53)は、組み換えGtS由来の肺炎連鎖球菌が、マウスでは部分的に防御免疫反応を誘導することができることを開示している。
【0007】
Chiron S.P.Aに割り当てられた国際特許出願公報第02/077021号は、コンピュータで同定されたGtS遺伝子およびそれらに対応するアミノ酸配列を含む約2.500の肺炎連鎖球4型株の遺伝子配列を開示している。免疫化用の抗原として、これらのタンパク質配列のうち432のサブセットを使用することも提案されているが、ワクチン生産における抗原として、このタンパク質を使用する実施例が提供されていない。
【0008】
SmithKline Beecham Corp.に割り当てられた国際特許出願公報WO第97/38718号は、肺炎連鎖球菌GtSの480,348,126のポリペプチドおよび62のアミノ酸、GtSポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びに組み換え技術を用いてそのようなポリペプチドを生産する方法を開示している。GtSポリペプチドを含むワクチン調合も提供されているが、そのようなワクチンは、出願時には実際に調製されていなかった。米国特許第5,958,734号は、GtSの348のN末端フラグメントおよび126のC末端のアミノ酸フラグメントを請求している。米国特許第5,976,840号は、Val−7から始まる480のアミノ酸のGtS配列、100ヌクレオチドごとに最大3つまでのヌクレオチドの置換、欠失、またはヌクレオチドの挿入を含む変異体を請求している。米国特許第6,300,119号は、100ヌクレオチドごとに最大5つまでのヌクレオチドが置換、欠失または挿入され得ることを除いて、上述の480のアミノ酸ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと同一の配列を含むGtS変異体ポリヌクレオチドを請求しており、最初のポリヌクレオチド配列は、ハイブリダイゼーションにより肺炎連鎖球菌を検出する。米国特許第6,165,760号は、上述の480のアミノ酸配列を有し、異種アミノ酸配列をさらに含んだGtSポリペプチドに関する。
【0009】
本出願の発明者の一人が関与したWO第03/082183号は、前記細菌に対するワクチンとして使用するために、定義した一群の細胞壁および細胞膜にある肺炎連鎖球菌タンパク質を開示している。無傷なGtSを含む同定した38個の肺炎連鎖球菌タンパク質は、保育園に通う子供において、年齢に依存する免疫原性を有することが認められた。
【0010】
年齢層を問わず、若い子供たちや年を重ねた人々を含め、持続期間の長い免疫反応を誘導することができ、広範囲の異なる肺炎連鎖球菌のステレオタイプに対して広範な特異性を有する、改良された肺炎連鎖球菌ポリペプチドに基づくワクチンが満たされずに必要とされている。また、ヒトタンパク質との相同性を最小限に抑えたポリペプチド配列に基づくワクチンも必要性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許出願公報第02/077021号
【特許文献2】国際特許出願公報WO第97/38718号
【特許文献3】米国特許第5,958,734号
【特許文献4】米国特許第5,976,840号
【特許文献5】米国特許第6,300,119号
【特許文献6】米国特許第6,165,760号
【特許文献7】WO第03/082183号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、肺炎連鎖球菌に対する免疫原性グルタミルtRNA合成酵素(GtS)タンパク質のフラグメントおよびワクチンを提供する。肺炎連鎖球菌タンパク質GtSのフラグメントである本発明のポリペプチドは、免疫化した対象自身のタンパク質に対して抗体が発生するリスクを抑えつつ、無傷のタンパク質と比較してヒト配列に対して低い相同性を保有するように選択されたものである。さらに、本発明のポリペプチドは、現在解読されている肺炎連鎖球菌株の中で高い配列同一性を有し、この細菌に対する広範なワクチンとして理想的である。注目すべきは、本発明のGtSフラグメントは、肺炎連鎖球菌に対する免疫反応の誘発について無傷のタンパク質よりも一層有効であることが見出された。
【0013】
本発明によれば、GtSフラグメントは、単離されたポリペプチドもしくは融合タンパク質のように組み換え的に、またはペプチド合成により、もしくはより短い合成ペプチドフラグメントを連結させることにより合成的に生産することができる。本発明によれば、組み換えまたは合成による生産は、溶解性および安定性のような特定の性質を向上させるために、ポリペプチドフラグメント配列における特異的な突然変異および/または変化を導入するために使用することができる。
無傷のタンパク質よりも短いポリペプチドフラグメントにより、1マイクログラムのタンパク質に、より多くの免疫原性エピトープを提供する。
【0014】
本発明のポリペプチドは、肺炎連鎖球菌だけに対抗するワクチン、またはアジュバントとして使用され得るか、もしくは外用のアジュバントとともに混合もしくは調合され得るキメラタンパク質の一部として使用することができる。
【0015】
一態様によれば、本発明は、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む、肺炎連鎖球菌GtS(配列番号1)の配列に由来する50〜250アミノ酸の合成ポリペプチドまたは組み換えポリペプチド、並びにその変異体および類似体を提供する。
【0016】
ポリペプチド配列において、10アミノ酸残基ごとに1アミノ酸残基の置換を含む変異体、すなわち、90%以上の同一性を有するポリペプチドは本発明の範囲内に含まれる。幾つかの実施形態によれば、本発明のポリペプチドに対して少なくとも97%の同一性を有する配列を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、ポリペプチドは100〜200のアミノ酸から成る。他の実施形態によれば、ポリペプチドは約130〜180のアミノ酸から成る。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、本発明によるGtSポリペプチドは、配列番号12のヒトGtS−2タンパク質と約24%未満の配列同一性を共有する。他の実施形態によれば、本発明によるGtSポリペプチドは、配列番号12のヒトGtS−2タンパク質と約10%未満の配列同一性を共有する。幾つかの実施形態によれば、本発明のGtSポリペプチドは、配列番号12の361〜521残基と約18%未満の配列同一性を共有する。さらに別の実施形態によれば、本発明によるGtSポリペプチドの配列とヒトGtS−2配列(配列番号12)とを並べると、2つの配列の間には連続するわずか6アミノ酸残基のみが同一である。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、本発明は次の配列:
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTIFLLGREKSIQHIENMLKEISK(配列番号3、配列番号1の333〜486残基)を含む合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体を提供し、ここで、Xはメチオニンであるか、またはポリペプチドのN末端を表す。
【0020】
他の実施形態によれば、合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメントは次の配列:
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDX1FFSDFPELTEAEREVMTX2ETVPTVLEAFKAKLEAMTDDX3FVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTX4FLLGREKSIQHIENX5LKEISK(配列番号4)、を含み、ここで、Xはメチオニンであるか、またはポリペプチドのN末端を表し、Xはロイシン(L)またはフェニルアラニン(P)であり、Xはグリシン(G)またはアスパラギン酸(D)であり、Xはリジン(K)またはグルタミン酸(E)であり、Xはイソロイシン(I)またはバリン(V)であり、およびXはメチオニン(M)またはイソロイシン(I)であり、かつ該ポリペプチドの変異体および類似体を含む。
【0021】
さらに他の実施形態によれば合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメントは次の配列:
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKP(配列番号5)、
KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFP(配列番号6)、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAK(配列番号7)、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKET(配列番号8)、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSG(配列番号9)、および
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTIFLLGR(配列番号10)から成る群から選択される配列を含み、ここで、Xはメチオニンであるか、またはポリペプチドのN末端を表し、かつ該ポリペプチドの変異体および類似体を含む。
【0022】
さらに他の実施形態によれば、本発明は、配列番号3〜配列番号10の群から選択される配列から成る合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメントを提供する。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、ポリペプチドフラグメントは、担体タンパク質と結合または融合されない。他の実施形態では、本発明のポリペプチドフラグメントは、担体配列を含む組み換え融合タンパク質として生産、すなわち、フラグメントが担体ポリペプチド配列内に挿入、または担体タンパク質配列のアミノ末端、カルボキシ末端もしくは側鎖に、または別の肺炎連鎖球菌タンパク質もしくはポリペプチドに融合される。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、GtSフラグメントポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0025】
幾つかの実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチド配列は、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLの配列(配列番号2)含む50〜250のアミノ酸のポリペプチド配列、並びに該ポリヌクレオチドの変異体および類似体の配列をコードする。幾つかの好ましい実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチド配列は、100〜200のアミノ酸から成るポリペプチド配列をコードする。
【0026】
幾つかの特定の実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号11または配列番号15を含む。幾つかの特定の実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号11または配列番号15から成る。
【0027】
追加の実施形態によれば、単離されたポリヌクレオチド配列は、配列番号3〜配列番号10から成る群から選択されるポリペプチド配列、並びに該ポリヌクレオチドの変異体および類似体の配列をコードする。
【0028】
さらに別の態様によれば、本発明は、肺炎連鎖球菌に対して対象を免疫化するワクチン組成物を提供することであり、該ワクチン組成物は、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む、50〜250のアミノ酸で構成された少なくとも1つの合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体を含む。幾つかの好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは、100〜200のアミノ酸から成る。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、ワクチン組成物は、配列番号3〜配列番号10から成る群から選択されるGtSポリペプチド配列、並びに該ポリヌクレオチドの変異体および類似体の配列を含む。
【0030】
他の実施形態によれば、本発明によるワクチン組成物は、少なくとも1つの追加の肺炎連鎖球菌ポリペプチドまたはタンパク質配列をさらに含む。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、本発明によるワクチン組成物は、アジュバントをさらに含む。他の実施形態によれば、ワクチンはアジュバントを含有しない。
【0032】
薬学的に許容されるアジュバントは、限定しないが、油中水乳剤、脂肪乳剤およびリポソームを含む。幾つかの実施形態によれば、アジュバントは、Montanide(登録商標)、ミョウバン、ムラミルジペプチド、Gelvac(登録商標)、キチン微粒子、キトサン、コレラトキシンのサブユニットB、不安定トキシン、AS21A、Intralipid(登録商標)およびLipofundin(登録商標)から成る群から選択される。
【0033】
幾つかの実施形態では、ワクチンは、筋肉内送達、鼻腔内送達、経口送達、腹腔内送達、皮下送達、局所的送達、皮内送達および経皮的送達用に調合される。幾つかの実施形態では、ワクチンは、筋肉内投与するために調合される。他の実施形態では、ワクチンは、経口投与するために調合される。さらに他の実施形態では、ワクチンは、鼻腔内投与するために調合される。
【0034】
さらなる実施形態によれば、本発明は、対象の肺炎連鎖球菌に対する免疫反応を誘導し、防御をもたらす方法を提供し、該方法は、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む、50〜250のアミノ酸で構成された少なくとも1つの合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体を含むワクチン組成物を投与することを含む。幾つかの好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは100〜200のアミノ酸から成る。
【0035】
本発明のワクチンを送達するために、任意の投与経路を利用することができる。幾つかの実施形態によれば、ワクチンの投与経路は、筋肉内送達、経口送達、鼻腔内送達、腹腔内送達、皮下送達、局所的送達、皮内送達および経皮的送達から選択される。幾つかの実施形態によれば、ワクチンは、筋肉内経路、鼻腔内経路または経口経路により投与される。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む50〜250のアミノ酸で構成された合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体は、対象における肺炎連鎖球菌の感染を防止するために使用される。幾つかの好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは100〜200のアミノ酸から成る。
【0037】
肺炎連鎖球菌に対して免疫化するワクチン組成物の調製のために本発明によるポリペプチドを使用することも、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む50〜250のアミノ酸で構成された合成または組み換えGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体を生産するために本発明による単離されたポリヌクレオチドを使用することと同様に本発明の範囲内にある。幾つかの好ましい実施形態によれば、ポリペプチドは100〜200のアミノ酸から成る。
【0038】
本発明に開示するポリペプチドは全て、組み換え方法および化学合成を用いて生産することができる。
【0039】
本発明の別の態様は、少なくとも1つのGtSフラグメントポリペプチド配列、および少なくとも1つの追加のポリペプチド配列を含む融合タンパク質を提供する。
【0040】
一実施形態によれば、融合タンパク質は、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む100〜200のアミノ酸で構成されたGtSポリペプチドフラグメント、並びにその変異体および類似体を含む。
【0041】
本発明のさらなる実施形態および適用性の範囲全体は、本明細書で以下に提示する詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の実施例は本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内にある種々の変更および改良は、この詳細な説明から当業者には明らかになるであろうから、例示目的としてのみ提示されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】GtSフラグメント(333〜486)のゲノムDNAによるPCR増幅を示す。
【図2】PCR増幅を用いて、予測した462bpのインサートの存在を確認するゲルを示す。
【図3】クーマシーブリリアントブルーを用いて染色した1D−PAGEによって溶離した333〜486のGtSフラグメント(23kDaのバンド)の溶解を示す。
【図4】HISタグを付けしていない抗体により、333〜486の組み換えGtSフラグメントを含むHISタグを付けた融合タンパク質(23kDaのバンド)のウェスタンブロット分析を示す。
【図5】ウサギの抗rGtS333−486フラグメントを用いて生体外で中和した肺炎連鎖球菌に挑むマウスの生存を実証する。
【図6】クーマシーで染色した、第一G−200調製用カラムのサイクルから採取した3本の連続的なチューブから得たタグ付けしていないGtS 333−486のフラグメント(sGtS)のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、肺炎連鎖球菌のGtSタンパク質の配列に由来するポリペプチド、およびこれらのポリペプチドを含有するワクチンを提供する。本発明によるポリペプチドは、無傷な肺炎連鎖球菌のGtSタンパク質の配列番号1のうち333〜361残基に対応する29のアミノ酸残基KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)を含む。
【0044】
本発明のポリペプチドは、ヒト配列に対して低下した相同性という利益を有する。微生物の抗原がヒトタンパク質に著しい配列相同性を有する場合、その際、ワクチンにおいてそのような抗原を使用することは、特定のヒトタンパク質に対抗する抗体を誘発する危険性を伴い、結果として自己免疫、つまり許されざる予後に至る恐れがある。それ故、そのような配列、つまり微生物の抗原とヒトタンパク質とにおけるあらゆる相同性は、ワクチン用抗原として実用性を持たせるために抗原から取り除くことが非常に重要である。
【0045】
肺炎連鎖球菌のGtSタンパク質のうち、333〜486のアミノ酸残基に対応する154のアミノ酸で構成されたポリペプチドフラグメントを生産し、特徴付けたところ、肺炎連鎖球菌の感染に対して、ウサギでは効果的に中和抗体を産生することが見出された。驚くべきことに、154のアミノ酸のGtSフラグメントは、感染性の細菌の中和について、対応する無傷のタンパク質よりも一層効果的であることが見出された。
【0046】
便宜上、本明細書、実施例および請求の範囲で用いる特定の用語を本明細書に説明する。
【0047】
「抗原提示」という用語は、動物の主要組織適合抗原クラスIもしくはクラスII分子(MHC−IまたはMHC−II)またはヒトのHLA−IおよびHLA−IIと関連して細胞表面上で抗原が発現することを意味する。
【0048】
「免疫原性」または「免疫原性の」という用語は、免疫反応を刺激または誘発する物質の能力に関する。例えば、免疫原性は、その物質に特異的な抗体を産生する能力を特定することにより測定される。抗体の存在は、ELISA分析を使用するなど、当業者に知られている方法を用いて検出される。
【0049】
本明細書で使用される「アミノ酸配列」とは、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列、およびそれらのフラグメント、並びに天然に発生する分子または合成分子を指す。
【0050】
「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、置き換え可能に使用され、GtSポリペプチドフラグメントに由来したポリペプチド以外のポリペプチドに機能するように連結するポリペプチドを指す。
【0051】
ポリペプチドの組み換え生産
本発明のポリペプチドフラグメントは、発現ベクターそれ自体における発現により、またはキメラタンパク質として調製することができる。1つ以上のGtSポリペプチドフラグメントを含むキメラまたは組み換えタンパク質を生産する方法は、当業者に知られている。宿主細胞で増殖および発現するポリヌクレオチド構築物を調製するために、発現ベクター内に1つ以上のGtSポリペプチドフラグメントをコードする核酸配列を挿入することができる。
【0052】
本明細書で使用される「発現ベクター」および「組み換え発現ベクター」という用語は、DNA分子、例えば、特定の宿主細胞で発現する組み換えポリペプチドの発現に必要な、所望される適切な核酸配列を含有するプラスミドまたはウィルスを指す。本明細書で使用されるように、「機能するように連結する」とは、少なくとも2つの配列が機能的に連結することを指す。機能するように連結することは、本発明の核酸など、プロモーター配列と二次配列とにおける連結を含み、該プロモーター配列が、二次配列に対応するDNA配列の転写を開始および媒介する。
【0053】
ポリペプチドの転写に必要な調節領域は、発現ベクターにより提供することができる。遺伝子発現に必要とされる調節領域の正確な性質は、ベクターおよび宿主細胞によって異なるだろう。一般的に、RNAポリメラーゼを結合させ、機能するように結合した核酸配列の転写を促すことができるプロモーターが必要である。調節領域は、TATAボックス、キャップ形成配列、CAAT配列などのような転写および翻訳の開始に関与する、これらの5’非コード配列を含み得る。このコード配列に対して3’非コード配列は、ターミネーターおよびポリアデニル化部位のような、転写の終了を調節する配列を含有し得る。翻訳開始コドン(ATG)も提供し得る。
【0054】
核酸配列をベクターのクローニング部位内にクローニングするために、核酸の合成中に適合する制限部位を提供するリンカーまたはアダプターが付加される。例えば、所望の制限酵素部位は、所望の制限酵素部位を含有するプライマーを用いてPCRを使用してDNAの増幅を行うことによりDNAのフラグメント内に導入することができる。
【0055】
PCRの代替的な方法は、合成遺伝子を使用することである。該方法では、所望の種(例えば、E.coli)で発現する最適なヌクレオチド配列を含む人工遺伝子を生産することができる。遺伝子を再設計することにより、多くの症例における遺伝子発現を改善する手段を提供する。遺伝子コードには冗長性があるため、翻訳領域を書き換えることが可能である。従って、翻訳領域のヌクレオチドのうち約3番目まで変更しても、まだ同じタンパク質を生産することが可能である。300のアミノ酸から構成される典型的なタンパク質配列については、10150を上回るコドンの組み合わせがあり、同一のタンパク質をコードするであろう。滅多に使用されないコドンを多くの共通コドンと置換するような最適な方法を使用することにより、劇的な効果が得られる。RNAの二次的構造を取り除くような、さらなる最適化も含むことができる。これら、および同時に他の最適化を実行するため、コンピュータプログラムを利用することができる。良好に最適化された遺伝子は、タンパク質の発現を劇的に改善することができる。本来のDNA配列に対して数多くのヌクレオチドの変更がなされた場合、新規に設計した遺伝子を作り出す実用的な唯一の方法は、遺伝子合成を使用することである。
【0056】
ポリペプチド自体を、または組み換え融合タンパク質として発現させ、生産するために、適切な宿主細胞内に、調節領域と機能するように結合したGtSポリペプチドフラグメント配列を含む発現構築物を直接導入することができる。限定しないが、プラスミド、コスミド、ファージ、ファージミドまたは改変ウィルスを含む発現ベクターが使用され得る。典型的に、そのような発現ベクターは、適切な宿主細胞内でベクターが増殖するための機能上の複製開始点、所望の遺伝子配列を挿入するための1つ以上の制限酵素部位、および1つ以上の選択マーカーを含む。
【0057】
発現ベクターおよびGtSポリペプチドフラグメントを含む組み換えポリヌクレオチド構築物は、次に複製および発現することができる細菌の宿主細胞内へと移すべきである。これは、当技術分野で知られている方法により達成することができる。発現ベクターは、細菌、酵母、昆虫、哺乳類およびヒトに由来し得る適合性の原核生物または真核生物の宿主細胞用いて使用される。
【0058】
宿主細胞により発現すると、GtSポリペプチドフラグメントは、幾つかのタンパク質の精製方法を用いて不要な要素から分離することができる。組み換えタンパク質にポリヒスチジンタグを使用するのがその一つの方法である。ポリヒスチジン−タグは、組み換えタンパク質に、時にはN末端またはC末端に付加された少なくとも6のヒスチジン(His)残基から成る。ポリヒスチジン−タグは、大腸菌または他の原核生物の発現系で発現する、ポリヒスチジンタグを付けた組み換えタンパク質をアフィニティー精製するために使用されることもある。細菌細胞は、遠心分離法により収集され、得られた細胞ペレットは、物理的手段または界面活性剤もしくはリゾチームなどの酵素を用いて溶解することができる。この段階では、未加工の可溶化液は、細菌に由来する他の数種類のタンパク質中に組み換えタンパク質を含んでおり、NTA−アガロース、HisPur樹脂またはTalon樹脂のようなアフィニティー培地を用いてインキュベートされる。これらのアフィニティー培地は、ニッケルまたはコバルトといった結合金属イオンを含有し、ポリヒスチジン−グがマイクロモルのアフィニティーで結合する。次いでリン酸緩衝液を用いて樹脂を洗浄し、コバルトまたはニッケルイオンと特異的に相互作用しないタンパク質を取り除く。洗浄効率は、20mMのイミダゾルを加えることで向上させることができ、次いで、通常は150〜300mMのイミダゾルを用いてタンパク質を溶出する。次に、制限酵素、エンドプロテアーゼまたはエキソプロテアーゼを使用してポリヒスチジン−タグを取り除き得る。ヒスチジン−タグ付けしたタンパク質を精製するためのキットは、例えば、Qiagenから購入することができる。
【0059】
別の方法は封入体の生産を通すことであり、該封入体は、組み換えポリペプチドが原核生物で発現した際に形成し得る不活性なタンパク質の凝集物である。cDNAは翻訳可能なmRNAを正しくコードし得るが、タンパク質は正確に折り畳まれないかもしれず、または配列の疎水性により、組み換えポリペプチドが難溶性になるかもしれない。封入体は、当技術分野で知られている方法を用いて簡単に精製される。封入体を精製するさまざまな手順が当技術分野で知られている。幾つかの実施形態では、封入体は、遠心分離法を用いて細菌可溶化液から回収し、界面活性剤およびキレート化剤を用いて洗浄し、凝集した組み換えタンパク質からできる限り多くの細菌のタンパク質を取り除く。可溶性のタンパク質を入手するため、洗浄した封入体を変性剤に溶解し、次いで遊離したタンパク質は、(例えば、Molecular cloning:a laboratory manual,3rd edition,Sambrook, J.and Russell,D.W.,2001;CSHL Pressに記載されているように)希釈または透析により徐々に変性剤を除去することで再び折り畳まれる。
【0060】
分析的な精製では、タンパク質を分離するために3つの特性を利用するのが一般的である。第一に、タンパク質は、pHで段階を付けたゲルまたはイオン交換カラムを通過させることで、タンパク質の等電点に従って精製され得る。第二に、タンパク質は、分子ふるいクロマトグラフィーを介して、またはSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)分析によりタンパク質の大きさまたは分子量に従って分離することができる。タンパク質は2D−PAGEを使用して精製することもあり、次いでペプチドの質量をフィンガープリントを用いて分析することによりタンパク質の特定を証明する。第三に、タンパク質は降圧液体クロマトグラフィーまたは逆相クロマトグラフィーを介して極性/疎水性により分離し得る。精製したタンパク質は、続いて分子量が求められるか、または当技術分野で知られている別の方法が行われる。
【0061】
多段階精製する工程を評価するために、特異的なタンパク質の量は、総タンパク質の量と比較しなければならない。後者は、Bradfordの総タンパク質分析法または280nmの吸光度により特定することができるが、精製工程中に使用される試薬は、定量化に干渉し得る。例えば、(一般的に、ポリヒスチジン-タグ付けした組み換えタンパク質の精製に使用される)イミダゾルは、アミノ酸類似体であり、総タンパク質の定量化について、低濃度でもビシンコニン酸(BCA)と干渉する。また、低品質なイミダゾルに含まれる不純物は280nmで吸光し、結果としてUV吸光によるタンパク質濃度の読み取りが不正確になる。
【0062】
検討される別の方法は、表面プラズモン共鳴法(SPR)である。SPRは、チップの表面にある標識していない分子の結合を検出することができる。所望のタンパク質が抗体である場合、結合はタンパク質の活性に直接翻訳することができる。タンパク質は、総タンパク質の割合として活性濃度を有するタンパク質を発現することができる。SPRは、タンパク質活性および全収率を迅速に特定するための有力な方法だろう。
ワクチン調合
【0063】
本発明のワクチン組成物は、少なくとも1つのGtSポリペプチドフラグメント、および随意にアジュバントを含む。調合物には、アジュバント、賦形剤、安定剤、緩衝剤または保存剤のような種々の添加剤を含めることができる。ワクチンは、多くの異なる形態のいずれかの形態で投与するために調合することができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、ワクチンは、筋肉内投与など、非経口的に投与するために調合される。さらに別の実施形態によれば、投与は経口投与される。幾つかの実施形態によれば、投与は経口から行われ、ワクチンは、例えば、錠剤の形態、またはゼラチンカプセルもしくはマイクロカプセルに包装されて提供される。
【0065】
さらに別の実施形態によれば、投与は皮内に行われる。皮内にワクチンを沈着させるように特別に設計された針は、例えば、とりわけ第6,843,781号および第7,250,036号に開示されているように、当技術分野で知られている。他の実施形態によれば、投与は無針注射器を用いて遂行される。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、ワクチンは鼻腔内に投与される。ワクチン調合物は、任意の好都合な方法で鼻のリンパ組織に適用され得る。しかし、液体ストリームまたは液滴として鼻道壁に適用することが望ましい。鼻腔内用組成物は、例えば鼻用液滴、スプレーのような液状の形態、またはパウダー、クリームもしくは乳剤のような吸入に適した形態で調合することができる。
【0067】
当業者は、こうした調合法の知識を一般的に有している。
【0068】
リポソームは、抗原を送達および提示するための別の送達システムを提供する。リポソームは、通常は水性の中央部を囲むリン脂質および他のステロールで構成された二重層の小胞であり、抗原または他の産生物をカプセル化することができる。リポソームの構造は、ナノメートルからマイクロメートル、約25nmから500μmに及ぶ数多くの種類の大きさを持ち、多用途性が高い。リポソームは、経皮面および粘膜面に治療薬を届けるのに効果的であることが認められている。リポソームは、標的とする送達のため、例えば、表面膜内に特異的な抗体を組み入れることによりさらに修飾するか、または細菌、ウィルスもしくは寄生虫をカプセル化するために変化させることができる。無傷なリポソーム構造が生存できる平均的な時間または半減期は、ポリエチレングリコールなど特定のポリマーを含ませることで引き延ばすことができ、リポソームは生体内で長期にわたり遊離することができる。リポソームは、単層または多層であり得る。
【0069】
ワクチン組成物は、リポソームに抗原または抗原/アジュバント複合体をカプセル化し、リポソームでカプセル化した抗原を形成し、そして疎水性物質で構成された連続相を含む単体とリポソームでカプセル化した抗原とを混合することにより調合し得る。第一ステップにおいて抗原/アジュバント複合体が使用されない場合、リポソームでカプセル化した抗原、リポソームでカプセル化した抗原および単体の混合物、または単体がリポソームでカプセル化した抗原と混合される前の単体に、適したアジュバントを添加してよい。工程の順番は、使用するアジュバントの種類に応じて異なり得る。典型的には、ミョウバンなどのアジュバントを使用する際、アジュバントおよび抗原は最初に混合して抗原/アジュバント複合体を形成し、それからリポソームを用いて抗原/アジュバント複合体をカプセル化する。結果得られたリポソームでカプセル化した抗原は、次いで単体と混合する。「リポソームでカプセル化した抗原」という用語は、抗原のみのカプセル化または抗原/アジュバント複合体のカプセル化を指し得、内容に準拠する。これによりアジュバントと抗原との間では密接な接触が促進され、ミョウバンがアジュバントとして使用される際の免疫反応について少なくとも一部を説明し得る。別のものを使用する際は、まずリポソームに抗原をカプセル化し、次いで、疎水性物質のアジュバント内に、結果得られたリポソームでカプセル化した抗原を混合する。
【0070】
実質的に水を含まないワクチン組成物を調合する際、抗原または抗原/アジュバント複合体は、リポソームを用いてカプセル化し、疎水性物質と混合する。水を含む疎水性物質で出来た乳剤にワクチンを調合する際、抗原または抗原/アジュバント複合体は、水性培地でリポソームを用いてカプセル化し、それから疎水性物質と水性培地を混合する。乳剤の場合、連続相に疎水性物質を維持するために、リポソームを含有する水性培地を一定分量添加して疎水性物質と混合し得る。
【0071】
全ての調合方法において、リポソームでカプセル化した抗原は、場合によっては疎水性物質と、または水性培地と混合する前に凍結乾燥してよい。ある例では、抗原/アジュバント複合体は、リポソームによりカプセル化し、それから凍結乾燥してよい。他の例では、抗原は、リポソームによりカプセル化し、それからアジュバントを添加し、次いで凍結乾燥させて、外用のアジュバントを含む凍結乾燥したリポソームでカプセル化した抗原を形成してよい。さらに別の例では、抗原は、リポソームによりカプセル化し、それからアジュバントを添加する前に凍結乾燥する。凍結乾燥は、アジュバントと抗原との良好な相互作用を促進させるため、一層効果的なワクチンが得られる。
【0072】
また、疎水性物質内にリポソームでカプセル化した抗原を調合することは、乳化剤を使用することにも関与し得、該乳化剤は、疎水性物質のリポソームをさらに分配することさえ促進させる。典型的な乳化剤は当技術分野で周知されており、オレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)、レシチン、Tween(商標)80、Spans(商標)20、80、83および85を含む。乳化剤は、リポソームの分配さえ促進させる効果的な量で使用する。典型的には、乳化剤に対する疎水性物質の体積比(v/v)は、約5:1から約15:1の範囲である。
【0073】
微粒子およびナノ粒子は、ワクチンを送達するためのデポーとして機能する生分解性小球体を用いる。ポリマー微粒子は、デポー効果を有する他のアジュバント以上にデポー効果を保有するという大きな利点があり、好適な縫合としてヒト治療で使用、および生体適合性の薬物送達システムとして使用することについて、極めて安全であり、米国の食品医薬品局に推奨されてきた(Langer R.Science.1990;249(4976):1527−33)。共重合体の加水分解率は、非常に特徴があり、同様に、長期間にわたって抗原を持続させる微粒子を製造することができる(O’Hagen,et al.,ワクチン.1993;11(9):965−9)。
【0074】
微粒子の非経口投与は、特に長期にわたる遊離特性に該微粒子を組み入れると、持続性免疫を誘発する。遊離率は、ポリマーの混合物および該ポリマーの相対的分子量により調節することができ、これによりさまざまな期間にわたって加水分解する。また、理論に束縛されることを望まないが、大きな粒子だとマクロファージが取り込んで利用できるようになる前に破損してしまうため、異なる大きさの粒子(1μmから200μm)で調合することが、持続性の免疫反応に貢献する。このように、さまざまな粒子サイズを統合させることにより単回注射用ワクチンを開発することができたので、それにより抗原提示が引き延ばされ、家畜生産者は大きな利益が得られた。
【0075】
幾つかの適用では、ワクチン調合にアジュバントまたは賦形剤を含めてよい。例えば、Montanide(商標)(Incomplete Freundのアジュバント)およびミョウバンは、ヒトに使用するためのアジュバントとして好ましい。アジュバントの選択は、ワクチンを投与する形態によって一部決定される。好ましい投与形態は、筋肉内投与である。別の好ましい投与形態は、鼻腔内投与である。限定しない鼻腔内アジュバントの例はキトサンパウダー、PLAおよびPLGミクロスフェア、QS−21、AS02A、リン酸カルシウムナノ粒子(CAP);mCTA/LTB(易熱性エンテロトキシンの五量体Bサブユニットを有するコレラトキシンE112K変異体)、並びに易動性トキシンに由来する解毒した大腸菌を含む。
【0076】
アジュバントは、理論上は、ペプチドまたはタンパク質に基づくワクチンのために、知られている任意のアジュバントを使用してよい。例えば、ゲル形状の無機アジュバント(aluminium hydroxide/aluminium phosphate,Warren et al.,1986;calcium phosphate,Relyvelt,1986);モノホスホリルリピドA(Ribi,1984;Baker et al.,1988)およびムラミルペプチド(Ellouz et al.,1974;Allison and Byars,1991;Waters et al.,1986)のような細菌アジュバント;いわゆるイスコムのような微粒子アジュバント(“immunostimulatory complexes”,Mowat and Donachie,1991;Takahashi et al.,1990;Thapar et al.,1991)、リポソーム(Mbawuike et al.1990;Abraham,1992;Phillips and Emili,1992;Gregoriadis,1990)および生分解性ミクロスフェア(Marx et al.,1993);IFAのような油乳剤および乳化剤に基づくアジュバント(“Incomplete Freund’s adjuvant”(Stuart−Harris,1969;Warren et al.,1986)、SAF(Allison and Byars,1991)、サポニン(QS−21など;Newman et al.,1992)、スクアレン/スクアラン(Allison and Byars,1991);非イオン性ブロック共重合体のような合成アジュバント(Hunter et al.,1991)、ムラミルペプチド類似体(Azuma,1992)、合成リピド(Warren et al.,1986;Azuma,1992)、合成ポリヌクレオチド(Harrington et al.,1978)並びにポリカチオンアジュバント(WO第97/30721号)が挙げられる。
【0077】
本発明の免疫原と共に使用するためのアジュバントは、アルミニウム塩またはカルシウム塩(例えば、水酸化物またはリン酸塩)を含む。本明細書で使用するための特に好ましいアジュバントは、Alhydrogel(商標)のような水酸化アルミニウムゲルである。ナノ粒子のリン酸カルシウム(CAP)は、Biosante,Incにより開発されているアジュバントである(Lincolnshire,Ill.)。目的の免疫原は、粒子の外側に被覆するか、または内側にカプセル化することができる[He et al.(November 2000)Clin.Diagn.Lab.Immunol.,7(6):899−903]。
【0078】
本発明の免疫原と共に使用するための別のアジュバントは乳剤である。想定する乳剤は、油中水乳剤または水中油乳剤である。免疫原性キメラタンパク質粒子に加え、スクアレン、スクアラン、またはピーナッツ油などでできた油層を含むそのような乳剤は、周知されており、分散剤である。非イオン性分散剤が好ましく、そのような物質は、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンおよびモノオレイン酸マンニドのような、ソルビタンおよびマンニドでできたモノ−およびジ−C12−C24−脂肪酸エステルを含む。
【0079】
そのような乳剤は、例えば、スクアレン、グリセリン、およびモノオレイン酸マンニド(Arlacel(商標)A)のような界面活性剤を含む水中油乳剤であり、随意にスクアランを含み、水相にはキメラタンパク質粒子が乳化されている。油相の代替的な成分は、αトコフェロール、ジ−およびトリ−グリセリドの混合鎖、並びにソルビタンエステルを含む。周知されているそのような乳剤の例は、Montanide(商標)のISA−720、およびMontanide(商標)のISA 703を含む(Seppic,Castres,France.)。これらを含む他の油中水乳剤のアジュバントは、WO第95/17210号およびEP第0 399 843号に開示されている。
【0080】
小分子アジュバントの使用も本明細書で想定される。本明細書で有益な小分子アジュバントの種類のうちの1つは、7−置換した−8−オキソ−または8−スルホ−グアノシン誘導体であり、米国特許第4,539,205号、米国特許第4,643,992号、米国特許第5,011,828号および米国特許第5,093,318号に説明されている。7−アリル−8−オキソグアノシン(ロキソリビン)は、抗原(免疫原)に特異的反応を誘導することに特に効果的であることが示された。
【0081】
有益なアジュバントは、モノホスホリルリピドA(MPL(登録商標))、3−脱アシル・モノホスホリルリピドA(3D−MPL(登録商標))を含み、以前はRibi Immunochem,Hamilton,MontであったシアトルのCorixa Corp.により製造されている周知のアジュバントである。アジュバントは、細菌から抽出した3種類の成分:2%スクアレン/Tween(商標)80の乳剤中に、モノホスホリルリピド(MPL)A、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)(MPL+TDM+CWS)を含有する。このアジュバントは、英国特許第2122204号Bに教示された方法により調製することができる。
【0082】
他の化合物は、名称RC−529(商標)のアジュバント{2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]−エチル−2−デオキシ−4−O−ホスホン酸−o−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラ-デカノイル]−2−[(R)−3−テトラ−デカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−p−D−グルコピラノシド・トリエチルアンモニウム塩}のもとCorixa Corpから入手可能な、アミノアルキルグルコサミドリン酸塩(AGP)と呼ばれるMPL(登録商標)のアジュバントと構造的に関連している。RC−529アジュバントは、RC−529SEとして販売されているスクアレン乳剤、およびRC−529AFとして販売されている水性調合物を利用することができ、該アジュバントはCorixa Corp.から入手可能である(米国特許第6,355,257および米国特許第6,303,347号;米国特許第6,113,918号;およびU.S出願第03−0092643号を参照されたい)。
【0083】
さらに想定されるアジュバントは、1回以上のCpGヌクレオチドモチーフ(フランキング配列も足す)を含有する合成オリゴヌクレオチドのアジュバントを含み、該アジュバントはColey Pharmaceutical Groupから入手可能である。QS21と名称の付いたアジュバントは、Aquila Biopharmaceuticals, Inc.から入手可能であり、アジュバント活性を有し、南アメリカの樹木であるキヤラ(Quillaja Saponaria Molina)(例えば、Quil(商標)A)の樹皮に由来する免疫学的に活性性のサポニン分画であり、その生産方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。Quil(商標)Aの誘導体、例えば、QS21(Quil(商標)Aを高速液体クロマトグラフィーで精製した分画誘導体もQA21として知られている)、およびQA17のような他の分画も開示されている。キラヤサポニンの半合成および合成誘導体も有益であり、そのような誘導体は米国特許第5,977,081号および米国特許第6,080,725号に開示されている。MF59と名付けられたアジュバントはChiron Corp.から入手可能であり、米国特許第5,709,879号および米国特許第6,086,901号に開示されている。
【0084】
また、ムラミルジペプチドのアジュバントも想定され、該アジュバントは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thur−MDP)、N−アセチル−nor−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン[nor−MDPと呼ばれるCGP 11637]、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−s−n−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリロキシ)エチルアミン[MTP−PEと呼ばれる(CGP)1983A]を含む。いわゆるムラミルジペプチド類似体は、米国特許第4,767,842号に開示されている。
【0085】
他のアジュバント混合物は、3D−MPLおよびQS21の組み合わせ(EP第0 671 948号B1)、3D−MPLおよびQS21を含む油中水乳剤(WO第95/17210号,PCT第/EP98/05714号)、他の担体を用いて調合された3D−MPL(EP第0 689 454号B1)、コレステロール含有リポソームに調合されたQS21(WO第96/33739号)または免疫賦活性オリゴヌクレオチド(WO第96/02555号)を含む。油中水乳剤にQS21およびMPLを含むアジュバントSBAS2(現在のASO2)も有益である。代替的なアジュバントは、WO第99/52549号に開示されているアジュバント、およびポリオキシエチレンエーテルの非粒子性懸濁剤(英国特許出願第9807805.8号)を含む。
【0086】
MPL(登録商標)アジュバントのようなToll様受容体(TLR−4)もしくはRC−529(登録商標)アジュバントのような構造的に関連した化合物、またはリピドA模倣剤に対する1つ以上のアゴニストを含むアジュバントを、単独またはメチル化していないオリゴデオキシヌクレオチド含有CpGモチーフのようなTLR−9に対するアゴニストと共に使用することも随意である。
【0087】
別の種類のアジュバント混合物は、米国特許第6,113,918号に開示されるようなアミノアルキルグルコサミンリン酸をさらに含有する安定した水中油乳剤を含む。アミノアルキルグルコサミンリン酸のうち、RC−529{(2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル 2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシ−テトラデカノイル]−2−[(R)−3−−テトラデカノイルオキシテトラ−デカノイルアミノ]−p−D−グルコピラノシドトリエチルアンモニウムル塩)}として知られている分子が最も好ましい。好ましい水中油乳剤は、WO第99/56776号に開示されている。
【0088】
アジュバントはアジュバント量で利用され、この量は、アジュバント、宿主動物および免疫原次第で変更することができる。典型的な量は、免疫処置ごとに約1μgから約1mgの間で変更することができる。当業者は、適切な濃度または含有量を容易に決定することができる。
【0089】
油中水乳剤に基づいたアジュバントを含むワクチン組成物も本発明の範囲内に含まれる。水中油乳剤は、例えば、米国第7,323,182号に開示されるような、代謝可能な油およびサポニンを含んでよい。
【0090】
幾つかの実施形態によれば、本発明によるワクチン組成物は、1つ以上のアジュバントを含み得、該組成物は、実質的に無機イオン塩を含まない溶液または乳剤として提供されることが特徴であり、前記溶液または乳剤は、等張性または低張性のワクチンを作製することができる1つ以上の水に溶解する物質または水に乳化する物質を含有する。水に溶解する物質または水に乳化する物質は、例えば、マルトース、フルクトース、ガラクトース、ショ糖、糖アルコール、脂質、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されてよい。
【0091】
本発明のGtSポリペプチド断片は、複数の特有な実施形態に記載したようにプロテオソームアジュバントを有する。プロテオソームアジュバントは、髄膜炎菌の外膜タンパク質の精製調製及び他の細菌からの同様の調整を有する。それらのタンパク質は疎水性が高く、膜貫通タンパク質及びポリンとしての役割を担う。それらの疎水タンパク質間相互作用により、適切に単離した際、タンパク質は、全体として及び断片化した膜小胞として60〜100nmの直径からなる多分子構造を形成する。そのリポソームのような物理状態により、プロテオソームアジュバントは輸送タンパク質として並びにアジュバントとして作用する。
【0092】
プロテオソームアジュバントの使用は、従来技術に記載されており、“New Generation Vaccines”, Second Edition, Marcel Dekker Inc, New York, Basel, Hong Kong (1997) 193−206頁内でLowell GHによって再調査される。プロテオソームアジュバント小胞は、疎水性を有し、ヒトが使用するのに安全な幾つかのウイルスと大きさの点で類似していると記載されている。その再調査は、可溶化界面活性剤を徹底的な透析技術を用いて選択的に除去する際に形成される、様々な抗原とプロテオソームアジュバンド小胞間の非共有結合複合体を有する組成式を記載する。
【0093】
異なるGtS断片を有するワクチン成分は、アジュバンドを用いたまたはアジュバンドを用いない本発明に記載の多くの異なるGtS断片の混合及び結合により生産され得る。加えて、本発明に記載のGtS断片は、解毒されたプノイモリジンのような変異タンパクを含むその他の肺炎球菌タンパクまたはタンパク断片を有するワクチン成分内に含んでも良い、また、変異タンパクは、そのような肺炎球菌タンパク及びタンパク質断片と結合、または接合を産し得る。
【0094】
本発明に記載のワクチン成分は、例えば、本発明に記載の少なくとも一つのGtSタンパク質断片と接合または結合するインフルエンザポリペプチドまたはインフルエンザエピトープペプチドを含んでも良い。
【0095】
抗原含有量は、それを誘発する生物学的影響によって定められるのが良い。当然、防御抗体を測定可能な量で生産することを誘発するために、十分な抗原が存在するべきである。抗原の生物活性の簡便な試験は、試験を経た抗原物質において、その防御抗体の周知の陽性抗血清が枯渇する可能性を含む。その結果は、それ自体が評されつつある抗原物質の様々な希釈液で前処理された周知の抗血清で前処理される悪性有機体で処理されたマウスを用いたLD50(致死量、50%)の陰性記録で報告される。従って、高い値は、このように、致死量を下げる悪性有機体上の抗血清の効用を減らすまたは排除する周知の抗血清内の抗体を結合する含有量の多い抗原物質の反応である。最終的な製剤に存在する抗原物質は、処理されていない抗血清で処理された悪性有機体からの結果と比べ、LD50の陰性記録を少なくとも1、好ましくは1.4までに増加させるのに十分なレベルである。抗血清制御及び適したワクチン物質を与える絶対値は、もちろん、悪性有機体及び選出された標準抗血清に左右される。
【0096】
以下の方法でまた、理想的なワクチン製剤をも獲得しうる。所望の免疫反応を誘発することを含み、定義された抗原から開始するため、専門文献、特にWO97/30721に記載されるように最初の過程で抗原に対応したアジュバンドが見出される。次の過程で、ワクチンは、等張またはわずかに低張な濃度で、本発明で定義したような様々な等張にする物質、好ましくは糖及び/または糖アルコール、を添加すること、及びpH4.0からpH10.0の範囲、特にpH7.4の生理的pHに溶液を調整することにより最適化される。そこで、最初の過程において、物質、または従来と比べ抗原/アジュバンド化合物の溶解度が改善されるであろうその濃度、塩性バッファ溶液が測定される。候補物質による溶解性の改善は、その物質がワクチンの免疫活性の増加をもたらす第一の効用である。
【0097】
細胞免疫反応を高めるための考えられる必須条件の一つがAPCs(抗原提供細胞)との抗原の結合が増えることであるため、次の過程で、物質がその種の増加を導くかどうかを知るための調査がなされ得る。使用される手順はアジュバンドの定義で記載したもの、例えば蛍光のラベルをつけたペプチドまたはタンパクを用いたAPCsの培養、と類似するかもしれない。増える取り込みまたは物質により齎されるAPCsとのペプチド結合は単独のペプチド及び単独のアジュバンドと混合した、または従来の塩性バッファ溶液内に存在するペプチド/アジュバンド化合物と混合した細胞との比較によりスルーフローサイトメトリーを用いて測定され得る。
【0098】
製剤の効果はまた、免疫動物の細胞免疫反応により、遅延型アレルギー(DTH)反応を検出することによって任意の方法で証明され得る。
【0099】
最後に、製剤の免疫抑制作用は、動物実験により測定される。
合成ペプチド
【0100】
本発明のGtSポリペプチド断片は、ペプチド及びポリペプチドの合成に用いる周知の方法を用いて化学的に合成され得る。それらの方法は、一般的にペプチド合成の既知の原理に依存する。最も都合よく、手順は固相ペプチド合成の既知の原理に従い、行われうる。
【0101】
ここで使用されるように、「ペプチド」は、ペプチド結合により結合するアミノ酸の配列を示す。ポリペプチドは一般的に約30及びそれ以上のアミノ酸のペプチドである。
【0102】
ポリペプチドアナログ及び類似物はまた、本発明のポリペプチドの塩類及びエステルが包含されるのと同様に、本発明の範囲内に含まれる。本発明に記載のポリペプチドアナログは、少なくとも一つの非天然アミノ酸及び/またはC末端またはN末端のいずれかに少なくとも一つのブロッキング基を任意に有し得る。本発明のぺプチドの塩は、生理学上容認できる有機塩類及び無機塩類である。適切な「類似物」の設計は、コンピュータに支援され得る。
【0103】
用語「摸倣の」とは、本発明に記載のポリペプチドが、例えば尿素結合、カルバメート結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、またはその他の共有結合のような、少なくとも一つの非ペプチド性の結合を含むような状態に修飾されることを意味する。適切な「摸倣の」の設計は、コンピュータに支援され得る。
【0104】
本発明のペプチドの塩及びエステルは、本発明の範囲に包含される。本発明のポリペプチドの塩は、生理学上受容できる有機塩類及び無機塩類である。本発明のポリペプチド官能基の誘導体は、本技術分野において周知である方法によって、残基またはN末端またはC末端に側鎖として存在する官能基から生成される誘導体を覆い、生理学上受容できる限り、本発明に含まれる、すなわちポリペプチドの生物活性を破壊せず、それを含む化合物に毒質を与えない。該誘導体は、例えばカルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一級アミンまたは第二級アミンを用いた反応により生成されたカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えば、アルカノイル基またはカルボサイクリックアロイル基)を用いた反応により形成されたアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、またはアシル部分を用いた反応により形成された遊離水酸基(例えばセリル残基またはスレオニル残基のもの)のO−アシル誘導体を含む。
【0105】
用語「アミノ酸」は、好ましくは炭素主鎖に1,2−、1,3−または1,4−の置換パターンのアミノ基及びカルボキシル酸基を有する化合物をさす。α―アミノ酸であるのが最も良く、タンパク質内にあるα―アミノ酸は20天然アミノ酸(グリシンを除いてはL−アミノ酸である)、対応するD−アミノ酸、対応するN−メチルアミノ酸、アミノ酸で修飾した側鎖、タンパク質にない生理学上受容されるアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリシン、シトルリン、オルニチン、カナバニン、ジエンコル酸、β―シアノールアニン)、アミノイソ酪酸、ノルロイシン、ノルバリン、ホモシステイン、ホモセリンのような合成的に得たα―アミノ酸を含む。β―アラニン及びγ―アミノ酪酸は各々、1,3−及び1,4−アミノ酸の例であり、その他の多くは、本技術分野において、周知である。スタチンのようなイソスター(CONH連鎖がCHOHにより置換されたような二つのアミノ酸を有するジペプチド)、ヒドロキシレンイソスター(CONH連鎖がCHOHCHに置換されたような二つのアミノ酸を有するジペプチド)、還元アミドイソスター(CONH連鎖がCHNH連鎖に置換されたような二つのアミノ酸を有するジペプチド)、チオアミドイソスター(CONH連鎖がCSNH連鎖に置換されたような二つのアミノ酸を有するジペプチド)もまた、本発明に有益な残基である。
【0106】
本発明において使用されるアミノ酸は、市販されているものであり、決まった合成方法により得られるものである。ある残基は、ポリペプチド内への取り込みに特別な方法を必要とし、連続した、分岐したまたは集中したペプチド配列の合成方法が本発明に有益である。自然にコードされたアミノ酸及び該誘導体は、IUPAC命名法により三文字のコードで表される。指示がない場合、Lイソスターを使用した。
【0107】
当該技術分野において周知の保存的アミノ酸置換は、抗原性が置換プリペプチド内に保存される限り、本発明の範囲内に含まれる。保存的アミノ酸置換は、同型の官能基または側鎖を有する別のもの、例えば脂肪族、芳香族、正電荷のもの、負電荷のもの、との一アミノ酸の置換を含む。該置換は、経口バイオアベイラビリティ、中枢神経系への浸透、特定の細胞集団を標的とすること、その他同様のものを高め得る。一技術はコードされた配列の単一のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を変える、添加する、または欠失するペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列の個々の置換、欠失または添加は、変化が結果として化学的に類似したアミノ酸を用いたアミノ酸の置換となる「保存的修飾変異体」であることを認める。類似アミノ酸を機能上提供する保存的置換表は本技術分野において周知である。
【0108】
以下6つの群は各々、互いに保存的に置換であるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、セリン(B)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
【0109】
以下の実施例は、本発明の複数の実施形態をより詳しく説明するために示される。しかし、それらは決して本発明の幅広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から外れる事なく、ここに開示された原理の多くの変化形及び修飾形を迅速に考案し得る。
【0110】
実施例
実施例1 A GtS断片
血清型4、TIGR4系統(寄託番号NP_346492)の肺炎連鎖球菌GtSのアミノ酸配列は、配列番号1で示される:
1 MSKDIRVRYA PSPTGLLHIG NARTALFNYL YARHHGGTFL IRIEDTDRKR HVEDGERSQL
61 ENLRWLGMDW DESPESHENY RQSERLDLYQ KYIDQLLAEG KAYKSYVTEE ELAAERERQE
121 VAGETPRYIN EYLGMSEEEK AAYIAEREAA GIIPTVRLAV NESGIYKWHD MVKGDIEFEG
181 GNIGGDWVIQ KKDGYPTYNF AVVIDDHDMQ ISHVIRGDDH IANTPKQLMV YEALGWEAPE
241 FGHMTLIINS ETGKKLSKRD TNTLQFIEDY RKKGYLPEAV FNFIALLGWN PGGEDEIFSR
301 EEFIKLFDEN RLSKSPAAFD QKKLDWMSND YIKNADLETI FEMAKPFLEE AGRLTDKAEK
361 LVELYKPQMK SVDEIIPLTD LFFSDFPELT EAEREVMTGE TVPTVLEAFK AKLEAMTDDE
421 FVTENIFPQI KAVQKETGIK GKNLFMPIRI AVSGEMHGPE LPDTIFLLGR EKSIQHIENM
481 LKEISK
【0111】
N末端アミノ酸1−332アミノ酸が欠失した上記タンパク質の断片を産する。配列番号1の残基333−486に対応する154アミノ酸を含むGtS(333−486)を意味する断片は配列番号3で示される。
MKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTIFLLGREKSIQHIENMLKEISK
【0112】
該断片のヌクレオチド配列は配列番号11で示される:
AAG AAT GCA GAC CTT GAA ACC ATC TTT GAA ATG GCA AAA CCA TTC TTA GAG GAA GCA GGC CGT TTG ACT GAC AAG GCT GAA AAA TTA GTT GAG CTC TAT AAA CCA CAA ATG AAA TCA GTA GAT GAG ATT ATC CCA TTG ACA GAT CTT TTC TTC TCA GAT TTC CCA GAA TTG ACA GAA GCA GAG CGC GAA GTC ATG ACG GGT GAA ACA GTT CCA ACA GTT CTT GAA GCA TTC AAA GCA AAA CTT GAA GCG ATG ACA GAT GAT AAA TTT GTG ACA GAA AAT ATC TTC CCA CAA ATT AAA GCA GTT CAA AAA GAA ACA GGT ATT AAA GGG AAA AAT CTT TTC ATG CCT ATT CGT ATC GCA GTT TCA GGC GAA ATG CAT GGG CCA GAA TTA CCA GAT ACA ATT TTC TTG CTT GGA CGT GAA AAA TCA ATT CAG CAT ATC GAA AAC ATG CTA AAA GAA ATC TCT AAA TAA.
【0113】
実施例2 ヒトとの相同性
配列番号3のGtS(333−486)断片のアミノ酸配列を比較する、ヒトゲノム配列を用いた相同性試験は、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを用いて行われる。
【0114】
肺炎連鎖球菌GtS断片とヒトタンパク質グルタミル−tRNAシンセターゼ2(ヒト GtS−2、遺伝子番号124454 EARS2、配列番号12)との間に高い相同性が見られた。未処理の肺炎連鎖球菌GtSタンパク質配列(配列番号1)とヒトGtS−2タンパク質(配列番号12)との間の配列同一性は、29%である。GtS断片333−486(配列番号2)とヒトGtS−2配列の対応するアミノ酸残基(配列番号12の残基361−521)との間の配列同一性が18%であるのに対して、肺炎連鎖球菌GtS断片333−486と未処理のGtS−2との間(配列番号12と配列番号2を比較)の配列同一性は7.66%である。肺炎連鎖球菌GtSのN末端断片(配列番号1の残基5−332)はヒトGtS−2タンパク質の対応するアミノ酸との間に37%の配列同一性を有する。
【0115】
明らかに、配列番号2のGtSポリペプチド断片は未処理の肺炎連鎖球菌GtSタンパク質よりも、ヒトタンパク質との配列同一性が著しく低い。
【0116】
実施例3 異なる系統の肺炎連鎖球菌との相同性
配列番号3のGtS(333−486)断片と他の系統の肺炎連鎖球菌との相同性を調べるために、NCBI−Blastツールが使用された。表1に示すように、試験を行った全ての肺炎連鎖球菌は、配列番号3と少なくとも98%の同一性を有し、配列番号2と100%の同一性を有する(関連する領域において)
【表1】

【0117】
系統間で見られる配列変異(二系統間ごとに最大2つの変異)は、L/F382、G/D400、K/E421、I/V466、及びM/I481である(配列番号1に記載したように番号をつける)。
【0118】
実施例4 GtS断片のクローニングと精製
GtS断片のクローニングと精製は、Mizrachi−Nebenzahlらの2007年のJ Infect Dis. 196:945−53に記載のように行われた。
【0119】
GtS断片はXoh1及びEcoRI認識配列を各々含む以下のプライマーを用いてPCRにより、R6系統肺炎連鎖球菌ゲノムDNAから増幅される。
フォワード 5’GGAATTCAAGAATGCAGACCTTGAAACC 3’ (配列番号13)
リバース 5’CCGCTCGAGTTATTTAGAGATTTCTTTTAGCAT 3’ (配列番号14)
図1はゲノムDNAによるGtS(333−486)の増幅PCRを表す。
【0120】
増幅された及びXoh1−E.coRI(Takara Bio Inc, Shiga, Japan)で切断したDNA断片はpET32a expression vector(BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USA)にクローン化し、DH5a UltraMAX ultracompetent E. coli cells(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)で形質転換させる。アンピシリン耐性の形質転換体は、培養され、DNAプラスミドがPCRにより解析された。図2で示すように、予想される462塩基のインサートサイズの存在がPCR解析によって確認された。
【0121】
修飾された(マイナスチオレドキシン(TRX))pET32a−GtS断片はDH5α UltraMAX cellsからQiagen High Speed Plasmid Maxi Kit (Qiagen GMBH, Hilden, Germany)を用いて精製され、E. coli host expression strain BL21(DE3)pLysS(Stratagene, La Jolla, CA)で形質転換される。インサートの同一性は、シークエンシングにより確認された。細菌を一晩培養し、組み換えタンパク質の発現が5時間、BL21(DE3)pLysS+6PGD細胞への1mM IPTGの添加により含まれる。細胞は遠心分離により得られ、溶解バッファにより溶解される。HISタグの付いた組み換えタンパク質は、Ni−NTA column (Qiagen GMBH, Hilden, Germany)を用いて精製、つまり室温で一時間結合させ、次に、洗浄バッファ(8 M urea, 0.1 M NaH2PO4, 0.01 M Tris−Cl pH 6.3)でカラムを洗浄、及び組み換えタンパク質をカラムから溶出バッファ(8 M urea, 0.1 M NaHPO, 0.01 M Tris−Cl, pH 5.9)を用いて回収する。タンパク質の単離は、染色するCoomassie Brilliant blue、ウェスタンブロット法によりanti−HIS antibodies (BD Biosciences Clontech, Palo Alto, CA, USA)を用いて確認された。溶出したタンパク質の1D−PAGEによる分析は、Coomassie Brilliant Blue (23 kDaバンド)での染色の結果、図3に示すように単結合を表した。図4は、23k DaバンドがHISタグのついたrGtS(333−486)融合タンパク質であることを確認する、組み換えタンパク質の抗HAT抗体を用いたウェスタンブロット法1D−PAGEを表す。代替的方法は、最初のメチオニンを生産するために、NdeI制限酵素の使用により、HISタグ配列を取り除く、pET30+ベクターへの遺伝子のクローニングである。DNA配列は、末端ATG (メチオニン残基をエンコードする)GtS断片の大腸菌コドン出現頻度に最適化され、TAA終止コドンは、実際にタグのついていないGTS断片を生産するために、pET 30+にサブクローニングされ、そしてそれは、配列番号15に示される:
ATGAAAAACGCTGATCTGGAAACTATTTTTGAAATGGCAAAACCGTTTCTGGAAGAAGCAGGTCGTCTGACTGACAAAGCAGAGAAACTGGTTGAGCTGTACAAACCGCAGATGAAATCTGTTGACGAGATCATTCCGCTGACTGACCTGTTCTTTTCTGATTTCCCGGAACTGACTGAAGCAGAACGTGAAGTAATGACTGGTGAAACTGTTCCGACTGTTCTGGAAGCGTTCAAAGCTAAACTGGAGGCTATGACCGACGATAAATTCGTCACCGAAAACATCTTTCCGCAGATCAAAGCGGTTCAGAAAGAAACCGGTATCAAAGGCAAAAACCTGTTCATGCCGATTCGTATTGCAGTATCTGGTGAAATGCATGGTCCGGAACTGCCGGATACTATCTTTCTGCTGGGTCGTGAGAAATCTATCCAGCACATTGAGAACATGCTGAAAGAGATCTCCAAATAA
【0122】
生産されたポリペプチド断片は、3つの過程、AMSO4、Q−sepharoseを用いたppt及び2回のG−200クロマトグラフィカラムを用いて、精製された。結果は、An SDS−PAGEによって調査され、図5は、初回のG−200分取カラムから回収された3つの連続したチューブからのタグのないGtS333−486断片を表す。
【0123】
生体内モデル
血清型4 TIGR4系統の配列から得られた合成または組み換えGtS(333−486)を用いた免疫化の後に、動物は、血清型3系統のWU2を用いて、刺激を受ける。これ及び他の断片の血清学的に及び遺伝学的に血清型4系統TIGR4と血清型3系統WU2のいずれとも異なるさらなる系統の肺炎連鎖球菌から保護する能力を調べるために追加実験が行われた。
【0124】
実施例5 ウサギ抗GtS(333−486)抗血清を用いた生体外の免疫化
200CFUの3系統肺炎連鎖球菌(WU2)をウサギ抗GtS(333−486)及びウサギ抗GtS希釈血清(1:5及び1:10)を用いて、1時間生体外で中和し、7週間のBALB/c雌マウス(n=10)を刺激するために使用した。同一のウサギから得た希釈免疫前血清を用いて中和後、ネガティブ・コントロールマウス(n=10)は、200CFUの3系統肺炎連鎖球菌(WU2)を用いて刺激を受ける。ポジティブ・コントロールマウス(n=10)は、ウサギのレクチンのない抗血清での中和後、200CFUの3系統肺炎連鎖球菌を用いて刺激を受ける。生存を7日間監視した。
【0125】
図5に描いた結果は、1:5 、1:10の未変化のGtS希釈血清が各々78%、10%の生存率であるのに対し、1:5 、1:10の抗GtS(333−486)希釈血清での処理後、マウスの生存率が各々100%、40%であることを説明する。
【0126】
そのため、ウサギ抗GtS(333−486)血清が、はっきりと(p<0.05)、肺炎連鎖球菌WU2の腹腔内の致死的な攻撃からマウスを保護することが証明された。
【0127】
実施例6 全身感染に対するマウス型rGtS断片のワクチンの可能性
全身の肺炎連鎖球菌の致死的攻撃に対し、アジュバンドで及び対照としてアジュバンドのみで形成されたrGtS断片で免疫化されたマウスは、腹腔内にまたは静脈注射で致死量の血清型3系統WU2の肺炎連鎖球菌を接種される。接種量は96から120時間以内に子対照のマウスにおいての100%の死亡率が出る最少の量と決定される。生存を毎日確認する。
【0128】
実施例7 上気道の致死的感染に対するマウス型rGtS断片のワクチンの可能性
気道の肺炎連鎖球菌の致死的攻撃に対し、アジュバンドの及び対照としてアジュバンドのみのrGtS断片で免疫化されたマウスは、イソフルランで麻酔され、致死量の血清型3系統WU2の肺炎連鎖球菌(25 μl PBSで)を鼻腔内に接種される。接種量は、96から120時間以内に子対照のマウスにおいての100%の死亡率が出る最少の量と決定される。生存を毎日確認する。
【0129】
さらに、GtS(333−486)を用いた免疫化の、鼻咽頭における及び肺への吸入法の発明における肺炎連鎖球菌の細菌量を減らす能力を調べた。
【0130】
実施例8 GtS断片に特有な及びGtS断片の抗血清の、鼻咽頭及び肺でのコロニー形成を抑制する能力
GtS断片が肺炎連鎖球菌のコロニー形成を抑制するのが可能かどうかを知るために、生体外の処理前及び処理後に、マウスはGtS断片に対する抗体と共に、血清型3の肺炎連鎖球菌を鼻腔内に接種される。あるいは、5から40μgの濃度で、GtS断片は血清型3の肺炎連鎖球菌、WU2系統の細菌と共に混合され、混合物は、5x10から5x10の肺炎連鎖球菌を鼻腔内に接種される。3,6,24,48時間での接種によって、マウスは犠牲となり、切除された鼻咽頭及び肺は、均質化し、コロニーの数を数えるために、血液寒天培地に置かれた。
【0131】
実施例9 中耳炎型
チンチラ及びラットの中耳炎型(Chiavoliniら, 2008, Clinical Microbiology Reviews, 21:666−685; Giebink, G. S. 1999, Microb. Drug Resist., 5:57−72; Hermanssonら, 1988, Am. J. Otolaryngol. 9:97−101;及び Ryanら, 2006, Brain Res. 1091:3−8に記載のように明らかとなった)は、本発明に記載のGtS断片の効果を調べることに利用される。GtS (333−486)の該動物を鼻腔刺激を伴う中耳炎になることから防ぐ能力は、研究される。
【0132】
本発明は明確に記載されているが、当業者は、多くの変異体及び変型が作成され得るのを高く評価するであろう。それゆえ、本発明は、明確に記載された実施形態に制限されるように解釈すべきではなく、本発明の範囲及び概念は、以下請求項の参照によってより容易に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)グルタミルtRNA合成酵素(GtS)の配列番号1の配列に由来する50〜250のアミノ酸で構成され、KNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKL(配列番号2)の配列を含む合成または組み換えポリペプチド、並びにその変異体および類似体。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、100〜200のアミノ酸から成る請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、130〜180のアミノ酸から成る請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号12と24%未満の配列同一性を共有する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号12と10%未満の配列同一性を共有する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
XKNADLETIFEMAKPFLEELVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTIFLLGREKSIQHIENMLKEISK(配列番号3)の配列を含み、ここでXが、メチオニンであるか、または前記ポリペプチドのN末端を表し、かつ前記ポリペプチドの変異体および類似体を含む請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDX1FFSDFPELTEAEREVMTX2ETVPTVLEAFKAKLEAMTDDX3FVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTX4FLLGREKSIQHIENX5LKEISK(配列番号4)の配列を含み、ここでXが、メチオニンであるか、または前記ポリペプチドのN末端を表し、Xがロイシン(L)またはフェニルアラニン(P)であり、Xがグリシン(G)またはアスパラギン酸(D)であり、Xがリジン(K)またはグルタミン酸(E)であり、Xがイソロイシン(I)またはバリン(V)であり、そしてXがメチオニン(M)またはイソロイシン(I)であり、かつ前記ポリペプチドの変異体および類似体を含む請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
配列番号5〜配列番号10:XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKP(配列番号5)、
MKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFP(配列番号6)、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAK(配列番号7)、
MKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKET(配列番号8)、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSG(配列番号:9)、および、
XKNADLETIFEMAKPFLEEAGRLTDKAEKLVELYKPQMKSVDEIIPLTDLFFSDFPELTEAEREVMTGETVPTVLEAFKAKLEAMTDDKFVTENIFPQIKAVQKETGIKGKNLFMPIRIAVSGEMHGPELPDTIFLLGR(配列番号10)の群から選択される配列を含み、ここでXがメチオニンであるか、または前記ポリペプチドのN末端を表し、かつ前記ポリペプチドの変異体および類似体を含む請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号3〜配列番号10から成る群から選択される配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
担体タンパク質に結合または融合する請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列。
【請求項12】
配列番号3〜配列番号10から成る群から選択されるポリペプチド配列をコードする請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号11または配列番号15を含む請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列番号11または配列番号15から成る請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチドを含む、肺炎連鎖球菌に対して対象を免疫化するためのワクチン組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の少なくとも2つのポリペプチドを含む、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
アジュバントをさらに含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記アジュバントが、油中水乳剤、脂肪乳剤およびリポソームから成る群から選択される請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記アジュバントが、Montanide(登録商標)、ミョウバン、ムラミルジペプチド、Gelvac(登録商標)、キチン微粒子、キトサン、コレラトキシンのサブユニットB、不安定トキシン、AS21A、Intralipid(登録商標)およびLipofundin(登録商標)、から成る群から選択される請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
対象の肺炎連鎖球菌に対する免疫反応を含み、且つ該肺炎連鎖球菌に対抗する防御を与える方法であって、請求項15〜請求項19の何れか一項に記載のワクチン組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記ワクチンを投与する経路が、筋肉内送達、鼻腔内送達、経口送達、腹腔内送達、皮下送達、局所的送達、皮内送達および経皮的送達から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ワクチン組成物が筋肉内投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
肺炎連鎖球菌に対して免疫化するための請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
肺炎連鎖球菌に対して免疫化するワクチン組成物を調製するために、請求項1〜請求項10の何れか一項に記載のポリペプチドを使用すること。
【請求項25】
ポリペプチドを生産するために、請求項11〜請求項14の何れか一項に記載の単離されたポリヌクレオチドを使用すること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510289(P2012−510289A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539174(P2011−539174)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001142
【国際公開番号】WO2010/064243
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511122400)プロティア ワクチン テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】