説明

グレージングチャンネル及びグレージングチャンネル付き框並びにサッシ

【課題】サッシの組立作業性が向上するとともに、板状体保持力が向上するグレージングチャンネル、及びそのグレージングチャンネルが備えられた框、並びにその框に板状体が取り付けられたサッシを提供する。
【解決手段】本発明のグレージングチャンネル1は、板状体3の縁部が挿入される挿入溝を備えた断面凹形状の框2の、対向する両側の内壁面2A、2Aに取り付けられており、基端部1Aが内壁面2Aに固着され、先端部1Bが框2の底壁2Bに対向するように配置されている。そして、グレージングチャンネル1は、板状体3と面接触する平面部1Cを備えている。すなわち、框2に備えられたグレージングチャンネル1に対する板状体3の嵌合荷重に対して引抜荷重が大きくなるように、平面部1Cが板状体3に面接触している。また、平面部1Cによる面接触部においては、板状体保持力を高めるために、グレージングチャンネル1の長手方向に直交する方向の面における面接触部の長さLが2mm以上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグレージングチャンネル及びグレージングチャンネル付き框並びにサッシに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板、樹脂板等の板状体は、サッシを構成する框(枠)の溝に対し水密性を保持しつつ確実に固定するために、グレージングチャンネルを介装させて取り付けられる。
【0003】
特許文献1に開示されたグレージングチャンネルは、保形性のある硬質樹脂部とシール性が得られる軟質樹脂部とによって断面略コ字状に一体成形されたものであり、前記框とは別部品である。サッシを組み立てる場合には、まず、板状体の周縁部に前記グレージングチャンネルを装着し、次に、板状体の周縁部を、グレージングチャンネルを介して框の溝に嵌入する。これによって、サッシが組み立てられる。また、前記グレージングチャンネルは、塩化ビニル樹脂、又はウレタン樹脂等の樹脂製であり、板状体に対する緩衝材としての機能も兼ね備えている。
【0004】
一方、特許文献2には、グレージングチャンネルと框とが一体形成されたグレージングチャンネル付き框が開示されている。このグレージングチャンネル付き框は、硬質樹脂製である框の対向する内壁面に、軟質樹脂製のグレージングチャンネルが一体に形成されている。このグレージングチャンネル付き框によれば、框の溝に板状体の周縁部を嵌め込むだけで、サッシを組み立てることができるので、特許文献1のグレージングチャンネルと比較してサッシの組立作業性が改善されている。
【0005】
特許文献2のグレージングチャンネルは、ヒレ部と称される軟質の弾性体であり、板状体との接触部分が円弧状に形成されている。前記ヒレ部の基端部が前記框の内壁面に固着され、ヒレ部の先端部が前記框の底壁面に向けて垂下されている。なお、グレージングチャンネル付き框としては、特許文献2の他、特許文献3、4等において公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−211524号公報
【特許文献2】特開2007−224565号公報
【特許文献3】特開2008−274605号公報
【特許文献4】実開昭57−52562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された框と別体のグレージングチャンネル、及び特許文献2〜4に開示された框と一体型のグレージングチャンネル(ヒレ部)はともに、板状体の両側に位置するヒレ部(特許文献1では、軟質リップ)によって板状体を挟み込んで保持する構造である。前記ヒレ部は、板状体との接触部分が円弧形状であるので、板状体とグレージングチャンネルとの接触形態は、板状体の縁部に沿った線接触となる。このため、グレージングチャンネルの板状体保持力は強固とは言えず、サッシの開放動作時等にガラス板が框に対してぐらつく場合がある。
【0008】
そこで、従来のグレージングチャンネルは、前記板状体保持力を高めるために、対向する一対のヒレ部の間の隙間を狭くしている。
【0009】
しかしながら、前記隙間を狭くすると、板状体をグレージングチャンネルに嵌め込む際に、大きな力(以下、嵌合力という)を要するので、サッシの組立作業性が悪くなるという問題があった。また、板状体がグレージングチャンネルに嵌め込まれると、グレージングチャンネルの板状体保持力は、前述の如く線接触のみで得られるものなので、框に対する板状体の引抜力は前記嵌合力と比較して小さくなる。
【0010】
つまり、従来のグレージングチャンネルは、大きな嵌合力を要するのでサッシの組立作業性が悪く、また、引抜力が小さいので板状体が框に対してぐらつくという、サッシにとっては改善しなければならない大きな問題があった。なお、グレージングチャンネルの厚さを厚くすればするほど、前記引抜力を上げることはできるが、これでは前記嵌合力が更に高くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、サッシの組立作業性が向上するとともに、板状体保持力が向上するグレージングチャンネル、及びそのグレージングチャンネルが備えられた框、並びにその框に板状体が取り付けられたサッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、板状体の縁部が挿入される挿入溝を備えた断面凹形状の框の、対向する両側の内壁面に取り付けられるグレージングチャンネルであって、基端部が前記内壁面に固着され、先端部が前記框の底壁に対向するように配置された軟質材のグレージングチャンネルにおいて、前記グレージングチャンネルは、前記板状体と面接触する平面部を備えたことを特徴とするグレージングチャンネルを提供する。
【0013】
本発明によれば、一対のヒレ部の間の隙間を無用に小さくすること無く、かつ、ヒレ部の厚さを無用に厚くすること無く、グレージングチャンネルに備えられた平面部によって板状体を面接触で保持する。これにより、本発明によれば、框に備えられたグレージングチャンネルに対する板状体の嵌合力が従来よりも小さくなり、また、前記グレージングチャンネルに対する板状体の引抜力が従来よりも高くなる。
【0014】
つまり、板状体が框に嵌め込まれると、グレージングチャンネルの板状体との接触面は、グレージングチャンネルの基端部に向けて圧縮する方向の力を受け、その反発力によって板状体を強固に保持する。これに対して、従来のグレージングチャンネルのヒレ部は、接触部分が円弧状に構成されているので、板状体が框に嵌め込まれると、ヒレ部は板状体に押されて円弧状に撓むだけである。よって、従来のグレージングチャンネルは、前記圧縮する方向の力は受けず、ヒレ部から板状体に加わる力はヒレ部の弾性復元力のみとなる。このような理由から、本発明のグレージングチャンネルによる引抜力が、従来のグレージングチャンネルよりも大きくなる。よって、本発明のグレージングチャンネルによれば、従来と比較してサッシの組立作業性が向上するとともに、板状体保持力が向上する。
【0015】
また、本発明のグレージングチャンネルは、框に捩じれが生じた場合でも、前記面接触の作用によって、板状体に対するグレージングチャンネルの保持力が低下しないという利点がある。
【0016】
本発明によれば、前記框に備えられた前記グレージングチャンネルに対する前記板状体の嵌合荷重に対して引抜荷重が大きくなるように、前記平面部が前記板状体に面接触する。
【0017】
本発明によれば、前記嵌合力を前記嵌合荷重として評価するとともに、前記引抜力を引抜荷重として評価する。この場合、グレージングチャンネルの前記平面部は、嵌合荷重に対して引抜荷重が大きくなるように板状体に面接触する。
【0018】
本発明によれば、前記グレージングチャンネルの前記平面部と前記板状体との面接触部は、前記グレージングチャンネルの長手方向に直交する方向の面における前記面接触部の長さが2mm以上であることが望ましい。前記接触部の長さが2mm以上あれば、良好な板状体保持力を得ることができる。
【0019】
本発明の前記グレージングチャンネルは、ショアA硬度が50度から90度の樹脂製、又はゴム製であることが好ましい。グレージングチャンネルのショアA硬度が50度未満であると、軟らか過ぎるため十分な板状体保持力を得ることができず、ショアA硬度が90度を超えると硬くなり過ぎるため、嵌合力が大きくなりサッシの組立作業性を阻害するからである。
【0020】
本発明の前記グレージングチャンネルの前記接触面の裏面には、前記段部に対向する位置に切欠部が備えられていることが好ましい。本発明によれば、前記切欠部を設けることによって、グレージングチャンネルが曲げ易くなるので、サッシの組立作業性がより一層向上する。
【0021】
本発明の前記グレージングチャンネルの前記接触面の裏面には、該グレージングチャンネルよりも硬質の補強部材が備えられていることが好ましい。本発明によれば、硬質の補強部材によって軟質のグレージングチャンネルを補強することができるとともに、グレージングチャンネルのクリープを抑制することができる。
【0022】
本発明は、前記目的を達成するために、本発明のグレージングチャンネルと框とが一体化されていることを特徴とするグレージングチャンネル付き框を提供する。本発明のグレージングチャンネル付き框に板状体を嵌め込むだけでサッシを組み立てることができる。
【0023】
本発明の前記框は樹脂製、又は金属製であることが好ましい。本発明のグレージングチャンネルと一体化できるのであれば、框の材質は樹脂製であっても金属製であってもよい。また、グレージングチャンネル(ヒレ部)は框と一体ものでも良く、框の内壁にヒレ部を接着し一体化しても良い。また、ヒレ部以外の部分(壁面、底面など)をもつグレージングチャンネルを框と一体化してもよい。この場合、前述のヒレ部の基端部が框の内壁面に固着されるという構成は、ヒレ部の基端部がグレージングチャンネルのヒレ部以外の部位を介し間接的に框の内壁面に固着すること意味する。
【0024】
本発明は、前記目的を達成するために、本発明のグレージングチャンネル付き框に、板状体が装着されてなることを特徴とするサッシを提供する。
【0025】
本発明のサッシによれば、サッシの組立作業性、及び板状体保持力が向上する。
【0026】
なお、本発明の板状体とは、単板のガラス板、複層ガラス、及び合せガラス等のガラス板に限定されるものでは無く、樹脂製、木材製のパネル材も含む。
【0027】
また、本発明のグレージングチャンネルは、框と一体化されたグレージングチャンネルに限定されるものでは無く、框と別体のグレージングチャンネルであってもよい。框と別体のグレージングチャンネルの場合、ヒレ部が本発明のグレージングチャンネルに対応する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のグレージングチャンネル及びグレージングチャンネル付き框並びにサッシによれば、サッシの組立作業性が向上するとともに、板状体保持力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のグレージングチャンネルの構成を示した概念図
【図2】本発明のサッシの構成を示した概念図
【図3】実施の形態のグレージングチャンネルが適用された框の断面図
【図4】実施の形態の框に第1の厚さのガラス板が装着されたサッシの断面図
【図5】実施の形態の框に第2の厚さのガラス板が装着されたサッシの断面図
【図6】実施の形態の框に第3の厚さのガラス板が装着されたサッシの断面図
【図7】実施の形態のグレージングチャンネルの第1の変形例を示した框の断面図
【図8】実施の形態のグレージングチャンネルの第2の変形例を示した框の断面図
【図9】実施の形態のグレージングチャンネルの第3の変形例を示した框の断面図
【図10】従来のグレージングチャンネルを備えたサッシの断面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明のグレージングチャンネル1の構成を示した概念図であり、図2は、図1のグレージングチャンネル1を備えた框2に板状体3の縁部を嵌め込んだサッシ4の断面図である。
【0031】
これらの図に示すように、本発明のグレージングチャンネル1は、板状体3の縁部が挿入される挿入溝を備えた断面凹形状の框2の、対向する両側の内壁面2A、2Aに取り付けられており、基端部1Aが内壁面2Aに固着され、先端部1Bが框2の底壁2Bに対向するように配置されている。そして、グレージングチャンネル1は、板状体3と面接触する平面部1Cを備えている。すなわち、框2に備えられたグレージングチャンネル1に対する板状体3の嵌合荷重に対して引抜荷重が大きくなるように、平面部1Cが板状体3に面接触している。また、平面部1Cによる面接触部においては、板状体保持力を高めるために、グレージングチャンネル1の長手方向に直交する方向の面における面接触部の長さLが2mm以上に設定されている。
【0032】
次に、実施の形態に係るグレージングチャンネル及びグレージングチャンネル付き框並びにサッシの好ましい実施の形態について説明する。
【0033】
図3は、実施の形態のグレージングチャンネル10、10が一体化された框12の断面図である。このグレージングチャンネル10、10は框12の長手方向に沿って配置されている。
【0034】
図4は、図3に示した框12に厚さの薄い(例えば、厚さ3mm)ガラス板(板状体)14が嵌め込まれたサッシ16の断面図であり、図5は、図3に示した框12に、図4のガラス板14よりも厚さの厚い(例えば、厚さ5mm)ガラス板18が嵌め込まれたサッシ20の断面図であり、図6は、図3に示した框12に、図5のガラス板18よりも厚さの厚い(例えば、厚さ6.8mm)ガラス板22が嵌め込まれたサッシ24の断面図である。つまり、実施の形態のグレージングチャンネル10、10及び框12は、厚さの異なる3枚のガラス板14、18、22に対応可能である。
【0035】
なお、実施の形態では、グレージングチャンネル10が一体化された框12を例示しているが、グレージングチャンネル10と框12とが別体の形態でもよい。また、グレージングチャンネルは、ショアA硬度が50度から90度の樹脂製(例えば、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂)、又はゴム製であることが好ましい。ショアA硬度が50度未満であると、軟らか過ぎるためガラス板14、18、22に対する十分な保持力を得ることができず、また、ショアA硬度が90度を超えると硬くなり過ぎるため、ガラス板14、18、22を框12に嵌め込み難くなるからである。また、框12は樹脂製、又は金属製であることが好ましい。すなわち、框12は、グレージングチャンネル10と一体化でき、かつ、框12としての強度を得ることができる材質であればよい。
【0036】
以下、3枚のガラス板14、18、22に対応可能な構成のグレージングチャンネル10について説明する。
【0037】
図3〜図6に示すように、框12は、ガラス板14、18、22の縁部が挿入される挿入溝を備えた断面凹形状に構成され、その框12の、対向する両側の内壁面26、26にグレージングチャンネル10が一体化されている。すなわち、グレージングチャンネル10の基端部10Aが内壁面26に固着され、先端部10Bが框12の底壁28に向うように配置されている。そして、グレージングチャンネル10のガラス板14、18、22との接触面30(図3参照)である平面部は、基端部10Aから先端部10Bに向けて複数の段部を有する階段状に構成されている。
【0038】
つまり、実施の形態のグレージングチャンネル10は、ガラス板14、18、22との接触面30を、踏面面32、34、及び蹴上面36、38、40からなる3段の階段状に構成することによって、ガラス板14、18、22の厚さに追従できる構成となっている。
【0039】
図4に示すように、ガラス板14の縁部を框12に嵌め込むと、グレージングチャンネル10、10の間隔が押し広げられるようにグレージングチャンネル10、10が弾性変形されて、ガラス板14には蹴上面36が接触される。また、図5に示すように、ガラス板18の縁部を框12に嵌め込むと、グレージングチャンネル10、10の間隔が押し広げられるようにグレージングチャンネル10、10が弾性変形することによって、ガラス板18には踏面面32と蹴上面38とが接触される。更に、図6の如く、ガラス板22の縁部を框12に嵌め込むと、グレージングチャンネル10、10の間隔がより広く押し広げられるようにグレージングチャンネル10、10がより一層弾性変形することによって、ガラス板22には踏面面34と蹴上面38、40とが接触される。このように、ガラス板14、18、22は、グレージングチャンネル10、10に面接触した状態で框12に保持される。なお、符号42は、ガラス板14、18、22の端面が載置されるセッティングブロックである。
【0040】
上記の如く、実施の形態のグレージングチャンネル10は、ガラス板14、18、22との接触面30が階段状に構成されているので、ガラス板14、18、22はその厚さに応じた踏面面32、34、又は蹴上面36、38、40に面接触して保持される。また、グレージングチャンネル10の接触面30とガラス板14、18、22との接触形態は、従来の線接触では無く面接触なので、ガラス板14、18、22を良好な保持力をもって框12に保持できる。
【0041】
更に、実施の形態のグレージングチャンネル10は、風圧等によって框12に捩じれが生じた場合でも、前記面接触の作用によって、ガラス板14、18、22に対するグレージングチャンネル10の保持力は低下しないという利点がある。
【0042】
更にまた、実施の形態のグレージングチャンネル10は、前記階段状の構成によって、ガラス板14、18、22を框12に嵌め込む力(嵌合力)よりも、框12からガラス板14、18、22を引き抜く力(引抜力)の方が大きくなるので、サッシ16、20、24の組立作業性、及びガラス板14、18、22の保持力が向上する。
【0043】
つまり、実施の形態のグレージングチャンネル10は、ガラス板14、18、22との接触面30が階段状に構成されているので、ガラス板14、18、22が框12に嵌め込まれると、ガラス板14、18、22との接触面(踏面面32、34、蹴上面36、38、40)は、グレージングチャンネル10の基端部10Aに向けて圧縮する方向の力を受け、その反発力によってガラス板14、18、22を強固に保持する。これに対して、従来のグレージングチャンネルのヒレ部は、接触面が円弧状に構成されているので、ガラス板が組み込まれると、ヒレ部はガラス板に押されて円弧状に撓むだけである。よって、従来のグレージングチャンネルは、前記圧縮する方向の力は受けず、ヒレ部からガラス板に加わる力はヒレ部の弾性復元力のみとなる。このような理由から、実施の形態のグレージングチャンネル10による前記引抜力が、従来のグレージングチャンネルよりも大きくなる。
【0044】
また、従来のグレージングチャンネルは、大きな前記弾性復元力を得るために、対向するヒレ部の間の隙間(間隔)を極力小さくしたり、ヒレ部の厚さを厚くしたりしていたが、これが原因で、前記嵌合力が必要以上に大きくなっていた。これに対して実施の形態のグレージングチャンネル10は、階段状の面によってガラス板14、18、22を面接触で保持する構成なので、グレージングチャンネル10、10の間の隙間を必要以上に小さくする必要が無く、また、グレージングチャンネル10の厚さを必要以上に厚くする必要も無い。このような理由から、前記嵌合力が、従来のグレージングチャンネルよりも小さくなる。
【0045】
なお、実施の形態のグレージングチャンネル10は、接触面30を3段の階段状に構成したが、この限りではない。
【0046】
また、実施の形態のグレージングチャンネル10は、基端部10Aから先端部10Bに向けて厚さが薄くなるように製造されている。グレージングチャンネルの厚さが基端部から先端部に向けて同一の厚さであると、ガラス板の厚さが厚くなるに従って、前記嵌合力は大きくなるが、実施の形態のグレージングチャンネル10は、階段状の形状と相まって、ガラス板14、18、22の厚さに関係無く前記嵌合力を略均一にできる。
【0047】
一方、実施の形態のグレージングチャンネル10が一体化された框12によれば、この框12にガラス板14、18、22の縁部を嵌め込むだけでサッシ16、20、24を組み立てることができるので、サッシ16、20、24の組立作業性が向上する。
【0048】
図7は、グレージングチャンネル10の第1の変形例を示した框12の断面図である。
【0049】
同図に示すグレージングチャンネル10の接触面30の裏面には、接触面30の段部である、踏面面32と蹴上面36との境界部に対向する位置に切欠部44が備えられるとともに、踏面面34と蹴上面40との境界部に対向する位置に切欠部46が備えられている。
【0050】
図7に示したグレージングチャンネル10によれば、切欠部44、46を設けることによって、グレージングチャンネル10が曲がり易くなるので、前記嵌合力を小さくでき、サッシ16、20、24の組立作業性がより一層向上する。
【0051】
図8は、グレージングチャンネル10の第2の変形例を示した框12の断面図である。
【0052】
同図に示すグレージングチャンネル10の接触面30の裏面には、グレージングチャンネル10よりも硬質で板状の補強部材48が備えられている。これにより、硬質の補強部材48によって軟質のグレージングチャンネル10を補強することができるとともに、グレージングチャンネル10のクリープを抑制することができる。補強部材48を樹脂製として、グレージングチャンネル10の押し出し成形とともに押し出し成形することでグレージングチャンネル10の裏面に一体成形することが製造上好ましい。
【0053】
図9は、グレージングチャンネル10の第3の変形例を示した框12の断面図である。
【0054】
同図に示すグレージングチャンネル10は、図7に示した切欠部44、46付きのグレージングチャンネル10に、図8に示した補強部材48を備えたものである。また、補強部材48の切欠部44、46に対向する位置には切欠部50、52が備えられている。すなわち、図9に示したグレージングチャンネル10は、図7、図8に示したグレージングチャンネル10、10の効果を備えている。
【0055】
〔嵌合荷重、及び引抜荷重の比較実験〕
下記の比較実験は、前記嵌合力を前記嵌合荷重として評価するとともに、前記引抜力を引抜荷重として評価することによって、嵌合力と引抜力(板状体保持力)の指標を定めたものである。また、評価装置としては、特開2009−156616号公報に開示されたグレージングチャンネルの評価装置を用い簡易的に嵌合力と引抜力を測定した。更に、使用したサッシの全サンプルは、全長が300mmである。また、実施例のグレージングチャンネル10のショアA硬度は70度であった。
【0056】
なお、ガラス板の厚さとは、JIS R3202−1996に規定された厚さのことを言う。また、下記の最大嵌合荷重、及び最大引抜荷重は、各5台のサンプルの平均値を取ったものである。
【0057】
〔実施例〕
図4、図5、図6に示した実施の形態のサッシ16、20、24において、グレージングチャンネル10を備えた框12に対するガラス板14、18、22の最大嵌合荷重、及び最大引抜荷重を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例の3例とも、最大引抜荷重が最大嵌合荷重を上回ることが確認された。
【0060】
実施例1に示した厚さ3mmの図4のガラス板14においては、最大嵌合荷重が11Nと小さいため、サッシ16の組立作業性が大幅に改善された。また、最大引抜荷重は95Nと大きいので、ガラス板14の保持力も良好であった。また、グレージングチャンネル10の長手方向に直交する方向の面におけるガラス板14との面接触部の長さLは2mm以上であった。
【0061】
実施例2に示した厚さ5mmの図5のガラス板18においては、最大嵌合荷重が25Nであり、厚さ3mmのガラス板14と比較して最大嵌合荷重が大きくなるが、サッシ16の組立作業性を阻害するものでは無かった。また、最大引抜荷重は、厚さ3mmのガラス板14と比較して略半減するが、ガラス板14の保持力を阻害するものでは無かった。また、グレージングチャンネル10の長手方向に直交する方向の面におけるガラス板18との面接触部の長さLは2mm以上であった。
【0062】
実施例3に示した厚さ6.8mmの図6のガラス板22においては、最大引抜荷重が132Nとかなり大きいので、ガラス板22の保持力は良好であった。また、最大嵌合荷重は97Nとかなり大きいが、最大引抜荷重(132N)に比べ十分に小さい値であった。また、グレージングチャンネル10の長手方向に直交する方向の面におけるガラス板22との面接触部の長さLは2mm以上であった。
【0063】
〔比較例〕
図4、図5、図6に示した実施の形態のサッシ16、20、24に対して、図10に示した従来のグレージングチャンネル60を備えた框62におけるガラス板Gの嵌合荷重、及び引抜荷重を測定した。この框62では、ガラス板の板厚を3、5、6.8mmにする場合は、それぞれの板厚用のグレージングチャンネルが必要であった。また、それぞれの板厚のガラス板においても、グレージングチャンネルの長手方向に直交する方向の面におけるガラス板との接触部の長さLは2mm未満であり、ほぼ線接触であった。嵌合荷重、及び引抜荷重の結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
上記の比較実験により、実施例1〜3のサッシによれば、比較例1〜3のサッシと比較して、引抜荷重に対する嵌合荷重の大きさが大幅に減少したので、サッシの組立作業性が向上し、かつ、引抜荷重が大幅に増加したので、ガラス板の保持力が向上した。
【0066】
また、最大嵌合荷重は、サッシの組立作業性を向上させる観点から10〜100N程度が好ましく、最大引抜荷重は、板状体保持力を向上させる観点から45N以上が好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1…グレージングチャンネル、1C…平面部、2…框、3…板状体、4…サッシ、10…グレージングチャンネル、12…框、14…ガラス板、16…サッシ、18…ガラス板、20…サッシ、22…ガラス板、24…サッシ、26…内壁面、28…底壁、30…接触面、32、34…踏面面、36、38、40…蹴上面、42…セッティングブロック、44、46…切欠部、48…補強部材、50、52…切欠部、60…従来のグレージングチャンネル、62…框、G…ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の縁部が挿入される挿入溝を備えた断面凹形状の框の、対向する両側の内壁面に取り付けられるグレージングチャンネルであって、基端部が前記内壁面に固着され、先端部が前記框の底壁に対向するように配置された軟質材のグレージングチャンネルにおいて、
前記グレージングチャンネルは、前記板状体と面接触する平面部を備えたことを特徴とするグレージングチャンネル。
【請求項2】
前記框に備えられた前記グレージングチャンネルに対する前記板状体の嵌合荷重に対して引抜荷重が大きくなるように、前記平面部が前記板状体に面接触する請求項1に記載のグレージングチャンネル。
【請求項3】
前記グレージングチャンネルの前記平面部と前記板状体との面接触部は、前記グレージングチャンネルの長手方向に直交する方向の面における前記面接触部の長さが2mm以上である請求項1、又は2に記載のグレージングチャンネル。
【請求項4】
前記グレージングチャンネルは、ショアA硬度が50度から90度の樹脂製、又はゴム製である請求項1、2又は3に記載のグレージングチャンネル。
【請求項5】
前記グレージングチャンネルの前記接触面の裏面には、前記段部に対向する位置に切欠部が備えられている請求項1から4のいずれかに記載のグレージングチャンネル。
【請求項6】
前記グレージングチャンネルの前記接触面の裏面には、該グレージングチャンネルよりも硬質の補強部材が備えられている請求項1から5のいずれかに記載のグレージングチャンネル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のグレージングチャンネルと框とが一体化されていることを特徴とするグレージングチャンネル付き框。
【請求項8】
前記框は樹脂製、又は金属製である請求項7に記載のグレージングチャンネル付き框。
【請求項9】
請求項7、又は8に記載のグレージングチャンネル付き框に、板状体が装着されてなることを特徴とするサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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