説明

グレーチングの固定金具

【課題】側溝の受枠に装着されるグレーチングを受枠に固定する作業やその解除作業が容易であり、しかもその固定が確実に行える固定金具を提供する。
【解決手段】固定金具1がグレーチング2に固定される筒状金具5と、該金具5内に回動かつスライド可能に嵌挿されるロッド6と、該ロッド6をその一端が筒状金具5より突出する方向に付勢するバネ7とよりなり、筒状金具5にはコ字形の溝部と、該溝部の一端に形成される鉤溝からなる第1の溝8が形成されると共に、幅広の角溝と鉤溝からなる第2の溝9を形成し、ロッド6には第1の溝8に遊嵌するピン62と第2の溝9に遊嵌する操作把手63を有し、操作把手63をバネ7の作用に抗して押込む操作と、正逆に回動する操作を行ってピン62を後退させて受枠の嵌合孔より外し、グレーチングの固定を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等の側溝や排水桝(以下、単に側溝等という)に装着されるグレーチングの跳ね上がりを確実に防止することができるグレーチングの固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
側溝等に装着される溝蓋として、排水機能を損なわないようにするためにグレーチングが多用されている。こうした溝蓋用のグレーチングは一般に鋼製で、平鋼よりなる主部材と、並設される主部材の両端に固定されるエンドプレートと、主部材に直交して固定されるスクリューバー等のクロスバーとからなり、多くの場合、側溝に固着の受枠に装着される。
【0003】
側溝等に装着されたグレーチングは、車両等の走行によりガタ付き、まれにではあるが、跳ね上がって車両に当たる事故を発生することがある。こうした問題を解消するため、グレーチングを固定する手段がいくつか提案されている。グレーチングを押える押え金具と受け枠の当て金をボルトにより連結してグレーチングを固定するもの(特許文献1)、グレーチング下面に垂直に固定される管にバネと共にロッドを装着し、ドライバー等の工具を用いてロッドを一方向に回動させることによりロッドより側方に突出する鉤部材を受枠に固着の収納部に収めてロックする一方、ドライバー等の工具を用いてロッドをバネの作用に抗して押込みながら逆方向に回動させることにより鉤部材を収納部より離脱させてロックを解除させるようにしたもの(特許文献2)などがその例である。
【特許文献1】特開2000−80714号
【特許文献2】実用新案登録第3099251号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなグレーチングの固定方式では、側溝等の清掃などでグレーチングを取外す際、ボルトを緩めてから、またグレーチングの取付けはボルトを捩じ込むことによって行わねばならず、グレーチングの着脱が面倒である。この点、特許文献2に開示される固定方式では、工具によるロッドの回動量が半回転程度ですみ、グレーチングの着脱が容易である。
【0005】
本発明は、作業が容易であり、しかも固定がより確実に行えるようなグレーチングの固定金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、側溝等に直接又は側溝等に取着の受枠に装着されるグレーチングを側溝等又は受枠に着脱可能に固定するための固定金具であって、グレーチングに固定される筒状金具と、該金具に回動かつ軸方向にスライド可能に嵌挿され、一端が筒状金具より突出して前記側溝等又は受枠に形成の嵌合凹部又は嵌合孔(以下、単に嵌合孔等という)に嵌合可能なロッドと、前記筒状金具に装着されて前記ロッドをその一端が筒状金具より突出する方向に付勢するバネと、前記筒状金具に形成される第1及び第2の溝と、前記ロッドより径方向に突設され、前記第1の溝に移動可能に嵌挿されるピン及び前記第2の溝に移動可能に嵌挿されて突出する操作把手とよりなり、前記第1の溝は筒状金具の軸方向と直交する方向に形成されるコ字形の溝部と、該コ字形の溝部の一端からロッド一端側に向けて軸方向に形成される鉤溝を備え、前記ピンが前記バネの作用に抗してコ字形の溝部内を溝端まで後退すると、ロッド一端が受枠の嵌合孔より離脱するようになっており、また前記第2の溝は前記ピンが第1の溝に沿って移動するときの操作把手の動きを許容するように形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記筒状金具はグレーチング内に横向きに固定され、前記ピンが第1の溝の鉤溝に位置するとき、前記操作把手は横ないし略横向きに倒れてグレーチングより突出しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、グレーチングの固定はピンが第1の溝の鉤溝に嵌合し、ロッド一端が側溝等又は受枠の嵌合孔等に嵌合することによって行われる。固定状態からの解除は、操作把手を手又は工具を用いて掴んでバネの作用に抗し、軸方向に後退させてピンを鉤溝より離脱させ、ついで操作把手をピンがコ字形の溝部に沿って移動するように一定量回動させたのちばねの作用に抗して後退させ、更に逆向きに回動させることによって行われる。したがって固定状態から解除するにはピンはバネの作用に抗した鉤溝からの離脱→正方向への回動→バネの作用に抗した軸方向への移動→逆向きの回動と複雑な動きを行わねばならず、車両等の走行によって固定金具に振動が伝わったとしても、ピンが上記のような複雑な動きをしない限り、固定が解除されることはなく、固定がより確実に行われる。また固定時には操作把手を回動するだけで、ロッド一端の突出はバネの作用によって行われるため、固定作業が容易である。
【0009】
請求項2に係る発明によると、筒状金具はグレーチング内に横向きに固定されるため、操作把手がグレーチングの表面近くにあって掴み易くなり、また固定状態ではグレーチングより突出しないため、車両等の走行に支障を与えたり、歩行者の走行時につまずいたりすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の固定金具について図面により説明する。
図1は、固定金具1を取付けたグレーチング2が排水桝の受枠3に装着された状態を示すもので、固定金具1は図2〜図4に示すように、フランジ管状の筒状金具5と、該金具5に回動かつ軸方向にスライド可能に嵌挿される円形断面のロッド6と、筒状金具5内に装着され、ロッド6を筒状金具5より突出する方向に付勢するバネ7とからなっている。
【0011】
筒状金具5には軸心を挟んだ対向位置に第1の溝8と第2の溝9が形成され、第1の溝8は図2に示されるように筒状金具5の軸方向と直交する方向に形成されるコ字形の溝部81と、該コ字形の溝部81の一端からロッド一端側に向けて軸方向に形成される鉤溝82からなっている。また第2の溝9は図3に示されるように、幅広の角溝91と、該角溝91の両端からロッド一端側に向けて軸方向に形成される鉤溝92及び長溝93よりなり、幅広の角溝91と鉤溝92よりなる第2の溝9は、第1の溝8が丁度納まるサイズをなし、後述するピン62が第1の溝8内を移動するときに操作把手63が前記第2の溝9内を動きうるようにして、その動きを許容できるようにしている。なお、上述する長溝93は形成されていなくてもよい。
【0012】
ロッド6は、図4に示すように、一定の間隔を存して一対のフランジ61と、該フランジ間において径方向に突出するピン62及び小さな板状の操作把手63を有し、一対のフランジ61がガイドとなってロッド6は筒状金具5内を軸方向にスライドし、かつ回動できるようになっており、ピン62は前記第1の溝8に遊嵌して該溝8に沿って移動し、また操作把手63は第2の溝9に遊嵌し、鉤溝92に遊嵌しうるようになっている。
【0013】
バネ7はコイルバネで、筒状金具内に装着されてフランジ61に係合し、前記ロッド6をその一端が筒状金具5より突出する方向に付勢している。
【0014】
図1に示すように、平鋼よりなる主部材21と、並列する主部材21の両端に固定されるエンドプレート22と、主部材21と直交して固定されるクロスバー23よりなるグレーチング2は、左右において主部材21が一定区間切除され、各切除部分に納まる固定金具1はそれぞれ、フランジ51をグレーチング2のエンドプレート22に溶接にて固定することによりグレーチング2に第2の溝9を略上向きにして取付けられている。
【0015】
なお、受枠3には、図1に示すように、ロッド6の延長線上にロッド一端が嵌合する嵌合孔31を備えている。
【0016】
本実施形態の固定金具1は以上のように構成され、グレーチング固定時においてはピン62が第1の溝8の鉤溝82に(図2)、操作把手63が第2の溝9の鉤溝92に遊嵌し、ロッド6一端が受枠3の嵌合孔31を通り突出している(図5)。この状態よりグレーチング2の固定を解除するときには、第2の溝9の鉤溝92に遊嵌して横倒しとなっている操作把手63を手又は工具を用いて掴み、バネ7の作用に抗して横倒しのまま角溝91の溝端に当たる限度まで後退させ、鉤溝92より離脱させる。これに伴いピン62も鉤溝82より離脱する。同時にロッド6も後退して引込むが、その一端はなおも受枠3の嵌合孔31に嵌合したままである。
【0017】
操作把手63を鉤溝92より離脱させると、そのまま幅広の角溝91内を図5の右方向に回動させる。これにより操作把手63が起き上がりながらピン62がコ字形の溝部81に移動する。コ字形の溝部81の軸方向と直行する区間において、ピン62はバネ7の作用により溝の側壁面に押付けられて移動する。したがって操作把手63を図5の右方向へ回動させる際には、該把手63をバネ7の作用に抗して押込んだまま回動させる必要はなく、単に回動操作するのみでよい。操作把手63を幅広の角溝91の溝端に突き当たる限度まで回動させたのち、再度バネ7の作用に抗して角溝91の溝端に突き当たる限度まで押し込む。これによりピン62はコ字形部81の軸方向に沿う区間を移動する。操作把手63を角溝91の溝端に突き当たる限度まで押込むと(このときロッド一端は受枠3の嵌合孔31より離脱する)、その状態のまま図5の左方向へ回動させる。これに伴いピン62はコ字形の溝部81の軸方向と直交する区間を前記とは逆向きに移動する。この間、ピン62は前記と同様、バネ7の作用によりコ字形の溝部81の側壁面に押付けられて移動するため、操作把手63はバネ7の作用に抗して回動させる必要がなく、単に回動操作するのみでよい。
【0018】
操作把手63は回動に伴い倒れ、角溝91の溝端に突き当たる限度まで回動させると(図6)、横向きとなり、ピン62は上記区間端に達する。ピン62が該区間端に支持されることにより、ロッド一端は受枠3の嵌合孔31より離脱したまま支持され、固定の解除状態が維持される。左右の両固定金具1による固定が解除されたのち、グレーチングは脱着が可能となる。
【0019】
グレーチング2を受枠3に装着後、図6の状態より操作把手63を掴んで図の右方向に回動させると、ピン62もコ字形の溝部81の軸方向と直交する区間を移動し、ピン62が区間端に達すると、バネ7の作用によりコ字形の溝部81を軸方向に前進する。これにより操作把手63も角溝91内を前進すると共に、ロッド6も一定量突出する。操作把手63が角溝91端に達し、ピン62がコ字形の溝部81を軸方向に限度まで前進して移動すると、操作把手63を上記と逆向きに回動させ、ピン62をコ字形の溝部81の軸方向と直交する区間を移動させる。操作把手63を角溝91の溝端に突き当たる限度まで回動させ、鉤溝92に達すると、ピン62も鉤溝82に達し、バネ7の作用で鉤溝82に嵌合する。これと共に操作把手63も第2の溝9の鉤溝92に嵌合し、ロッド6も前進して、その一端を受枠3の嵌合孔に嵌合させる。左右の両固定金具1でロッド6一端を受枠3に嵌合させた状態で、グレーチング2が受枠3に固定される。
【0020】
本実施形態によると、ロッド端が受枠3の嵌合孔31に嵌合した状態で、ピン62が前述するような複雑な動きをしない限り、ロッド端が嵌合孔31より外れることはなく、固定状態が確実に維持される。また固定時には操作把手63を単に回動操作するだけでよく、固定解除時でも操作把手63をバネ7の作用に抗して押し動かして回動操作するだけでよいから、固定やその解除のための作業が容易である。操作把手63はまた、固定時には横向きに倒れ、グレーチング2より突出しないため、車両等の走行時に車両等と当たって車両等の走行に支障を来たしたり、歩行時につまずいたりするおそれがない。
【0021】
前述する実施形態の固定金具1は、排水桝の受枠3に装着されるグレーチング2に取付けられ、該グレーチング2を固定するようになっているが、側溝の受枠に装着されるグレーチングについても同様にして取付けられ、固定される。
前記実施形態ではまた、グレーチングは受枠に固定されるようになっているが、側溝又は排水桝に直接固定される。この場合にはしたがって、側溝又は排水桝に前記ロッド6の延長上に嵌合凹部が形成され、前記ロッド6が該嵌合凹部に嵌合される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】排水桝の受枠に装着されたグレーチングの平面図。
【図2】第1の溝を上向きにした固定金具の平面図。
【図3】第2の溝を上向きにした固定金具の平面図。
【図4】固定金具の断面図。
【図5】ロッド端が受枠の嵌合孔に嵌合して固定された状態でのグレーチングの要部の拡大平面図。
【図6】ロッド端が受枠の嵌合孔より離脱して固定が解除された状態でのグレーチングの要部の拡大平面図。
【符号の説明】
【0023】
1・・固定金具
2・・グレーチング
3・・受け枠
5・・筒状金具
6・・ロッド
7・・バネ
8・・第1の溝
9・・第2の溝
21・・主部材
22・・エンドプレート
23・・クロスバー
51、61・・フランジ
62・・ピン
63・・操作把手
81・・コ字形の溝
82、92・・鉤溝
91・・角溝
93・・長溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝や排水桝に直接又は側溝や排水桝に取着の受枠に装着されるグレーチングを前記側溝や排水桝又は受枠に着脱可能に固定するための固定金具であって、グレーチングに固定される筒状金具と、該金具に回動かつ軸方向にスライド可能に嵌挿され、一端が筒状金具より突出して前記側溝や排水桝又は受枠に形成の嵌合凹部又は嵌合孔に嵌合可能なロッドと、前記筒状金具に装着されて前記ロッドをその一端が筒状金具より突出する方向に付勢するバネと、前記筒状金具に形成される第1及び第2の溝と、前記ロッドより径方向に突設され、前記第1の溝に移動可能に嵌挿されるピン及び前記第2の溝に移動可能に嵌挿されて突出する操作把手とよりなり、前記第1の溝は筒状金具の軸方向と直交する方向に形成されるコ字形の溝部と、該コ字形の溝部の一端からロッド一端側に向けて軸方向に形成される鉤溝を備え、前記ピンが前記バネの作用に抗してコ字形の溝部内を溝端まで後退すると、ロッド一端が受枠の嵌合孔より離脱するようになっており、また前記第2の溝は前記ピンが第1の溝に沿って移動するときの操作把手の動きを許容するように形成されることを特徴とするグレーチングの固定金具。
【請求項2】
前記筒状金具はグレーチング内に横向きに固定され、前記ピンが第1の溝の鉤溝に位置するとき、前記操作把手は横ないし略横向きに倒れてグレーチングより突出しないようにしたことを特徴とする請求項1記載のグレーチングの固定金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−191533(P2009−191533A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34099(P2008−34099)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【出願人】(393013618)光海陸産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】