説明

グレーチング用受枠の支持構造

【課題】 固化後のコンクリート内に残す異物をできるだけ少なくし、型枠の歪みの影響を受けずに、作業効率良く、設置するグレーチング受枠の高さ調整に自由度があり、容易にアングル材を歪みなく構築可能なグレーチング用受枠の支持構造を提供する。
【解決手段】グレーチング用受枠の支持構造は、型枠面の所定の高さ位置に取り付けられる主部材と、該主部材に係止されるアングル材を支保する補助部材とからなり、前記主部材は対向するアングル材同士を所定幅に決定する斉一決定手段を備えており、該斉一決定手段は主部材と分離可能な部材であって対向する主部材間を架け渡してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側溝や横断溝の構築時における、鋼材を格子状に組んだグレーチング用受枠の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路には排水目的でこれに沿って或いはこれを横断して側溝が設けられており、その開口部には鋼製のグレーチングが敷設されている。このとき、グレーチングを安定的に支持するため、側溝の両側縁部にL型の鋼材(以下、アングル材と称す。)をグレーチング用の受枠として側溝構築時に設けるのが一般的である。
【0003】
このようなグレーチング用受枠は、所望の側溝構築場所に型枠パネルを設置し、該型枠パネル内に打設したコンクリートとアングル材とを一体的に構築して得られる。このとき、隣接するアングル材同士は一直線に、かつ前後の傾きがなく、また、対向するアングル材同士は並行であるという斉一な設置が要求される。
図19(a)に示すように、コンクリート固化後においてアングル材に歪みなく構築することが求められるところ、図19(b)(c)に示すように、一方のアングル材でも歪んだ状態でコンクリートが固化すると、グレーチングにガタつきが生じ、この上を車や人が通過すると異音を発する原因となる。また、図19(d)のようにアングル材の間隔が開く方向に許容範囲を超えるズレを生じた場合は、アングル材のボルトとグレーチングのボルト孔とが合わなくなり、図19(e)に至ってはグレーチングが嵌らず、最悪再工事を迫られることとなる。
【0004】
なお、現実問題として、隣接するアングル材同士は一直線に、かつ前後の傾きがなく、また、対向するアングル材同士は並行であるという斉一な設置が要求される上、その誤差は数ミリ単位で収める必要がある。また、作業の一層の効率化が兼ねてより望まれている。
【0005】
特許文献1のグレーチング受け枠用ブラケットに係る発明は、側溝構築時において用いられ、受け枠施工の工期短縮を目的としたブラケットである。その大部分がコンクリート内に埋設されることを考慮して、錆びないABS樹脂を素材とした大量生産可能な成形品である。
【0006】
また、特許文献2のグレーチング受枠の位置決め装置に係る発明は、巾出し杆30の両端において、取付け片10、グレーチング受枠e、そして遮蔽版bが各種ボルトで一体的に固定されたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4157561号公報
【特許文献2】実開昭60−195378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の発明によれば、固化後のコンクリート内に異物を多く残すこととなる。即ち、当該発明の垂直片12は、薄肉の根元部20で折れて水平受け部11から分離する構成となっており(段落「0041」)、ブラケット本体中、垂直片12以外のすべての部分はコンクリート内に留まることとなる(図9・図10)。当該ブラケットはABS樹脂という錆びない素材を使用しているが、コンクリート内への異物の混入は、強度面や耐久性からも、より少なくすることが望まれる。
【0009】
また、特許文献1の発明によれば、コンクリート固化時の圧力を受けてアングル材が前又は後に傾いてしまう点が指摘されてきた。この理由は、ブラケットというアングル材を支える部材の強度不足が一因であると考えられる。前述のとおり、当該発明の垂直片12は、薄肉の根元部20で折れて水平受け部11から分離する構成であるが(段落「0041」)、実際にはこの肉薄部がブラケットの必要な強度を奪う結果、載置したアングル材の重みに耐え切れずブラケットが撓るという現象が指摘されてきた。ブラケットが撓った状態でコンクリートが固化した場合には、図19(b)のようにアングル材が傾いてしまい、グレーチングのガタつきの原因となっていた。
【0010】
側溝構築時には、複数本のアングル材を隣接及び対向して型枠へ設置することになるが、当該発明を使用する場合、その個々のアングル材について傾くことがないように、隣接するアングル材同士を溶接して互いに固定しつつ、アングル材と外側の型枠とを棒状部材や桟木で突っ張らせるなどして、すべてのアングル材に歪みが出ないよう現場で追加的な作業を余儀なくされてきた。
【0011】
特許文献1の発明は、型枠の歪みの影響を受けやすい。また、型枠の歪みに対してコンクリート打設前に対処できる工夫がなされていない。
この種の型枠は、経済的、資源的な理由から再利用が繰り返されるのが一般的である。多用される1本2mのアングル材の重量は10.9Kgであるが、型枠は使用されるたびにこの重量を受けることになるため、型枠自体が歪んでしまっているのが現状である。
当該発明は、開示されているようにブラケットを型枠に取り付けた後、水平受け部11にアングル材を載せる態様であるが、歪んだ型枠を使用した場合には、当該ブラケットを介してアングル材にその歪みの影響が出て、アングル材が前後に傾くという点が指摘されてきた。また、再利用の型枠表面には前回工事のコンクリートが付着していることも多く、ブラケットがこの付着しているコンクリートの影響を受けて歪むと、アングル材が傾くことも指摘されてきた。
そもそも、当該発明は型枠が歪んでおらず、コンクリートも付着していない新品の型枠を使用することを前提としているため、型枠から受ける種々の影響を考慮した構成とはなっていない。しかし、前述のとおり、この種の側溝を構築するにあたっては、ミリ単位の精度が求められるのであって、再利用の型枠にはこれを超える歪みやコンクリート付着物が多いのが現状なのである。
【0012】
特許文献2の発明についても、アングル材は型枠の歪みの影響を受けやすい。 当該発明は、グレーチング受枠e、即ち本願でいうアングル材が、ナット23により取り付け片に固定され、該取り付け片は枠桟dを介して固結ボルト20で型枠へ固定されるとともに、位置決めボルト18が型枠の上端に固定される構成である。かかる構成は、特許文献1に開示された発明と同様に再利用の型枠を使用することの問題点、即ち歪みや、コンクリートの付着に対する事前の工夫はなされていない。
【0013】
また、特許文献2の発明によれば、遮蔽板(型枠)を立設した後、コンクリートの打設前までの工程、即ち、巾出し杆30、取付片10,10、グレーチング受け枠eその他必要な各部材を遮蔽板bの上端で組み上げる工程を作業員一人で実施するのは困難である。いずれかの作業においては、必ず複数の作業員が協力して一つの作業を行う必要があるため効率が悪い。
【0014】
また、特許文献2の発明は、グレーチング受枠の高さ調整が限定的である。当該文献第4頁<作用>の欄の記載によれば、「嵌装部の上面に設けた前記位置決めボルトでグレーチング受枠eの高さ位置調整をし、・・・このため前記遮蔽板bの高さが溝路aに沿ってバラ付きがあっても位置決めボルトによって調整が可能となる。」と開示する。しかし、かかる構成によれば、位置決めボルトの長さ以上の調整は不可能である。仮に長軸のボルトを使用したとしても著しく安定性を欠く上、ときにボルトの長さでは調整できないほど下方位置にグレーチング受枠を設置することもあり、当該発明はそのような場合に対応できない。
さらに、坂道に設ける側溝工事の場合、矩形の型枠を勾配に沿って階段上に並べることとなるが、この場合、型枠の上端とグレーチング受枠を設置する高さは均一ではない。当該発明を利用した場合、ボルト長で調整できる箇所と、調整できない箇所とが発生する可能性があり、坂道での側溝工事には利用しづらい。
【0015】
また、特許文献2の発明は、コンクリート打設時を考慮した巾出し杆の構成となっておらず、作業効率を妨げる要素が残されている。この種の構築工事においては、コンクリート打設時に溝路内にコンクリートが流れないように板材で蓋をするところ、特許文献2の発明によれば、ジョイント部分ごとに蓋を分割しなければならず、当該作業が非常に煩雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明はグレーチング受枠構築時に隣接及び対向するアングル材を支持する構造として次の特徴を有する。即ち、当該発明は、型枠面の所定の高さ位置に取り付けられる主部材と、該主部材に係止されアングル材を支保する補助部材とからなり、前記主部材は対向するアングル材同士を所定幅に決定する斉一決定手段を備えており、該斉一決定手段は主部材と分離可能な部材であり、対向する主部材間を架け渡してなる主部材と別体的な斉一決定手段、又は主部材を延長して設けてなる延設部が、対向する主部材の延設部と継合してなる主部材と一体的な斉一決定手段から選択されることを特徴とする。
【0017】
別体的な斉一決定手段とは、本発明を実施するにあたり、主部材と完全に分離することを予定した部材、部品その他所望の効果を奏する構造をいい、主部材とは材質の異同を問わない。対向する主部材間に架け渡すことで、アングル材同士を所定の間隔に決定する。該手段の機能発揮を妨げない限り、その形状や素材に制限を課すものではない。
【0018】
一体的な斉一決定手段とは、主部材と、主部材から延長して若しくは主部材に一体的に固定して構成される延設部とを含めた構造をいい、該延設部は主部材と分離することを予定しない。対向する主部材の同延設部同士を継合することで、アングル材同士を所定の間隔に決定する。該手段の機能発揮を妨げない限り、その形状や素材に制限を課すものではない。
【0019】
上記構成、即ち、主部材と別部材の補助部材を採用した構成により、解体時には補助部材の一部のみをコンクリート内に残こすこととなることから、「固化後のコンクリート内に異物を多く残さない。」という課題を解決することができる。この点については、後に詳述する。
【0020】
また、別体的な斉一決定手段又は一体的な斉一決定手段を設けた構成により、「型枠の歪みの影響を受けにくくする。」或いは「コンクリート打設前に事前に対処する。」という課題を解決することができる。
即ち、斉一決定手段を対向する主部材間に架け渡すこと、或いは対向する主部材間において互いの延設部を継合することで、アングル幅は強制的に決定することから型枠の多少の歪みは矯正される。また、求められる精度を超える型枠の歪みがあった場合や、コンクリートが付着している場合には、そもそも斉一決定手段が架け渡すことができず、また、延設部を所定の長さに固定できない。したがって、コンクリートの打設前に型枠を交換するなど、アングル材を所定幅に設定できない原因を予め除去する対策を講じることができる。
【0021】
また、上記構成によれば、後述するように個々の構成要素を順次組み上げていくことで、主部材の取り付けからアングル材の設置までを単独で作業できることから、「作業効率が悪い。」という課題を解決することができる。
【0022】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成において、主部材が型枠面の所定の高さ位置に取り付けられる垂直片と、該垂直片の略中央部より直角に立ち上げられた主係止片とからなるとともに、補助部材が前記主係止片に係合する副係止片と、該副係止片の下端に水平に配されアングル材を載せる載置片と、アングル材の起立片を補助するガイド片とからなる構成であって、前記主部材と前記補助部材とが係止固定手段により相互に固定されることを特徴とする。
【0023】
ここで、係止固定手段とは、主部材の主係止片と補助部材の副係止片とを係止固定する手段をいい、両片が係止するとともに、固定後は載置片へアングル材を載せてもこの係止状態が解除されない構成であれば、いかなるものでもよい。
【0024】
係止固定手段の具体例としては、例えば、次の例が考えられる。
・主係止片に凹部を、副係止片にこれに嵌合する凸部を一組以上配した例、
・主係止片に凸部を、副係止片にこれに嵌合する凹部を一組以上配した例、
・主係止片に孔部を、副係止片にこれに嵌合する凸部を一組以上配した例、
・主係止片に凸部を、副係止片にこれに嵌合する孔部を一組以上配した例、
・これらを組み合せてなる例
と、
・主係止片の一端と副係止片の一端とを挟持する例、
・主係止片の一端に、副係止片の一端を掛止する部位を設けた例、
・副係止片の一端に、主係止片の一端を掛止する部位を設けた例
とを組み合せてなる手段である。
【0025】
また、その他の具体例として、次の例が考えられる。
主係止片と副係止片に相挿通する一組以上の挿通孔を設けた構成であって、副係止片の孔の周囲に主係止片の孔の内径に嵌合するフランジを主係止片の厚みだけ立ち上げることで、これをもって副係止片を主止片に係止させ、両片を相重ねた後、両孔を挿通するボルト及びこれを螺着するナットにより固定する構成としてもよい。
また、上記とは逆に、主係止片の孔の周囲に副係止片の孔の内径に嵌合するフランジを副係止片の厚みだけ立ち上げることで、これをもって副係止片を主止片に係止させ、両片を相重ねた後、両孔を挿通するボルト及びこれを螺着するナットにより固定する構成としてもよい。
【0026】
かかる構成により、引用する請求項による作用に加え、主係止片と副係止片との係止が容易となり、かつ確実に両片を固定するという作用をもたらす。
【0027】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構成において、主部材の垂直片には、水平方向に細長の切込孔と、補助部材の副係止片の一辺に係合する補助部材係合子が設けられたことを特徴とする。
【0028】
ここで、水平方向の細長の切込孔とは、主係止片を挟んで左右に配し、地面に対して水平に設けた、釘が通る程度の幅で設けた横長溝状の孔をいう。当該左右の切込孔を介して釘で主部材を型枠の所定の高さ位置へ仮止めするが、打ち込んだ後、主部材が左右に動く程度の余裕を持って取り付ける。設ける位置は垂直片の形状に応じて所要幅が確保できれば、上部、中ほど、下部の別は特に限定しないが、下部に設けておくと主部材の取り付け高さ位置に関わらず利用できることから好ましい。また、一本のみならず複数本設けてもよい。
【0029】
また、補助部材係合子とは、主係止片に副係止片を相重ね合わす場合において副係止片の一辺に係合させるため、垂直片上の主係止片近傍に設けた突起状の部位であり、副係止片を係合できる構造であればどのような構造であってもよい。
【0030】
かかる構成により、引用する請求項による作用に加え、アングル材をアングル載置片に載せる際に左右に動かせるような遊びをもたらすとともに、主係止片と副係止片との係合を確実、かつ容易なものとするという作用をもたらす。
【0031】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の構成において、補助部材の載置片には、平面視において、主部材の垂直片の下部に近接する一辺の両角に欠切部が設けられ、補助部材の副係止片には、載置したアングル材の端部を載置片又はガイド片との間で挟持するアングル係合子が設けられたことを特徴とする。
【0032】
欠切部を設けた理由は、係止固定手段や補助部材係合子を設けた関係上、補助部材を主部材に取り付ける際に、部位間の干渉を避けるために副係止片を斜め方向から組み合せる必要があるところ(図5)、その場合に載置片の一辺の角が型枠に干渉しないようこれを切り欠いたものである。なお、少なくとも干渉する一角を切り欠けばよいが、アングル材を容易に載置できる点、重量バランスを考慮して他方の角共々切り欠いてもよい。
【0033】
かかる構成により、引用する請求項による作用に加え、部材間の干渉を避け、アングル材を安定的に支持する作用をもたらす。
【0034】
請求項5に係る発明は、請求項2乃至請求項4に記載の構成において、主部材の主係止片と補助部材の副係止片が、互いに嵌合すべく嵌合手段を具備し、係止固定手段が副係止片に設けられ、主係止片の端部に掛止する構造であることを特徴とする。
【0035】
ここで、嵌合手段とは、主係止片と副係止片とが嵌合する構造であればいかなるものでもよい。例えば、前述に掲げたようように、凹部と凸部、孔部と凸部を組み合せて設けることができる。
【0036】
前記嵌合手段と、係止固定手段とからなる構成により、引用する請求項による作用に加え、主係止片と副係止片とを容易に係止させ、かつ確実に両片を固定する作用をもたらす。
【0037】
請求項6に係る発明は、請求項2乃至請求項4に記載の構成において、主係止片及び副係止片を連通するボルト孔が設けられ、係止固定手段が、前記ボルト孔を介して螺合する一対のボルト及びナットであることを特徴とする。
【0038】
かかる構成により、引用する請求項による作用に加え、主係止片と副係止片とを確実に固定するという作用をもたらす。
【0039】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6に記載の構成において、別体的な斉一決定手段が、伏せコ字状若しくは逆U字状をなしたアーチ部材であって、該アーチ部材の脚部間は対向する主部材間を架け渡す所要の幅を具備し、主部材に該アーチ部材の脚部を挿入する中空のアーチ支持部を備えたことを特徴とする。
【0040】
ここで、伏せコ字状若しくは逆U字状をなしたとは、主部材間を架け渡すアイーチ部材の脚部が、設置状態において間隔A(図1)に、所要の長さを確保した構成を重視した形状を意味する。間隔Aに所要の長さを確保する目的は、コンクリート打設時に溝路s内にコンクリートが流れないように板材で蓋をするところ(図8)、途中で板材を繋ぎ合わせることなく効率的に当該作業を進めることができるよう一定の空間を確保する趣旨である。かかる特徴を備えていればアーチ部材全体の形状は伏せコ字状、逆U字状に限らない。なお、本発明に係る脚部の長さは30cm〜40cm程度あれば所望の空間を確保することができるが、状況に応じて変更することとしてよい。
【0041】
また、所要の幅とは、通常、要求される20cm〜30cmの側溝幅を想定したものであるが、本発明の技術的特徴を損なうことなくその効果を発揮しうるのであれば、実施場所の要求に応じた幅とすることができる。
【0042】
かかる構成により、引用する請求項による作用に加え、対向するアングル材同士を所定幅に決定すると同時に、アーチ脚部が所要の空間を確保するため、前記「グレーチング受枠の高さ調整が限定的である。」及び「作業効率を妨げる要素が排除されていない。」という課題を解決することができる。
【0043】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項6に記載の構成において、一体的な斉一決定手段が、主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において筒状体とし、対向する主部材延設部の筒状体へ嵌装することで入れ子構造を形成し、締結手段により固定可能な構成とし、又は主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において板状体とし、対向する主部材延設部の板状体と締結手段により固定可能な構成としたことを特徴とする。
【0044】
延設部とは、主部材から上方若しくは略上方へ伸びた後、水平方向若しくは略水平方向にさらに延長してなる部位を指す。
「主部材から上方若しくは略上方へ伸びた」とは、設置状態において間隔B(図17)に、所要の長さを確保した構成であることを意味する。その趣旨は前記間隔Aで言及したとおりであり、長さに関しても同様である。
また、「水平方向若しくは略水平方向にさらに延長して」とは、設置状態において間隔C(図17)に、側溝幅に対応しうる所要の長さを備えた構成であることを意味する。ここでいう所要の幅とは、通常、要求される側溝幅を想定したものであるが、本発明の技術的特徴を損なうことなくその効果を発揮しうるのであれば、実施場所の要求に応じた幅とすることができる。
【0045】
端部を所要長において筒状体としとは、延設部の端部に、対向する主部材から延設された延設部端部と入れ子構造により締結すべく形成した筒状体であって、側溝幅に合わせて両端部を固定する際に調整可能な構成としたことを指す。なお、少なくとも端部において筒状体であればよく、延設部全体を筒状体とすることを妨げるものではない。
【0046】
また、板状体とは、前記円筒状とした延設部の端部形状の代用形態である。少なくとも端部において板状体であればよく、延設部全体を板状体とすることを妨げるものではない。
【0047】
締結手段により固定可能な構成とは、両延設部先端の円筒状体又は板状体を互いに固定し、型枠解体時にこれを解除できる手段又は構成であればいかなるものでもよい。例えば、円筒状体に互いに挿通するボルト挿通孔を設けた構成とし、これを介して一対のボルト及びナット又は一対の蝶ボルト及び蝶ナットで固定するという態様が考えられるが、類似する作用を奏する手段及び構成であれば、上記以外の構成であってもよい。
【0048】
上記構成により、引用する請求項による作用に加え、対向するアングル材同士を所定幅に決定すると同時に、延設部が所要の空間を確保するため、前記「グレーチング受枠の高さ調整が限定的である。」及び「作業効率を妨げる要素が残されている。」という課題を解決することができる。
【0049】
請求項9に係る発明は、請求項7に記載の構成において、アーチ部材と主部材に位置矯正手段を設けたことを特徴とする。
【0050】
ここで、位置矯正手段とは、主部材及び補助部材を介して対向するアングル材同士の位置を歪みなく決すべく、アーチ部材の脚部と主部材のアーチ支持部に夫々設けた構成であって、脚部に設けた構成とアーチ支持部に設けた構成とが唯一の位置に関わり合う手段、若しくは所定の目的の下、特定の位置に関わり合う手段であればいかなるものでもよい。
【0051】
具体的には、例えば、前記脚部の下方に凸部を設け、アーチ支持部の挿入孔の縁にこれに嵌合する凹部を形成した構成のほか、前記脚部の外形とアーチ支持部の挿入孔の内径とが嵌合する構成が考えられる。
【0052】
上記構成により、引用する請求項による作用に加え、アーチ部材を主部材のアーチ支持部へ挿入すると同時に、対向するアングル同士の位置を歪みなく決定する作用をもたらすことで、前記「作業効率が悪い。」という課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0053】
請求項1に記載のとおり構成されたグレーチング用受枠の支持構造によれば、主部材と別部材である補助部材を採用した構成により、固化後のコンクリート内に残すこととなる異物を極力少なくすることが可能となる。
本願はアングルを支持する部材として、主部材と、一部がコンクリートに埋設される補助部材の2部材を要する。一方、先行技術文献1においては、アングルを載せる部材はブラケット一つである。
土木建築工事などの作業効率は工事完了に至る必要工程数、即ち、工事金額を左右するものであるから、先ずは必要部材点数をできるだけ少なくしようとするものである。しかし、本願発明者は先行技術文献1に開示されたブラケットに相当する部材を敢えて2部材とした。その意図するところは、固化後のコンクリート内に残すこととなる異物を極力少なくすることで、側溝を造成するコンクリートの耐久性を向上させようとする点にある。
【0054】
また、別体的な斉一決定手段又は一体的な斉一決定手段を設けた構成により、多少の型枠の歪みやコンクリートの付着であればこれらを排除でき、また、型枠の歪みなどが許容範囲外にある場合には、コンクリートの打設前に型枠を交換するといった事前の対処が可能になる。
【0055】
また、上記個々の構成要素を順次組み上げていくことで、主部材の取り付けからアングル材の設置までの作業を単独で可能にすることから、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0056】
なお、請求項1に記載の構成要件に加え、主部材を、型枠面に取り付けられる垂直片と、該垂直片の略中央部より直角に立ち上げられた主係止片とからなる構成とし、補助部材を、前記主係止片に係合する副係止片と、該副係止片の下端に水平に配され、アングル材を載せる載置片と、アングル材の起立片を補助するガイド片とからなる構成とし、前記主部材と前記補助部材とが係止固定手段により相互に固定される構成としたときは、主係止片と副係止片との係合を確実なものとするため、結果、アングル材の歪みを防止することができる。
【0057】
また、請求項2に記載の構成要件に加え、主部材の垂直片に水平方向に細長の切込孔を設けたときには、アングル材をアングル載置片に載せる際に左右に動かせるような遊びをもたらし、アングル材の設置作業が容易となる。そして、補助部材の副係止片の一辺に係合する補助部材係合子を設けたことで、主係止片と副係止片との係合をより確実なものとするため、結果、アングル材の歪みを防止することができる。
【0058】
また、請求項2に記載の構成要件に加え、補助部材の載置片に平面視において主部材の垂直片の下部に近接する一辺の両角に欠切部を設けたときには、部材間の干渉を避けることから、効率的に作業を進めることができる。そして、補助部材の副係止片に載置したアングル材の端部を載置片又はガイド片との間で挟持するアングル係合子を設けたときには、アングル材を安定的に支持することから、結果、アングル材の歪みを防止することができる。
【0059】
また、請求項2乃至4に記載の構成要件に加え、主部材の主係止片と補助部材の副係止片に互い嵌合すべく嵌合手段を具備し、係止固定手段が副係止片に設けられて主係止片の端部に掛止する構造としたときには、前記嵌合手段が主係止片と副係止片とを容易に係止させ、係止固定手段が確実に両片を固定する作用をもたらすことから、効率的に作業を進めることができる。
【0060】
また、請求項2乃至4に記載の構成要件に加え、主係止片及び副係止片を連通するボルト孔を設け、係止固定手段を前記ボルト孔を介して螺合する一対のボルト及びナットとしたときには、主係止片と副係止片とを確実に両片を固定する作用をもたらすことから、アングル材の歪みを防止することができる。
【0061】
また、請求項1乃至6に記載の構成要件に加え、別体的な斉一決定手段を、伏せコ字状若しくは逆U字状をなしたアーチ部材とし、該アーチ部材の脚部間は対向する主部材間を架け渡す所要の幅を具備し、主部材に該アーチ部材の脚部を挿入する中空のアーチ支持部を設けたときには、架け渡されたアーチ部材により、対向するアングル材同士を斉一に位置決定し、また、アーチ脚部が所要の空間を確保することから、グレーチング受枠の高さ調整により自由度が加わり、かつ、効率のよく作業を進めることが可能となる。
【0062】
また、請求項1乃至6に記載の構成要件に加え、一体的な斉一決定手段を、主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において筒状体とし対向する主部材延設部の筒状体へ嵌装することで入れ子構造を形成し締結手段により固定可能な構成とし、又は主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において板状体とし対向する主部材延設部の板状体と締結手段により固定可能な構成としたときには、締結された延設部により、対向するアングル材同士を斉一に位置決定し、また、アーチ脚部が所要の空間を確保することから、グレーチング受枠の高さ調整により自由度が加わり、かつ、効率のよく作業を進めることが可能となる。
【0063】
なお、請求項7に記載の構成要件に加え、アーチ部材と主部材に位置矯正手段を設けたときには、アーチ部材を主部材間に架け渡すと直ちに、対向するアングル材同士を斉一に位置決定することから、作業効率の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の模式図である。
【図2】(a)主部材の正面図である。 (b)主部材の背面図である。 (c)P−P端面図である。
【図3】(a)主部材の右上方斜視図である。 (b)主部材の左上方斜視図である。
【図4】(a)補助部材の右上方斜視図である。 (b)補助部材の左上方斜視図である。
【図5】(a)補助部材を主部材に係止する状態を示す説明図である。 (b)補助部材を主部材に係止する状態を底面からみた説明図である。
【図6】(a)載置片にアングル材を載せる状態を示す図である。 (b)載置片にアングル材を載せた状態を示す部分拡大図である。
【図7】第一の実施形態の説明図である。
【図8】コンクリート打設時の縦断面図である。
【図9】型枠解体時に副係止片を折り曲げて分離させる態様を示す図である。
【図10】(a)第一の実施形態の変形例に係る補助部材の右上方斜視図である。 (b)第一の実施形態の変形例に係る補助部材の左上方斜視図である。 (c)第一の実施形態の変形例に係る補助部材の右側面図である。 (d)Q−Q拡大端面図である。
【図11】第一の実施形態の変形例に係る押止部の説明図である。
【図12】第一の実施形態の変形例に係る係止固定手段の説明図である。
【図13】第一の実施形態の変形例に係る係止固定手段の説明図である。
【図14】第一の実施形態の変形例に係るアーチ支持部の説明図である。
【図15】第一の実施形態の変形例に係る位置矯正手段の説明図である。
【図16】第一の実施形態の変形例に係る位置矯正手段の説明図である。
【図17】第二の実施形態の説明図である。
【図18】第二の実施形態の変形例の説明図である。
【図19】グレーチング敷設状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
〔第一の実施形態〕
以下、図1〜図9を参照して、本発明の第一の実施形態について説明する。
図1は本発明の模式図を示す図である。図2、図3は主部材を示す図であって、図2(a)は正面図、図2(b)は背面図、図2(c)はP−P端面図を夫々示し、図3(a)は右上方斜視図、図3(b)は左上方斜視図を示す。図4(a)は補助部材の右上方斜視図、図4(b)は補助部材の左上方斜視図を示し、図5(a)は補助部材を主部材に係止する状態を示す説明図、図5(b)は補助部材を主部材に係止する状態を底面からみた説明図である。図6(a)は補助部材の載置片上にアングル材を載せる状態を示す図であり、図6(b)は載置片にアングル材を載せた状態を示す部分拡大図である。そして、図7は第一の実施形態の説明図、図8はコンクリート打設時の縦断面図、図9は型枠解体時に副係止片を折り曲げて分離させる態様を示す図である。
【0066】
〔主部材〕
主部材10aは、垂直片11a、主係止片12a、アーチ支持部13aから構成される(図2、図3)。主部材は厚み4mmの鋼板を所望の形状に加工してなるが、本実施形態における主部材と同等の作用効果を発揮する限り、厚みや材料、加工法は問わない。例えば、材料は金属であってもよく硬質合成樹脂であってもよい。
【0067】
垂直片11aは、切込孔111、補助部材係合子112、目盛113、小孔114、中心線115、傾斜部116、空間アを設けてなる。主係止片12aには孔部121が、アーチ支持部13aには挿入孔131が夫々設けられている。本実施形態において、垂直片11aは、縦長の二等辺三角形をなしているが、形状はこれに限られない。
【0068】
本実施形態における主部材各部の特徴は次のとおりである。
切込孔111は、垂直片11aの下部に主係止片12aを挟んで水平方向に左右に一本ずつ設けられている。当該切込孔111を介して釘n1を型枠へ打ち込み、補助部材へのアングル載置時に主部材10aごと左右に動く程度に仮止めすべく設けたものである(図6)。
【0069】
補助部材係合子112は、垂直辺11a上に設けられ、正面視において主係止片12aの右側に2箇所配置し、後述する補助部材20aの副係止片21aとの係合に備える(図2)。
【0070】
目盛113(図2(a))は、主部材の取付高さ位置を表した型枠面に引かれた水平の墨出し線に合わせるために設けたものである(図5(a))。本実施形態のように作業に有意な所定の数字を表示させてもよい。
【0071】
小孔114(図2、図3)は、垂直辺11の左右各片に夫々3箇所ずつ設けた。コンクリート打設時に使用するバイブレータ機の振動による位置ズレを防止するために、アングル材を載せた後で小孔114を介して釘n2で主部材を型枠へ打ち込むこととしたものである(図7)。小孔の数は任意に変更してよく、振動によるズレを防止できれば左右各片に夫々1箇所ずつとしてもよい。
【0072】
中心線115(図2(b))は、主部材の裏面、即ち型枠面に接する面に、地面に対して垂直方向に引いた線である。グレーチング用受枠の構築時にはアングル材を複数本連続して並べて配置するが、内側の型枠設置後、アングル材のジョイント部分を主部材の取り付け位置としてマーキングを施す。本実施形態においては2mのアングル材を使用することから、内型枠の上端に2mおきにマーキングを施す(図5)。そして、そのマーキング位置に中心線115を合わせて主部材を順次取り付けてゆくが、主係止片12aは中心線115より正面視(アングル材載置側から見た方向)において若干左側にずらして配置する。これは、副係止片21aが、主係止片12aの右側に係止されたときに中心にくるように配慮したものである。
【0073】
傾斜部116(図3)は、垂直片の下辺に主係止片を挟んで左右端部に夫々所定長に亘って傾斜を設けた部位を指す。その角度xは凡そ10度〜25度程度とし、本実施形態では10度の傾斜とした。後述するが、傾斜部116は、アングル材を補助部材の載置片22上へ載せる作業を容易にするために設けた工夫であり、曲線状に設けてなる構成としてもよい。
【0074】
空間ア(図2、図3)は、主部材が鋼板を素材とすることから軽量化を図る目的で、かつ指に掛けて主部材の取扱いを容易とするために設けたものである。その形状、部位、領域は図示されたものに限られない。
【0075】
孔部121(図3)は、主係止片12aに3箇所設けてなり、後述する補助部材12aの副係止片21aに設けた嵌合凸部211と嵌合する(図7)。
【0076】
挿入孔131は、アーチ部材30の脚部33aを挿入すべく、アーチ支持部13aを少なくとも端部から所要長に亘り、筒状に形成したものである。
【0077】
〔補助部材〕
補助部材20aは、副係止片21aと、載置片22と、ガイド片23から構成される(図4)。副係止片21aは主部材10aの主係止片12aと係合し(図5)、載置片22はアングル材200の水平片201を載せ、ガイド片23はアングル材200の起立片202を支持する構成となっている(図6)。補助部材の素材はABS樹脂とし、射出成型により所望の形状を得る。なお、本実施形態における補助部材と同等の作用効果を発揮する限り、材料、加工法は問わない。
【0078】
副係止片21aには嵌合凸部211、アングル係合子212、ツメ部213が設けられ、載置片22には切欠部221が設けられている(図4)。
【0079】
本実施形態における補助部材各部の特徴は次のとおりである。
嵌合凸部211(図4(a))は副係止片21aに片側にのみ3箇所設けてなり、前述の主部材10aの主係止片12aに設けた孔部121と嵌合する(図7)。
【0080】
アングル係合子212は副係止片21aの両側に夫々2箇所ずつ設けてなる(図4)。アングル係合子212は、載置するアングル材200の水平片201の端部を載置片22との間で挟持し、かつ、アングル材200の起立片202の端部をガイド片23との間で挟持する(図6)。
【0081】
切欠部221(図4)は、副係止片21aを主部材10aに対して斜め方向から組み合せるために載置片22の一辺の角を切り欠いて形成したものである(図5)。主係止片12aの孔部121や副係止片21aの嵌合凸部211、ツメ部213といった係止固定手段に係る構造や、垂直片11aの補助部材係合子112などを設けていることから、補助部材20aを主部材10aに取り付ける際に、各部材、部位の形状による干渉を避けるためである(図5)。
なお、本実施形態においてはアングル材を容易に載置できる点、重量バランスを考慮して載置片22の両方の角を切り欠いた。その角度yは凡そ30度〜45度程度とし、本実施形態では30度の角度に切り欠いた。
【0082】
〔アーチ部材〕
アーチ部材30は、横杆31と、補強杆32と、脚部33aから構成されている(図1)。アーチ部材30は、直径19mmの鉄製の棒を、公知の加工法により所望の形状に成型してなるが、本実施形態の作用効果を発揮できる素材であれば、直径や素材は特に限定しない。
【0083】
横杆31は主に作業時の把持部として、補強杆32は主に所定のアーチ幅が狂わないように補強の意味で設けてなるが、横杆31のみで所望の強度が得られるのであれば補強杆32を具備せずともよい。
脚部33aはアーチ支持部13aの挿入孔131へ挿入される。
【0084】
本実施形態によれば、図1に示すようなグレーチング用受枠の支持構造が完成する(型枠は省略した。)。
【0085】
本実施形態における、グレーチング用受枠の支持構造の施工例について説明する。なお、主部材を取り付けるステップ以前の工程、即ち、以下の工程は既に準備されているものとする。
1.側溝を構築する場所に予め内側の型枠101が組み立てられていること。
2.内型枠101の上端にアングル材のジョイント部がマーキングされていること。本実施形態においては、2m長のアングル材を用いることから型枠上端には2mおきにマーキングされているものとする。
3.主部材を取り付ける高さ位置を示す墨出線が引かれていること。
4.内型枠101面の所定の位置に、外側の型枠との間に設置するセパレータが取り付けられていること。
【0086】
施工法を概観すると、グレーチング受枠構築時における、主部材、補助部材、アーチ部材とからなる構成により隣接及び対向するアングル材を支持するグレーチング用受枠の施工法であって、
型枠面の所定の高さ位置に対向する各主部材を取り付けるステップ、
・該主部材に各補助部材を係止した後、前記主部材と前記補助部材とを係止固定
手段で固定してから、対向する主部材間にアーチ部材を架け渡すステップ、
又は
・対向する主部材間にアーチ部材を架け渡した後、該主部材に補助部材を係止
して、前記主部材と前記補助部材とを係止固定手段で固定するステップ、
前記補助部材にアングル材を載置するステップからなる
ことを特徴とするグレーチング用受枠の施工法である。
以下、詳述する。
【0087】
1.内型枠101上端にマーキングされたジョイント部と、主部材10aの裏面に示した中心線115とを合わせ、かつ、内型枠101に引かれた墨出線と、主部材10aの垂直片11に示した目盛113とを合わせる(図5(a)を引用して参照。)。
【0088】
2.上記主部材10aを内型枠101の所定の位置及び高さに合わせた状態で、主係止片12aの左右に配した切込孔111を介して夫々釘n1を型枠へ打ちつけることにより主部材10aを内型枠101へ仮止めする。なお、この場合、主部材10aが水平に動く程度に仮止めすることに留意する(図5(a)を引用して参照。)。
【0089】
3.補助部材20aを主部材10aに係止させる。その際、部位間の干渉を避けるべく斜め方向から組み合せる(図5(a))。このとき、載置片22の一辺の角を切り欠いたことで、内型枠101との干渉なく、斜め方向から組み合せることができる(図5(b))。
【0090】
4.主係止片12aの孔部121と、副係止片21の嵌合凸部211とが嵌合した後、副係止片21aに設けたツメ部213が主係止片12aの端部に掛止され、両片は固定されることとなる(図6、図7)。
【0091】
5.次に、アーチ部材30の脚部33aを、主部材10aのアーチ支持部13aの挿入孔131へ挿入する(図1、図7)。
【0092】
6.補助部材20aの載置片22へアングル材200を載せるとき、水平片201は主部材10aの垂直片11aの下端傾斜部116の下方から挿入するように載置され、水平片201の端部はアングル係合子212と載置片22の間に、起立片202の端部はアングル係合子212とガイド片23との間に夫々挟持される(図6)。
【0093】
7.アングル材200a(図7)を設置した後、引き続き、補助部材20aの載置片22へ隣接するアングル材200bを載せるが、水平片201は主部材10aの垂直片11aの傾斜部116の下方から挿入するように載置され、水平片201の端部はアングル係合子212と載置片22の間に、起立片202の端部はアングル係合子212とガイド片23との間に夫々挟持される(図7)。
【0094】
8.アングル材200を載置した後、小孔114を介して釘n2で主部材10aを内型枠101へ打ち込む。片側3箇所、計6箇所の小孔114のうち、片側1箇所若しくは2箇所、合計2箇所〜4箇所に釘を打ち込めば、バイブレータの振動に耐えうる(図7)。
【0095】
以上、対向して連続する主部材10aにおいても同様に、補助部材20a、アングル材200を夫々設置してグレーチング用受枠の支持構造が完成する。
【0096】
その後、外型枠102を組み立てて、内型枠101と外型枠102との間にコンクリートを打設するが、その際、溝路s内にコンクリートが流れ込まないように、対向する内型枠101間に板材で蓋をする(図8)。
【0097】
コンクリートが固化した後、アーチ部材30を撤去し、外型枠102及び内型枠101を夫々解体する。主部材10aの主係止片12aに固定された副係止片21aを、載置片22及びガイド片23から撤去する際には、主部材と一体化した副係止片21aをアングル材の長手方向に沿って左右に繰り返し傾けることで副係止片21aは、ガイド片23及び載置片22から分離され、切り離すことが可能となる(図9)。なお、図9では副係止片を除く他の要素(例えば、主係止片など)は便宜上省略して図示している。
以上の工程を経て、グレーチング用受枠を備えた側溝が完成する。
【0098】
なお、主部材10aを内型枠101へ取り付けた後、補助部材20aを取り付ける前にアーチ部材30を架け渡すこととしてもよい。
【0099】
本実施形態によれば、コンクリート内に残るのは補助部材のうち、載置片とガイド片のみとなることから、先行文献1に係るブラケットに比べて残存異物量を大幅に減らすことができた。
【0100】
また、アーチ部材を利用したことで、アングル材の支持を補強するばかりでなく、型枠の歪みの影響を受けにくいグレーチング用受枠の支持構造を提供することが可能となった。
【0101】
さらには、アーチ部材30の脚部33が所要の高さAを備えていることから、先行文献2などの従来技術に比べて、グレーチング受枠の高さ調整に幅広く対応できるようになり、作業効率も格段に向上した。
【0102】
そして、ボルト付きでないアングル材を使用してグレーチング用受枠を構築することも可能となった。
【0103】
〔変形例1〕
以下、図10を参照して、本発明の第一の実施形態における第一の変形例について説明する。
図10(a)は、本変形例に係る補助部材の右上方斜視図、同(b)は同左上方斜視図、(c)は同右側面図、(d)はQ−Q拡大端面図である。
【0104】
図中、214は肉薄部a、215は肉薄部b、216は分離孔である。その他の符号は前述の第一の実施形態と同じ対象を示す。
【0105】
型枠解体時、肉薄部a214、肉薄部b215、分離孔216を設けたことにより、主部材と一体化した副係止片21aをアングル材の長手方向に沿って左右に繰り返し傾け、副係止片21aをガイド片23及び載置片22から分離し、切り離す作業がより容易となった。
【0106】
なお、先行文献1に記載の発明のように垂直片と水平受け部の境界に設けた肉薄部1辺だけでアングル材を支える構造とした場合には、ブラケット本体が撓むという強度面での問題があった。しかし、同様に肉薄部を設けた本変形例においては強度面での問題はみられなかった。これは肉薄部a214と肉薄部b215という方向の異なる2辺において肉薄部を設けた構成としたことで、アングル材の荷重に十分耐えうる構造になったものと考えられる。
【0107】
〔変形例2〕押止部
以下、図11を参照して、本発明の第一の実施形態における第二の変形例について説明する。
図11は第一の実施形態の変形例に係る押止部の説明図である。図中、2121は押止部であり、その他の符号は前述の実施形態と同じ対象を示す。
【0108】
本変形例におけるアングル係合子212に設けた押止部2121が、アングル材200の水平片201と載置片22との間で、また、起立片202とガイド片23との間でより確実に支持することが可能となる。
なお、図11中、破線円で囲まれた箇所において、アングル材先端の上に主部材の垂直片11の下端が位置しているため、アングル材の先端が浮き上がることを効果的に防止する、即ち、図19(b)に示す状態となるのを防止する。
ここで、アングル材の先端と垂直片の下端との位置関係は本変形例にかかわらず、すべての実施形態、変形例において共通する。
【0109】
〔変形例3〕
以下、図12、図13を参照して、本発明の第一の実施形態における第三の変形例3について説明する。図12、図13は本変形例に係る係止固定手段の説明図である。本変形例は、係止固定手段の変形例に係るものである。
【0110】
〔変形例3−1〕
図12中、40はボルト、50はナット、122、217はボルト孔、211は嵌合凸部である。 本変形例における嵌合凸部211はボルト孔217の周りに主係止片12の厚み分の高さを有するフランジを設けてなる構成である。なお、図12は本変形例に直接関係のない部位は省略されている。
【0111】
主部材10bの主係止片12bにはボルト孔122が2箇所設けられ、補助部材の副係止片21bのボルト孔217と挿通する。本変形例における主部材の垂直片には補助部材係合子112はない(図示せず)。また、副係止片21bには前述のツメ部は要しない。さらに、補助部材係合子がないため、副係止片21bを主部材に対して斜め方向から組み合せる必要がなく、載置片には欠切部221を設ける必要がない(図示せず)。
【0112】
副係止片21bを主係止片12bに係合する際、嵌合凸部211をボルト孔122へ嵌合し、蝶ボルト40をボルト孔217及び122に挿通し、蝶ナットで螺着して両片を固定する。
【0113】
〔変形例3−2〕
図13中、40はボルト、50はナット、122、217ボルト孔である。本変形例においては嵌合凸部を具備しない。
【0114】
主部材10bの主係止片12bにはボルト孔122が2箇所設けられ、補助部材の副係止片21cのボルト孔217と挿通する。また、本変形例における主部材の垂直片にも補助部材係合子112はない(図示せず)。また、副係止片21cにはツメ部213を要しない。さらに、補助部材係合子がないため、副係止片21cを主部材に対して斜め方向から組み合せる必要がなく、載置片には欠切部221を設けていない。
【0115】
副係止片21cと主係止片12bとを、蝶ボルト40をボルト孔217及び122に挿通し、蝶ナットで螺着して両片を固定する。
【0116】
本変形例によれば、ボルト、ナットを要する反面、補助部材をシンプルな構成とすることができる。
【0117】
〔変形例4〕
以下、図14を参照して、本発明の第一の実施形態における第四の変形例について説明する。図14は本変形例に係るアーチ支持部の説明図であり、アーチ支持部13bの挿入開口部が外型枠の方へ向けて下方に傾斜していることを示す。
【0118】
本変形例によれば、アーチ部材の脚部33aを主部材のアーチ支持部13bへ挿入する作業が容易に行えることから、全体としての作業効率が向上する。
【0119】
〔変形例5〕
以下、図15を参照して、本発明の第一の実施形態における第五の変形例について説明する。図15は、本変形例に係る位置矯正手段の説明図であり、アーチ部材の脚部33bに設けた位置決め突起331が、アーチ支持部13cの挿入孔端部にこれに係合するV字の係合溝132を設けたことを示す。もちろんV字形状の係合溝に限られることはなく、半円形状、四角形状などその他の形状により、位置決め突起331と係合溝132とを係合させることとしても構わない。
【0120】
本変形例によれば、アーチ部材の脚部33bを主部材のアーチ支持部13cへ挿入するこで、微修正することなく対向するアングル材の所定幅を決定することができるため作業効率の一層の向上を図ることができる。
【0121】
〔変形例6〕
以下、図16を参照して、本発明の第一の実施形態における第六の変形例について説明する。本実施形態はアーチ部材の脚部の先端を所要長に亘って多角柱形状とし、アーチ支持部の内径をこれに嵌合する形状とするものである。
図16は、本変形例に係る位置矯正手段の説明図であり、アーチ部材の脚部33cの先端を所定長に亘り嵌合部332として六角柱に成形し、アーチ支持部13dの内径を所定長に亘りこれに嵌合する形状としたことを示す。
【0122】
前記変形例と同様、本変形例によっても、アーチ部材の脚部33cを、主部材のアーチ支持部13dへ挿入することで、微修正することなく対向するアングル材の所定幅を決定することができるため作業効率の一層の向上を図ることができる。また、脚部33cは、もちろん六角柱状に限ることはなく、三角柱、四角柱、五角柱状などその他の多角柱状とこれに嵌合するアーチ支持部13dの内径形状との組み合せであってもよい。
【0123】
〔第二の実施形態〕
以下、図17を参照して、本発明の第二の実施形態ついて説明する。図17は第二の実施形態の説明図である。本実施形態においては、主部材を延長して設けてなる延設部が、前述のアーチ部材に相当する部位となる点で第一の実施形態と大きく異なるが、その他、垂直片や補助部材の構造については第一の実施形態の例による。
【0124】
〔主部材〕
主部材10cは、延設部14a、連結筒状体141を備えている。主部材10cは鋼板を所望の形状に加工してなるが、本実施形態における主部材と同等の作用効果を発揮する他の材料を使用したり、他の加工法によることを妨げるものではない。
【0125】
一方の主部材10cから延設された延設部14aの先端は所定長において他の部位より内径が太い連結筒状体141aを形成する。該連結筒状体141には異なる側溝巾に対応できるように複数のボルト挿通孔143が設けられ、対向する主部材から延設されたボルト挿通孔が設けられた延設部の連結筒状体141bと入れ子構造を形成する。筒状体141a、141bを嵌挿して所定幅を決定した後、両筒状体のボルト挿通孔143を介してボルト40及びナット50で螺結する。
【0126】
本実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0127】
〔変形例7〕板状体
以下、図18を参照して、本発明の第二の実施形態における変形例について説明する。図18は本変形例の説明図である。本変形例は、前記第二の実施形態における連結筒状体を連結板状体としたものである。
また、本変形例においても、主部材を延長して設けてなる延設部が、第一の実施形態でいうアーチ部材に相当する部位となる点で先の実施形態と大きく異なるが、その他、垂直片や補助部材の構造については第一の実施形態の例による。
【0128】
〔主部材〕
主部材10dは、延設部14b、連結板状体142を備えている。主部材10dは鋼板を所望の形状に加工してなるが、本実施形態における主部材と同等の作用効果を発揮する他の材料を使用したり、他の加工法によることを妨げるものではない。
【0129】
一方の主部材10dから延設された延設部14bの先端は所定長において連結板状体142を形成する。該連結板状体142には異なる側溝巾に対応できるように複数のボルト挿通孔143が設けられ、対向する主部材から延設された同じ構成の連結板状体142と所定幅を決定した後、両連結板状体142を介してボルト40及びナット50で螺結する。
【0130】
本実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0131】
〔その他の変形例〕
本発明の第二の実施形態におけるその他の変形例として、第一の実施形態の変形例1乃至3、即ち、補助部材に関する変形例や、主係止片と副係止片との係止固定手段に関する変形例を、第二の実施形態または前記その変形例においても応用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のグレーチング用受枠の支持構造によれば各種の側溝幅に対応できるほか、坂道における側溝構築時にも利用することができる。
【符号の説明】
【0133】
10 主部材
11 垂直片
111 切込孔
112 補助部材係合子
113 目盛
114 小孔
115 中心線
116 傾斜部
12 主係止片
121 孔部
122 ボルト孔
13 アーチ支持部
131 挿入孔
132 係合溝
14 延設部
141 連結筒状体
142 連結板状体
143 ボルト挿通孔
20 補助部材
21 副係止片
211 嵌合凸部
212 アングル係合子
2121 押止部
213 ツメ部
214 肉薄部a
215 肉薄部b
216 分離孔
217 ボルト孔
22 載置片
221 切欠部
23 ガイド片
30 アーチ部材
31 横杆
32 補強杆
33 脚部
331 位置決め突起
332 嵌合部
100 型枠
101 内型枠
102 外型枠
200 アングル材
201 水平片
202 起立片
300 グレーチング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーチング受枠構築時に、隣接及び対向するアングル材を支持する構造であって、
型枠面の所定の高さ位置に取り付けられる主部材と、
該主部材に係止され、アングル材を支保する補助部材とからなり、
前記主部材は、
対向するアングル材同士を所定幅に決定する斉一決定手段を備え、
該斉一決定手段は、
主部材と分離可能な部材であり、対向する主部材間を架け渡してなる
主部材と別体的な斉一決定手段
又は
主部材を延長して設けてなる延設部が、対向する主部材の延設部と継合して
なる主部材と一体的な斉一決定手段から選択される
ことを特徴とするグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項2】
主部材は、
型枠面に取り付けられる垂直片と、
該垂直片の略中央部より直角に立ち上げられた主係止片とからなり、
補助部材は、
前記主係止片に係合する副係止片と、
該副係止片の下端に水平に配され、アングル材を載せる載置片と、
アングル材の起立片を補助するガイド片とからなり、
前記主部材と前記補助部材とは係止固定手段により相互に固定される
ことを特徴とする請求項1のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項3】
主部材の垂直片には、
水平方向に細長の切込孔と、
補助部材の副係止片の一辺に係合する補助部材係合子が設けられた
ことを特徴とする請求項2のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項4】
補助部材の載置片には、平面視において、主部材の垂直片の下部に近接する一辺の両角に欠切部が設けられ、
補助部材の副係止片には、載置したアングル材の端部を載置片又はガイド片との間で挟持するアングル係合子が設けられた
ことを特徴とする請求項2のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項5】
主部材の主係止片と補助部材の副係止片は、互いに嵌合すべく嵌合手段を具備し、
係止固定手段は、副係止片に設けられ、主係止片の端部に掛止する構造である
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項6】
主係止片及び副係止片を連通するボルト孔が設けられ、
係止固定手段は、前記ボルト孔を介して螺合する一対のボルト及びナットである
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項7】
別体的な斉一決定手段が、伏せコ字状若しくは逆U字状をなしたアーチ部材であって、
該アーチ部材の脚部間は対向する主部材間を架け渡す所要の幅を具備し、
主部材に該アーチ部材の脚部を挿入する中空のアーチ支持部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項8】
一体的な斉一決定手段が、
主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において筒状体とし
対向する主部材延設部の筒状体へ嵌装することで入れ子構造を形成し
締結手段により固定可能な構成とし、
又は
主部材を延長して設けてなる延設部の端部を所要長において板状体とし
対向する主部材延設部の板状体と
締結手段により固定可能な構成とした
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のグレーチング用受枠の支持構造。
【請求項9】
アーチ部材と主部材に位置矯正手段を設けた
ことを特徴とする請求項7のグレーチング用受枠の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−140799(P2012−140799A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294533(P2010−294533)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511004003)有限会社宮本工務店 (1)
【Fターム(参考)】