説明

グレーチング脱着装置

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的なグレーチング脱着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】先端部に、グレーチング2の格子部4の隙間に上面側から挿入可能で且つ前記格子部4を下面側から係止保持可能な係止保持部5及び接地部8が設けられ、後端部に、押し下げることで前記接地部8を支点に前記係止保持部5で前記格子部4を係止保持した前記グレーチング2を持ち上げ状態とする押し下げ操作部7が設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば側溝に設けられているグレーチングを脱着するためのグレーチング脱着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路脇の排水路、所謂、側溝(U字溝)の開口部に嵌合されるグレーチングの脱着を、作業者が腰を屈めて一つ一つ手作業で行っていたのでは大変である為、例えば、特開平10−60994号に開示されるグレーチング脱着装置(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、図7に図示したようにグレーチング2の格子部4の隙間に挿入可能なフック部材51と、把手が取り付けられたアーム部材52と、このアーム部材52の先端側寄りに取り付けられた支持脚53と、この支持脚53に設けられるキャスタ54とから構成されている。また、この従来例のフック部材51は、一定角度で折曲しているか、フック状に形成された先端部が自重によって下方に垂れ下がるように構成されている。
【0004】
この従来例を使ってグレーチング2を外す場合、まず、この従来例を側溝1まで移動した後、把手を上方になるようにアーム部材52を傾け、フック部材51を格子部4の隙間に挿入した後、このフック部材51で格子部4を保持し、次いで、把手を下方に押し下げると、キャスタ54が設けられている脚部53がテコの支点になって、フック部材51が格子部4を保持してグレーチング2を吊り上げ、この状態でこの従来例を移動すれば、側溝1からグレーチング2を外すことが出来ることになる。従って、作業者が重いグレーチング2を腰を屈めて両手で持ち上げて取り外さなくてもよく、また、非力なものでも容易に取り扱うことができるようになる。
【0005】
また、グレーチング2と側溝1との隙間に砂や泥などが溜まって固化しているような場合、グレーチング2を容易に取り外せないことがある。図7に図示したように実際にこのような場合に従来例を用いると、グレーチング2が斜めに持ち上がるため、グレーチング2が側溝1から離脱しないという問題も生ずる。
【0006】
従って、グレーチング2の縁と側溝1との間に砂や泥などが溜まって固化した場合、若しくはグレーチング2と側溝1との間の隙間に寸法的な余裕がない場合には、この従来例を用いてグレーチング2の一方の端を持ち上げて取り外そうとしても、グレーチング2の端が側溝1の壁の途中に当接して持ち上げられず、グレーチング2を外すのが厄介で手間取ることになる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−60994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされた発明であり、グレーチングと側溝との隙間に砂や泥などが溜まって固化していても、グレーチングを側溝から容易に脱着できるグレーチング脱着装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
先端部に、グレーチング2の格子部4の隙間に上面側から挿入可能で且つ前記格子部4を下面側から係止保持可能な係止保持部5及び接地部8が設けられ、後端部に、押し下げることで前記接地部8を支点に前記係止保持部5で前記格子部4を係止保持した前記グレーチング2を持ち上げ状態とする押し下げ操作部7が設けられたグレーチング脱着装置であって、前記係止保持部5より後方部位に、前記係止保持部5で係止保持し持ち上げ状態とした前記格子部4の上面部に当接して前記グレーチング2を略水平に維持する当接部9が設けられていることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1記載のグレーチング脱着装置において、前記係止保持部5は、腕体20から上方に突出するL字状の突体21であり、前記格子部4の桟4aに下方から係止されるものであることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0012】
また、請求項2記載のグレーチング脱着装置において、前記当接部9は、前記腕体20にして前記L字状の突体21より基端寄りに設けられた突体11であることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記当接部9は、前記腕体20に設けた取付孔13に止着部材15により取り付けられるものであることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0014】
また、請求項4記載のグレーチング脱着装置において、前記取付孔13は長孔形状であることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0015】
また、請求項4,5いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記取付孔13は前記腕体20の長さ方向に複数並設されていることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0016】
また、請求項2〜6いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記腕体20の上面若しくは下面は傾斜面であり、この腕体20は先細り形状であることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【0017】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記接地部8には移動用キャスタ16が設けられていることを特徴とするグレーチング脱着装置に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、例えばグレーチングと側溝との隙間に砂や泥などが溜まって固化していても容易にグレーチングを脱着できるグレーチング脱着装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
本発明は、例えば側溝1の開口部に設けられるグレーチング2の格子部4の隙間に係止保持部5を挿入し、前記格子部4を前記係止保持部5で保持し、押し下げ操作部7を下方に押し下げると、接地部8を支点として、前記係止保持部5により前記グレーチング2は保持されて持ち上がる。この際、前記係止保持部5より後方位置に設けられた当接部9が係止保持部5より後方の格子部4の上面部に当接し、係止保持部5より後方部分が持ち上がらないから、グレーチング2は略水平に保たれ、よって、グレーチング2は側溝1の縁に当接したりせず、側溝1から良好に離脱することになる。また、同様に、側溝1へのグレーチング2の嵌合も良好に行なわれる。
【0021】
更に、グレーチング2を側溝1から離脱させた後も、前記当接部9は確実に前記グレーチング2の上面部に当接した状態が保たれる。当接部9が存しない場合、グレーチング2のほぼ中央位置の格子部4に係止保持部5を係止保持せず、例えばグレーチング2の手前寄りの格子部4に係止保持部5を保持係止すると、グレーチング2の先端側が自重により垂れ下がり、係止保持部5が格子部4から外れてしまう恐れがあるから、本発明は当接部9が設けられている為、このような恐れは無く、それだけ安全な装置となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、側溝1の開口部に設けられる格子状蓋であるグレーチング2を脱着するためのグレーチング脱着装置3である。
【0024】
以下、具体的に説明する。
【0025】
本実施例に係るグレーチング脱着装置3は、図1に図示したように一本の長尺の丸形状を有する鉄製パイプ(フレーム6)の一方の端(基端部)に、丸形状の鉄製パイプをコの字状に形成してなる把手18を溶接して押し下げ操作部7を設け、前記フレーム6の他方の端(先端部)に短尺の丸形状を有する鉄製パイプを溶接するとともに、この鉄製パイプの両端に鉄製の一対の腕体20を溶接し、この各腕体20の先端部に係止保持部5を設け、更に腕体20の基端部位に移動用キャスタ16付きの接地部8を設け、また更に、前記一対の腕体20の各々に当接部9を設けて構成されている。符号19は補強棒である。
【0026】
尚、本実施例に係るグレーチング脱着装置3は鉄製であるが、他の材料によって構成してもよいし、或いは、他の材料と組み合わせてもよい。
【0027】
更に詳細には、グレーチング脱着装置3の係止保持部5は先端部を先細り形状に形成して、格子部4の隙間に上面側から容易に挿入できるようにすると共に、前記格子部4を下面側から係止保持できるように係止保持部5は腕体20から上方にL字状となる突体21を設け、グレーチング2の格子部4の桟4aを左右一対で保持するように該係止保持部5を左右一対設ける構成としている。
【0028】
更に、このフレーム6の基端部に押し下げ操作部7を設けると共に、接地部8を前記フレーム6に一対設け、前記押し下げ操作部7を押し下げて前記係止保持部5で係止保持した前記グレーチング2を持ち上げる際に接地部8が支点になるように構成している。
【0029】
また更に、前記腕体20の下面側部位に各前記係止保持部5より後方部位に、前記係止保持部5で保持された前記グレーチング2の上面部を支承して該グレーチング2を略水平に保持する当接部9を一対設け、更に、フレーム6の下側にして前記当接部9より後方の前記接地部8に移動用キャスタ16を設ける構成としている。
【0030】
更に、前記当接部9は、図2に示すように、腕体20への取付部10と該取付部10に連設してグレーチング2の持ち上がり動作を支承する突体11とから構成され、前記当接部9の取付部10に止着部材15としてのネジ体が貫通する挿通孔12を設け、前記腕体20の下面側部位に前記当接部9の取付部10の挿通孔12と連通する取付孔13を設け、前記腕体20の取付孔13と前記当接部9の取付部10の挿通孔12とに止着部材15としてのネジ体を挿通せしめてナット14を締結して該当接部9が前記腕体20に固定されるように構成している。
【0031】
また更に、図2に示すように腕体20に設けた当接部9の取付孔13を長孔形状にしている。これによって、この長孔に沿って当接部9の取付位置を必要に応じて連続的に移動することができることになり、グレーチングを支承する当接部9の取り付け位置を格子部4の間隔に応じた位置に自在に移動して設定できるようになるから、適宜の位置に当接部9を固定できることになる。
【0032】
このように本実施例は、腕体20の先端部の係止保持部5は先細り形状を有すると共にL字状を有するもので、外付けにフック状のものを設けたものではないから、格子部4にL字状突体が無用に引っ掛ったりせず、扱い易く作業性がよいものとなる。
【0033】
尚、当接部9の腕体20への取付方法は別の構成であってもよく、例えば図3に示すように腕体20の長さ方向に並設した当接部9用の取付孔13は複数の丸孔を設けてもよい。この場合、当接部9の位置は飛び飛びにしか設定できないが、このことは当接部9の取り付け強度を増すことになる。
【0034】
次に、この実施例によるグレーチング脱着装置3を用いてグレーチング2を取り外す操作を図4〜6によって説明する。但し、グレーチング2の質量分布は均等であって、図4〜6の説明図ではAはグレーチング2の質量分布が左右で均等で対称となる質量対称線の位置である。まず、このグレーチング脱着装置3を側溝1近くにまで移動して、図4に示すように該質量対称線Aより手前の格子部4を保持するように、押し下げ操作部7を押し上げて係止保持部5を側溝1の格子部4の隙間に挿入して、該係止保持部5に該格子部4を保持して、前記押し下げ操作部7に下側に力を加えて、グレーチング2を持ち上げる。この持ち上げによって、グレーチング2の手前の縁に溜まっていた泥や砂などで固化された状態が破断されて、また前記質量対称線Aの位置が係止保持部5より前方に位置しているから、図4のようにグレーチング2の後縁が少し持ち上がるようになる。この状態で引き続き力を加えると、グレーチング2の前方が垂れ下がり、後方が持ち上がろうとするが、図5に示すように当接部9がグレーチング後方上面の持ち上がりを止めるように支承するからグレーチング2の前方も持ち上がるようになって、グレーチング前縁の泥や砂で固化されていた状態を破断することができて、グレーチング2を側溝1から引き出すことができる状態になる。このようにしてグレーチング2の前縁も後縁も側溝1から持ち上げることができるから、この状態で更に前記押し下げ操作部7に下に力を加えれば、図6のようにグレーチング2全体を持ち上げることができて側溝から外せるようになる。
【0035】
このように本実施例のグレーチング脱着装置3によれば、グレーチング2と側溝1との隙間に砂や泥などが溜まって固化していても容易に脱着できることになる。
【0036】
また更に、前記係止保持部5にグレーチング2を保持して当接部9によってグレーチング2を支承して略水平に保持している状態において、移動用キャスタ16で移動できることになり、図1に示すように前記押し下げ操作部7に設けた把手18の向きを水平より下向きになるように設けている。このようにすることによって、グレーチング脱着装置3を移動する場合だけでなく、グレーチング脱着装置3の操作位置を低くできるので上下操作する際に取り扱い易くなる。
【0037】
以上、本実施例によれば、係止保持部5の後方に当接部9を設けることによってグレーチング2を側溝1から略水平状態で引き出すことが出来るために、グレーチング2と側溝1との隙間に砂や泥などが溜まって固化している場合や、グレーチング2と側溝1との隙間のクリアランスが少ない場合でも容易にグレーチング2を脱着できる、操作性の良いグレーチング脱着装置を提供できることになる。
【0038】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例の使用状態説明図である。
【図2】本実施例に係る当接部の取付例である。
【図3】本実施例に係る当接部の別の取付例である。
【図4】本実施例の動作説明図である。
【図5】本実施例の動作説明図である。
【図6】本実施例の動作説明図である。
【図7】従来例の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0040】
2 グレーチング
4 格子部
4a 桟
5 係止保持部
7 押し下げ操作部
8 接地部
9 当接部
11 突体
13 取付孔
15 止着部材
16 移動用キャスタ
20 腕体
21 突体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に、グレーチングの格子部の隙間に上面側から挿入可能で且つ前記格子部を下面側から係止保持可能な係止保持部及び接地部が設けられ、後端部に、押し下げることで前記接地部を支点に前記係止保持部で前記格子部を係止保持した前記グレーチングを持ち上げ状態とする押し下げ操作部が設けられたグレーチング脱着装置であって、前記係止保持部より後方部位に、前記係止保持部で係止保持し持ち上げ状態とした前記格子部の上面部に当接して前記グレーチングを略水平に維持する当接部が設けられていることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項2】
請求項1記載のグレーチング脱着装置において、前記係止保持部は、腕体から上方に突出するL字状の突体であり、前記格子部の桟に下方から係止されるものであることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項3】
請求項2記載のグレーチング脱着装置において、前記当接部は、前記腕体にして前記L字状の突体より基端寄りに設けられた突体であることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記当接部は、前記腕体に設けた取付孔に止着部材により取り付けられるものであることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項5】
請求項4記載のグレーチング脱着装置において、前記取付孔は長孔形状であることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項6】
請求項4,5いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記取付孔は前記腕体の長さ方向に複数並設されていることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項7】
請求項2〜6いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記腕体の上面若しくは下面は傾斜面であり、この腕体は先細り形状であることを特徴とするグレーチング脱着装置。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載のグレーチング脱着装置において、前記接地部には移動用キャスタが設けられていることを特徴とするグレーチング脱着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−37737(P2010−37737A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199061(P2008−199061)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(391005134)オギハラ工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】