説明

グロメットおよびそれを使用した電子機器の防水構造

【課題】 グロメットおよびそれを使用した電子機器の防水構造において、製造コストを低減させる。
【解決手段】 グロメット1は底部2aが破断可能に形成され一列に並設された4個のケーブル挿通部2Aないし2Dが鍔3A,3Bを介して連結部4によって連結されている。連結部4には、スイッチを動作させる操作部6が一体に連設されているとともに、グロメット1を筺体に保持するためのリブが係入される押圧溝7Aないし7Fが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を有するグロメットおよびそれを使用した電子機器の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のグロメットとしては、ケーブル挿通部を有底筒状で底部が破断可能に形成したものがあり、ケーブルを挿通させる必要がある場合は底部を破断して使用し、ケーブルを挿通させる必要がない場合は底部が防水構造として機能するものがある(例えば、特許文献1参照)。このグロメットはロアーケースのU字状溝に嵌合され、アッパーケースをロアーケースに合体させたときに、ロアーケースの開口端がグロメットの鍔に対接することによってU字状溝からの脱落が規制される。
【特許文献1】特開2005−209405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来のグロメットにおいては、ケーブル挿通部が一つしか設けられていないため、複数本のケーブルを筺体から導出する必要が生じた場合は、ケーブルの本数に対応した数のグロメットが必要になるだけではなく、筺体の構造も変更しなければならないため製造コストが嵩むという問題があった。また、電子機器を操作するスイッチ類が設けられている場合は、筺体の防水機能を損なわないようにするために、スイッチ類を防水部材等で専用に覆う特別な構造を必要としていたため、製造コストが嵩むという問題があった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、製造コストを低減させたグロメットおよびそれを使用した電子機器の防水構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、有底筒状で底部が破断可能に形成され底部を破断することによりケーブルを挿通させることが可能なケーブル挿通部を有する全体がゴムによって形成されたグロメットであって、前記ケーブル挿通部を複数個一列に並設して一体化する連結部を設け、この連結部にスイッチを押圧操作する可撓性を有する操作部を一体に連設したものである。
【0006】
本発明は、共に一面が開口し箱状に形成された第1および第2のケースを備え、前記両ケースを互いの開口端を対接させ合体させることにより筺体を形成し、前記両ケースの互いの開口端に前記発明のグロメットを取り付ける電子機器の防水構造であって、前記連結部に押圧溝を設け、前記第1のケースの前記開口端に前記ケーブル挿通部が嵌合する凹部を設け、前記第2のケースの前記開口端に、前記第1および第2のケースを合体させることにより前記ケーブル挿通部を前記凹部に嵌合する方向に前記押圧溝の底部を押圧するリブを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導出するケーブルの本数に変化があっても一つのグロメットで対応することが可能になるため、グロメットの汎用性が高くなるばかりかグロメットを装着する筺体の共通化を図ることができるから製造コストを低減することができる。また、複数のケーブル挿通部のうちからケーブルの導出位置を選択することができるため、筺体内におけるケーブルの配線設計に自由度が増す。筺体内部に設けたスイッチを操作する操作部をグロメットに一体に設けたことにより、操作部専用の防水構造を設ける必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0008】
前記発明のうちの一つの発明によれば、ケースに形成したリブによって押圧する部位を、ケーブルを通すために底部が破断し易いように底部の厚みを薄く形成し剛性が低いケーブル挿通部としないで、変形しにくい連結部としたことにより、グロメットとケースの凹部との間の密閉性が高くなるため防水性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図7に基づいて説明する。図1および図2に全体を符号1で示すグロメットは、一列に並設された四個のケーブル挿通部2Aないし2Dと、ケーブル挿通部2A,2Bを連結する鍔3Aと、ケーブル挿通部2C,2Dを連結する鍔3Bと、鍔3A,3Bを介してケーブル挿通部2Aないし2Dを連結する連結部4と、この連結部4に鍔5を介して連設された操作部6とからなり、全体がゴムによって一体に形成されている。
【0010】
ケーブル挿通部2Aないし2Dは有底角筒状に形成されており、底部2aが、図1(C)に示すように破断が容易に行えるように薄く形成されている。連結部4は、ケーブル挿通部2Aないし2Dよりも相対的に厚く細長い略直方体状に形成されており、ケーブル挿通部2Aないし2Dの中央部に対応した位置と操作部6の両端部に対応した位置とに合計六個の押圧溝7Aないし7Fが設けられている。
【0011】
これら押圧溝7Aないし7Fは、図1(B)に示すように、上方に開口7aと、開口7aよりも狭い幅に形成された底部7bとを備え正面視において略台形状に形成されており、背面部7cが、図1(A)、(C)に示すように連結部4によって閉塞されている。底部7bは、図1(B)に示すようにケーブル挿通部2Aないし2Dの上端面よりもわずかな距離δだけ上方に位置付けられている。
【0012】
操作部6は扁平な円柱状に形成され、図1(D)および図2(A)に示すようにリング状で厚みが薄く形成された可撓性を有する支持部5aを介して鍔5に連結されており、裏面の中央部に円柱状に形成された押圧部6aが一体に突設されている。したがって、操作部6を矢印A方向に指等によって押圧することによって支持部5aが弾性変形し、押圧部6aが矢印A方向に移動する。
【0013】
図3において10は電子機器であって、図4に示すように、共に一面が開口した第1のケース11および第2のケース12とによって筺体が形成される。第1のケース11の後板13の内側にはスタッド14,14が一体に突設されているとともに、底板15に対向する対向壁16が一体に突設されている。この対向壁16と底板15との間には、グロメット1の鍔3A,3B,5が係入される係入溝16aが設けられている。底板15の開口端15aには、図6(B)に示すようにグロメット1のケーブル挿通部2Aないし2Dのそれぞれが嵌合される凹部としての第1のU字状溝7Aないし7Dと操作部6が露呈する第2のU字状溝18とが設けられている。
【0014】
図4において、20はスタッド21を介して第1のケース11の後板13に固定されたプリント基板であって、図5(B)に示すように操作部6の押圧部6aによって動作されるスイッチ22が実装されている。
【0015】
第2のケース12の底板25には、図4および図7に示すように第1のケース11の開口端15aに対接する開口端25aが設けられている。第1のケース11の前板26の底板25側の端部には、後述するように第1のケース11の第1のU字溝17Aないし17Dにケーブル挿通部2Aないし2Dが嵌合されたグロメット1の押圧溝7Aないし7Fに挿入され、下端が底板25の開口端25aまで延設された6本のリブ27が一体に突設されている。また、底板25の開口端25aは、開口端25aを第1のケース11の開口端15aに対接させたとき、図7に示すようにグロメット1の各ケーブル挿通部2Aないし2Dの上端面に対接する。
【0016】
第1のケース11と第2のケース12とは、互いに開口端15a,25aを対接させた状態で、図4に示すようにねじ30,30を第1のケース11のスタッドに螺合させることにより、合体され電子機器10の筺体が形成される。
【0017】
次に、このように構成されたグロメット1を第1のケース11の開口端15aと第2のケース12の開口端25aとに装着する方法について説明する。第1のケース11の係入溝16aに、図4および図5に示すようにグロメット1の鍔3A,3B,5を係入させることにより、図6(B)に示すようにグロメット1のケーブル挿通部2Aないし2Dを第1のケース11の第1のU字状溝17Aないし17Dに嵌合させるとともに、操作部6を第2のU字状溝18から露呈させる。
【0018】
次いで、第1のケース11の開口端15aに第2のケース12の開口端25aを対接させ、図7に示すように第2のケース12のリブ27をグロメット1の押圧溝7Aないし7Fに係入させる。この状態で、図4に示すようにねじ30,30を第1のケース11のスタッドに螺合させることにより、第1および第2のケース11,12が合体され電子機器10の筺体が形成される。このとき、リブ27の下端が押圧溝7Aないし7Dの底部7bを下方に押圧するので、グロメット1も下方に押圧される。
【0019】
ここで、上述したように、底部7bはケーブル挿通部2Aないし2Dの上端面よりもわずかな距離δだけ上方に位置付けられており、リブ27の下端は底板25の開口端25aまで延設されているので、リブ27によってグロメット1を下方に押圧する力は、第2のケース12の開口端25aによってグロメット1を下方に押圧する力よりも相対的に大きくなる。このため、グロメット1のケーブル挿通部2Aないし2Dを第1のケース11の第1のU字状溝17Aないし17Dに嵌合させる力が大きくなるから、ケーブル挿通部2Aないし2Dと第1のU字状溝17Aないし17Dとの間の水密性が高くなり防水性が向上する。
【0020】
しかも、リブ27によって押圧する部位を、ケーブルを通すために底部2aが破断し易いように底部2aの厚みを薄く形成し剛性が低いケーブル挿通部2Aないし2Dとしないで、剛性が充分得られる厚みに形成し変形しにくい連結部4としたことにより、ケーブル挿通部2Aないし2Dと第1のU字状溝17Aないし17Dとの間の水密性がより高くなる。
【0021】
このようにグロメット1を第1のケース11の開口端15aと第2のケース12の開口端25aとに装着することにより、図5(B)に示すように操作部6の押圧部6aがスイッチ22に対向するため、筺体の外部から操作部6を矢印A方向に押圧することにより、押圧部6aによってスイッチ22を動作させることができる。
【0022】
このように構成されたグロメット1は複数のケーブル挿通部2Aないし2Dを有しているため、導出するケーブルの本数に変化があっても一つのグロメット1で対応することが可能になるため、グロメットの汎用性が高くなるばかりかグロメットを装着する筺体の共通化を図ることができるから製造コストを低減することができる。また、複数のケーブル挿通部2Aないし2Dのうちからケーブルの導出位置を選択することができるため、筺体内におけるケーブルの配線設計に自由度が増す。
【0023】
また、筺体内部に設けたスイッチ22を操作する操作部6をグロメット1に一体に設けたことにより、操作部6専用の防水構造を設ける必要がないため、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るグロメットを示し、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)における I(B)矢視図、同図(C)は同図(B)におけるI(C)-I(C) 断面図、同図(D)は同図(B)におけるI(D)-I(D) 断面図である。
【図2】同図(A)は正面側から視た本発明に係るグロメットの斜視図、同図(B)は裏面側から視た本発明に係るグロメットの斜視図である。
【図3】本発明に係るグロメットが装着された電子機器の平面図である。
【図4】図3におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】同図(A)は図3におけるV(A)-V(A) 線断面図、同図(B)は図3におけるV(B)-V(B) 線断面図である。
【図6】同図(A)は本発明に係るグロメットを装着した状態の電子機器における第2のケースを取り外した状態を示す要部の平面図、同図(B)は同図(A)におけるVI(B)矢視図である。
【図7】本発明に係るグロメットを装着した状態の電子機器において、第1および第2のケースを合体させた状態を示す図6(A)におけるVI(B)矢視図である。
【符号の説明】
【0025】
1…グロメット、2Aないし2D…ケーブル挿通部、2a…底部、4…連結部、6…操作部、7Aないし7F…押圧溝、7b…底部、10…電子機器、11…第1のケース、12…第2のケース、15a,25a…開口端、17Aないし17D…第1のU字状溝(凹部)、22…スイッチ、27…リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状で底部が破断可能に形成され底部を破断することによりケーブルを挿通させることが可能なケーブル挿通部を有する全体がゴムによって形成されたグロメットであって、
前記ケーブル挿通部を複数個一列に並設して一体化する連結部を設け、この連結部にスイッチを押圧操作する可撓性を有する操作部を一体に連設したことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
共に一面が開口し箱状に形成された第1および第2のケースを備え、前記両ケースを互いの開口端を対接させ合体させることにより筺体を形成し、前記両ケースの互いの開口端に請求項1記載のグロメットを取り付ける電子機器の防水構造であって、
前記連結部に押圧溝を設け、
前記第1のケースの前記開口端に前記ケーブル挿通部が嵌合する凹部を設け、
前記第2のケースの前記開口端に、前記第1および第2のケースを合体させることにより前記ケーブル挿通部を前記凹部に嵌合する方向に前記押圧溝の底部を押圧するリブを設けたことを特徴とする電子機器の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−232611(P2009−232611A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76555(P2008−76555)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】