説明

グロメットの誤組み付け防止構造

【課題】 左右共用化したグロメットの誤組み付けをより確実に防止することができるグロメットの誤組み付け防止構造を得る。
【解決手段】 左右のグロメット6の嵌合部10は、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状を非対称とし、左右のグロメット6を同一方向に位置させたとき、左側のグロメット6aの嵌合部10に対し右側のグロメット6bの嵌合部10を180度回転した状態に設定し、且つ左右のグロメット6には組み付け時における位置方向或いは左側組み付け用・右側組み付け用等左右のグロメット6を区別できる表示部12を設け、他方、左右の前記車体パネル1で前記左右のグロメット6の嵌合部10を嵌合する前記嵌合孔8は車体の左右で、前記左右のグロメット6の嵌合部10に対応して180度回転させた状態で設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車両で、車体パネルとその左右にヒンジ部で開閉自在に取り付けられた開閉車体パネルに跨がって貫通するワイヤーハーネスを覆う同一形状とした左右共用のグロメットの誤組み付け防止構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両に、車体パネルとその左右にヒンジ部で開閉自在に取り付けられた開閉車体パネルに跨がって貫通するワイヤーハーネスを覆いこれを保護するためのグロメットが組み付けられている。このグロメットは車両の左右に組み付けられるが、グロメットの製造の効率化とコストダウンのために、左右のグロメットを同一形状とすることによる左右共用化が図られている。その結果、左側用のグロメットと右側用のグロメットを誤って組み付けられるおそれがあり、かかるグロメットの誤組み付けを防止する手段を講じる必要があった。
【0003】従来、左右共用化したグロメットの誤組み付けを防止する手段として、図2(A)(B)に示すものが開示されている。これによれば、車体パネル1とその左右にヒンジ部2,3で開閉自在に取り付けられた開閉車体パネル(ドアパネル)4に跨がって貫通するワイヤーハーネス5の外周を同一形状の左右のグロメット6のワイヤーハーネス覆い筒体7で覆い、該ワイヤーハーネス覆い筒体7の両端を各車体パネル1,4の嵌合孔8,9に通し、該ワイヤーハーネス覆い筒体7の一端側を該ワイヤーハーネス覆い筒体7の外周に一体に設けられた嵌合部10で対応する車体パネル1の嵌合孔8に嵌合し、該ワイヤーハーネス覆い筒体7の他端側を該ワイヤーハーネス覆い筒体7の外周に一体に設けられた嵌合部11で対応する開閉車体パネル4の嵌合孔9に嵌合しているグロメットの組み付け構造となっており、左右のグロメット6の誤組み付けを防止するために、左側に取付けられるグロメット6には左側取付け用を示すL等の、右側に取付けられるグロメットには右側取付け用を示すR等の表示部12がそれぞれ設けられている。また、前記左右のグロメット6の嵌合部10,11は真円形、略楕円形に形成された共通の形状となっており、この嵌合部10,11が嵌合する前記車体パネル1の嵌合孔8、9も、嵌合部10,11に対応して、図3(A)に示すように真円形、略楕円形に形成されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のように左側に取付けられるグロメット6には左側取付け用を示すL等の、右側に取付けられるグロメットには右側取付け用を示すR等の表示部12が単に刻印等で設けられた誤組み付け防止手段によれば、それを見誤って組み付けが行われると、前記左右のグロメット6の嵌合部10,11が真円形、略楕円形に形成された共通の形状となっているため、誤った状態で組み付けられてしまい、根本的な誤組み付け防止になっていないといった問題点があった。
【0005】本発明の目的は、左右共用化したグロメットの誤組み付けをより確実に防止することができるグロメットの誤組み付け防止構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、車体パネルとその左右にヒンジ部で開閉自在に取り付けられた開閉車体パネルに跨がって貫通するワイヤーハーネスの外周を同一形状に形成された左右のグロメットのワイヤーハーネス覆い筒体で覆い、該ワイヤーハーネス覆い筒体の両端を前記各車体パネルの嵌合孔に通し、該ワイヤーハーネス覆い筒体の少なくとも一端側を該ワイヤーハーネス覆い筒体の外周に一体に設けられた嵌合部で対応する前記車体パネルの前記嵌合孔に嵌合している左右共用のグロメットの組み付け構造において、左右のグロメットの嵌合部は、ワイヤーハーネス覆い筒体の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が非対称に形成され、左右のグロメットを同一方向に位置させたとき、左側のグロメットの嵌合部に対し右側のグロメットの嵌合部が180度回転した状態に設定されており、且つ左右のグロメットには組み付け時における位置方向或いは左側組み付け用・右側組み付け用等左右のグロメットを区別できる表示部が設けられ、他方、左右の前記車体パネルで前記左右のグロメットの嵌合部を嵌合する前記嵌合孔は車体の左右で、前記左右のグロメットの嵌合部に対応して180度回転させた状態で設けられていることを特徴とする。
【0007】かかる構成によれば、表示部を見誤り、左右のグロメットが誤って逆に組み付けられようとしても、グロメットの嵌合部とこれを嵌合する車体パネルの嵌合孔の形が合わず、これにより誤組み付けを防止することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1(A)(B)は、本発明に係るグロメットの誤組み付け防止構造における実施の形態の一例を示したもので、図1(A)は車両の左側の誤組み付け防止構造を示す斜視説明図、図1(B)は車両の右側の誤組み付け防止構造を示す斜視説明図である。
【0009】本例では、同一形状に形成された左右共用のグロメット6には、その長手方向の一方側にだけ嵌合部10が設けられ、反対側には設けられていない構造になっている。左右のグロメット6の嵌合部10は、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が非対称となっている。
【0010】本例では、グロメット6の嵌合部10は、グロメット6の組み付け時の状態において、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向における上下方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が、一方側ではほぼ平らな形状部10a、他方側ではやや尖った円弧状の形状部10bとなっていて、上下で非対称となっている。
【0011】そして、左右のグロメット6を同一方向に位置させたとき、左側のグロメット6aの嵌合部10に対し右側のグリメット6bの嵌合部が180度回転した状態に設定されている。即ち、左側のグロメット6aでは、嵌合部10は、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向の上下方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が、上側ではほぼ平らな形状部10a、下側では下向きにやや尖った円弧状の形状部10bとなっていて、上下で非対称となっている。また、右側のグロメット6bでは、嵌合部10は、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向の上下方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が、上側では上向きにやや尖った円弧状の形状部10b、下側ではほぼ平らな形状部10aとなっていて、上下で非対称となっている。これら左右の嵌合部10は、それぞれの左右の部分は互いに平行な対称な形状となっている。
【0012】また、左側のグロメット6aには、嵌合部10で非対称な二箇所の一方側であるほぼ平らな形状に対応させて組み付け状態で上側となる位置の表示と左側を示すL等を表す表示部12が設けられている。右側のグロメット6bには、嵌合部10で非対称な二箇所の他方側であるやや尖った円弧状に対応させて組み付け状態で上側となる位置の表示と右側を示すR等の表示部12が設けられている。
【0013】他方、左右の前記車体パネル1で前記左右のグロメット6の嵌合部10を嵌合する前記嵌合孔8は、車体の左右で、前記左右のグロメット6の嵌合部10に対応して180度回転させた状態で設けられている。即ち、左側の車体パネル1aの孔8は、上部がほぼ平らな形状部8aで、下部が下向きにやや尖った円弧状の形状部8bで、左右が互いに平行な形状で、上下に非対称な形状となっている。右側の車体パネル1bの孔8は、上部が上向きにやや尖った円弧状の形状部8bで、下部がほぼ平らな形状部8aで、左右が互いに平行な形状で、上下に非対称な形状となっている。
【0014】かかる構成によれば、表示部12を見誤り、左右のグロメット6が誤って逆に組み付けられようとしても、グロメット6の嵌合部10とこれを嵌合する車体パネル1の嵌合孔8の形が合わず、これにより誤組み付けを防止することができる。
【0015】なお、嵌合部10の非対称な形状は上下方向に限定されるものではなく、ワイヤーハーネス覆い筒体7の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が非対称であればよい。そして、車体パネル1の前記嵌合孔8も、これに対応させて形成される。
【0016】
【発明の効果】以上のように、本発明に係るグロメットの誤組み付け防止構造によれば、左右のグロメットの嵌合部は、ワイヤーハーネス覆い筒体の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が非対称に形成され、左右のグロメットを同一方向に位置させたとき、左側のグロメットの嵌合部に対し右側のグロメットの嵌合部が180度回転した状態に設定されており、且つ左右のグロメットには組み付け時における位置方向或いは左側組み付け用・右側組み付け用等左右のグロメットを区別できる表示部が設けられ、他方、左右の前記車体パネルで前記左右のグロメットの嵌合部を嵌合する前記嵌合孔は車体の左右で、前記左右のグロメットの嵌合部に対応して180度回転させた状態で設けられているので、表示部を見誤り、左右のグロメットが誤って逆に組み付けられようとしても、グロメットの嵌合部とこれを嵌合する車体パネルの嵌合孔の形が合わず、これにより誤組み付けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)(B)は本発明に係るグロメットの誤組み付け防止構造における実施の形態の一例を示したもので、(A)は車両の左側の誤組み付け防止構造を示す斜視説明図、(B)は車両の右側の誤組み付け防止構造を示す斜視説明図である。
【図2】(A)(B)は従来のグロメットの誤組み付け防止構造を示したもので、(A)は車両の左側の誤組み付け防止構造を示す縦断平面図、(B)は車両の右側の誤組み付け防止構造を示す縦断平面図である。
【図3】(A)(B)は従来のグロメットで、車体パネルとその左右の開閉車体パネルに設けられている各嵌合孔の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
1 車体パネル
1a 左側の車体パネル
1b 右側の車体パネル
2,3 ヒンジ部
4 開閉車体パネル(ドアパネル)
5 ワイヤーハーネス
6 グロメット
6a 左側のグロメット
6b 右側のグロメット
7 ワイヤーハーネス覆い筒体
8,9 嵌合孔
8a 平らな形状部
8b やや尖った円弧状の形状部
10,11 嵌合部
10a 平らな形状部
10b やや尖った円弧状の形状部
12 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体パネルとその左右にヒンジ部で開閉自在に取り付けられた開閉車体パネルに跨がって貫通するワイヤーハーネスの外周を同一形状に形成された左右のグロメットのワイヤーハーネス覆い筒体で覆い、該ワイヤーハーネス覆い筒体の両端を前記各車体パネルの嵌合孔に通し、該ワイヤーハーネス覆い筒体の少なくとも一端側を該ワイヤーハーネス覆い筒体の外周に一体に設けられた嵌合部で対応する前記車体パネルの前記嵌合孔に嵌合している左右共用のグロメットの組み付け構造において、左右のグロメットの嵌合部は、ワイヤーハーネス覆い筒体の周方向の一箇所でこれを横切る方向の両側の形状が非対称に形成され、左右のグロメットを同一方向に位置させたとき、左側のグロメットの嵌合部に対し右側のグロメットの嵌合部が180度回転した状態に設定されており、且つ左右のグロメットには組み付け時における位置方向或いは左側組み付け用・右側組み付け用等左右のグロメットを区別できる表示部が設けられ、他方、左右の前記車体パネルで前記左右のグロメットの嵌合部を嵌合する前記嵌合孔は車体の左右で、前記左右のグロメットの嵌合部に対応して180度回転させた状態で設けられていることを特徴とするグロメットの誤組み付け防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−63490(P2001−63490A)
【公開日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−237710
【出願日】平成11年8月25日(1999.8.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】