説明

グロメット及びシール性が回復したグロメットの製造方法

【課題】グロメットと取付パネルとの間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができるようにすることを目的とする。
【解決手段】ワイヤーハーネス18挿通用の貫通孔12を有する取付パネル10に装着されるグロメット20であって、ワイヤーハーネス18が挿通されるワイヤーハーネス挿通部24と、ワイヤーハーネス挿通部24の外周に設けられ、貫通孔12の外周で取付パネル10の一主面に対向して配設可能な鍔状部30と、弾性材料によって形成され、鍔状部30のうち取付パネル10の前記一主面に対向する部分に前記鍔状部30の延在方向に沿うように設けられたシール部34とを備える。シール部34に、弾性補完用充填物を収容可能な凹部37、135がシール部34の延在方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤーハーネスが取付パネルに形成された貫通孔を通る際に用いられるグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のグロメットとして特許文献1に開示のものがある。特許文献1には、ケーブル開口部を塞ぐゴム製のグロメットと、グロメットをボディパネルに押付けるリテーナとを備えた構成が開示されている。グロメットには、シールリップが形成されており、グロメットをボディパネルに押付けると、シールリップが圧縮され、これにより、グロメットとボディパネルとの間で確実なシール状態が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−85395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グロメットはゴムで形成されているため、シールリップは経年によって弾性劣化してしまう。シールリップの弾性が低下してしまうと、グロメットとボディパネルとの間でのシール性が悪くなってしまう。特に、メンテナンス時等にグロメットを外した場合に、劣化によってシールリップが潰れた状態のままとなっていると、再度グロメットをボディパネルに取付けた場合にも、シールリップの圧縮変形によるシール性能を得ることができなくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、グロメットと取付パネルとの間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の態様は、ワイヤーハーネス挿通用の貫通孔を有する取付パネルに装着されるグロメットであって、前記ワイヤーハーネスが挿通されるワイヤーハーネス挿通部と、前記ワイヤーハーネス挿通部の外周に設けられ、前記貫通孔の外周で前記取付パネルの一主面に対向して配設可能な環状当接部と、弾性材料によって形成され、前記環状当接部のうち前記取付パネルの前記一主面に対向する部分に前記環状当接部の延在方向に沿うように設けられたシール部とを備え、前記シール部に、弾性補完用充填物を収容可能な凹部が前記シール部の延在方向に沿って形成されている。
【0007】
第2の態様は、第1の態様に係るグロメットであって、前記凹部は、前記弾性補完用充填物として流体が封入可能に形成されている。
【0008】
第3の態様は、第1の態様に係るグロメットであって、前記凹部は、前記シール部の基端部と先端部との間で側方に開口するように形成されている。
【0009】
第4の態様は、シール性が回復したグロメットの製造方法であって、(a)前記ワイヤーハーネスが挿通されるワイヤーハーネス挿通部と、前記ワイヤーハーネス挿通部の外周に設けられ、前記貫通孔の外周で前記取付パネルの一主面に対向して配設可能な環状当接部と、弾性材料によって形成され、前記環状当接部のうち前記取付パネルの前記一主面に対向する部分に前記環状当接部の延在方向に沿って設けられたシール部とを備え、前記シール部に、前記シール部の延在方向に沿って凹部が形成されているグロメットを準備する工程と、(b)前記凹部に弾性補完用充填物を収容する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様によると、前記シール部に、弾性補完用充填物を収容可能な凹部が前記シール部の延在方向に沿って形成されているため、当該凹部に収容された弾性補完用充填物によって、シール部自体が有する弾性に弾性補完用充填物による弾性を補完して、グロメットと取付パネルとの間でシール性を得るために必要な弾性を得ることができる。これにより、グロメットと取付パネルとの間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができる。
【0011】
第2の態様によると、凹部に封入された流体の圧縮等による反力によって、グロメットと取付パネルとの間でのシール性を補完することができる。
【0012】
第3の態様によると、前記凹部の側方の開口から弾性補完用充填物を容易に収容することができる。また、このように収容された弾性補完用充填物によって、グロメットと取付パネルとの間でのシール性を補完することができる。
【0013】
第4の態様によると、前記凹部に弾性補完用充填物を収容することで、当該弾性補完用充填物による弾性によってシール部のシール性を回復させることができる。これにより、グロメットと取付パネルとの間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係るグロメットが取付パネルに取付けられた状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】図2のIII−III線における断面図である。
【図5】シール部の状態を示す説明図である。
【図6】シール部の状態を示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係るグロメットの一部断面図である。
【図8】同上のグロメットの一部断面図である。
【図9】シール部の状態を示す説明図である。
【図10】シール部の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るグロメットについて説明する。図1は第1実施形態に係るグロメット20が取付パネル10に取付けられた状態を示す概略斜視図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3及び図4は図2のIII−III線における断面図である。図3はグロメット20の取付前状態、図4はグロメット20の取付状態をそれぞれ示している。
【0016】
このグロメット20は、貫通孔12を有する取付パネル10に装着される。
【0017】
取付パネル10は、車両のボディ、例えば、車室内外を仕切る板部材であり、金属等で形成されている。取付パネル10には、貫通孔12が形成されている。ここでは、貫通孔12は、方形状であるが、円形状等その他の形状であってもよい。貫通孔12には、ワイヤーハーネス18が挿通される。ワイヤーハーネス18は、例えば、車室内に設けられる変速機のコントローラーと、車室外(エンジンルーム)に設けられる変速機とを電気的に接続する配線材であり、少なくとも1本の電線を有している。また、取付パネル10の一主面には、貫通孔12の周囲に間隔をあけて複数のスタッドボルト14が立設されている。ここでは、方形状の貫通孔12の各頂点の外側位置にスタッドボルト14が立設されている。スタッドボルト14は、外周にねじ溝が形成されたねじ部14aと、ねじ部14aの一端部に設けられた円板状の頭部14bとを有しており、前記頭部14bを取付パネル10の一主面に接触させた状態で当該取付パネル10に溶接等で固定されている。グロメット20は、当該グロメット20にワイヤーハーネス18が挿通固定された状態で前記貫通孔12に装着されることで、ワイヤーハーネス18の保護及び貫通孔12を通った水の侵入を抑制する(つまり、防水)役割を有している。
【0018】
グロメット20は、グロメット本体22と、押付部材40とを備えている。
【0019】
グロメット本体22は、エラストマー(ゴム等)の弾性材料によって形成されており、ワイヤーハーネス挿通部24と、環状当接部としての鍔状部30とを備えている。
【0020】
ワイヤーハーネス挿通部24は、ワイヤーハーネス18を挿通可能に形成されており、また、貫通孔12を閉塞できる程度の拡がりを有している。より具体的には、ワイヤーハーネス挿通部24は、前記貫通孔12に対応する開口を有する箱状、ここでは、貫通孔12に対応する方形開口を有する直方体箱状に形成されている。また、ワイヤーハーネス挿通部24のうち前記開口と対向する面に、ワイヤーハーネス18を挿通可能な筒部25が形成されている。ワイヤーハーネス18は、本筒部25に挿通されることで、貫通孔12を通って配設される。また、ワイヤーハーネス18は、本筒部25において一定位置に固定されていることが好ましい。また、筒部25がワイヤーハーネス18に対して強い力で締付けられ、ワイヤーハーネス18と筒部25との間の防水が図られていることが好ましい。
【0021】
鍔状部30は、ワイヤーハーネス挿通部24の外周に設けられ、貫通孔12の外周で取付パネル10の一主面に当接可能に構成されている。ここでは、鍔状部30は、ワイヤーハーネス挿通部24の略方形開口の外周に設けられている。また、鍔状部30は、略一定厚みの鍔状部分に形成されている。
【0022】
鍔状部30のうち上記スタッドボルト14に対応する位置(ここでは、貫通孔12の各頂点に対応する外側位置)には、ボルト貫通孔32が形成されている(図2参照)。
【0023】
また、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する部分は略平坦な面に形成され、当該面に鍔状部30の延在方向に沿って延びるシール部34が設けられている。ここでは、シール部34は、上記貫通孔12の外周で、スタッドボルト14を避けて略方形環状をなすように形成されている。鍔状部30が取付パネル10の一主面に押付けられると、貫通孔12の外周でシール部34が取付パネル10の一主面に押付けられるようになっている。このシール部34については、後でさらに説明する。なお、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する面の反対側の部分も略平坦な面に形成されている。なお、シール部34が設けられる部分は、鍔状部30のように外方に張出している形状である必要はない。例えば、上記ワイヤーハーネス挿通部24の開口部分が外方に張出さない環状当接部に形成され、この部分にシール部34が設けられていてもよい。
【0024】
また、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する面外周縁部にスカート状の補助シール部38が設けられている。そして、鍔状部30が取付パネル10の一主面に押付けられると、シール部34の外周側で、補助シール部38が取付パネル10の一主面に押付けられるようになっている。
【0025】
押付部材40は、グロメット本体22よりも剛性が高い材料、例えば、金属等によって形成された部材である。この押付部材40は、鍔状部30のうち取付パネル10の前記一主面に対向する部分の反対側に設けられ、前記取付パネル10に取付固定可能に構成されている。そして、押付部材40が、取付パネル10に取付固定された状態で、鍔状部30を取付パネル10の前記一主面に押付けるようになっている。
【0026】
すなわち、押付部材40は、金属板を打抜き屈曲加工することにより係止された部材であり、全体として鍔状部30に対応する枠状形状に形成されている。より具体的には、押付部材40は、鍔状部30の背面を押付ける方形板枠状の押付主板部42と、押付主板部42の内周縁部からグロメット本体22のワイヤーハーネス挿通部24の外周部に沿うように延設された内側縁部43と、押付主板部42の外周縁部から鍔状部30の外周部に沿って延設された外周縁部44とを有している。そして、押付主板部42を鍔状部30の背面側に配設した状態で、内側縁部43がワイヤーハーネス挿通部24の溝部24gに嵌め込まれると共に、外周縁部44が鍔状部30の外周部に外嵌めされて、押付部材40がグロメット本体22に装着されるようになっている。
【0027】
また、押付部材40のうち前記各スタッドボルト14(鍔状部30のボルト貫通孔32)に対応する位置には、環状のボス部45が突設されている。ここでは、押付部材40の4つのコーナー部に対応してボス部45が突設されている。このボス部45は、鍔状部30のボルト貫通孔32内に配設される。そして、スタッドボルト14をボス部45内に貫通させるようにして、本グロメット20を取付パネル10上に配設すると、ボス部45の先端部がスタッドボルト14の頭部14bに接触できるようになっている。また、この状態で、スタッドボルト14にナット16を締付けると、当該ナット16が押付部材40を取付パネル10に向けて押え込んだ状態で、当該押付部材40が取付パネル10に取付固定される。この取付固定状態で、押付部材40が、鍔状部30を、貫通孔12の周囲で取付パネル10の前記一主面に押付けている。
【0028】
もっと、本例のように、グロメット20が、スタッドボルト14、ナット16及び押付部材40を用いて取付パネル10に取付固定されることは必須ではない。例えば、エラストマーにより形成されたグロメット本体自体に、貫通孔12の外周縁部を嵌め込み可能な環状溝が形成され、それらの嵌め込み構造によってグロメットが取付パネルに取付固定される構成であってもよい。つまり、貫通孔の外周で鍔部が取付パネルの一主面に押付けられた状態で固定されるグロメットであればよい。
【0029】
シール部34についてより具体的に説明する。すなわち、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する部分に、鍔状部30の延在方向に沿って延びるシール取付凹部33が形成されている。ここでは、シール取付凹部33は、奥側の幅が広く、開口側の幅が狭い溝形状に形成されている。
【0030】
シール部34は、上記シール取付凹部33に対応する環状形状(ここでは方形環状形状)に形成されており、上記シール取付凹部33に嵌め込まれるシール基端部35と、鍔状部30の一主面より突出するシール本体部36とを有している。
【0031】
シール基端部35は、シール取付凹部33の形状に対応してシール基端部35の先端側で幅広かつシール基端部35の基端側で幅狭となる横断面台形状に形成されている。そして、シール基端部35を弾性変形させつつ、当該シール基端部35をシール取付凹部33内に嵌め込めるようになっている。
【0032】
シール本体部36は、上記シール基端部35と一体的に設けられ、シール基端部35がシール取付凹部33内に嵌め込まれた状態で、鍔状部30の一主面より突出するようになっている。シール本体部36は、先端部が丸められた枠形状、つまり、方形部分に半円部分を連結した横断面形状を有する枠形状に形成されている。そして、鍔状部30が取付パネル10の一主面に押付けられると、シール本体部36の先端部の丸められた部分が取付パネル10の一主面に押し当てられるようになっている。
【0033】
また、シール本体部36に、弾性補完用充填物を収容可能な凹部としての封入用穴部37が、シール本体部36の延在方向に沿って形成されている。ここでは、封入用穴部37は、横断面円形状の穴形状に形成されており、シール本体部36の延在方向全体、貫通孔12の全体を囲うように形成されている。かかるシール部34は、エラストマー等により形成された管状の部材の両端部を環状に連結すること等により形成される。
【0034】
上記グロメット20の動作等について説明する。
【0035】
なお、初期状態において、上記封入用穴部37には、空気、窒素等の気体又はオイル、水等の液体等の流体が封入されているとする。
【0036】
グロメット20を取付パネル10に取付けるにあたっては、まず、スタッドボルト14をボス部45に挿通させ、スタッドボルト14の先端部を鍔状部30及び押付部材40より突出させる。そして、スタッドボルト14にナット16を螺合締結すると、貫通孔12の外周側で、鍔状部30が取付パネル10側に押され、シール部34及び補助シール部38が取付パネル10の一主面に押付けられる。これにより、シール部34及び補助シール部38が、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間で圧縮変形する(図4参照)。これにより、取付パネル10の一主面と鍔状部30との隙間がより確実に塞がれ、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間がより確実にシールされる。
【0037】
上記取付状態では、シール部34自体が持つ弾性の他、封入用穴部37内に封入された流体の圧縮等による反力によっても、シール部34は取付パネル10の一主面に押付けられる。このため、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間がより確実にシールされる。
【0038】
上記取付状態で、ある程度長期間経過すると、シール部34は弾性劣化してしまう。また、封入用穴部37内の流体が漏れてしまうこともある。すると、グロメット20を取付パネル10から取外しても、図5に示すように、シール部34及び補助シール部38が圧縮変形したままの状態となってしまう。すると、グロメット20を再度取付パネル10に取付けた場合に、シール部34及び補助シール部38が取付パネル10の一主面と鍔状部30との間をうまく塞ぐことができない恐れが生じ得る。
【0039】
そこで、図5に示すように、注入用の針50等を持つ流体流入装置を用いて、前記シール部34の封入用穴部37内に流体を注入する。つまり、封入用穴部37内に弾性補完用充填物を収容する。すると、図6に示すように、封入用穴部37内に封入された流体の内圧によって、封入用穴部37が横断面円形状に膨張し、この膨張力によって、シール部34が元の形状に復元しようとする。なお、封入用穴部37内に流体を注入した後、針50を刺した後に残る孔、その他、漏れの原因となる孔は、ゴム孔を修復する修復剤等で埋めて塞いでおくことが好ましい。これにより、シール性が劣化したグロメット20から、シール性が回復したグロメット20を製造することができる。
【0040】
この後、最初の取付作業時と同様にして、スタッドボルト14をボス部45に挿通させて、当該スタッドボルト14にナット16を螺合締結する。すると、シール部34及び補助シール部38が取付パネル10の一主面に押付けられる。これにより、少なくとも、上記作業によって元の形状に復元したシール部34が、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間で圧縮変形する(図4参照)。これにより、取付パネル10の一主面と鍔状部30との隙間がより確実に塞がれ、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間がより確実にシールされる。
【0041】
以上のように構成されたグロメット20及びシール性が回復したグロメット20の製造方法によると、封入用穴部37がシール部34の延在方向に沿って形成されているため、当該封入用穴部37に収容された弾性補完用充填物としての流体によって、シール部34自体が有する弾性に、弾性補完用充填物による弾性を補完して、グロメット20と取付パネル10との間でシール性を得るために必要な弾性を得ることができる。これにより、グロメット20と取付パネル10との間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができる。
【0042】
特に、封入用穴部37は、弾性補完用充填物としての流体を封入可能に形成されているため、封入された流体の圧縮等に対する反力によって、グロメット20と取付パネル10との間でのシール性を補完することができ、より確実なシール性を得ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、当初から封入用穴部37内に流体が封入されているという例で説明したが、当初では、封入用穴部37は流体を封入可能に構成されている必要はない。グロメット20の弾性を復元する際に、封入用穴部37に対する流体の注入口を塞ぐことにより、封入用穴部37が流体を封入する構成とされてもよい。また、封入用穴部37に封入される流体は入替えられてもよい。また、シール部34は、鍔状部30に対して一体形成されていてもよい。
【0044】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るグロメットについて説明する。図7及び図8は、図2のIII−III線における断面図に相当する、グロメット120の一部断面図である。図7はグロメット120の取付前状態、図8はグロメット120の取付状態をそれぞれ示している。なお、本実施の形態の説明において、上記第1実施形態で説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、シール部134は、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する部分は略平坦な面に形成され、当該面に鍔状部30の延在方向に沿って延びるように形成されている。ここでは、シール部134は、上記貫通孔12の外周で、スタッドボルト14を避けて略方形環状をなすように形成されている。そして、鍔状部30が取付パネル10の一主面に押付けられると、貫通孔12の外周でシール部134が取付パネル10の一主面に押付けられるようになっている。
【0046】
シール部134は、鍔状部30のうち取付パネル10の一主面に対向する部分より突出する突条に形成されている。また、そのシール部134の基端部と先端部との間に側方に開口する凹部135が形成されている。ここでは、凹部135は、方形環状のシール部134の内周側に連続して開口するように形成されている。本実施形態では、シール部134は、横断面略C字状をなしているが、必ずしもその必要はなく、側方に開口する横断面L字状等をなしていてもよい。
【0047】
上記グロメット120の動作等について説明する。
【0048】
なお、初期状態において、上記凹部135内には何も収容されず、空き状態となっている。
【0049】
グロメット120を取付パネル10に取付けるにあたっては、上記実施形態で説明したように、スタッドボルト14をボス部45に挿通させ、スタッドボルト14の先端部を鍔状部30及び押付部材40より突出させる。そして、スタッドボルト14にナット16を螺合締結すると、貫通孔12の外周側で、鍔状部30が取付パネル10側に押され、シール部134及び補助シール部38が取付パネル10の一主面に押付けられる。これにより、シール部134及び補助シール部38が、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間で圧縮変形する(図8参照)。これにより、取付パネル10の一主面と鍔状部30との隙間がより確実に塞がれ、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間がより確実にシールされる。
【0050】
上記取付状態で、ある程度長期間経過すると、シール部134は弾性劣化してしまう。すると、グロメット120を取付パネル10から取外しても、図9に示すように、シール部134及び補助シール部38が圧縮変形したままの状態となってしまう。すると、グロメット120を再度取付パネル10に取付けた場合に、シール部134及び補助シール部38が取付パネル10の一主面と鍔状部30との間をうまく塞ぐことができない恐れが生じ得る。
【0051】
そこで、図9に示すように、凹部135内に弾性補完用充填物150を嵌め込む。弾性補完用充填物150としては、例えば、エラストマー等によって上記凹部135に対応する方形環状部材に形成されたものを用いることができる。凹部135内に弾性補完用充填物150を嵌め込むと、図10に示すように、弾性補完用充填物150の形状によってシール部134が元の形状に復元する。このシール部134は、弾性補完用充填物150の弾性によってある程度の弾性を呈することができる。これにより、シール性が劣化したグロメット120から、シール性が回復したグロメット120を製造することができる。
【0052】
この後、最初の取付作業時と同様にして、スタッドボルト14をボス部45に挿通させて、当該スタッドボルト14にナット16を螺合締結する。すると、シール部134及び補助シール部38が取付パネル10の一主面に押付けられる。これにより、少なくとも、上記作業によって元の形状に復元したシール部134が、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間で圧縮変形する。これにより、取付パネル10の一主面と鍔状部30との隙間がより確実に塞がれ、取付パネル10の一主面と鍔状部30との間がより確実にシールされる。
【0053】
以上のように構成されたグロメット120及びシール性が回復したグロメット120の製造方法によると、凹部135がシール部134の延在方向に沿って形成されているため、前記凹部135内に弾性補完用充填物150を収容させることによって、シール部134自体が有する(或は有していた)弾性に、弾性補完用充填物150による弾性を補完して、グロメット120と取付パネル10との間でシール性を得るために必要な弾性を得ることができる。これにより、グロメット120と取付パネル10との間で、長期間にわたってなるべく良好なシール性を得ることができる。
【0054】
特に、凹部135はシール部134の側方に開口しているため、当該側方の開口から弾性補完用充填物150を容易に収容することができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、当初凹部135内が空であるという例で説明したが、必ずしもその必要はない。当初、凹部135内にエラストマー等で形成された弾性補完用充填物150が収容され、その後、凹部135内の弾性補完用充填物150が他の弾性補完用充填物150に交換されることで、シール部134の弾性が復元する構成であってもよい。
【0056】
また、凹部135内に収容される弾性補完用充填物150は、凹部135に収容された後固まる物質であってもよい。そのような弾性補完用充填物150としては、2液硬化型の樹脂等を用いることができる。また、シール部134を鍔状部30からある程度突出させた状態に復帰させれば、当該シール部134によるシール性を期待できるため、弾性補完用充填物150自体が十分な弾性を有している必要はない。
【0057】
{変形例}
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0058】
10 取付パネル
12 貫通孔
18 ワイヤーハーネス
20 グロメット
22 グロメット本体
24 ワイヤーハーネス挿通部
30 鍔状部
33 シール取付凹部
34、134 シール部
37 封入用穴部
120 グロメット
134 シール部
135 凹部
150 弾性補完用充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネス挿通用の貫通孔を有する取付パネルに装着されるグロメットであって、
前記ワイヤーハーネスが挿通されるワイヤーハーネス挿通部と、
前記ワイヤーハーネス挿通部の外周に設けられ、前記貫通孔の外周で前記取付パネルの一主面に対向して配設可能な環状当接部と、
弾性材料によって形成され、前記環状当接部のうち前記取付パネルの前記一主面に対向する部分に前記環状当接部の延在方向に沿うように設けられたシール部と、
を備え、
前記シール部に、弾性補完用充填物を収容可能な凹部が前記シール部の延在方向に沿って形成されている、グロメット。
【請求項2】
請求項1記載のグロメットであって、
前記凹部は、前記弾性補完用充填物として流体が封入可能に形成されている、グロメット。
【請求項3】
請求項1記載のグロメットであって、
前記凹部は、前記シール部の基端部と先端部との間で側方に開口するように形成されている、グロメット。
【請求項4】
シール性が回復したグロメットの製造方法であって、
(a)前記ワイヤーハーネスが挿通されるワイヤーハーネス挿通部と、前記ワイヤーハーネス挿通部の外周に設けられ、前記貫通孔の外周で前記取付パネルの一主面に対向して配設可能な環状当接部と、弾性材料によって形成され、前記環状当接部のうち前記取付パネルの前記一主面に対向する部分に前記環状当接部の延在方向に沿って設けられたシール部とを備え、前記シール部に、前記シール部の延在方向に沿って凹部が形成されているグロメットを準備する工程と、
(b)前記凹部に弾性補完用充填物を収容する工程と、
を備えるシール性が回復したグロメットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−38938(P2013−38938A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173664(P2011−173664)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】