説明

グロメット

【課題】パネルへの保持力を確保しつつ、パネルの孔への挿入力を低減させることができるグロメットを提供する。
【解決手段】グロメット1は、内側にワイヤハーネス4を通す本体部11と、パネル2の孔3の内縁部を互いの間に挟み込んで該パネル2に係止する鍔部12及び可動片16と、を備えている。可動片16は、本体部11と別体で形成され、その一部分が本体部11の外周面から凹に形成された凹部14内に位置付けられるとともに、弾性変形自在の帯17によって外側の一部分が本体部11の外周面から突出した状態に付勢されている。該グロメット1は、孔3に挿入される際は帯17が伸びて可動片16が凹部14内に入り込むとともに、孔3に挿入された後は帯17の弾性復元力によって可動片16が本体部11の外周面から突出した状態に復帰し、鍔部12との間にパネル2を挟み込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両としての自動車などの車体を構成するパネルに取り付けられかつ内側にワイヤハーネスを通すグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両としての自動車などの車体を構成するパネルに設けられた孔内にワイヤハーネスを通し、かつ前記ワイヤハーネスが傷付くことや、水分(液体)が侵入することを防止するために、例えば、図7に示すようなグロメット101(例えば、特許文献1参照)を用いてきた。図7に示されたグロメット101は、筒部102と、筒部102に連なり一端から他端に向かうにしたがって徐々に内外径が拡大する本体部103と、この本体部103の全周に亘って設けられかつ前記パネル200の孔300に係止する係止凹部104とを一体に備え、ゴムなどからなる。
【0003】
前述したグロメット101は、本体部103内にワイヤハーネスを通し、筒部102及びこの本体部103の小径側の端からパネル200の孔300内に挿入される。本体部103が縮径(内外径が縮小することを示す)する方向に一旦弾性変形した後、係止凹部104が孔300の内縁部に係止して、前述したパネル200に取り付けられる。このように、従来のグロメット101は、本体部103を縮径する方向に一旦弾性変形して、パネル200に取り付けられてきた。
【特許文献1】特開平7−163034号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のグロメット101は、パネル200の孔300に挿入された後に該パネル200から抜け落ちないようにするために、本体部103の係止凹部104よりも小径側の壁105を厚くする必要がある。そして、孔300の内径と壁105の外径との差(以下、ラップ代と呼ぶ。)d(図7中に示す)を大きく設定するほどグロメット101のパネル200への保持力が上がる。
【0005】
しかしながら、ラップ代dが大きくなれば前記保持力は上がるが、その分だけ孔300へのグロメット101の挿入力も大きくなってしまい、パネル200への取り付け作業が困難になるという問題があった。さらに、最悪の場合には、前述した本体部103の表面とパネル200の孔300の内縁部との間に生じる摩擦力により、本体部103の表面が破損する虞があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、パネルへの保持力を確保しつつ、パネルの孔への挿入力を低減させることができるグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のグロメットは、小径側の端部から大径側の端部に向けて徐々に外径が拡大するとともに筒状に形成されて内側にワイヤハーネスを通す本体部と、前記本体部の大径側の外周面に形成された鍔部と、前記鍔部より前記本体部の小径側に配置され、かつ前記本体部の外周面に形成された凹部と、前記凹部に挿入され、かつ前記凹部内をスライド可能な可動片と、前記可動片を前記本体部の外周面から突出した状態に付勢する付勢手段と、を備えるとともに、前記鍔部と前記本体部の外周面から突出した状態に付勢された可動片との間にパネルの孔の内縁部を挟み込んで該パネルに係止することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の本発明のグロメットは、請求項1に記載のグロメットにおいて、前記可動片が前記本体部の周方向に複数配置されているとともに、前記付勢手段が、互いに隣り合う可動片同士を連結し、かつ弾性材料で構成された帯であることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の本発明のグロメットは、請求項1または請求項2に記載のグロメットにおいて、前記凹部が、前記本体部の外周面から、前記本体部の前記パネルの孔への挿入方向と直交する方向に沿って凹に形成されているとともに、前記本体部が前記パネルに係止した状態で、前記可動片の一部が前記凹部内に位置付けられることで、前記凹部によって前記可動片が位置ずれすることが規制されることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の本発明のグロメットは、請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載のグロメットにおいて、前記本体部の前記小径側の端部と前記大径側の端部との双方からワイヤハーネスの長手方向に延設された筒部をさらに備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1に記載のグロメットは、パネルの孔に挿入される際に可動片が、本体部が縮径する方向にスライドするので、グロメットの外径と孔の内径との差、即ちラップ代を小さくすることができ、そのためにグロメットが孔を通過する際に生じる摩擦量及び弾性変形量を小さくすることができる。したがって、グロメットの孔への挿入力を低減させることができる。さらに、グロメットは、孔へ挿入された後は、付勢手段によって本体部の外周面から突出した位置に復帰された可動片と、鍔部との間にパネルを挟み込んで係止するので、該パネルへの保持力を確保することができる。
【0012】
請求項2に記載のグロメットは、互いに隣り合う可動片同士が、弾性材料で構成された帯で連結されている。したがって、該帯の弾性復元力によって、本体部が縮径する方向にスライドした可動片をパネルへの係止後に本体部の外周面から突出した位置に復帰させることができる。
【0013】
請求項3に記載のグロメットは、可動片の一部が、挿入方向と直交する方向に沿って凹に形成された凹部内に位置付けられるので、グロメットに対して挿入方向の外力がかかった場合でも、該凹部によって、可動片が位置ずれすることが規制される。したがって外力がかかった場合でも、グロメットがパネルの孔から抜け落ちることを防止できる。
【0014】
請求項4に記載のグロメットは、ワイヤハーネスの長手方向に延びた筒部が、本体部の小径側の端部と大径側の端部との双方に形成されている。このように形成することで、パネルの外側からグロメットを取り付ける場合は大径側の筒部をパネルの内側に向かって押して取り付けることができるとともに、パネルの内側からグロメットを取り付ける場合は小径側の筒部をパネルの外側から内側に引っ張って取り付けることができる。したがって、取り付け作業スペースに制約がある場合でも、グロメットを容易にパネルに取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態にかかるグロメットを、図1ないし図6を参照して説明する。本実施形態のグロメット1は、図1に示すように、車両としての自動車などの車体を構成するパネル2に設けられた孔3に取り付けられる。図1に示す場合では、前記孔3は、平面形状が楕円形に形成されている。
【0016】
グロメット1は、筒状に形成されているとともに、内側に前記自動車に配索されるワイヤハーネス4を通す。グロメット1は、ワイヤハーネス4を覆うことで、ワイヤハーネス4が傷付くことや、水分(液体)が侵入することを防止する。
【0017】
グロメット1は、弾性変形自在な弾性材料としてのゴムなどからなる。グロメット1は、図1ないし図3に示すように、一対の筒部10と、本体部11とを一体に備えているとともに、本体部11と別体で成型された後に本体部11に組み付けられるバンド部15を備えている。
【0018】
一対の筒部10は、本体部11の小径側と大径側の両端部それぞれからワイヤハーネス4の長手方向に延設されているとともに円筒状に形成されており、内側にワイヤハーネス4を通す。筒部10の外径は、孔3の内径より小さい。
【0019】
本体部11は、パネル2の孔3への挿入方向前方に位置する一端部11aから他端部11bに向かうにしたがって内外径が徐々に拡大する円筒状に形成されている。即ち、本体部11の一端部11aは、小径側の端部をなしており、他端部11bは、大径側の端部をなしている。また、本体部11は、一対の筒部10内を通るワイヤハーネス4を内側に通す。本体部11の一端部11aの外径は、孔3の内径より小さく、本体部11の他端部11bの外径は、孔3の内径より大きい。本体部11は、一対の筒部10と同軸に配されているとともに、該一対の筒部10に直列に連結している。
【0020】
本体部11の他端部11bには、全周に亘って、鍔部12が設けられている。鍔部12は、図3などに示すように、本体部11の外周面から凸に形成されている。該鍔部12は、鍔部12と相対し、かつ鍔部12より一端部11a側に配された後述の可動片16との間にパネル2を挟みこむ。また、鍔部12の外縁部には、可動片16に向かって凸に形成されたリップ13が全周に亘って設けられている。さらに、鍔部12は、パネル2と当接する側の面12a(図3に示す)が、外縁部から本体部11の外周面に近づくにしたがって他端部11b側に向かって傾斜している。パネル2と接触する側の面12aをこのように傾斜させることで、パネル2との密着性を高くすることができる。
【0021】
本体部11の鍔部12より一端部11a側には、図2に示すように、本体部11の外周面から孔3への挿入方向と直交する方向に沿って凹に形成された(延びた)凹部14が、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。該凹部14内には、後述の可動片16が配置される。また、凹部14の内面には、ワイヤハーネス4の長手方向に沿って相対し、かつ孔3への挿入方向と直交する方向に沿って平坦な一対の平坦面14aが設けられている。
【0022】
本体部11とは別体で形成されるバンド部15は、図2に示すように、前述した可動片16と、付勢手段17とを備えている。可動片16は、前述した凹部14の内面に沿う形状に形成されているとともに、凹部14内をスライド可能に形成されている。即ち可動片16は、鍔部12より一端部11a側に設けられている。可動片16は、凹部14内に位置付けられて一対の平坦面14aの双方と重なる。可動片16は、一対の平坦面14a上を摺動することで前述した直交する方向に沿ってスライドする。また、該可動片16は、本体部11の周方向に沿って複数設けられているとともに、互いに隣り合う可動片16同士が、ゴムなどの弾性材料で構成された付勢手段としての帯17によって連結されている。このようにバンド部15は環状に形成されており、帯17の外周面よりも可動片16の外周面が外側に張り出している。
【0023】
上記バンド部15を本体部11に組み付ける際は、帯17を拡径(内外径が拡大することを示す)する方向に広げて、各可動片16が各凹部14内に収まるように組み付ける。また、本体部11に組み付けられた状態のバンド部15は、図1及び図3に示すように、拡径する方向に張力がかかった状態の帯17が本体部11の外周面に当接するとともに、帯17の張力によって可動片16の一部が凹部14内に位置付けられ、かつ可動片16の他の部分が本体部11の外周面から突出した状態に付勢される。この際、凹部14と可動片16との間には空洞が形成されており、孔3を通過する際の押圧荷重によって可動片16が該空洞内に移動する。なお、この位置に可動片16があることを以下、可動片16が初期位置にあるという。
【0024】
前述した構成のグロメット1をパネル2に取り付ける際には、まず、一端部11a側の筒部10と、パネル2の孔3とを相対させる。そして、図1中に示す矢印K方向に沿って、本体部11即ちグロメット1を、孔3内に徐々に挿入する。すると、図4に示すように、可動片16の外周面が、パネル2の孔3の内縁に接触する。また、この時、パネル2の孔3とグロメット1とには、幅D1のラップ代が生じている。
【0025】
この際、パネル2の外側から作業を行う場合は他端部11b側に設けられた筒部10をパネル2の内側に向かって押すようにし、パネル2の内側から作業を行う場合は一端部11a側に設けられた筒部10をパネル2の外側から内側に引っ張るようにする。
【0026】
さらに、本体部11即ちグロメット1をパネル2の孔3内に挿入していくと、孔3の内面により、可動片16が本体部11の内側に向かって押圧される。すると、図5に示すように、帯17が弾性変形して伸びるとともに凹部14に形成されていた空洞が埋められる格好で、凹部14内に可動片16が入り込む。即ち、本体部11が縮径(内外径が縮小することを示す)する方向に可動片16がスライドする。こうして可動片16がスライドすることによって、パネル2の孔3とグロメット1とのラップ代は、幅D1よりも小さい幅D2となる。グロメット1は、この幅D2だけ縮径方向に弾性変形して孔3に挿入される。
【0027】
そして、パネル2の孔3が、可動片16を乗り越えて鍔部12と可動片16との間に位置すると、凹部14内を縮径する方向にスライドしていた可動片16が、帯17の弾性復元力によって初期位置に復帰する。即ち、本体部11が拡径する方向に可動片16がスライドする。
【0028】
すると、図6に示すように、パネル2の一方の面の内縁部に、本体部11の外周面から突出した状態の可動片16が接触するとともに、パネル2の他方の面の内縁部に、リップ13が接触する。こうして、鍔部12と可動片16との間にパネル2の孔3内縁部を挟み込んで、グロメット1は、パネル2に取り付けられる。
【0029】
本実施形態によれば、グロメット1は、パネル2の孔3に挿入される際に可動片16が縮径する方向にスライドするので、グロメット1の外径と孔3の内径との差、即ちラップ代を小さくすることができ、そのためにグロメット1が孔3を通過する際に生じる摩擦量及び弾性変形量を小さくすることができる。したがって、グロメット1の孔3への挿入力を低減させることができる。さらに、グロメット1は、孔3へ挿入された後は、付勢手段としての帯17の弾性復元力によって初期位置に復帰された可動片16と、鍔部12との間にパネル2を挟み込んで係止するので、該パネル2への保持力を確保することができる。
【0030】
また、グロメット1は、可動片16の一部が、挿入方向と直交する方向に沿って凹に形成された凹部14内に位置付けられるので、グロメット1に対して挿入方向の外力がかかった場合でも、該凹部14によって、可動片16が位置ずれすることが規制される。したがって外力がかかった場合でも、グロメット1がパネル2の孔3から抜け落ちることを防止できる。
【0031】
さらにグロメット1は、筒部10が、本体部11の一端部11a側と他端部11b側との双方に形成されている。このように形成することで、グロメット1の取り付け作業をパネル2の外側と内側のどちらからでも行うことができる。したがって、取り付け作業スペースに制約がある場合でも、グロメット1を容易にパネル2に取り付けることができる。
【0032】
さらにグロメット1は、バンド部15を本体部11と別体で成型しかつ成型後に本体部11に組み付けるようにしているので、本体部11に凹部14を容易に形成することができる。即ち、本体部11を成型した後に該本体部11をくり抜くなどして凹部14を形成することなく、本体部11の成型の際に同時に凹部14を形成することができる。
【0033】
また、前述した実施形態では、本体部11とバンド部15とが別体で形成されていたが、本発明は本体部11とバンド部15とが一体で形成されていても良い。また、可動片16は、帯17と一体で形成されていても良いし、別体で形成された後に連結されても良い。その場合、可動片16はゴム以外の例えば合成樹脂などで形成されていても良い。
【0034】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係るグロメットを示す斜視図である。
【図2】図1に示されたグロメットの分解斜視図である。
【図3】図1中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図1に示されたグロメットがパネルの孔に挿入され、孔の内面に可動片が接触した様子を示す断面図である。
【図5】図4に示されたグロメットがパネルの孔にさらに挿入されて、可動片が凹部内に入り込む様子を示す断面図である。
【図6】図5に示されたグロメットがパネルに係止した様子を示す断面図である。
【図7】従来のグロメットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 グロメット
2 パネル
4 ワイヤハーネス
10 筒部
11 本体部
11a 一端部(小径側の端部)
11b 他端部(大径側の端部)
12 鍔部
14 凹部
16 可動片
17 帯(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径側の端部から大径側の端部に向けて徐々に外径が拡大するとともに筒状に形成されて内側にワイヤハーネスを通す本体部と、
前記本体部の大径側の外周面に形成された鍔部と、
前記鍔部より前記本体部の小径側に配置され、かつ前記本体部の外周面に形成された凹部と、
前記凹部に挿入され、かつ前記凹部内をスライド可能な可動片と、
前記可動片を前記本体部の外周面から突出した状態に付勢する付勢手段と、を備えるとともに、
前記鍔部と前記本体部の外周面から突出した状態に付勢された可動片との間にパネルの孔の内縁部を挟み込んで該パネルに係止することを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記可動片が前記本体部の周方向に複数配置されているとともに、
前記付勢手段が、互いに隣り合う可動片同士を連結し、かつ弾性材料で構成された帯であることを特徴とする請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記凹部が、前記本体部の外周面から、前記本体部の前記パネルの孔への挿入方向と直交する方向に沿って凹に形成されているとともに、
前記本体部が前記パネルに係止した状態で、前記可動片の一部が前記凹部内に位置付けられることで、前記凹部によって前記可動片が位置ずれすることが規制されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記本体部の前記小径側の端部と前記大径側の端部との双方からワイヤハーネスの長手方向に延設された筒部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−66682(P2007−66682A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250725(P2005−250725)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】