説明

グロメット

【課題】隔壁の穴への取付けが容易なグロメットを提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネスWが挿入される小径筒部13と、それより内径が大きい大径筒部15と、小径筒部と大径筒部を連結する連結筒部17と、大径筒部15の外周に形成された小径フランジ部19及び大径フランジ部21と、この大径フランジ部と小径フランジ部の間に形成された嵌着溝23とを備えたゴム製のグロメットにおいて、大径筒部15の内周面の、小径フランジ部19の内側に相当する位置に内周溝25を形成すると共に、この内周溝25の大径フランジ部21と反対側の縁から大径筒部15内を通って外部に引き出される複数の引出片27を形成する。引出片27を引出方向へ引っ張ると小径フランジ部19が大径フランジ部21と反対側へ倒れて縮径し、隔壁Kの穴Hに挿入可能となる。引っ張りを解除すると小径フランジ部19が元の状態に復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の長尺体が、自動車のパネル等の隔壁に形成された穴を貫通する部分に使用するグロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3(A)に従来の一般的なグロメットを示す。グロメット11は、弾力性のあるゴム製で、ワイヤーハーネスWが挿入される小径筒部13と、それより内径が大きい大径筒部15と、前記小径筒部13と大径筒部15を連結する連結筒部17と、前記大径筒部15の外周に形成された小径フランジ部19及び大径フランジ部21と、この大径フランジ部21と小径フランジ部19の間に形成された嵌着溝23とを備えている。小径筒部13はテープ巻きTによりワイヤーハーネスWに固定される(特許文献1参照)。
【0003】
小径フランジ部19の外径は、図3(B)に示すように、大径フランジ部21の外径より小さいが、隔壁(自動車のパネル等)Kの穴Hの内径より大きく形成されている。また嵌着溝23の底部の外径は隔壁Kの穴Hの内径とほぼ同じに形成されている。
【0004】
グロメット11を隔壁Kの穴Hに取り付ける場合には、小径フランジ部19を穴Hに入る大きさに弾性変形させて、穴Hに挿入する。大径フランジ部21が隔壁Kに突き当たるまで挿入すると、穴Hを通過した小径フランジ部19がゴムの弾力性で元の状態に復元し、図3(C)に示すように、隔壁Kの穴Hの縁が小径フランジ部19と大径フランジ部21により挟み付けられた状態となる。
【0005】
【特許文献1】特開平7−336068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グロメットの大径筒部15、小径フランジ部19及び大径フランジ部21は、隔壁Kを挟み付けて、隔壁Kへの取付け状態を保持する必要があることから、他の部分より厚さが厚く形成されており、小径フランジ部19を穴Hに入る大きさに弾性変形させることが困難であった。このため従来のグロメットは隔壁の穴に取り付けるのに手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、隔壁の穴への取付けが容易なグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明は、ワイヤーハーネス等の長尺体が挿入される小径筒部と、それより内径が大きい大径筒部と、前記小径筒部と大径筒部を連結する連結筒部と、前記大径筒部の外周に形成された小径フランジ部及び大径フランジ部と、この大径フランジ部と小径フランジ部の間に形成された嵌着溝とを備えたゴム製のグロメットにおいて、
前記大径筒部の内周面の小径フランジ部の内側に相当する位置に内周溝を形成すると共に、この内周溝の大径フランジ部と反対側の縁から大径筒部内を通って外部に引き出される複数の引出片を形成し、
前記引出片を引出方向へ引っ張ると小径フランジ部が大径フランジ部と反対側へ倒れて隔壁の穴に挿入可能な径まで縮径し、引っ張りを解除すると小径フランジ部が元の状態に復元するようになっている、
ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るグロメットは、引出片の先端部に、小径フランジ部を大径フランジ部と反対側へ倒れた状態に保持する止め具を取り付けた状態にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るグロメットは、大径筒部の内周面の、小径フランジ部の内側に相当する位置に、内周溝が形成されているため、この内周溝の大径フランジ部と反対側の縁から大径筒部内を通って外部に引き出されている引出片を引出方向へ引っ張ると、小径フランジ部が大径フランジ部と反対側へ倒れるように変形する。このため、小径フランジ部の外径が小さくなって、隔壁の穴に容易に挿入できるようになる。その状態で小径フランジ部を、大径フランジ部が隔壁に突き当たるまで挿入した後、引出片の引っ張りを解除すると、ゴムの弾力性で小径フランジ部が元の状態に復元し、小径フランジ部と大径フランジ部が隔壁を挟み付けて、グロメットが隔壁に取り付けられた状態となる。このように本発明によれば、小径フランジ部の縮径を容易に行えるため、グロメットを隔壁の穴に取り付ける作業を簡単に効率よく行うことができる。
【0011】
なお、引出片の先端部に、小径フランジ部を大径フランジ部と反対側へ倒れた状態に保持する止め具を取り付けておけば、グロメットの取付け現場では、引出片を引っ張ることなく小径フランジ部を隔壁の穴に挿入することができ、挿入後、止め具を弛めるか取り外すだけで、グロメットの取付けを行うことができる。このため、取付け作業をさらに簡単に効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の一実施形態を示す。図1において、先に説明した図3と同一部分には同一符号を付してある。このグロメット11も従来同様、小径筒部13、大径筒部15、連結筒部17、小径フランジ部19、大径フランジ部21、嵌着溝23を備えている。小径筒部13はテープ巻きTによりワイヤーハーネスWに固定される。
【0013】
このグロメット11が従来のものと異なる点は、図1(A)、(B)に示すように、大径筒部15の内周面の、小径フランジ部19の内側に相当する位置に、内周溝25を形成すると共に、この内周溝25の大径フランジ部21と反対側(連結筒部17側)の縁から大径筒部15内を通って外部に引き出される複数の引出片27を形成したことである。図示の例では、引出片27は周方向に四分割された形で四本形成されているが、引出片27の本数は制限されない。
【0014】
このグロメット11は、引出片27を引出方向へ引っ張ると、図1(C)に示すように小径フランジ部19が波形状に変形する等して大径フランジ部21と反対側へ倒れ、隔壁Kの穴Hに挿入可能な径まで縮径する。このため小径フランジ部19を隔壁Kの穴Hに簡単に挿入することができる。小径フランジ部19を大径フランジ部21が隔壁Kに突き当たるまで穴Hに挿入した後、引出片27の引っ張りを解除すると、図1(D)に示すように小径フランジ部19がゴムの弾力性で元の状態に復元し、小径フランジ部19と大径フランジ部21が隔壁Kの穴Hの縁を挟み付ける状態となる。したがってグロメット11の取付けを簡単に短時間で行うことができる。
【0015】
また、車輌の解体などの際に、グロメット11を隔壁Kから取り外す必要が生じたときは、引出片27を引っ張るだけで小径フランジ部19が縮径してグロメット11を簡単に引き抜くことができる。したがってワイヤーハーネスを車輌から簡単に取り外すことができ、リサイクル性も向上する。
【0016】
なお、引出片27を引出方向へ引っ張ったときに、小径フランジ部19が大径フランジ部21と反対側へ倒れやすくするためには、内周溝25を図示のように断面V字形にすることが好ましい。また、引出片27を引出方向へ引っ張りやすくするためには、引出片27の先端部外周面に周方向の突縁29を形成しておくことが好ましい。
【0017】
次に、図2を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。このグロメット11は、引出片27の先端部に、各引出片27の先端部を束ねて小径フランジ部19を大径フランジ部21と反対側へ倒れた状態に保持する止め具31を取り付けたものである。止め具31としては、ロック機能及びロック解除機能付きの結束バンドなどを使用することができる。上記以外の構成は図1の実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付してある。
【0018】
グロメット11を上記のような状態にして出荷すると、グロメットの取付け現場では、引出片27を引っ張ることなく小径フランジ部19を隔壁Kの穴Hに挿入することができ、挿入後、止め具31を弛めるか取り外すだけで、グロメット11の取付けを行うことができる。このため、取付け作業をさらに簡単に効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は本発明に係るグロメットの一実施形態を示す断面図、(B)は(A)のグロメットの正面図、(C)は(A)のグロメットを隔壁に取り付ける過程を示す断面図、(D)は(A)のグロメットを隔壁に取り付けた状態を示す断面図。
【図2】本発明に係るグロメットの他の実施形態を示す断面図。
【図3】(A)は従来の一般的なグロメットを示す断面図、(B)は(A)のグロメットを隔壁に取り付ける過程を示す断面図、(C)は(A)のグロメットを隔壁に取り付けた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0020】
11:グロメット
13:小径筒部
15:大径筒部
17:連結筒部
19:小径フランジ部
21:大径フランジ部
23:嵌着溝
25:内周溝
27:引出片
29:突縁
31:止め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネス等の長尺体が挿入される小径筒部と、それより内径が大きい大径筒部と、前記小径筒部と大径筒部を連結する連結筒部と、前記大径筒部の外周に形成された小径フランジ部及び大径フランジ部と、この大径フランジ部と小径フランジ部の間に形成された嵌着溝とを備えたゴム製のグロメットにおいて、
前記大径筒部の内周面の小径フランジ部の内側に相当する位置に内周溝を形成すると共に、この内周溝の大径フランジ部と反対側の縁から大径筒部内を通って外部に引き出される複数の引出片を形成し、
前記引出片を引出方向へ引っ張ると小径フランジ部が大径フランジ部と反対側へ倒れて隔壁の穴に挿入可能な径まで縮径し、引っ張りを解除すると小径フランジ部が元の状態に復元するようになっている、
ことを特徴とするグロメット。
【請求項2】
引出片の先端部に、小径フランジ部を大径フランジ部と反対側へ倒れた状態に保持する止め具を取り付けたことを特徴とする請求項1記載のグロメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−118788(P2008−118788A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300185(P2006−300185)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】