説明

グロメット

【課題】グロメットにおける小径の筒部が、ワイヤハーネスの外側面に密接する形状の内側面を有する場合において、ワイヤハーネスに対する小径の筒部の位置を容易に微調整できること。
【解決手段】グロメット1の大径筒部10は、支持体の貫通孔の縁部に接しつつ支持体の貫通孔を覆う部分である。グロメット1の小径筒部20は、大径筒部10と連なり大径筒部10よりも小さな外径で形成された部分である。小径部20の外側面には、外側へ突起する取手部50が形成されている。小径筒部20の内側面には、コルゲートチューブの外側面の凹み部に嵌る環状の突起部21,22が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディなどの支持体の貫通孔の部分においてその貫通孔に通されるワイヤハーネスを保護するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
グロメットは、ワイヤハーネスが通される筒状の弾性体からなり、自動車のボディなどの支持体における貫通孔が形成された部分に取り付けられる。グロメットは、支持体の貫通孔に通されるワイヤハーネスを保護するとともに、支持体の貫通孔におけるワイヤハーネスとの間の隙間を塞ぎ、防水機能及び防塵機能を果たす。
【0003】
一般に、グロメットは、特許文献1の図5に示されるように、支持体の貫通孔の縁部に接しつつその貫通孔を覆う大径の筒部と、その大径の筒部と連なり、大径の筒部よりも小さな外径で形成された小径の筒部とを有する。大径の筒部は、支持体の貫通孔におけるワイヤハーネスとの間の隙間を塞ぐ機能を果たし、小径の筒部は、グロメットとワイヤハーネスとの間の隙間を塞ぐ機能を果たす。
【0004】
また、特許文献1には、グロメットとは別体の小径の筒部が、グロメットの内側に嵌め入れられた構造についても示されている。この場合、粘着テープが、グロメットの内側の小径の筒部及びワイヤハーネスに対して巻き付けられることにより、グロメットとワイヤハーネスとの間の隙間が塞がれる。
【0005】
ところで、グロメットにおける小径の筒部は、ワイヤハーネスの外側面に密接する形状の内側面を有する場合が多い。これにより、グロメットとワイヤハーネスとの間に隙間が生じず、グロメット内への液体及び粉塵の浸入が防がれる。例えば、グロメットに通されるワイヤハーネスが、その外装を形成する保護チューブを備える場合、グロメットにおける小径の筒部は、保護チューブの外側面に密接する形状の内側面を有する。
【0006】
また、ワイヤハーネスがグロメットの中空部に通される際、ワイヤハーネスを小径の筒部に通す作業の円滑化のため、小径の筒部の中空部に挿入され、小径の筒部を拡張させる工具が用いられる。これにより、ワイヤハーネスは、小径の筒部の内側面に引っ掛かることなく、スムーズに小径の筒部の中空部に通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−8335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、小径の筒部を拡張する工具を用いてワイヤハーネスを従来のグロメットの中空部に通す作業において、ワイヤハーネスに対する小径の筒部の位置を微調整することは難しい。また、ゴムなどの弾性体からなるグロメットは、ワイヤハーネスに対する摩擦抵抗が大きいため、ワイヤハーネスがグロメットの中空部に通された後に、ワイヤハーネスに対する小径の筒部の位置を微調整することも難しい。即ち、従来のグロメットは、ワイヤハーネスに対する小径の筒部の位置を微調整することが難しいという問題点を有する。
【0009】
本発明は、グロメットにおける小径の筒部が、ワイヤハーネスの外側面に密接する形状の内側面を有する場合において、ワイヤハーネスに対する小径の筒部の位置を容易に微調整できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るグロメットは、ワイヤハーネスが通される筒状の弾性体からなり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、支持体の貫通孔の縁部に接しつつ前記支持体の貫通孔を覆う第一筒部である。
(2)第2の構成要素は、前記第一筒部と連なり前記第一筒部よりも小さな外径で形成された第二筒部である。
(3)第3の構成要素は、前記第二筒部の外側面に突起して形成された取手部である。
【0011】
また、本発明に係るグロメットにおいて、一対の前記取手部又は複数対の前記取手部が、前記第二筒部の外側面における前記第二筒部の軸心に対して対称の位置に形成されていることが考えられる。
【0012】
また、本発明に係るグロメットにおいて、前記取手部が、前記第二筒部の先端部における外側面に形成されていることが考えられる。
【0013】
また、本発明に係るグロメットが、さらに以下の構成要素を備えれば好適である。
(4)第4の構成要素は、前記第二筒部の内面に周方向に沿って環状に突起して形成され、前記ワイヤハーネスが備えるコルゲートチューブの外面の凹み部に嵌る環状突起部である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るグロメットにおいて、小径の第二筒部の外側面に突起した取手部が引っ張られることにより、工具を用いることなしに、第二筒部を拡張させることが可能である。従って、本発明に係るグロメットにおける小径の第二筒部が、ワイヤハーネスの外側面に密接する形状の内側面を有する場合であっても、取手部をつまんで第二筒部を拡張させつつ、ワイヤハーネスに対する第二筒部の位置を微調整することは容易である。
【0015】
また、本発明に係るグロメットにおいて、一対の取手部又は複数対の取手部が、第二筒部の外側面における第二筒部の軸心に対して対称の位置に形成されていれば、一対の取手部各々を反対方向へ引っ張っることにより、第二筒部を拡張させることがより容易となる。また、一対の取手部をつまんで第二筒部を大きく拡張させ、工具を用いずにワイヤハーネスを第二筒部の中空部に通すことも可能となる。
【0016】
また、本発明に係るグロメットにおいて、取手部が、ワイヤハーネスに対する引っ掛かりが生じやすい第二筒部の先端部に形成されていれば、ワイヤハーネスに対する第二筒部の位置をよりスムーズに調整できる。
【0017】
また、ワイヤハーネスが、その外装を形成するコルゲートチューブを備える場合、本発明に係るグロメットにおける第二筒部の内面に、コルゲートチューブの外面の凹み部に嵌る環状突起部が形成されていれば好適である。この場合、環状起部が、第二筒部とコルゲートチューブとの隙間を塞ぎ、グロメットの内側への液体及び粉塵の浸入が防止される。また、取手部をつまんで第二筒部を拡張させつつ、環状突起部がコルゲートチューブの凹み部へ適切に嵌るように第二筒部の位置を微調整することは容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るグロメット1の正面図及び断面図である。
【図2】グロメット1における取手部50の部分の斜視図である。但し、一部に断面図を含む。
【図3】インナー及びワイヤハーネスのコルゲートチューブと組み合わされたグロメット1の側面側の断面図である。
【図4】組み合わされる前のグロメット1及びインナーの斜視図である。
【図5】グロメット1と組み合わされるインナーの分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るグロメット1Aの側面側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るグロメット1の構成について説明する。なお、図1(a)は、グロメット1の正面図である。また、図1(b)、図1(c)及び図1(d)は、それぞれ図1(a)に示されるE−E平面、F−F平面及びG−G平面を切断面とするグロメット1の断面図である。
【0021】
グロメット1は、自動車のボディなどの支持体6における貫通孔6Aが形成された部分に取り付けられ、電線7及びコルゲートチューブ8を備えたワイヤハーネス9を保護する用具である。支持体6の貫通孔6Aは、ワイヤハーネス9の通路の一部である。グロメット1は、支持体6の貫通孔6Aに通されるワイヤハーネス9の周囲を覆って保護するとともに、支持体6の貫通孔6Aにおけるワイヤハーネス9との間の隙間を塞ぎ、防水機能及び防塵機能を果たす。
【0022】
グロメット1は、ワイヤハーネス9が通される中空部2を囲む筒状の弾性体からなり、相対的に外径の大きな部分である大径筒部10と、相対的に外径の小さな部分である小径筒部20とを有している。図3及び図4に示されるように、グロメット1は、その内側に嵌め入れられるインナー40と組み合わされた状態で、支持体6における貫通孔6Aの縁部に取り付けられる。
【0023】
ここで、図3から図5を参照しつつ、ワイヤハーネス9と、グロメット1と組み合わされるインナー40とについて説明する。ワイヤハーネス9は、電線7とその電線7の周囲を覆うコルゲートチューブ8とを備えている。なお、コルゲートチューブ8は、ワイヤハーネス9が、その外装部材として備える保護チューブの一例である。
【0024】
<コルゲートチューブ>
コルゲートチューブ8は、電線7の周囲を覆う筒状の部材であり、長手方向に沿って表面に環状の凹み部81と環状の凸部82とが交互に形成された蛇腹構造を有する。コルゲートチューブ8は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂又はポリエチレン(PE)などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0025】
<インナー>
インナー40は、グロメット1の内側に嵌め入れられる部材であり、グロメット1とともに支持体6の貫通孔6Aの縁部に取り付けられる。インナー40は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂又はポリエチレン(PE)などの樹脂からなる成形部材である。
【0026】
図3及び図4に示されるように、インナー40は、コルゲートチューブ8が通される中空部3を囲む筒状に形成された本体部42と、その本体部42の一部に形成されたフランジ部43及びロック部44とを備える。
【0027】
フランジ部43は、筒状の本体部42における一端の外側面に、さらに外側へ張り出して形成された部分である。フランジ部43は、グロメット1の内側に周方向に沿って形成された溝である内側溝12に嵌め入れられる。フランジ部43がグロメット1の内側溝12に嵌め入れられることにより、グロメット1及びインナー40は一体に組み合わされる。
【0028】
ロック部44は、本体部42の外側の部分に片持ち梁状に形成され、本体部42の外側から内側へ向かう方向へ変位可能な部分である。ロック部44は、本体部42が支持体6の貫通孔6Aに挿入される際に内側へ変位し、その後、元の状態へ戻る。これにより、インナー40のロック部44は、グロメット1の一部であるロック部13とともに支持体6における貫通孔6Aの縁部を挟み込み、グロメット1及びインナー40を支持体6に固定する。即ち、グロメット1のロック部13及びインナー40のロック部44は、グロメット1及びインナー40を支持体6における貫通孔6Aの縁部に固定するロック機構を構成する。
【0029】
また、インナー40の本体部42の内側の面には、周方向に沿って形成された突起部であるリブ45が形成されている。このリブ45は、図3に示されるように、ワイヤハーネス9が備えるコルゲートチューブ8の外面の凹み部81に嵌る部分である。リブ45がコルゲートチューブ8の凹み部81に嵌ることにより、インナー40に対するコルゲートチューブ8の位置ずれが防止される。
【0030】
図4に示されるように、本実施形態におけるインナー40は、コルゲートチューブ8を挟み込むように組み合わされる2つの分割部材41から構成されている。2つの分割部材41は、コルゲートチューブ8の両側から組み合わされることによって筒状となる。また、2つの分割部材41がコルゲートチューブ8の両側から組み合わされる際に、分割部材41の各々に設けられたリブ45が、コルゲートチューブ8の凹み部81に嵌り込む。
【0031】
2つの分割部材41は、同じ形状の部材であり、相手側の分割部材41と組み合わされた状態を維持するロック機構を備えている。図5に例示されるインナー40のロック機構は、突起461が設けられたアーム部46と、環状の枠部47とにより構成されている。2つの分割部材41が組み合わされることにより、一方の分割部材41におけるアーム部46が、他方の分割部材41における枠部47の内側に嵌り込むとともに、アーム部46の突起部461が、枠部47の縁471に引っ掛かる。これにより、2つの分割部材41は筒状に組み合わされた状態で維持される。
【0032】
<グロメットの詳細な構造>
以下、グロメット1の詳細な構造について説明する。グロメット1は、弾性を有する材料からなる部材であり、例えば、それ全体がゴム又はゴム系材料であるエラストマー(elastic polymer)からなる部材である。なお、エラストマーには、天然ゴム及び合成ゴムなどの加硫ゴム、並びにウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムなどの熱硬化性樹脂系エラストマーが含まれる。
【0033】
図1から図4に示されるように、グロメット1の大径筒部10は、支持体6の貫通孔6Aの縁部に接しつつ支持体6の貫通孔6Aを覆う部分である。また、グロメット1の小径筒部20は、大径筒部10と連なり、大径筒部10よりも小さな外径で形成された部分である。
【0034】
以下の説明において、大径筒部10における小径筒部20に繋がる部分を大径筒部10の根元部と称し、大径筒部10における小径筒部20に対して反対側の端部を大径筒部10の先端部と称する。同様に、小径筒部20における大径筒部10に繋がる部分を小径筒部20の根元部と称し、小径筒部20における大径筒部10に対して反対側の端部を小径筒部20の先端部と称する。
【0035】
図1から図3に示されるように、大径筒部10の先端部には、支持体6における貫通孔6Aの縁部に密接する環状の枠部11が形成されている。また、図1、図2及び図4に示されるように、大径筒部10の内側には、インナー40のフランジ部43が嵌め入れられる内側溝12が形成されている。さらに、図1及び図3に示されるように、大径筒部10の内側には、インナー40のロック部44とともに支持体6における貫通孔6Aの縁部を挟み込むロック部13が形成されている。
【0036】
図3に示されるように、グロメット1及びインナー40が支持体6の貫通孔6Aの部分に取り付けられることにより、大径筒部10の枠部11は、変形しつつ支持体6における貫通孔6Aの縁部に押し付けられ、貫通孔6Aの縁部に密接する。これにより、支持体6における貫通孔6Aの縁部とワイヤハーネス9との間の隙間が塞がれる。
【0037】
また、図1から図4に示されるように、小径筒部20の内側の面には、環状の突起部である第一突起部21及び第二突起部22が形成されている。
【0038】
第一突起部21は、小径筒部20の先端部の内面に周方向に沿って環状に形成された突起部である。第一突起部21は、ワイヤハーネス9が備えるコルゲートチューブ8の外面の凹み部81に嵌ってその凹み部81を密閉する形状で形成されている。図3に示される例では、第一突起部21は、コルゲートチューブ8の凹み部81の底にほぼ達する程度の高さで形成されている。
【0039】
一方、第二突起部22は、小径筒部20における第一突起部21の位置よりも大径筒部10に近い位置の内面に周方向に沿って環状に形成された突起部である。第二突起部22は、第一突起部21よりも低い高さで、かつ、ワイヤハーネス9が備えるコルゲートチューブ8の外面の凹み部81に嵌ってその凹み部81を密閉する形状で形成されている。図3に示される例では、第二突起部22は、コルゲートチューブ8の凹み部81の表層部分に達する程度の高さで形成されている。
【0040】
第一突起部21及び第二突起部22は、小径筒部20の軸心方向において間隔を空けて並んで形成され、第一突起部21及び第二突起部22の両方が、コルゲートチューブ8の凹み部81に嵌る。そのため、第一突起部21及び第二突起部22は、小径筒部20の軸心方向における中心間隔が、コルゲートチューブ8における複数の凹み部81のピッチの整数倍に一致するように形成されている。なお、図3に示される例では、小径筒部20の軸心方向における第一突起部21及び第二突起部22の中心間隔は、コルゲートチューブ8における複数の凹み部81のピッチの2倍に一致する。
【0041】
また、図1から図3に示されるように、グロメット1における小径筒部20の外側面には、さらに外側へ突起して形成された取手部50が形成されている。弾性体からなるグロメット1において、小径筒部20の外側面に突起した取手部50がさらに外側へ引っ張られることにより、小径筒部20は、その内径が拡張するように弾性変形する。即ち、グロメット1において、取手部50を引っ張る操作により、工具を用いることなしに、小径筒部20を拡張させることが可能である。
【0042】
また、図1に示されるように、小径筒部20の外側面には、二対の取手部50が、小径筒部20の軸心に対して対称の位置に形成されている。図1に示される例では、一方の一対の取手部50は、E−E平面に沿う位置に形成され、他方の一対の取手部50は、E−E平面に直交するF−F平面に沿う位置に形成されている。
【0043】
また、図1から図3に示されるように、各取手部50は、小径筒部20の先端部における外側面に形成されている。本実施形態において、各取手部50は、小径筒部20における環状の第一突起部21が形成された内側面の位置に対応する外側面の位置に形成されている。
【0044】
<効果>
図3に示されるように、グロメット1における小径筒部20は、ワイヤハーネス9の外側面、即ち、コルゲートチューブ8の外側面に密接する形状の内側面を有する。そのような場合においても、小径筒部20の外側面に突起した取手部50をつまんで小径筒部20を拡張させつつ、コルゲートチューブ8に対する小径筒部20の位置を微調整することは容易である。
【0045】
また、グロメットにおいて、2組の一対の取手部50、即ち、二対の取手部50が、小径筒部20の外側面における小径筒部20の軸心に対して対称の位置に形成されている。そのため、一対の取手部50各々を反対方向へ引っ張っることにより、小径筒部20を拡張させやすい。そのため、一対の取手部50をつまんで小径筒部20を大きく拡張させ、工具を用いずにコルゲートチューブ8を小径筒部20の中空部に通すことも可能となる。
【0046】
また、グロメット1において、取手部50は、コルゲートチューブ8に対する引っ掛かりが生じやすい小径筒部20の先端部に形成されている。このような取手部50は、小径筒部20の先端部を拡張させるのに適している。そのため、グロメット1が採用されれば、コルゲートチューブ8に対する小径筒部20の位置の調整がよりスムーズとなる。
【0047】
ワイヤハーネス9のコルゲートチューブ8が、グロメット1における小径筒部20に通されると、環状の第一突起部21及び第二突起部22が、コルゲートチューブ8の外面の凹み部81に嵌り、小径筒部20とコルゲートチューブ8との隙間が塞がれる。即ち、グロメット1が採用されれば、コルゲートチューブ8を筒状のグロメット1の中空部2に通すという簡易な作業により、コルゲートチューブ8を備えたワイヤハーネス9とグロメット1との隙間を塞いで防水及び防塵を実現できる。
【0048】
また、第一突起部21は、小径筒部20の先端部の内面に形成されているため、第一突起部21がコルゲートチューブ8の凹み部81に正しく嵌り込んだことの確認が容易である。
【0049】
また、小径筒部20の内側面には環状の第一突起部21及び第二突起部22が設けられ、小径筒部20の外側面には取手部50が設けられている。そのため、取手部50をつまんで小径筒部20を拡張させつつ、第一突起部21及び第二突起部22がコルゲートチューブ8の凹み部81へ適切に嵌るように小径筒部20の位置を微調整することも容易である。
【0050】
また、第一突起部21及び第二突起部22による二段階の嵌め合い構造が、より確実にコルゲートチューブ8とグロメット1との間の防水及び防塵の機能を果たす。また、第一突起部21及び第二突起部22は、コルゲートチューブ8の凹み部81のピッチに対応した間隔で形成されている。そのため、第一突起部21がコルゲートチューブ8の凹み部81に正しく嵌り込んでいることさえ確認されれば、第二突起部22も確実にコルゲートチューブ8の凹み部81に正しく嵌る。また、第二突起部22は、第一突起部21よりも低く形成されているため、コルゲートチューブ8が小径筒部20に通される際の抵抗は比較的小さく抑えられる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るグロメット1Aについて説明する。グロメット1Aは、図1から図4に示されたグロメット1と比較して、大径筒部10の形状のみが異なる構成を有している。以下、グロメット1Aにおけるグロメット1と異なる点についてのみ説明する。
【0052】
図6は、グロメット1Aの断面図であり、図3に示されるグロメット1の断面図に相当する。なお、図6において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。また、図6において、ワイヤハーネス9及び支持体6が仮想線(二点鎖線)によって示されている。
【0053】
グロメット1Aは、インナー40なしで支持体6における貫通孔6Aの縁部に取り付けられるグロメットである。グロメット1Aの大径筒部10の外側の面には、周方向に沿って形成された環状の溝である外側溝14が形成されている。支持体6における貫通孔6Aの縁部が大径筒部10の外側溝14に嵌り込むと、外側溝14の両側壁を形成する第一枠部11A及び第二枠部11Bが、支持体6における貫通孔6Aの縁部の表裏両側の面に接し、大径筒部10は、支持体6の貫通孔6Aを覆う。
【0054】
グロメット1Aは、支持体6の貫通孔6Aに対して一方向に通されるだけで、グロメット1Aにおける大径筒部10外周に形成された外側溝14に支持体6における貫通孔6Aの縁部が嵌り込み、支持体6に固定される。このようなグロメット1Aは、ワンモーションタイプのグロメットなどと称される。
【0055】
また、コルゲートチューブ8を備えたワイヤハーネス9は、筒状のグロメット1Aの中空部2に通される。大径筒部10は、支持体6の貫通孔6Aの幅よりも広い幅で形成されている。大径筒部10は、支持体6の貫通孔6Aに挿入される際に外形が収縮し、支持体6における貫通孔6Aの縁部が大径筒部10の外側溝14に嵌り込む。
【0056】
また、グロメット1Aの大径筒部10には、ワイヤハーネス9に沿って伸びて形成されたテープ巻き部15が形成されている。粘着テープが、テープ巻き部15及びワイヤハーネス9のコルゲートチューブ8に対してそれらを束ねるように巻き付けられることにより、グロメット1Aがコルゲートチューブ8に対して固定される。
【0057】
また、グロメット1Aは、グロメット1と同様に、大径筒部10に連なる小径筒部20を備え、小径筒部20の外側面には取手部50が形成され、小径筒部20の内側面には環状の第一突起部21及び第二突起部22が形成されている。グロメット1Aにおける小径筒部20は、グロメット1における小径筒部20と同じ構造を備えている。従って、グロメット1Aも、グロメット1と同様に、小径筒部20の部分に取手部50、第一突起部21及び第二突起部22を備えている。
【0058】
図6に示されるグロメット1Aが採用された場合も、グロメット1が採用された場合と同様の効果が得られる。即ち、本発明の適用対象となるグロメットは、必ずしもインナー40と組み合わされるグロメットには限られない。
【0059】
<その他>
以上に示された各実施形態に係るグロメット1,1Aが、第一突起部21及び第二突起部22の一方又は両方を除いた残りの構成を備えることも考えられる。例えば、グロメット1,1Aに通されるワイヤハーネス9が備える保護チューブが、外側面に凹凸のない丸い筒状又は四角い筒状に形成された保護チューブであり、グロメット1,1Aが、第一突起部21及び第二突起部22の両方を除いた残りの構成を備える場合が考えられる。この場合、小径筒部20の内側面全体が、ワイヤハーネス9の保護チューブの外側面に密接する。
【0060】
また、グロメット1,1Aが、小径筒部20の外側面に1つの取手部50のみ、又は、一対の取手部50のみが形成された構成を備えることも考えられる。また、グロメット1,1Aが、小径筒部20の外側面に形成された奇数個の取手部50を備えることも考えられる。例えば、3個の取手部50が、小径筒部20の軸心方向から見て正三角形の3つの頂点に相当する位置に設けられることなどが考えられる。
【符号の説明】
【0061】
1,1A グロメット
2 グロメットの中空部
3 インナーの中空部
6 支持体
6A 支持体の貫通孔
7 電線
8 コルゲートチューブ
9 ワイヤハーネス
10 大径筒部
11 大径筒部の枠部
11A 大径筒部の第一枠部
11B 大径筒部の第二枠部
12 大径筒部の内側溝
13 大径筒部のロック部
14 大径筒部の外側溝
15 テープ巻き部
20 小径筒部
21 第一突起部
22 第二突起部
40 インナー
41 分割部材
42 インナーの本体部
43 インナーのフランジ部
44 インナーのロック部
45 インナーのリブ
46 アーム部
47 受け部
50 取手部
81 コルゲートチューブの凹み部
82 コルゲートチューブの凸部
211 第一突起部のテーパ面
461 アーム部の突起
471 受け部の穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスが通される筒状の弾性体からなるグロメットであって、
支持体の貫通孔の縁部に接しつつ前記支持体の貫通孔を覆う第一筒部と、
前記第一筒部と連なり前記第一筒部よりも小さな外径で形成された第二筒部と、
前記第二筒部の外側面に突起して形成された取手部と、を備えることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
一対の前記取手部又は複数対の前記取手部が、前記第二筒部の外側面における前記第二筒部の軸心に対して対称の位置に形成されている、請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記取手部は、前記第二筒部の先端部における外側面に形成されている、請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記第二筒部の内面に周方向に沿って環状に突起して形成され、前記ワイヤハーネスが備えるコルゲートチューブの外面の凹み部に嵌る環状突起部をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175719(P2012−175719A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31921(P2011−31921)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】