説明

グロメット

【課題】グロメットの遮音性能を高める。
【解決手段】グロメットの閉鎖壁の中央に設けたワイヤハーネス貫通穴の周縁から突設した割り筒部および前記ワイヤハーネス貫通穴の周縁から外周に向けて切り込んだスリットを備え、該スリットにより分断された閉鎖壁の各端縁に沿って軸線方向あるいは/および径方向に突出した合わせ壁を対向して設け、スリットを挟む両側端縁に軸線方向あるいは/および径方向の位置ずれが生じた時に前記合わせ壁のいずれかの部分が互いに対向して当接される構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に配索するワイヤハーネスに外装するグロメットに関し、特に、エンジンルームと車室とを仕切る車体パネルの貫通穴に装着するグロメットにおいて、エンジンルーム側から車室への遮音性能を高めたグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、車室内の静寂性を保つため、エンジンルームから車室への騒音の伝達を防止する遮音機能が高いグロメットが求められている。この種の遮音性を高めたグロメットとして、本出願人は特開2010−120615号公報で、図11(A)(B)に示すグロメット100を提供している。
【0003】
前記グロメット100は、ワイヤハーネス120を密着して貫通する小径筒部101に、外周に環状の車体係止凹部102を設けた拡径筒部103の一端を連続させ、該拡径筒部103の他端に閉鎖壁104を設け、拡径筒部103内を中空の空気層105として、エンジンルーム側から伝達される騒音を空気層105で吸音して騒音の低減化を図っている。前記閉鎖壁104には、中央のワイヤハーネス挿通穴106を設けていると共に、該ワイヤハーネス挿通穴106の両側から直径方向のスリット108を設けている。該スリット108はグロメットを金型成形する際に拡径筒部103の成形に必要な中子の取り出しのために必須である。また、閉鎖壁104のワイヤハーネス挿通穴106の周縁から半割りのテープ巻き筒部109を突設している。
該グロメット100にワイヤハーネス120を貫通させた後に、小径筒部101の先端とワイヤハーネス120の外周に粘着テープT1を巻き付けると共に、テープ巻き筒部109とワイヤハーネス120の外周にかけて粘着テープT2を巻き付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−120615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、閉鎖壁104にスリット108を設ける必要があり、該スリット108があると、図12(A)(B)に示すように、スリット108の両側分割端から突設した半割りのテープ巻き筒部109をワイヤハーネス120に粘着テープT2で巻き付ける際に、該半割りのテープ巻き筒部109にズレが発生し、スリット108に音漏れを生じる隙間108hが発生しやすい。
また、グロメット100の半割りテープ巻き筒部109から出たワイヤハーネスが急激に曲げられる場合も、スリット108に音漏れが生じる隙間108hが発生しやすい。
【0006】
本発明は前記問題を解消せんとするもので、グロメットの遮音用空気層を形成する閉鎖壁に設けられるスリットに音漏れが生じる隙間を開けないようにして、グロメットの遮音性能を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ゴムまたはエラストマーから成形され、ワイヤハーネスを密着して挿通する小径筒部と、該小径筒部の一端から拡径すると共に外周面に車体係止用凹部を環状に設けた拡径筒部と、該拡径筒部の大径側端の内周に連続する閉鎖壁と、該閉鎖壁の中央に設けたワイヤハーネス貫通穴と、該ワイヤハーネス貫通穴の周縁から突設した割り筒部およびワイヤハーネス貫通穴の周縁から外周に向けて切り込んだスリットを備えたグロメットであって、
前記スリットにより分断された閉鎖壁の各端縁に沿って、軸線方向あるいは/および径方向に突出した合わせ壁を対向して設け、スリットを挟む両側端縁に軸線方向あるいは/および径方向の位置ずれが生じた時に前記合わせ壁のいずれかの部分が互いに対向して当接される構成とするグロメットを提供している。
【0008】
具体的には、前記合わせ壁は、分断された両側の閉鎖壁の端縁より軸線方向の外方と内方の両側に突出する合わせ壁とし、該合わせ壁を対向して設けている。
このように、スリットを挟む両側端縁に内外方向に突出する合わせ壁を対向して設けると、割り筒部とワイヤハーネスとを粘着テープで巻き付ける際に割り筒部が内外方向にずれても、突出した合わせ壁のいずれかの部分が対向して当接した状態とでき、スリットの開きを防止できる。その結果、音漏れが生じる隙間が発生するのを防止できる。
【0009】
あるいは、前記合わせ壁は、前記スリットにより分断された一方の端縁から軸線方向の外向きに突出させた後に他方の径方向へと屈折させた外側L字状の合わせ壁を突設し、前記径方向の屈折部を他方の閉鎖壁の外面に重ね、かつ、
前記スリットにより分断された他方の端縁から軸線方向の内向きに突出させた後に前記一方の径方向へ屈折させた内側L字状の合わせ壁を突設し、前記径方向の屈折部を一方の閉鎖壁の内面に重ねる構成としている。
【0010】
前記のように、スリットを挟む分断された閉鎖壁の端縁に沿って、L字状の合わせ壁を突出し、該合わせ壁の径方向の屈折部を対向する閉鎖壁の内外面に重ねる構成とすると、ワイヤハーネスに割り筒部が位置ずれして粘着テープで巻き付けられても、スリットが開いて音漏れが発生する隙間が生じるのを防止できる。
【0011】
前記スリットは直径方向に設け、分断された各閉鎖壁は一方の半径部分に外側L字状の合わせ壁を設け、他方の半径部分に内側L字状の合わせ壁を設け、対向して設ける前記外側L字状の合わせ壁と内側L字状の合わせ壁とは両側の半径部分で逆に設けてもよい。
前記のように、半径方向で重ね合わせ面を軸線方向で逆とすると、スリットをより開きにくくすることができる。
【0012】
あるいは、前記合わせ壁は、前記スリットにより分断された一方の閉鎖壁の端縁から軸線方向の外方または内方に突出させた合わせ壁と、他方の閉鎖壁の端縁から軸線方向の外方と内方に突出させると共に内方または外方の突出端から径方向の屈折部を設けた合わせ壁とし、
前記軸線方向の突出部分同士を重ね合わせると共に、前記他方の合わせ壁の径方向の屈折部を前記一方の分断された端縁の内面または外面に重ねあわせる構成としている。
【0013】
あるいは、前記閉鎖壁を厚肉とし、該閉鎖壁に設けるスリットを屈折させ、該スリットで分断された一方の閉鎖壁の端縁は外側肉厚部を径方向に突出させた外側合わせ壁とする一方、他方の閉鎖壁の端縁は内側肉厚部を径方向に突出させた内側合わせ壁とし、前記外側合わせ壁と内側合わせ壁とを閉鎖壁の肉厚方向で重ねる構成としている。
【0014】
前記のように、閉鎖壁を厚肉とし、スリットを屈折して設けることで、合わせ壁を閉鎖壁から軸線方向に突出させずに設けている。
閉鎖壁を厚肉とすることで、スリットが若干開きにくくなるが、スリットから軸線方向に突出する合わせ壁を設けないことで成形が容易になる。
【0015】
前記合わせ壁の相手方との対向面は梨地面または凹凸面とすることが好ましい。
梨地処理を施すと摩擦力が高まり滑りが防止できる。また、凹凸加工を施して互いに嵌合させると滑りを確実に防止できる。
【0016】
さらに、閉鎖壁に設けるスリットは割り筒部の径方向の両側に延在する直径方向の1本のスリット、120度間隔をあけて設けた3本のスリット、90度間隔をあけて設けた4本のスリットのいずれでもよく、これら各スリットで分断された端縁に沿って前記合わせ壁を突設している。
【発明の効果】
【0017】
前記のように、グロメットの閉鎖壁の中央に設ける割り筒部から外径方向に延在するスリットの両側端縁に沿って合わせ壁を対向して設けると、割り筒部とワイヤハーネスとを粘着テープで巻き付ける時に割り筒部が位置ずれしても、対向した合わせ壁を互いに重ねることができるため、スリットが大きく開いて音漏れが生じる隙間の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のグロメットをワイヤハーネスに外嵌して車体パネルの貫通穴に装着した状態を示す断面図である。
【図2】前記第1実施形態のグロメットの閉鎖壁側の側面図である。
【図3】(A)は図2のA−A線断面図、(B)は図2のB−B線矢視図である。
【図4】(A)(B)(C)は第1実施形態のグロメットにおいてスリットを挟む分断閉鎖壁に位置ずれが生じた場合の合わせ壁の作用を示す図面である。
【図5】(A)(B)は第1実施形態の変形例を示し、合わせ壁の断面図である。
【図6】第2実施形態のグロメットを示し、(A)は閉鎖壁側の側面図、(B)は(A)のC−C線断面図である。
【図7】第2実施形態のグロメットの変形例を示し、図6(A)のD−D線断面図である。
【図8】(A)は第3実施形態のグロメットの合わせ壁を示す断面図、(B)は該第3実施形態の変形例を示す断面図である。
【図9】第4実施形態のグロメットを示し、(A)は閉鎖壁側の側面図、(B)は(A)のE−E線断面図、(C)は(A)のF−F線断面図である。
【図10】第5実施形態のグロメットの閉鎖壁側の側面図である。
【図11】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【図12】(A)(B)は従来の問題点を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に第1実施形態のグロメット1(1−A)を示す。
【0020】
グロメット1は図1に示すように、自動車のエンジンルームと車室を仕切る車体パネルPに設けた貫通穴Hに、ワイヤハーネス2に外装して装着するものであり、エンジンルームから車室への浸水防止を図ると共に、エンジンルームの騒音が車室へ伝わらないように遮音機能も保持している。なお、後述する他の実施形態のグロメットの適用箇所は該第1実施形態のグロメットと同様である。
【0021】
前記グロメット1は、ゴムまたはエラストマー(本実施形態はEPDM)を金型に射出して成形した一体物のグロメットである。
グロメット1はワイヤハーネスを密着して挿通する小径筒部10と、該小径筒部10の一端から拡径すると共に外周面に車体係止用凹部11を環状に設けた拡径筒部12と、該拡径筒部12の大径側端の内周に連続する閉鎖壁13と、該閉鎖壁13の中央に設けたワイヤハーネス貫通穴14と、該ワイヤハーネス貫通穴14の周縁から突設した半割り筒部15(15A、15B)およびワイヤハーネス貫通穴14の周縁から外周に向けて径方向に切り込んだ直径方向のスリット20を備え、閉鎖壁13を2つの分断閉鎖壁13Aと13Bに分割している。スリット20はワイヤハーネス貫通穴14を挟んだ半径方向の両側のスリット20a、20bとからなる。
【0022】
スリット20により分断された分断閉鎖壁13A、13Bの対向する径方向端縁の全長に沿って、端縁13Ae、13Beよりグロメット軸線方向Lの外方Loと内方Liの両側に突出する合わせ壁16A、16Bを対向して設けている。これら合わせ壁16A、16Bの内外方向の両端はいずれもテーパ状としている。
【0023】
前記合わせ壁16A、16Bの各外方突出部16A−1、16B−1の突出高さH1は半割り筒部15の高さの1/4〜1/3程度としている。また、各半割り筒部15A、15Bの両側端と外方突出部16A−1、16B−1の端縁とは連続させている。
前記内方突出部16A−2、16B−2の内方への突出高さH2は前記外方突出高さH1と同等としている。
本実施形態では、半割り筒部15の高さは25mmとし、前記外方突出部の高さH1、内方突出部の高さH2は6mmとしている。
【0024】
前記スリット20で分断された端縁に沿って対向して突設する合わせ壁16A、16Bは互いに接触させてスリット20を塞ぎ、閉鎖壁13、拡径筒部12で囲まれた中空部を密閉された遮音用の空気層18としている。
【0025】
前記グロメット1に対してワイヤハーネス2の組み付けは、小径筒部10を拡げ治具で拡げながらワイヤハーネス2をグロメット1内に挿入し、拡径筒部12を通して半割り筒部15内を通して貫通させる。
その後、小径筒部10の先端外周からワイヤハーネス2の外周にかけて粘着テープT1を巻き付けて固着する。また、他端側で半割り筒部15A、15Bの外周からワイヤハーネス2の外周にかけて粘着テープT2を巻き付けて固着する。
【0026】
前記半割り筒部15A、15Bに粘着テープT2を巻き付ける時に図4(A)(B)(C)に示すように、半割り筒部15Aと15Bとに軸線方向Lおよび径方向Dに位置ずれが生じやすい。このように位置ずれが生じると、一方の半割り筒部15Aに連続した分断閉鎖壁13A側の合わせ壁16Aは、他方の半割り筒部15Bに連続した分断閉鎖壁13B側の合わせ壁16Bより図4(A)(B)に示すように外方へ位置すると共に、図4(C)に示すように傾斜して径方向にも位置ずれしやすい。
しかしながら、外方突出部16A−1、16B−1と内方突出部16A−2、16B−2を突設しているため、位置ずれが生じても、図4(B)(C)に示すように、分断閉鎖壁13A側の内方突出部16A−2が分断閉鎖壁13B側の外方突出部16B−1と対向して互いに当接させることができる。
【0027】
前記のように、半割り筒部15Aと15Bとが粘着テープT2の巻き付け時に軸線方向あるいは/および径方向に位置ずれしても、軸線方向の内外方向に突出する合わせ壁16A、16Bのいずれかの部分が対向して当接する。よって、スリット20が開いて、音漏れが生じる隙間がスリット20の部分に生じるのを防止でき、遮音性能を維持することができる。
【0028】
図5(A)(B)に第1実施形態のグロメット1の変形例を示す。
図5(A)に示す変形例では、合わせ壁16A、16Bの互いに対向する面16As、16Bsを梨地面とし、互いに接触した時に滑りにくくしている。
図5(B)に示す変形例では、合わせ壁16A、16Bの互いに対向する面16As、16Bsを梨地面とする代わりに、凹凸を設け、該凹凸を互いに嵌合して、接触面の滑りをより確実に防止している。
【0029】
図6に第2実施形態のグロメット1(1−B)を示す。
第2実施形態のグロメット1は、第1実施形態と同様に閉鎖壁13をスリット20で直径方向に分断し、中央部に半割り筒部15(15A、15B)を突設し、該半割り筒部15A、15Bの各両側縁にそれぞれ連続する分断閉鎖壁13A、13Bの端縁に沿って合わせ壁30と31を突設している。
【0030】
一方の合わせ壁30は分断された端縁から軸線方向Lの外方に突出させた外方突出部30aの先端に径方向へと屈折させた径方向屈折部30bを設けた外側L字状の合わせ壁としている。他方の合わせ壁31は軸線方向Lの内方に突出させた内方突出部31aの先端に径方向へ屈折させた径方向屈折部31bを設けた内側L字状の合わせ壁としている。
前記径方向屈折部30b、31bの長さは5mm程度としている。
【0031】
前記分断閉鎖壁13A側の外側L字状の合わせ壁30の径方向屈折部30bは分断閉鎖壁13Bの外面に重ねるものとしている。また、分断閉鎖壁13B側の内側L字状の合わせ壁31の径方向屈折部31bは分断閉鎖壁13Aの内面に重ねるものとしている。
このように、外側L字状の合わせ壁30と内側L字状の合わせ壁31を重ねることで、スリット20を挟む両側の分断された端縁が軸線方向あるいは/および径方向でズレても、いずれかの部分で対向して互いに接触し、スリット20が開いて音漏れ用の大きな隙間が生じないようにしている。
他の構成および作用は第1実施形態と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図7に第2実施形態の変形例を示す。
該グロメットでは半割り筒部15を挟む左右両側のスリット20aと20bでは両側の合わせ壁30と31を逆とし、図6(A)のD−D線断面図に示すように、図6(B)の断面と逆としている。
即ち、分断閉鎖壁13Aのスリット20a側では外側L字状の合わせ壁30とし、スリット20b側では内側L字状の合わせ壁31としている。他方、分断閉鎖壁13Bのスリット20a側では内側L字状の合わせ壁31とし、スリット20b側では外側L字状の合わせ壁30としている。
【0033】
このように、両側で内外重ね面を逆転すると、スリット20aと20bとは互いに開き動作が規制され、スリット20は開きにくくなり音漏れが生じる隙間が開くのを防止できる。
【0034】
図8(A)に第3実施形態のグロメットを示す。
該グロメットは、スリット20により分断された一方の分断閉鎖壁13Aの端縁から軸線方向の外方に突出させた合わせ壁40を突設している。他方の分断閉鎖壁13Bの端縁から軸線方向の外方と内方に突出させた軸線方向突出部41aと内方突出部の先端から径方向に屈折させた径方向屈折部41bを設けた合わせ壁41を突設している。前記合わせ壁40と41の外方突出部同士を重ね合わせると共に、前記合わせ壁41の径方向屈折部41bを分断閉鎖壁13Aの内面に重ねるようにしている。
【0035】
前記形状とした合わせ壁40と41とを設けると、スリット20を挟む両側端縁が軸線方向および/または径方向に位置ずれしても、合わせ壁40と41のいずれかの対向面を接触させてスリット20の開きを防止して、遮音性能を維持することができる。
他の構成及び作用効果は第1実施形態のグロメットと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図8(B)に第3実施形態のグロメットの変形例を示す。
該グロメットは、スリット20により分断された一方の分断閉鎖壁13Aの端縁から軸線方向の内方に突出させた合わせ壁40ーAを突設している。他方の分断閉鎖壁13Bの端縁から軸線方向の外方と内方に突出させた軸線方向突出部41aーAと外方突出部の先端から径方向に屈折させた径方向屈折部41bーAを設けた合わせ壁41ーAを突設している。前記合わせ壁40ーAと41ーAの内方突出部同士を重ね合わせると共に、前記合わせ壁41ーAの径方向屈折部41bーAを分断閉鎖壁13Aの外面に重ねるようにしている。
【0037】
図9(A)(B)(C)に第4実施形態のグロメットを示す。
該グロメット1(1−D)は閉鎖壁13の厚さtを4mm程度に厚くしている。この厚肉とした閉鎖壁13を分断するスリット20を挟む端縁から内外面に突出する合わせ壁は設けていない。両側のスリット20aと20bの中央部分で屈折させたスリット50、51を設け、これらスリット50、51で分断された端面に互いに接触する合わせ壁を設けている。
【0038】
即ち、スリット50、51は閉鎖壁13の外面から厚さ方向の中心までの軸線方向の切り込み50a、51aと、厚さ方向の中心位置で水平方向に屈折した切り込み50b、51bと、該水平方向の切り込みの先端から閉鎖壁13の内面にかけた軸線方向に切り込み50c、51cを設けた形状としている。
【0039】
図9(B)に示すように、一方側のスリット50を設けることで、分断閉鎖壁13Aの端縁の内側肉厚部を径方向に突設した内側合わせ壁50−1を設ける一方、他方の分断閉鎖壁13Bの端縁の外側肉厚部を径方向に突設した外側合わせ壁50−2を突出し、外側合わせ壁50−2と内側合わせ壁50−1とを閉鎖壁13の肉厚方向で重ねるものとしている。前記外側合わせ壁50−2および内側合わせ壁50−1の長さはそれぞれ5mm程度、厚さはそれぞれ閉鎖壁13の半分程度としている。
図9(C)に示すように、他方側のスリット51では逆に、分断閉鎖壁13Aに外側合わせ壁を設ける一方、分断閉鎖壁13Bに内側合わせ壁を設けて肉厚方向で重ねている。
【0040】
前記第4実施形態のグロメット1では、スリット50が開いても径方向に突出した外側合わせ壁と内側合わせ壁がいずれかの部分で対向して接触するため、スリット50が開いて隙間が生じるのを防止できる。
【0041】
図10に第5実施形態のグロメットを示す。
該グロメット1(1−E)では、閉鎖壁13の中央に設けるワイヤハーネス挿通穴14を囲む割り筒部60を90度間隔で分割した割り筒部とし、各スリット61も90度間隔に4つ設けている。これら各スリット61a〜61dを挟む分断閉鎖壁の端縁に沿って、第1実施形態と同様な軸線方向の内外方向に突出した合わせ壁63と64を突設している。
なお、第1実施形態の合わせ壁に代えて、前記第2実施形態、第3実施形態、または第4実施形態のいずれかの合わせ壁としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 グロメット
2 ワイヤハーネス
13 閉鎖壁
13A、13B 分断閉鎖壁
14 ワイヤハーネス挿通穴
15(15A、15B) 半割り筒部
18 空気層
16A、16B 合わせ壁
T1,T2 粘着テープ
20(20a、20b) スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムまたはエラストマーから成形され、ワイヤハーネスを密着して挿通する小径筒部と、該小径筒部の一端から拡径すると共に外周面に車体係止用凹部を環状に設けた拡径筒部と、該拡径筒部の大径側端の内周に連続する閉鎖壁と、該閉鎖壁の中央に設けたワイヤハーネス貫通穴と、該ワイヤハーネス貫通穴の周縁から突設した割り筒部およびワイヤハーネス貫通穴の周縁から外周に向けて切り込んだスリットを備えたグロメットであって、
前記スリットにより分断された閉鎖壁の各端縁に沿って、軸線方向あるいは/および径方向に突出した合わせ壁を対向して設け、スリットを挟む両側端縁に軸線方向あるいは/および径方向の位置ずれが生じた時に前記合わせ壁のいずれかの部分が互いに対向して当接される構成としているグロメット。
【請求項2】
前記合わせ壁は、分断された両側の閉鎖壁の端縁より軸線方向の外方と内方の両側に突出する合わせ壁とし、該合わせ壁を対向して設けている請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記合わせ壁は、前記スリットにより分断された一方の端縁から軸線方向の外向きに突出させた後に他方の径方向へと屈折させた外側L字状の合わせ壁を突設し、前記径方向の屈折部を他方の閉鎖壁の外面に重ね、かつ、
前記スリットにより分断された他方の端縁から軸線方向の内向きに突出させた後に前記一方の径方向へ屈折させた内側L字状の合わせ壁を突設し、前記径方向の屈折部を一方の閉鎖壁の内面に重ねる構成としている請求項1に記載のグロメット。
【請求項4】
前記スリットは直径方向に設け、分断された各閉鎖壁は一方の半径部分に外側L字状の合わせ壁を設け、他方の半径部分に内側L字状の合わせ壁を設け、対向して設ける前記外側L字状の合わせ壁と内側L字状の合わせ壁とは両側の半径部分で逆に設けている請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
前記合わせ壁は、前記スリットにより分断された一方の閉鎖壁の端縁から軸線方向の外方または内方に突出させた合わせ壁と、他方の閉鎖壁の端縁から軸線方向の外方と内方に突出させると共に内方または外方の突出端から径方向の屈折部を設けた合わせ壁とし、
前記軸線方向の突出部分同士を重ね合わせると共に、前記他方の合わせ壁の径方向の屈折部を前記一方の分断された端縁の内面または外面に重ねあわせる構成としている請求項1に記載のグロメット。
【請求項6】
前記閉鎖壁を厚肉とし、該閉鎖壁に設けるスリットを屈折させ、該スリットで分断された一方の閉鎖壁の端縁の外側肉厚部を径方向に突出させた外側合わせ壁とする一方、他方の閉鎖壁の端縁の内側肉厚部を径方向に突出させた内側合わせ壁とし、前記外側合わせ壁と内側合わせ壁とを閉鎖壁の肉厚方向で重ねる構成としている請求項1に記載のグロメット。
【請求項7】
前記合わせ壁の相手方との対向面は梨地面または凹凸面としている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−239266(P2012−239266A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105730(P2011−105730)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】