説明

グロメット

【課題】遮音用の空気層を密閉して遮音性能を高めたグロメットを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスを挿通する内筒と、該内筒の外周から径方向に突出した後に折り返して前記内筒との間に遮音用の空気層をあけて軸線方向に延在すると共に軸線方向の一端側の外周に環状の車体係止凹部を設けている外筒と、をゴムまたはエラストマーで一体成形しているグロメットにおいて、前記外筒の他端から前記内筒を突出させ、該内筒外周面と外筒の他端との間に前記遮音用の空気層の開口があり、該開口は前記外筒外周面から内筒外周面にかけて粘着テープを巻き付けて閉鎖するものとし、前記粘着テープを巻き付ける領域の外筒に周方向に複数の折り目を設け、これらの折り目は軸線方向の先端に向けて周方向の折り目幅が漸次拡大する斜めの折り目とし、該外筒の折り目を畳むように絞りながら前記粘着テープを巻き付けて前記開口を閉鎖する構成としていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ワイヤハーネスに取り付けて車体パネルの貫通穴に装着するグロメットに関し、特に、貫通穴を通してエンジンルーム等の室外から室内へ伝わる騒音を低減するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のグロメットで遮音性能を高めたグロメットとして、本出願人は図5(A)(B)に示す特開2002−10451号公報に記載のグロメットを提供している。 該グロメット100はワイヤハーネスに密着させる小径な内筒101と、該内筒101に遮音用の空気層102をあけて囲むと共に先端側を厚肉として外周面に車体係止用の凹部103を設けた大径の外筒104を備えている。前記内筒101と外筒104の他端側の間の開口106は粘着テープ110を外筒104の外周面に巻き付けて閉鎖し、遮音用の空気層102を密閉して遮音性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−10451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記グロメット100では、外筒104の端部の外周に粘着テープ110をきつく巻き付け内筒101との間の開口106を閉鎖している。しかしながら、外筒104には厚さがあり、かつ、開口106の径方向寸法は3mm程度はあるため、粘着テープ110を巻き付けても開口106を完全に閉鎖することはできず、図6に示すように隙間Gが発生する。隙間Gが無い密閉空間にすると遮音性能は向上するが、隙間Gが生じると遮音性能はかなり低下する。また、外筒104の外周に粘着テープ110を巻き付ける際にグロメット100がEPDM等の弾性材からなるため撓んで巻き付けにくく作業性が悪いと共に、作業者によってテープの巻き強さにバラツキが生じやすい問題もある。
【0005】
このように、開口106を粘着テープ110の巻き付けで閉鎖することは困難であるため、該開口106の断面積を大きくすることはできない。開口106は遮音用の空気層102を形成するための型抜き穴からなる。よって、型抜き穴からなる開口106を大きくできないことは、断面積が大きな遮音用の空気層102を形成できないことになり、遮音性向上に対する規制となっている。
【0006】
本発明は前記問題を解消せんとするもので、内筒と外筒との間に形成される空隙の先端開口の断面積を大きくしても、該開口を完全に閉鎖できるようにして、内筒と外筒との間の空気層を完全な密閉空間として遮音性能を向上でき、かつ、密閉空間自体を大きくして遮音性能を向上できるグロメットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解消するため、本発明は、ワイヤハーネスを挿通する内筒と、該内筒の外周から径方向に突出した後に折り返して前記内筒との間に遮音用の空気層をあけて軸線方向に延在すると共に軸線方向の一端側の外周に環状の車体係止凹部を設けている外筒と、をゴムまたはエラストマーで一体成形しているグロメットにおいて、
前記外筒の他端から前記内筒を突出させ、該内筒外周面と外筒の他端との間に前記遮音用の空気層の開口があり、該開口は前記外筒外周面から内筒外周面にかけて粘着テープを巻き付けて閉鎖するものとし、
前記粘着テープを巻き付ける領域の外筒に周方向に複数の折り目を設け、これらの折り目は軸線方向の先端に向けて周方向の折り目幅が漸次拡大する斜めの折り目とし、該外筒の折り目を畳むように絞りながら前記粘着テープを巻き付けて前記開口を閉鎖する構成としていることを特徴とするグロメットを提供している。
【0008】
前記折り目の畳む絞り方向は前記粘着テープの巻き付け方向と同一方向となるように形成している。
【0009】
前記外筒に設ける折り目は成形時に賦形し、グロメットに折り癖がつけられている。ワイヤハーネスを内筒に挿通する際には外筒の折り目を広げて内筒の拡径を妨げないようにしてワイヤハーネスの挿通作業性を高めている。ワイヤハーネス挿通後に内筒が小径化すると、外筒の折り目は自動的に弾性復帰して元の折り目がついた状態に戻る。よって、外筒の外周に粘着テープを巻き付ける時に外筒に折り目をつけながら巻き付ける必要はなく、テープ巻き作業性を高めることができる。このように、グロメットの外筒の粘着テープ巻き付け部分に予め折り目をつけておくことで、該外筒の開口端を内筒に隙間なく密着でき、かつ、折り畳んだ外筒の外周に粘着テープを巻き付けることで、該外筒と内筒間の遮音用空気層の先端開口を隙間なく密閉することができる。その結果、グロメットの密閉空間による遮音性を高めることができる。また、外筒の折り目幅を大として、外筒先端と内筒の間の径方向寸法を大きくすると、内筒と外筒に囲まれる遮音空間の容積を大きくして遮音性能を高めることも可能である。
【0010】
前記外筒に設ける各折り目は、先端側の最大折目幅は片面で1.5mm以上、広げた状態で3mm以上とし、該折り目を周方向に2個以上設けて広げた状態で周方向寸法を6mm以上拡大させることが好ましい。
【0011】
前記のように折り目を開くことで周方向寸法が6mm程度広がると、折り目をつけた状態の外筒の内径を1.5〜2倍程度広げることができ、遮音空間成形用に中子の型抜き用開口を大とでき、その分、遮音空間を大として遮音性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
前記のように、本発明は、内筒と外筒との間に遮音用空間を設け、該遮音用空間の先端開口側の外筒の外周面に粘着テープを巻き付けて開口を閉鎖して遮音用空間を密閉空間とするグロメットにおいて、前記外筒に折り目をつけておくことで、該折り目を折り畳んだ状態として粘着テープを巻き付けると、内筒外周面に外筒を固着して開口を隙間なく密閉することができ、遮音性を高めることできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のグロメットを示し、(A)は断面図、(B)は正面図、(C)は(B)のC−C線断面図である。
【図2】前記グロメットの外筒の要部拡大斜視図であり、(A)は外筒の折り目を広げた状態を示し、(B)は折り目を畳む状態を示す。
【図3】前記グロメットをワイヤハーネスに取り付けた状態の断面図である。
【図4】前記外筒の折り畳み方向と粘着テープの巻き付け方向を示す図面である。
【図5】(A)(B)は従来例を示す断面図である。
【図6】前記従来例の問題点を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のグロメットを図面を参照して説明する。
図1乃至図4に実施形態のグロメットを示す。
グロメット1はゴムあるいはエラストマーからなる成形体であり、本実施形態ではEPDMからなるエラストマーで成形している。
【0015】
グロメット1は、ワイヤハーネスに密着させて挿通する小径な内筒2と、内筒2の長さ方向の中間部の外周面から外向きに折り返して設ける外筒3を備え、内筒2と外筒3の間に遮音用の空気層4をあけている。内筒2と外筒3とは前記折り返し部を厚肉閉鎖部5とし、該厚肉閉鎖部5で空気層4の一端を閉鎖する一方、他端側は成形時に型抜きが必要なため開口6となる。
【0016】
前記厚肉閉鎖部5と連結する外筒3の一端側は厚肉とし、外周面に環状の車体係止凹部7を設けている。外筒3は車体係止凹部7を設ける部分を大径筒部3aとし、該大径筒部3aの他端に内向き折返部3bを設け、該折返部3bから前記開口6側の先端3tにかけて内筒2と平行に成形している。外筒3の開口6側の先端3tから内筒2を外方へ突出させている。
【0017】
前記開口6を閉鎖して空気層4を密閉した遮音空間とするため、開口6を挟む外筒3と内筒2の外周面にかけて、図3に示すように粘着テープ9を巻き付けるようにしている。
外筒3には先端3tから内向き折返部3bに達する領域に2つの折り目10(10A、10B)を直径方向に対向して形成している。
【0018】
前記折り目10は折り目を付けない状態で、図2(A)に示すように、先端3tに向けてラッパ形状に広がる形状とし、先端3tに向けて折り目幅Sが漸次広くなるように軸線方向は傾斜させて設けている。該折り目10はグロメット成形時に賦形し、折り目10を開かない限り折り畳まれた状態としている。
【0019】
本実施形態では、図2(B)に示すように、外筒3の先端3tに位置する折り目10の最大の折り目幅Sは片面で1.5mmとし、折り目10を開いた状態で3mmとし、2個の折り目10A、10Bがあるため、最大で周長が6mm広がるようにしている。言い換えれば、外筒3の折り目10の形成始点3dの周長は、先端3tの周長−6mmとしている。これにより、折り目10を折り癖に沿って折り畳むと、始点3dから先端3tまでが同一内径の直管となるようにしている。この状態で、開口6の径方向寸法rは略3mmである。
【0020】
また、図3に示すように、折り目10を設けた外筒3の部分を捩りながら絞り、予め設けた折り癖より深く折り畳むと先端3tに向けて外筒3を小径化させ、内筒2の外周面に接触させることができるようにしている。本実施形態では、折り目10を設けた領域の外筒3の軸線方向の長さLは10〜100mmとしている。
【0021】
次に、図3および図4を参照して、グロメット1をワイヤハーネスに取り付ける作業について、説明する。
まず、内筒2を拡径治具(図示せず)で拡げながらワイヤハーネス20を挿通して、内筒2の内周面にワイヤハーネス20を密着して挿通させる。よって、ワイヤハーネス20を内筒2に挿通した状態で内筒2の外径は拡大し、外筒3との間の開口6の径方向寸法rは小さくなる。
【0022】
内筒2内にワイヤハーネス20を挿通する時、内筒2の拡がりで外筒3が折り目10を開くように広げられていた場合は、内筒2へのワイヤハーネス挿通後に内筒2が縮径すると、外筒3は折り目10(10A、10B)の折り癖に沿って原形復帰する。
この状態で、ワイヤハーネス挿通後の内筒2は通常大径化するため、開口6を挟む外筒3と内筒2の径方向寸法は小さくなる。
【0023】
内筒2にワイヤハーネス20を通した後に、外筒3の先端3tと内筒2外周面の間の開口6を塞ぐと共に、内筒2とワイヤハーネス20とを固着する、外筒3の外周面から内筒2の外周面へと粘着テープ9を巻き付け、かつ、内筒2の先端2tからワイヤハーネス20の外周面へと粘着テープ9を強く巻き付ける。
【0024】
前記粘着テープ9を巻き付ける際に、予め賦形された折り癖により折り目10が折り畳まれる外筒3を、さらに、雑巾を絞るように捩りながら絞って粘着テープ9を巻き付けていく。この操作時、図4に示すように、外筒3の絞り方向X1と粘着テープ9の巻方向X2を同じとすることができ、粘着テープ9の巻操作で外筒3を同時に絞って小径化して、内筒2への外筒3の密着性を確実なものにできる。
外筒3と内筒2との間に隙間があり開口6が開いたままの状態であると、予め賦形された折り目10よりも更に深く折り畳まれるように外筒3が絞られ、前記のように、外筒3の内周面を内筒2の外周面に確実に隙間なく密着できる。これにより、空気層4の開口6を確実に密封でき、空気層4を密閉された遮音空間にでき、車室外から車室への騒音伝達を遮断できる。
【0025】
また、内筒2に挿通するワイヤハーネス20の外径が大きく、内筒2に被せる外筒3も拡がる場合、予め賦形された折り癖で折り畳まれた折り目10より折り目幅Sが図2(B)より狭くなるが、所要幅で折り畳んだ状態で内筒2に外筒3を密着させることができる。このように、外筒3に折り目10を設けることで、ワイヤハーネス20の外径が変化しても共用で用いることができる。
【0026】
前記実施形態では、外筒に設ける折り目は直径方向に対向する2個としているが、周方向に等間隔をあけて3個または4個としてもよい。かつ、各折り目の折り幅も限定されず、折り目の個数が増加すると折り幅を小さくしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 グロメット
2 内筒
2t 先端
3 外筒
3a 大径筒部
3t 先端
4 空気層
6 開口
7 車体係止凹部
9 粘着テープ
10(10A、10B) 折り目
20 ワイヤハーネス
S 折り目幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを挿通する内筒と、該内筒の外周から径方向に突出した後に折り返して前記内筒との間に遮音用の空気層をあけて軸線方向に延在すると共に軸線方向の一端側の外周に環状の車体係止凹部を設けている外筒と、
をゴムまたはエラストマーで一体成形しているグロメットにおいて、
前記外筒の他端から前記内筒を突出させ、該内筒外周面と外筒の他端との間に前記遮音用の空気層の開口があり、該開口は前記外筒外周面から内筒外周面にかけて粘着テープを巻き付けて閉鎖するものとし、
前記粘着テープを巻き付ける領域の外筒に周方向に複数の折り目を設け、これらの折り目は軸線方向の先端に向けて周方向の折り目幅が漸次拡大する斜めの折り目とし、該外筒の折り目を畳むように絞りながら前記粘着テープを巻き付けて前記開口を閉鎖する構成としていることを特徴とするグロメット。
【請求項2】
前記折り目の畳む絞り方向は前記粘着テープの巻き付け方向と同一方向となるように形成している請求項1に記載のグロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21841(P2013−21841A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154338(P2011−154338)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】