説明

グロメット

【課題】より安定して止水性能を確保すること。
【解決手段】グロメット20は、バーリング部14を有する貫通孔部12において止水を図るための部材である。このグロメット20は、ワイヤーハーネス1を挿通可能且つ部分的にワイヤーハーネス1の外周部に密着可能な筒部32と、バーリング部14の外周部に対して密着可能な環状の外周シール部37とを有するシール部材30と、筒状の本体部54と、本体部54の外周部から張り出す形状に形成され、バーリング部14の先端部に係止可能な第1押え部56と、本体部54の外周部から張り出す形状に形成され、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止可能な第2押え部58とを有し、シール部材30の内周部に取り付けられる固定部材50と、外周シール部37の外周部を囲って設けられ、環状部の周長を短縮調節可能な締め付け部材70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車の金属パネル等に形成されたワイヤーハーネス挿通用の貫通孔における止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワイヤーハーネス挿通用の壁部に形成された貫通孔における止水を行うためのグロメットが開示されている。特許文献1で対象とする貫通孔は、バーリング部を有するバーリング孔である。このグロメットは、弾性材料からなるアウター部材と、剛性材料からなるインナー部材とを備えている。アウター部材は、一方を開口端、他方を閉鎖端とした短円筒状の大径筒部と、大径筒部の開口端の端縁の全周に径方向外向きに突出する楕円環状のリップ部と、リップ部の基端部付近から径方向内向きに突出する楕円環状の孔端当接部と、閉鎖端と孔端当接部との間に形成された嵌合溝を有している。また、インナー部材は、直線枠部と半円枠部とを有する楕円環状に形成され、直線枠部及び半円枠部の全周に径方向外向きに突出する楕円環状のリップ押え部と、直線枠部の両端近傍に壁部に当接する係止面を有する固定用係止爪と直線枠部における固定用係止爪の間隔部分及び半円枠部に設けられた補助係止爪とを有している。固定用係止爪及び補助係止爪は、径方向内側に撓むように形成されている。
【0003】
インナー部材は、リップ押え部が嵌合溝に嵌め込まれることによりアウター部材に組み付けられる。そして、インナー部材を貫通孔に挿入することにより、固定用係止爪及び補助係止爪が径方向内側に撓んでからもとの形状に復帰して壁部に係止し、リップ部が壁部に押し付けられると共に、孔端当接部がバーリング部に押し付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−63385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のグロメットは、貫通孔部に対する取り付け方向にリップ部及び孔端当接部を弾性変形させることにより密着させて止水性を確保しているため、アウター部材及びインナー部材の製造時の製品誤差に加え、貫通孔部に対する押し付け力、固定用係止爪及び補助係止爪の係止態様等の取り付け態様による取り付け方向における誤差の影響により、リップ部及び孔端当接部を弾性変形量が比較的変化しやすい。このため、グロメットによる止水性能にばらつきが生じる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、より安定して止水性能を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、筒状立ち壁部を有するワイヤーハーネス挿通用の貫通孔部において止水を図るためのグロメットであって、前記ワイヤーハーネスを挿通可能且つ挿通方向において部分的に前記ワイヤーハーネスの外周部に密着可能な筒部と、前記筒部の先端側に設けられ、前記筒状立ち壁部の外周部に対して外周側から密着可能な環状の外周シール部と、を有するシール部材と、筒状の本体部と、前記本体部の外周部から外周側に張り出す形状に形成され、前記貫通孔部の開口縁部に対して前記筒状立ち壁部の先端側から直接的又は間接的に係止可能な第1押え部と、前記本体部の外周部から外周側に張り出す形状に形成され、前記貫通孔部の開口縁部に対して前記筒状立ち壁部の基端側から係止可能な第2押え部とを有し、前記シール部材の内周部に取り付けられる固定部材と、前記外周シール部の外周部を囲って設けられ、環状部の周長を短縮調節可能な締め付け部材と、を備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るグロメットであって、前記外周シール部は、内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する外周凸部を有し、前記締め付け部材は、前記外周凸部の外周側に設けられている。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るグロメットであって、前記シール部材は、前記外周シール部の基端部において外周部から外周側に張り出す抜止め部を有する。
【0010】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか一態様に係るグロメットであって、前記外周シール部は、中心軸に直交する断面視において、直線部分と曲線部分とを有し、前記直線部分に前記曲線部分より肉厚に形成された肉厚部を有している。
【発明の効果】
【0011】
第1の態様に係るグロメットによると、筒状立ち壁部の外周部に対して外周側から密着可能な環状の外周シール部の外周部を囲って、環状部の周長を短縮調節可能な締め付け部材が設けられるため、貫通孔部に対してグロメットを取り付けた後に締め付け部材の周長を短縮調節することにより、外周シール部を締め付けて筒状立ち壁部の外周部に密着させることができる。すなわち、グロメットの貫通孔部に対する取り付け態様により取り付け方向における誤差が生じたとしても、止水性能は影響されず、より安定して止水性能を確保することが可能である。
【0012】
第2の態様に係るグロメットによると、締め付け部材が外周凸部の外周側に設けられているため、貫通孔部の内周部に対する密着度を向上させて、止水性能を向上させることができる。
【0013】
第3の態様に係るグロメットによると、シール部材が、外周シール部の基端部において外周部から外周側に張り出す抜止め部を有するため、外周シール部の外周部を囲って設けられる締め付け部材が外周シール部の基端側から外れることを抑制することができる。
【0014】
第4の態様に係るグロメットによると、外周シール部が、中心軸に直交する断面視において直線部分と曲線部分とを有し、直線部分に曲線部分より肉厚に形成された肉厚部を有しているため、直線部分においてもより高い止水性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】グロメットの取り付け位置を示した貫通孔部の正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】シール部材の側断面図である。
【図4】固定部材の正面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】変形例に係るグロメットの貫通孔部に対する取り付け状態を示す図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係るグロメット20について説明する(図1〜図5参照)。このグロメット20は、ワイヤーハーネス1挿通用の貫通孔部12において止水を図るためのものである。
【0017】
<貫通孔部>
まず、説明の便宜上、対象となる貫通孔部12について説明しておく(図1、図2参照)。対象となる貫通孔部12は、自動車の車体における金属パネル等のパネル10に形成されるものである。ここでは、貫通孔部12は、パネル10に貫通孔を形成した後に、バーリング加工により前記貫通孔の開口縁部を立ち上げて形成されるバーリング部14(筒状の立ち壁部)を有する孔部である。より具体的には、バーリング部14は、パネル10に対して略直交する方向に沿って該パネル10の一方側に突出する筒状に形成されている。もっとも、貫通孔部12は、パネル10に形成された貫通孔の開口縁部に筒状の立ち壁部を溶接して構成されていてもよい。なお、以下の説明において、貫通孔部12の開口縁部のうち貫通方向一方側の部分をバーリング部14の先端部といい、貫通方向他方側の部分を貫通孔部12の開口縁部におけるバーリング部14の基端側の部分という。また、ここでは、貫通孔部12は、略円形に形成されているものとする。すなわち、バーリング部14は、略円筒形状に形成されている。
【0018】
この貫通孔部12には、ワイヤーハーネス1が貫通配索される。そして、パネル10を挟んだバーリング部14の先端側の空間と基端側の空間との間で止水を図るため、貫通孔部12とワイヤーハーネス1との隙間を、グロメット20により塞ぐ。
【0019】
<グロメット>
グロメット20は、シール部材30と、シール部材30の内側に取り付けられる固定部材50と、シール部材30に取り付けられる締め付け部材70とを備えている(図2参照)。
【0020】
シール部材30は、全体として略筒状に形成され、基端部から先端部に向けて、筒部32と、被規制部36を有する位置決め用凹部35と、外周シール部37とを有している(図3参照)。このシール部材30は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、エラストマー等の比較的弾性変形しやすい(対象に密着し易い)材料によって形成されている。
【0021】
筒部32は、ワイヤーハーネス1を挿通可能且つ挿通方向において部分的にワイヤーハーネス1の外周部に密着可能に形成されている。この筒部32は、略円筒形状に形成され、小径部33と大径部34とを有している。
【0022】
小径部33は、シール部材30の基端部に位置する部分であり、その内側に挿通されるワイヤーハーネス1の外周部に密着する部分である。この小径部33は、ワイヤーハーネス1の外径と同じかそれより小さい内径に設定されている。そして、小径部33を拡げてワイヤーハーネス1を通し、小径部33がワイヤーハーネス1の外周部に密着した状態で、小径部33とそこから延出するワイヤーハーネス1との外周部に水密性を有するテープ(図示省略)を巻きつけること等により、このワイヤーハーネス1と小径部33との間の止水をより確実にしておくとよい。また、ワイヤーハーネス1における電線束の外周部と小径部33との間において止水剤又は止水シート等により止水処理が施されることもある。この場合も、電線束に止水剤が塗布又は止水シートが取り付けられたワイヤーハーネス1に対して、小径部33が密着すると言うものとする。
【0023】
大径部34は、小径部33より大径に形成され、小径部33とそれより先端側の位置決め用凹部35とを連結する部分である。ここでは、大径部34は、小径部33側(基端側)から位置決め用凹部35側(先端側)に向けて徐々に大径になった後、挿通方向に沿って延在する形状に形成されている。なお、大径部34は、挿通方向の一部分に蛇腹形状の部分を含んでいてもよい。
【0024】
位置決め用凹部35は、シール部材30の内側に取り付けられる固定部材50の後述する第1押え部に対して接触することにより、固定部材50に対して位置決めされる被規制部36を有している。この位置決め用凹部35は、シール部材30の内周側に開口して周方向に沿って延在する凹条に形成され、その内側に第1押え部56を収容可能な内部空間を有している。また、位置決め用凹部35は、筒部32における大径部34の先端部から外周側に張り出す形状に形成されている。
【0025】
被規制部36は、シール部材30の基端側を向く環状面を有する部分であり、位置決め用凹部35においてシール部材30の挿通方向先端側の側壁部を成している。この被規制部36は、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け状態において、環状面がバーリング部14の先端部に沿った位置に配設される。より具体的には、被規制部36(環状面)は、シール部材30の挿通方向に直交する平面に沿って形成されている。
【0026】
そして、位置決め用凹部35は、被規制部36と他方の側壁部とが第1押え部56に対して、シール部材30の挿通方向両側から当接することにより、固定部材50に対して前記挿通方向に位置決めされる。また、被規制部36は、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け状態において、バーリング部14の先端部と略面一となる位置に配設される。
【0027】
外周シール部37は、バーリング部14の外周部に対して外周側から密着可能な環状に形成された部分である。ここでは、外周シール部37は、位置決め用凹部35のシール部材30における挿通方向先端側で被規制部36の内周部から前記挿通方向前方側に向けて延出する円筒状に形成されている。換言すると、被規制部36は、外周シール部37の基端部から外周側に張り出す形状に形成されている。
【0028】
また、外周シール部37は、シール部材30の挿通方向一部分において、内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する外周凸部38を有している。この外周凸部38は、先端部の径がバーリング部14の外周部と同じかそれより小さく(ここでは僅かに小さく)設定されている。ここでは、外周凸部38は、シール部材30の挿通方向において、外周シール部37の中間部に設けられている。そして、外周シール部37は、主として外周凸部38の先端部がバーリング部14の外周部に密着することにより止水機能を果たす。なお、外周シール部37の内周部のうち、外周凸部38以外の部分がバーリング部14の外周部に接触することもある。
【0029】
もっとも、外周シール部37において、外周凸部38は省略されてもよく、この場合、外周シール部の内周面がバーリング部14の外周部に密着するように構成されていればよい。
【0030】
また、一般的に、貫通孔部12におけるバーリング部14の基端部は、バーリング加工により曲げられた曲面を有している(図2参照)。そして、外周シール部37は、その先端部に、貫通孔部12におけるバーリング部14の基端部の曲線部分に沿った曲線状に形成されている。すなわち、外周シール部37の先端部分は、バーリング部14の基端部に対して外周側から接触して、補助的に止水機能を発揮する。なお、図2では、外周シール部37の先端部が、バーリング部14の外周側でパネル10の表面に対しても接触し、これによっても止水機能を発揮している。
【0031】
固定部材50は、貫通孔部12に挿入され、該貫通孔部12に対してシール部材30の挿通方向における位置を固定する部材である(図2、図4参照)。この固定部材50は、全体として円環状に形成され、本体部54と、第1押え部56と、第2押え部58とを有する。この固定部材50は、PP(ポリプロピレン)、PU(ポリウレタン)樹脂等の樹脂材料により成型される比較的剛性の高い(少なくともシール部材30より弾性変形し難い)樹脂成型品である。
【0032】
本体部54は、筒状(ここでは円筒状)に形成され、バーリング部14の内周側に配置される部分である。より具体的には、本体部54は、外径がバーリング部14の内径と同じかそれより小さく(ここでは僅かに小さく)設定され、内径がワイヤーハーネス1の外部形状より大きく設定されている。
【0033】
第1押え部56は、バーリング部14の先端部に直接的に係止して、本体部54の貫通孔部12に対するバーリング部14の基端側への移動を規制する部分である。この第1押え部56は、本体部54の外周部から外周側に張り出す形状に形成され、その外周部がバーリング部14の内周部より大きく設定されている。ここでは、第1押え部56は、本体部54の基端部に設けられ、バーリング部14の外径より大きい外径に設定された円環鍔状に形成されている。
【0034】
また、この第1押え部56は、固定部材50がシール部材30に取り付けられた状態で、シール部材30と固定部材50との挿通方向における相対位置決めをする部分である。より具体的には、第1押え部56は、固定部材50がシール部材30に取り付けられた状態で、外周側部分が被規制部36の環状面に対向配置され、この被規制部36に当接することによってシール部材30を位置規制する。ここでは、第1押え部56は、外周側部分が被規制部36を有する位置決め用凹部35の内側に配設され、被規制部36と他方の側壁部とに接触することによりシール部材30を挿通方向両側に位置規制する。第1押え部56との関係では、位置決め用凹部35の幅寸法は、第1押え部56の厚さ寸法と略同じに設定されている。
【0035】
第2押え部58は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止する部分である。より具体的には、第2押え部58は、本体部54の外周部から周方向において断続的に外周側に張り出す形状に形成され、その外周部がバーリング部14の内周部より大きく設定されている。ここでは、第2押え部58は、本体部54の先端部において、周方向において等間隔に(例えば等間隔に4箇所に)設けられている。この第2押え部58は、本体部54の先端部から基端側に向けて徐々に張り出し寸法が大きくなる形状に設定されている。
【0036】
また、本体部54には、周方向において第2押え部58の両側方に、先端部から基端側に向けてスリット55が形成されている。すなわち、固定部材50は、本体部54において第2押え部58が設けられた部分が内周側に弾性変形可能に構成されている。
【0037】
締め付け部材70は、外周シール部37の外周部を囲って設けられ、環状部の周長を短縮調節可能な部材である(図2、図5参照)。すなわち、この締め付け部材70は、外周シール部37の外周部を囲った状態で周長を短縮することにより、外周シール部37を締め付けてバーリング部14の外周部に押し付ける構成である。ここでは、締め付け部材70は、外周シール部37のうち外周凸部38の外周側(外周凸部38を囲う位置)に設けられ、短縮調節されることにより主として外周凸部38をバーリング部14の外周部に押し付けて密着させる。
【0038】
上述したように、締め付け部材70が設けられる外周シール部37の基端側には、該外周シール部37の基端部において外周部から外周側に張り出す態様で抜止め部としての被規制部38が設けられている。すなわち、外周シール部37を囲って設けられた締め付け部材70のシール部材30における基端側には被規制部38が存在するため、締め付け部材70は、外周シール部37の外周上からの抜け出しを抑制される。
【0039】
ここでは、締め付け部材70として結束バンドを採用している。結束バンドとは、長手方向に複数の被係止部73が設けられた長尺帯状のバンド部72と、バンド部72の基端部に連結され、バンド部72の先端側部分を挿通可能であると共に挿通されたバンド部72の複数の被係止部73に対して選択的に係止可能な係止部75を有する周長維持部74とを有する部材である。より具体的には、被係止部73は、バンド部72の長尺方向に直交して基端側に向かう被係止面を有している。また、係止部75は、周長維持部74のバンド部72との連結部分側に弾性変形可能なアーム状に形成され、被係止部の被係止面に接触して係止可能に形成されている。
【0040】
そして、結束バンドとしての締め付け部材70は、周長維持部74に挿通されたバンド部72の先端側部分を引張ることにより、バンド部72における周長維持部74から基端側の部分により構成される環状部分の周長を短縮し、その状態で係止部75が被係止部73の一つに係止することにより周長を維持することができる。
【0041】
もっとも、締め付け部材70は、結束バンドに限られるものではない。例えば、締め付け部材として、ホースバンド(ホースクランプ)を採用してもよい。ホースバンドとは、長尺方向に直交する凸条部が長尺方向に等間隔で複数設けられた長尺帯状の金属バンド部と、金属バンド部の基端部に連結され、金属バンド部の先端側部分を挿通可能であると共に金属バンドの挿通方向に沿って設けられて複数の凸条部に対して噛合うネジ部を有する周長維持部とを有する部材である。すなわち、周長維持部のネジ部を回転させることにより、ネジ部に噛合う複数の凸条部を移動させて金属バンド部により構成される環状部の周長を調節できる。また、締め付け部材として、環状に曲げられ、その両端部を交差させてねじることにより、環状部の周長を短縮可能にした針金を採用してもよい。
【0042】
次に、グロメット20を貫通孔部12に取り付ける作業について説明する。
【0043】
まず、固定部材50をシール部材30に対して取り付ける。すなわち、シール部材30の先端側部分(外周シール部37)を拡げて、固定部材50をシール部材30の内側に嵌め込む。より具体的には、第1押え部56の外周部を位置決め用凹部35内に配設すると共に、本体部54を外周シール部37の内周側に配設する。この状態で、本体部54と外周シール部37との間にはバーリング部14配設用の隙間が設けられる。
【0044】
また、締め付け部材70を外周シール部37の外周部を囲うように取り付ける。より具体的には、外周シール部37の外周部を囲う形態でバンド部72の先端側部分を周長維持部74に通す。グロメット20を貫通孔部12に取り付ける前の段階では、締め付け部材70は、外周シール部37の外周部の周長と同じかそれより長い周長に調整されているとよい。さらに、締め付け部材70は、外周シール部37の先端部及び位置決め用凹部35(被規制部36)の外周部の周長より短い周長に調整されているとよい。これにより、締め付け部材70がシール部材30に取り付けられた状態から外れることを抑制できる。
【0045】
次に、グロメット20を貫通孔部12に取り付ける。より具体的には、バーリング部14が、本体部54と外周シール部37との間に配設されるように、固定部材50の第2押え部58及び本体部54を貫通孔部12に挿入する。この際、外周シール部37の外周凸部38は、バーリング部14の外周部に対して押し付けられて弾性変形し、密着している。また、本体部54における第2押え部58が設けられた部分は、バーリング部14の内周部に当接して内周側に弾性変形し、第2押え部58が貫通孔部12を越えたところで元の形状に復帰する。そして、第2押え部58は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の基端側から係止した状態となる。一方、第1押え部56は、バーリング部14の先端部に対して係止した状態となる。
【0046】
すなわち、固定部材50は、第1押え部56及び第2押え部58が貫通孔部12の各開口縁部に係止することにより、貫通孔部12に対して固定されている。また、シール部材30は、固定部材50を介して、貫通孔部12に対して貫通方向に固定されている。
【0047】
最後に、外周シール部37の外周部を囲って設けられた締め付け部材70の周長を短縮調整する。すなわち、外周シール部37を締め付けてバーリング部14の外周部に押し付けて密着させる。これにより、外周シール部37(主として外周凸部38)は、より大きく圧縮弾性変形される。
【0048】
以上により、グロメット20が貫通孔部12に対して取り付けられる。なお、ワイヤーハーネス1は、グロメット20が貫通孔部12に取り付けられた後に挿通されてもよいし、固定部材50が取り付けられたシール部材30及び第2固定部62の組み合わせ前に、各部材及び貫通孔部12に対して予め挿通されていてもよい。
【0049】
また、ここでは、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け作業について、グロメット20を貫通孔部12に取り付ける前の段階で締め付け部材70をシール部材30に取り付ける例で説明したが、これに限られるものではない。すなわち、締め付け部材70は、シール部材30及び固定部材50を貫通孔部12に取り付けた後に、シール部材30に対する取り付けと併せて短縮調節してもよい。
【0050】
これまで、グロメット20が、円形の貫通孔部12に対応して全体として円環状に形成されている例で説明したが、貫通孔部12が楕円形又は多角形に形成されている場合にはその形状に対応して楕円環状又は多角形の環状に形成されていてもよい。
【0051】
図6には、一対の半円弧状の曲線部分を一対の直線部分が結ぶ略楕円形状の貫通孔部12(バーリング部14)に取り付けられたグロメット120を示している。このグロメット120は、シール部材130と、固定部材150と、締め付け部材70とを備えている。シール部材130は、円筒状の小径部33から楕円状に拡がる大径部134を有する筒部132と、楕円環状面を有する被規制部136を有する楕円環状の位置決め用凹部135と、外周凸部138を有する楕円環状の外周シール部137とを有している。また、固定部材150は、全体として楕円環状に形成され、本体部154と、第1押え部156と、第2押え部158とを有している。
【0052】
上記楕円環状の外周シール部137は、より具体的には、貫通孔部12(バーリング部14)の形状に対応して一対の半円弧状の曲線部分を一対の直線部分が結ぶ略楕円形状に形成されている。このため、外周シール部137が締め付け部材70によって締め付けられる際に、半円弧状の曲線部分にはその曲率中心に向けて安定してバーリング部14に対する押し付け力が作用するものの、直線部分に対して内周側に作用する押し付け力は曲線部分に作用する押し付け力に比べて小さくなってしまう。
【0053】
そこで、図6に示すグロメット120では、外周シール部137の直線部分に作用する締め付け部材70によるバーリング部14に対する押し付け力を確保するための形状を採用している。より具体的には、外周シール部137は、直線部分に曲線部分より肉厚に形成された肉厚部139を有している。好ましくは、外周シール部137の肉厚部139は、直線部分の中央に近づくほど肉厚に形成されているとよい。この外周シール部137の外周部は、外周側に凸となる弧状を成している。図7は曲線部分における周方向に直交する断面視図を示し、図8は、直線部分の中央部分における周方向に直交する断面視図を示している。
【0054】
そして、外周シール部137が、中心軸に直交する断面視において直線部分と曲線部分とを有し、直線部分に曲線部分より肉厚に形成された肉厚部139を有している構成によると、締め付け部材70を締め付けた際に、直線部分においてもより高い止水性能を得ることができる。
【0055】
また、これまで、第1押え部56について、円環鍔状に形成されている例で説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1押え部56は、本体部54の外周部から周方向において断続的に外周側に張り出す形状に形成されていてもよい。また、第2押え部は、本体部54の周方向全体から張り出す形状に形成されていてもよい。この場合、本体部にはその中心軸に沿って先端部から基端側に向けて複数のスリットが形成されているとよい。
【0056】
また、位置決め用凹部35は、筒部32及び外周シール部37の外周側に張り出す形状に形成されている場合に限らず、内周側に突出する対向する側壁部を有する形状であってもよい。この場合、被規制部36は、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け状態において、バーリング部14の先端部に対向する位置に設けられているとよい。また、この場合、固定部材50の第1押え部56は、貫通孔部12の開口縁部に対してバーリング部14の先端側から被規制部36を介して間接的に係止する構成となる。
【0057】
また、位置決め用凹部35のうち被規制部36以外の部分が省略されてもよい。すなわち、シール部材30は、貫通孔部12に対する取り付け状態において、固定部材50の押え部50により貫通孔部12に対して抜止め規制されればよく、被規制部36があればその機能を発揮できる。この場合、シール部材は、筒部32の先端部から被規制部36が内周側に延出する形状に形成されていればよい。
【0058】
実施形態に係るグロメット20によると、貫通孔部12に対してグロメット20を取り付けた後に締め付け部材70の周長を短縮調節することにより、外周シール部37を締め付けてバーリング部14の外周部に密着させることができる。このため、グロメット20の貫通孔部12に対する取り付け態様により取り付け方向における誤差が生じたとしても、止水性能は影響されず、より安定して止水性能を確保することが可能である。
【0059】
また、外周シール部37がバーリング部14の外周部に密着して止水しているため、締め付け部材70を取り外すことにより、シール部材30を貫通孔部12に対してグロメット20の取り付け側から容易に取り外すことができる。
【0060】
また、被規制部36が、外周シール部37の基端部から外周側に張り出す形状に形成されているため、外周シール部37の外周部を囲って設けられる締め付け部材70が外周シール部37の基端側から外れることを抑制することができる。
【0061】
また、外周シール部37が内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する外周凸部38を有し、締め付け部材70が外周凸部38の外周側に設けられているため、より効果的に貫通孔部12の内周部に対する密着度を向上させて、止水性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ワイヤーハーネス
12 貫通孔部
14 バーリング部
20、120 グロメット
30、130 シール部材
32、132 筒部
36、136 被規制部
37、137 外周シール部
38、138 外周凸部
50、150 固定部材
54、154 本体部
56、156 第1押え部
58、158 第2押え部
70 締め付け部材
139 肉厚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状立ち壁部を有するワイヤーハーネス挿通用の貫通孔部において止水を図るためのグロメットであって、
前記ワイヤーハーネスを挿通可能且つ挿通方向において部分的に前記ワイヤーハーネスの外周部に密着可能な筒部と、前記筒部の先端側に設けられ、前記筒状立ち壁部の外周部に対して外周側から密着可能な環状の外周シール部と、を有するシール部材と、
筒状の本体部と、前記本体部の外周部から外周側に張り出す形状に形成され、前記貫通孔部の開口縁部に対して前記筒状立ち壁部の先端側から直接的又は間接的に係止可能な第1押え部と、前記本体部の外周部から外周側に張り出す形状に形成され、前記貫通孔部の開口縁部に対して前記筒状立ち壁部の基端側から係止可能な第2押え部とを有し、前記シール部材の内周部に取り付けられる固定部材と、
前記外周シール部の外周部を囲って設けられ、環状部の周長を短縮調節可能な締め付け部材と、
を備える、グロメット。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットであって、
前記外周シール部は、内周側に突起し且つ周方向に沿って延在する外周凸部を有し、
前記締め付け部材は、前記外周凸部の外周側に設けられている、グロメット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のグロメットであって、
前記シール部材は、前記外周シール部の基端部において外周部から外周側に張り出す抜止め部を有する、グロメット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のグロメットであって、
前記外周シール部は、中心軸に直交する断面視において、直線部分と曲線部分とを有し、前記直線部分に前記曲線部分より肉厚に形成された肉厚部を有している、グロメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38978(P2013−38978A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174552(P2011−174552)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】