説明

ケイ素に富む合金

鋳造可能なケイ素ベース組成物は、ケイ素に比べて高められた靱性および関連特性を有する。ケイ素ベース組成物は、立方晶系ケイ素相と塑性流動または境界面との亀裂相互作用に関連したメカニズムによって靱性を与える可能性がある追加の相とを含む構造中に、50重量%より大きい濃度でのケイ素と1つ以上の追加元素とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素を有意に含む多相組成物に関する。より詳細には、ケイ素に比べて高い靱性を示す高ケイ素複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄などの伝統的な脆い金属は、圧縮荷重下に機能するための適度の靱性を必要とする構成部品、たとえばブレーキパッドまたはエンジンブロックにおいて幅広い用途が見いだされている。エンジニアリングセラミックスは、このような使用のための金属の比較的軽量の代替品を提供する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のエンジニアリングセラミックスは、鋳造などの比較的安価な、そして直接的な方法によって成形できない。代わりに、エンジニアリングセラミック構成部品は、用途によって必要とされる微細構造を作り出すために高温で究極的に焼結される圧粉体から始まる一連の複雑な多操作によって通常成形される。生じた構成部品はそれ故高価である。したがって、安価に製造されかつ軽量でもある、適度に強靱な材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、物体は、ケイ素と少なくとも1つの元素とを一緒に溶融させて、50重量%を超えるケイ素濃度を有する液体を形成する工程と、液体を鋳型内に配置する工程と、液体を鋳型内で冷却して、共晶凝集体中に立方晶系ケイ素とシリサイドとを同時に形成する工程とによって形成される。共晶凝集体は、物体の体積の少なくとも80パーセントを構成する。
【0005】
別の実施形態においては、鋳造物の形成方法は、ケイ素と少なくとも1つの元素とを一緒に溶融させて、50重量%を超えるケイ素濃度を有する液体を形成する工程と、液体を鋳型内に配置する工程と、液体を鋳型内で冷却して、物体の少なくとも80体積%を構成する共晶凝集体中に配列された立方晶系ケイ素とシリサイドとを同時に形成する工程とを備える。
【0006】
別の実施形態においては、組成物は、立方晶系ケイ素の相と、ケイ素以外の第1元素を含む相とを含む。これらの相は、組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に一緒に配列されている。組成物は上昇R曲線を示し、50重量%より大きいケイ素濃度を有する。
【0007】
別の実施形態においては、組成物は、立方晶系ケイ素の相と、ケイ素以外の第1元素を含む第1シリサイド相とを含む。これらの相は、組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に一緒に配列されている。共晶凝集体は固有の間隔λを有する。組成物は、50重量%超のケイ素濃度、10λより大きい厚さ、および2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する。
【0008】
別の実施形態においては、組成物は、立方晶系ケイ素の相と、ケイ素以外の第1元素を含む第1シリサイド相とを含み、これらの相は、組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に一緒に配列されている。共晶凝集体は固有の間隔λを有する。組成物は、50重量%より大きいケイ素濃度および100λより大きい厚さを有する。
【0009】
別の実施形態においては、組成物は、立方晶系ケイ素の相と、ケイ素以外の第1元素を含む第1ダイシリサイド相とを含み、これらの相は、組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に一緒に配列され、共晶凝集体は固有の間隔λを有する。組成物は、50重量%より大きいケイ素濃度および10λより大きい厚さを有する。
【0010】
さらに別の実施形態においては、組成物は、約50重量%より大きい濃度でケイ素を含む。ケイ素、バナジウム、およびクロムは、ケイ素とバナジウムダイシリサイドとの間の共晶組成を、ケイ素とクロムダイシリサイドとの間の共晶組成と結び付ける曲線上の点でのケイ素、バナジウムおよびクロムの各濃度の2原子パーセント内のそれぞれ各濃度で存在し、曲線上にある液体は、冷却時に共晶凝固を受ける。組成物は上昇R曲線を示す。
【0011】
以下の本発明説明は、同一の参照記号が類似の構造要素または機能要素を指定する、添付図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ケイ素−バナジウムの二元系状態図。
【図2】ケイ素−クロムの二元系状態図。
【図3】ケイ素−バナジウム−クロム三元三角図のケイ素に富む領域において、実験により測定された境界点と、一次ケイ素および一次混合ダイシリサイドの場を分離する計算された一変形線とを示す図。
【図4】ケイ素−バナジウム−クロム三元三角図のケイ素に富む領域における計算された液相等温線を示す図。
【図5】本発明の例示的な組成の検体の摩耗試験中の荷重、回転、亀裂およびラメラの配向間の関係を示す斜視図。
【図6】シェブロン−ノッチビーム靱性試験についてのノッチパラメータを示すダイアグラム。
【図7】シェブロン−ノッチビーム靱性試験中のケイ素についての荷重対伸長を示すグラフ。
【図8】シェブロン−ノッチビーム靱性試験中の炭化ケイ素についての荷重対伸長を示すグラフ。
【図9】本発明の例示的な組成のインゴットにおける検体配向とノッチ面との関係を示す図。
【図10】シェブロン−ノッチビーム靱性試験中の本発明の例示的な組成についての荷重対伸長を示すグラフ。
【図11A】合金A、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図11B】合金A、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図12A】合金B、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図12B】合金B、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図13A】合金C、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図13B】合金C、本発明の例示的な組成における相分布を示す顕微鏡写真。
【図14A】インゴットの中心から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図14B】インゴットの中心から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図15A】第3検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図15B】第3検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図16A】第2検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図16B】第2検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図17A】第3検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図17B】第3検体配向でインゴットの側面から機械加工された、合金D、本発明の例示的な組成の検体における相分布を示す顕微鏡写真。
【図18】ケイ素−銀系の二元系状態図。
【図19】銀−クロム系の二元系状態図。
【図20】本発明の例示的なケイ素−クロム−銀複合材料中の相分布を示す顕微鏡写真。
【図21】ケイ素−スズ系の二元系状態図。
【図22】スズ−クロム系の二元系状態図。
【図23】本発明の例示的なケイ素−クロム−スズ複合材料中の相分布を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図の特徴は、一般に、原寸に比例して描かれていない。図面における二元系状態図データは、H.Okamoto,Phase Diagrams for Binary Alloys,Desk Handbook 2000から採られている。
【0014】
ケイ素は、豊富に存在し、軽量で、そして極めて強い。しかし、ケイ素の共有結合構造は、転位塑性による変形を受け入れることができない。代わりに、ケイ素は、脆い、粒内破壊によって一般に破損される。その結果として、ケイ素は、室温で低い破壊靱性(約0.8〜1.0MPa・m1/2)を有する。この不十分な靱性は、その使用を半導体および光起電装置などの低応力用途に限定してきた。
【0015】
それに反して、例示的な組成物は、構造セラミックスまたは脆い金属に比肩する靱性値を示しながら、たとえば、50重量%、60重量%、または75重量%以上より大きい濃度でケイ素を組み入れる。こうして例示的な組成物は、望ましい機械的特性を与えながらケイ素ベース材料の低い密度、コストおよび鋳造性を活用する。
【0016】
1つのアプローチにおいて、ケイ素ベース合金または複合材料は、少なくとも2つの脆弱な相(ダイヤモンド−立方晶系構造におけるケイ素、およびケイ素以外の1つ以上の元素を含有する少なくとも1つのその他の相)を含む複合微細構造を有するバルク材である。ダイヤモンド−立方晶系ケイ素相は合金元素または不純物元素を組み入れてもよいことが理解される。その他の相中の1つ以上の元素は、ケイ素と化合してシリサイドを形成してもよい。シリサイド相は、金属元素の、より具体的には遷移金属のシリサイドであってもよい。本明細書において使用される場合、金属元素は、周期表の1族〜12族のうちの1つの元素であり、「遷移金属」は周期表のd−ブロック、3族〜12族中の元素を意味する。さらに、「シリサイド」は、ケイ素と少なくとも1つのその他の元素とのモノシリサイド、ダイシリサイド、その他の化学量論的結合、または非化学量論的結合を意味してもよい。
【0017】
いかなる理論にも制約されることなく、複合材料中の1つ以上のその他の相は、複合材料が応力下にあるときにケイ素相を強化するのに役立つ可能性がある。例示的に微細構造中の立方晶系ケイ素以外の相は高い強度を有し、ケイ素相と高強度シリサイド相との界面での引張応力は高い。脆−脆微細構造は、相境界の形態で亀裂を進行させることに対して障害を提供することによってケイ素の靱性よりも複合材料靱性を増加させる可能性がある。これらの障害は、亀裂伝播中に、たとえば亀裂傾動または加撚のために、亀裂面配向を
変えさせる可能性がある。
【0018】
シリサイド相周りの、特にケイ素−シリサイド界面に沿った亀裂偏向は、無傷のシリサイド粒子が亀裂前面の背後で亀裂面間に伸びる亀裂架橋事象をもたらす可能性がある。例示的に、立方晶系ケイ素とシリサイドとの界面は、亀裂に遭遇すると離層することができる。亀裂が伝播し続けるにつれて、シリサイド粒子は解結合され、そしてケイ素から引き抜かれることになる。このタイプの弾性亀裂架橋は、亀裂が加えられた応力下に開くことをより困難にし、こうして非合金ケイ素に比べて合金の破壊靱性および関連特性を向上させる可能性がある。
【0019】
したがって、例示的な複合材料は、たとえば、シェブロン−ノッチビーム法によって測定されるかまたはその他の材料特性の測定値から計算されるように、ケイ素の破壊靱性値の約数百パーセントの、たとえば1.2、2、3、4、5、6MPa・m1/2またはより高い値より大きい、破壊靱性を有する可能性がある。あるいは、特定の方法によって測定される例示的な複合材料の破壊靱性は、同じ方法によって測定されるケイ素の破壊靱性の2倍より大きい可能性がある。例示的な複合材料は、ケイ素の比摩耗率の約50%以下の、たとえば5×10−14/N未満、2×10−14/N、1×10−14/N以下の比摩耗率を有する可能性がある。比摩耗率は、たとえば、炭化タングステン対応体を使ったボールオンディスク試験によって測定されてもよい。
【0020】
例示的に、複合材料の少なくとも一部において、脆弱な多相は相互接続配置または交互配置で配列されている。複合材料は識別できる広がりを含んでもよく、その広がり内でケイ素相とその他の相とは共晶凝固に典型的な構造で集まっている。当業者に公知の共晶構造としては、たとえば、共有の成長方向が界面で含有される状態で規則的間隔のプレート様の別個の相からなるラメラ構造などの正常構造、または規則的間隔の相が多角形横断面の棒様である繊維状構造;および別個の相間に広く行き渡った全体的な配向関係がまったくない、変則的構造が挙げられる。変則的な共晶構造としては、不規則な、壊れたラメラ状の、繊維状の、複合規則的な、Chineseスクリプト、および準規則的な構造が挙げられる。
【0021】
本明細書において使用される場合、「共晶の」は、液体が凝固して同時に2つ以上の別個の固相を形成する反応、またはそのような反応が起こる液体組成を包含し、そして「共晶凝集体」は、相が共晶型構造で配置構成されているケイ素ベース複合材料における広がりの和を意味する。そのような広がりは例示的に、ケイ素ベース複合材料の体積の少なくとも80%、85%、90%、95%以上を占める。
【0022】
一実施形態においては、共晶凝集体は、複合材料の全体を実質的に構成する。そのような相互接続構造によって占められる複合材料の高い体積百分率は、材料中の亀裂と相互作用するために利用可能な高い脆−脆界面面積に相当する。さらに、2つ以上の脆い相の特定の1つは、複合材料中の共晶凝集体の有意の体積分率、たとえば、共晶凝集体中の材料の10%、15%、20%、25%、30%または40体積%超を構成してもよい。
【0023】
ケイ素ベース複合材料中の共晶凝集体内における多相系の配置構造は、当業者によって理解されるように、固有の波長または間隔λを有することが可能である。固有の間隔は、共晶凝集体中の場所とともに変わる可能性がある。より小さい間隔λは、亀裂と相互作用するために利用可能な界面面積のより大きい密度と相関する。固有の間隔の平均値は例示的に、たとえば、当業者に知られているようなライン−インターセプト法によって測定されるように、80μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、5μm未満またはより小さい値であってもよい。
【0024】
本明細書において記載されるケイ素ベース組成物は、単にコーティングまたは比較的薄い層としてのみならず、スタンドアロン型材料として一般に使用することができるバルク複合材料であってもよい。ケイ素ベース複合材料の構造はしたがって、複合材料微細構造中の界面と進行中の亀裂との間に比較的多くの相互作用を提供するために、ある次元において、十分に厚くてもよく、たとえば、固有の間隔λの少なくとも10、50、100または1000倍であってもよい。結果として、材料を通しての亀裂伝播に対する抵抗は、亀裂が長くなるにつれて上昇し、その結果材料は上昇R曲線を有すると言われる。当業者に知られているように、そのような上昇R曲線を有する材料は、ケイ素またはあるセラミックスなどの脆い材料に共通の壊滅的な破壊よりもむしろ応力下に、安定した亀裂伸長、または伝播を示すことができる。上昇R曲線を有する材料における安定した亀裂伸長は、当業者に公知の技法、たとえば、長亀裂挙動をシミュレートする、シェブロンノッチビーム法またはコンパクト−テンション試験;短亀裂挙動をシミュレートする曲げ表面亀裂法;またはASTM C1421に指摘されるようにプレクラッキング条件に依存して長または短亀裂挙動をシミュレートすることができる、プレ亀裂ビーム法を用いて実証することができる。
【0025】
例示的な複合材料への靱性付与における共晶凝集体の効能は一般に、材料中の亀裂に対しての共晶構造の配向に依存する可能性がある。たとえば、亀裂に垂直の強化相の配向は、平行の配向より亀裂伝播に対して大きい障害を構成する可能性がある。共晶凝集体の構造は例示的に、複合材料の、領域内に、または全体の至る所で、実質的に同様に配向していても、または互いに整列していてもよく、その機械的特性の異方性を推し進める。あるいは、共晶凝集体は、高められた等方性に向けて複合材料の、ある領域内に、または全体の至る所でそれぞれの様々な配向の局所領域を含んでもよい。この場合に、亀裂は例示的な複合材料中に伝播するので、それは様々な亀裂抵抗の領域に引き続いて遭遇する可能性がある。こうしてこの構造は、過度の亀裂成長が起こり得る前に、亀裂架橋などの、微細構造強靱化メカニズムの活性化を提供する可能性がある。構造配向の分布は実質的に、複合材料の強靱化メカニズムが活性化される前に起こる亀裂成長の程度を最小にする可能性があり、著しい上昇R曲線挙動の実現を支援する。
【0026】
共晶凝集体中の体積分率および立方晶系ケイ素以外の相の間隔、相モルホロジおよび配位、ならびに一次または過成長ケイ素領域の存在などの、例示的なケイ素ベース複合材料の破壊靱性に影響を及ぼす可能性がある微細構造変数は、必ずしも互いに独立して制御することができない。たとえば、ケイ素以外の所与の1つ以上の成分元素については、たとえば不規則な共晶構造の形成を推し進めることによって、共晶配向のより大きい多様性に関連した特性を得るために強化相の体積分率を犠牲にする組成を選択することが望ましい場合がある。同時に、より低い強化相の体積分率は、例示的な複合材料によって与えられる全体靱性を劣化させる可能性がある低エネルギー破壊経路を提供する、過成長ケイ素によって占められるより大きい体積と関連する可能性がある。ケイ素過成長の減少は、成長速度を低下させるように凝固過程を調整することによって達成されてもよいが、この変更は順繰りに、共晶凝集体中の固有の間隔を増加させる。組成および凝固過程変数は、所望の特徴を有するケイ素ベース複合材料を製造するためにそのような競合する考慮事項を最適化するように選択されてもよい。
【0027】
別のアプローチにおいては、例示的な高ケイ素複合材料は、金属結合元素などの、塑性流動できる、延性相を組み入れてもよい。延性相は転位塑性を可能にし、こうして亀裂先端を鈍らせるかまたは亀裂面の全域で延性架橋を形成することによって潜在的な強靱化を提供することができる。延性相は、共晶微細構造の一部であってもよいし、または別個の初析領域を構成してもよい。一実施形態においては、ケイ素ベース複合材料における延性相の創出は、ケイ素と中間化合物を形成しない1つ以上の合金金属、たとえば、アルミニウム、鉛、銀、またはスズをケイ素に加えることによって成し遂げられてもよい。
【0028】
延性相はまた、例示的な脆−脆複合材料中に組み入れられてもよく、それによって脆−脆微細構造単独によって提供されるものよりも例示的なケイ素ベース複合材料の靱性を高める。この場合に、延性合金金属は、ケイ素と結合して強化脆相を形成する元素と化合物を形成しないことが望ましい可能性がある。
【0029】
ケイ素ベース組成物は、鋳造法によるその物体の形成方法に適している。こうして本明細書において記載される例示的な複合材料の物体は、ケイ素を1つ以上の元素と適切な割合で溶融させ、次に生じた液体を鋳型内で冷却して、たとえば共晶反応によって、例示的な多相構造を組み入れた固体を形成することによって形成されてもよい。鋳型は、ダイまたは形成されるべき物体の模型から製造された埋没材であってもよい。例示的な組成物の物体の形成方法としては、たとえば、ダイ鋳造、砂鋳造、埋没材鋳造、連続鋳造、および方向性凝固が挙げられるが、それらに限定されない。このように本方法の実施形態は例示的に、粉末冶金法によって製造された組成物に比べて比較的低いコストで複雑な形状の最終生成物を形成することを可能にする。複雑な形状の高品質部品の実現は、例示的な多相鋳物の形成における凝固時の非常に低いまたはゼロの正味の体積変化によってさらに容易にすることができる。ケイ素ベース複合材料のある組成物について、約10%の、立方相を形成するための凝固時にケイ素が受ける膨張は、1つ以上のその他の相の形成時に液体のその他の部分の収縮によって幾分相殺される可能性がある。
【0030】
例示的なケイ素ベース複合材料がそれによって製造されてもよい共晶反応としては、たとえば、ラメラまたは変則的多相構造を形成するための多成分系における不変反応の組成を有する液体からの凝固;または凝固が境界曲線に沿って進行するにつれて変わる組成の正常構造または異常構造を形成する、不動点間の境界曲線上にある組成を有する液体からの凝固が挙げられる。共晶凝固は、立方晶系ケイ素相またはケイ素以外の相の一次凝固の後に起こってもよい。共晶広がりが鋳型壁から優先的に成長せずに、代わりに凝固中に均一に核生成するように核生成剤が液体に加えられてもよい。核生成剤の使用はそれ故、共晶凝集体中に構造の異なる配向の局所領域を含む微細構造をもたらす可能性がある。
【0031】
一実施形態においては、共晶凝集体中の立方晶系ケイ素以外の相は、立方晶系ケイ素相と相互接続した、1シリサイド相である。この1シリサイドは実質的に、単一元素、ケイ素以外の第1元素のものであってもよい。この場合に、ケイ素以外の第1元素は、共晶反応形成ケイ素を有するケイ素およびシリサイド相とともに二元系中に存在してもよい。二元共晶不動点は、たとえば50原子パーセント、60原子パーセント、75原子パーセント以上より大きい、高ケイ素濃度で存在することが望ましい可能性がある。そのような高ケイ素二元共晶組成は、全面的に高いケイ素含有率という利点を有する。表1は、二元溶融物からケイ素と同時に凝固するシリサイドの例および相当する共晶組成をリストアップする。
【0032】
【表1】

【0033】
例示的なケイ素ベース組成物を生成する共晶凝固は、ケイ素およびシリサイドの中間の組成を有する実質的に二元の液体合金から始めて実施されてもよい。初めにケイ素−シリサイド共融組成の液体合金については、生じた組成物は完全に共晶である可能性がある。共晶から離れた初期液体合金組成については例示的な生じた凝固複合材料は、複合材料の体積分率の付随する低下が交互共晶構造の広がりによって占められる状態で、一次立方晶系ケイ素相または一次シリサイド相を構成する物質を含んでもよい。
【0034】
共晶反応において形成されるシリサイドは、共晶凝集体中に比較的高い体積分率で存在する可能性がある。表2は、ケイ素−ダイシリサイド共晶構造を形成する共晶反応L→Si+MSiを有する二元系を示す。リストアップされた二元ケイ素−ダイシリサイド構造、特にSi−TaSi、Si−CrSi、Si−TiSi、およびSi−CoSiは、有意の体積分率のシリサイド相を有する。
【0035】
【表2】

【0036】
別の実施形態においては、1シリサイド相は、ケイ素以外の、第1元素に加えて、相当な量の少なくとも第2元素を有する混合シリサイドであってもよい。この場合に、ケイ素以外の第1および第2元素は、ケイ素とともに各二元系中に存在してもよく、二元系において各共晶反応は、立方晶系ケイ素とそれぞれ第1および第2元素のシリサイドとを形成する。共晶凝集体によって占められるケイ素ベース複合材料の体積分率を高めるために、ケイ素とケイ素以外の元素とは、共晶反応が三元系またはより高次の系において起こるものに近い各濃度でケイ素ベース複合材料中に存在してもよい。たとえば、複合材料の組成は、2つの二元共晶組成(ケイ素と第1元素のシリサイドとの一方およびケイ素と第2元素のシリサイドとの他方)を結び付ける境界曲線近くの組成空間中に存在してもよい。曲線上にある組成を有する液体は、冷却時に共晶凝固を受ける。例示的な複合材料中の成分元素の濃度は、そのような境界曲線上の点を示す各濃度の1、2、またはそれ以上の原子パーセント内にあってもよい。
【0037】
2つの二元共晶組成物が異なるケイ素含有率で発生するおよび/または二元共晶凝集体によってかまたは共晶凝集体中の強化シリサイド相によって占められる異なる体積分率を有する場合、第1および第2元素の濃度の選択によって影響力の大きい微細構造特徴を調整することが可能であり得る。追加元素、たとえば、ケイ素以外の第3元素、第3および第4元素、またはより多くの元素の包含は、さらなる変数を提供する可能性があり、それらの変数によって例示的な組成物の微細構造態様が操作される可能性がある。
【0038】
第1および第2元素、ならびに追加元素のシリサイドは、同じ結晶構造を有してもよいかまたはすべての割合で互いに可溶であってもよい。例示的な複合材料中の混合シリサイドはまた、共通の結晶構造を有してもよい。同じ結晶構造中に存在するシリサイドとしては、たとえば、共通して立方晶系C1構造を有する、ニッケルダイシリサイドおよびコバルトダイシリサイドが挙げられ;モリブデンダイシリサイド、タングステンダイシリサイド、およびレニウムシリサイドは共通して正方晶系C11構造を有し;ジルコニウムダイシリサイドおよびハフニウムダイシリサイドは斜方晶系C49構造を有し;チタンダイシリサイドは共通して斜方晶系C54構造を有し;バナジウムダイシリサイド、クロムダイシリサイド、ニオブダイシリサイド、およびタンタルダイシリサイドは共通して六方晶系C40構造を有し、そしてすべての割合で互いに可溶である。
(実施例)
(相関係)
図1に関連して、1つの場合にシリサイド相中のケイ素以外の第1元素はバナジウムである。バナジウムダイシリサイドは52.48重量%ケイ素である。Si−VSi共晶反応は、図1に示されるように、97原子パーセントケイ素の組成CE,Si−VSi2および1400℃の温度TE,Si−VSi2で起こることが文献に報告されている。早
期の報告は、1370℃〜1415℃の範囲の値を含んでいた。Si−VSi共晶構造は、図1の状態図を用いる対応線計算に基づいて11.2体積%VSiであると予期される。
【0039】
図2に関連して、別の場合に、シリサイド相中のケイ素以外の第1元素はクロムである。クロムダイシリサイドは51.97重量%ケイ素である。Si−CrSi共晶反応は、87原子パーセントケイ素の組成CE,Si−CrSi2および1328℃の温度TE,Si−CrSi2で起こることが文献に報告されている。Si−CrSi共晶構造は、図2の状態図を用いる対応線計算に基づいて46.07体積%CrSiであると予期される。
【0040】
共晶凝集体中に混合シリサイド相を有する例示的な複合材料は、高ケイ素組成物中にケイ素以外の第1元素としてバナジウムおよびケイ素以外の第2元素としてクロムを組み入れることによって形成されてもよい。Si−VSiおよびSi−CrSi系の各共晶構造と関連した異なる量のダイシリサイド相は、たとえば、複合材料が鋳造される液体の、全体的組成の賢明な選択によって比較的広範囲にわたる例示的なケイ素ベース複合材料の共晶凝集体中の強化ダイシリサイド相の体積分率の調整を可能にすることが分かった。C40六方晶系結晶構造中に存在するダイシリサイドを有する1つ以上の追加元素の包含は、より多くの組成変数を導入する可能性があり、組成変数によってバナジウム、クロムおよび追加元素を含有する2相共晶凝集体の特性は
Si−V−Cr系における二元および三元合金を、熱的方法および微細構造方法を用いて研究した。試験されるあらゆる合金について、ケイ素顆粒(99.999%、Alfa
Aesar製品#38542)をバナジウム顆粒(99.7%、Alfa Aesar製品#39693)および/またはクロム粉(99.996%、Alfa Aesar製品#10452)と組み合わせてサンプルを構成した。各サンプルを、当業者に公知の通常の熱分析用の示差走査熱量計(「DSC」)の70マイクロリットルのアルミナパンに入れた。元素を、30分間流れるアルゴン下に1600℃でDSCにおいて一緒に溶融させ、100℃/分の速度で1100℃まで冷却し、試験前に1時間1100℃に保持した。次にサンプルを5℃/分の速度で1550℃まで加熱した。相転移温度は、DSC走査における吸熱ピークの存在によって特定した。観察される吸熱ピークの(または多数の熱信号を示す合金については最後の最高温度吸熱ピークの)ピーク温度を合金についての液相温度(T)であると見なした。
【0041】
DSC走査を、表3に報告されるそれから推側される液相温度(T)の、残りがバナジウムの94.00〜97.60原子パーセントケイ素を含有する二元検体と、表4に報告されるそれから推側される液相温度の、残りがクロムの75.00〜96.00原子パーセントケイ素を含有する二元検体とについて記載されたように行った。熱信号において単一ピークを示す組成を各二元系について可能な共晶組成と指定した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
微細構造分析は、低速ダイヤモンド・ソーを用いて区分し、そして0.06μm仕上げ品に研磨した後、DSCによって特定された共晶候補サンプルに関して行った。部分の顕微鏡写真を、完全共晶構造を有する組成を特定するために、当業者に知られているように検討した。この組成を各系についての二元共晶組成と見なした。共晶組成サンプルのDSC昇温中に観察された単一ピーク温度を、当該二元共晶組成についての不動点の温度と見なした。二元Si−VSiおよびSi−CrSi共晶組成(C)ならびに反応温度(T)はそれぞれ、Si−3.99V(T=1386℃)およびSi−12.09Cr(T=1338℃)であり、上に報告された文献値との良好な一致を示すことが分かった。
【0045】
Si−VSiおよびSi−CrSi二元共晶合金の両方についての顕微鏡写真は、一次または過成長ケイ素またはダイシリサイド相領域がまったくなしの、完全にまたはほぼ完全に共晶の微細構造を示した。繊維状共晶構造がSi−VSi共晶合金について観察された。コロニー型構造がSi−CrSi共晶合金について観察された。
【0046】
図3に関連して、Si−V−Cr三元三角図のケイ素頂点近くのケイ素に富む領域10における相平衡を実験により研究した。幾つかの試験組成を、6つのケイ素等値線11、12、13、14、15および16のそれぞれ上で選択した。等値線11〜16のそれぞれ上で領域10のSi−V側により近い組成を有する液体の冷却は、最初に一次混合ダイシリサイド(V,Cr)Siを生成し、領域10のSi−Cr側により近い組成を有する液体の冷却は最初に一次ケイ素を生成する。ある中間組成の液体は、一次相をまったく生成しないが、共晶構造中に混合ダイシリサイド(V,Cr)Siおよび立方晶系ケイ素を同時に形成する。そのような組成は、三元三角図中のケイ素およびダイシリサイド一次相領域間の境界点と本明細書では言われる。
【0047】
ケイ素に富む領域10における境界点を推定するために、三元検体を調製し、上記のように熱分析にかけた。吸熱共晶ピークを各合金組成について観察した。二元合金について観察されたピークと比較して、一次相の凝固による信号は容易には解像されない。共晶相の溶融が終わり、そして一次相の溶融が始まる点の識別は、(Cr,V)Si混合ダイシリサイド相の組成が二元系におけるように一定であるよりもむしろ三元相場にわたって変動するので困難である可能性がある。凝固/溶融時のダイシリサイド組成の変動性は、二元化合物についてのピークと比較してより幅広く、そしてよりフラットである吸熱ピークにする。各等値線について、遅い昇温中に単一ピークを示すサンプルを、等値線についての境界点組成の候補としてさらに研究した。等値線11、12、13、14、15および16上の組成について計算された液相温度をそれぞれ、表5、6、7、8、9および1
0に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
微細構造分析は、低速ダイヤモンド・ソーを用いて区分し、そして0.06μm仕上げ品に研磨した後、試験される候補DSCサンプルに関して行った。各等値線上の候補サンプルから製造された部分の顕微鏡写真を、最小量の一次ケイ素または一次ダイシリサイドの完全に共晶の構造またはほぼ完全に共晶の構造を有する組成を特定するために、当業者に知られているように検討した。この組成を等値線についての境界点の推定値と見なした。相補的な熱および微細構造分析によって推定される各境界点21、22、23、24、25および26での組成を表11にリストアップする。
【0055】
【表11】

【0056】
Si−V−Cr系における相平衡をまた、当業者に公知の、CALPHAD法に基づく、Thermo−Calc(登録商標)ソフトウェアを用いる熱力学分析によって研究した。組成および温度の関数としての平衡状態を、材料系の全自由エネルギーの大域的最小化によって決定した。モデルに現れる純元素についてのGibbsエネルギー値は、DinsdaleによるSGTE編集物(Dinsdale AT.Calphad−Computer Coupling of Phase Diagrams and Themochemistry 1991;15:317)から採った。下に表されるエネルギーはジュール(Joule)/モル単位で、そして温度Tは度ケルビン(Kelvin)単位である。
【0057】
考慮される相は、液体、αCrSi、CrSi、VSi、VSi、bcc−A2固溶体、CrSi、βCrSi、CrSiおよびVSiであった。各相θについての各モルでのGibbs自由エネルギーは、
【0058】
【数1】

【0059】
(式中、方程式の右辺項はそれぞれ、相θの元素成分の未反応混合物の表面基準エネルギー、立体配置エントロピー、および過剰Gibbsエネルギーを表す)
によって記述される。項
【0060】
【数2】

【0061】
は本明細書においては、Gibbsエネルギーが各元素について同じ基準点に関して採られるすべての相についてであることを明確にするために示され、ここで、
【0062】
【数3】

【0063】
は、298.15Kおよび1バールでのそれらの標準元素基準状態における元素のモルエンタルピーであり、bは相θにおける元素iの化学量論因子である。この項は、Gibbsエネルギーについての絶対値がまったくないので必要とされる。
【0064】
相αCrSi、CrSi、VSi、およびVSiを、立体配置エントロピー項がゼロであり、そして
【0065】
【数4】

【0066】
(Ansara I,Dinsdale AT,Rand MH編者.COST 507:Definiton of thermochemical and thermophysical properties to provide a database
for the development of new light alloys.Belgium,1998)
である化学量論的固体としてモデル化した。モデルにおいてxおよびxは、化合物Aの化学量論と一致する元素AおよびBのモル分率であり、
【0067】
【数5】

【0068】
は、それらの基準状態(すなわち、CrおよびVについてはbccならびにSiについてはダイヤモンド立方晶系)に関して元素AおよびBのGibbs自由エネルギーであり;そして
【0069】
【数6】

【0070】
は、温度Tで安定な元素と言われる化合物の形成のGibbsエネルギーである。表12は、大域的自由エネルギー最小化コンピュータ計算におけるモデル化化学量論的相について用いられる熱力学関数を示す。
【0071】
【表12】

【0072】
GHSERVおよびGHSERSIはそれぞれ、純バナジウムおよびケイ素についての格子安定性であり、ここで、
【0073】
【数7】

【0074】
(298.15K、1バール)(上記で引用した、Dinsdaleに記載)
である。標準元素基準はSERと略記される。
液相は、置換型溶液としてモデル化され、それについては
【0075】
【数8】

【0076】
(Redlich O,Kister AT.Industrial and Engineering Chemistry 1948;40:345)
である。このモデルにおいてxは、成分元素iのモル分率であり、
【0077】
【数9】

【0078】
は、溶液相中にある元素iのGibbs自由エネルギーであり(それは、上記で引用した、Dinsdaleによって与えられている)、Rは、一般ガス定数である。
溶液相についての過剰Gibbs自由エネルギー項
【0079】
【数10】

【0080】
は、元素iとjとの間の相互作用パラメータである、Redlich−Kister多項式
【0081】
【数11】

【0082】
を含む式
【0083】
【数12】

【0084】
として表わすことができる。
溶液モデルは成分元素間の対相互作用を説明するにすぎない。
【0085】
【数13】

【0086】
についてのコンピュータ計算モデルにおけるCrおよびSi(ν=0、1)、CrおよびV(ν=0、1)ならびにSiおよびV(ν=0、1、2)についての相互作用パラメータ
【0087】
【数14】

【0088】
を記述するために用いられる関数は、表13にリストアップされる。二元系から離れた組成については、Muggianu法が、Si、VおよびCrのすべて3つを含む液体組成を記述するために上に示された
【0089】
【数15】

【0090】
の関数を適合させるように適用され、
【0091】
【数16】

【0092】
(Muggianu YM,Gambino M,Bros JP.Journal De Chimie Physique Et De Physico−Chimie Biologique 1975;72:83)
をもたらす。
【0093】
【表13】

【0094】
秩序相としてモデル化される相は、次のような副格子を有すると指定された:(Cr,Si,V)(空格子点)副格子を持ったbcc−A2固溶体;(Cr,Si)(Cr,Si)副格子を持ったCrSi;(Cr,Si)(Cr,Si)(Cr)副格子を持ったβCrSi;(Cr,Si,V)(Cr,Si)副格子を持ったCrSi;および(Si,V)(Si,V)副格子を持ったVSi。モデル化された秩序相についての表面基準
【0095】
【数17】

【0096】
および立体配置エントロピー項
【0097】
【数18】

【0098】
は、
【0099】
【数19】

【0100】
(Sundman B,Agren J.Journal of Physics and Chemistry of Solids 1981;42:297およびHillert M,Staffans Li.Acta Chemica Scandinavica 1970;24:3618)
である。
【0101】
【数20】

【0102】
の添字中のコロンは、副格子のそれぞれ上の別個の成分を特定する。元素iおよびjが同じものであるとき、
【0103】
【数21】

【0104】
は、成分元素の形成のGibbsエネルギーを表し;元素iおよびjが異なるとき、
【0105】
【数22】

【0106】
は化合物AまたはB(ここで、AおよびBはそれぞれ、元素iおよびjに相当する)の形成のGibbsエネルギーを表す。モデル化された秩序相について用いられる関数は、表15〜18に表示され、表中でGHSERV、GHSERSIおよびGHSERCRはそれぞれ、純バナジウム、ケイ素およびクロムについての格子安定性であり、ここで、
【0107】
【数23】

【0108】
(298.15K、1バール)(上記で引用した、Dinsdaleに記載)
である。標準元素基準はSERと略記される。

【0109】
【数24】

【0110】
はそれぞれ、副格子1および2上の成分分率であり、因子mおよびnは、2つの副格子上の部位の比を与える。2つの副格子(すなわち、(A,B)(A,B))のどちらか上に存在することができるたった2つの成分からなる秩序相については、過剰自由エネルギー項は、
【0111】
【数25】

【0112】
に等しく、
式中、溶液相モデルについて上で提示されたように
【0113】
【数26】

【0114】
である。
【0115】
【数27】

【0116】
についての類似の式が、3つ以上の成分が副格子の1つまたは両方上に存在する場合について用いられた。
各副格子上の相互作用がその他の副格子の占有と無関係であると仮定して、秩序相について用いられる相互作用パラメータは、と指定される成分について形式
【0117】
【数28】

【0118】
を有する。
【0119】
【数29】

【0120】
についての式を表14〜18に一覧にする。液相について上に示された、Muggianu法をまた秩序相についても用いた。
【0121】
【表14】

【0122】
【表15】

【0123】
【表16】

【0124】
【表17】

【0125】
【数30】

【0126】
は、バナジウムを組み入れた混合ダイシリサイドを記述するためのクロムダイシリサイドについてのZhangモデルの改作である。
【0127】
【表18】

【0128】
表19は、上に概説されたコンピュータ分析によって与えられるSi−CrおよびSi−V二元系における溶融反応についてのデータをリストアップする。括弧内の値は、上に報告された実験により測定された二元共晶反応である。実験的なおよび計算された共晶組成は、Si−CrSi反応については2.5原子%SiだけおよびSi−VSi反応については0.9原子%Siだけ異なるにすぎないことが分かった。Si、CrSi、およびVSiの融点は、T(Si)=1414℃、T(CrSi)=1439℃、およびT(VSi)=1677℃の文献値(Villars P,Okamoto
H,Cenzual K,編者.ASM Alloy Phase Diagrams
Center Materials Part,OH:ASM International 2007)と良く一致している。
【0129】
【表19】

【0130】
計算されたSi−VSi共晶組成28およびSi−CrSi共晶組成29を図3に示す。一次ケイ素と一次ダイシリサイド域を分離する境界線を示す、液相と平衡にある固体組成の計算された一変形線30もまた、ケイ素に富む領域10において計算した。Si−VSiおよびSi−CrSi二元共晶は、凝固して立方晶系ケイ素とバナジウムおよび/またはクロムのダイシリサイドとを含む100%共晶構造を構成する液体組成の軌
跡である境界線によって結び付けられる。平衡条件下に、ケイ素頂点と境界線との間にある組成の液体は、冷却時に一次ケイ素を最初に形成し、残りの液体の組成は境界線に向かって移動する。残りの液体の組成が境界線に達するとき、さらなる凝固は共晶構造を形成し、混合共晶/一次ケイ素微細構造をもたらす。ケイ素頂点から離れて、境界線の向こうにある初期液体組成は、同様に凝固して一次ダイシリサイドの後に混合共晶を形成する。計算された一変形線30は、三元系における境界線に良く似ているように見え、実験により測定された境界点21〜26と線30との一致は良好である。
【0131】
図4に関連して、ケイ素に富む領域10における液相線投影は、液相についての等温計算によって決定された。等温線は、表5〜10に提示される組成について実験により測定された液晶温度とよく一致する。一変形線30上のまたはその右側の、すなわち一次Si領域における合金組成についての計算液晶温度と測定液晶温度とはほぼ一致したが、線30の左側の組成については多少の偏差が見いだされた。測定される熱信号においてほとんど目立たない一次吸熱ピークにつながる、一次ダイシリサイド相の組成の変動性は、上に議論されたような差の一因となる可能性がある。
摩耗試験
Si−V−Cr系における二元および三元検体を、次の通り摩耗試験用に調製した。インゴットを、表20にリストアップされる、研究される組成のそれぞれについて鋳造した。各インゴットを鋳造する準備として、黒鉛坩堝(2.5インチID×5インチ深さ、品番GT001015、graphitestore.com)および黒鉛鋳型(内部寸法2.062インチW×3.75インチL×0.75インチD、品番BL001215、graphitestore.com)を空気中500℃で空気中2時間焼いて水分を除去した。所望の合金組成のために必要とされるような量のケイ素(99.98%、Dow Corning)、バナジウム顆粒(99.7%、Alfa Aesar製品#39693)およびクロム片(2〜3mm片99.995%、Alfa Aesar製品#38494)を黒鉛坩堝中に入れた。これらの量を次に、空気雰囲気中で誘導溶融させて液体合金を坩堝中で形成した。液体合金を空気雰囲気中で黒鉛鋳型へ移した。凝固したインゴットを鋳型から取り出した後、フラット0.25インチのフラット検体、1インチ平方をそれから精密切断した(Ferro−Ceramic Grinding,Inc.)。エネルギー分散分光法(「EDS」)に基づく画像分割法(imaging segmentation process)を用いて、後方散乱SEM画像からこれらの合金中の、表20に報告される、ダイシリサイド相の体積分率を推定した。
【0132】
非合金ケイ素および例示的な検体の摩耗挙動を、当業者に公知の、ボールオンフラット型摩擦計(CSM Instruments,Needham,MA)を用いて分析した。半径6mmの炭化タングステン球をサンプルステージの上方の場所に固定した。図5に関連して、分析されるべき検体50をサンプルステージに取り付け、上面52が潤滑なしで球と接触した状態で球の真下を回転方向54に回転させた。回転の半径は8mmに等しかった。検体50と球との相対運動は、0.15m/秒の線滑り速度に相当した。試験された各合金組成について、別個のサンプルを、球によって荷重方向56に伝えられる荷重にかけた。用いられた荷重は、1ニュートン、2N、3N、4N、5Nおよび6Nであった。各サンプルを荷重下に10,000サイクルにかけた。試験は、25℃±2℃で周囲雰囲気中で行った。試験装置は、試験環境の制御を容易にするためにおよび外部ノイズの影響を減らすために囲い内に隔離した。
【0133】
検体50中の共晶ラメラは、インゴットの凝固中に最大熱抽出速度の方向と相関する好ましい成長方向53に沿って、その正方形の上面52にほぼ垂直に配向することが観察された。摩耗計における試験後に、亀裂を、摩耗した上面52下で検体50において観察した。亀裂は横破壊に起因し、上面52に平行のそして好ましい成長方向53でのラメラの配向に垂直の亀裂方向58に配向した。
【0134】
各検体について、摩耗試験中に除去された材料の正規化体積を、2μm半径ダイヤモンド針付きTencor(登録商標)P−16表面形状測定装置を用いて、生じた摩耗痕跡の3D形状測定走査を行うことによって測定した。2mgの針力を各走査のために用いた。興味のあるエリアに無視できる曲率の痕跡があり、その結果摩耗痕跡の走査域が長方形であるように検体50を整列させた。走査域は、1測定当たり合計11の線形走査を含む、1000×300μmであった。Apex(登録商標)3Dソフトウェアを次に用いてデータについて平均プロフィールを生成した。MATLAB(登録商標)ソフトウェアを用いて摩耗プロフィール下の面積A(ならびに摩耗痕跡の側面上のあらゆるパイルアップ面積)を得るために積分することによって正規化摩耗体積を測定した。正規化摩耗体積Vは、
【0135】
【数31】

【0136】
(式中、νは全摩耗体積であり、xは全滑り距離であり、rは痕跡の円周である)
から計算した。摩耗面積Aを、試験が行われた6つの荷重のそれぞれについて測定した。検体摩耗痕跡に関する2つの異なるエリアからのそれぞれの面積値を各荷重について平均した。正規化摩耗体積を用いて比摩耗率k=V/W(式中、Wは表20に示される、加えられた荷重(N)である)を計算した。
【0137】
【表20】

【0138】
表20のデータは、Si−(Cr,V)Si複合材料のすべてが試験されたすべての荷重条件下に非合金ケイ素と比べて優れた耐摩耗性を表示することを示す。合金の比摩耗

【0139】
【数32】

【0140】
はSiの比磨耗率
【0141】
【数33】

【0142】
より約1桁小さいことが分かった。複合材料について見いだされた摩耗率の大きさは、それらのすべてが摩耗状況において、とりわけ磨損が最大関心事であるときに使用される、エンジニアリングセラミックス、サーメット、および窒化鋼によって示されるものに典型的である。
(靱性試験)
Si−Cr−V系における二元および三元合金の、ならびにHexoloy(登録商標)SA炭化ケイ素および非合金ケイ素のバーの室温靱性を、当業者に公知の、A型ノッチを使ったシェブロン−ノッチビーム(「CNB」)試験(ASTM C 1421標準)を用いて評価した。この方法においては、v−形状ノッチが検体の長方形横断面中へ機械加工される。ノッチは、亀裂の自動的な開始およびシェブロン先端から最終破壊の点までの安定した伸長を促進する。CNB試験はそれぞれ、40および20mmの外部および内部スパンを有する4点曲げ固定具と、4.5±0.5mmの直径および12.5±0.5mmの長さの鋼合釘ピンとを用いて50mm×3mm×4mmバーの形態の検体に関して行った。圧縮モードでのInstron 5500R試験機のクロスヘッドシリンダーを用いて、細長い薄板によって導かれる、内部スパン固定具を0.06mm/分の速度で押し下げた。±10μNの分解能の890N荷重セル(200lbf)(Instronのステージの下に置かれた)を用いて0.1秒毎にデータを獲得した。この獲得率は、最大荷重による滑らかな転移、または破損前の最大荷重までのその後の力増加がそれに続くポップイン事象を検出するのに十分であり、それらのどちらかが所与の試験方法の妥当性を立証する。
【0143】
図6に関連して、すべての検体についてシェブロンノッチ60は、予期される亀裂線に垂直の幅B(3.00±0.13mm)および亀裂線に平行の高さW(4.00±0.13mm)の検体の末端上に形成されたそれぞれの長さa(0.80±0.07mm)、
11(0.95W〜1.00W)およびa12(0.95W〜1.00W)の形体を有した。これらの寸法は、ほぼ定常状態の破壊靱性が上昇R曲線材料について実現されるのを可能にすることができる、最高の比較的安定した亀裂伸長を最大荷重まで、そして最低の亀裂速度を所与の変位速度に対して生成し、試験されるケイ素ベース複合材料における安定した亀裂伝播の検出を容易にすることが分かった。
【0144】
CNB検体についての測定最大荷重値Pmaxに基づいて、複合材料の破壊靱性
【0145】
【数34】

【0146】
は、当業者に知られているように、
【0147】
【数35】

【0148】
(式中、
【0149】
【数36】

【0150】
は応力拡大係数であり、Pmaxは、安定した亀裂伸長後の最大力(N単位での)であり、SおよびSは、4点固定具の外側および内側スパン(m単位での)であり、BおよびWはメートル単位である)
から計算した。
【0151】
【数37】

【0152】
は、
【0153】
【数38】

【0154】
の検体幾何学についての応力拡大係数の良好な近似であることが分かっている、ストレート−スルー−亀裂−仮定から誘導される式(Salem et al.Ceramic Engineering and Science Proceedings 1999;20:503)を用いて計算した。
【0155】
CNB法にかけられた純ケイ素は、安定した亀裂伸長がまったく観察されない状態で、最大荷重で壊滅的に破損した。図7に関連して、対照非合金ケイ素検体についての代表的な荷重−伸長曲線63は、荷重の一貫した増加を示す直線状の部分65、引き続く破損点67での突然の荷重降下を有する。この応答は、試験検体過荷重に起因するシェブロンノッチ60(図6)の先端から離れた亀裂開始およびその後の不安定破壊を示す。不安定破壊のために、このCNB試験は、試験されたケイ素についてのKIvbの妥当な値を生成
することができなかった。
【0156】
図8に関連して、炭化ケイ素検体の代表的な荷重−伸長曲線68は、壊滅的な破損が起こる最大荷重73に達する前のポップイン71を実証している。ポップイン71は、鋭い亀裂がシェブロン先端で開始されたこと、およびこの材料についての靱性測定結果が妥当であったことを示す。CNB試験によって測定された既知の値と良く一致する2.88±0.04MPa・m1/2という破壊靱性がHexoloy(登録商標)SA SiCについて測定された。最大荷重での壊滅的な破損は、単一値靱性、またはフラットなR曲線を示す材料に特徴的である。炭化ケイ素における安定した破壊の正確な検出およびその破壊靱性値と文献値との一致は、KIvbを測定するために用いられるCNB法の好適性を裏付ける。
【0157】
表21に示される組成の、Si−Cr−V系における二元および三元合金の検体を、次の通り靱性試験用に調製した。インゴットを、研究される各組成について誘導炉において鋳造した。鋳造されるべき各インゴットについて黒鉛坩堝(GR030、graphitestore.com)を、すべて真空(3×10−2トル)下にポンプを使いながら、誘導コイルにおいて540℃で30分間焼き、次に放冷した。表22に示される寸法の黒鉛鋳型(GM−111、graphitestore.com)を空気雰囲気中430℃で45分間焼き、次にファン冷却した。坩堝および鋳型が両方とも室温に達したとき、坩堝にケイ素チャンク(99.98%、Dow Corning)、クロムペレット(99.96重量%、Sophisticated Alloy Inc.)、およびバナジウムチップ(99.86重量%、Sophisticated Alloy Inc.)を適切な比で装入した。鋳型および坩堝を誘導炉に入れ、炉を5×10−5トルにポンプを使って下げ、アルゴンで充填し戻した。炉を70kW、800V、および2300Hzで操作することによって達成される、誘導コイルによって坩堝を装入物の溶融の間ずっと保持した。装入物が液体になったとき、コイルを傾けて融解合金を、誘導炉のアルゴン雰囲気中で鋳型へ移した。誘導炉チャンバーを開ける前に鋳物を1時間放冷した。バーを、下に記載されるような放電機械加工(Bomas Machine Specialties,Inc.,Somerville,MA)によって鋳造インゴットから精密機械加工した。
【0158】
【表21】

【0159】
【表22】

【0160】
例示を明確にするために、図9は、検体インゴットが鋳造される黒鉛鋳型の内部を示す長さl、幅wおよび深さdを有する型80を示す。面積の差のために、凝固中に、幅wおよび深さdによって画定される端面を通るよりも、長さlおよび幅wによってならびに長さlおよび深さdによってそれぞれ画定される型60の面を通る方が、速い速度で熱は抽出されると予期される。したがって凝固先端は端面から離れて極めて遅く移動し、その結果ダイシリサイド体は、2つの垂直の次元83および84に沿って優先的に配向する可能性がある。生成する共晶構造はこうして、それがインゴットにおいて第1配向90、第2配向92、および第3配向94から切断されたかどうかに依存して検体の次元に対して異なって配向する可能性がある。
【0161】
表23は、試験された検体タイプをまとめている。AおよびBと指定される合金の各検体は、インゴットの中心領域から、そして第3配向94でのみ調製した。Cと指定される合金の検体は、より小さいインゴットの中心領域から、そして第2配向92でのみ機械加工した。4つの検体タイプを、合金Dと指定される合金Si−Cr組成について試験した。合金D検体は、第3配向94でインゴットの中心からそして、第1配向90、第2配向92、および第3配向94のそれぞれで、凝固が比較的高い速度で起こる、鋳型壁近くの材料から機械加工した。
【0162】
図6および図9に関連して、第1ノッチ面100、第2ノッチ面102および第3ノッチ面104におけるノッチ60は、各配向90、92および94から切断された検体中に形成した。第2配向92および第3配向94のどちらかで機械加工された検体にこうして、好ましそうなダイシリサイド成長方向83および84の1つに垂直に配向した各ノッチ面102および104をセットし、一方第1配向90で機械加工された検体は、ノッチ面100が成長方向83および84の両方に平行に配向された。
【0163】
図10に関連してCと指定されるSi−(Cr,V)Si合金は、CNB試験中に試験される合金に典型的な荷重−伸長応答111を実証した。初期ポップイン113は、鋭い亀裂がシェブロン先端で開始すること、およびこの材料に関する試験が妥当であることを示した。初期ポップイン113および増加する荷重とともに亀裂の安定した伝播を示す上昇115後に、最大荷重Pmax117を通っての滑らかな転移が観察された。ケイ素および炭化ケイ素の両方とは対照的に、最大荷重117を通っての安定した亀裂伝播後に荷重の漸減119によって示される、合金についての非壊滅的な破壊応答は、上昇R曲線挙動、または亀裂成長とともに亀裂抵抗の増加に帰することができる。最大荷重117近くの荷重−伸長曲線111における小さい摂動はたぶん、伝播中に亀裂伴流の架橋域内のダイシリサイド強化材の破壊に対応する。
【0164】
表23は、試験された異なる検体タイプのそれぞれについて試験データから計算した破壊靱性の値をリストアップする。各検体タイプについて、KIvbの値の範囲および平均値の両方を報告する。平均破壊靱性値の後の括弧内の値は、平均値をコンピュータ計算するために用いられた妥当な測定値の数を示す。試験されたSi−(Cr,V)Si複合
材料のすべてが、非合金ケイ素について引用されたもの(約0.8〜1.0MPa・m1/2)の2倍より大きい2MPa・m1/2より大きい破壊靱性値を示した。
【0165】
【表23】

【0166】
合金D鋳物の中心から第3配向94で機械加工された検体のCNB試験中に、2つのタイプの挙動が観察された。少しの強靱化が界面−亀裂相互作用のために期待される、ダイシリサイド強化材を亀裂方向と平行にノッチ壁近くに有する検体においては、破壊は、ノッチ面の側面近くで起こったにすぎない。界面−亀裂相互作用による、有意の強靱化と一致する、ダイシリサイド強化材が亀裂方向に垂直に整列した検体においては、高度の亀裂偏向および架橋がノッチ面からの亀裂の偏向をもたらした。両挙動は、用いられるCNB法によるD合金の中心部分の検体についての破壊靱性の妥当な測定と相いれなかった。
【0167】
微細構造分析は、試験後のCNB検体に関して行った。各検体タイプについて、3つの半端ビームを、ノッチ面の後方約2〜3mmの距離で区分し、そして研削および研磨によって金属組織学的に調製した。走査電子顕微鏡画像を、後方散乱画像形成を用いて撮った。
【0168】
図11Aおよび11Bに関連して、合金Aの共晶凝集体中の微細構造は一般に繊維状である。微細構造は、立方晶系ケイ素マトリックス121中に幾らかの非分岐プレートを持った大部分棒様であるバナジウムダイシリサイド粒子120を組み入れている。図12Aおよび12Bに関連して、合金Bの共晶凝集体は、ケイ素122と(Cr,V)Si相の塊状の分岐および非分岐プレート122とからなる不規則な構造を有する。図13Aおよび13Bに関連して、合金Cの共晶凝集体は、小さい、島様のクラスター(示されていない)のように見える少量の複雑な規則正しい構造の分岐プレート126とともにケイ素125の不規則な構造を有する。合金C微細構造は、合金Cにおいてプレート126の配置がより大きいエリアにわたって規則正しいことを除いて、合金Bのそれに似ている。
【0169】
図14Aおよび14Bに関連して、鋳物の中心から機械加工された合金Dの検体は、ケイ素128と好ましい成長方向83および84(図9)の1つの周りに高度の整列を有す
るクロムダイシリサイド相129との共晶擬コロニー型構造を示す。鋳物の側面から機械加工された合金Dの検体は、図14A〜Bに示される、中心合金D検体についてのように、しかし一見したところ鋳型壁近くでの比較的迅速な凝固中のケイ素過成長から、大きいケイ素領域が存在して、ケイ素とクロムダイシリサイドとの類似のコロニー型構造が観察された。図15A〜B、図16A〜B、および図17A〜Bはそれぞれ、それらの各ノッチ面104、102および100に平行に示された、第3配向94、第2配向92、および第1配向90で機械加工された合金Dの検体を示す。第3および第2配向94および92の合金D検体は、第1配向90の検体が有するより、それらの各ノッチ面に実質的に垂直に配向したそれらのクロムダイシリサイドの高い分率を有する。
【0170】
ダイシリサイド相の体積分率は、後方散乱SEM画像に関するEDSに基づく画像分割法を用いて測定した。この方法で合金A〜Dのそれぞれについて測定されたダイシリサイドの体積分率を表24にリストアップする。合金Dについては、測定値を、鋳物の中心からおよび鋳物の側面から機械加工された検体について両方とも示す。それらの各インゴットの中心から機械加工された検体について、合金のダイシリサイド体積分率は、順ABC、それらの合金の破壊靱性が増加する同じ順で増加する。
【0171】
【表24】

【0172】
ほとんどの場合に、表24に報告されたダイシリサイドの測定体積分率は、平衡凝固計算から予期されるものより約2〜7%低い。これは、非平衡凝固中の溶質偏析に起因する可能性がある。迅速な凝固の場合には、固体における実質的な拡散は可能ではなく、その結果、オフ共晶合金のための、一次凝固中の液体中への溶質の排除は鋳物中の濃度勾配を引き起こす可能性がある。そのような組成勾配は、鋳物の全体にわたって微細構造の全体的なおよび局部的な変動を引き起こし得る。これは、合金Dの検体において起こったように見える。最後に凝固する、鋳物の中心から採られた合金D検体は、鋳物の側面から機械加工されたものよりも有意に高いダイシリサイドの体積分率を示した。
【0173】
最高のおよび最低の破壊靱性値を示す合金A、B、およびCの検体について、ノッチ先端領域の横断画像をCNB検体から作成した。その合金組成について最高の測定靱性値を有する検体のそれぞれは、高度の亀裂偏向および架橋の証拠である、粗い破壊面を示す。ノッチ周りの微細構造は完全にまたはほぼ完全に共晶であるように見える。
【0174】
その合金組成について最低の測定靱性値を有する各検体において、過成長に起因するように思われる、大きいケイ素領域がノッチ先端周りに存在する。大きいケイ素領域は、亀裂成長の初期段階中に小さい破壊抵抗を提供する。架橋域は亀裂成長の初期段階中に亀裂の伴流中にまったく形成しないので、応力度は、意味のある強靱化に寄与するにはノッチ領域の中間または底部に存在するあらゆる共晶構造にとって余りにも高くなる可能性がある。
【0175】
共晶凝集体中ではない領域を排除しない、微細構造の固有の間隔は、当業者に公知の、リニアインターセプト手順を用いてこれらのノッチ領域において測定した。各検体について、ダイシリサイドケイ素共晶構造の固有の間隔λの5つの測定を、ノッチ先端から1600μmの距離についてノッチ面で行った。間隔値を表25に示す。それらの各検体一式について最大靱性を示す検体は、最小靱性を有するそれらの対抗品より著しく小さいダイシリサイド間隔を有した。
【0176】
【表25】

【0177】
脆−脆複合材料の靱性は、塑性流動できる相の存在によって高めることができる。脆−脆共晶Si−シリサイド複合材料に延性相を組み入れた四元組成物を、延性金属元素の添加によって製造した。Si−Cr−V系について、ケイ素、クロムまたはバナジウムのどれかと中間化合物を形成しない、添加のための候補金属は、銀およびスズである。
【0178】
図18に関連して、銀は、約9原子%Siでケイ素と単一共晶物を形成する。図19に関連して、銀は、全体組成範囲にわたってクロムと混和性ギャップを示す。Si−SiCr共晶物を含有する複合材料は、組成Si−17.7Cr−6.7Ag(重量%)を有する液体から調製した。生じたSiに富む複合材料中の銀は、Siと低融点共晶構造を形成することが観察された。図20に関連して、銀−ケイ素共晶物133は、ケイ素135とクロムダイシリサイド137との共晶凝集体のラメラ構造内か共晶凝集体の境界でかのどちらかに配置された。
【0179】
図21に関連して、スズは、全体組成範囲にわたってSiと混和性ギャップを形成する、すなわち、共晶組成は無視できるSi含有率のものである。図22に関連して、スズは、約2原子%Snの濃度までクロムに可溶であり、それより上ではスズはCrと混ざらない。Si−SiCr共晶凝集体を含有する複合材料は、組成Si−17.6Cr−7.3Sn(重量%)を有する液体から調製した。図23に関連して、スズは、ケイ素143とSi−CrSi144との共晶構造のコロニーの境界でスズ相141中に分離する。
【0180】
具体的な特徴は、幾つかの実施形態の説明に含まれており、その他のものには含まれていないが、個々の特徴が本明細書に従ったその他の特徴のいずれかまたはすべてと結合できる可能性があることが指摘されるべきである。さらに、その他の特性は記載される特徴と両立できる可能性がある。
【0181】
それ故、前述のものは、室温で靱性を実証する、特に軽量複合材料として、ケイ素ベース材料を形成するための非常に有利なアプローチを表すことが理解されるであろう。本明細書において用いられる用語および表現は、説明のそして限定のではない条項として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示されるおよび記載される特徴のあらゆる等価物またはそれらの部分を排除するという意図はまったくないが、様々な修
正が特許請求される本発明の範囲内で可能であることが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素と少なくとも1つの元素とを一緒に溶融させて、50重量%を超えるケイ素濃度を有する液体を調製する工程と、
前記液体を鋳型内に配置する工程と、
前記鋳型内で前記液体を冷却することによって、物体の少なくとも80体積%を構成する、共晶凝集体中に配置された立方晶系ケイ素とシリサイドとを同時に形成する工程と
によって形成される物体。
【請求項2】
上昇R曲線を示す、請求項1に記載の物体。
【請求項3】
前記共晶凝集体の少なくとも10体積%が立方晶系ケイ素または前記シリサイドである、請求項1に記載の物体。
【請求項4】
前記シリサイドが第1元素と第2元素との混合ダイシリサイドである、請求項1に記載の物体。
【請求項5】
前記第1元素および前記第2元素がそれぞれ、バナジウム、クロム、タンタルおよびニオブの1つである、請求項4に記載の物体。
【請求項6】
立方晶系ケイ素と前記シリサイドとの界面が、亀裂に遭遇すると離層することができる、請求項1に記載の物体。
【請求項7】
ケイ素と少なくとも1つの元素とを一緒に溶融させて、50重量%を超えるケイ素濃度を有する液体を形成する工程と、
前記液体を鋳型内に配置する工程と、
前記鋳型内で、前記液体を冷却し、それによって、物体の少なくとも80体積%を構成する、共晶凝集体中に配置された立方晶系ケイ素とシリサイドとを同時に形成する工程とを備える、鋳造物の製造方法。
【請求項8】
前記物体が上昇R曲線を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記共晶凝集体の少なくとも10体積%が立方晶系ケイ素または前記シリサイドである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記鋳型がダイである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記鋳型が、前記物体の模型から製造された埋没材である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記液体が連続鋳造法において前記鋳型を通過する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳型が砂を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
立方晶系ケイ素の相と、
組成物の80体積%以上を構成する、立方晶系ケイ素の前記相とともに共晶凝集体中に配置された、ケイ素以外の第1元素を含む相と
を含む組成物であって、上昇R曲線を示し、かつ50重量%超のケイ素濃度を有する組成物。
【請求項15】
少なくとも1.2MPa・m1/2の破壊靱性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも2MPa・m1/2の破壊靱性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも3MPa・m1/2の破壊靱性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
25℃で上昇R曲線を示す、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
鋳物である、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
立方晶系ケイ素の前記相とケイ素以外の第1元素を含む前記相とが変則的な共晶構造に配置されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記共晶凝集体が種々の配向の局所領域を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
ケイ素以外の第1元素を含む前記相が、第2元素を含む混合ダイシリサイド相である、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
ケイ素以外の第1元素を含む前記相が、第2元素を含む混合ダイシリサイド相であり、前記第1元素および前記第2元素が、共通の結晶構造のダイシリサイドを形成し、かつ前記組成物が2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する、請求項14に記載の組成物。
【請求項24】
前記ケイ素濃度が60重量%より大きい、請求項14に記載の組成物。
【請求項25】
前記ケイ素濃度が75重量%より大きい、請求項14に記載の組成物。
【請求項26】
塑性流動できる金属結合相を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項27】
前記金属結合相がスズ銀、アルミニウムまたは鉛を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
立方晶系ケイ素の相と;
組成物の80体積%以上を構成する立方晶系ケイ素の前記相とともに共晶凝集体中に配置された、ケイ素以外の第1元素を含む第1シリサイド相であって、前記共晶凝集体が固有の間隔λを有する相と
を含む組成物であって、50重量%超のケイ素濃度、10λより大きい厚さ、および1.2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する組成物。
【請求項29】
前記破壊靱性が2MPa・m1/2より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記破壊靱性が3MPa・m1/2より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
前記破壊靱性が4MPa・m1/2より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項32】
前記破壊靱性が5MPa・m1/2より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項33】
前記破壊靱性が6MPa・m1/2より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
前記厚さが20λより大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
前記厚さが100λより大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項36】
前記ケイ素濃度が60重量%より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項37】
前記ケイ素濃度が75重量%より大きい、請求項28に記載の組成物。
【請求項38】
前記共晶凝集体が前記組成物の90体積%以上を構成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項39】
前記共晶凝集体が前記組成物の95体積%以上を構成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項40】
前記固有の間隔λが5μm未満である、請求項28に記載の組成物。
【請求項41】
前記固有の間隔λが10μm未満である、請求項28に記載の組成物。
【請求項42】
前記固有の間隔λが40μm未満である、請求項28に記載の組成物。
【請求項43】
前記第1元素が、バナジウム、クロム、ニオブ、およびタンタルの1つである、請求項28に記載の組成物。
【請求項44】
前記第1元素が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タリウム、モリブデン、タングステン、鉄、オスミウム、コバルト、ニッケル、ストロンチウム、およびマグネシウムの1つである、請求項28に記載の組成物。
【請求項45】
前記第1元素が、スカンジウムおよびイットリウムの1つである、請求項28に記載の組成物。
【請求項46】
前記第1元素が、マンガンおよびレニウムの1つである、請求項28に記載の組成物。
【請求項47】
前記第1元素が遷移金属である、請求項28に記載の組成物。
【請求項48】
前記第1元素がアルカリまたはアルカリ土類金属である、請求項28に記載の組成物。
【請求項49】
前記第1元素のシリサイドが、50原子パーセントケイ素超のケイ素濃度でケイ素と二元共晶系を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項50】
前記第1元素のシリサイドが、75原子パーセントケイ素超のケイ素濃度でケイ素と二元共晶物を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項51】
前記第1元素のシリサイドが、90原子パーセントケイ素超のケイ素濃度でケイ素と二元共晶物を形成する、請求項28に記載の組成物。
【請求項52】
前記第1シリサイド相がケイ素以外の第2元素をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項53】
前記第1元素がバナジウムであり、前記第2元素がクロムである、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
第1共晶組成が、ケイ素と前記第1元素のシリサイドとの間に存在し、
第2共晶組成が、ケイ素と前記第2元素のシリサイドとの間に存在し、かつ
前記第1共晶組成と前記第2共晶組成とを結び付ける曲線上にある液体組成が冷却時に共晶凝固を受ける、請求項52に記載の組成物。
【請求項55】
前記第1元素のシリサイド、前記第2元素のシリサイド、および前記第1シリサイド相が共通の結晶構造中に存在する、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記共晶凝集体が、前記曲線上にある液体組成を冷却することによって形成される、請求項54に記載の組成物。
【請求項57】
ケイ素、前記第1元素および前記第2元素が、前記曲線上の点でのケイ素、前記第1元素および前記第2元素の各濃度の1原子パーセント内のそれぞれ各濃度で存在する、請求項54に記載の組成物。
【請求項58】
前記共晶凝集体中に配置された第2シリサイド相をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項59】
前記共晶凝集体が2つの相を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項60】
前記シリサイド相および立方晶系ケイ素の前記相の1つが、前記共晶凝集体の少なくとも10体積%を占める、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記第1シリサイド相が、少なくとも第1元素と第2元素との混合シリサイドである、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
前記混合シリサイドが混合ダイシリサイドである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記第1元素がクロムであり、前記第2元素がバナジウムである、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
上昇R曲線を示す、請求項28に記載の組成物。
【請求項65】
前記第1シリサイド相および立方晶系ケイ素の前記相が、液体を冷却することによって同時に形成される、請求項28に記載の組成物。
【請求項66】
塑性流動できる金属結合相をさらに含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項67】
前記金属結合相がスズ銀、アルミニウムまたは鉛を含む、請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
炭化タングステン対応体を使ったボールオンディスク試験によって測定されるように5×10−14/N以下の比摩耗率を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項69】
炭化タングステン対応体を使ったボールオンディスク試験によって測定されるように2×10−14/N以下の比摩耗率を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項70】
立方晶系ケイ素の相と、
組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に立方晶系ケイ素の前記相とともに配置された、ケイ素以外の第1元素を含む第1シリサイド相であって、前記共晶凝集体が固有の間隔λを有する相と
を含む組成物であって、50重量%超のケイ素濃度および100λより大きい厚さを有する組成物。
【請求項71】
立方晶系ケイ素の相と、
組成物の80体積%以上を構成する共晶凝集体中に立方晶系ケイ素の前記相とともに配置された、ケイ素以外の第1元素を含む第1ダイシリサイド相であって、前記共晶凝集体が固有の間隔λを有する相と
を含む組成物であって、50重量%超のケイ素濃度および10λより大きい厚さを有する組成物。
【請求項72】
上昇R曲線を示す、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
約2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する、請求項71に記載の組成物。
【請求項74】
前記ケイ素濃度が75重量%より大きい、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
前記固有の間隔λが5μm未満である、請求項71に記載の組成物。
【請求項76】
前記固有の間隔λが10μm未満である、請求項71に記載の組成物。
【請求項77】
前記固有の間隔λが40μm未満である、請求項71に記載の組成物。
【請求項78】
前記厚さが100λより大きい、請求項71に記載の組成物。
【請求項79】
前記厚さが100λより大きく、前記組成物が約2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する、請求項71に記載の組成物。
【請求項80】
上昇R曲線を示す、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記第1元素が遷移金属である、請求項71に記載の組成物。
【請求項82】
前記第1元素がバナジウムである、請求項71に記載の組成物。
【請求項83】
前記第1元素がクロムである、請求項71に記載の組成物。
【請求項84】
前記第1元素がニオブである、請求項71に記載の組成物。
【請求項85】
前記第1ダイシリサイド相が、ケイ素以外の第2元素をさらに含む混合ダイシリサイドであり、
第1共晶組成が、ケイ素と前記第1元素のダイシリサイドとの間に存在し、
第2共晶組成が、ケイ素と前記第2元素のダイシリサイドとの間に存在し、かつ
前記第1共晶組成と前記第2共晶組成とを結び付ける曲線上にある液体組成が冷却時に共晶凝固を受ける、請求項71に記載の組成物。
【請求項86】
前記第1元素のダイシリサイド、前記第2元素のダイシリサイド、および前記第1ダイシリサイド相が共通の結晶構造中に存在する、請求項85に記載の組成物。
【請求項87】
前記共晶凝集体が、前記曲線上にある液体組成を冷却することによって形成される、請求項85に記載の組成物。
【請求項88】
ケイ素、前記第1元素および前記第2元素が、前記曲線上の点でのケイ素、前記第1元素および前記第2元素の各濃度の2原子パーセント内のそれぞれ各濃度で存在する、請求
項85に記載の組成物。
【請求項89】
前記第1元素がバナジウムであり、前記第2元素がクロムである、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
前記混合ダイシリサイドがニオブおよびタンタルの1つをさらに含む、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記第1元素がニオブであり、前記第2元素がタンタルである、請求項88に記載の組成物。
【請求項92】
前記共晶凝集体中に配置された追加のシリサイド相をさらに含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項93】
前記共晶凝集体が2つの相を含む、請求項66に記載の組成物。
【請求項94】
前記第1ダイシリサイド相および立方晶系ケイ素の前記相の1つが、前記共晶凝集体の少なくとも10体積%を占める、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
前記第1ダイシリサイド相が、少なくとも前記第1元素とケイ素以外の第2元素との混合ダイシリサイドである、請求項71に記載の組成物。
【請求項96】
前記シリサイド相および立方晶系ケイ素の前記相の1つが、前記共晶凝集体の少なくとも10体積%を占め、かつ組成物が2MPa・m1/2より大きい破壊靱性を有する、請求項95に記載の組成物。
【請求項97】
前記第1元素および前記第2元素がそれぞれ、バナジウム、クロム、タンタルおよびニオブの1つである、請求項96に記載の組成物。
【請求項98】
塑性流動できる金属結合相をさらに含む、請求項71に記載の組成物。
【請求項99】
炭化タングステン対応体を使ったボールオンディスク試験によって測定されるように5×10−14/N以下の比摩耗率を有する、請求項71に記載の組成物。
【請求項100】
ケイ素とバナジウムダイシリサイドとの間の共晶組成を、ケイ素とクロムダイシリサイドとの間の共晶組成と結び付ける曲線上の点でのケイ素、バナジウムおよびクロムの各濃度の2原子パーセント内のそれぞれ各濃度で、
約50重量%より大きい濃度でケイ素、
バナジウム、および
クロム
を含み、前記曲線上にある液体が冷却時に共晶凝固を受ける、組成物であって、上昇R曲線を示す組成物。
【請求項101】
前記ケイ素、バナジウムおよびクロムを含有する2相共晶凝集体を含む、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
立方晶系ケイ素の相および混合ダイシリサイド相の1つが、前記2相共晶凝集体の少なくとも10体積%を占める、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
ケイ素が約75重量%より大きい濃度で存在する、請求項100に記載の組成物。
【請求項104】
特定の方法によって測定される前記組成物の破壊靱性が、同じ方法によって測定されるケイ素の破壊靱性の2倍より大きい、請求項100に記載の組成物。
【請求項105】
前記2相共晶凝集体がタンタルまたはニオブを含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項106】
ケイ素、バナジウムおよびクロムの前記各濃度がそれぞれ、前記曲線上のある点でのケイ素、バナジウムおよびクロムの各濃度の1原子パーセント内である、請求項100に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2013−502368(P2013−502368A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525528(P2012−525528)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/002271
【国際公開番号】WO2011/022058
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】