説明

ケトオキシムエステル系化合物及びその利用

【課題】新規かつ高感度な光重合開始剤として利用可能なケトオキシムエステル系化合物であり、層間絶縁膜、カラーフィルターの画素及びブラックマトリックス、フォトスペーサー、リブ(液晶配向制御突起)等の液晶表示装置に備えられる各種部材の形成等に有用な光重合性組成物及び該光重合性組成物により形成された硬化物及び該硬化物を備える液晶表示装置を提供する。
【解決手段】特定構造を有する新規なケトオキシムエステル系化合物。一例を次に示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤として有用なケトオキシムエステル系化合物、該化合物からなる光重合開始剤、及び該光重合開始剤を含有する光重合性組成物に関する。更に詳しくは、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、プリント配線板、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ、カラーフィルター、有機エレクトロルミネッセンス等における各種電子部品の絶縁被覆層、ソルダーレジスト膜、カバーレイ膜等の形成に有用な光重合性組成物に関する。
【0002】
また、本発明のケトオキシムエステル系化合物は、高感度の光重合開始剤とすることができるため、カラーテレビ、液晶表示素子、固体撮像素子、カメラ等に使用される光学的カラーフィルターの製造で使用される、画素(以下「RGB」と称することがある)用、ブラックマトリックス(BlackMatrix;以下「BM」と称することがある)用などの色材
を含有する光重合性組成物、及び、オーバーコート用、リブ(液晶配向制御突起)用及びフォトスペーサー用などの透明な光重合性組成物などに利用可能であり、その応用技術分野は広範である。
【背景技術】
【0003】
従来、液晶表示装置に用いられるTFTアクティブマトリックス基板においては、TFTアレイ素子と、画素電極を形成する透明導電膜との間に、TFTアレイ素子を保護するための層間絶縁膜が形成される。ここで、この層間絶縁膜には、通常、TFTアレイのドレイン電極と透明導電膜により形成される配線とを接続するためのコンタクトホールが形成される。層間絶縁膜の素材としては感光性の熱硬化組成物が一般に用いられている。
【0004】
このような用途に用いられる熱硬化性組成物としてより具体的には、ポジ型の感光性組成物であって、アルカリ可溶性樹脂と1,2−キノンジアジド化合物からなる組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ネガ型の熱硬化性組成物として、光重合性組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
一方、カラーフィルターの画素(RGB)形成用途においても、色材として顔料を含有するネガ型感光性組成物を透明基板上に塗布し、画像露光、現像、必要により硬化を繰り返すことで各色画素を形成する顔料分散法が、画素の位置、膜厚等の精度が高く、耐光性・耐熱性等の耐久性に優れ、ピンホール等の欠陥が少ないため、広く採用されている。
【0005】
BM形成用途では、遮光性の色材を含有するネガ型感光性組成物で低コスト、無公害の樹脂BMを形成する手法が精力的に研究され、実用化されている。
しかし、色材の含有量を多くすると、感光性組成物の感度、現像性、解像性、密着性等が悪化する問題があり、生産性の低下のみならずカラーフィルターに要求される精度、信頼性が得られなくなることが知られている。すなわち、カラーフィルターの画素形成用感光性組成物に関しては、高い色濃度の条件下で、高感度、高解像性を示すことが求められており、BM形成用感光性組成物に関しては、薄膜、高遮光性の条件下で高感度、高解像性を発揮できることが求められている。
【0006】
従来、一般的感光性組成物、あるいは、カラーフィルター用(画素形成用又はBM形成用)の着色感光性組成物等の一定の光透過性を有する感光性組成物については、感度、解像性の性能を改善する手法としては、例えば、顔料、バインダー樹脂、多官能アクリルモノマー、トリアジン化合物からなる開始剤を含有するカラーフィルター用感光性組成物が知られている(特許文献3〜6参照)。また、同様な組成において開始剤がビスイミダゾールであるものも知られている(特許文献7〜8参照)。
【0007】
また、光重合開始剤として特定のオキシムエステル化合物を使用する技術が知られている(特許文献9〜14参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−4733号公報
【特許文献2】特開2002−131899号公報
【特許文献3】特開平1−152449号公報
【特許文献4】特開平1−254918号公報
【特許文献5】特開平2−153353号公報
【特許文献6】特開平2−804号公報
【特許文献7】特開平6−75372号公報
【特許文献8】特開平6−75373号公報
【特許文献9】特開2000−80068号公報
【特許文献10】特開2002−323762号公報
【特許文献11】特開2006−342166号公報
【特許文献12】特開2007−187875号公報
【特許文献13】特開2007−269779号公報
【特許文献14】特開2006−36750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のポジ型の感光性組成物においては、例えば、1,2−キノンジアジド化合物が露光・現像後のハードベーク時に熱分解することにより着色し、可視光領域での光透過率が低下する場合があった。また、光重合性のネガ型感光性組成物と比べると感度が低く、生産性に劣るという問題があった。
一方、特許文献2に記載されているような光重合性のネガ型感光性組成物においては、ポジ型と比較すると上記のような着色の問題は生じ難く、高感度であるものの、近年のフラット・パネル・ディスプレイの大型化に伴う生産性向上の観点からはより高感度化が求められ、高精細化の観点からは透過率の向上が求められており、これらの要求を共に満足するものはなかった。
【0010】
また、特許文献3〜8に開示の組成物の場合、空気中で露光した場合には酸素による重合阻害を受けるため、実用的な感度を得ることが難しく、更なる改良が求められていた。
さらにまた、特許文献9〜14に記載のように、従来の画素や樹脂BMで使用されている光重合開始剤(例えば、ビスイミダゾールやトリアジン化合物)を、単に該オキシムエステル化合物に置き換えるだけでは、例えば、樹脂BMに求められる画像特性、すなわち感度や解像性を十分に改善することはできなかった。また、高感度のネガ型感光性組成物は、前述の層間絶縁膜、画素及びBM用途以外に、フォトスペーサー用組成物、リブ用組成物等においても広く求められており、その技術上の問題点は主として光重合開始剤の選択にあった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、新規かつ高感度な光重合開始剤として利用可能なケトオキシムエステル系化合物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、高感度かつ高透過率の層間絶縁膜用途等に有用な光重合性組成物を提供することを目的とする。さらにまた、本発明は、カラーフィルター用途に有用な光重合性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究を進めた結果、光重合開始剤としてより光重合の効率の高いケトオキシムエステル系化合物の構造を見出し、該ケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として使用することで、前記課題を解決できることを見出した。
更に、かかる特定のケトオキシムエステル系化合物は、それ自体新規な化合物であり、かつ優れた光重合開始剤として色材の存在有無にかかわらず有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下に示す[1]〜[11]を要旨とするものである。
[1] 下記一般式(I)で表されることを特徴とするケトオキシムエステル系化合物。
【0014】
【化1】

【0015】
(上記一般式(I)において、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH=CH)α−、及び−(C≡C)β−(α及びβは、それぞれ独立に1〜5の整数を表す。)の群からなる2価の有機基であり、
は、芳香環又はヘテロ芳香環を含むn価の有機基を表す。
nは、2〜6の整数を表す。
【0016】
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR4041、−N(OR42)−OCO−R43(R40〜R43は、
それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)又は下記一般式(II)で表される基
【0017】
【化2】

【0018】
(R及びRは、互いに独立に、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。)を表し、
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のア
リーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を表す。
【0019】
なお、一分子中に含まれるn個の
【0020】
【化3】

【0021】
は、同一でも異なっていてもよい。)
[2] 前記一般式(I)において、Xが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rが置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基又は炭素数1〜12のアルキルチオ基であることを特徴とする上記[1]に記載のケトオキシムエステル系化合物。
[3] 前記一般式(I)が、下記一般式(III)又は(IV)で表されることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
(上記一般式(III)において、Zは酸素原子、硫黄原子または−NR31−を表し、R31は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
上記一般式(III)及び(IV)において、R〜R30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニ
ルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
【0025】
32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
【0026】
〜R15及びR16〜R30は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
但し、R〜R15及びR16〜R30の各々n個(nは2以上6以下の整数を表す。)は、下記一般式(V)で表される基を表す。
【0027】
【化6】

【0028】
(上記一般式(V)において、X、R及びRは、前記一般式(I)におけると同義である。))
[4] 前記一般式(III)が、下記一般式(VI)で表されることを特徴とする上記[3]に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【0029】
【化7】

【0030】
(上記一般式(VI)において、R50〜R55は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
【0031】
ただし、R32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアル
ケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
【0032】
56は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
[5] 前記一般式(III)が、下記一般式(VII)で表されることを特徴とする上記[3]に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【0033】
【化8】

【0034】
(上記一般式(VII)において、R57〜R62は、前記一般式(VI)におけるR50〜R55と同義である。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
[6] 上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載のケトオキシムエステル系化合物からなることを特徴とする光重合開始剤。
[7] (A)エチレン性不飽和基含有化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、(B)光重合開始剤が上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載のケトオキシムエステル系化合物を含有することを特徴とする光重合性組成物。
[8] 更に(F)色材を含有することを特徴とする上記[7]に記載の光重合性組成物。
[9] 更に(G−1)顔料分散剤を含有することを特徴とする上記[8]に記載の光重合性組成物。
[10] 上記[7]〜[9]のいずれか一項に記載の光重合性組成物により形成されたことを特徴とする硬化物。
[11] 上記[10]に記載の硬化物を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0035】
本発明のケトオキシムエステル系化合物は、新規かつ高感度な光重合開始剤として利用することができる。このケトオキシムエステル系化合物をエチレン性不飽和基含有化合物と組み合わせることにより、高感度かつ高透過率で、特に層間絶縁膜用途に有用な光重合性組成物を構成することができる。
また、さらに色材と組み合わせることによりカラーフィルター用途に有用な光重合性組成物を構成することができる。特に、このケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として黒色顔料と組み合わせて用いた光重合性組成物は、薄膜において高遮光性でありながら感度、解像性に優れるため、低コストで高品質の樹脂BMを形成することができる。また、本発明のケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として、赤緑青等各色の顔料と組み合わせて用いた光重合性組成物は、基板との密着性や電気特性に優れ、画素のかけの発生が少ない。
【0036】
本発明の光重合性組成物を用いて樹脂BMや画素を形成したカラーフィルターは、精度、平坦性、耐久性において優れるため、液晶表示素子の表示品位を向上させることができる。また、製造工程およびカラーフィルター自体にも有害な物質を含まないため、人体に対する危険性を低減し環境安全性が向上する。
本発明の光重合開始剤及び光重合性組成物は、層間絶縁膜用、カラーフィルターの画素用及びBM用に限定されることなく、オーバーコート用、リブ(液晶配向制御突起)用及びフォトスペーサー用などの透明な光重合性組成物にも利用可能であり、その応用技術分野は極めて広範である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。また、「(ポリ)ヒドロキシ」とは「ヒドロキシ及び/又はポリヒドロキシ」を意味する。
【0038】
[ケトオキシムエステル系化合物]
本発明のケトオキシムエステル系化合物は、下記一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0039】
【化9】

【0040】
(上記一般式(I)において、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH=CH)α−、及び−(C≡C)β−(α及びβは、それぞれ独立に1〜5の整数を表す。)の群からなる2価の有機基であり、
は、芳香環又はヘテロ芳香環を含むn価の有機基を表す。
nは、2〜6の整数を表す。
【0041】
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR4041、−N(OR42)−OCO−R43(R40〜R43は、
それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)又は下記一般式(II)で表される基
【0042】
【化10】

【0043】
(R及びRは、互いに独立に、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。)を表し、
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を表す。
【0044】
なお、一分子中に含まれるn個の
【0045】
【化11】

【0046】
は、同一でも異なっていてもよい。)
以下、上記一般式(I)におけるX、R、n、R及びRについて説明する。なお、一分子中に含まれるn個の
【0047】
【化12】

【0048】
は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
<X>
上記一般式(I)において、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH=CH)α−[アルケニレン基]、及び−(C≡C)β−[アルキニレン基](α及びβは、それぞれ独立に1〜5の整数を表す。)の群からなる2価の有機基である。α及びβは、製造の簡便さの点から、好ましくは1〜3である。
【0049】
Xのアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基及び下記構造式で表される基等が挙げられる。(なお、下記構造式中、Meはメチル基を表す。以下、同様である。)
【0050】
【化13】

【0051】
Xのアルケニレン基としては、例えば、エチニレン基のほか、下記構造式で表される基等が挙げられる。
【0052】
【化14】

【0053】
更に、Xのアルキニレン基としては、例えば、アセチレン基のほか、下記構造式で表される基等が挙げられる。
【0054】
【化15】

【0055】
更に、これらの組み合わせとしては、例えば、下記構造式で表される基等が挙げられる。
【0056】
【化16】

【0057】
上記したXの中でも、本発明の化合物においては、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基あるいはアルケニレン基が好ましく用いられる。
最も好ましいのは置換基を有していてもよいアルキレン基である。アルキレン基の炭素
数は、好ましくは2以上である。また、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。
【0058】
<R
前記一般式(I)において、Rは、芳香環又はヘテロ芳香環を含む、置換基を有していてもよいn価の有機基を表し、nは、2〜6の整数を表す。
を芳香環又はヘテロ芳香環を含む置換基を有していてもよい2価以上の有機基とすることにより、1価の有機基である場合と比べて更なる高感度化や長波長化が達成できる。
【0059】
nは、2〜3であることが好ましく、2であることが特に好ましい。
として、具体的には、フェニル基、及び、ナフタレン環、アントラセン環、クリセン環、フェナントレン環、アズレン環、フルオレン環、アセナフチレン環、インデン環等の芳香族炭化水素環からなる縮合環由来の基;ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、トリアジン環等の複素環由来の基;アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、カルバゾール環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、ベンゾチアゾール環等の芳香族炭化水素環と芳香族複素環からなる縮合環由来の基などが挙げられる。
【0060】
これらはいずれも、置換基を有していてもよい。この「置換基」については後述する。
前記一般式(I)は、好ましくは、下記一般式(III)又は(IV)で表される。すなわち、好ましいRは、下記一般式(III)又は(IV)における、一般式(V)で表される基を除いた部分である。
【0061】
【化17】

【0062】
【化18】

【0063】
(上記一般式(III)において、Zは酸素原子、硫黄原子または−NR31−を表し、R31は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
上記一般式(III)及び(IV)において、R〜R30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアル
キル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
【0064】
32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
【0065】
〜R15及びR16〜R30は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
但し、R〜R15及びR16〜R30の各々n個(nは2以上6以下の整数を表す。)は、下記一般式(V)で表される基を表す。
【0066】
【化19】

【0067】
(上記一般式(V)において、X、R及びRは、前記一般式(I)におけると同義である。))
上記一般式(III)において、Zは、硫黄原子または−NR31基であることが好ましい。
31として、具体的には、
水素原子;
メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜12のアルキル基;
2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基等の炭素数2〜4の直鎖又は分岐のヒドロキシルアルキル基;
アリール基、1−メチルビニル基等の炭素数3〜5の直鎖又は分岐のアルケニル基等が挙げられ、これらの中でも、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。
【0068】
上記一般式(III)及び(IV)におけるR〜R30として、具体的には、水素原子;F、Cl、Br等のハロゲン原子;水酸基;
メチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜12のアルキル基;
シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基;
フェニル基、トルイル基、ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;
ベンジル基、フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアリールアルキル基;
ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基等の炭素数7〜20のアリーロイル基;
アセチル基、プロピルカルボニル基等の炭素数2〜12のアルカノイル基;
チオフェンカルボニル基、ピリジンカルボニル基等の炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基;
メトキシカルボニルエチルカルボニル基、エトキシカルボニルエチルカルボニル基等の炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基;
フェノキシカルボニルエチルカルボニル基等の炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基;
チオフェンオキシカルボニルエチルカルボニル基等の炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基;
メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等の炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
フェノキシカルボニル基等の炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基;
メチルチオ基、エチルチオ基等の−SR32
メチルスルホキシ基等の−SOR33
メチルジスルホキシ基等の−SO34
又は、ジメチルアミノ基、モルホリノ基等の−NR3536等が挙げられ、かつ、R〜R15及びR16〜R30の各々n個(nは2以上6以下の整数を表す。)は、下記一般式(V)で表される基である。
【0069】
【化20】

【0070】
(上記一般式(V)において、X、R及びRは、前記一般式(I)におけると同義である。)
nは、2〜3であることが好ましく、2であることが特に好ましい。
なお、R〜R15及びR16〜R30は、互いに結合して環構造を形成してもよい。例えば、上記一般式(III)においてZが−NR31−で表される基の場合、R又はR10がR15又はR11と結合し、後述する一般式(VI)で表されるようなカルバゾール環を形成してもよい。
【0071】
32〜R34としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基;
アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等の炭素数2〜8のアルカノイル基;
アクリロイル基、クロトノイル基等の炭素数3〜12のアルケニル基;
フェニル基、ナフトイル基等の炭素数6〜20のアリール基;
トリメチルシリル基等の炭素数3〜15のトリアルキルシリル基等が挙げられ、これらの中でも、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
【0072】
また、R35及びR36としては、具体的には、メチル基、エチル基、又は互いに結合して環を形成していてもよく、該環には酸素原子が含まれていてもよい。
中でも、好ましくは−NR3536としてモルホリノ基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基である。
上記一般式(III)で表される本発明の化合物の中でも、下記一般式(VI)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0073】
【化21】

【0074】
(上記一般式(VI)において、R50〜R55は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
【0075】
ただし、R32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
【0076】
56は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
上記一般式(VI)において、R50〜R55は、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0077】
56は、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましい。
32〜R36は、前記一般式(III)又は(IV)におけるものと同様である。
また、上記一般式(III)で表される本発明の化合物のうち、下記一般式(VII)で表される化合物も好ましく挙げられる。
【0078】
【化22】

【0079】
(上記一般式(VII)において、R57〜R62は、前記一般式(VI)におけるR
〜R55と同義である。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
上記一般式(VII)において、R57〜R62は、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0080】
<R
前記一般式(I)において、Rは、具体的には、それぞれ置換基を有していてもよい以下の各基である。
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ドデシルチオ基などの炭素数1〜12のアルキルチオ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、t−アミルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−デカニルオキシカルボニル基、n−ドデカニルオキシカルボニル基などの炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基;
ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基;
プロパルギルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基;
フェニルオキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基などの炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基;
2−フラニルオキシカルボニル基、3−フラニルオキシカルボニル基、2−ピリジルオキシカルボニル基、3−ピリジルオキシカルボニル基、4−ピリジルオキシカルボニル基、2−ベンゾチアゾリルオキシカルボニル基などの炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基;
メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、n−プロピルチオカルボニル基、イソプロピルチオカルボニル基、n−ブチルチオカルボニル基、n−ヘキシルチオカルボニル基、n−オクチルチオカルボニル基、n−ドデシルチオカルボニル基などの炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基;
ビニルチオカルボニル基、アリルチオカルボニル基などの炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基;
プロパギルチオカルボニル基などの炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基;
フェニルチオカルボニル基、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基などの炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基;
2−フラニルチオカルボニル基、3−フラニルチオカルボニル基、4−ピリジルチオカルボニル基、2−ベンゾオキサゾリルチオカルボニル基、2−ベンゾチオアゾリルカルボニル基などの炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基;
メチルチオメトキシ基、メチルチオエトキシ基、エチルチオメトキシ基、エチルチオエトキシ基、メチルチオプロポキシ基、エチルチオプロポキシ基などの炭素数2〜12のアルキルチオアルコキシ基;
−O−N=CR4041、−N(OR42)−OCO−R43(R40〜R43は、
それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。);
又は下記一般式(II)で表される基。
【0081】
【化23】

【0082】
(R及びRは、互いに独立に、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。)
上記一般式(II)で表される基の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。(なお、下記構造式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。以下、同様である。)
【0083】
【化24】

【0084】
−O−N=CR4041で表される基の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0085】
【化25】

【0086】
−N(OR42)−OCO−R43で表される基の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0087】
【化26】

【0088】
すなわち、Rは、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含む基である。Rとしてこれらの基を有することにより、本発明のケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として用いた場合に、該化合物を含む光重合性組成物の基板への密着性が優れる。また、組成物中の樹脂等と該化合物との相溶性が高まる等の理由により、外部硬化性とともに内部硬化性にも優れ、解像力や耐アルカリ性が向上する等の利点がある。また、感度も向上させることができる。
【0089】
密着性や内部硬化性に優れた光重合性組成物により形成された画像(パターン)は、例えば、順テーパー(台形)状に形成されやすい、現像液等に侵食されにくい、剥離やかけが起こりにくい等の優れた性質を有する。従って、本発明のケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として含有する光重合性組成物を用いれば、微細な画像を安定的に形成することができる。
【0090】
は、好ましくは、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールチオカルボニル基又はアルキルチオアルコキシ基であり、より好ましくはアルキルチオ基、アルコキシカルボニル基であり、特に好ましくはアルコキシカルボニル基である。
また、上述した各基の炭素数は、それぞれ、アルキルチオ基は炭素数1〜2、アルコキシカルボニル基は炭素数2〜4、アリールオキシカルボニル基は炭素数7〜9、ヘテロアリールオキシカルボニル基は炭素数3〜7、ヘテロアリールチオカルボニル基は炭素数3〜7、アルキルチオアルコキシ基は炭素数2〜4であることが好ましい。
【0091】
これらの各基は、組成物中の樹脂等との相互作用(水素結合力)が強いこと等から、前記したような、密着性や内部硬化性が高いという本発明の化合物の効果が特に強く得られるため好ましい。
また、本発明の化合物が前記一般式(VI)又は(VII)で表される化合物である場合、製造工程中での中間体の結晶性等による取り扱いのしやすさからは、Rが炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。
【0092】
<XとRの好ましい組み合わせ>
本発明の化合物においては、Xがそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基であり、Rがそれぞれ独立に炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基又は炭素数1〜12のアルキルチオ基であることが好ましい。それぞれの基の炭素数
の好ましい範囲は、前記のとおりである。
【0093】
<R
前記一般式(I)において、Rは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基である。
【0094】
の炭素数2〜12のアルカノイル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基である。炭素数は、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜7である。
の炭素数3〜25のアルケノイル基としては、クロトノイル基、アクリロイル基等が挙げられ、好ましくはクロトノイル基である。炭素数は、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜7である。
【0095】
の炭素数4〜8のシクロアルカノイル基としては、シクロヘキシルカルボニル基、メチルシクロヘキシルカルボニル基、シクロペンチルカルボニル基等が挙げられ、好ましくはシクロヘキシルカルボニル基である。炭素数は、好ましくは4〜7である。
の炭素数7〜20のアリーロイル基としては、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられ、好ましくはベンゾイル基である。炭素数は、好ましくは7〜12、より好ましくは7〜10である。
【0096】
の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはメトキシカルボニル基である。炭素数は、好ましくは2〜8である。
の炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、p−メチルフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等が挙げられ、好ましくはフェノキシカルボニル基である。炭素数は、好ましくは7〜15、より好ましくは7〜10である。
【0097】
の炭素数2〜20のヘテロアリール基としては、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等が挙げられ、好ましくはチエニル基である。炭素数は、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜7である。
の炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基としては、チオフェンカルボニル基、ピロリルカルボニル基、ピリジンカルボニル基等が挙げられ、好ましくはチオフェンカルボニル基である。炭素数は、好ましくは5〜15、より好ましくは7〜10である。
【0098】
の炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基としては、モルホリノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基等が挙げられ、好ましくはジメチルアミノカルボニル基である。炭素数は、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜10である。
上述した各基のうち、露光感度の点から、Rとしてはアルカノイル基、シクロアルカノイル、アリーロイル基が好ましく、アルカノイル基、アリーロイル基がより好ましい。
【0099】
なお、Rとして上述した各基が有しうる置換基については後述するが、上述した各基としては、置換基を有さないものが特に好ましい。
以上詳述した、前記一般式(I)におけるX、R及びRが有しうる置換基、前記一
般式(III)におけるR〜R15及び一般式(IV)におけるR16〜R30が有しうる置換基、一般式(VI)におけるR50〜R55が有しうる置換基、又は、一般式(VII)におけるR57〜R62が有しうる置換基としては、各々独立に、次の置換基群Yから選ばれるものが挙げられる。
【0100】
<置換基群Y>
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、任意の有機基などを挙げることができる。任意の有機基としては、例えば、以下のもの等が挙げられる。
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、t−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基;
ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−アミルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−アミルチオ基、t−アミルチオ基、n−ヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基;
ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基;
ビニルチオ基、プロペニルチオ基、ヘキセニルチオ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルチオ基;
−COR70で表されるアシル基;
カルボキシル基;
−OCOR71で表されるアシルオキシ基;
−NR7273で表されるアミノ基;
−NHCOR74で表されるアシルアミノ基;
−NHCOOR75で表されるカーバメート基;
−CONR7677で表されるカルバモイル基;
−COOR78で表されるカルボン酸エステル基;
−SONR7980で表されるスルファモイル基;
−SO81で表されるスルホン酸エステル基;
2−チエニル基、2−ピリジル基、フリル基、オキサゾリル基、ベンゾキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、モルホリノ基、ピロリジニル基、テトラヒドロチオフェンジオキサイド基等の飽和もしくは不飽和の芳香族複素環基;
トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基。
【0101】
なお、前記R70〜R81は、各々水素原子、アルキル基、アルカノイル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
上記置換基群Yから選ばれる各置換基の位置関係は特に限定されず、複数の置換基を有
する場合、同種でも異なっていてもよい。
また、上記置換基群Yから選ばれる各置換基において、複数の置換基同士が結合して環を形成してもよく、形成された環は飽和あるいは不飽和の芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環であってもよく、環上にさらに各々置換基を有していてよく、置換基がさらに環を形成してもよい。
【0102】
本発明のケトオキシムエステル系化合物の分子量は、通常200〜800、好ましくは300〜700、更に好ましくは400〜600である。
上記範囲内であると、露光時の光で発生した揮発性分解物による装置などの汚染がされにくく、また感度が良好である点で好ましい。
上記のような構造を有する本発明の化合物は、これを光重合開始剤として用いた場合に、従来化合物に比べて非常に高感度であることも特徴の一つである。
【0103】
従来、このような化合物の高感度化は、使用する露光光源の発光波長における吸収特性や、組成物(顔料など)の吸収帯との位置関係、また、活性種(ラジカルなど)を生成する能力(量子収率)、生成した活性種の反応性のなどに依存することが知られている。しかし、このためには、単に活性種を生成する光開裂部位の数を増やすだけでは不十分であり、各々の化合物の構造に基づく複雑な検討が必要であることも知られている。
【0104】
本発明の化合物は、Rを2価以上の有機基としたこと、Rとして特定の構造を有する基を選択したこと等により、ラジカルを非常に効率的に発生させることができ、光硬化の効率を向上することが可能になった。また、吸収波長の長波長化が生じ、本発明の化合物は、i線の波長である365nm付近でも大きなUV吸収を有することが判明した。i線は、ごく一般的に露光光源として汎用される水銀ランプ(水銀灯)の輝線の1つであり、この波長領域に大きな吸収特性を有する化合物は、汎用される波長で高い感度が得られることとなり、光重合開始剤としての有用性が非常に高い。
【0105】
本発明のケトオキシムエステル系化合物の好適な具体例を、以下のとおり下記一般式(I)におけるn、R、R、R及びXの組み合わせとして表1に例示するが、本発明のケトオキシムエステル系化合物は何ら以下のものに限定はされない。なお、以下の表において、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基を表す。
【0106】
【化27】

【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
<本発明のケトオキシムエステル系化合物の製造方法>
本発明のケトオキシムエステル系化合物の具体的な製造方法については、後述する実施例において詳細を述べるが、例えば、前記一般式(I)におけるRを構成し得る芳香環化合物あるいはヘテロ芳香環化合物に、フリーデルクラフツ反応などで前記一般式(I)におけるX及びRを有するアルカノイル基をn個導入する。得られた化合物に、Organic Reaction(1953), 7, 327に記載の方法などによりケトオキシム基を形成し、さらにこれを前記一般式(I)におけるRを構成し得る化合物とのエステル化反応に供することにより、合成することができる。
【0110】
【化28】

【0111】
<本発明のケトオキシムエステル系化合物の使用方法>
本発明のケトオキシムエステル系化合物は、光重合開始剤として好適に使用することができる。その詳細については後述する。
[光重合開始剤]
本発明の光重合開始剤は、前記本発明のケトオキシムエステル系化合物からなることを特徴とする。
【0112】
本発明の光重合開始剤は、通常、後述する光重合性組成物の一成分として用いられ、エチレン性不飽和基含有化合物のエチレン性不飽和基を重合させる働きを有する。
[光重合性組成物]
次に、本発明の光重合性組成物(以下、「レジスト」と称することがある。)について説明する。
【0113】
本発明の光重合性組成物は、(A)エチレン性不飽和基含有化合物及び(B)光重合開始剤を含有する光重合性組成物であって、(B)光重合開始剤が前記本発明のケトオキシムエステル系化合物を含有することを特徴とする。
また、その他に(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)界面活性剤、(E)溶剤、(F)色材、(G)その他成分等を適宜組み合わせて含有させることができる。
【0114】
以下、これらの各配合成分について説明する。
<配合成分>
(A)エチレン性不飽和基含有化合物
本発明の組成物で用いられるエチレン性不飽和基含有化合物としては、エチレン性不飽和基を一個以上有する化合物が使用される。具体的には、脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物により得られるエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物と不飽和カルボン酸とのエステル化反応物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド、カプロラクトン変性多価アルコールと不飽和カルボン酸とのエステル、多価アルコールと多価イソシアナートと不飽和カルボン酸との反応物、スチリル末端化合物、含リン酸不飽和化合物、ポリエポキシと不飽和カルボン酸との付加物等が挙げられる。
【0115】
これらのうち、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては具体的には、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル、これら例示化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル、クロトネートに代えたクロトン酸エステルもしくはマレエートに代えたマレイン酸エステル等が挙げられる。
【0116】
芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、不飽和カルボン酸と、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビス−1,1−(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物、或いはそれらのエチレンオキサイド付加物との反応物が挙げられる。具体的には、例えば、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAビス〔オキシエチレン(メタ)アクリレート〕、ビスフェノールAビス〔グリシジルエーテル(メタ)アクリレート〕等である。
【0117】
不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物との反応により得られる
エステルの、代表的な具体例としては、(メタ)アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールの縮合物、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールの縮合物、(メタ)アクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールの縮合物、(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。これらは、必ずしも単一物では無く、複数の類似構造をもつ化合物の混合物である場合もある。
【0118】
その他、本発明に用いられるエチレン性不飽和基含有化合物の例としては、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物なども有用である。
以上挙げたエチレン性不飽和基含有化合物の中で好ましいものは、(メタ)アクリロイル基、さらに好ましくはアクリロイル基を有するものである。このような化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0119】
これらのエチレン性不飽和基含有化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
例えば、層間絶縁膜等の透明保護膜用の組成物として用いる場合には、熱硬化後の膜を十分な硬度とするため芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルを含有することが好ましい。
【0120】
また、例えば、BM用やカラーフィルターの画素形成用の組成物として用いる場合には、硬化性の点から、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルを用いることが好ましい。
本発明の光重合性組成物中に占める、(A)エチレン性不飽和基含有化合物の含有量としては、全固形分に対して、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。エチレン性不飽和基を有する化合物の量が過度に少ないと、感度の低下、現像溶解速度の低下を招き易くなることがあり、過度に多いと、画像断面形状の再現性の低下、樹脂膜の膜べりを招き易くなることがある。
【0121】
(B)光重合開始剤
本発明の光重合性組成物は、(B)光重合開始剤が前記本発明のケトオキシムエステル系化合物を含有することを特徴とする。
本発明の光重合性組成物において用いられる(B)光重合開始剤としては、前記一般式(I)で表される本発明のケトオキシムエステル系化合物の1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
また、必要に応じて、前記本発明のケトオキシムエステル系化合物に他の光重合開始剤や増感色素等の他の成分を併用して使用することもできる。用途等に応じて適宜組み合わせて用いることにより、さらなる高感度化が期待できる。
本発明において用いられる他の光重合開始剤としては、活性光線によりエチレン性不飽和基を重合させる化合物であれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0123】
前記本発明のケトオキシムエステル系化合物と併用し得る他の光重合開始剤化合物としては、例えば、以下のような化合物を挙げることができる。
例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−ト
リアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン誘導体、2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−(6”−ベンゾフリル)ビニル)〕−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール誘導体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ビス(3’−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(2’−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(2’−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、(4’−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体等のイミダゾール誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、9−フェニルアクリジン、9−(p−メトキシフェニル)アクリジン等のアクリジン誘導体、9,10−ジメチルベンズフェナジン等のフェナジン誘導体、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−ジクロライド、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−(2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル)、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル)、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ビス−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル)、ビス−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−(2,6−ジ−フルオロフェニ−1−イル)、ビス−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジ−フルオロ−3−(ピル−1−イル)−フェニ−1−イル等のチタノセン誘導体等が挙げられる。
【0124】
更には、特開2000−80068号公報、及び特表2004−534797に記載されているオキシム系開始剤も特に好適に使用できる。
本発明の光重合性組成物中に占める、本発明の開始剤の含有量としては、全固形分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。上記範囲内であると、感度及び解像力が良好であるため好ましい。
【0125】
上記好ましい範囲内で、用途に応じて適宜調整して用いることができるが、より具体的には、例えば、本発明の光重合性組成物を層間絶縁膜の形成に用いる場合、本発明の開始剤の含有量は、全固形分100重量部に対して、通常0.1重量部以上、好ましくは0.3重量部以上であり、通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下である。
また、例えば、本発明の開始剤と他の光重合開始剤を併用する場合、光重合開始剤の総含有量は、全固形分100重量部に対して、通常0.2重量部以上、好ましくは0.5重量部以上であり、通常40重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0126】
上記範囲内であると、本発明の効果が良好に得られ易く、また地汚れ(現像溶解性の低下)が置き難い点で好ましい。
本発明の光重合性組成物には、上記光重合開始剤成分以外に、さらに増感色素を加えることもできる。特に、BM用組成物のような高遮光性の樹脂組成物中で光重合反応を起こさせるためには、増感色素を添加するのは好ましい。
【0127】
このような増感色素としては、例えば、特開平3−239703号公報、特開平5−289335号公報に記載の複素環を有するクマリン化合物、特開昭63−221110号公報に記載の3−ケトクマリン化合物、特開平4−221958号公報、特開平4−219756号公報に記載のキサンテン色素、特開平6−19240号公報に記載のピロメテン色素、特開昭47−2528号公報、特開昭54−155292号公報、特開昭56−166154号公報、特開昭59−56403号公報に記載の(p−ジアルキルアミノベンジリデン)ケトン、スチリル系色素、特開平6−295061号公報に記載のジュロリジル基を有する増感色素、特開平11−326624号公報に記載のジアミノベンゼン化合物等を挙げることができる。これらの増感色素の中で特に好ましいのは、アミノ基含有増感色素およびキサンテン色素である。
【0128】
増感色素を用いる場合、本発明の光重合性組成物中に占める、増感色素の含有量としては、全固形分に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。増感色素の量が過度に少ないと、増感効果が得られず、過度に多いと、解像力の低下を招き易い。
光重合開始剤(B)に対する増感色素の配合比としては、成分(B)100重量部に対して、通常300重量部以下、好ましくは200重量部以下であり、好ましくは10重量部以上である。
【0129】
(C)アルカリ可溶性樹脂
本発明の光重合性組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含有していてもよい。本発明の光重合性組成物において使用されるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性の溶媒に可溶な樹脂であれば特に限定されないが、カルボキシル基又は水酸基を含む樹脂であることが好適である。
【0130】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、エポキシ樹脂(a)に、α,β−不飽和モノカルボン酸および/またはエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル(b)を付加させ、さらに、多塩基酸無水物(c)を反応させることにより合成されるカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂;(メタ)アクリル酸やマレイン酸等の不飽和カルボン酸、あるいは(メタ)アクリル酸エステル等に水酸基又はカルボキシル基が結合した化合物と、他のビニル化合物とを重合させて得られる、水酸基又はカルボキシル基含有ビニル系樹脂;並びに、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース等;が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0131】
そして、中でも、アルカリ現像性と画像形成性の面から、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂、カルボキシル基含有ビニル系樹脂が好ましい。更に、層間絶縁膜用途としては、露光・現像後の剥離性の面から、カルボキシル基含有ビニル系樹脂の中でも、不飽和基を含有しないカルボキシル基含有ビニル系樹脂が好ましく用いられる。また、カラーフィルターの画素用途としては、不飽和基を含有するカルボキシル基含有ビニル系樹脂が好ましい。BM用途としては、カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂が好ましく用いられる。
【0132】
(C−1)カルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂
上記エポキシアクリレート樹脂は、エポキシ樹脂(a)に、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル(b)を付加させ、さらに、多塩基酸無水物(c)を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
【0133】
原料となるエポキシ樹脂(a)として、(o,m,p−)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、下記一般式(a−1)で示されるエポキシ樹脂等を好適に用いることができる。
【0134】
【化29】

【0135】
〔式中、p及びqは各々独立に0〜4の整数を表し、R24及びR25は各々独立してアルキル基又はハロゲン原子を表す。R26及びR27は各々独立してアルキレン基を表す。m及びnは各々独立して0以上の整数を表す。〕
中でも、ノボラック型エポキシ樹脂であるか、或いは前記一般式(a−1)で表されるエポキシ樹脂が好ましく、特に耐アルカリ現像液適性と現像性のバランスの観点から、母核の堅牢な樹脂が好ましく、上記一般式(a−1)で表されるエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0136】
上記一般式(a−1)において、R24及びR25のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、ハロゲン原子としてはCl、Br、F等が挙げられる。R24及びR25としては、各々独立に炭素数1〜5のアルキル基が特に好ましい。
24及びR25のアルキル基、ハロゲン原子の作用機構の詳細は明らかではないが、重合体分子の3次元構造に影響を与え、現像液に対しての溶解しやすさを制御しているものと推測される。従って上記観点からは、前記一般式(a−1)におけるp及びqは各々独立して0〜4の整数を表すが、好ましくは1又は2である。R24及びR25のベンゼン環への結合位置は、特に制限は無いが、
【0137】
【化30】

【0138】
または
【0139】
【化31】

【0140】
に対してo−位が好ましい。なお、R24及びR25は同じ基であっても異なる基であってもよいが、製造上のコストの点から、同じ基であることが好ましい。
26及びR27のアルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられ、特に各々独立してエチレン基又はプロピレン基である場合が好ましい。なお、R26及びR27は同じ基であっても異なる基であってもよいが、製造上のコストの点から、同じ基であることが好ましい。
【0141】
m及びnは、各々独立して0以上の整数を表すが、通常0〜6程度であり、好ましくは0〜3程度である。一般にm及びnは大きいほど溶解性が高いが、大きすぎる場合には、感度が低下する可能性がある。
これらのエポキシ樹脂(a)の分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量として、通常200〜20万、好ましくは300〜100000の範囲である。
【0142】
上記範囲内であると、皮膜形成性に問題を生じ難く、またα,β−不飽和モノカルボン酸の付加反応時にゲル化が起こり難く、製造が容易である点で好ましい。
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。エステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、アクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、アクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸−2−フタロイルオキシエチル、メタクリル酸−2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸−2−サクシノイルオキシエチル等を挙げられ、好ましくは、アクリル酸−2−マレイノイルオキシエチル及びアクリル酸−2−フタロイルオキシエチルであり、特にアクリル酸−2−マレイノイルオキシエチルが好ましい。
【0143】
α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はそのエステル(b)とエポキシ樹脂(a)との付加反応は、公知の手法を用いることができる。例えば、エステル化触媒の存在下、50〜150℃の温度で、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はそのエステル(b)とエポキシ樹脂(a)とを反応させることができる。ここで用いるエステル化触媒としては
、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等を用いることができる。
【0144】
なお、エポキシ樹脂(a)、α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β−不飽和モノカルボン酸エステル(b)、エステル化触媒は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はそのエステル(b)の使用量は、原料エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対し0.5〜1.2当量の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.1当量の範囲である。α,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はそのエステル(b)の使用量が少ないと不飽和基の導入量が不足し、引き続く多塩基酸無水物(c)との反応も不十分となる。また、多量のエポキシ基が残存することも有利ではない。一方、該使用量が多いとα,β−不飽和モノカルボン酸及び/又はそのエステルが未反応物として残存する。いずれの場合も硬化特性が悪化する傾向が認められる。
【0145】
α,β−不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル(b)が付加したエポキシ樹脂(a)に、さらに付加させる多塩基酸無水物(c)としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の1種又は2種以上が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0146】
多塩基酸無水物(c)の付加反応に関しても公知の手法を用いることができ、エポキシ樹脂(a)へのα,β−不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル(b)の付加反応と同様な条件下で継続反応させることにより得ることができる。多塩基酸無水物(c)の付加量は、生成するエポキシアクリレート樹脂の酸価が10〜150mg−KOH/gの範囲となるような程度であることが好ましく、さらに20〜140mg−KOH/gが特に好ましい。樹脂酸価が上記範囲内であると、アルカリ現像性及び硬化性能が良好である点で好ましい。
【0147】
なお、この多塩基酸無水物の付加反応時に、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールを添加し、多分岐構造を導入したものとしてもよい。
(C)アルカリ可溶性樹脂として用いられるカルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常1,000以上、好ましくは1,500以上であり、通常30,000以下、好ましくは20,000以下、さらに好ましくは10,000以下、特に好ましくは8,000以下である。上記範囲内であると、現像性及び耐アルカリ性が良好である点で好ましい。
【0148】
(C−2)カルボキシル基含有ビニル系樹脂
カルボキシル基含有ビニル系樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸とビニル化合物との共重合体等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0149】
また、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等のビニル化合物との共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0150】
中でも、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートは、現像時間や現像液劣化などに対する広いラチチュードを与える点で好ましい。そのようなジシクロペンタニル(メタ)アクリレートとしては、例えば、特開2001−89533号公報に挙げられる化合物、例えば、ジシクロペンタジエン骨格、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、ジシクロペンテニルオキシアルキル骨格等を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0151】
上記の共重合体(カルボキシル基含有ビニル系樹脂)の中では、画像形状、感度、硬化膜強度の観点から、スチレン−(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、スチレン3〜60モル%、(メタ)アクリレート10〜70モル%、(メタ)アクリル酸10〜60モル%からなる共重合体がさらに好ましく、スチレン5〜50モル%、(メタ)アクリレート20〜60モル%、(メタ)アクリル酸15〜55モル%からなる共重合体が特に好ましい。
【0152】
また、これらカルボキシル基含有ビニル系樹脂の酸価としては、通常30〜250mg−KOH/g、好ましくは、50〜200mg−KOH/g、更に好ましくは、70〜150mg−KOH/gである。
更に、これらカルボキシル基含有ビニル系樹脂の分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量として、通常1,000以上、好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下、特に好ましくは20,000以下である。上記範囲のカルボキシル基含有ビニル系樹脂を用いる場合、現像後の剥離性が良好であるため好ましい。
【0153】
なお、本発明の光重合性組成物を画素用、オーバーコート用、リブ(液晶配向制御突起)用及びフォトスペーサー用等に用いる場合には、上記カルボキシル基含有ビニル系樹脂として、側鎖にエチレン性不飽和結合を有するものが好適であり、例えば、カルボキシル基含有重合体に、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマル酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2,3−エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、7,8−エポキシ〔トリシクロ[5.2.1.0]デシ−2−イル〕オキシ
メチル(メタ)アクリレート等の脂環式エポキシ基含有不飽和化合物を、カルボキシル基含有重合体の有するカルボキシル基の5〜90モル%、好ましくは30〜70モル%程度を反応させて得られた反応生成物、及び、アリル(メタ)アクリレート、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シンナミル(メタ)アクリレート、クロトニル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド等の2種以上の不飽和基を有する化合物、又は、ビニル(メタ)アクリレート、1−クロロビニル(メタ)アクリレート、2−フェニルビニル(メタ)アクリレート、1−プロペニル(メタ)アクリレート、ビニルクロトネート、ビニル(メタ)アクリルアミド等の2種以上の不飽和基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、又はさらに不飽和カルボン酸エステルとを、前者の不飽和基を有する化合物の全体に占める割合を10〜90モル%、好ましくは30〜80モル%程度となるように共重合させて得られた反応生成物等が挙げられる。このような側鎖にエチレン性不飽和結合を有するアルカリ可溶性樹脂としては、上述したものの他に、特開2008−304766号公報等に記載のものも使用することができる。
【0154】
本発明の光重合性組成物が(C)アルカリ可溶性樹脂を含有する場合、上記アルカリ可溶性樹脂の含有量としては、全固形分に対して、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、通常70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。
上記範囲内であると、画像断面形状の再現性が良好で、また耐熱性が高く、更に感度及び現像溶解速度が良好である点で好ましい。
【0155】
(D)界面活性剤
本発明の光重合性組成物は、該組成物の塗布液としての塗布性、及び光重合性組成物層の現像性の向上等を目的として、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性界面活性剤、或いは、フッ素系やシリコーン系等の界面活性剤を含有していてもよい。
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンペンタエリスリット脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類等が挙げられる。これらの市販品としては、花王社製の「エマルゲン104P」、「エマルゲンA60」等のポリオキシエチレン系界面活性剤等が挙げられる。
【0156】
また、上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩類、特殊高分子系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、特殊高分子系界面活性剤が好ましく、特殊ポリカルボン酸型高分子系界面活性剤が更に好ましい。
【0157】
このようなアニオン性界面活性剤としては市販品を用いることができ、例えば、アルキル硫酸エステル塩類では、花王社製「エマール10」等、アルキルナフタレンスルホン酸塩類では花王社製「ペレックスNB−L」等、特殊高分子系界面活性剤では花王社製「ホモゲノールL−18」、「ホモゲノールL−100」等が挙げられる。
更に、上記カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩類、イミダゾリン誘
導体類、アミン塩類等が、また、両性界面活性剤としては、ベタイン型化合物類、イミダゾリウム塩類、イミダゾリン類、アミノ酸類等が挙げられる。これらのうち、第4級アンモニウム塩類が好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウム塩類が更に好ましい。市販のものとしては、例えば、アルキルアミン塩類では花王社製「アセタミン24」等、第4級アンモニウム塩類では花王社製「コータミン24P」、「コータミン86W」等が挙げられる。
【0158】
一方、フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキル又はフルオロアルキレン基を有する化合物が好適である。
具体的には、例えば、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン等を挙げることができる。
【0159】
これらの市販品としては、BM Chemie社製「BM−1000」、「BM−1100」、大日本インキ社製「メガファックF142D」、「メガファックF172」、「メガファックF173」、「メガファックF183」、「メガファックF470」、「メガファックF475」、住友3M社製「FC430」、ネオス社製「DFX−18」等を挙げることができる。
【0160】
また、シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン社製「トーレシリコーンDC3PA」、「同SH7PA」、「同DC11PA」、「同SH21PA」、「同SH28PA」、「同SH29PA」、「同SH30PA」、「同SH8400」、東芝シリコーン社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−444(4)(5)(6)(7)6」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、シリコーン社製「KP341」、ビックケミー社製「BYK323」、「BYK330」等の市販品を挙げることができる。
【0161】
これら界面活性剤の中でも、塗布膜厚の均一性の観点から、弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤は2種類以上の組み合わせでもよく、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤、弗素系界面活性剤/特殊高分子系界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。中でも、シリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤が好ましい。
【0162】
このシリコーン系界面活性剤/弗素系界面活性剤の組み合わせでは、例えば、東芝シリコーン社製「TSF4460」/ネオス社製「DFX−18」、ビックケミー社製「BYK−300」又は「BYK−330」/セイミケミカル社製「S−393」、信越シリコーン社製「KP340」/大日本インキ社製「F−478」又は「F−475」、トーレシリコーン社製「SH7PA」/ダイキン社製「DS−401」、日本ユニカー社製「L−77」/住友3M社製「FC4430」等が挙げられる。
【0163】
本発明の光重合性組成物が界面活性剤を含有する場合、光重合性組成物中の界面活性剤の含有割合は、全固形分に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
(E)溶剤
本発明の光重合性組成物は、通常、(A)エチレン性不飽和基含有化合物、(B)光重合開始剤と、必要に応じて配合される(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)界面活性剤や後述する(F)色材及びその他の任意成分を(E)溶剤に溶解又は分散した状態で使用される。
【0164】
(E)溶剤としては、組成物を構成する各成分を溶解又は分散させることができるもので、沸点が100〜250℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜200℃の沸点をもつもの、さらに好ましくは120〜170℃の沸点をもつものである。
このような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、メトキシブタノールのようなグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルのようなグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートのようなグリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルのようなエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトンのようなケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンのような1価または多価アルコール類;n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンのような脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルのような脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのような芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、モノエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、モノプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテートのような鎖状又は環状エステル類;3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸のようなアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライドのようなハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノンのようなエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルのようなニトリル類;等が挙げられる。
【0165】
上記に該当する溶剤としては、ミネラルスピリット、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、アプコシンナー、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、ソルベッソ#150、シェルTS28 ソルベント、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビト
ール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジグライムのような商品名の市販品が挙げられる。
【0166】
上述した各種溶剤の中でも、揮発性、安定性、各成分の溶解性などの点から、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンがより好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0167】
(F)色材
本発明の光重合性組成物において色材は必須の成分ではないが、画素及びBM用途等の多くの用途において色材を組合わせて利用する。ここで、色材とは、光重合性組成物を着色する成分をいう。
色材としては、染顔料が使用できるが、耐熱性、耐光性等の点から顔料が好ましい。顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。
【0168】
黒色顔料としては、単独の黒色顔料、又は赤、緑、青色等の混合による黒色顔料が使用可能である。これら黒色顔料は、無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択することができ、単独使用もしくは複数種混合して使用することができる。
単独の黒色顔料としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック等が挙げられる。これらの中で、特にカーボンブラック、チタンブラックが遮光率、画像特性の観点から好ましい。
【0169】
なお、カーボンブラックは、他の黒色又は有色の無機、有機顔料と併用してもよい。他の顔料は、カーボンブラックより遮光性又は画像特性が低いため自ずと混合比率は制限さ
れる。
チタンブラックの製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49−5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報)、二酸化チタンまたは水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
上述した各種色材の具体例としては、例えば、国際公開第2008/156148号パンフレットに記載されたもの等が挙げられる。
本発明の光重合性組成物は、前述したように様々な用途に使用することができるが、その照射光に対する高い感度や、優れた画像形成性は、カラーフィルター用ブラックマトリックスの形成に使用した場合に、特に効果的である。ブラックマトリックス形成に使用する場合には、(F)色材として、前述したカーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を使用するか、黒色以外の顔料を複数種類混合し、黒色に調整して使用すればよい。また、本発明の光重合性組成物は、電気特性や基板との密着性の高さ、及びかけの発生が少ないことから、カラーフィルター用画素の形成に使用した場合にも効果的である。画素の形成に使用する場合には、所望の画素の色に適した顔料を適宜選択し、組み合わせて調色し、使用すればよい。
【0171】
(G)その他成分
(G−1)顔料分散剤
本発明の組成物において(F)色材として顔料等を含有する場合、色材を微細に分散し、且つ、その分散状態を安定化させることが品質安定上重要なため顔料分散剤を配合するのが望ましい。
【0172】
顔料分散剤は、(F)顔料等の色材及び(C)アルカリ可溶性樹脂の双方に親和性を有するものであり、ノニオン、カチオン、アニオン等の界面活性剤、高分子分散剤等が挙げられる。中でも高分子分散剤が好ましく、特に1級、2級、若しくは3級アミノ基や、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等の含窒素ヘテロ環等の、塩基性官能基を有する高分子分散剤が有利に使用される。
【0173】
塩基性官能基を有する高分子分散剤として好ましい化学構造を具体的に例示するならば、例えば、ポリイソシアネート化合物、分子内に水酸基を1個または2個有する化合物、及び同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を反応させることによって得られる樹脂等が挙げられる。なお、この樹脂は(F)色材としてチタンブラックやカーボンブラック等の黒色顔料を使用する場合に特に好ましく、カーボンブラックを使用する場合に最も好ましい。
【0174】
上記のポリイソシアネート化合物の例としては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω’−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する
脂肪族ジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等のトリイソシアネート、及びこれらの三量体、水付加物、及びこれらのポリオール付加物等が挙げられる。ポリイソシアネートとして好ましいのは有機ジイソシアネートの三量体で、最も好ましいのはトリレンジイソシアネートの三量体とイソホロンジイソシアネートの三量体である。これらは単独で用いても、併用してもよい。
【0175】
イソシアネートの三量体の製造方法としては、前記ポリイソシアネート類を適当な三量化触媒、例えば第3級アミン類、ホスフィン類、アルコキシド類、金属酸化物、カルボン酸塩類等を用いてイソシアネート基の部分的な三量化を行い、触媒毒の添加により三量化を停止させた後、未反応のポリイソシアネートを溶剤抽出、薄膜蒸留により除去して目的のイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る方法が挙げられる。
【0176】
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物としては、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリオレフィングリコール等、及びこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化されたものなどが挙げられる。また、これらの2種類以上の混合物も挙げられる。ポリエーテルグリコールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、及びこれら2種類以上の混合物が挙げられる。
【0177】
ポリエーテルジオールとしては、アルキレンオキシドを単独又は共重合させて得られるもの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン−プロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコール、ポリオキシオクタメチレングリコール及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0178】
ポリエーテルエステルジオールとしては、エーテル基含有ジオールもしくは他のグリコールとの混合物をジカルボン酸又はそれらの無水物と反応させるか、又はポリエステルグリコールにアルキレンオキシドを反応させることによって得られるもの、例えばポリ(ポリオキシテトラメチレン)アジペート等が挙げられる。
ポリエーテルグリコールとして最も好ましいのはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール又はこれらの化合物の片末端水酸基が炭素数1〜25のアルキル基でアルコキシ化された化合物である。
【0179】
ポリエステルグリコールとしては、ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等)又はそれらの無水物とグリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレングリコール、2−メチル−1,8−オクタメチレングリコール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、N−メチルジエタノールアミン等のN−アルキルジア
ルカノールアミン等)とを重縮合させて得られたもの、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレン/プロピレンアジペート等、又は前記ジオール類又は炭素数1〜25の1価アルコールを開始剤として用いて得られるポリラクトンジオール又はポリラクトンモノオール、例えば、ポリカプロラクトングリコール、ポリメチルバレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ポリエステルグリコールとして最も好ましいのはポリカプロラクトングリコール又は炭素数1〜25のアルコールを開始剤としたポリカプロラクトンである。
【0180】
ポリカーボネートグリコールとしては、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられ、ポリオレフィングリコールとしてはポリブタジエングリコール、水素添加型ポリブタジエングリコール、水素添加型ポリイソプレングリコール等が挙げられる。
同一分子内に水酸基を1個又は2個有する化合物の数平均分子量は300〜10,000、好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは1,000〜4,000である。
【0181】
本発明に用いられる、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物について説明する。活性水素、即ち、酸素原子、窒素原子又はイオウ原子に直接結合している水素原子としては、水酸基、アミノ基、チオール基等の官能基中の水素原子が挙げられ、中でもアミノ基、特に1級アミノ基の水素原子が好ましい。3級アミノ基は、特に限定されないが、例えば炭素数1〜4のアルキル基を有するアミノ基、又はヘテロ環構造、より具体的にはイミダゾール環またはトリアゾール環などが挙げられる。
【0182】
このような、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物を例示するならば、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジプロピルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジプロピル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン等が挙げられる。
【0183】
また、3級アミノ基が窒素含有ヘテロ環であるものとして、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、カルバゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチアジアゾール環等の窒素含有ヘテロ5員環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、アクリジン環、イソキノリン環、等の窒素含有ヘテロ6員環が挙げられる。これらの窒素含有ヘテロ環として好ましいものはイミダゾール環又はトリアゾール環である。
【0184】
これらのイミダゾール環とアミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスチジン、2−アミノイミダゾール、1−(2−アミノエチル)イミダゾール等が挙げられる。また、トリアゾール環とアミノ基を有する化合物を具体的に例示するならば、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、5−(2−アミノ−5−クロロフェニル)−3−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−4H−1,2,4−トリアゾール−3,5−ジオール、3−アミノ−5−フェニル−1H−1,3,4−トリアゾール、5−アミノ−1,4−ジフェニル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1−ベンジル−1H−2,4−トリアゾール等が挙げられる。
【0185】
なかでも、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3
−プロパンジアミン、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールが好ましい。
分散剤原料の好ましい配合比率はポリイソシアネート化合物100重量部に対し、同一分子内に水酸基を1個又は2個有する数平均分子量300〜10,000の化合物が10〜200重量部、好ましくは20〜190重量部、さらに好ましくは30〜180重量部、同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物は0.2〜25重量部、好ましくは0.3〜24重量部である。
【0186】
塩基性官能基を有する高分子分散剤のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、1,000〜200,000、好ましくは2,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の範囲である。塩基性官能基を有する高分子分散剤の分子量が1,000未満では分散性及び分散安定性が劣る傾向があり、200,000を超えると溶解性が低下し分散性が劣ると同時に反応の制御が困難となる可能性がある。高分子分散剤の製造はポリウレタン樹脂製造の公知の方法に従って行われる。
【0187】
塩基性官能基を有する高分子分散剤を製造する際の溶媒としては、通常、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の炭化水素類、ダイアセトンアルコール、イソプロパノール、第二ブタノール、第三ブタノール等一部のアルコール類、塩化メチレン、クロロホルム等の塩化物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキサイド等の非プロトン性極性溶媒等が用いられる。
【0188】
上記製造に際して、通常、ウレタン化反応触媒が用いられる。ウレタン化反応触媒としては、例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の錫系、鉄アセチルアセトナート、塩化第二鉄等の鉄系、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン系等が挙げられる。
同一分子内に活性水素と3級アミノ基を有する化合物の導入量は反応後のアミン価(有効固形分換算)で1〜100mg−KOH/gの範囲に制御するのが好ましい。より好ましくは5〜95mg−KOH/gの範囲である。アミン価は、塩基性アミノ基を酸により中和滴定し、酸価に対応させてKOHのmg数で表した値である。アミン価が上記範囲内であると、分散能力及び現像性が共に良好である点で好ましい。
【0189】
なお、以上の反応で高分子分散剤にイソシアネート基が残存する場合にはさらに、アルコールやアミノ化合物でイソシアネート基を潰すと生成物の経時安定性が高くなるので好ましい。また、上述したものの他に、塩基性官能基を有する高分子分散剤としては、特開2009−14927号公報等に記載されたブロック共重合体、グラフト共重合体等も使用することができる。
【0190】
(G−2)熱架橋剤
本発明の光重合性組成物を層間絶縁膜として用いる場合、熱硬化後の膜の耐熱性及び耐薬品性を向上させる目的で、熱架橋剤を含有していてもよい。熱架橋剤としては、露光・現像による画像形成後のハードベークにより、架橋反応をするものであれば、公知のものを用いることができる。具体的には、下記のものが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0191】
(G−2−1)分子内にエポキシ基を有する化合物
本実施の形態に使用される、分子内にエポキシ基を有する化合物としては、例えば、モ
ノヒドロキシ化合物あるいはポリヒドロキシ化合物とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる(ポリ)グリシジルエーテル化合物、(ポリ)カルボン酸化合物とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル化合物、及び(ポリ)アミン化合物とエピクロルヒドリンを反応させて得られる(ポリ)グリシジルアミン化合物等の、低分子から高分子にわたる化合物が挙げられる。
【0192】
(G−2−1−1)ポリグリシジルエーテル化合物
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)のジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、テトラメチルビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、エチレンオキシド付加ビスフェノールAのジグリシジルエーテル型エポキシ、ジハイドロオキシルフルオレン型エポキシ、ジハイドロオキシルアルキレンオキシルフルオレン型エポキシ、ビスフェノールA/アルデヒドノボラック型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシが挙げられる。
【0193】
また、ポリグリシジルエーテル化合物には、ポリグリシジルエーテル樹脂が含まれる。ポリグリシジルエーテル樹脂としては、ビスフェノールSエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリスフェノールエポキシ樹脂、フェノールとジシクロペンタジエンとの重合エポキシ樹脂、フェノールとナフタレンとの重合エポキシ樹脂等のフェノール樹脂タイプエポキシ樹脂が挙げられる。これらの(ポリ)グリシジルエーテル化合物は、残存するヒドロキシル基に酸無水物や2価の酸化合物等を反応させ、カルボキシル基を導入したものであってもよい。
【0194】
(G−2−1−2)ポリグリシジルエステル化合物
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ、フタル酸のジグリシジルエステル型エポキシ等が挙げられる。
(G−2−1−3)ポリグリシジルアミン化合物
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ビス(4−アミノフェニル)メタンのジグリシジルアミン型エポキシ、イソシアヌル酸のトリグリシジルアミン型エポキシ等が、それぞれ挙げられる。
【0195】
(G−2−1−4)その他
また、その他の例として、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−4,5−エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート等を1種単独又は2種以上の組み合わせで反応させた重合体が挙げられる。あるいは、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート構成単位に他の共重合用単量体を通常10〜70モル%、好ましくは15〜60モル%含有させた重合体が挙げられる。
【0196】
共重合用単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニルの如き(メタ)アクリル酸のエステル、及び、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレンの如きビニル芳香族系化合物を挙げることができる。
【0197】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとして好ましくは、(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。また、好ましい共重合用単量体としては(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、α−スチレンが挙げられる。
エポキシ化合物が樹脂の場合(「エポキシ樹脂」と略記することがある。)、好ましい分子量としては、本発明の光重合性組成物を溶液状態で均一に塗布することが可能である限り特に限定されず、形成する塗膜の厚さ、塗布条件、目的等に応じて適宜選択される。その分子量としては、通常2,000〜300,000の範囲にあることが好適であり、好ましくは3,000〜100,000、更に好ましくは4,000〜50,000である。
【0198】
また、本発明の光重合性組成物に使用されるエポキシ化合物あるいはエポキシ樹脂に使用されるエポキシ基は、通常1,2−エポキシ基であるが、経時安定性の向上又は柔軟性の付与等の目的で、1,3−エポキシ基(オキセタン)、4,3−エポキシシクロへキシル基を使用することもできる。
また、本実施の形態に係るエポキシ化合物としては、芳香族環を含有しないもの、若しくは、無置換又はp(パラ)位に置換基を有するフェニル基を含有することが、保護膜の加熱処理による変色(赤色着色)が抑えられるため好適である。このようなエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びエポキシ樹脂、置換基を有していてもよいフルオレン骨格を有するエポキシ化合物及びエポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体等を挙げることができる。
【0199】
本発明の光重合性組成物が(G−2)熱架橋剤として分子内にエポキシ基を有する化合物を含有する場合、光重合性組成物中に占める、分子内にエポキシ基を有する化合物の含有量としては、全固形分に対して、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下であり、通常1質量%以上である。分子内にエポキシ基を有する化合物の含有量が過度に多いと、光重合性組成物溶液の保存安定性の低下、及び露光・現像後の剥離性の低下を招き易い。
【0200】
(G−2−2)含窒素熱架橋性化合物
含窒素熱架橋性化合物としては、メラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、若しくは尿素にホルマリンを作用させた化合物、又はそれらのアルキル変性化合物を挙げることができる。
具体的には、メラミンにホルマリンを作用させた化合物又はそのアルキル変性物の例として、サイテック・インダストリーズ社製の「サイメル」(登録商標)300、301、303、350、736、738、370、771、325、327、703、701、266、267、285、232、235、238、1141、272、254、202、1156、1158、三和ケミカル社の「ニカラック」(登録商標)E−2151、MW−100LM、MX−750LM、等を挙げることができる。
【0201】
又、ベンゾグアナミンにホルマリンを作用させた化合物又はそのアルキル変性物の例として、「サイメル」(登録商標)1123、1125、1128、等を挙げることができる。
又、グリコールウリルにホルマリンを作用させた化合物又はそのアルキル変性物の例として、「サイメル」(登録商標)1170、1171、1174、1172、「ニカラック」(登録商標)MX−270、等を挙げることができる。
【0202】
又、尿素にホルマリンを作用させた化合物又はそのアルキル変性物の例として、サイテック・インダストリーズ社製の「UFR」(登録商標)65、300、「ニカラック」(登録商標)MX−290、等を挙げることができる。
本発明における(G−2)熱架橋剤としては、中でも、分子中に−N(CHOR)基(式中、Rはアルキル基又は水素原子を示す)を有する化合物が好適である。尿素あるいはメラミンに、ホルマリンを作用させた化合物又はそのアルキル変性物が特に好ましい。
【0203】
本発明の光重合性組成物が(G−2)熱架橋剤として含窒素熱架橋性化合物を含有する場合、組成物中に占める含窒素熱架橋性化合物の含有量としては、全固形分に対して、通常40質量%以下、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。含窒素熱架橋性化合物の量が過度に多いと、現像時の残膜率の低下、及び解像性の低下を招き易い。
【0204】
(G−3)接着助剤
本発明の光重合性組成物には、基板との密着性を向上させる目的で、接着助剤を配合することができる。接着助剤としては、例えば、シランカップリング剤を挙げることができる。より具体的には、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−グシリドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独でも2種以上混合して用いてもよい。
【0205】
また、シランカップリング剤は、接着助剤としての機能だけではなく、熱処理において適度な熱溶融(熱流動性)を保護膜に与え、平坦性を向上させる機能をも有する。このような目的で配合するシランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。より具体的には、例えばγ−グリドキシプロピルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0206】
なお、接着助剤を用いる場合、上記接着助剤の配合量としては、光重合性組成物の全固形分に対して通常0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
(G−4)硬化剤
本発明の光重合性組成物が熱架橋剤(G−2)を含有する場合、硬化時間や硬化温度の調整等のために、さらに硬化剤を含有させることができる。これにより、本発明の光重合性組成物を使用した時の硬化条件をより適正に選択することができる。
【0207】
そのような硬化剤としては、要求機能を損ねるものでない限り特に限定するものではないが、例えば、安息香酸系化合物、多価カルボン酸(無水物)、多価カルボン酸(無水物)を含有する重合体、熱酸発生剤、アミン化合物、ポリアミン化合物、及びブロックカルボン酸等が挙げられる。特に、熱架橋剤として前記エポキシ基含有化合物を含有する場合には、熱硬化剤を用いることが好ましい。
【0208】
(G−4−1)安息香酸系化合物
安息香酸系化合物としては、安息香酸、安息香酸のベンゼン環上の2位から6位の位置に水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、アシルオキシル基、アルコキシル基、アリール基、アリル基等の置換基を有するものを挙げることができる。中でも、エポキシに対する硬化能力の高い水酸基を置換基として有するものが好ましく、特には水酸基を2つ以上有するものが好ましい。このような安息香酸系化合物としては、例えば、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0209】
(G−4−2)多価カルボン酸(無水物)
多価カルボン酸(無水物)としては、例えば、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等の脂環式多価カルボン酸(無水物);無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物;コハク酸、トリメリット酸、マレイン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂環式酸無水物;芳香族酸無水物の加水分解物等が挙げられる。これらの中でも、トリメリット酸(無水物)、無水フタル酸が好ましい。
【0210】
(G−4−3)多価カルボン酸(無水物)を含有する重合体
多価カルボン酸(無水物)を含有する重合体としては、(無水)マレイン酸等の(無水)多価カルボン酸と、エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物との重合体や、そのような重合体中の多価カルボン酸(無水物)部分の部分ハーフエステル変成重合体、等が挙げられる。
【0211】
エチレン性不飽和結合を分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、(ポリ)アルキレンオキシ基あるいはアルキル基などの置喚基を有するアルキレン等が挙げられる。
多価カルボン酸(無水物)を含有する重合体としては、中でも、光透過性、硬化膜強度の観点から、無水マレイン酸と(ポリ)アルキレンオキシ基あるいはアルキル基などの置喚基を有するアルキレンとの共重合体が好ましい。
【0212】
(G−4−4)熱酸発生剤
熱酸発生剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、モノフェニルスルフォニウム塩、トリアリルスルフォニウム塩、トリアリルセレニウム塩等の各種オニウム塩系化合物、スルフォン酸エステル、ハロゲン化合物等が挙げられる。具体例として、クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェイト、ジメチルアミノベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ナフチルジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェイト、ジメチルアミノナフチルジアゾニウムテトラフルオロボレート等の芳香族ジアゾニウム塩が挙げられる。
【0213】
また、ジアリールヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェイト、ジフェニルヨードニウムトリフレート、4,4’−ジ−t−ブチル−ジフェニルヨードニウムトリフレート、4,4’−ジ−t−ブチル−ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’−ジ−t−ブチル−ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が挙げられる。
【0214】
更に、モノフェニルスルフォニウム塩としては、ベンジル−p−ヒドロキシフェニルメチルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−ヒドロキシフェニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−アセトキシフェニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−p−ヒドロキシフェニルメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、下記式に示す化合物等のモノフェニルスルフォニウム塩タイプ、又はベンジルフェニルスルフォニウム塩タイプ等が挙げられる。
【0215】
【化32】

【0216】
また更に、トリアリルスルフォニウム塩としては、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリ(p−クロロフェニル)スルフォニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−クロロフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト、トリ(p−クロロフェニル)スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−t−ブチルトリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が挙げられる。
【0217】
トリアリルセレニウム塩としては、トリアリルセレニウムテトラフルオロボレート、トリアリルセレニウムヘキサフルオロフォスフェイト、トリアリルセレニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(クロロフェニル)フェニルセレニウムテトラフルオロボレート、ジ(クロロフェニル)フェニルセレニウムヘキサフルオロフォスフェイト、ジ(クロロフェニル)フェニルセレニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0218】
スルフォン酸エステルとしては、例えば、ベンゾイントシレート、p−ニトロベンジル−9,10−エトキシアントラセン−2−スルフォネート、2−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2,4−ジニトロベンジルトシレート等が挙げられる。
ハロゲン化合物としては、2−クロロ−2−フェニルアセトフェノン、2,2’,4’−トリクロロアセトフェノン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ビス−2−(4−クロロフェニル)−1,1,1−トリクロロエタン、ビス−1−(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタノール、ビス−2−(4−メトキシフェニル)−1,1,1−トリクロロエタン等が挙げられる。
【0219】
これら熱酸発生剤の中では、光透過性、硬化膜強度の観点から、モノフェニルスルフォニウム塩タイプ、又はベンジルフェニルスルフォニウム塩タイプが好ましい。
(G−4−5)アミン化合物
アミン化合物としては、例えば、エチレジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、ピペリジン、ピロリジン、トリエチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジシアンアミド、又はその誘導体;DBU(1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1),DBU系テトラフェニルボレート塩等の脂肪族アミン(第1、第2、第3);メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノ−p−クレゾール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピリジン、ピコリン、DBU(1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキシル酸塩等の芳香族アミン(第1、第2、第3);2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、
2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウム・トリメリテート、2−メチルイミダゾリウム・イソシアヌレート、2−フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−エチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−ウンデシルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール等のイミダゾール化合物;ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
【0220】
これらの中でも、硬化膜強度の観点から、ジシアンアミド、DBU系テトラフェニルボレート塩が好ましい。
(G−4−6)ポリアミン化合物
ポリアミン化合物としては、例えば、トリエチルテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフルオロジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン等の脂肪族ポリアミン、m−キシレンジアミン、キシリレンジアミン、キシリレンジアミン誘導体、キシリレンジアミン三量体等の芳香族ポリアミンが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。
【0221】
(G−4−7)ブロックカルボン酸
ブロックカルボン酸としては、例えば、前記(多価)カルボン酸及びそれらを含有する重合体のカルボン酸に、特開平4−218561号公報、特開2003−66223号公報、特開2004−339332号公報、特開2004−339333号公報などに記載の方法によりビニルエーテルを付加させたブロックカルボン酸等が挙げられる。
【0222】
上記硬化剤の中では、多価カルボン酸(無水物)を含有する重合体、オニウム塩系化合物、ブロックカルボン酸化合物、安息香酸系化合物が、硬化反応の活性が良好で高い硬度と支持体(基板)との密着性が得られるという点で好ましい。
より具体的には、無水マレイン酸と、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜15のポリプロピレンオキシプロピレン基又は炭素数1〜15のポリエチレンオキシプロピレン基を含有するエチレン、ブチレン、又はプロピレン化合物、スチレンの中から選ばれる少なくとも1つ以上のエチレン化合物との多価カルボン酸共重合体;トリメリット酸あるいはマレイン酸とエチルビニルエーテルとの付加物からなるブロックカルボン酸化合物;2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸などの安息香系化合物;ベンジル−p−ヒドロキシフェニルメチルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、p−ヒドロキシフェニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−アセトキシフェニルジメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−p−ヒドロキシフェニルメチルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート、前記一般式(VII)に示す化合物等のモノフェニルスルフォニウム塩タイプ、又はベンジルフェニルスルフォニウム塩タイプ等のモノフェニルスルホニウム塩等を挙げることができる。
【0223】
これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。硬化
剤としては、中でも、多価カルボン酸共重合体、安息香酸系化合物は支持体との密着性向上に優れており、また、モノスルホニウム塩は硬度向上に優れている。特に安息香酸系化合物は、熱硬化性に優れ、光透過性が高く、熱による色変化の影響が低いので好ましい。
本発明の光重合性組成物が硬化剤を含む場合、光重合性組成物に占める硬化剤の含有量としては、全固形分に対して、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。硬化剤の量が過度に少ないと、支持体(基板)への接着性、硬度の低下を招き易く、反対に、過度に多いと、熱重量減少の増加を招きやすい。
【0224】
(G−5)熱重合防止剤
本発明の光重合性組成物には、例えば、置換基を有していてもよいo−ハイドロキシベンゾフェノン、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の熱重合防止剤を配合することができる。これら化合物の配合割合としては、全固形分に対して、通常10質量%以下、好ましくは2質量%以下である。
【0225】
(G−6)可塑剤
本発明の光重合性組成物には、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤を、全固形分に対して、40質量%以下、好ましくは20質量%以下の割合で含有していてもよい。
(G−7)重合加速剤
更に、本発明の光重合性組成物には、必要に応じて、重合加速剤を添加することもできる。重合加速剤として具体的には、例えば、N−フェニルグリシンなどのアミノ酸のエステル又はその双極イオン化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン、エチレングリコールジチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のメルカプト基含有化合物類、ヘキサンジチオール、トリメチロールプロパントリスチオグリコネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等の多官能チオール化合物類、N,N−ジアルキルアミノ安息香酸エステル、N−フェニルグリシン又はそのアンモニウム塩やナトリウム塩等の誘導体、フェニルアラニン、又はそのアンモニウムやナトリウム塩等の塩、エステル等の誘導体等の芳香族環を有するアミノ酸又はその誘導体類等が挙げられる。
【0226】
本発明の光重合性組成物において、重合加速剤を添加する場合、その含有割合としては、全固形分に対して、20質量%以下であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。
(G−8)紫外線吸収剤
更に、本発明の光重合性組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤を添加することもできる。紫外線吸収剤は、露光に用いられる光源の特定の波長を該紫外線吸収剤によって吸収させることにより、基板上に形成した本発明の光重合性組成物の膜を露光したときの光硬化速度を制御する目的で添加されるものである。紫外線吸収剤の添加により、露光・現像後のパターン形状を改善したり、現像後に非露光部に残る残渣をなくしたりするなどの効果が得られる。
【0227】
紫外線吸収剤としては、例えば、250nmから400nmの間に吸収極大を有する化合物を用いることができる。より具体的には、例えば、スミソーブ130(住友化学社製)、EVERSORB10、EVERSORB11、EVERSORB12(台湾永光化学工業社製)、トミソーブ800(エーピーアイコーポレーション社製)、SEESORB100、SEESORB101、SEESORB101S、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB105、SEESORB106、SEESORB1
07、SEESORB151(シプロ化成社製)などのベンゾフェノン化合物;スミソーブ200、スミソーブ250、スミソーブ300、スミソーブ340、スミソーブ350(住友化学社製)、JF77、JF78、JF79、JF80、JF83(城北化学工業社製)、TINUVIN PS、TINUVIN99−2、TINUVIN109、TINUVIN384−2、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、EVERSORB70、EVERSORB71、EVERSORB72、EVERSORB73、EVERSORB74、EVERSORB75、EVERSORB76、EVERSORB234、EVERSORB77、EVERSORB78、EVERSORB80、EVERSORB81(台湾永光化学工業社製)、トミソーブ100、トミソーブ600(エーピーアイコーポレーション社製)、SEESORB701、SEESORB702、SEESORB703、SEESORB704、SEESORB706、SEESORB707、SEESORB709(シプロ化成社製)などのベンゾトリアゾール化合物;スミソーブ400(住友化学社製)、サリチル酸フェニルなどのベンゾエート化合物;TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477DW、TINUVIN479(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などのヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを挙げることができる。中でも、ベンゾトリアゾール化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物が特に好ましい。
【0228】
これら紫外線吸収剤を添加する場合、その配合割合としては、光重合性組成物の全固形分に対して、通常0.01質量%以上15質量%以下、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下である。紫外線吸収剤の配合割合がこの範囲より少ないと、パターン形状の改善及び/又は残渣の解消などの効果が得られにくくなる傾向があり、多いと感度の低下及び/又は残膜率の低下が起こる傾向がある。
【0229】
<本発明の光重合性組成物の製造方法>
本発明の光重合性組成物は、それ自体公知の常法に従って製造される。以下に、画素又はBM用組成物のように(F)色材として顔料を含有する光重合性組成物を製造する場合を例に挙げて説明する。なお、層間絶縁膜、フォトスペーサー、リブ(液晶配向制御突起)等の色材を含まない用途に用いられる光重合性組成物を製造する場合には、(A)エチレン性不飽和基含有化合物、(B)光重合開始剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(E)溶剤、必要に応じて前記(G)他の成分などを混合し、均一な分散溶液とすればよい。
【0230】
まず、(F)色材としての顔料、(E)溶剤と、必要に応じて(G−1)顔料分散剤とを各所定量秤量し、分散処理工程において、顔料を分散させて顔料分散液(インク状液体)とする。この分散処理工程では、ペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザーなどを使用することができる。この分散処理を行うことによって顔料が微粒子化されるため、光重合性組成物の塗布特性が向上し、製品のカラーフィルター基板の透過率が向上する。
【0231】
顔料を分散処理する際に、前記の(C)アルカリ可溶性樹脂を併用してもよい。また、ペイントコンディショナー等を用いて分散処理を行う場合は、0.1から数mm径のガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズを用いるのが好ましい。分散処理する際の温度は通常、0℃〜100℃の範囲、好ましくは室温〜80℃の範囲に設定する。なお、分散時間は、顔料分散液の組成(色材、溶剤、顔料分散剤)、及び装置の大きさなどにより適正時間が異なるため、適宜調整する必要がある。
【0232】
なお、例えば、本発明の光重合性組成物を使用して、樹脂ブラックマトリクスを形成する場合には、JIS Z8741における20度鏡面光沢度が100〜200の範囲となるように黒色顔料分散液(インク状液体)の光沢を制御するのが分散の目安である。黒色
顔料分散液の光沢が低い場合には分散処理が十分でなく粗い顔料粒子が残っていることが多く、現像性、密着性、解像性等の点で不十分である場合が多い。また、光沢値を上記範囲を超えるまで分散処理すると超微粒子が多数生じるために却って分散安定性が損なわれることになりやすい。
【0233】
上記分散処理によって得られた顔料分散液に、(A)エチレン性不飽和基含有化合物、(B)光重合開始剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(E)溶剤、場合によっては上記以外の他の成分などを混合し、均一な分散溶液とする。なお、分散処理工程及び混合の各工程においては、微細なゴミが混入することがあるため、得られた光重合組成物をフィルターなどによって、濾過処理することが好ましい。
【0234】
<本発明の光重合性組成物の使用方法>
本発明の光重合性組成物は、例えば、液晶表示装置等の各種部材を製造するための画像形成用途等に好適に用いられる。すなわち、層間絶縁膜、カラーフィルターにおける画素及びブラックマトリックス、フォトスペーサー、リブ(液晶配向制御突起)等の液晶表示装置に備えられる各種硬化物等の形成に好適に用いられる。
【0235】
以下、これらについてさらに具体的に説明する。
<層間絶縁膜の形成方法>
本発明の光重合性組成物を用いた層間絶縁膜の形成方法について説明する。
{1}塗工工程
まず、基板上に、上述した本実施の形態の光重合性組成物をスピナー、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いて塗布する。光重合性組成物の塗布膜厚は通常0.5〜5μmである。
【0236】
{2}乾燥工程
上記塗布膜から揮発成分を除去(乾燥)して乾燥塗膜を形成する。乾燥には、真空乾燥、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等、またはこれらの組み合わせを用いることができる。好ましい乾燥条件は温度20〜150℃、乾燥時間10秒〜60分の範囲である。
【0237】
{3}露光・現像工程
次いで、光重合性組成物層の乾燥塗膜上に0〜500μmの露光ギャップを設けてフォトマスクを置き、該フォトマスクを介して画像露光する。露光後、未露光の未硬化部分を現像にて除去することにより、画像を形成する。またこうしたプロキシミティー露光方式の他に、ミラープロジェクション方式、ステップアンドリピート方式、レーザー直描方式などの露光方式によって、露光を行うこともできる。なお、露光後、現像前に感度向上の目的でポスト・エクスポージャ・ベークを行う場合もある。この場合のベークには、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いることができる。ポスト・エクスポージャ・ベーク条件は通常、40〜150℃、乾燥時間10秒〜60分の範囲である。
【0238】
通常、現像後に得られる画像には、10μm巾の細線再現性が求められる。また、高画質のディスプレイを実現すべく、より高精細な細線再現性が要求される傾向にある。高精細な細線を安定し再現する上では、現像後の細線画像の断面形状として非画像と画像部のコントラストが明瞭な矩形型が、現像時間、現像液経時、現像シャワーの物理刺激などの現像マージンが広く好ましい。
【0239】
乾燥塗膜の露光工程に用いる光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯
、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定波長の光のみを使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0240】
現像処理に用いる現像液としては、未硬化部の塗布膜を溶解させる能力のある溶剤であれば特に制限は受けないが、前述したように、環境汚染、人体に対する有害性、火災危険性などの点から、有機溶剤ではなく、アルカリ現像液を使用するのが好ましい。
このようなアルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物、或いはジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド等の有機アルカリ化合物を含有した水溶液が挙げられる。なお、アルカリ現像液には、必要に応じ、界面活性剤、水溶性の有機溶剤、湿潤剤、水酸基又はカルボン酸基を有する低分子化合物等を含有させることもできる。特に、界面活性剤は現像性、解像性、残渣などに対して改良効果をもつものが多いため添加するのは好ましい。
【0241】
現像液に使用する界面活性剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ナトリウム基、ベンゼンスルホン酸ナトリウム基を有するアニオン性界面活性剤、ポリアルキレンオキシ基を有するノニオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム基を有するカチオン性界面活性剤等を挙げることができる。現像処理の方法については特に制限は無いが、通常、10〜50℃、好ましくは15〜45℃の現像温度で、浸漬現像、パドル現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
【0242】
{4}熱処理工程
露光・現像工程により画像形成された光重合性組成物膜は、次いで、熱処理(ハードベーク)工程を経て硬化物(熱硬化膜)となる。なお、現像後、ハードベーク前にハードベーク時のアウトガスの発生を抑制する目的で、全面露光を行う場合もある。
ハードベーク前の全面露光を行う場合、光源としては、紫外光又は可視光が用いられ、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。また、ハードベークにはホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等を用いることができる。ハードベーク条件としては通常、100〜250℃、乾燥時間30秒〜90分の範囲である。
【0243】
<カラーフィルターの製造方法>
次に、本発明の光重合性組成物を用いたカラーフィルターの製造方法について説明する。なお、以下には画素及びブラックマトリックスの形成に用いられる場合を例に挙げるが、本発明の光重合性組成物はカラーフィルターにおける画素及びブラックマトリックスのみならず、液晶表示装置におけるフォトスペーサーやリブ(液晶配向制御突起)等の形成に使用することもできる。
【0244】
以下の説明は、本発明の光重合性組成物を、カラーフィルターにおける画素(RGB)及びブラックマトリックス(BM)の形成に使用する場合を例に説明する。
カラーフィルターを製造するには、まず、透明基板上に、本発明の光重合性組成物を塗布して乾燥した後、該塗布膜を、前述したような種々の露光方式により露光、現像、必要に応じて熱硬化或いは光硬化により樹脂BMを形成する。さらに同様の操作をRGB3色について各々繰り返して画素を形成し、カラーフィルターを形成する。
【0245】
{1}透明基板
ここで用いる透明基板は、カラーフィルター用の透明基板であり、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン等の熱可塑性プラスチックシート、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱硬化性プラスチックシート、或いは各種ガラス板等を挙げることができる。特に、耐熱性の点からガラス板、耐熱性プラスチックシートが好ましく用いられる。このような透明基板には、表面の接着性等の物性を改良するために、予め、コロナ放電処理、オゾン処理、シランカップリング剤やウレタンポリマー等の各種ポリマーの薄膜処理等を行うこともできる。
【0246】
{2}塗布及び乾燥工程
透明基板への光重合性組成物の塗布方法は特に限定されないが、通常、スピナー、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いて行われる。塗布後の乾燥においてはホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等、またはこれらの組み合わせを用いることができ、好ましい乾燥条件は20〜150℃、乾燥時間は10秒〜60分の範囲である。塗布、乾燥後の樹脂BMの膜厚は、0.1〜2μm、好ましくは0.1〜1.5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmの範囲とするのがよい。なお、本発明の光重合性組成物により形成される樹脂BMは、遮光性の点から膜厚1μmにおいて、光学濃度が3.0以上であるのが好ましい。また、顔料等の固型分の分散状態の指標として、BMの20度光沢値が100〜200であるのが有利である。
【0247】
{3}露光及び現像工程
露光に用いる光源は、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源やアルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。特定の照射光の波長のみを使用する場合には光学フィルターを利用することもできる。
【0248】
現像処理に用いる現像液は、未露光部のレジスト膜を溶解させる能力のある溶剤であれば特に制限は受けない。例えば、アセトン、塩化メチレン、トリクレン、シクロヘキサノン等の有機溶剤を使用することができる。しかしながら、有機溶剤は環境汚染、人体に対する有害性、火災危険性などをもつものが多いため、このような危険性の無いアルカリ現像液を使用するのが好ましい。
【0249】
このようなアルカリ現像液として、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機のアルカリ剤、或いはジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラアルキルアンモニウム塩等の有機のアルカリ剤を含有した水溶液が挙げられる。
アルカリ現像液には、必要に応じ、界面活性剤、水溶性の有機溶剤、水酸基またはカルボキシル基を有する低分子化合物等を含有させることもできる。特に、界面活性剤は現像性、解像性、地汚れなどに対して改良効果をもつものが多いため添加するのは好ましい。例えば、現像液用の界面活性剤としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウム基、ベンゼンスルホン酸ナトリウム基を有するアニオン性界面活性剤、ポリアルキレンオキシ基を有するノニオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム基を有するカチオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0250】
現像処理方法については特に制限は無いが、通常、10〜50℃、好ましくは15〜45℃の現像温度で、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法により行われる。
上記のとおり光重合性組成物の塗布、乾燥、露光、現像をBM及びRGB3色について各々繰り返して行って、カラーフィルターを作製する。本発明の光重合性組成物はこのようにBMの形成にもRGB3色の画素形成にも用いることができる。
【0251】
なお、本発明の光重合性組成物を用いてカラーフィルターの画素を形成する場合には、非常に高感度、高解像力であるため、ポリビニルアルコール等の酸素遮断層を設けることなしに露光、現像して画像を形成することが可能である。
<その他の用途>
本発明の光重合性組成物は、上述のような層間絶縁膜、カラーフィルターのBMやRGB3色の画素以外に、フォトスペーサーやリブ(液晶配向制御突起)等の形成にも用いることができる。以下、この使用形態について説明する。
【0252】
<フォトスペーサー用途>
フォトスペーサーは、本発明の光重合性組成物を基板に塗布、乾燥、露光、現像、熱硬化処理することにより形成される。フォトスペーサーの形成にあたり、本発明の光重合性組成物は、基板に塗布される。塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法などによって行うことができる。中でも、ダイコート法によれば、塗布液(光重合性組成物)の使用量が大幅に削減され、かつ、スピンコート法による塗布の際に付着するミストなどの影響が全くない、異物発生が抑制されるなど、総合的な観点から好ましい。
【0253】
塗布量は、乾燥膜厚として、通常0.5〜10μm、好ましくは1〜8μm、特に好ましくは1〜5μmの範囲となるよう調整する。また乾燥膜厚あるいは最終的に形成されたスペーサーの高さが、基板全域に渡って均一であることが重要である。スペーサーの高さのばらつきが大きい場合には、液晶パネルにムラ欠陥を生ずることとなる。
なお、上述以外の塗布方法としては、例えば、インクジェット法や印刷法などにより、本発明の光重合性組成物を基板上にパターン状に供給してもよい。
【0254】
塗布後の光重合性組成物の乾燥は、ホットプレート、IRオーブン、コンベクションオーブン等によるのが好ましい。また温度を高めず、減圧チャンバー内で乾燥を行う、減圧乾燥法を組み合わせてもよい。乾燥の条件は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて適宜選択することができる。乾燥条件は、溶剤成分の種類、使用する乾燥機の性能などに応じて、通常は、40〜100℃の温度で15秒〜5分間の範囲で選ばれ、好ましくは50〜90℃の温度で30秒〜3分間の範囲で選ばれる。
【0255】
露光は、光重合性組成物の塗布膜上に、ネガのマスクパターンを重ね、このマスクパターンを介し、紫外線または可視光線の光源を照射して行う。またレーザー光による走査露光方式により、パターン状に組成物を硬化させてもよい。上記の露光に使用される光源は、特に限定されるものではない。光源としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、蛍光ランプなどのランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー、窒素レーザー、ヘリウムカドミニウムレーザー、青紫色半導体レーザー、近赤外半導体レーザーなどのレーザー光源などが挙げられる。特定の波長の光を照射して使用する場合には、光学フィルターを利用することもできる。
【0256】
上記の露光を行った後、アルカリ性化合物と界面活性剤とを含む水溶液、または有機溶剤を用いる現像によって、基板上に画像パターンを形成することができる。この水溶液には、さらに有機溶剤、緩衝剤、錯化剤、染料または顔料を含ませることができる。アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリ性化合物や、モノ−・ジ−又はトリエタノールアミン、モノ−・ジ−又はトリメチルアミン、モノ−・ジ−又はトリエチルアミン、モノ−又はジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ−・ジ−又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0257】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、アルキルベタイン類、アミノ酸類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0258】
有機溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。有機溶剤は、単独でも水溶液と併用して使用することもできる。現像の後の基板には、熱硬化処理を施すのが好ましい。この際の熱硬化処理条件は、温度は100〜280℃の範囲、好ましくは150〜250℃の範囲で選ばれ、時間は5〜60分間の範囲で選ばれる。
【0259】
<リブ(液晶配向制御突起)用途>
リブ(液晶配向制御突起)とは、液晶表示装置の視野角を改善するために、透明電極上に形成する突起をいい、前記突起のスロープを利用して液晶を局所的に傾け、一画素内で液晶を多方向に配向させるものである。
本発明の光重合性組成物によりリブを形成するには、まず、カラーフィルター上にITOを蒸着してなる通常0.1〜2mm厚の透明基板上に、本発明の光重合性組成物をスピナー、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いて塗布する。組成物の塗布膜厚は通常0.5〜5μmである。該組成物からなる塗布膜を乾燥した後、該塗布膜を、前述したような種々の露光方式により露光する。露光後、未露光(未硬化)部分を現像にて除去することにより、画像を形成する。通常、現像後得られる画像は、5〜20μmの巾の細線再現性が求められ、高画質のディスプレイの要求からより高精細な細線再現性が要求される傾向にある。高精細な細線を安定し再現する上で、現像後の細線画像の断面形状は、非画像部と画像部のコントラストが明瞭な矩形型が好ましい。矩形型にすることにより、現像時間、現像液経時、現像シャワーの物理刺激などの現像マージンが広くなるため好ましい。
【0260】
本発明の光重合性組成物を用いた場合、現像後の画像は、通常、矩形型に近い断面形状を有している。これを、リブの形状に必要なアーチ状の形状とするために、加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上、通常400℃以下、好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。また、加熱処理の時間は、通常10分以上、好ましくは15分以上、さらに好ましくは20分以上、通常120分以下、好ましくは60分以下、さらに好ましくは40分以下である。このような条件で加熱処理を行うことにより、矩形状の断面形状をアーチ状の形状に変形させ、巾0.5〜20μm高さ0.2〜5μmのリブを形成させる。
【0261】
この加熱時の変形の範囲は、光重合性組成物の組成と加熱条件を適宜調整することにより調整可能である。具体的には、加熱前の細線画像(断面形状は矩形)の側面と基板表面から形成される接触角(W1)と、上記加熱処理後の細線画像の側面と基板表面から形成される接触角(W2)を比較した場合、W1/W2が通常1.2以上、好ましくは1.3以上、さらに好ましく1.5以上、通常10以下、好ましくは8以下になるようにする。加熱温度が高い程、又は加熱時間が長い程変形率が大きく、反対に加熱温度が低い程、又は加熱時間が短い程その変形率は低い。
【0262】
<一括形成用途>
また、本発明の光重合性組成物は、高さや形状の異なる硬化物を同一材料で同時に形成する方法(一括形成法)にも用いることができる。
ここでいう硬化物としては、例えば、上記フォトスペーサー、リブのほか、サブフォトスペーサー(通常のフォトスペーサーよりもわずかに低いパターン高さを有するフォトスペーサー)、オーバーコート(保護膜)等が挙げられる。高さや形状の異なる硬化物の組み合わせとしては、例えば、フォトスペーサーとサブフォトスペーサー、フォトスペーサーとリブ、フォトスペーサーとオーバーコート等の組み合わせが挙げられ、本発明の光重合性組成物はこれらを同時に形成する一括形成法にも用いることができる。
【0263】
一括形成法において用いられる塗布、乾燥、露光、現像、熱硬化処理等の方法は、上記フォトスペーサー及びリブの形成方法において説明したものと同様であるが、露光工程において、光の透過量が複数種類に調節された複数の開口部を有するハーフトーンマスク等を使用することが好ましい。ハーフトーンマスクを使用して各硬化物に適した露光量に調節することにより、高さや形状の異なる硬化物を同時に形成させることができる。また、レーザー光による走査露光方式により、パターン状に組成物を硬化させることによっても高さや形状の異なる硬化物の一括形成が可能である。
【0264】
前記本発明のケトオキシムエステル化合物を含有する本発明の光重合性組成物は、高感度で段差(高さの差)の形成が可能であること、ハーフトーンマスクを使用した際の硬化物の高さ均一性が良好であること、ハーフトーンマスクにより低露光量となった部位でも密着性が良好であること、形成されたフォトスペーサーやリブ等の硬化物の形状が良好であること等の点で一括形成法にも好適である。
【実施例】
【0265】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[合成例1](ケトオキシムエステル系化合物I−1の合成)
<ジケトン体の合成>
200ml三つ口フラスコにジフェニルスルフィド 6.0g(32mmol)、メチルグルタリルクロリド 10.8g(64mmol)、塩化メチレン80mlを加え、系中を窒素で置換した。反応溶液を3℃に冷却した後、塩化アルミニウム 19.8g(148mmol)を1時間かけてゆっくり添加した。
【0266】
添加終了後、更に3℃で5時間攪拌し、反応溶液を氷水200mlに少しずつ投入した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過してエバポレーターにより溶媒を濃縮し、10.3g(収率72%)の下記化合物(1)を得た。
【0267】
【化33】

【0268】
<ケトオキシム体の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコに上記で得られた化合物4.4g(10mmol)と塩化メチレン40mlを入れ、3℃に冷却した。これに1N塩化水素/ジエチルエーテル溶液 40mlと亜硝酸n−ペンチル3.0g(26mmol)を順に添加した。
添加終了後、更に3℃で6時間攪拌し、10%炭酸カリウム水溶液20mlを添加した。その後、塩化メチレンで抽出し、10%炭酸カリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過してエバポレーターにより溶媒を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、3.8g(収率76%)の下記化合物(2)を得た。
【0269】
【化34】

【0270】
<ケトオキシムエステル体の合成>
50ml三口フラスコに上記で得られた化合物3.8g(7.6mmol)、テトラヒドロフラン25ml、トリエチルアミン3.1g(30mmmol)を入れ、系中を窒素で置換した。反応溶液を3℃に冷却した後、塩化アセチル1.6g(20mmol)を添加した。
【0271】
添加終了後、更に3℃で2時間攪拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlを添加した。次に酢酸エチルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過してエバポレーターにより溶媒を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い2.6g(収率59%)の本発明の化合物(I−1)を得た。得られた化合物のNMRシフト値は次の通りであった。
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.29(s,6H)、2.73(
t,4H)、3.08(t,4H)、3.64(s,6H)、7.44(d,4H)、8.05(d,4H)
【0272】
【化35】

【0273】
[合成例2](ケトオキシムエステル系化合物I−2の合成)
<ジケトン体の合成>
200ml三つ口フラスコにジフェニルスルフィド 5.02g(26.8mmol)、塩化アルミニウム 14.2g(107mmol)、塩化メチレン100mlを加え、系中を窒素で置換した。反応溶液を3℃に冷却した後、無水グルタル酸 6.11g(53.6mmol)を30分かけてゆっくり添加した。
【0274】
添加終了後、更に3℃で4時間攪拌し、反応溶液を氷水200mlに少しずつ投入した。析出した固体をろ過し、水でよく洗浄した。これを減圧下乾燥して8.96g(収率80%)のジカルボン酸を得た。次に、エステル化反応を行った。
窒素雰囲気下、200ml三つ口フラスコに合成したジカルボン酸5.14g(12.4mmol)、i−プロパノール 50ml、濃硫酸0.20gを加えて80℃に加熱した。更に8時間加熱還流を行い、LCで原料が消失したことを確認して冷却した。析出した固体をろ過して乾燥し、2.52g(収率41%)の下記化合物(3)を得た。
【0275】
【化36】

【0276】
<ケトオキシム体の合成>
化合物(3)1.50g(3.00mmol)、塩化メチレン30ml、1N塩化水素/ジエチルエーテル溶液12ml、亜硝酸n−アミル0.914g(7.8mmol)から実施例1と同様にして0.90g(収率 54%)の下記化合物(4)を得た。
【0277】
【化37】

【0278】
<ケトオキシムエステル体の合成>
化合物(4)0.9g(1.62mmol)、トリエチルアミン0.492g(4.86
mmol)、塩化メチレン20ml、塩化アセチル0.546g(3.89mmol)から実施例1と同様にして0.72g(収率 68%)の本発明の化合物(I−2)を得た
。得られた化合物のNMRシフト値は次の通りであった。
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]1.17(d,12H)、2.27
(s,6H)、2.65(t,4H),3.05(t,4H)、4.94(m,2H)、7.43(d,4H)、8.03(d,4H)
【0279】
【化38】

【0280】
[合成例3](ケトオキシムエステル系化合物I−3の合成)
<ジケトン体の合成>
窒素雰囲気下、200ml三つ口フラスコにエチルカルバゾール2.00g(10.2mmol)、塩化メチレン 50ml、メチルグルタリルクロリド 3.37g(20.5mmol)を加え、氷浴で2℃に冷却した。これに塩化アルミニウム5.36g(40.2mmol)を1時間かけてゆっくり添加した。添加後、更にそのまま2時間攪拌した。反応終了後、反応液を150mlの氷水に添加し、有機層を抽出した。引き続き、水50mlで10回、飽和食塩水20mlで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ過して有機層を濃縮し、3.81g(収率83%)の化合物(5)を得た。
【0281】
【化39】

【0282】
<ケトオキシム体の合成>
化合物(5)3.81g(8.44mmol)、塩化メチレン40ml、1N塩化水素/ジエチルエーテル溶液33ml、亜硝酸n−アミル2.58g(22.0mmol)から実施例1と同様にして1.89g(収率 44%)の下記化合物(6)を得た。
【0283】
【化40】

【0284】
<ケトオキシムエステル体の合成>
化合物(6)1.00g(1.97mmol)、トリエチルアミン0.299g(4.
92mmol)、塩化メチレン50ml、塩化アセチル0.371g(4.73mmol)から実施例1と同様にして1.06g(収率 91%)の本発明の化合物(I−3)を得た。得られた化合物のNMRシフト値は次の通りであった。
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]1.49(t,3H)、2.33(s,3H)、2.78(t,4H)、3.18(t,4H),3.63(s,6H)、4.
43(q,2H)、7.49(d,2H)、8.32(d,2H)、8.97(s,1H)
【0285】
【化41】

【0286】
[合成例4](ケトオキシムエステル系化合物I−4の合成)
合成例1の塩化アセチルを塩化ベンゾイルに置き替えた他は合成例1と同様の方法で本発明の化合物(I−4)を得た。得られた化合物のNMRシフト値は次の通りであった。H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.77(t,4H)、3.21(
t,4H)、3.62(s,6H)、7.46−7.53(m,8H),7.6(m,2H)、8.09−8.15(m,8H)
【0287】
【化42】

【0288】
[合成例5](ケトオキシムエステル系化合物I−5の合成)
特許文献・特開平2007−269779の方法を参考にすることにより、化合物(I−5)を得た。得られた化合物のNMRシフト値は次の通りであった。
【0289】
【化43】

【0290】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.14(s,6H)、3.15(
m,8H)、7.2−7.5(m,14H)、8.06(d,4H)
[合成例6〜10](ケトオキシムエステル系化合物I−6〜10の合成)
合成例1〜4で反応試薬の量を変える以外は同様の方法で化合物I−6〜10を得た。得られた化合物の構造及びNMRシフト値は次の通りであった。
【0291】
【化44】

【0292】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.25(s,3H)、2.66(
t,2H)、3.04(t,2H)、3.60(s,3H)、7.16(d,2H)、7.41(m,3H)、7.51(m,2H)、7.94(m,2H)
【0293】
【化45】

【0294】
1H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]1.15(d,6H)、2.25(
s,3H)、2.61(t,2H)、3.03(t,2H)、4.93(m,1H)、7.17(d,2H)、7.41(m,3H)、7.51(m,2H)、7.94(m,2H)
【0295】
【化46】

【0296】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]1.48(t,3H)、2.33(
s,3H)、2.76(t,2H)、3.16(t,2H)、3.63(s,3H)、4.41(q,2H)、7.3〜7.5(m,4H)、8.18(dd,1H)、8.28(dd,1H)、8.95(d,1H)
【0297】
【化47】

【0298】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.74(t,2H)、3.18(
t,2H)、3.60(s,3H),7.20(d,2H)、7.41(m,3H)、7.52(m,4H),7.63(t,1H)、8.09(m,4H)
【0299】
【化48】

【0300】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]2.12(s,3H)、3.10−
3.15(m,4H)、7.17−7.20(m,3H)、7.25−7.34(m,4H)、7.42(m,3H),7.52(m,2H)、7.97(d,2H)
[合成例11〜12](オキシムエステル系化合物I−11及び12の合成)
合成例1及び6で得られたケトン体を公知の方法でオキシム化をした後、合成例1と同様の方法でアセチル化して化合物I−11及び12を得た。
【0301】
【化49】

【0302】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm]1.87(m、2H)、2.25(
s,3H)、2.38(t,2H)、2.87(t,2H)、3.67(s,3H)、7.24(m,2H)、7.35(m,3H)、7.42(d,2H)、7.64(d,2H)
【0303】
【化50】

【0304】
H−NMRスペクトル(CDCl) δ[ppm] 1.90(m、4H)、2.27
(s,6H)、2.40(t,4H)、2.89(t,4H)、3.68(s,6H)、7.37(d,4H)、7.70(d,4H)
[実施例1〜4・比較例1〜8](層間絶縁膜の作製と評価)
以下の組成にて、光重合性組成物を調製した。
(A)エチレン性不飽和基含有化合物 M−1 20重量部
M−2 31重量部
M−3 10重量部
(B)光重合開始剤 B−CIM 2重量部
上記合成例で合成した化合物I−1〜12
(C)アルカリ可溶性樹脂 P−1 36重量部
(D)界面活性剤 D−1 0.2重量部
(E)有機溶剤 E−1 160重量部
化合物I−1〜12の配合量は、表2に示した。
【0305】
上記の記号の意味は下記の通りである。
(A)エチレン性不飽和基含有化合物
M−1:共栄化学社製 エポキシエステル3000A
【0306】
【化51】

【0307】
M−2:日本化薬社製 KAYARAD DPHA。a=5,b=1とa=6,b=0の混合物
【0308】
【化52】

【0309】
M−3:大阪ガス化学社製 オグソールEA0200
【0310】
【化53】

【0311】
(B)光重合開始剤
B−CIM:保土ヶ谷化学工業社製 2,2‘−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’、5‘−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール
(C)アルカリ可溶性樹脂
P−1:スチレン/メチルメタクリレート/メタクリル酸3元共重合体(モル比:45/35/20)
酸価:110mg−KOH/g、Mw:7,000
(D)界面活性剤
D−1:住友スリーエム社製 フッ素系界面活性剤FC4432
(E)有機溶剤
E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
<層間絶縁膜の作製>
得られた光重合性組成物を、ガラス基板(旭硝子社製カラーフィルター用ガラス板「AN100」)上に塗布し、ホットプレート上で90℃にて90秒間乾燥して、乾燥膜厚4μmの塗布膜を得た。その後、塗布膜側から線幅5〜50μmの細線パターンを有するマ
スクを介して3kW高圧水銀灯を用いて露光した。露光条件としては、波長365nmの照度計で測定した像面照度が30mW/cmで、表2に記載の各感度となる露光量とした。
【0312】
次に2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用い、24℃で90秒間、現像液に基板を浸漬することにより現像を施し、更に純水にてリンスして露光膜を得た。得られた露光膜をコンベクションオーブンで220℃、1時間加熱することにより、熱硬化膜を得た。
上記光重合性組成物、露光膜、及び熱硬化膜(層間絶縁膜)について、各種評価を行なった。結果を表2に示した。
【0313】
<物性の測定方法>
(酸価)
アルカリ可溶性樹脂について、JIS−K0070(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に準拠して測定した。
<光重合性組成物の評価方法>
(感度)
光重合性組成物をガラス基板上に、乾燥膜厚がほぼ4μmとなるように塗布し、ホットプレート上で90℃、90秒間の条件でベークした。その後、高圧水銀灯により30mW/cm2の照度で露光した。露光条件としては、露光エネルギー量として、6、8、12
、16、24、32、48及び64mJ/cm2の計8点に設定して露光した。また、6
4mJ/cm2でも画像形成しなかった組成物については、さらに150mJ/cm2での露光も行った。露光後、24℃の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に60秒間浸漬し、純水でリンスし、残存する硬化膜(露光膜)の膜厚を測定した。得られた露光膜の膜厚を露光エネルギー量に対してプロットし、露光膜の膜厚が一定となる最小露光エネルギー量(それ以上露光エネルギー量を増加させても膜厚が増加しない最小の露光エネルギー量)を、感度(mJ/cm2)と定義した。64mJ/cm2でも画像形成しなかった組成物については、感度は暫定的に150mJ/cm2とした。150
mJ/cm2でも画像形成しなかった組成物については、「画像形成不可」と記載した。
【0314】
(解像力)
前記層間絶縁膜の形成手順にて得られた熱硬化膜を光学顕微鏡で観察し、解像している最小のマスクパターンサイズを解像力(μm)と定義した。
(残渣)
前記、解像力の評価で作成した熱硬化膜において、15μmのライン・アンド・スペースのスペース部分を光学顕微鏡により観察し、残渣の有無を評価した。
【0315】
(残膜率)
前記層間絶縁膜の形成手順にて得られた熱硬化膜の膜厚と露光前の膜厚の比を残膜率(%)とした。
(透過率)
前記層間絶縁膜の形成手順にて得られた熱硬化膜の光透過率を分光光度計で測定し、波長400nmにおける膜厚3μm当りの透過率(%)を求めた。
【0316】
<化合物の評価方法>
(吸光係数)
0.001重量%光重合開始剤/テトラヒドロフラン溶液を調製し、吸光度を分光光度計で測定した。波長365nmにおける吸光係数[ml/(mg・cm)]を求めた。
(吸収極大波長)
上記の吸光係数の測定において分光光度計で得られた吸収スペクトルから、波長280
〜400nmにおける吸収極大波長を読み取った。
【0317】
【表3】

【0318】
[参考例1](カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂P−2の合成)
500mL四つ口フラスコ中に、下記式(a)で表されるビスフェノールフルオレン型
エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール100mg、アクリル酸72.0g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300gを仕込み、これに25mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。
【0319】
次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。ここで溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mg−KOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。
酸価が目標に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、ビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0320】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート617.0gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート300gを加えて溶解した後、ビフェニル−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二酸無水物73.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。
【0321】
酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、酸価100mg−KOH/g、分子量(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量、以下同様)3,900のアルカリ可溶性樹脂P−2を得た。
【0322】
【化54】

【0323】
[参考例2](高分子分散剤溶液G−1の調製)
トリレンジイソシアネートの三量体(三菱化学社製、マイテックGP750A、樹脂固形分50重量%、酢酸ブチル溶液)32gと触媒としてジブチルチンジラウレート0.02gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)47gで希釈溶解した。
【0324】
攪拌下に、これに、片末端がメトキシ基となっている数平均分子量1,000のポリエチレングリコール(日本油脂社製、ユニオックスM−1000)14.4gと数平均分子量1,000のポリプロピレングリコール(三洋化成工業社製、サンニックスPP−1000)9.6gとの混合物を滴下した後、70℃でさらに3時間反応させた。
次に、N,N−ジメチルアミノ−1,3−プロパンジアミン1gを加え、40℃でさらに1時間反応させた。このようにして得られた高分子分散剤を含有する溶液のアミン価を中和滴定により求めたところ14mg−KOH/gであった。また、樹脂含有量をドライアップ法(150℃で30分間、ホットプレート上で溶剤を除去し重量変化量により樹脂濃度を算出)により求めたところ40重量%であった。
【0325】
[実施例5・比較例9](ブラックレジストの評価)
<カーボンブラックの分散液の調製>
カラーフィルタ用カーボンブラック(三菱化学社製、MA−220)50重量部、参考例2で調製した高分子分散剤G−1を固形分として5重量部の割合で、かつ固形分濃度が50重量%となるようにカーボンブラック、高分子分散剤溶液およびPGMEAを加えた。分散液の全重量は50gであった。これを攪拌機によりよく攪拌しプレミキシングを行った。
【0326】
次に、ペイントシェーカーにより25〜45℃の範囲で6時間分散処理を行った。ビーズは0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液と同じ重量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離した。
<光重合性組成物(レジスト液)の調製>
上述したカーボンブラックの分散液を用いて、固形分として下記表3の配合割合となるように各成分を加え、スターラーにより攪拌、溶解させ、ブラックレジスト液を調製した。
【0327】
<レジストの評価>
ブラックレジスト液をスピンコーターにてガラス基板(コーニング社製、7059)に塗布し、ホットプレートで80℃、1分間乾燥した。乾燥後のレジストの膜厚を触針式膜厚計(テンコール社製、α−ステップ)で測定したところ1μmであった。次に、このサンプルをマスクを通して高圧水銀灯で露光量を変えて像露光した。温度25℃、濃度0.8重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いてスプレー現像することによりレジストパターンを得た。
【0328】
感度、耐アルカリ性、遮光性及び膜ムラを下記の基準で評価し、表3に併記した。
(感度)
20μmのマスクパターンを寸法通り形成できる適正露光量(mJ/cm2)をもって
表示した。すなわち、露光量の少ないレジスト液は低露光量で画像形成が可能であるため高感度であることを示す。
【0329】
(耐アルカリ性)
20μmのマスクパターンを忠実に再現する露光量において、現像時間を80秒とした解像可能なレジスト最小パターン寸法を200倍の倍率で顕微鏡観察し、下記基準で評価した。
最小パターン寸法が10μm以下 :◎
最小パターン寸法が10μmを超え、15μmまで:○
最小パターン寸法が15μmを超える :×
(遮光性)
画線部の光学濃度(OD)をマクベス反射濃度計(コルモルグン社製、TR927)で測定した。なお、OD値は遮光能力を示す数値であり数値が大きい程高遮光性であることを示す。
【0330】
(膜ムラ)
目視により塗布表面を観察し評価した。
全くムラが見えず均一 :◎
若干ムラが見えるが問題ない :○
表3中、記号の意味は、前記実施例1〜4又は比較例1〜8と同様である他は、下記の通りである。
(B)光重合開始剤
I−13:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 光重合開始剤 IRGACURE OXE02
【0331】
【化55】

【0332】
(C)アルカリ可溶性樹脂
P−2:参考例1参照
(D)界面活性剤
D−2:住友スリーエム社製 フッ素系界面活性剤 FC−430
(E)有機溶剤
E−2:メトキシブチルアセテートとジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの80/20(重量比)混合物
(F)色剤(黒色顔料)
F−1:カーボンブラック(三菱化学社製、MA−220)
(G)顔料分散剤
G−1:参考例2参照
【0333】
【表4】

【0334】
[参考例3](アルカリ可溶性樹脂P−3の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート114.0gを500mlの4つ口フラスコに入れ、窒素バブリングを行いながら85℃まで昇温した。これにベンジルメタクリレート96.8g(0.55mol)、メタクリル酸33.3g(0.45mol)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 9.85g(0.06mol)をプロ
ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート96.45gに溶解し、4時間かけて滴下した。滴下後反応液を85℃に保ったままさらに2時間攪拌し、その後窒素バブリングを止めて100℃に昇温し1時間攪拌した。得られたアルカリ可溶性樹脂P−3の重量平均分子量は8,000、酸価175mg−KOH/gであった。
【0335】
[参考例4](アルカリ可溶性樹脂P−4の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部、及び2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部及びハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃、3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂P−4のGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8,400、酸価は80mg−KOH/gであった。
【0336】
[実施例6・比較例10](青色着色レジストの評価)
<青色顔料分散液の調製>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.4部、青色顔料P.B.15:6を12.0部、アクリル系分散剤(ビッグケミー社製DB2000)3.6部、上記参考例3で合成したアルカリ可溶性樹脂P−3を4.0部を混合し、攪拌機で3時間攪拌して固形分濃度が20重量%のミルベースを調製した。このミルベースを600部の0.5mmφのジルコニアビーズを用いビーズミル装置にて周速10m/s、滞留時間3時間で分散処理を施しP.B. 15:6の分散液を得た。
【0337】
<青色着色組成物の調製>
以上のようにして得られた分散液に、下記表4に示す配合比になるように上記参考例4で合成したアルカリ可溶性樹脂P−4、エチレン性不飽和基含有化合物、光重合性開始剤、界面活性剤を混合攪拌し、最終的な固形分濃度が20重量%になるように溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を加えて、青色カラーフィルター用の青色着色組成物(レジスト)を得た。
【0338】
<パターン(画素)の製造>
クロムが蒸着されたガラス基板に、青色着色組成物をそれぞれスピンコーターにて塗布し、80℃のホットプレートにて3分間プリベークを行った。
次に、高圧水銀灯により幅25μmの直線状マスクパターンを、150μmギャップで設置し、これを通して、サンプルを2kW高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2で露光し
た後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液を使用し、現像液温度23℃で0.25MPa圧でスプレー現像した。現像した時間は、あらかじめ測定した青色着色組成物の溶解時間の2倍とした。溶解時間は、上記同様にガラス基板(旭硝子社製 AN100)上に青
色着色組成物を塗布・乾燥し、露光した後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液を用いて、現像液温度23℃、圧力0.25MPaで現像したときに、未露光部の青色着色組成物が現像液へ完全に溶解し、基板が露出した時間を、その青色着色組成物の溶解時間とした。基板は現像後、十分な水でリンスした後、クリーンエアで乾燥した。その後、230℃のオーブンにて30分間ポストベークを行った。乾燥後膜厚は2.5μm程度であった。
【0339】
(線幅の測定)
上記手順で得られたパターンを光学顕微鏡で観測し、その線幅を測定した。線幅の太いものほど高感度である。
(色度の測定)
ガラス基板(旭硝子社製 AN100)上に上記着色組成物をスピンコーターで塗布し
た後、80℃分間乾燥した。次いで2kW高圧水銀灯を用いて60mJ/cm2で前面露
光処理を行った。その後パターン(画素)の製造と同様に現像、水洗処理を行い、230
℃オーブンにて30分間ポストベークを行った。乾燥後膜厚は2.5μm程度であった。こうして得られた塗布基板について、分光光度計(日立製作所U−3310)により透過スペクトルを測定し、C光源にて色度を算出した。
【0340】
表4中、記号の意味は、前記実施例1〜4又は比較例1〜8と同様である他は、下記の通りである。
(B)光重合開始剤
I−14:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 光重合開始剤 IRGACURE OXE01
【0341】
【化56】

【0342】
(C)アルカリ可溶性樹脂
P−3:参考例3参照
P−4:参考例4参照
(D)界面活性剤
D−3:大日本インキ化学工業社製、フッ素系界面活性剤 F−475
(F)色剤(青色顔料)
F−2:青色顔料P.B.15:6
(G)顔料分散剤
G−2:アクリル系分散剤(ビッグケミー社製 DB2000)
【0343】
【表5】

【0344】
[実施例7][比較例11、12](顔料系青色画素用光重合性組成物(青色着色組成物)の評価)
[参考例5](アルカリ可溶性樹脂P−5の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート114.0gを500mlの4つ口フラスコに入れ、窒素バブリングを行いながら85℃まで昇温した。これにベンジルメタクリレート96.8g(0.55mol)、メタクリル酸33.3g(0.45mol
)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル) 9.85g(0.06mol)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート96.45gに溶解し、4時間かけて滴下した。滴下後反応液を85℃に保ったままさらに2時間攪拌し、その後窒素バブリングを止めて100℃に昇温し1時間攪拌した。得られたアルカリ可溶性樹脂P−5の重量平均分子量は8000、酸価175mgKOH/gであった。
【0345】
[参考例6](アルカリ可溶性樹脂P−6の製造)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部及びトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA−513M)66重量部、及び2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル8.47重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部及びハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃、3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂P−6のGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8,400、酸価は80mgKOH/gであった。
【0346】
<青色顔料分散液の調製>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.4重量部、青色顔料C.I.ピグメントブルー(P.B.)15:6を12.0重量部、アクリル系分散剤(ビッグケミー社製DB2000)3.6重量部、上記参考例5で合成したアルカリ可溶性樹脂P−5を4.0重量部を混合し、攪拌機で3時間攪拌して固形分濃度が20重量%のミルベースを調製した。このミルベースを600重量部の0.5mmφのジルコニアビーズを用いビーズミル装置にて周速10m/s、滞留時間3時間で分散処理を施しP.B. 15:
6の分散液を得た。
【0347】
<顔料系青色着色組成物の調製>
以上のようにして得られた分散液に、下記表5に示す配合比になるように上記参考例6で合成したアルカリ可溶性樹脂P−6、エチレン性不飽和基含有化合物、光重合開始剤、界面活性剤を混合攪拌し、最終的な固形分濃度が20重量%になるように溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を加えて、青色画素用の青色着色組成物を得た。
【0348】
<パターン(画素)の製造>
実施例6と同様にして、パターン(画素)の製造を行った。
また、実施例6と同様にして、(線幅の測定)、(密着性の評価)、(色度の測定)を行い、その結果を表5に纏めた。
更に、下記(直線状パターンのかけの測定)を行い、これも併せて表5に纏めた。
【0349】
(直線状パターンのかけの測定)
前記<パターン(画素)の製造>と同様に高圧水銀灯により幅50μm、長さ3mmの直線状マスクパターンを通してサンプルを80mj/cm2で露光した後、0.04重量
%水酸化カリウム水溶液を使用し、現像液温度を23℃に保ち、0.25MPa圧で下記で規定した溶解時間の4倍の時間でスプレー現像した。
【0350】
このようにして得られたパターン10本を、光学顕微鏡を用い10倍で観察し、線の縁の窪みをかけの数として数えた。再現性を確認するため、これを2回繰り返し、平均をとった。
上記溶解時間とは、(色度の測定)と同様に、洗浄したガラス基板AN100(旭硝子社製)上に着色組成物を塗布・乾燥し、露光した後、0.04重量%水酸化カリウム水溶液を用いて、現像液温度23℃、圧力0.25MPaでスプレー現像したときに、未露光部の着色組成物が現像液へ完全に溶解し、基板が露出した時間を、その着色組成物の溶解時間とした。
【0351】
【表6】

【0352】
DETX: ジエチルチオキサントン(日本化薬社製)
Irgacure907:Irgacure907:2−メチル−1−[4−(メチルチ
オ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製)
表5に示すが如く、本発明のケトオキシムエステル化合物を含有する光重合性組成物を用いて形成された画素は、線幅が広く、またかけ数が小さい。
【0353】
[実施例8・比較例13](染料系青色画素用光重合性組成物(青色着色組成物)の評価)
(参考例7:染料Aの合成)
【0354】
【化57】

【0355】
反応1:化合物17(10g)のN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)溶液を氷浴で冷却し、水素化ナトリウム(60%、4.3g)を加え、しばらく攪拌後、化合物18(6.5g)を少しずつ添加した。室温で5時間攪拌後、水を加え、ジクロロメタン抽出を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製してBP2(3.1g)を得た。
【0356】
【化58】

【0357】
反応2:BP2(5.61g)、化合物19(2.65g)、トルエン(15ml)の混合物にオキシ塩化リン(1.8ml) を加え、115℃で2時間攪拌した。室温に戻した後、飽和食塩水(30ml)を加え、クロロホルムで2回抽出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300g、クロロホルム/メタノール1/0−10/1/7/1)で精製し、得られた固体をヘキサンで洗浄してC7(9.23g)を得た。
【0358】
反応3:化合物20(5.00g)、acid blue 80(2.56g)、メタノール(50ml)の混合物を40℃で1時間攪拌した後、減圧濃縮し、水を加え固体を濾取した。固体をメタノール/水:1/3(200ml)で洗浄し、再度メタノール/水:1/3(200ml)で洗浄して、染料A(5.90g)を得た。
<染料系青色着色組成物の調整>
下記表6中の実施例8、比較例13になるように、染料A、アルカリ可溶性樹脂P−6
、エチレン性不飽和基含有化合物、光重合開始剤、界面活性剤を混合攪拌し、最終的な固形分濃度が20重量%になるように溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を加えて、青色画素用の青色着色組成物を得た。
【0359】
<パターン(画素)の製造>
実施例6と同様にして、パターン(画素)の製造を行った。
また、実施例6と同様にして、(色度の測定)を行い、その結果を表6に纏めた。
【0360】
【表7】

【0361】
EAB−F:ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製)
Irgacure907:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製)
【産業上の利用可能性】
【0362】
本発明のケトオキシムエステル系化合物は、新規かつ高感度な光重合開始剤として利用することができる。このケトオキシムエステル系化合物をエチレン性不飽和基含有化合物と組み合わせることにより、高感度かつ高透過率で、特に層間絶縁膜用途に有用な光重合性組成物を構成することができる。
また、さらに色材と組み合わせることによりカラーフィルター用途に有用な光重合性組成物を構成することができる。特に、このケトオキシムエステル系化合物を光重合開始剤として黒色顔料と組み合わせて用いた光重合性組成物は、薄膜において高遮光性でありながら感度、解像性に優れるため、低コストで高品質の樹脂BMを形成することができる。
【0363】
本発明の光重合性組成物を用いて樹脂BMを形成したカラーフィルターは、精度、平坦性、耐久性において優れるため、液晶表示素子の表示品位を向上させることができる。また、製造工程およびカラーフィルター自体にも有害な物質を含まないため、人体に対する危険性を低減し環境安全性が向上する。
本発明の光重合開始剤及び光重合性組成物は、層間絶縁膜用、カラーフィルターの画素用及びBM用に限定されることなく、オーバーコート用、リブ(液晶配向制御突起)用及
びフォトスペーサー用などの透明な光重合性組成物にも利用可能であり、その応用技術分野は極めて広範である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されることを特徴とするケトオキシムエステル系化合物。
【化1】

(上記一般式(I)において、Xは、直接結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、−(CH=CH)α−、及び−(C≡C)β−(α及びβは、それぞれ独立に1〜5の整数を表す。)の群からなる2価の有機基であり、
は、芳香環又はヘテロ芳香環を含むn価の有機基を表す。
nは、2〜6の整数を表す。
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルオキシカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルオキシカルボニル基、炭素数7〜12のアリールオキシカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルケニルチオカルボニル基、炭素数3〜12のアルキニルチオカルボニル基、炭素数7〜12のアリールチオカルボニル基、炭素数3〜12のヘテロアリールチオカルボニル基、炭素数2〜12のアルキルチオアルコキシ基、−O−N=CR4041、−N(OR42)−OCO−R43(R40〜R43は、
それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表す。)又は下記一般式(II)で表される基
【化2】

(R及びRは、互いに独立に、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。)を表し、
は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜25のアルケノイル基、炭素数4〜8のシクロアルカノイル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、炭素数2〜20のヘテロアリール基又は炭素数2〜20のアルキルアミノカルボニル基を表す。
なお、一分子中に含まれるn個の
【化3】

は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(I)において、Xが置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基であり、
が置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基又は炭素数1〜12のアルキルチオ基であることを特徴とする請求項1に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)が、下記一般式(III)又は(IV)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【化4】

【化5】

(上記一般式(III)において、Zは酸素原子、硫黄原子または−NR31−を表し、R31は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基又は炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
上記一般式(III)及び(IV)において、R〜R30は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
〜R15及びR16〜R30は、互いに結合して環構造を形成してもよい。
但し、R〜R15及びR16〜R30の各々n個(nは2以上6以下の整数を表す。)は、下記一般式(V)で表される基を表す。
【化6】

(上記一般式(V)において、X、R及びRは、前記一般式(I)におけると同義である。))
【請求項4】
前記一般式(III)が、下記一般式(VI)で表されることを特徴とする請求項3に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【化7】

(上記一般式(VI)において、R50〜R55は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数7〜20のアリーロイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数3〜20のヘテロアリーロイル基、炭素数3〜20のアルコキシカルボニルアルカノイル基、炭素数8〜20のアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数5〜20のヘテロアリールオキシカルボニルアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基、−SR32、−SOR33、−SO34又は−NR3536を表す。
ただし、R32〜R34は、各々独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜8のアルカノイル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基を表し、
35及びR36は、互いに独立に、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基又は炭素数6〜20のアリール基を表す。なお、R35及びR36は、直接又は酸素原子を介して環を形成していてもよい。
56は、水素原子、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜4のヒドロキシルアルキル基、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(III)が、下記一般式(VII)で表されることを特徴とする請求項3に記載のケトオキシムエステル系化合物。
【化8】

(上記一般式(VII)において、R57〜R62は、前記一般式(VI)におけるR
〜R55と同義である。
は、前記一般式(V)で表される基を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のケトオキシムエステル系化合物からなることを特徴とする光重合開始剤。
【請求項7】
(A)エチレン性不飽和基含有化合物及び(B)光重合開始剤を含有し、(B)光重合開始剤が請求項1〜5のいずれか一項に記載のケトオキシムエステル系化合物を含有することを特徴とする光重合性組成物。
【請求項8】
更に(F)色材を含有することを特徴とする請求項7に記載の光重合性組成物。
【請求項9】
更に(G−1)顔料分散剤を含有することを特徴とする請求項8に記載の光重合性組成物。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の光重合性組成物により形成されたことを特徴とする硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を備えることを特徴とする液晶表示装置。


【公開番号】特開2011−105713(P2011−105713A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235943(P2010−235943)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】