説明

ケラチン繊維の損傷評価方法

色測定及び面積測定を使用する、ケラチン繊維の損傷評価方法。この方法は、ケラチン繊維の損傷の程度を評価するために有用であり、また、異なる由来の繊維、異なる繊維の部分、並びに/又は異なる化粧品処置、化学的処置、及び/若しくは機械的処置によって処置された繊維の、損傷を比較するためにも有用である。この方法はまた、処置の有効性についての広告内容を裏付けるためにも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年3月2日出願の、米国仮出願第61/309,457の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
第1の態様では、本発明は、色測定及び面積測定を使用する、ケラチン繊維の損傷を評価する方法に関する。第2の態様では、本発明は、上述の損傷評価方法を使用する、異なるケラチン繊維の損傷を比較する方法に関する。これらの方法は、ケラチン繊維の損傷の程度を、定量的及び/又は定性的に評価するために有用であり、また、異なる由来の繊維、異なる繊維の部分、並びに/又は異なる化粧品処置、化学的処置、及び/若しくは機械的処置によって処置された繊維の損傷を比較するためにも有用である。これらの方法はまた、処置の有効性についての広告内容を裏付けるためにも有用である。
【背景技術】
【0003】
ケラチン繊維、具体的には、ヒトの毛髪繊維は、経時的に損傷し得る。損傷は、空気の汚染、日光への曝露、水プール、及び/又は雨を含めた、環境要因によって引き起こされる場合がある。損傷はまた、グルーミング(化粧品)処置、化学的処置、及び/又は機械的処置を、繊維に適用することによっても引き起こされる場合がある。毛髪繊維が損傷すると、その毛髪繊維は、例えば、「まとまりのない髪」、「枝毛」、及び/又は退色といった、望ましくない状態を有し得る。
【0004】
毛髪に生じた損傷の程度を評価することは、ケラチン繊維に対しての、様々な環境要因の影響、並びに化粧品(グルーミング)処置、化学的処置、及び機械的処置の影響を理解する目的において、興味深い。そのような評価はまた、毛髪の損傷の予防及び/又は修復に使用される処置の有効性を立証する目的においても、興味深い。種々の解析方法を使用する、毛髪の損傷を評価するためのいくつかの試みが、これまでに報告されている。そのような試みとしては、例えば、毛髪の体積測定を使用する評価、及び毛髪の色測定を使用する評価が挙げられる。しかしながら、このような評価は、例えば、異なるコンディショナー製品間での有効性の差異といった、いくつかの差異を示すには、検出性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第61/309,457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、ケラチン繊維、具体的には、ヒトの毛髪繊維の損傷を評価する方法を提供する必要性が存在する。具体的には、化粧品処置、化学的処置、及び/又は機械的処置を使用して処置されたケラチン繊維の損傷を評価する方法を提供する必要性が存在する。更には、異なるケラチン繊維の損傷、例えば、処置されていない繊維の損傷と、処置された繊維、又は異なる処置によって処置された繊維の損傷を、評価及び比較する方法を提供する必要性も存在する。化粧品組成物(具体的には、コンディショニング組成物)に関しては、このような組成物の、毛髪繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する有効性を評価する方法を提供する必要性が存在する。毛髪繊維の損傷の予防及び/又は処置に関する、2種以上の化粧品組成物、具体的にはコンディショニング組成物の、有効性を比較する方法を提供する必要性も存在する。最終的には、毛髪繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、組成物の有効性についての(又は、比較組成物に対するこの組成物の優位性についての)広告内容を裏付ける方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
−少なくとも1つのケラチン繊維のサンプルを提供する工程と、
−サンプルの選択部分の色を測定し、色値を提供する工程と、
−サンプルの選択部分の面積を測定し、面積値を提供する工程と、
−色値を面積値で除算することにより、損傷値を提供する工程と、を含む、ケラチン繊維の損傷評価方法に関する。
【0008】
本発明はまた、
−少なくとも2つの異なるケラチン繊維のサンプルを提供する工程と、
−各サンプルの選択部分の色を測定し、各サンプルの色値を提供する工程と、
−各サンプルの選択部分の面積を測定し、各サンプルの面積値を提供する工程と、
−色値を面積値で除算することにより、各サンプルの損傷値を提供する工程と、
−サンプルの損傷値を比較する工程と、を含む、異なるケラチン繊維の損傷を評価及び比較する方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様では、本発明は、繊維の面積測定と繊維の色測定との組み合わせによる、ケラチン繊維の損傷評価方法に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、上述の方法を使用することによって、異なるケラチン繊維の損傷を比較する方法に関する。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、繊維の面積測定と繊維の色測定との組み合わせにより、本発明の方法が、ケラチン繊維の損傷評価の改善された検出性をもたらすことを見出した。
【0012】
ケラチン繊維サンプル
本発明による、この方法は、少なくとも1つのケラチン繊維のサンプルを提供する工程(いわゆる、「提供工程」)を含む。このサンプルは、約500の繊維〜約150,000の繊維、好ましくは、約800の繊維〜約100,000の繊維、より好ましくは、約1,000の繊維〜約30,000の繊維を含み得る。これらの繊維は、互いに束ねられ、その束が少なくとも1つの自由端を有してもよい。通常、1つのサンプルは、同一の由来(例えば、同一人物、及び身体の同一領域)の繊維、及び/又は同一の部分(例えば、毛髪繊維の、根元端部又は先端部)の繊維を含み、並びに/あるいは同一の化粧品処置、化学的処置、及び/又は機械的処置が施されている。少なくとも2つの、好ましくは2つ〜4つの、より好ましくは2つの、異なるケラチン繊維のサンプルを提供する場合、「異なるサンプル」とは、繊維の由来、繊維の部分、及び/又は繊維に適用される処置が、互いに異なるサンプルを意味する。
【0013】
繊維は、毛髪の色測定及び毛髪の面積測定の双方を含む、本発明の損傷評価方法にとって、十分な長さのものとすることができる。繊維は、好ましくは、3cm〜30cmの長さ、より好ましくは、5cm〜25cmの長さ、更により好ましくは、5cm〜10cmの長さを有する。繊維が互いに束ねられる場合、その繊維は、束ねられるポイントからの上述の長さを有することが好ましい。
【0014】
繊維は、哺乳類の毛から、好ましくはヒトの毛髪から、より好ましくはヒト女性の毛髪から、選択することができる。ヒトの毛髪の由来は、白人、アフリカ人、アジア人、又は任意の他の由来であってもよい。
【0015】
毛髪繊維は、身体の任意の部位から、例えば、脚、腕、胴体、顔面又は頭皮から得ることができる。毛髪繊維は、頭皮から得ることが好ましい。
【0016】
繊維が哺乳類の毛である場合、本発明の損傷評価は、インビボで、切除することなく毛髪サンプルとして哺乳類の毛を用いて、行なうことができる。
【0017】
繊維サンプルの選択部分を、本発明の損傷評価方法のために使用する。いずれの部分も使用することができ、損傷の程度の理解の観点から、並びに、使用される場合は、処置の有効性の理解の観点から、繊維末端部の先端部分が好まれ得る。
【0018】
色測定及び面積測定は、選択部分に関して撮影される画像に基づいて、行なうことができる。繊維末端部の先端部分を、測定のために使用する場合、画像は、繊維サンプルの底部側から撮影することができる。
【0019】
色測定及び面積測定の他の詳細を、以下に説明する。
【0020】
色測定及び面積測定
本発明の損傷評価方法は、色測定の工程、すなわち、サンプルの選択部分の色を測定し、色値を提供する工程を含む。
【0021】
本発明の損傷評価方法はまた、面積測定の工程、すなわち、サンプルの選択部分の面積を測定し、面積値を提供する工程も含む。
【0022】
色測定及び面積測定は、サンプルの選択部分の画像に基づいて行なうことができる。
【0023】
色測定及び面積測定は、例えば、以下の方法及び装置によって行なうことができる。
1.1)ライトボックス、2)コンピュータ、3)カメラ、4)画像解析用ソフトウェア、5)サンプルホルダーを含む、色測定システムを使用する。
2.ライトボックスは、少なくとも1つのライト、好ましくは、D65標準光源などの、標準デイライトを内側に含む。このようなライトを、測定の対象領域であるサンプルの選択部分が、少なくとも照射されるように、配置する。好ましくは、2つの標準デイライトを、ライトボックスの左上部及び右上部に設置することができる。このようなライトのスイッチを入れる。好ましくは、ライトを覆うように、ディフューザーを配置する。
3.全ての機器、すなわち、ライトボックス、コンピュータ、カメラ、好ましくはデジタルカメラを、作動させる。
4.GretaMcbethホワイトバランスチェッカーのような、ホワイトバランスチェッカーを、ライトボックス内の特定の位置に置き、ホワイトバランスを達成する。
5.測定される毛髪サンプル部分がカメラに向けて位置決めされるように、サンプルホルダーを使用して、サンプルをライトボックス内に配置する。
6.較正用の色度標準である、GretaMcbethカラーチェッカーのようなカラーチェッカーチャートを、サンプルホルダーの隣に配置する。
7.サンプルの画像、特に選択部分の画像を、カメラで撮影する。このカメラは、自動焦点機能を有し得、カメラ遠隔制御ソフトウェアによって制御することができる。
8.この画像を、「補正前の画像の生データファイル(RAW)」としてファイル化する。
9.平均の色値を得るために、サンプルの画像は、1サンプル当たり数回撮影してもよい。
10.全てのRAWファイル(「補正前の画像の生データファイル(RAW)」を、ソフトウェアによって、TIFFファイル「タグ画像ファイル形式(TIFF)」「Joint Photographic Experts Group(JPEG)」などの画像ファイルに変換する。より高感度の画像を考慮すると、TIFFファイルが好ましい。
11.LabView(National Instrument Co)及びImage ProPlus(Media Cybernetics Inc.)などの画像解析用ソフトウェアを、以降で使用する。TIFF画像ファイルを開き、GretaMcbethカラーチェッカーチャートのような、ホワイトバランスカラーチェッカーチャートを使用して、ホワイトバランスを得る。
12.次いで、カラーチェッカーチャート上の「グレー標準」チップを選択し、画像の色較正を行なう。次に、測定のための、画像内のサンプルの部分を選択する。このような部分は、特にサンプルがヒトの毛髪を含む場合、先端部分であることが好ましい。
13.白色度をグレー標準と比較し、グレースケールよりも低い値を有するピクセルを抽出する。色値は、選択部分における、白色度の限界値(グレースケール:例えば、白人の毛髪に関しては200)よりも低い値を有するピクセルの、積分面積である。
14.上記の12の選択領域の範囲内で、グレースケールが白色較正標準よりも大きいピクセルを抽出する。グレースケールが、グレースケール標準(例えば、白人の毛髪に関しては255)よりも大きい全てのピクセル面積を積分することによって、面積値を算出する。
【0024】
損傷値
本発明の損傷評価方法は、色値を面積値で除算することにより、損傷値を提供する工程を含む。より大きい損傷値を有するサンプルは、より損傷していると見なされる。
【0025】
処置
本方法はまた、サンプルを処置する工程(いわゆる、「処置工程」)も含み得る。この処置工程は、好ましくは、提供工程の後、かつタグ形成工程の前に実行される。処置工程は、任意の好適な化粧品組成物、化学的処置、及び/又は機械的処置を使用して、サンプルを処置することにより、実行することができる。
【0026】
この工程は、化粧品組成物を、ケラチン繊維に対して適用することにより、実行することができる。シャンプー、コンディショニング組成物、ヘアリンスオフトリートメント、ヘアリーブオントリートメント、スタイリング組成物などの、当該技術分野において既知の、いずれの好適な化粧品組成物も使用することができる。例えば、商標名Pantene(登録商標)及びHead & Shoulders(登録商標)の、いずれの市販のシャンプー、コンディショナー、ヘアリンスオフトリートメント、及びヘアリーブオントリートメントも使用することができる。
【0027】
1つの組成物のみを、繊維に対して適用してもよい。別の方法としては、2つ又はいくつかの組成物を、同時に又は順次に、適用してもよい。更には、各組成物の適用の前、及び/又は適用の後に、繊維を更に、湿潤させ、すすぎ洗いし、及び/又は乾燥させてもよい。一実施形態では、この処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いで繊維を乾燥させることを含む。別の実施形態では、処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでコンディショニング組成物で繊維を処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次いで繊維を乾燥させることを含む。別の実施形態では、処置工程は、シャンプーで繊維を処置(洗浄)し、次いで洗浄した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでコンディショニング組成物で繊維を処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次いでヘアリンスオフトリートメントで繊維を少なくとも1回処置し、次いで処置した繊維を水ですすぎ洗いし、次いで繊維を乾燥させることを含む。
【0028】
別の方法として、又は補足的に、この工程は、化学的処置を使用して繊維を化学的に処置することにより、実行することができる。パーマネントウェーブ処置、ブリーチ処置、及び/又は色染め処置などの、当該技術分野において既知の、いずれの好適な化学的処置も使用することができる。
【0029】
別の方法として、又は補足的に、この工程は、繊維を機械的に処置することにより、実行することができる。ブラッシング、コーミング、タオル摩擦、及び/又はブロー乾燥などの、当該技術分野において既知の、いずれの好適な機械的処置も使用することができる。
【0030】
比較
本発明の方法はまた、サンプルの損傷値を比較する工程(いわゆる、「比較工程」)も含み得る。
【0031】
少なくとも2つのサンプルが提供される場合、
【0032】
一実施形態では、一方のサンプルは、繊維の先端部分を含み得、他方のサンプルは、同一繊維の根元部分を含み得る。同一繊維の、異なる部分を提供して比較すること、具体的には、先端と根元とを提供して比較することにより、繊維の成長につれての、経時的な損傷の程度の差異を評価することが可能になる。
【0033】
この比較工程はまた、繊維に対する1つの処置の効果を、未処置のものと比較するためにも有益である。一実施形態では、一方のサンプルは、未処置の繊維を含み得、他方のサンプルは、化粧品組成物で処置された繊維を含み得る。他方のサンプルは、シャンプー、及び/又はコンディショニング組成物、及び/又はヘアリンスオフトリートメント、及び/又はリーブオントリートメント、及び/又は任意の他の好適な化粧品組成物で処置することができる。処置された繊維と未処置の繊維との比較は、シャンプーなどの組成物の、毛髪に対する損傷効果を評価するために、また対照的に、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、コンディショニング組成物などの組成物の利益を評価するために、有益である。
【0034】
比較工程は更に、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、少なくとも2つの異なる処置の有効性を比較するために有益である。一実施形態では、サンプルは、異なる化粧品組成物で処置することができる。例えば、網羅的なものではないが、(1)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、他方のサンプルを別のシャンプーで処置することができる。(2)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができる。(3)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで別のコンディショナーで処置することができる。(4)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置し、次いでリンスオフトリートメントで処置することができる。(5)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを同じシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置し、次いでリーブオントリートメントで処置することができる。(6)一方のサンプルを1つのシャンプーで処置し、次いで1つのコンディショナーで処置することができ、他方のサンプルを別のシャンプーで処置し、次いで同じコンディショナーで処置することができる。(7)一方のサンプルを1つのシャンプーで1回処置し、他方のサンプルを同じシャンプーで2回又は数回処置することができる。(8)一方のサンプルを1つのコンディショナーで1回処置し、他方のサンプルを同じコンディショナーで2回又は数回処置することができる。異なる処置がなされた繊維を比較することは、異なるシャンプーの損傷効果の比較のために有益であり((1)を参照)、コンディショナーの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((2)を参照)、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する、コンディショニング組成物の利益の比較のために有益であり((3)を参照)、リンスオフトリートメントの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((4)を参照)、リーブオントリートメントの、シャンプー処置に対する緩和効果の評価のために有益であり((5)を参照)、1つのコンディショナーの、異なるシャンプー処置に対する緩和効果の比較のために有益であり((6)を参照)、繊維に対する反復処置の効果の比較のために有益である((7)及び(8)を参照)。
【0035】
比較工程は、例えば、化学的処置及び/又は機械的処置の効果を比較するために有益である。例えば、一実施形態では、一方のサンプルは、未処置の繊維を含み得、他方のサンプルは、化学的に処置されている繊維を含む。別の方法としては、サンプルは、異なる化学的処置で処置された繊維を含み得る。別の実施形態では、一方のサンプルは、未処置の繊維を含み得、他方のサンプルは、機械的に処置されている繊維を含む。別の方法としては、サンプルは、異なる機械的処置で処置された繊維を含み得る。
【0036】
広告内容の裏付け
本発明の方法はまた、上述の評価を利用して広告内容を裏付ける工程(いわゆる、「広告工程」)も含み得る。2つの異なるサンプル間の比較の結果に基づいた広告工程を行なうことは、例えば、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関する処置の有効性の広告のために、並びに/あるいは損傷の予防及び/又は修復に関する、1つの処置の、別の処置に対する優位性の広告のために、有益である。1つの処置(例えば、コンディショニング組成物)を別の処置と比較して広告する場合、本発明の方法を使用して得られたデータ及び/又は写真は、繊維の損傷の予防及び/又は修復に関して、上述の処置が他の処置と比べて優れた効能を提供するという広告内容の、裏付け及び/又は立証のために使用することができる。
【実施例】
【0037】
材料
サンプル:長さ15cmの、白人女性の約3,300本の毛髪繊維の束。
【0038】
ラウレス硫酸ナトリウム(6.0%)、ラウリル硫酸ナトリウム(6.0%)、コカミドプロピルベタイン(1%)、コカミドMEA(0.85%)、ジステアリン酸グリコール(1.5%)、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(0.4%)、ジメチコン(3%)、防腐剤(0.6%)、残部の(100%とする)水を含む、pH=5〜7のシャンプー組成物。
【0039】
コンディショニング組成物:ベヘントリモニウムメトサルフェート/イソプロピルアルコール(2.8%)、脂肪族アルコール(6.5%)、末端アミノジメチコン(2%)、防腐剤(0.6%)、残部の(100%とする)水を含む、pH=5〜7の組成物。
【0040】
化合物の百分率は、組成物の総重量当たりの重量パーセントである。
【0041】
プロトコル
実行される方法に応じて、工程の一部、例えば処置工程は、省略される場合がある。
【0042】
1.処置工程
以下に説明するように、シャンプーを適用し、次いで、必要な場合、コンディショニング組成物を適用することによって、サンプルを処置する。これらのサンプルは、以降は、「処置サンプル」と称される。
1.1.サンプルをバーに掛ける
1.2.サンプルを15秒湿潤させ、そのサンプルを絞って過剰な水を除去する
1.3.シャンプー製品0.2mLをサンプルに適用し、30秒間しごく
1.4.サンプルを30秒間すすぎ洗いする
1.5.1.3.〜1.4.のプロトコルを繰り返す
1.6.コンディショナーを適用する場合、コンディショナー0.2mLをサンプルに適用し、30秒間しごく
1.7.コンディショナーを適用する場合、サンプルを30秒間すすぎ洗いする
1.8.制御湿度及び制御温度(湿度45%、温度21℃)中に、一晩の間サンプルを留置する。
【0043】
2.コーミング工程
2.1.処置サンプルを機械に掛ける(表面コーミングだけではなく、毛髪が適切にコーム内へ挿入されることを確認する)
2.2.サンプルの第1側面を、12サイクルにわたってコーミングする(14〜15サイクル/分)
2.3.サンプルを反対側面に転換し、サンプルを13サイクルにわたってコーミングする(14〜15サイクル/分)
2.4.工程2.2.及び工程2.3を3回繰り返す
2.5.保留スイッチを、制御湿度及び制御温度の、湿度45%、温度21℃に、少なくとも一晩の間、維持する。
【0044】
3.測定:
3.1.1)ライトボックス、2)コンピュータ、3)カメラ、4)画像解析用ソフトウェア、5)サンプルホルダーを含む、色測定システムを使用する。
3.2.ライトボックスは、ライトボックスの左上部及び右上部に設置される、2つのD65標準光源を含む。ライトを覆うように、ディフューザーを配置する。Nikon D2Xsデジタルカメラもまた、ライトボックスの上部に設置する。
3.3.全ての機器、すなわち、光源、コンピュータ、及びデジタルカメラを、作動させる。
3.4.GretaMcbethホワイトバランスチェッカーを、ライトボックス内の特定の位置に置き、ホワイトバランスを達成する。
3.5.ライトボックスの上部に設置したデジタルカメラに、毛髪の先端が向けられるように、サンプルホルダーを使用して、毛髪サンプルをライトボックス内に配置する。毛髪サンプルは、先端から2cmの位置で保持する。
3.6.GretaMcbethカラーチェッカーを、サンプルホルダーの隣に配置する。
3.7.サンプルの画像を、遠隔制御ソフトウェアによって、かつ自動焦点機能を使用して、カメラで撮影する。
3.8.この画像を、「補正前の画像の生データファイル(RAW)」としてファイル化する。
3.9.平均の色値を得るために、サンプルの画像は、1サンプル当たり数回撮影してもよい。
3.10.全てのRAWファイルを、TIFFファイルに変換する。
3.11.画像解析用ソフトウェア、Image ProPlus(Media Cybernetics Inc.)を、以降で使用する。TIFF画像ファイルを開き、GretaMcbethカラーチェッカーチャートを使用して、ホワイトバランスを得る。
3.12.次いで、カラーチェッカーチャート上の「グレー標準」L20チップを選択し、画像の色較正を行なう。次に、測定のための、画像内のサンプルの先端部分を選択する。
3.13.白色度をグレー標準と比較し、グレースケールよりも低い値を有するピクセルを抽出する。色値は、選択部分における、白色度の限界値(グレースケール:200)よりも低い値を有するピクセルの、積分面積である。
3.14.上記の15の選択領域の範囲内で、グレースケールが白色較正標準よりも大きいピクセルを抽出する。グレースケールが、グレースケール標準(255)よりも大きい全てのピクセルの面積を積分することによって、面積値を算出する。
3.15.色値を面積値で除算することによって、損傷値を算出する。
【0045】
異なる処置がなされた毛髪先端部分の繊維の損傷の、評価及び比較
1つのサンプルが提供される。このサンプルを、最初にシャンプーのみによって処置し、次にコンディショナーと共に処置する。シャンプー及びコンディショナーの詳細な配合、並びに処置及び測定の詳細な方法は、上記で説明されている。
【0046】
【表1】

【0047】
上記の表で与えられたデータが示すように、シャンプー及びコンディショナーの双方によって処置されたサンプルの損傷値は、シャンプーのみによって処置されたサンプルの損傷値よりも、有意に低い(信頼水準95%で、一元配置分散分析を使用)。
【0048】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0049】
相互参照される若しくは関連する、あらゆる特許又は出願を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいて、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0050】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも1つのケラチン繊維のサンプルを提供する工程と、
−前記サンプルの選択部分の色を測定し、色値を提供する工程と、
−前記サンプルの前記選択部分の面積を測定し、面積値を提供する工程と、
−前記色値を前記面積値で除算することにより、損傷値を提供する工程と、
を含む、ケラチン繊維の損傷評価方法。
【請求項2】
前記ケラチン繊維がヒトの毛髪である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択部分が、前記サンプルの末端部先端である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、前記サンプルの前記選択部分の画像を撮影する工程を更に含み、前記色測定及び面積測定が、前記画像に基づいて行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択部分が、前記サンプルの末端部先端であり、前記画像が、前記サンプルの底部側から撮影される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
−少なくとも2つの異なるケラチン繊維のサンプルを提供する工程と、
−各サンプルの選択部分の色を測定し、各サンプルの色値を提供する工程と、
−各サンプルの前記選択部分の面積を測定し、各サンプルの面積値を提供する工程と、
−前記色値を前記面積値で除算することにより、各サンプルの損傷値を提供する工程と、
−前記サンプルの前記損傷値を比較する工程と、
を含む、異なるケラチン繊維の損傷を評価及び比較する方法。
【請求項7】
前記サンプルが、前記繊維の由来、前記繊維の部分、及び/又は前記繊維に適用される処置によって、互いに異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
一方のサンプルが、未処置の繊維を含み、他方のサンプルが、化粧品組成物、化学的組成物、及び/又は機械的組成物で処置された繊維を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルが、異なる化粧品処置、化学的処置、及び/又は機械的処置で処置される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記比較を利用して、処置の有効性についての広告内容を裏付ける工程を更に含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2012−516760(P2012−516760A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503796(P2012−503796)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/026569
【国際公開番号】WO2011/109321
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】