説明

ケースおよびケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置

【課題】部品成形時の反りや二次工程で発生する反りが発生しても高品質な超音波溶着を実現でき、かつコスト高とならないケースおよびケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】2以上の部品を備え、該2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が溶着により接合され、当該溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、前記突出部を塑性変形または弾性変形させた状態で、前記接合部が溶着されて前記2の部品が接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波溶着を用いて形成されるケースおよび超音波溶着を用いるケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂で形成される2部品間の接合手段として超音波溶着が用いられてきた。
超音波溶着では、一方の部品に形成されるダイレクターを他方の部品に当接した状態で、ダイレクターが形成される側の部品の直上より超音波溶着装置のホーンを押し当てて超音波振動をダイレクターに伝達し、ダイレクターを溶融させることで2部品間の接合が行われる。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂で形成される2部品間の接合手段として用いる従来の超音波溶着の場合、一方の部品に形成されるダイレクターを他方の部品に均一に当接させるため、一方の部品のダイレクター及び他方の部品のダイレクターの当接部を高い寸法精度で作成する必要がある。
【0004】
ところで、熱可塑性樹脂部品は大量生産・コストの観点より射出成形により作成されることが多い。この射出成形の場合、射出成形後の部品の冷却時において形状に由来する冷却ムラを原因とする部品の反りが少なからず発生する。
また、熱可塑性樹脂部品は工作機での切削により作成されることもあるが、この場合には、切削前の熱可塑性樹脂母材の成形時に内在する内部応力を原因とする部品の反りが少なからず発生する。
いずれの場合においても作成後に別工程を設けて矯正を行うことは可能であるが、工程の増加によるコストアップ、また矯正しきれない場合は形状変更が余儀ないため形状の制約が発生する。
【0005】
さらに、高精度に一方のダイレクター及び他方の当接部を作成した場合であっても、超音波接合を行う前の工程で部品熱を付与する場合において部品全体に反りが生じてしまい、せっかく高精度に作成した一方のダイレクター及び他方の当接部にも反りが生じてしまう。
特に、小型化を要求される部品はダイレクターの形状を大きく設計することがレイアウト上の制約から困難なため、ダイレクターの形状を小さく設計する必要があり、ダイレクターの溶融しろを大きく採る事による対策は出来ない。また、ダイレクター形状が小さくなると溶融しろが小さくなるため、さらに、一方のダイレクター及び他方の当接部を備える両部品における全体の反りに対する要求精度が高くなってしまうという問題があった。
【0006】
ここで特許文献1(特開平10−216962号公報)には、合成樹脂弾性材とワーク間の超音波溶着時において、合成樹脂弾性材に切り欠きとなるような孔が形成されるのを防止する技術が開示されている。特許文献1に係る技術は、超音波溶着ホーンにより合成樹脂弾性材が押圧された部分と略同一面になるように押圧保持する加圧部材を備える超音波溶着装置に関する技術である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る技術では超音波溶着装置内にホーンの他、押圧保持を行う加圧部材を組み入れる構成が複雑となり、装置の大型化、故障要因箇所の増加、及びコスト高となる。
また、特許文献1に係る技術で押圧保持を行う場合、溶着を施す箇所とは異なる箇所を押圧するが、当接部を備える側の部品への適応を試みると、部品形状の制約上当接部を備える側を押圧する領域を確保することが困難である。
さらに同様に特許文献1に係る技術で押圧保持を行う場合、ダイレクターを備える側の部品への適応を試みると、材料が熱可塑性樹脂であると特許文献1で記載されているほど部品自体に弾性は備わっていない。従って、溶着を施す箇所に加え、溶着を施す箇所とは異なる箇所を押圧したとしても結局は二部品間の当接及び加圧箇所はダイレクター部となってしまう。この結果、部品の反りが生じている場合においては結局、ダイレクター部が均一に当接しないという問題は解消できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、部品成形時の反りや二次工程で発生する反りが発生しても高品質な超音波溶着を実現でき、かつコスト高とならないケースおよびケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るケースは、2以上の部品を備え、該2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が溶着により接合され、当該溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、前記突出部を塑性変形または弾性変形させた状態で、前記接合部が溶着されて前記2の部品が接合されていることを特徴とする。
また、上記課題を解決するための本発明に係るフィルタユニットは、上記のケースと、該ケースの内部に設けられたフィルタと、を備え、前記ケースの内部に液体を流通することを特徴とする。
さらに、上記課題を解決するための本発明に係る液体吐出ヘッドは、上記のフィルタユニットを備えることを特徴とする。
またさらに、上記課題を解決するための本発明に係る画像形成装置は、上記の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
そして、上記課題を解決するための本発明に係るケース部品の溶着方法は、熱可塑性樹脂を含む2以上の部品同士を接合して形成するケース部品の溶着方法であって、前記2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が超音波溶着により接合され、当該超音波溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、前記2の部品のうち、前記突出部を有しない他方は該突出部により押圧される押圧部を有し、前記接合部は、超音波溶着用のダイレクターであり、前記2の部品のうち、前記ダイレクターを有しない他方は該ダイレクターが当接する当接部を有し前記突出部を前記押圧部に押圧することにより部品変形の矯正を行う第1のステップと、前記ダイレクターを前記当接部に当接させ超音波振動のエネルギーによってダイレクターが溶解することにより部品間の接合を行う第2のステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品成形時の反りや二次工程で発生する反りが発生しても高品質な超音波溶着を実現でき、かつコスト高とならないケースおよびケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジを備えたシリアル方式のプリンター本体の一実施の形態における主要部の構成を示す概観斜視図である。
【図2】本発明に係るインクジェットヘッドの一実施の形態における構成を示す外観斜視分解図である。
【図3】(A)本発明に係るフィルタユニットの一実施の形態における構成を示す概略斜視図である。(B)本発明に係るフィルタユニットの一実施の形態における構成を示す概略斜視分解図である。(C)本発明に係るフィルタユニットの一実施の形態における構成を示す概略断面分解図である。
【図4】フィルタユニットの作成フローを示す図である。
【図5】本発明に係るフィルタユニットの第2の実施の形態におけるダイレクターと突出部の構成を示す概略図である。
【図6】図5に示す第2の実施の形態における溶着手順を示す図である。
【図7】(B)本発明に係るフィルタユニットの第3の実施の形態における要部の構成を示す概略断面図である。(B)本発明に係るフィルタユニットの第3の実施の形態における構成を示す概略斜視図である。(C)本発明に係るフィルタユニットの第3の実施の形態における構成を示す概略斜視分解図である。(D)本発明に係るフィルタユニットの第3の実施の形態における構成を示す概略断面分解図である。
【図8】図7に示す第3の実施の形態における溶着手順を示す図である。
【図9】図7に示す第3の実施の形態における溶着手順の変形例を示す図である。(第4の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るケースは、2以上の部品を備え、該2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が溶着により接合され、当該溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、前記突出部を塑性変形または弾性変形させた状態で、前記接合部が溶着されて前記2の部品が接合されていることを特徴とする。
次に、本発明に係るースおよびケース部品の溶着方法、並びに前記ケースを備えるフィルタユニット、液体吐出ヘッドおよび画像形成装置についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
<画像形成装置および液体吐出ヘッドの実施の形態>
図1は、本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジを備えたシリアル方式のプリンター(画像形成装置)本体の一実施の形態における主要部の構成を示す概観斜視図である。
シリアル方式の画像形成装置であるプリンター1は主走査方向A−1、A−2に往復移動するキャリッジ2に搭載された液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)3から、インクを吐出することによりメディア4上に1ライン分の分割画像を形成する。
1ラインの分割画像形成後、プリンター本体のメディア搬送機構5により副走査方向Bにメディアを1ライン分メディア搬送を行う。
搬送後再度キャリッジが主走査方向Aに移動することにより再度1ライン分の分割画像の形成を行う。
以降これを繰り返すことによって所望の画像を形成する。
【0014】
図2に、インクジェットヘッド3の外観斜視分解図を示す。
インクジェットヘッド3は、フレーム6の下面に液室ユニット7が配置される。液室ユニット7には微細なインク吐出用の微細ノズルが形成されていて、圧電素子8に駆動信号を与えることによりノズルからインクが吐出される。
フレーム6及びフィルタユニット9から形成される内部空間13には圧電素子8の他、圧電素子を設置固定するベース10や駆動回路が形成されるFPC基板11が配置される。また図示しないインクタンクからインクジェットヘッド3にインクを供給する経路途中にはフィルタユニット9が配置されフレーム6と接続する。また、フィルタユニット9と接続するフレーム6にはインク経路としての共通液室12が形成されている。
【0015】
<フィルタユニットの実施の形態>
図3−Aにフィルタユニットの概略斜視図を、図3−Bにフィルタユニットの概略斜視分解図を、また、図3−Cにフィルタユニットの概略断面分解図を示す。
【0016】
フィルタユニット9は、図示しないインクタンクからインクジェットヘッド3にインク(液体)を供給する途中経路に配置される。フィルタユニットの役割は、インクジェットヘッド3内の液室ユニット7に形成されるノズルの目詰まりを防止するため、インクをろ過することである。
フィルタユニット9は内部空間を備えた箱型の形状であり、図3−Bに示すようにケース上9−1、ケース下9−2、及びフィルタ9−3から構成される。
図3−Bに示した各部品は、それぞれが接合することによって図3−Aに示すようにフィルタが形成される。
【0017】
即ち、この2の部品であるケース上9−1とケース下9−2とが、後述する超音波溶着により接合されてケースを形成する。このケース内部に設けられたフィルタ9−3により液体であるインクがろ過されながら、当該ケースをインクが流通する。
タンクから供給されるインクは、フィルタユニット9のケース上9−1に形成されるインク流入口9−1aからフィルタユニット9内部に供給される。供給されたインクはフィルタユニット9内のフィルタ9−3を通過することによりインクをろ過しゴミを捕捉する。ろ過したインクはケース下9−2に形成されるインク流出口9−2aから供給される。
【0018】
<フィルタユニットの作成方法>
図4にフィルタユニット9の作成方法を示す。
フィルタユニット9を作成するには、ケース下9−2とフィルタ9−3間を接合する第1の工程と、その後、接合フィルタ9−3を備えるケース下9−2とケース上9−1間を接合する第2の工程と、の二つの工程を要する。
【0019】
図4−A及び図4−Bを用いて第1の工程を説明する。
ケース下9−2へのフィルタ9−3の接合は、ケース下9−2に一体で設けられる熱可塑性樹脂からなる溶着リブ9−21を熱により溶解させてフィルタ9−3の繊維内に含浸させることにより行われる。含浸した熱可塑性樹脂は常温下で冷却されることにより再び固化して接合が完了する。このとき、溶着リブ9−21を溶解させる手段として本実施の形態ではヒーターチップ14を用いる。
【0020】
続いて図4−A及び図4−Cを用いて第2の工程を説明する。
ケース下9−2とケース上9−1間の接合は、超音波溶着で行われる。
【0021】
第1の工程においてケース下9−2はフィルタを溶着リブ9−21を溶解させることにより接合させているのでこの時の熱の影響でケース下9−2全体が歪んでいる。
まずホーン15によってケース9−1に形成されている後述する突出部9−12をケース下9−2の当接部(押圧部)9−22に押し当ててケース下9−2の歪みを矯正する。(第1のステップ)
歪みの矯正後、ダイレクター(接合部)9−11をケース下9−2の当接部9−22に突き当てるまで押し当てる。この時突出部9−12は押圧力により塑性変形を起こして潰れた状態となる。このとき常にホーン15はダイレクター9−11直上のケース上9−1上面を押し当てている。
【0022】
その後ホーン15からダイレクター9−11へ超音波振動を与える。超音波振動を与えられたダイレクター9−11は自身が発熱することによって溶解する。その結果ケース下9−2の当接部9−22と一体化し接合が完了する。(第2のステップ)
【0023】
本実施の形態では、ケース下9−2の歪み矯正時に突出部9−12を当接部9−22に突き当て歪みを矯正した後、ダイレクター9−11を突き当てている。これは突出部9−12での歪み矯正を行わない場合、ダイレクターのみで歪み矯正を行う事となってしまい、最適化されたダイレクター形状が潰れてしまう為である。
【0024】
本発明は以上の実施の形態に何ら限定されるものではない。即ち本発明では、2の部品同士が溶着により接合されてなり、当該溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有するものである。従って、上述した実施の形態では接合部であるダイレクター9−11と突出部9−12とのいずれもが、超音波溶着により接合される2の部品のうちの一方に設けられてなるが、これらは2の部品のうちの一方と他方とに別々に設けられても良い。
【0025】
なお、本発明において、「メディア」とは紙、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0026】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0027】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0028】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0029】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【0030】
<部品>
本発明における2以上の部品を構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリアセタール等が挙げられ、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
【0031】
<突出部9−12>
突出部9−12は、塑性変形または弾性変形可能であり、構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリアセタール等が挙げられる。
なお、突出部9−12は、当該突出部9−12が設けられている部品と同一の材料で形成され、且つ、弾性変形可能であることが好ましい。
【0032】
〔第2の実施の形態〕
図5に第2の工程内で実施する超音波溶着に用いられるダイレクター9−11の形状と他の形態の突出部9−12の形状の詳細を示す。
図4では、突出部はホーン15の押圧力により塑性変形を起こしながらケース下9−2の歪みを矯正する例について説明したが、押圧力による変形は弾性変形であっても構わない。
図5に示す実施の形態では、ホーン15により押圧されると突出部9−12は弾性変形しながらケース下9−2の歪みを矯正する形態を示している。
【0033】
図6を用いて図5で示した形態の超音波溶着手順を示す。
<手順1>
ホーン15によるケース上9−1の加圧開始とケース上9−1に形成される突出部によるケース下9−2の反り矯正を行う。
この時、ダイレクター15はケース下9−2の当接部には接触していなく、突出部9−12のみが接触している。ホーン15の押圧により突出部9−12はケース下9−2を押圧してケース下9−2の反りを矯正する。
【0034】
<手順2>
ケース下9−2の反り完了とホーン15によるケース上9−1の加圧継続。
矯正完了後もホーン15による押圧により突出部9−12は引き続きケース下9−2を押圧し続ける。
この時、ダイレクター9−11はまだケース下9−2の当接部には接触していない。
【0035】
<手順3>
ホーン15によるケース上9−1の加圧継続とホーン15による超音波振動によるエネルギー印可を行う。
手順2の後、更にホーン15による加圧が行われると突出部9−12の弾性変形が大きくなり、やがてダイレクター9−11がケース下9−2の当接面に接触する。
この時ホーン15は引き続き加圧を継続すると同時に超音波によるエネルギー印可を開始する。
【0036】
<手順4>
超音波溶着の完了。
ケース下9−1の反り矯正とケース下9−2とケース上9−1間の超音波溶着の一連手順が完了する。
【0037】
〔第3の実施の形態〕
図7−Aに第2の工程内で実施する超音波溶着に用いられるダイレクター9−11の形状とさらにその他の形態の突出部9−12の形状の詳細を示す。
図5に示す実施の形態では、突出部9−12が弾性変形する形態を示したが、図7では更に突出部9−12が弾性変形をしながらケース下9−2の反りを矯正後、ダイレクターに加えて突出部9−12も超音波溶着する形態を示している。
このような構成とすることにより、ケース上9−1とケース下9−2間の超音波溶着完了後、弾性を備える突出部9−12の反発力を抑えることができ、溶着の剥離問題を解消することができる。
【0038】
なお本実施の形態にかかる構成を射出成形で作成する場合、ケース上9−1は通常の上下抜きの型構成では実現できないため、スライド型を用いて作成する。図7―Aおよび以降に示す突出部を超音波溶着する構成ではケース上9−1はスライド型を用いて作成した形状を用いて説明する。
【0039】
図7−Bにスライド型を用いて作成したフィルタユニットの概略斜視図を、図7−Cにスライド型を用いて作成したフィルタユニットの概略斜視分解図を、また、図7−Dにスライド型を用いて作成したフィルタユニットの概略断面分解図を示す。
【0040】
図8を用いて図7で示した形態の超音波溶着手順を示す。
以下の手順で反りが生じたケース下9−2の矯正を行いつつ、ケース下9−2とケース上9−1間の超音波溶着を行う。
【0041】
<手順1>
ホーン15によるケース上9−1の加圧開始とケース上9−1に形成される突出部によるケース下9−2の反り矯正を行う。
この時、ダイレクター9−11はケース下9−2の当接部には接触せず、突出部9−12のみ接触している。ホーン15の押圧により突出部9−12はケース下9−2を押圧してケース下9−2の反りを矯正する。
【0042】
<手順2>
ケース下9−2の反りが完了する。
またホーン15によるケース上9−1の加圧継続と、ホーン15よる超音波振動のエネルギー印加を行う。
手順1の後、更にホーン15による加圧が行われると、やがてケース上9−1の突出部9−12に設けられた(突出部の一部を構成する)ダイレクター9−13が同じくケース9−1内の近接箇所に接触する。この時、ホーン15による超音波振動のエネルギー印加が行われることによりケース上9−1の突出部9−12に設けられたダイレクター9−13が溶解する。
この時、ダイレクター9−11はまだケース下9−2の当接部には接触していない。
【0043】
<手順3>
手順2ではケース上9−1の突出部9−12に設けられたダイレクター9−13が溶解するが、ホーン15による超音波振動のエネルギー印加と押圧は継続される。
やがて、ダイレクター9−11が当接面に接するまで到達すると、ホーンから印加される超音波振動のエネルギーによりダイレクターが溶解する。
【0044】
<手順4>
超音波溶着の完了。
更にホーン15による超音波振動のエネルギー印加と押圧は継続されると、ケース下9−1の反り矯正とケース下9−2とケース上9−1間の超音波溶着及び、ケース上9−1の突出部の溶着手順が完了する。
【0045】
〔第4の実施の形態〕
図9を用いて図8で示した形態の変更例の超音波溶着手順を示す。
図8で説明した構成の場合、ホーンがダイレクター9−11及びケース上9−1に形成された突出部9−12に設けられたダイレクター9−13の夫々を同一のホーン15を使用して超音波振動によりエネルギー印加したが、本実施の形態では夫々別のホーン15を用いている。
このような構成とする事により、夫々のホーンは最適なタイミングでエネルギー印加を実施でき、より最適な、エネルギーロスの少ない条件でケース上9−1、ケース下9−2間の接合及び突出部9−12の固定が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 プリンター(画像形成装置)
2 キャリッジ
3 液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)
4 メディア
5 メディア搬送機構
6 フレーム
7 液室ユニット
8 圧電素子
9 フィルタユニット
9−1 ケース上
9−2 ケース下
9−3 フィルタ
9−1a インク流入口
9−2a インク流出口
9−11 ダイレクター
9−12 突出部
9−13 ダイレクター
9−21 溶着リブ
9−22 当接部
10 ベース
11 FPC基板
12 共通液室
13 内部空間
14 ヒーターチップ
15 ホーン
A−1 主走査方向
A−2 主走査方向
B 副走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開平10−216962号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の部品を備え、
該2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が溶着により接合され、
当該溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、
前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、
前記突出部を塑性変形または弾性変形させた状態で、前記接合部が溶着されて前記2の部品が接合されていることを特徴とするケース。
【請求項2】
前記突出部は、当該突出部を有する2の部品のうちの一方と同一の材料で且つ弾性変形可能であることを特徴とする請求項1に記載のケース。
【請求項3】
請求項1または2に記載のケースと、該ケースの内部に設けられたフィルタと、を備え、
前記ケースの内部に液体を流通することを特徴とするフィルタユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルタユニットを備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
熱可塑性樹脂を含む2以上の部品同士を接合して形成するケース部品の溶着方法であって、
前記2以上の部品は、それぞれ2の部品同士が超音波溶着により接合され、
当該超音波溶着により接合される2の部品は、互いを接合する接合部と、互いを突き当てる突出部と、をそれぞれ独立にいずれか一方が有し、
前記突出部は、塑性変形または弾性変形可能であり、
前記2の部品のうち、前記突出部を有しない他方は該突出部により押圧される押圧部を有し、
前記接合部は、超音波溶着用のダイレクターであり、
前記2の部品のうち、前記ダイレクターを有しない他方は該ダイレクターが当接する当接部を有し
前記突出部を前記押圧部に押圧することにより部品変形の矯正を行う第1のステップと、
前記ダイレクターを前記当接部に当接させ超音波振動のエネルギーによってダイレクターが溶解することにより部品間の接合を行う第2のステップと、を有することを特徴とするケース部品の溶着方法。
【請求項7】
前記第2のステップの超音波振動のエネルギーによって前記突出部も溶解し、固定されることを特徴とする請求項6に記載のケース部品の溶着方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−63520(P2013−63520A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201992(P2011−201992)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】